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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】点検ミラー及びカメラ付き点検ミラー
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20221005BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20221005BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221005BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
H02G1/02
G03B17/56 A
G03B17/02
G03B15/00 T
G03B15/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021185960
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000141015
【氏名又は名称】株式会社かんでんエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】北野 誠
(72)【発明者】
【氏名】長者原 亨
(72)【発明者】
【氏名】橋口 和矢
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第7475998(US,B1)
【文献】特開2004-96840(JP,A)
【文献】特開2002-14048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
G03B 17/56
G03B 17/02
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作棒と、
前記操作棒に設けられ、点検対象を映すように一側面側において入射した光の一部を反射し、かつ前記光の他の一部を前記一側面側から他側面側へ透過させるミラーと、
前記ミラーの他側面側に設けられ、前記ミラーを透過した光により撮像可能なカメラが配置される配置部と、
を具備する、
点検ミラー。
【請求項2】
前記ミラーに対する前記カメラの角度を調整可能な角度調整機構を具備する、
請求項1に記載の点検ミラー。
【請求項3】
前記カメラは、
前記ミラーの中心よりも、前記ミラーと前記操作棒との接続部分側に配置される、
請求項1又は請求項2に記載の点検ミラー。
【請求項4】
前記配置部は、
前記他側面側から前記カメラのレンズへ向かう光を遮る遮光部を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の点検ミラー。
【請求項5】
前記ミラーに対する前記カメラの角度を調整可能な角度調整機構を具備し、
前記遮光部は、
前記カメラの側面を囲むように前記他側面側から立ち上がると共に、一部の高さが他部の高さよりも低くなるように形成された凹部を有し、
前記角度調整機構は、
前記凹部を介して前記カメラと接続される、
請求項4に記載の点検ミラー。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の点検ミラーと、
前記カメラと、
を具備するカメラ付き点検ミラー。
【請求項7】
前記カメラと無線による通信を行うことで、前記操作棒の基端側において前記カメラの操作が可能な操作部を具備する、
請求項6に記載のカメラ付き点検ミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検対象を点検する際に用いられる点検ミラー及びカメラ付き点検ミラーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点検対象を点検する際に用いられる点検ミラーの技術が公知となっている。点検ミラーを用いることで、足場からは死角に位置するため直接目視できない点検対象の点検を行うことができる。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載される活線用点検ミラーは、操作棒の先端に取り付けられた鏡の裏側に、ビデオカメラを設けている。上記活線用点検ミラーは、鏡に貫通穴が形成され、上記貫通穴を介してビデオカメラによる撮像を行う構成とされている。
