(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】衣服及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
A41D 31/18 20190101AFI20221005BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20221005BHJP
A41B 1/08 20060101ALI20221005BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20221005BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20221005BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20221005BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A41D31/18
A41D31/00 502B
A41D31/00 503E
A41B1/08
A41D1/00 Z
A41D1/02 E
A41D1/06 B
A41D27/00 Z
(21)【出願番号】P 2021188267
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2016143323の分割
【原出願日】2016-07-21
【審査請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2015-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266337
【氏名又は名称】サンコ テクスティル イシレットメレリ サン.ヴェ ティック.アー.シェー.
【氏名又は名称原語表記】Sanko Tekstil Isletmeleri San.Ve Tic.A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3Cadde,16400 Inegol - BURSA,Turkey
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ゼイレケ
(72)【発明者】
【氏名】バリス エルドガン オズデン
(72)【発明者】
【氏名】ファーティ コヌコルー
(72)【発明者】
【氏名】フィクレット メフメット アクヌルー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-045749(JP,U)
【文献】特表2008-531859(JP,A)
【文献】特表2013-544983(JP,A)
【文献】国際公開第2014/113207(WO,A1)
【文献】特開2013-151779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/18
A41D 31/00
A41B 1/08
A41D 1/00
A41D 1/02
A41D 1/06
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦糸(2)及び複数の横糸(3)が縦糸及び横糸の上部分と下部分を形成するパターンで織られた布地(F)を備え、
前記横糸は弾性糸を含み、
前記弾性糸は伸縮性のコアと前記コアを覆う非弾性のシース繊維とを有し、
布地の縦糸方向の弾性は5%から10%の範囲であり、
布地の横糸方向の弾性は15%から100%の範囲であり、
布地は斜文織またはデニムであり、
前記布地はバイアスカットされており、衣服(7)における横糸は衣服(7)の幅方向(WD)に対して角度(α)を有することを特徴とする、衣服(7)。
【請求項2】
前記衣服の幅方向(WD)に対する横糸の角度は、10~80度の範囲であり、好ましくは30~50度の範囲であり、更に好ましくは45度である、
請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記横糸方向における布地の弾性は、25~70%の範囲であり、更に好ましくは25~55%の範囲である、
請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記弾性糸は、第1弾性繊維及び前記第1弾性繊維よりも弾性の小さい第2弾性繊維を備える伸縮性のコアを有し、前記第1弾性繊維及び第2弾性繊維は混紡、撚り、或いは共押出により結合され、前記第1弾性繊維の伸長を制御する、
