(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】給水スパージャの修理
(51)【国際特許分類】
G21C 19/02 20060101AFI20221005BHJP
G21C 15/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G21C19/02 050
G21C15/02 K
(21)【出願番号】P 2021503165
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 US2019043337
(87)【国際公開番号】W WO2020023691
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-18
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー、ケヴィン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ランダーズ、ジュシュア、シー
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04859403(US,A)
【文献】特開2010-237212(JP,A)
【文献】特開2002-323588(JP,A)
【文献】特開2009-031281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/00-15/28
G21C 19/00-19/50
23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を運ぶためのパイ
プ上の少なくとも1つの損傷ノズ
ルの部位を修理するためのクラン
プであって、
前記パイ
プ表面の前記部位の上に取り付けるように構成されたハウジン
グであって、前部、側部、上部、後部、および前記前部を貫く開口部を有し、前記パイプからの液体が前記開口部を通って流出可能である、ハウジングと、
前記ハウジングと共に内部チェン
バを画定する底面であって、設置されると前記部位と整列する開口部を有する底面と、
前記損傷ノズ
ルまたは交換ノズ
ルのうちの1つを前記ハウジン
グ内の所定の位置に固定するための少なくとも1つの
固定部材と、
を備
え、
前記固定部材が、前記損傷ノズルを前記ハウジング内の安定した位置に固定するべく、前記損傷ノズルと接触する複数のくさびを備える、クラン
プ。
【請求項2】
前記底面が、漏れがないように前記ハウジングを封止するべく、前記パイ
プの凸状の曲面と相補的に接触するための凹状の曲
面を有する、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項3】
前記くさ
びが、前記損傷ノズ
ルの各側部において少なくとも3つの接
点を提供するべく、前部くさ
び、側部くさ
び、後部くさび、および上部くさ
びのうちの2つ以上の組み合わせを備える、請求項
1に記載のクラン
プ。
【請求項4】
前記くさびが上部および後部のくさびを備え、さらに前記上
部および後
部のくさびのそれぞれと前記ハウジン
グとの間に配置されたば
ねを備えており、前記くさ
びが付勢されて前記ノズルの移動時に前記損傷ノズ
ルとの接触が維持される、請求項
3に記載のクラン
プ。
【請求項5】
前記損傷ノズ
ルが曲面を有しており、前記前部くさ
びが側方
部および前記損傷ノズルの前記曲面と相補的に接触するように構成された湾曲
部を備える、請求項
3に記載のクラン
プ。
【請求項6】
前記パイ
プ上の前記部位は損傷ノズ
ルが取り外された開口
部であり、前記固定部材が前記交換ノズ
ルを位置付けるための前記開口部を囲む支持リン
グを備える、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項7】
前記交換ノズ
ルが前記ハウジン
グ内部に一体的に機械加工されており、設置されると前記ハウジングのオリフィスと整列するノズル出
口を有する、請求項
6に記載のクラン
プ。
【請求項8】
前記パイプを含
む容器壁への液体の衝突を防止するべく、前記ハウジン
グの前記後部に取り付けられた後部ガードプレー
トをさらに備える、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項9】
前記ハウジングおよび底
面を一緒に前記パイ
プ上に係止するためのラッ
チをさらに備える、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項10】
前記ハウジン
グの前記前部がラッチ開口
部を画定し、前記ラッ
チが脚と前記脚の上部から延びるアー
ムとを備えており、前記ラッチはさらに、前記脚が前記底
面を貫通しており、前記アームが設置され回転されると前記ラッチ開口
部を貫通して外へ延びることにより、前記ハウジン
グおよび底
面を一緒にパイ
プ上に係止するように配置されている、請求項
9に記載のクラン
プ。
【請求項11】
前記ハウジン
グから下向きに延びる一対の
脚をさらに備え、前記脚が、細長い前方
部、パイプ支持
部、および前記前方部と支持
部とを接合する横方向バ
ーを備え、前記支持
部は設置されると前記パイ
プと接触するように構成されている、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項12】
前記パイ
プはヘッダーパイプであり、前記
損傷ノズ
ルは液体で充填された容器に浸漬されたスパージャノズルである、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項13】
前記容器は原子力発電所の一部である、請求項
12に記載のクラン
プ。
【請求項14】