【0004】
上記活線用点検ミラーによれば、鏡による点検対象の目視及びビデオカメラによる点検対象の撮像が可能となる。
【0005】
しかしながら、上記活線用点検ミラーでは、鏡に貫通穴を形成したことから、鏡により反射可能な領域が損なわれ、目視による点検を行い難い。従って、上記点検ミラーの更なる改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3156552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ミラー及びカメラを用いた点検を好適に行うことができる点検ミラー及びカメラ付き点検ミラーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、操作棒と、前記操作棒に設けられ、点検対象を映すように一側面側において入射した光の一部を反射し、かつ前記光の他の一部を前記一側面側から他側面側へ透過させるミラーと、前記ミラーの他側面側に設けられ、前記ミラーを透過した光により撮像可能なカメラが配置される配置部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記ミラーに対する前記カメラの角度を調整可能な角度調整機構を具備するものである。
【0011】
請求項3においては、前記カメラは、前記ミラーの中心よりも、前記ミラーと前記操作棒との接続部分側に配置されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記配置部は、前記他側面側から前記カメラのレンズへ向かう光を遮る遮光部を具備するものである。
【0013】
請求項5においては、前記ミラーに対する前記カメラの角度を調整可能な角度調整機構を具備し、前記遮光部は、前記カメラの側面を囲むように前記他側面側から立ち上がると共に、一部の高さが他部の高さよりも低くなるように形成された凹部を有し、前記角度調整機構は、前記凹部を介して前記カメラと接続されるものである。
【0014】
請求項6においては、本発明に係る点検ミラーと、前記カメラと、を具備するものである。
【0015】
請求項7においては、前記カメラと無線による通信を行うことで、前記操作棒の基端側において前記カメラの操作が可能な操作部を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、ミラー及びカメラを用いた点検を好適に行うことができる。
【0018】
請求項2においては、カメラによる点検対象の撮像を好適に行うことができる。
【0019】
請求項3においては、カメラを設けた点検ミラーの取扱い性を向上させることができる。
【0020】
請求項4においては、カメラによる点検対象の撮像をより好適に行うことができる。
【0021】
請求項5においては、遮光部を形成しながらも、カメラの角度の調整を行い易くすることができる。
【0022】
請求項6においては、ミラー及びカメラを用いた点検を好適に行うことができる。
【0023】
請求項7においては、感電を防止しつつ、カメラの操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るカメラ付き点検ミラーを示す平面図。
図2】カメラ付き点検ミラーを用いた点検の様子を模式的に示す平面図。
図3】ミラー、カメラ及び支持部を示す背面斜視図。
図4】カメラ付き点検ミラーを示す背面図。
図5図4におけるX-X断面図。
図6図5において、カメラの角度を調整した状態を示す平面断面図。
図7】(a)カメラの角度を調整する前の点検の様子を示す平面断面図。(b)カメラの角度を調整した後の点検の様子を示す平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0026】
以下では、本発明の一実施形態に係るカメラ付き点検ミラー1について説明する。
【0027】
図1及び図2に示すカメラ付き点検ミラー1は、送電塔や電柱に設けられた碍子等の点検対象Aを点検する際に用いられるものである。図2に示すように、点検者は、高所作業車やはしご、送電塔等の足場から、当該足場から離れた場所に位置する点検対象Aを点検する。この際には、点検対象Aの裏面(後面)が足場からは死角となるため、上記箇所を直接目視し難い。そこで、カメラ付き点検ミラー1を用いることで、ミラー20で点検対象Aの目視し難い箇所を映すこと、及びカメラ30を用いた点検対象Aの撮像を行うことができる。カメラ付き点検ミラー1は、操作棒10、ミラー20、カメラ30、支持部40及び端末50を具備する。