請求項1から3のいずれかに記載の衣服。
【請求項5】
前記弾性糸は、コアスパン糸、混紡のポリエステル又はポリアミド、撚りエラスタン糸のいずれかである、
請求項4に記載の衣服。
【請求項6】
前記布地は、80~500g/m
2(ASTM D3776による)、好ましくは200~400g/m
2の重さを有する、
請求項1から5のいずれかに記載の衣服。
【請求項7】
前記布地は、前記弾性糸に関して熱セットされていない、
請求項1から6のいずれかに記載の衣服。
【請求項8】
前記衣服は、レギンス、パンツ、短パン、シャツ、ポロシャツ、Tシャツ、セーター、ジャケット、ジーンズ及びその他の衣服のいずれかである、
請求項1から7のいずれかに記載の衣服。
【請求項9】
複数の縦糸(2)及び複数の横糸(3)がパターンに織られた布地を形成するように縦糸及び横糸を織るステップを備え、前記横糸(3)は弾性糸を含み、前記弾性糸は伸縮性のコアと前記コアを覆う非弾性のシース繊維とを有することを特徴とし、
縦糸方向の前記弾性が5%以上であり(ASTM D3107による測定―3回の家庭洗濯後の伸縮性)、横糸方向の弾性は15%以上である(ASTM D3107による測定―3回の家庭洗濯後の伸縮性)布地を形成し、
前記布地(F)はバイアスカットされており、衣服(7)に生成され、同衣服における横糸は、同衣服の幅方向に対して角度を有する、
請求項1から8のいずれかに記載の衣服を生産する方法。
【請求項10】
前記衣服(7)の幅方向(WD)に対する横糸(3)の角度(α)は10~80度の範囲であり、好ましくは30~50度、更に好ましくは45度である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記弾性糸の弾性を制御するために前記布地の熱セットを行う工程は除いた、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記縦糸方向における弾性は7%以上であり、好ましくは10%である(修正ASTM D3107による―3回の家庭洗濯後の(伸縮性))、
請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の製品、及び衣服の生産工程に関する。特に、本発明の衣料品はバイアスカットされた布地からなる。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の分野においては、一般的に、(これらに限られないが)特にジーンズ、ジャケット、ズボン、短パン、スポーツ用衣類等に対して、性能が非常に重要視されつつある。性能とは、高い弾性、優れた復元性、整形性、フィットのよさ、強度等を意味する。このため、織物における縦糸及び横糸の性能は非常に重要であり、弾性や快適性に関しては特に重要である。
【0003】
長年にわたって、弾性織物はユーザに人気が出てきており、弾性織物は、着心地が非常に快適である一方で、その外観や性能がニットの織物の外観や性能よりも優れている。弾性布地を生産するためには、弾性糸が使用される。弾性糸は見た目が美しいことに加え、弾性機能を付与する。伸縮性の布地を生産する最も一般的な方法として、横糸伸縮性の布地がある。横糸伸縮の布地は非弾性の縦糸と弾性の横糸とを有する。これらの布地においては、異なる種類の弾性横糸、例えばコアスパンエラスタン糸、撚りエラスタン糸等が使用される。横糸伸縮の布地は、縦糸方向には伸縮せず、通常快適であるが、体の動きに合わせないため、その快適性のレベルは長期間の使用においては十分でない。
【0004】
この問題を解決するため、いくつかの種類の布地が開発されている。例えば、縦糸伸縮の布地や、いわゆる「バイ・ストレッチ」の布地、つまり縦糸及び横糸の双方向において伸縮性のある布地等である。この双方向の伸縮性、つまり伸長性は、縦糸及び横糸方向に弾性糸を有することにより得られる。
【0005】
しかし、これらの種類の布地には欠点もある。
【0006】
縦糸伸縮の布地は、エラストマーの目ムキを生じさせ得る、つまり布地においてむき出しの弾性繊維が露出する。実際、当該公知の技術分野では、縦側(縦糸方向)において高い伸縮性を有する布地をつくることは、ロープ染色におけるコアスパン糸の品質の問題があることから、可能でない。
【0007】