前記ハウジングがその前記前部側に位置するオリフィスプレー
トを有しており、前記オリフィスプレートが前記ノズ
ルの出口と整列する開口部(20、85)を有している、請求項1に記載のクラン
プ。
【請求項15】
前記ハウジング、オリフィスプレー
ト、および底
面を一緒に前記パイ
プ上に係止するためのラッ
チをさらに備える、請求項
14に記載のクラン
プ。
【請求項16】
前記ハウジン
グの前記前部がラッチ開口
部を画定し、前記ラッ
チが脚と前記脚の上部から延びるアー
ムとを備えており、前記ラッ
チはさらに、前記
脚が前記底
面を貫通しており、前記アー
ムが設置され回転されると前記ラッチ開口
部を貫通して外へ延びることにより、前記ハウジング、前記オリフィスプレー
トおよび底
面を一緒に前記パイプ(12)上に係止するように配置されている、請求項
15に記載のクラン
プ。
【請求項17】
液体を運ぶためのパイプ上の少なくとも1つの損傷ノズルの部位を修理するためのクランプであって、
前記パイプ表面の前記部位の上に取り付けるように構成されたハウジングであって、前部、側部、上部、後部、および前記前部を貫く開口部を有し、前記パイプからの液体が前記開口部を通って流出可能である、ハウジングと、
前記ハウジングと共に内部チェンバを画定する底面であって、設置されると前記部位と整列する開口部を有する底面と、
前記損傷ノズルまたは交換ノズルのうちの1つを前記ハウジング内の所定の位置に固定するための少なくとも1つの固定部材と、
を備え、
前記固定部材が、前記損傷ノズルまたは前記交換ノズルの各側部において少なくとも3つの接点を提供するべく、前記損傷ノズルまたは前記交換ノズルに接触し、支持するように構成されたくさびを備える、クランプ。
【請求項18】
液体を運ぶためのパイプ上の少なくとも1つの損傷ノズルの部位を修理するためのクランプであって、
前記パイプ表面の前記部位の上に取り付けるように構成されたハウジングであって、前部、側部、上部、後部、および前記前部を貫く開口部を有し、前記パイプからの液体が前記開口部を通って流出可能である、ハウジングと、
前記ハウジングと共に内部チェンバを画定する底面であって、設置されると前記部位と整列する開口部を有する底面と、
前記損傷ノズルまたは交換ノズルのうちの1つを前記ハウジング内の所定の位置に固定するための少なくとも1つの固定部材と、
を備え、
前記パイプ上の前記部位は損傷ノズルが取り外された開口部であり、前記固定部材が前記交換ノズルを位置付けるための前記開口部を囲む支持リングを備え、
前記交換ノズルが前記ハウジング内部に一体的に機械加工されており、設置されると前記ハウジングのオリフィスと整列するノズル出口を有する、クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所で使用される給水スパージャに関し、より具体的には、損傷した給水スパージャおよびノズルを修理するためのクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
原子力発電所で使用される例示的な給水パイプシステムでは、発電所の運転の様々な局面において複数のパイプが使用される。一部のパイプ、例えば、沸騰水型原子炉に見られるパイプは、水の分配のためのノズルを含む。例示的な発電所では、パイプの或る特定のセグメントから約112個の給水ノズルが延びる場合がある。原子炉容器の給水スパージャは給水システムに組み込まれている。給水スパージャは、給水ノズルに挿入された中央のサーマルスリーブにおいて原子炉圧力容器に取り付けられ、両端で容器壁にピン留めされている内部の非圧力境界アイテムである。これは、アメリカ機械学会(ASME(登録商標))コードによる非構造性の固着具であり、容器に間接的に取り付けられている。給水スパージャの主な機能は、原子炉圧力容器内に給水の流れを均一に分配することである。容器クラッディングの熱疲労の可能性を最小限に抑える目的で、給水スパージャノズルは冷たい水が原子炉圧力容器壁に衝突しないように流れを容器の中心に差し向ける。
【0003】
停止状態の核原子炉の目視検査により、原子炉圧力容器の上流の給水パイプに使用されている給水スパージャの隣接するノズルの「壁貫通損傷」が明らかになった。破損は、給水スパージャパイプ内の異物が、発電所(プラント)運転中に一定期間にわたって給水スパージャパイプの壁、溶接アダプター、およびエルボに繰り返し衝撃を与えたことによって引き起こされた。
【0004】
現在の修理設計では、既存プラントのハードウェア変更が必要となり、放電加工などの水中機械加工を必要とする場合がある。このため、クランプまたは修理をインストールできなかった場合には、プラントのハードウェアが恒久的に変更され、運転停止期間または運転継続に関するリスクが増すことになる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の解決手段の例示的な目的は、原子力発電所で損傷した給水スパージャノズルを修復するための選択肢を概説することである。本明細書に記載の解決策は、損傷ノズルが定位置にとどまるノズルスタビライザークランプ、および損傷ノズルが取り外されるノズル交換クランプの実施形態を含む。
【0006】
様々な局面において、液体を運ぶためのパイプ上の少なくとも1つの損傷ノズルの部位を修理するためのクランプが提供される。クランプは一般的に、パイプ表面の当該部位の上に取り付けるように構成されたハウジングであって、前部、側部、上部、後部、および前部を貫く開口部を有し、パイプからの液体が開口部を通って流出可能なハウジングと、ハウジングと共に内部チェンバを画定する底面であって、設置されると当該部位と整列する開口部を有する底面と、損傷ノズルまたは交換ノズルのうちの1つをハウジング内の所定の位置に固定するための少なくとも1つの部材と、を有する。