【0028】
図1及び図2に示す操作棒10は、ミラー20(後述する支持部40)が設けられるものである。操作棒10は、長尺な形状に形成される。操作棒10は、絶縁性を有する材料で形成される。操作棒10は、長さを調節可能(伸縮可能)に形成される。図2に示すように、操作棒10の基端側は、点検者により把持される。
【0029】
図1に示す操作棒10の先端部11には、ミラー20(支持部40)の取り付けに用いられる孔部11aが形成される。孔部11aは、先端部11を上下に貫通するように形成される。
【0030】
図4及び図5に示すミラー20は、透光性及び反射性の両特性を有する部材(ハーフミラーやマジックミラー)である。図5に示すように、ミラー20は、点検対象Aを映すように前面21側において入射した光の一部を反射し、かつ上記光の他の一部を前面21側から後面22側へ透過させることができる。ミラー20は、板面を前後方向に向けた略板形状に形成される。ミラー20は、前面21が凹形状とされ、後面22が凸形状とされている(図5を参照)。ミラー20は、アクリルやガラス等、透光性を有する材料から形成される。
【0031】
ミラー20の後面22には、透光性及び反射性を備える反射層が形成される。反射層は、後面22にアルミや銀等の金属を用いた蒸着加工(真空蒸着加工)を施すことで形成される。反射層の厚さを適宜調整することで、ミラー20の透過率及び反射率は適宜設定することができる。ミラー20の反射率や透過率(例えば12%程度)は、適宜設定可能である。
【0032】
図1図3から図5までに示すカメラ30は、ミラー20を透過した光により、点検対象Aを撮像可能なものである。カメラ30は、ミラー20(後述する支持部40)の後方に配置される。カメラ30は、略直方体形状に形成される。カメラ30は、静止画や動画の撮像が可能である。カメラ30は、撮像した画像データを記憶する記憶部(不図示)を有する。カメラ30としては、アクションカメラ(ウェアラブルカメラ)等の小型のカメラ(ビデオカメラ)を採用可能である。カメラ30は、レンズ31、操作ボタン32、通信部33及び接続部34を具備する。
【0033】
図4及び図5に示すレンズ31は、ミラー20を透過した光が入射される部分である。レンズ31は、カメラ30の前面に設けられる。図4に示すように、レンズ31は、カメラ30の上部に配置される。
【0034】
操作ボタン32は、カメラ30の操作を行うものである。操作ボタン32を押圧操作することで、カメラ30の起動や撮像等の操作を行うことができる。操作ボタン32は、カメラ30の左面に配置される。なお、操作ボタン32の配置される位置は上記位置に限定されず、カメラ30の種々の位置に設置可能である。
【0035】
図1に示す通信部33は、種々の情報を無線通信可能なものである。通信部33は、カメラ30が撮像した画像データを、外部の機器(例えば後述する端末50)に送信可能である。また、通信部33は、カメラ30の操作に関する情報を受信可能である。カメラ30は、通信部33を介して受信した情報に基づいて、起動や撮像等を行うことができる。通信部33による情報の通信には、例えば「ブルートゥース(Bluetooth)」(登録商標)や、Wi‐Fi(登録商標)等の種々の無線通信技術を採用可能である。
【0036】
図3及び図4に示す接続部34は、後述する支持部40の角度調整機構43と接続される部分である。接続部34は、カメラ30の右面から右方に突出するように形成される。接続部34は、上下に間隔を空けて一対設けられる。接続部34には、角度調整機構43との接続に用いられる孔部34aが形成される。孔部34aは、接続部34を上下に貫通するように形成される。
【0037】
図1図3から図5までに示す支持部40は、ミラー20及びカメラ30を支持するものである。支持部40は、前方に向けて開口する略箱形状に形成される(図5を参照)。支持部40は、操作棒10の先端部11に接続される。支持部40は、例えば樹脂により形成される。支持部40は、ミラー収容部41、カメラ収容部42、角度調整機構43、リブ44及び接続部45を具備する。
【0038】
ミラー収容部41は、ミラー20を収容する部分である。ミラー収容部41は、前面21を除いてミラー20の概ね全体を後方から覆うように形成される。図4及び図5に示すように、ミラー収容部41は、ミラー20の形状に応じた形状に形成される。ミラー収容部41は、前面において開口するミラー開口部41aを有する。