本技術分野において公知のバイストレッチ布地もまたいくつかの問題がある。例えば、布地の伸びや伸長後の復元力が小さいこと等である。
【0008】
別の問題としては、弾性の大きいバイストレッチの布地の性能が良くないことである。伸長と復元のサイクルを何回か繰り返すと、公知の布地では元の状態を維持することができなくなる。布地は原形や元の外観を失い、巻き上がり、しわ、ねじりが生じるため、かかる布地でつくった衣類は短期間で廃棄せざるを得なくなる。
【0009】
デニム生地等、公知のバイストレッチの布地について問題なのは、適度なバランスの物理的特性をもち、衣類として所望の視覚的且つ感触的な美しさを備えることができ、伸縮性、復元性(つまり、伸長又は伸縮された後の布地の拡張が限定的であること)、そして快適性に優れた布地を得ることは実に困難であることである。
【0010】
例えば、大量の弾性糸を用いた布地は、美しさが、特に伸びによって失われるという問題が生じ得る。一方で、弾性が小さい布地は日常生活では着心地がよくない可能性がある
。更に、伸縮性の布地を長期にわたって使用することにより、布地の復元力を損ない、布地の伸びの原因となる。デニム生地等の公知の布地の別の問題として、体の保持力が弱い、つまり体の整形力に乏しいことがある。
【0011】
上記問題を解決するためいくつかの解決策が提案されている。
【0012】
WO2013/148659は、伸縮のしすぎを避けるため、コアスパン弾性地糸と、別のコントロ
ール糸とを備える織物を開示する。コントロール糸は、隣接する弾性コアスパン地糸によって布地内に隠されている。
【0013】
US2012/0244771は、伸縮可能なコアと、シースのスパン短繊維を有する弾性構成糸を開示する。コアは弾性繊維と弾性繊維の周りに緩く巻き付けられ伸縮を制御する非弾性繊維とからなる。上記の開示された解決手段によれば、バイストレッチ繊維に与えられる弾性(つまり伸縮性)は非常に低く、縦糸方向では約10~12%、横糸方向では約17~20%である。
【0014】
WO2008/130563は、弾性繊維の周りに緩く巻き付けられた非弾性繊維からなるコアを有
する弾性糸を開示する。
【0015】
WO2012/062480は、本願出願人であるSanko Tekstilによって出願され、弾性伸縮コアとシースの非弾性の短繊維とを有する弾性構成糸を開示する。同コアは共押出、混紡、又は撚りによって互いにくっ付けられた弾性繊維とそれより弾性の小さい弾性繊維とからなる。弾性の小さい方の繊維は伸縮を制御し、弾性が高く復元力が非常に優れた単一の繊維として動くように復元性を提供する。
【0016】
WO2009/022883は、バイアスカットされた布地から生成された衣服を開示する。この文
献により解決される問題は、ゴム又は弾性糸を含む弾性繊維でつくられたぴったりとした衣服の代わりを提供することである。クレームされている解決手段によれば、バイアスカットされた布地(非弾性)、つまり隣接する二つの横糸の上部分を連結する対角線が略水平になるように裁断された布地を使用する。
【0017】
バイアスカットされた布地から得られる衣服は、GB448829によっても知られており、同文献は、胸のポケット5が少なくともその一部において「バイアスにカットされた」布地で作られているブラジャーに関する。
【0018】
US6800159は、左バイアス及び右バイアスと交互になったバイアスカットの布片を組み
合わせることによりバイアスカットの布地を生産する方法を開示する。
【0019】
しかし、上述した、復元力、使用快適性、そして布地の保持/整形力の問題は、特に、いわゆるスキニー又はスーパースキニーモデルタイプの製品、つまりユーザの体に衣服全体(または略全体)がぴったりとくっつくタイプの製品である場合、依然として残る。
【0020】
上記問題に鑑みると、高い弾性及び美しさの双方を満たす新たな衣服のニーズがある。例えば、市場においては、保持力及び復元性が高く、伸びてしまうことが少なく、見た目や感触の美しさに優れた新たな布地のニーズがある。
【0021】
更に詳しくは、復元性が向上し、体の保持力が向上し、体の動きに合わせられるデニム等の新たな衣服のニーズがある。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、先行技術の課題を解決するものであって、保持力が向上し、動きの自由度が高く、よってきつい感じや不快感を防ぐことができる衣服及び物品を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、保持/整形力を高め、復元性が向上し、伸びてしまうことが少ない等の性能の良さと美しさとを兼ねそろえた服及び一般品を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、上述の物品、つまり衣服を生産する工程を提供することである。