【0007】
底面は、漏れがないようにハウジングを封止するべく、パイプの凸状の曲面と相補的に接触するための凹状の曲面を有することができる。
【0008】
固定部材は、損傷または交換ノズルの各側部において少なくとも3つの接点を提供するように成形され、好ましくは付勢されたくさびを備えることができる。様々な局面において、固定部材は、ハウジング内の安定した位置にノズルを固定するべく、損傷ノズルまたは交換ノズルと接触する複数のくさびを備えることができる。くさびは、損傷ノズルの各側部において少なくとも3つの接点を提供するために、前部くさび、後部くさび、および上部くさびのうちの1つまたは複数を含むことができる。様々な局面において、ばねが上部および後部くさびのそれぞれの間に配置されており、例えば様々なコンポーネントの振動、液体からの圧力、またはパイプが位置する環境内の温度の変化のためにノズルが移動する際に、損傷ノズルまたは交換用ノズルとの接触を維持するようにくさびを付勢することができる。様々な局面において、(損傷または交換)ノズルは曲面を有し、前部くさびはそれぞれ、少なくとも1つの側方部および損傷ノズルまたは交換ノズルの曲面と相補的に接触するように構成された湾曲部を含むことができる。
【0009】
様々な局面において、パイプ上の部位は損傷ノズルが取り外された開口部であり、固定部材は交換ノズルを位置付けるための開口部を囲む支持リングを備える。交換ノズルはハウジング内部に一体的に機械加工することができ、設置されるとハウジングのオリフィスと整列するノズルオリフィスを有することができる。
【0010】
クランプはさらに、パイプを含む容器壁への液体の衝突を防止するべく、ハウジングの後部に取り付けられた後部ガードプレートを含むことができる。
【0011】
様々な局面において、クランプは、ハウジングと底面を一緒にパイプ上に係止するためのラッチを含むことができる。ハウジングの前部がラッチ開口部を画定し、ラッチは脚および当該脚の上部から延びるアームを含むことができる。ラッチはさらに、脚が底面を貫通しており、アームが設置され回転されるとラッチ開口部を貫通して外へ延びることにより、ハウジングと底面を一緒にパイプ上に係止するように配置することができる。
【0012】
或る特定の局面において、ハウジングはその前部側に位置するオリフィスプレートをさらに含むことができ、オリフィスプレートはハウジング内のオリフィスと整列する開口部を有する。かかる局面において、ラッチがハウジング、オリフィスプレートおよび底面を一緒にパイプ上に係止することができる。ハウジングの前部がラッチ開口部を画定することができ、ラッチは好ましくは脚と当該脚の上部から延びるアームとを含み、ラッチはさらに、脚が底面を貫通しており、アームが設置され回転されるとラッチ開口部を貫通して外へ延びることにより、ハウジング、オリフィスプレートおよび底面を一緒にパイプ上に係止するように配置される。
【0013】
クランプは、ハウジングから下向きに延びる一対の脚を含むことができる。様々な局面において、当該脚は、細長い前方部、パイプ支持部、および前方部と支持部とを接合する横方向バーを備えることができ、支持部は設置されるとパイプと接触するように構成されている。
【0014】
様々な局面において、パイプはヘッダーパイプであり、ノズルは液体で充填された容器に浸漬されたスパージャノズルである。様々な局面において、容器は原子力発電所の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の特徴および利点は、添付図面を参照することによってより理解することができる。
【0016】
【
図1】給水ヘッダーパイプに取り付けられた損傷ノズルを修理するためのノズルスタビライザークランプ組立体の実施形態の一方の側の斜視図であり、一部を切り欠いて内部部品を示す。
【
図2】
図1に示すノズルスタビライザークランプ組立体の実施形態の別の側の斜視図である。
【
図3】給水ヘッダーパイプに取り付けられた、損傷ノズルを交換するためのノズルスタビライザークランプ組立体の代替実施形態の一方の側の斜視図である。
【
図4】給水ヘッダーパイプに取り付けられた、ノズルスタビライザークランプ組立体の別の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図4のノズルスタビライザークランプ組立体の上部を示す。
【
図6】
図5のノズルスタビライザークランプ組立体の側面図である。
【
図7】
図4のクランプ組立体の部品の分解図である。
【
図8】分かりやすいようにハウジングを取り外した、
図4のクランプ組立体の内部部品を示す。
【
図10】損傷ノズルの上に嵌合させたクランプ組立体の一部の拡大断面図である。
【
図11】
図10の損傷ノズルの上に嵌合させたクランプ組立体の一部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、および「the」に先導される単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形をも包含する。したがって、本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)、冠詞の文法上における対象物を表す。例として、「an element」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0018】
特許請求の範囲を含み、本願では、特段の指示がない限り、量、値または特性を表すあらゆる数字は、全ての場合において、「約」という用語により修飾されると理解されたい。したがって、数字と一緒に「約」という用語が明示されていない場合でも、数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の説明で記載されるすべての数値パラメータは、本発明に基づく組成物および方法が指向する所望の特性に応じて変わる可能性がある。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0019】