【0039】
図5に示すように、ミラー開口部41aを介して、ミラー収容部41に収容されたミラー20の前面21が露出される。ミラー開口部41aの正面視における形状は、ミラー20の正面視における形状よりも小さく形成される。これにより、ミラー収容部41に収容されたミラー20の脱落を防止することができる。
【0040】
図3から図5までに示すカメラ収容部42は、支持部40の背面(後面)においてカメラ30を収容する部分である。カメラ収容部42は、ミラー収容部41(ミラー20)の上下方向中央よりも下方に配置される。また、カメラ収容部42は、ミラー収容部41(ミラー20)の左右方向中央よりも右方に配置される。図4に示すように、カメラ収容部42にカメラ30を収容した状態では、カメラ30(レンズ31)は、ミラー20の左右方向中央よりも右方に配置される。カメラ収容部42は、遮光部42a及び背面開口部42cを具備する。
【0041】
遮光部42aは、支持部40の後面において、カメラ収容部42に収容されたカメラ30のレンズ31へ向かう光を遮るものである。図3及び図5に示すように、遮光部42aは、支持部40の後面から後方へ突出する(立ち上がる)と共に、カメラ30の側面を四方(上下左右)から囲むように形成される。
【0042】
図3から図5までに示すように、遮光部42aには、遮光部42aの一部(右部)を前方に向けて凹ませた凹部42bが形成される。凹部42bが形成されたことで、遮光部42aの一部(右部)の高さ(突出寸法)は、他の部分(左部、上部及び下部)の高さよりも低くなる。また、遮光部42aのうち、凹部42bが形成されていない部分(左部、上部及び下部)は、概ねカメラ30の前後方向中央部まで突出するように形成される。
【0043】
また、図5及び図6に示すように、遮光部42aの左部は、回動するカメラ30との干渉を避ける形状に形成されている。具体的には、遮光部42aの左部は、カメラ30側に向く面(右面)が、後方へ向かうに従い左方に傾斜するように形成される。なお、カメラ30の回動の説明については後述する。
【0044】
図4及び図5に示す背面開口部42cは、支持部40の背面(後面)において開口する部分である。背面開口部42cは、遮光部42aにより囲まれた部分に形成される。背面開口部42cは、ミラー収容部41と連通している。背面開口部42cを介して、遮光部42aにより囲まれた空間とミラー収容部41とが連通する。図4に示すように、背面開口部42cは、背面視(正面視)において、カメラ30のレンズ31と重複するように形成される。背面開口部42cは、左方に向かうに従い上下寸法が大きくなるように形成される。
【0045】
角度調整機構43は、ミラー20に対するカメラ30の角度を調整可能に、カメラ30を支持するものである。角度調整機構43は、支持部40の背面において、後方へ突出するように形成される。より詳細には、角度調整機構43は、支持部40の背面のうち、遮光部42aの右部より右方の部分から後方へ突出する。角度調整機構43は、カメラ収容部42の上下方向略中央に配置される。角度調整機構43には、カメラ30の一対の接続部34を受け入れる凹部が形成される。
【0046】
角度調整機構43には、カメラ30の取り付けに用いられる孔部43aが形成される。孔部43aは、角度調整機構43を上下に貫通するように形成される。孔部43aは、平面視において、接続部34の孔部34aと重複する。
【0047】
角度調整機構43の孔部43aと、接続部34の孔部34aと、には、適宜のボルト及びナット等からなる締結具43bが挿通される。これにより、カメラ30と支持部40とが接続される。また、図3から図5までに示すように、角度調整機構43は、凹部42bを介してカメラ30と接続される。すなわち、角度調整機構43のうち、カメラ30と接続される部分(孔部43aが形成された部分)は、凹部42b内に位置するように配置される。
【0048】
締結具43b(ボルト及びナット)による締結を行うことで、支持部40に対してカメラ30を固定することができる。また、締結具43bによる締結を緩めれば、図5及び図6に示すように、締結具43bを回動軸として、支持部40に対してカメラ30を回動させることができる。このようにして、支持部40(ミラー20)に対するカメラ30の角度を調整することができる。
【0049】