【0025】
これら及びその他の目的は、請求項1に記載の衣服であって、請求項10に記載の方法により生産可能な衣服により達成される。
【0026】
よって、本発明は、複数の縦糸(2)及び複数の横糸(3)が縦糸及び横糸の上部分と下部分を形成するパターンで織られた布地(1,6)を備え、横糸は弾性糸(3)を含み、同弾性糸は伸縮性のコアと同コアを覆う非弾性のシース繊維とを有し、布地の縦糸方向の弾性は5%以上、好ましくは7%以上であり(ASTM D3107による測定―3回の家庭洗濯後の伸縮性)、布地の横糸方向の弾性は15%以上であり(ASTM D3107―3回の家庭洗濯後の伸縮性)、布地はバイアスカットされており、物品における横糸は物品(6)の幅方向(WD)に対して角度(α)を有する、物品を対象とする。
【0027】
本発明の一の観点によれば、衣服の幅方向に対する横糸の角度αは、10~80度の範囲であり、好ましくは40~50度、更に好ましくは約45度である。
【0028】
好適には、全て又は略全ての横糸は弾性糸である。
【0029】
本発明に適した弾性糸は、伸縮性糸である。伸縮性の糸は公知のものであり、伸長した後に元の長さまで(或いは可能な「伸び」によりほぼ元の長さまで)復帰する糸である。第1種類の伸縮性糸は破損することなく18~25%まで伸長可能な糸であり、例えばT400、PBT及びこれに類似の糸である。第2種類の適した伸縮性糸は、破損することなく60%~80%まで伸長可能な糸である。例としては、Lycra(登録商標)、エラス
タン、Lastol(登録商標)、Dow XLA(登録商標)、スパンデックス、ポリウレタン、及
びこれに類似の糸である。
【0030】
弾性糸は、コアスパン糸であってもよい。コアスパン糸は縦糸又は横糸、或いは双方に使用される。
【0031】
好適な弾性コアスパン糸は、WO2008/130563やWO 2012/062480に開示されている。
【0032】
本発明の好適な実施形態によれば、弾性糸は、第1弾性繊維及び同第1弾性繊維よりも弾性の小さい第2弾性繊維を備える伸縮性のコアを有し、第1繊維及び第2繊維は混紡、撚り、或いは共押出により結合され、第1繊維の伸長を制御する。第1繊維及び第2繊維は、上述した出願に開示されているように、例えばWO2012/062480の9及び10ページで
記載されているように、結合される。好適な実施形態において、第1及び第2繊維は混紡され、結合点の数はメートル当たり50~200の範囲内である。別の実施形態においては、第1及び第2繊維は撚りにより結合され、メートル当たりの撚り数は200~800の範囲内であり、好適には300~600の範囲内である。
【0033】
好適には、弾性コアスパン糸は、4Ne~100Ne、好適には10Ne~60Ne、更に好適には14Ne~40Neの範囲のNe番手を有する。
【0034】
好適な布地を
図2及び
図3に例示する。これらの図は、それぞれ、3/1RHT織と斜文織とを示す。しかし、本発明はこれらの織物に限定されない。例えば、2/1斜文織、破れ斜文織、ジグザグ斜文織、逆綾織等、多様な異なる織り構造で使用してもよい。
【0035】
本発明において使用可能なその他の織り構造は、本願出願人が出願した、PCT/EP2014/066384、PCT/EP2014/066191、及び WO2011/104022等に開示されている。
【0036】
好適な実施形態によれば、布地は、80~500g/m2(ASTM D3776による
)、好ましくは200~400g/m2の重さを有する。
【0037】
本発明の物品として好適な布地はデニム生地である。
【0038】
実施形態において、布地は仕上げの工程を施すが、弾性糸の通常の熱セット処理は施さない。熱処理、つまり布地の熱セットは、従来の布地の生成工程としてよく知られた工程であり、糸の弾性コアのエラストマーのためのセッティング温度まで布地を加熱することにより、織成後の弾性布地を寸法的に安定させるのに利用される。例えば、Lycra(登録
商標)の熱セット温度は約180℃である。本発明の工程においては、通常、伸縮加工にあるように、より低い温度の熱処理、例えば110℃での熱処理を行う。