また、本明細書で述べるあらゆる数値範囲は、そこに内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記述された最小値1と最大値10との間の(最小値と最大値を内包)のあらゆる断片的部分を含むことを意図している。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。
【0020】
ノズルスタビライザークランプ 様々な態様において、この解決手段は、2個の損傷ノズルを定位置に残す場合に用いることができる。ノズルスタビライザークランプ10は、例えば、燃料補給床から遠隔操作で設置されるように設計された多部品から成るクランプとすることができる。この修理に使用される資材は、沸騰水型原子炉容器で使用可能な資材に関する業界ガイドライン(例えば、BWRVIP-84)に準拠する。ノズルスタビライザークランプ10は、クリティカルパスとなる設置時間を最小化し、容器コンポーネントの取り外しを妨げないように設計される。
【0021】
図1および
図2を参照すると、2個の損傷ノズルと共に使用するためのクランプ10の実施形態が示されている。クランプ10のハウジング16は、2個の損傷ノズル14’に嵌合する(図では1個だけが見える)。ハウジング16は、給水ヘッダーパイプ12の上に位置して内部チェンバ(
図10に示すチェンバ90など)を画定し、パイプを中心にして回転するのを阻止する機構を有している。ハウジング16からヘッダーパイプ12へのインターフェース部は、ヘッダーパイプ12の外形に厳密に合致し、漏れを最小限に抑えるように精密に機械加工される。シールなどの追加の機構を、漏れの可能性をなくすために組み込むことができる。図示したハウジング16の実施形態は、2つの損傷ノズル14’の間に仕切り板18を含む。仕切り板18は、各ノズル14’からの流れが、それぞれのノズル出口26に正しく差し向けられることを確実にする。ハウジング16は、ノズルをハウジング16内に固定するための部材を含む。固定部材は、ノズルに接触して安定化させるように構成されたくさび25および27など、1つまたは複数の特別に設計されたくさびとすることができる。様々な局面において、側部くさび25aおよび27aはノズル14’の一方の側部において互いに前後となる位置に配置することができ、側部くさび25bおよび27bはノズル14’のくさび25aおよび27aとは反対側の側部で互いに前後となる位置に配置される。
図1はハウジング16内にあるくさびを示し、
図2は分かりやすいようにくさびがまだハウジング16の外部にある状態で示すが、実際にはハウジング16内に配置されている。くさびは、例えば延長ポールに取り付けられた、燃料補給床または容器キャビティの上のブリッジから手動または油圧で操作されるツールを用いて、遠隔操作で配置または作用させることにより、既存のノズル14’の周りを締めてノズルの上部および後部のそれぞれの左側と右側で2点接触を提供することができる。くさび25a、bおよび27a、bの上部の穴は、ハウジング16の穴と整列して、ボルト、ピン、釘、ねじ、クリップなどの任意の適切な留め具を受け入れる。例示的な留め具46は、ハウジング16を通ってくさび27bに嵌入する留め具を示す。類似の留め具を各穴に挿入して、ハウジング内のくさびを損傷ノズル14’と接触する状態で固定する。
【0022】
前部ノズルスタビライザープレート24は、プレート24のオリフィス20がノズル14’の出口26と同心となるようにハウジング16の前部にボルト止めされる。ハウジング16の内部が見えるように、1個の前部スタビライザープレート24のみが示されているが、実際には、前部ノズルスタビライザープレート24は各損傷ノズル14’の前部に配置される。スタビライザープレート24の穴42は、プレート24をハウジング16に取り付けるボルトまたは任意の適切な留め具を受け入れる。スタビライザープレート24はまた、いくつかの特別に設計された遠隔操作で作用させるスタビライザーくさび22および23の穴44と整列する穴40を含んでおり、ノズル14’の前部下側に第3の接点を提供する。適切な留め具が整列した穴40および44を通されることにより、プレート24がくさび22および23に対して固定される。スタビライザーくさび22および23は、スタビライザープレート24の内側にあるノズル14’の隆起部分の下に配置される。すべてのくさび22、23、25、および27が作用すると、ノズル14’は、異物排除(FME)の観点から完全に捕捉され(すなわち、クランプ組立体の様々な部品および損傷ノズルは、パイプ12にクランプされたままになり、原子炉に落下しない)、流れおよび振動の観点からの安定化が果たされる(すなわち、クランプ組立体の部品および損傷ノズルは、所与の発電所においてヘッダーパイプ12およびノズル14に加わることが知られている力によっていずれかの部品またはノズルが緩むことを阻止するのに十分な強度で固定されているので、原子炉への落下が防止される)。単一の特別に構成されたくさびまたは上述のような複数のくさびで構成される固定部材は、ノズルの両側に少なくとも3つの接点を提供する。
【0023】
図2を参照すると、後部ガードプレート30は、ハウジングと原子炉圧力容器壁(図示せず)との間でハウジング16の背面に取り付けられる。後部ガードプレート30の主な機能は、原子炉圧力容器壁に冷水が衝突する可能性を阻止することである。また、後部ガードプレート30は、ハウジング16と底部締付装置32との間の固着点としての機能を果たす。
【0024】