図1図3及び図4に示すリブ44は、支持部40を補強する部分である。リブ44は、カメラ収容部42に囲まれた部分を除いて、支持部40の左面、後面及び右面に亘って、左右に延びるように形成される。リブ44は、遮光部42aと一体的に形成される(図5を参照)。リブ44は、支持部40の上下方向略中央に配置される。また、リブ44は、角度調整機構43の上方に配置される。
【0050】
接続部45は、操作棒10の先端部11と接続される部分である。接続部45は、リブ44の右端部において、前方に突出するように形成される。接続部45には、先端部11との接続に用いられる孔部45aが形成される。孔部45aは、接続部45を上下に貫通するように形成される。孔部45aは、平面視において、先端部11の孔部11aと重複する。
【0051】
接続部45の孔部45aと、先端部11の孔部11aと、には、適宜のボルト及びナット等からなる締結具45bが挿通される。これにより、操作棒10と支持部40とが接続される。
【0052】
締結具45b(ボルト及びナット)による締結を行うことで、操作棒10に対して支持部40を固定することができる。また、締結具45bによる締結を緩めれば、締結具45bを回動軸として、操作棒10に対して支持部40を回動させることができる(図7を参照)。このようにして、操作棒10に対する支持部40(ミラー20)の角度を調整することができる。
【0053】
本実施形態では、支持部40を上下に分割された一対の部材により形成している。具体的には、支持部40は、リブ44が形成された部分において分割されている(図3及び図4を参照)。支持部40は、一対の部材を互いに当接させた状態で、各リブ44同士を適宜の止具で固定することで形成される。各リブ44には、上記止具を挿通するための複数の孔が形成されている。ミラー20をミラー収容部41に収容させる際には、上記分割された一対の部材でミラー20を挟み込むようにして収容させることができる。
【0054】
なお、支持部40としては、分割可能なものに限定されず、例えば、支持部40を一部材により形成してもよい。この場合は、ミラー20をミラー収容部41に収容させる際には、ミラー開口部41aを撓ませて開口を広げて、ミラー20を収容するようにしてもよい。
【0055】
図1に示す端末50は、各種の情報を入出力可能なものである。端末50としては、例えばスマートフォン(携帯電話)やタブレット端末等を採用可能である。端末50は、当該端末50の操作や、画像の表示が可能なタッチパネル51を有する。
【0056】
端末50は、カメラ30の通信部33との送受信が可能である。端末50による情報の通信には、通信部33と同様、種々の無線通信技術を採用可能である。端末50は、カメラ30が撮像した画像データを受信し、タッチパネル51に表示することができる。これにより、点検者は、タッチパネル51を介して画像データを確認するすることができる。
【0057】
また、端末50は、タッチパネル51によるカメラ30の操作に関する信号を、通信部33に送信することができる。これにより、点検者は、タッチパネル51を介して、カメラ30を操作することができる。
【0058】
上述の如きカメラ付き点検ミラー1は、点検ミラーを備えている。点検ミラーは、カメラ付き点検ミラー1を構成する各部材のうち、カメラ30及び端末50を除いたものである。すなわち、本実施形態では、操作棒10、ミラー20及び支持部40により点検ミラーが構成される。
【0059】
以下では、図2図5から図7までを用いて、カメラ付き点検ミラー1を用いた点検の様子について説明する。以下の説明においては、図2に示すように、点検者は、点検対象Aの前方(斜め前右方)に位置する足場から、点検対象Aの点検を行うものとする(図5も参照)。点検者は、足場からは死角に位置するため直接目視し難い点検対象Aの後面の点検を、カメラ付き点検ミラー1を用いて行う。
【0060】
まず、点検者は、操作棒10に対する支持部40(ミラー20)の角度を、所望の角度に調整する。上記角度の調整は、点検者の手により行われる。次に、点検者は、図2に示すように、操作棒10の基端側を把持すると共に、ミラー20により点検対象Aの後面を映すように、操作棒10の先端側(支持部40)を移動させる。
【0061】
この状態では、図5に示すように、一点鎖線で示す点検対象Aからの光の一部がミラー20の前面21に反射される。これにより、操作棒10の基端側に位置する点検者はミラー20に映った点検対象Aを視認することができる。
【0062】
また、この状態では、破線で示す点検対象Aからの光の他の一部がミラー20を透過する。上記透過した光は、背面開口部42cを介してカメラ30のレンズ31に入射する。これにより、カメラ30は、上記透過した光により点検対象Aを撮像することができる。