【0039】
本発明の一の観点によれば、縦糸方向(Ewarp)における弾性は、5%以上であり、好ましくは7%以上であり、好ましくは10%~100%の範囲、好ましくは15%~45%の範囲、更に好ましくは20%~35%の範囲、最も好ましくは25%~35%の範囲である(修正ASTM D3107による―3回の家庭洗濯後の(伸縮性))。本発明の一例による観点によれば、横糸方向(Eweft)における弾性は、15%以上であり、好ましくは20%以上であり、更に好ましくは50%以上である。Eweftは、好ましくは15%~100%の範囲、好ましくは30%~80%の範囲、更に好ましくは30%~65%の範囲、最も好ましくは35%~65%の範囲である(修正ASTM D3107による―3回の家庭洗濯後の(伸縮性))。
【0040】
本発明の好適な実施形態においては、糸のコアは上述のように混紡又は撚られ、布地は仕上げの工程が施されるが弾性糸のための熱セット処理は行われない。
【0041】
驚くべきことに、本発明による弾性織物は、バイアスカットされた場合、その弾性が飛躍的に向上することが分かった(ASTM D3107による%)。特に、弾性横糸と非弾性縦糸とを用いることにより、バイアスカットされた布地は極めて高い弾性が付与されることが分かった。縦及び横方向における実際の弾性の値は、布地において縦糸方向の弾性が横糸方向に比してはるかに小さいにも関わらず、非常に近い、つまりほぼ同じであることが分かった。
【0042】
一つの観点において、本発明は、縦糸方向及び横糸方向の双方においてコアスパンタイプの弾性糸、つまり布地全ての糸が弾性糸を備える、弾性織物を提供する。
【0043】
本発明により、縦及び横方向において同等の弾性の値を持つ布地という長年のニーズが解消される。かかる布地は従来入手できなかった。布地において弾性の高い縦糸を用いると、弾性コアの目ムキが生じると共に、布地におけるその他の問題も生じていた。
【0044】
これは、従来技術の一方向のストレッチやバイストレッチの布地を超える極めて重大な効果がある。上記先行技術の布地の場合、アンジュレーションやねじり等視覚的なダメージを受けることなく、本発明においてクレームされた布地と同等の高い伸縮作用に耐える
ことができなかった。
【0045】
別の効果としては、本発明に係る衣服は公知の布地に比して体の保持力(又は整形力)が高められることが分かった。
【0046】
本発明の布地の別の効果としては、少なくとも幅方向(WD)、そした可能であれば縦(VD)方向における弾性が、布地のバイアスカットによって向上するため、衣服の復元力が向上し、伸びてしまうことが少なくなる等の効果が得られる。
【0047】
よって、本発明の布地は伸びきったり突っ張ったりすることはないため、復元力の欠如や伸びの増加、バッギング等の性能のダメージや欠陥を防ぐことができる。
【0048】
例えば、いわゆる「スーパースキニー」服において、服の裁断は通常の体のサイズに比して小さい。よって、スーパースキニー服を着用するだけで、その服の生地が伸びてしまう。このことに鑑み、通常の使用によってスーパースキニー服の生地は伸びすぎてしまう可能性があり、生地に対するダメージやバギング(膝や肘等)の原因となる。別の問題として、弾性布地がユーザの体に密着し過ぎて、血行の問題が生じる可能性がある。
【0049】
本発明の布地によりこれらの問題を解消する。特に、本発明の布地は人間の皮膚に合わせて動くことができる、つまり人間の皮膚と同様に動くことができるため、これらの問題を回避することができる。本発明は更に以下の図面を参照して、例示であって限定する意図ではない実施形態及び本発明の特徴について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1A】
図1Aは、先行技術に係る標準的な裁断の布地を用いた衣服の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、先行技術に係るバイアスカットの布地を用いた衣服の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に適した織り構造の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に適した織り構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、物品、好適には衣服に関し、例えば、複数の縦糸と複数の横糸とが上部分と下部分を形成するようなパターンに互いに織り込まれている布地からなる生地に関し、横糸は弾性糸を含み、同弾性糸は伸縮可能なコアと同コアを覆う非弾性のシース繊維を有することを特徴とし、布地の縦糸方向の弾性は5%以上、好ましくは7%以上であり(ASTM D3107による測定―3回の家庭洗濯後の伸縮性)、布地の横糸方向の弾性は15%以上(ASTM D3107による―3回の家庭洗濯後の伸縮性)であり、布地はバイアスカットされたものである。