底部締付装置32はヘッダーパイプ12の下方に設置され、ハウジング16および後部ガード30をヘッダーパイプ12にしっかりと固定する。底部締付装置32は、クランプ10組立体を一緒にしっかりと締める、いくつかの遠隔操作で作用させるラッチ36を含む。様々な局面において、ラッチ36は、アーム36aおよびアームに垂直な脚36bを有する。例示的な実施形態では、脚36bの端部は底部締付装置32から延び、アーム36aの端部はハウジング16の開口部34を貫通している。細長いポールの端部に取り付けられ、遠隔に配置された適切な公知のツールによって脚36bを回転させることにより、アーム36aは開口部34を出入りするように回転される。ナット38を脚36bの端部にねじ込んで、ラッチ36を定位置に固定する。
図1は、アーム36aの端部が開口部34を貫通して外へ延びるように回転された、係合位置にあるアーム36aを示す。クランプ10組立体の様々な留め具は、本明細書の後の部分で説明する解析を経て決定される、熱膨張を補償するための特定の値のトルクがかけられる。
【0025】
すべてのボルト連結部およびラッチ34は、FME防止を確実にし、その耐用期間中締まり具合が確実に維持されるように、制御機構が組み込まれている。
【0026】
設置用工具およびプロセス
この修理に関連する工具は、沸騰水型原子炉作業者に既知の通常の「停止スタイル」の工具である。工具はFMEのために硬化され、発電所の空気圧または水圧のいずれかによって駆動される。工具の送達には、ロープ、空気圧/水圧ライン、または小型のハンドリングポールを使う。工具および修理プロセスは、標準的な水中カメラシステムによって監視される。
【0027】
クランプ10のハウジング16は、遠隔作動ツールを用いて原子炉圧力容器内に下降され、損傷した給水スパージャノズル14’の上に配置される。ハウジングは、後部ガードプレート30および底部締付装置32が取り付けられるまで、ツールを用いて定位置に保持される。底部締付装置32はその後、原子炉圧力容器内に下降され、遠隔作動ツールを用いてヘッダーパイプ12の下方に位置付けられる。後部ガードプレート30も遠隔作動ツールを用いて設置される。3つの部品がすべて所定の位置に据え付けられた後、アーム36aを回転させて開口部34から外へ貫通させることによって、底部締付装置のラッチ34を作動させる。次に、ナット38を各ラッチの脚36bの上に配置する。かくしてクランプ10組立体がヘッダーパイプ12に確実に取り付けられ、送達ツールは取り外される。
【0028】
次に前部ノズルスタビライザープレート24が送達され、遠隔操作式工具によってハウジング16の前部にボルトで固定される。次にくさび22、23、25a、b、および27a、bを順次締めて、ノズルの係合および捕捉を確実にする。すべてのボルトおよび捕捉装置が正しく締められると、係止装置は係合状態になる。
【0029】
次に目視検査および「修理後」の撮影が実施され、文書化される。取り付けられたクランプ10の今後の検査は目視検査でよい。
【0030】
ノズル交換クランプ 様々な局面において、本明細書に提供される解決手段の実施形態は、損傷ノズル14’(2個が示されている)を取り外す場合に用いることができる。ノズル交換クランプ100は、ノズルスタビライザークランプ10について説明したものと同様の方法で、例えば原子炉の燃料補給フロアから遠隔操作で設置されるように設計された多部品から成るクランプである。ノズル交換クランプ100による修理に使用される資材は、例えばBWRVIP-84などの業界ガイドラインに適合することが知られている資材から選択される。クランプ100は、クリティカルパスとなる設置時間を最小化し、容器コンポーネントの取り外しを妨げないように設計される。シールなどの追加の機構を、漏れの可能性をなくすために組み込むことができる。
【0031】
クランプ100のハウジング56は、損傷ノズルが取り除かれた際に形成されたヘッダーパイプ12の穴50に嵌合する。ハウジング56は、給水ヘッダーパイプ12の上に位置し、パイプを中心にして回転するのを阻止する機構を有している。ハウジング56からヘッダーパイプへのインターフェース部は、ヘッダーパイプの外形に厳密に合致し、漏れを最小化するように精密に機械加工される。様々な局面において、ハウジング56は1つまたは複数の機械加工された交換ノズル62を含むことができ、損傷ノズルを取り外す際に各穴50の周りに形成することが可能な端部リング60など、当該ノズル62を固定するための部材の上に嵌合する。機械加工された1つまたは複数の交換ノズルは、例えば、その一体的な部分としてハウジング56内に組み込まれてもよく、または別体のものをハウジング56が設置される前に取り付けてもよい。ノズル62は、流体の流れのための出口58を有する。ハウジング56は、クランプ10のスタビライザープレート24に類似した前部プレートを有してもよく、または
図3に示すように前部が開放されていてもよい。前部プレートを使用する場合、ノズル62の出口58と整列するオリフィスが含まれる。
【0032】
様々な局面において、2個の損傷ノズルを交換する必要があり、かつ流れを元のように2つの異なる出口開口部58に分離することが決定された場合、ハウジング56にはそれら2つの穴の間に配置された、クランプ10の仕切り板18に類似する仕切り板(ハウジング56の内部が見やすいように一部だけが示されている)を含めることができる。仕切り板18は、各ヘッダーパイプ穴50からの流れが、それぞれのノズル出口58から前部プレート開口部またはオリフィスへと正しく差し向けられることを確実にする。2つの穴からの流れを分離しないと決定した場合には仕切り板を設けず、前部プレートにオリフィスを1つ設けるか、またはハウジング56の前部を開放することができる。仕切り板および1つまたは2つのオリフィスを設けることの必要性は、以下に説明するように、所与の発電所の諸条件下での流れ解析により決定される。様々な局面において、追加のハードウェアを必要としないように、ハウジング56の本体には既にオリフィスが機械加工されている。