【0063】
点検者は、必要に応じて端末50を介した操作を行うことで、カメラ30により点検対象Aを撮像することができる。撮像の際には、点検者は、端末50のタッチパネル51に表示された点検対象Aの確認を行う。点検者は、点検対象Aを撮像した画像データに基づく詳細な点検を行うことができる。
【0064】
上述の如きカメラ付き点検ミラー1によれば、例えば概略的な点検はミラー20を用いた目視により行い、詳細な点検はカメラ30で点検対象Aを撮像することにより行うことができる。これにより、ミラー20及びカメラ30を用いた点検を好適に行うことができる。
【0065】
ここで、従来のカメラを有さない点検ミラーを用いて点検対象Aの撮像を行う際には、点検者は片方の手で操作棒を把持してミラーに点検対象Aを映し、もう片方の手に持ったカメラでミラーに映した点検対象Aを撮像していた。この方法では、撮像時の体勢が悪くなるおそれがあった。また、上記ミラーに代えてカメラを操作棒に取り付けて、上記カメラのモニター画面を見ながら点検対象Aの点検を行う方法も考えられる。しかしながら、この方法では、モニター画面と操作棒との視点移動が発生するため、作業性の観点から問題があった。
【0066】
本実施形態では、支持部40に設けたカメラ30により点検対象Aの撮像を行うので、手に持ったカメラで撮像する従来の方法とは異なり、撮像時に体勢が悪くなることを回避することができる。また、本実施形態では、タッチパネル51(モニター画面)の確認は、カメラ30の撮像の際だけとなり、視点移動の問題を軽減することができる。
【0067】
また、本実施形態では、ミラー20をハーフミラー(マジックミラー)としているので、例えばミラー20にカメラ30のレンズ31を露出させるための孔を形成したものとは異なり、ミラー20の反射可能な部分を損なうことなく、カメラ30による撮像を行うことができる。これにより、ミラー20を用いた点検の精度を落とすことなくカメラ30による撮像を行うことができる。
【0068】
また、ミラー20を透過した光により撮像を行う場合、カメラ30のレンズ31周辺部分は比較的暗いことが望ましい。本実施形態によれば、遮光部42aを設けたことで、遮光部42aにより後方からカメラ30のレンズ31へ向かう光を遮り、カメラ30のレンズ31周辺部分を比較的暗くすることで、ミラー20を透過した光による撮像を好適に行うことができる。
【0069】
ここで、図7(a)に示すように、点検対象Aの位置によっては、点検者がミラー20越しに点検対象Aを見る視野と、カメラ30が撮像可能な範囲(画角)と、に差が生じる場合がある。図7では、点検者がミラー20越し見る視野を一点鎖線(太線)で示し、カメラ30の画角を二点鎖線で示している。
【0070】
図7(a)に示す例では、カメラ30のレンズ31を前方に向けた例を示している。すなわち、カメラ30の前面が、ミラー20の前面21に沿う角度でカメラ30を配置している。この状態では、点検者はミラー20越しに点検対象Aを視認することはできるが、カメラ30の画角の範囲内に点検対象Aが位置しないため、点検対象Aの撮像を行うことができない。
【0071】
本実施形態によれば、ミラー20に対するカメラ30の角度を調整することで、点検者がミラー20越しに見る視野とカメラ30の画角との差を埋めることができる。具体的には、図6及び図7(b)に示すように、回動軸(締結具43b)回りにカメラ30を平面視時計回りに回動させることで、点検対象Aを撮像できるように、カメラ30の角度を調整することができる。なお、この状態でも、遮光部42aにより、後方からカメラ30のレンズ31へ向かう光をある程度遮ることができ、カメラ30のレンズ31周辺部分を比較的暗くすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、カメラ30(レンズ31)をミラー20の中心よりも接続部45側(右側)に配置すると共に、角度調整機構43をカメラ30の右側に配置している。このように構成したことで、ミラー20に対するカメラ30の角度を調整する場合に、点検者がミラー20越しに点検対象Aを見る視野とカメラ30の画角とを比較的一致させ易くすることができる(図7(b)を参照)。上記カメラ30の配置は、例えばカメラ30の角度を調整した(カメラ30を回動させた)状態で、カメラ30の画角の範囲内にミラー20の中心が位置するように設定される。
【0073】