【0052】
ここで用いる用語「弾性糸」は、弾性繊維を備える糸であって、ラップやシースで覆われているもの、すなわちコアスパン糸、混紡糸、撚り糸、ポリエステル(pes)、ポリアミド(pa)、その他全ての合成繊維であって、織物に弾力性を付与するものである。
【0053】
弾性繊維に適した繊維は、エラスタン(例えば、Lycra(登録商標)、DORLASTAN(登録商標))、スパンデックス(RadicciSpandex Co)、lastol (登録商法)(Dow Chemical XLA)等のポリウレタン繊維である。
【0054】
好適な実施形態によれば、弾性コアは少なくとも第1弾性繊維の伸長を制御する第2繊維を備える。第2の制御繊維に適した繊維は、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン
66、ナイロン612等)等のポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン、混合物やその共重合体、PBTや複合糸、つまりPBT/PET及びPTT/PET繊維等のエラストマルチエステル(elastomultiester)である。シースに適した短繊維は、ポリエステル繊維、天然繊維、好ましくは染色可能な綿繊維である。
【0055】
本発明の好適な弾性糸は、WO2012/06248に開示されている。これら全ての糸には、コアの二つの繊維が撚られており、撚り数はメートル当たり200以上であり、好適にはメートル当たり300~600の範囲であり、二つの繊維は単一の繊維として伸長及び収縮する。
【0056】
図1Aは、標準の裁断でつくられた先行技術に係るズボンである衣服1を示す。衣服の布地は、横糸が布地の幅方向(WD)つまり横方向に延びていることを強調するように簡略化した拡大図で衣服1上に示されている。公知の衣服では、縦糸2は衣服1の下部4から上部5へ縦方向に延びている。
【0057】
図1Bでは、衣服7は、バイアスカットされた布地でつくられており、同図に示すように横糸3は縦糸2に直交している。衣服7は、図中の衣服の略横方向に左から右へ延びる幅方向WDを有する。
図1A及び
図1Bのズボンの場合、方向WDは衣服の上側、つまりウエストバンド6に平行になるように示されている。
【0058】
本発明によれば、衣服7のバイアスカットされた布地の少なくとも横糸3は弾性糸である。布地の縦糸方向の弾性、つまり縦糸2の方向に伸長する場合は、好ましくは7%以上であり、布地の横糸方向の弾性、つまり横糸3の方向に伸長する場合は、15%以上である。本記載においては、異なる基準が示されない限り、弾性の値はASTM D3107
-3回の家庭洗濯後の伸縮性)で弾性を測定することにより得られる。
【0059】
後述するように、布地の縦糸方向の弾性はバイアスカットされた布地の縦方向VDにおける弾性とは異なる。同様に、布地の横糸方向の弾性はバイアスカットされた布地の幅方向WDにおける弾性とは異なる。本発明の好適な実施形態によれば、衣服の幅方向WDに対する横糸3の角度αは10~80度の範囲であり、好適には30~60度の範囲である。
図1Bに示すように、角度αは左から右、横糸から幅方向WD、つまり横方向に測定される。
【0060】
既述したように、本発明は多くの布地に適用可能であり、特に縦糸及び横糸が互いに約90度の角度で裁断されている布地に適用可能である。適した布地は
図2及び
図3に例示し、それぞれ3/1RHT織と斜文織とを示す。しかし、本発明はこれらの織物に限定されない。例えば、2/1斜文織、破れ斜文織、ジグザグ斜文織、逆綾織等、多様な異なる織り構造で使用してもよい。
【0061】
以下の表1は、上述のように、ノーマルカット、つまり標準的布地に対するバイアスカットの布地の弾性に関して、弾性横糸の予想外の効果を示す。試験された布地においては、縦糸は剛性糸からなり、横糸つまり全ての横糸は弾性がある。
【0062】