【0033】
クランプ10内の後部ガードプレート30と類似の後部ガードプレート30は、ハウジング56と原子炉圧力容器壁(図示せず)との間でハウジング56の裏側に取り付けられる。後部ガード30の主な機能は、原子炉圧力容器壁に冷水が衝突する可能性を阻止することである。また、後部ガードは、ハウジング56と底部締付装置32との間の固着点としての機能も果たし、これもクランプ10の底部締付装置32と類似している。様々な局面において、後部ガードプレート30はハウジング56と一体であり、別個のアイテムではない。
【0034】
底部締付装置32はヘッダーパイプ12の下方に設置され、ハウジング56および後部ガードプレート30をヘッダーパイプ12にしっかりと固定する。底部締付装置32は、組立体を一体的にしっかりと締めるクランプ10のラッチと同様に、それぞれがアーム36aおよび脚36bから構成される、いくつかの遠隔操作で作動されるラッチ36を含む。組立体のハウジング56をパイプ12の上に保持するためのラッチ36および様々な留め具は、本明細書の後の部分で説明する解析を経て決定される、熱膨張を補償するための特定の値のトルクがかけられる。
【0035】
すべてのボルト連結部およびラッチは、FME防止を確実にし、その耐用期間中締まり具合が確実に維持されるように、制御機構が組み込まれている。
【0036】
この修理に関連する工具は、通常の「停止スタイル」の工具である。工具はFMEのために硬化され、プラントの空気圧または水圧のいずれかによって駆動される。工具の送達には、ロープ、空気圧/水圧ライン、または小型のハンドリングポールを使う。工具および修理プロセスは、標準的な水中カメラシステムによって監視される。
【0037】
様々な局面において、クランプ100のハウジング56は遠隔作動ツールを用いて原子炉圧力容器内に下降され、損傷した給水スパージャノズル穴50の上に配置される。様々な局面において、別個の交換ノズルが使用される場合、損傷ノズルを取り外す切断作業の際に穴50の周りに形成されたリング60に交換ノズル62が固定され、次いでハウジング56が交換ノズル62の上に位置付けられる。様々な局面において、交換ノズルはハウジング56に機械加工されてハウジング56と一体化されており、ハウジング56と共に穴50の周りのリング60の上へ下降させることができる。いずれの場合でも、ハウジング56は、後部ガード30(分離されている場合)および締付装置が取り付けられるまで、ツールを用いて定位置に保持される。分離されている場合に後部ガードが定位置に配置された後、底部締付装置32は原子炉圧力容器内に下降され、遠隔作動ツールを用いてヘッダーパイプ12の下方に位置付けられる。後部ガードプ30もまた、それが別個のアイテムであれば、遠隔作動ツールを用いて設置される。3つの部品(ハウジング、後部ガード、および底部締付プレート)がすべて所定の位置に据え付けられた後、底部締付装置のラッチ36をクランプ10のラッチと同様の方法で作用させる。かくして、クランプ100組立体がヘッダーパイプ12に確実に取り付けられ、送達ツールは取り外される。すべてのボルトおよび捕捉装置が正しく締められると、FME係止装置は係合状態になる。
【0038】
目視検査および「設置後」の撮影が実施され、文書化される。取り付けられたクランプ100の今後の検査は目視検査でよい。
【0039】
ノズルスタビライザークランプ10の代替的実施形態 スパージャノズルの修理の3つの主な要件は、比較的冷たい水が原子炉圧力容器へ衝突して疲労を引き起こす可能性を阻止すること、損傷ノズルのエルボを安定させること、および炉心エンタルピーの均一性を維持することである。
【0040】
クランプ10に関して上述したように、修理クランプは、1つまたは複数の損傷ノズル14’の上に嵌合して、各損傷ノズルを安定化し、給水流を向け直して制御することができる。
図4~
図11は、本明細書ではクランプ200と称される、クランプ10の代替的な実施形態を示す。
図4および
図5を参照すると、クランプ200は、ハウジング82、損傷ノズル14’毎のオリフィスプレート84、およびクランプ脚76を含む。図示する実施形態では、ハウジング82の上面はオプションとしてボス114を含み、これを貫通して留め具122がハウジング82内に延びることにより、損傷ノズル14’を支持するため特別に設計されたくさび92および88などのノズル固定部材を固定する。
【0041】
各オリフィスプレート84(2個が示されている)は、使用時にノズル14’の出口と整列する、好ましくは同心の開口部85を有する。オリフィスプレート84はボルト、ねじ、または任意の他の適切な公知の留め具などの留め具110によってハウジング82に取り付けられるが、留め具110はナットで固定され、好ましくは外周部112の中に隠される。オリフィスプレート84毎の2つの上部および2つの底部留め具110が図示されている。
【0042】
様々な局面において、脚76を設けることができる。脚76は、パイプ12の前をハウジング82から下向きに延びる比較的細長い前方部75と、前方部75に略平行で、使用時にパイプ12の下側の後方または前方部分と接触するように構成されたパイプ支持端部78と、前方部75と支持端部78とを接続してパイプ12の下側の一部分にまたがる横断バー77とを有する略J字形状とすることができる。ハウジング82の両側に1つずつ、少なくとも2つの脚76がある。
図6および