以上の如く、本実施形態に係る点検ミラーは、
操作棒10と、
前記操作棒10に設けられ、点検対象Aを映すように一側面側において入射した光の一部を反射し、かつ前記光の他の一部を前記一側面側から他側面側へ透過させるミラー20と、
前記ミラー20の他側面側に設けられ、前記ミラー20を透過した光により撮像可能なカメラ30が配置される配置部(カメラ収容部42)と、
を具備するものである。
【0074】
このように構成することにより、ミラー20及びカメラ30を用いた点検を好適に行うことができる。すなわち、例えば概略的な点検はミラー20を用いて目視により行い、詳細な点検はミラー20に設けられたカメラ30で点検対象Aを撮像することにより行うことができる。また、ミラー20を、入射した光の一部を反射し他の一部を透過させる構成(ハーフミラー)としている。これにより、例えばミラー20にカメラ30のレンズ31を露出させるための孔を形成したものとは異なり、ミラー20の反射可能な部分を損なうことなく、カメラ30による撮像を行うことができる。
【0075】
また、点検ミラーは、
前記ミラー20に対する前記カメラ30の角度を調整可能な角度調整機構43を具備するものである。
【0076】
このように構成することにより、カメラ30による点検対象Aの撮像を好適に行うことができる。すなわち、仮にミラー20の反射面(前面21)に沿う角度でカメラ30を配置した場合、点検者がミラー20越しに点検対象Aを見る視野と、カメラ30の画角と、に差が生じることが想定される。そこで、角度調整機構43によりミラー20に対するカメラ30の角度を調整することで、上記差を埋めることができる。
【0077】
また、前記カメラ30は、
前記ミラー20の中心よりも、前記ミラー20と前記操作棒10との接続部分(接続部45)側に配置されるものである。
【0078】
このように構成することにより、カメラ30を設けた点検ミラー(カメラ付き点検ミラー1)の取扱い性を向上させることができる。すなわち、カメラ30を接続部45側に配置したことで、操作棒10を持つ点検者にかかる負荷を軽減することができる。また、カメラ30の角度調整等の操作を行い易くすることができる。
【0079】
また、前記配置部(カメラ収容部42)は、
前記他側面側(後面22側)から前記カメラ30のレンズ31へ向かう光を遮る遮光部42aを具備するものである。
【0080】
このように構成することにより、カメラ30による点検対象Aの撮像をより好適に行うことができる。すなわち、ミラー20を透過した光により撮像を行う場合、カメラ30のレンズ31周辺部分は比較的暗いことが望ましい。本実施形態によれば、遮光部42aにより後方からカメラ30のレンズ31へ向かう光を遮り、カメラ30のレンズ31周辺部分を比較的暗くすることで、ミラー20を透過した光による撮像を好適に行うことができる。
【0081】
また、点検ミラーは、
前記ミラー20に対する前記カメラ30の角度を調整可能な角度調整機構43を具備し、
前記遮光部42aは、
前記カメラ30の側面を囲むように前記他側面側(支持部40の背面)から立ち上がると共に、一部(右部)の高さが他部の高さよりも低くなるように形成された凹部42bを有し、
前記角度調整機構43は、
前記凹部42bを介して前記カメラ30と接続されるものである。
【0082】
このように構成することにより、遮光部42aを形成しながらも、カメラ30の角度の調整を行い易くすることができる。すなわち、上記構成としたことで、遮光部42aがカメラ30の角度の調整(回動)を阻害することを抑制することができる。
【0083】
また、点検ミラーは、カメラ30のレンズ31及び角度調整機構43を、ミラー20の中心よりも一方側(接続部45側(右側))に位置させている。
【0084】
このように構成したことで、ミラー20に対するカメラ30の角度を調整した場合に、点検者がミラー20越しに点検対象Aを見る視野とカメラ30の画角とを一致させ易くすることができる(図7(b)を参照)。
【0085】
また、点検ミラーは、背面開口部42cの形状を、反角度調整機構43側(左側)に向かうに従い幅寸法(上下寸法)が大きくなるように形成している(図3を参照)。
【0086】