元の状態の布地は縦糸及び横糸が90度の角度を形成する。布地はカットされ、試験用の、45度の角度でバイアスカットされたサンプルを提供する。換言すると、バイアスカットされた布地の縦糸は、ラインWDに対し45度の角度αを有する。試験に用いられるサンプルにおいては、WDは試験に用いられる布片の幅方向を規定するラインである。
【0063】
表1に示すように、同布地は、バイアスカットされた場合、縦糸に弾性がないのにも関
わらず、縦方向の弾性が飛躍的に増大する。
【0064】
【0065】
物品45203 45901 及び 98704に使用される糸の特徴は、以下の表に列挙する。
【0066】
上記布地の弾性(つまり伸長性)は、ASTM D3107-(3回の家庭洗濯後の伸
縮性)によって測定される。
【0067】
【0068】
本発明の実施形態によれば、横糸3に加え、縦糸2も弾性糸である。弾性縦糸は横糸と同じであっても異なっていてもよい。好適な実施形態においては、縦糸の弾性(つまり、上記方法により測定された伸長性)は横糸の弾性よりも小さい。
【0069】
以下の表3は、弾性の縦糸及び横糸を有する布地においてバイアスカットされた技術的効果を示す。
【0070】
【0071】
表3に示すように、弾性はバイアスカット後双方向において増大する。表3で用いられる布地の特性は以下の表4に記載している。
【0072】
【0073】
弾性(つまり伸長性)は、ASTM D3107-伸縮性(3回の家庭洗濯後)によっ
て測定された。
【0074】
好適な実施形態においては、本発明に係る弾性織物は、縦糸方向(Ewarp)において7%から100%超の範囲の弾性、好ましくは20%~70%、更に好ましくは25%~55%乃至60%の弾性を有する。好適な実施形態において、横糸方向(Eweft)において15%から100%超の範囲の弾性、好ましくは30%~80%、更に好ましくは40%~65%の弾性を有する。
【0075】
本発明の布地によって性能の向上が得られる。実際、本発明の布地は人々が日常生活において必要とする以上に弾性がある。この場合、日常的使用においては布地の弾性や伸長性を全て用いる必要はない。よって、本発明の布地は伸長しすぎたり突っ張っり過ぎたりしないため、復元力が損なったり、伸びてしまったり、バギングする等の性能のダメージや欠陥を防ぐ。
【0076】
例えば、いわゆる「スーパースキニー」服において、服の裁断は通常の体のサイズに比して小さい。よって、スーパースキニー服を着用するだけで、その服の生地が伸びてしまう。このことに鑑み、通常の使用によってスーパースキニー服の生地は伸びすぎてしまう可能性があり、生地に対するダメージやバギング(膝や肘等)の原因となる。本発明の衣服はこれらの問題を解消する。特に、本発明の布地は人間の皮膚と同様に動くことができ
るため、これらの問題は回避される。
【0077】
好適な実施形態において弾性コアスパン糸は、英国式の綿番手で、8Ne~90Ne、好適には10Ne~80Ne、更に好適には12Ne~60Neの範囲の番手である。
【0078】
好適な実施形態の弾性織物は、重さが、ASTM D3776/96による洗濯後)3~20oz/yard2の範囲であり、好ましくは4 ~15oz/yard2の範囲であ
り、更に好ましくは7 ~14oz/yard2の範囲である。
【0079】
特に好適な実施形態において、本発明のバイストレッチの布地はデニム生地である。
【0080】
本発明による弾性織物は、縦糸及び横糸を織り込み、織物が少なくとも横糸方向に弾性があり、弾性糸は伸長可能なコアと同コアを覆う非弾性のシース繊維を有し、横糸方向における布地の弾性は15%以上であることを特徴とする工程によって生産される。
【0081】
このようにして得られる布地はバイアスカットされ、最終的には衣服に縫製されるカット布片を提供する。
【0082】
本発明の好適な実施形態において述べたように、布地は熱セットされない、つまりその弾性を所定の値にセットする熱処理を施されない。本発明の弾性糸を用いた場合、特にWO
2012/062480を参照して開示された弾性糸を用いた場合、結果として得られる布地は熱セットしなくてもカールやねじり等の問題を生じさせない。しかし、上述のように、本発明の布地は選択的に熱処理を施すことも可能である。
【0083】
本発明のバイアスカットされた布地は衣服、つまり布製品を生産するのに適している。本発明の弾性織物を備え得る衣服として、レギンス、パンツ、短パン、シャツ、Tシャツ、セーター、ジャケット、ジーンズ及びその他の衣服等が可能である。