図7に示すように、各脚76の前方部75はハウジング82に一体的に取り付けられてもよく、またはハウジング82の前部の受けチャネル108を介してハウジング82に取り付けられる別個のアイテムであってもよい。部品が分離している実施形態では、チャネル108内での前方部75の回転を防ぐために、各前方部75は受けチャネル108の中で相補的係止面118と係合するための係止片116を含むことができる。例えば、係止片116の形態は、受けチャネル108内部表面の溝または凹状のくぼみなど、係止面118に対して相補的な輪郭を有するタブまたは他の適当な形状とすることができる。あるいは、前方部75に溝またはくぼみを設けてもよく、チャネルに溝またはくぼみに嵌合する突出部を設けてもよい。ボルトなどの適切な留め具110がチャネル108および前方部75の中へ延びることにより、脚76がハウジング82に係止される。好ましくはナットを用いて、留め具110を定位置に固定する。留め具110は外周部112によって隠される。
【0043】
図6および
図7を再び参照すると、クランプ200は、使用時に給水ヘッダーパイプ12上に取り付けられる、一体型流れ偏向シールド80付きのシールサドル70も含む。このシールサドル70は、漏れを最小限に抑えるために、ヘッダーパイプ12の輪郭面と接触し、厳密に合致するように構成された表面72を有するように正確に機械加工される。一体型流れ偏向シールド80は、任意の漏れ流れを原子炉圧力容器から遠ざけるように向け直して、冷水が原子炉圧力容器壁に衝突するのを防ぐ。クランプ10および100のハウジングには、接触面72を有するシールサドル70の正確な機械加工が施されうる。
【0044】
ハウジング82はシールサドル70の上に設置されるが、当該シールサドルはハウジングの床を形成し、その中に流れチェンバ90(
図10を参照)が画定されており、ヘッダーパイプ12からの流れをハウジング82に設置されたオリフィスプレート84を通るように向け直す。設置時にノズル14’が配置されるサドル内の開口部74を部分的に取り囲むシールサドル70の内部表面上には、様々な局面において、ノズル14’の後部接点を提供してノズル基部を部分的に支持するサドルバックストップ94を設けることができる。様々な局面において、ハウジング82は1つまたは複数の仕切り板18を含み、ハウジングを損傷ノズル14’毎に1つずつの2つ以上の別個のチェンバ90に分割する。仕切り板18は、各ノズル14’からの流れがそれぞれのノズル出口に正しく向けられることを確実にする。ハウジング82は上述の1つまたは複数の脚76によってヘッダーパイプ12にクランプされる。脚76および支持端部78によって、ハウジング82の移動および回転が阻止される。
【0045】
ハウジング82は、ノズルをハウジング内の定位置に固定する部材を収容する。例示的な部材としては、1つまたは複数の特別に設計されたくさびが含まれる。
図7~
図9は、クランプ200の内部コンポーネントを示す。例示的な後部くさび92および例示的な上部くさび88は上部と側部とを有し、損傷ノズル14’を安定させるように支持する。燃料補給床またはヘッダーパイプ12を含む容器の上方のブリッジから遠隔操作でくさびを設置し、既存のノズル14’の周りを締めることにより、当該ノズルの上部および後部それぞれで左側および右側の2点接触102および104を提供することができる。追加のノズル保持点は、ハウジング82ではなく、シールサドル70に設けることができる。くさび92および88は、ボルトなどの留め具122およびオプションとして外周部112を有するナットによって、ハウジング82内で定位置に保持される。後部および上部くさび92および88のそれぞれの上方では、ばね124がプレート126の間に配置される。取り付ける際に、くさび92および88を所望の点にてノズル14’との所望の接触度が得られるまで押し下げ、プレート126の調節によってばね124に予荷重を加えておくことにより、原子炉の耐用年数の間、周囲の環境の温度変化に関係なく、くさび92および88とノズル14’との接触をばね124によって促すことが可能になる。くさびの締まり具合およびばねへの負荷は、所与のプラントで経験された状態の測定値に基づいて、上述の1つまたは複数の入力を用いて計算される。例えば、ある期間にわたってノズル14が受ける振動スペクトルの測定値を用いて、接点の位置の範囲または最適位置、ばねへの負荷、および留め具の締まり具合を決定することができる。
【0046】
追加の前部くさび86はハウジング内でノズルを固定するための追加の部材を提供するものであり、ハウジング82内に配置され、留め具122およびナットにより遮蔽外周部112付きでオリフィスプレート84の内側に固着される。前部くさび86は、側方部96と、ノズル14’の一部の下に着座してノズル14’の前部下側に第3の接点106を提供する曲面98とを含む。
図10は、ハウジング82内の内部チェンバ90、およびくさび88、92、および86がそれぞれノズル14’にその一方の側で接する3つの接点102、104、および106(丸で囲まれた領域)を示す。
図11は、ノズル14’の前部、各側部、および後部におけるくさび86、88、および92の例示的な接触を示す。すべてのくさびが取り付けられ、所望の程度に締められると、ノズル14’はFMEの観点から完全に捕捉され、流れおよび振動の観点からの安定化が果たされる。接点102、104、および106の各々の位置は、損傷ノズルの亀裂がノズル全体に広がっても、ノズル14’をハウジング82内の所定の位置に確実に保持するのに十分な正の力を提供するように計算される。
【0047】
クランプ10、100、または200について、様々な留め具の適切な締まり具合および(もしあれば)ばねへの負荷を決定するために、所与の発電所での経験に基づく或る特定の計算が行われる。例えば、修理されたハードウェアおよびスパージャノズルの水力流解析の計算を、ノズル14の当初設計通りのものと修理後の構成によるもの両方について、スパージャの水圧耐性値を用いて行うことができる。スパージャの出口ノズル当たりの流れおよび全体的な圧力降下は、当初設計の構成と修理後の構成とについて計算できる。この解析結果は、修理が炉心入口エンタルピーの均一性に及ぼす影響を評価するために使用される。