このように構成したことで、カメラ30の角度を調整した場合に、カメラ30の画角と背面開口部42cとが干渉することを抑制することができる。すなわち、カメラ30の画角は徐々に広がるため、カメラ30の角度を調整してカメラ30のレンズ31と背面開口部42cとの距離が大きくなった場合には、カメラ30の画角と背面開口部42cとが比較的干渉し易くなる(図7(b)を参照)。本実施形態では、背面開口部42cの形状を上記形状に形成することで、カメラ30の画角と背面開口部42cとが干渉することを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態に係るカメラ付き点検ミラー1は、
本実施形態に係る点検ミラーと、
前記カメラ30と、
を具備するものである。
【0088】
このように構成することにより、ミラー20及びカメラ30を用いた点検を好適に行うことができる。
【0089】
また、カメラ付き点検ミラー1は、
前記カメラ30と無線による通信を行うことで、前記操作棒10の基端側において前記カメラ30の操作が可能な操作部(端末50)を具備するものである。
【0090】
このように構成することにより、感電を防止しつつ、カメラ30の操作を行うことができる。すなわち、例えば送電塔の点検を行う際に、仮にリード線等の有線によりカメラ30の操作を行う場合は、上記リード線により点検者側に電気が伝わり感電するおそれがある。そこで、無線通信によりカメラ30の操作を行うことで、感電を防止しつつ、カメラ30の操作を行うことができる。
【0091】
なお、本実施形態に係るカメラ収容部42は、本発明に係る配置部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る接続部45は、本発明に係るミラーと前記操作棒との接続部分の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る端末50は、本発明に係る操作部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る操作棒10、ミラー20及び支持部40は、本発明に係る点検ミラーの実施の一形態である。
【0092】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、本発明におけるミラー20に対するカメラ30の位置は、上記実施形態で示す態様に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0094】
また、本実施形態では、角度調整機構43を設け、ミラー20に対するカメラ30の角度調整可能としたが、このような態様に限定されない。例えば、角度調整機構43を設けず、カメラ30の角度調整を不能に形成してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、遮光部42aを設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、遮光部42aを設けなくてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、スマートフォン等の端末50を用いてカメラ30の操作を行う例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、端末50に代えて、無線通信可能なカメラ30専用のリモコン等を用いてカメラ30の操作を行うようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、操作部(端末50)を用いた無線通信により、カメラ30の操作を行う構成としたが、このような態様に限定されない。例えば、無線通信によるカメラ30の操作を不能に構成してもよい。この場合は、例えば、操作ボタン32により事前にカメラ30を起動させて、常時撮像可能にした状態でカメラ付き点検ミラー1を用いた点検を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 カメラ付き点検ミラー
10 操作棒
20 ミラー
30 カメラ
40 支持部
50 端末
【要約】
【課題】ミラー20及びカメラ30を用いた点検を好適に行うことができる点検ミラー及びカメラ付き点検ミラー1を提供する。
【解決手段】操作棒10と、前記操作棒10に設けられ、点検対象Aを映すように一側面側において入射した光の一部を反射し、かつ前記光の他の一部を前記一側面側から他側面側へ透過させるミラー20と、前記ミラー20の他側面側に設けられ、前記ミラー20を透過した光により撮像可能なカメラ30が配置される配置部(カメラ収容部42)と、を具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7