【0048】
クランプ10、100および200を安定した動作状態に維持するのに役立つ、放熱およびその他のパラメータの予測値の計算は、所与の発電所での条件に基づいて変わる。したがって、計算を実施するための特定のプラントに関する例示的な情報には、以下のものが含まれる。
a.計算に必要な長さ寸法、直径寸法を含む、当初スパージャ設計図
b.給水流れ、給水温度、給水圧力、および原子炉容器圧力を含む、プラント設計運転条件
c.再循環水流量、再循環水圧、分離器液体排出流量、分離器液体排出温度/圧力、乾燥器液体排出流量、乾燥器液体排出温度/圧力を含む、プラント設計運転条件
d.計算に必要な長さ寸法、直径寸法を含む、当初混合プレナム/ダウンカマー設計図
【0049】
修理設計およびスパージャの構造評価を行って、修理後の構成が様々な条件に耐える能力を確認することができる。計算を実施するために、所与の発電所からの以下の例示的な情報を使用することができる。
a.当初スパージャ支持位置
b.現在スパージャ壁厚測定値
c.例えば、高温容器への最低温給水、最速加熱/冷却など、プラントの限界過渡条件
d.プラントの耐震および非耐震スペクトル
e.再循環水流量、再循環水圧、分離器液体排出流量、分離器液体排出温度/圧力、乾燥器液体排出流量、乾燥器液体排出温度/圧力を含む、プラント設計運転条件
f.強制的周波数範囲計算のため、給水および再循環ポンプの速度および圧力の変動範囲、ならびにインペラ羽根枚数
【0050】
スパージャ出口ノズル(修理時に取り外されなかった場合)を捕捉するために必要な力、および損傷ノズル(修理時に取り外されなかった場合)の既知の小欠陥によるスパージャ溶接部への亀裂成長は、部品片(すなわち、異物)を生む可能性を最小限に抑えるべく、計算で予測可能である。
【0051】
所定のプラントのクランプ10、100、または200の動作評価計算のための例示的な情報には、以下が含まれ得る。
a.承認されたスパージャ修理用ハードウェア設計図および設置仕様
b.利用可能ならば、現在のスパージャ壁厚測定値
c.修理用ハードウェアの承認された熱解析
d.修理用ハードウェアの承認された構造解析
【0052】
本明細書に記載されるクランプの様々な実施形態は、損傷した給水スパージャノズル14’によって引き起こされる問題を解決するものであり、これには、異物となってしまった場合に原子炉内部のさらなる損傷を引き起こす可能性のある部品片を抑制すること、高周波熱疲労(十分な熱混合なしに圧力容器上に比較的冷たい水を噴射することによって生じる)から原子炉圧力容器を保護すること、および炉心エンタルピーの均一性を維持することが含まれる。
【0053】
本明細書に記載されたクランプ10、100および200は、クランプが既存のプラントハードウェアへの変更を必要とせず、したがってリスクを最小化し、修理コストを削減するので、従来の修理設計と比較して発電所運転員にとって著しく有益である。一般的な設計では、クランプまたは修理品を設置できない場合、EDM(放電加工)などの水中機械加工が必要となる場合があり、その結果、プラントのハードウェアが恒久的に変更され、運転停止期間または運転継続に関するリスクが増す。さらに、従来の修理に用いられる機械加工は有意に多くの設置時間とコストを必要とする。
【0054】
クランプ10、100および200の説明を、2個のノズルを修理するための設計に即して行ったが、当業者であれば、単一のノズル、複数のノズル、または他のベース配管の損傷を修理するために応用できることを認識するであろう。
【0055】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願、刊行物または他の開示資料は、個々の参考文献がそれぞれ参照により明示的に組み込まれるように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれると言及された全ての文献および任意の資料またはそれらの一部分は、本明細書で明示的に記載された既存の定義、言明または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。したがって、本明細書に記載の開示事項は、必要な範囲において、それと矛盾する、参照により本明細書に組み込まれた資料に取って代わり、本出願に明示的に記載される開示事項が決定権をもつ。
【0056】
本発明を、様々な例示的な実施形態を参照して説明してきた。本明細書に記載の実施形態は、開示された発明の様々な実施形態の様々な例示的な特徴を提供するものとして理解される。したがって、特に断らない限り、可能な範囲において、開示した実施形態の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面は、本発明の範囲から逸脱することなく、当該開示した実施形態における他の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、材料、構造物、モジュールおよび/または局面との間で、複合、分割、置換えおよび/または再構成が可能であることを理解されたい。したがって、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態のいずれにおいても様々な置換、変更または組み合わせが可能であることを認識するであろう。当業者はまた、本明細書を検討すれば、本明細書に記載された本発明の様々な実施形態に対する多くの等価物に気付くか、あるいは単に定常的な実験を用いてかかる均等物を確認することができるであろう。したがって、本発明は、様々な実施形態の説明によってではなく、特許請求の範囲によって限定される。