(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】自動車ライトモジュール
(51)【国際特許分類】
E01F 9/547 20160101AFI20221005BHJP
【FI】
E01F9/547
(21)【出願番号】P 2021519638
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2019074761
(87)【国際公開番号】W WO2020074218
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】シャーデンホーファー、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハッケル、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトゥル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マンドル、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ジャックル、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、アンケ
(72)【発明者】
【氏名】ハックル、ジーグマー
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530935(JP,A)
【文献】特開2018-018706(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145400(WO,A1)
【文献】特開昭50-000533(JP,A)
【文献】特開2006-062580(JP,A)
【文献】特開2002-279817(JP,A)
【文献】特開2009-181413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロ投射器と、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素とを含んだ自動車ライトモジュールであって、
少なくとも1つのマイクロ投射器(2)は、所定の配光(4)を生成するように構成されており、該配光は、予め設定可能な照射パターン(5)のかたちで、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素(3)上に投射可能であり、
予め設定可能な照射パターン(5)は、自動車ライトモジュール(1)のスイッチオンの状態で、投射スクリーン要素(3)のマイクロ投射器(2)から離れる方を指向した側(30)で可視であり、光学的に表示された情報を含むこと、
マイクロ投射器(2)は、光を発生させるために構成された少なくとも1つの光源(20)と、投射装置(21)とを有し、該投射装置(21)は、放射方向(Z)において少なくとも1つの光源(2)のあとに備えられており、配光(4)を形成し且つ配光(4)を少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素(3)上に投射するように構成されていること、
投射装置(21)は、少なくとも1つの投射レンズ(210)と、少なくとも1つの絞り(211)とを有し、少なくとも1つの絞り(211)は、少なくとも1つの投射レンズ(210)の焦点面内に配設されており、また絞りエッジ(212)を有し、これらの絞りエッジ(212)は、予め設定可能な照射パターン(5)に対応する形状を有すること、
絞りエッジ(212)は、表示すべき情報である少なくとも1つのシンボル(213)を形成すること、
投射装置(21)は、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の投射レンズ(210)と、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の絞り(211)とを有し、各投射レンズ(210)には、正に1つの絞り(211)が割り当てられており、異なる絞り(211)の絞りエッジ(212)は、同じであるか又は異なって形成されていること、及び、
各光源(20)には、正に1つの絞り(211)と正に1つの投射レンズ(210)が割り当てられており、それらの光源(20)は、互いに別々に制御可能であること、
を特徴とする自動車ライトモジュール。
【請求項2】
少なくとも1つの投射レンズ(210)は、1mmと5mmの間のレンズ直径、或いは2mmのレンズ直径を有し、少なくとも部分的にガラス、或いはポリマーから成り、及び/又は、投射スクリーン要素(3)は、少なくとも1つの投射レンズ(210)よりほぼ1cmからほぼ10cmで離間されていること、
を特徴とする、請求項
1に記載の自動車ライトモジュール。
【請求項3】
少なくとも1つの光源(20)は、半導体ベースの光源、又はLED光源であること
、
を特徴とする、請求項
1又は2に記載の自動車ライトモジュール。
【請求項4】
マイクロ投射器(2)は、少なくとも1つの光源(20)と投射装置(21)との間に配設されたコリメータ(22)を追加的に含むこと、
を特徴とする、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の自動車ライトモジュール。
【請求項5】
少なくとも1つの投射スクリーン要素(3)は、粒々状の面を有する透明層、又は乳白色のプラスチックディスク或いはガラスディスク、又は散乱粒子を含んだ透き通ったプラスチックディスク或いはガラスディスクであること、
を特徴とする、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の自動車ライトモジュール。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の自動車ライトモジュール(1)を少なくとも1つ備えた自動車投光器。
【請求項7】
少なくとも1つのマイクロ投射器(2)が、自動車投光器の所定の領域に配設されており、少なくとも1つの投射スクリーン要素(3)が、自動車投光器カバーディスクの領域として構成されていること、
を特徴とする、請求項
6に記載の自動車投光器。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えるか、或いは請求項
6又は
7に記載の自動車投光器を少なくとも1つ備えた自動車。
【請求項9】
少なくとも1つの投射スクリーン要素(3)が、自動車のフロント部に配設されており、又は自動車のラジエタグリルの領域に構成されていること、
を特徴とする、請求項
8に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのマイクロ投射器(マイクロプロジェクタ)と、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素(プロジェクションスクリーンエレメント)とを含んだ自動車ライトモジュールに関し、この際、少なくとも1つのマイクロ投射器は、所定の配光を生成するように構成されており、この際、該配光は、予め設定可能な照射パターン(発光パターン)のかたちで、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射可能である。
【0002】
それに加え、本発明は、そのような自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えた自動車投光器又は自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
上記の形式の自動車ライトモジュールは、従来技術から知られている。多くの場合、そのような自動車ライトモジュールは、例えば、自動車ライトモジュールが組み込まれた自動車のすぐ周辺の道路表面上に適切な記号を投射するために(視覚的な)通信システムにおいて或いはデザインライトとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2503222号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015107644号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016118790号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3034728号明細書
【文献】国際公開第2013/167705号
【文献】欧州特許出願公開第3312501号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、照らし出される自動車ブランディングが可能であり且つ(アナログ環境との)通信要素として使用することのできる自動車ライトモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明により、予め設定可能な照射パターンが、自動車ライトモジュールのスイッチオンの状態で、投射スクリーン要素のマイクロ投射器から離れる方を指向した側で可視であり、光学的に表示された情報を含むことにより解決される。
即ち本発明の第1の視点により、
少なくとも1つのマイクロ投射器と、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素とを含んだ自動車ライトモジュールであって、
少なくとも1つのマイクロ投射器は、所定の配光を生成するように構成されており、該配光は、予め設定可能な照射パターンのかたちで、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射可能であり、
予め設定可能な照射パターンは、自動車ライトモジュールのスイッチオンの状態で、投射スクリーン要素のマイクロ投射器から離れる方を指向した側で可視であり、光学的に表示された情報を含むこと、
を特徴とする自動車ライトモジュールが提供される。
より詳しくは、前記第1の視点において、
少なくとも1つのマイクロ投射器と、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素とを含んだ自動車ライトモジュールであって、
少なくとも1つのマイクロ投射器は、所定の配光を生成するように構成されており、該配光は、予め設定可能な照射パターンのかたちで、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射可能であり、
予め設定可能な照射パターンは、自動車ライトモジュールのスイッチオンの状態で、投射スクリーン要素のマイクロ投射器から離れる方を指向した側で可視であり、光学的に表示された情報を含むこと、
マイクロ投射器は、光を発生させるために構成された少なくとも1つの光源と、投射装置とを有し、該投射装置は、放射方向において少なくとも1つの光源のあとに備えられており、配光を形成し且つ配光を少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射するように構成されていること、
投射装置は、少なくとも1つの投射レンズと、少なくとも1つの絞りとを有し、少なくとも1つの絞りは、少なくとも1つの投射レンズの焦点面内に配設されており、また絞りエッジを有し、これらの絞りエッジは、予め設定可能な照射パターンに対応する形状を有すること、
絞りエッジは、表示すべき情報である少なくとも1つのシンボルを形成すること、
投射装置は、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の投射レンズと、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の絞りとを有し、各投射レンズには、正に1つの絞りが割り当てられており、異なる絞りの絞りエッジは、同じであるか又は異なって形成されていること、及び、
各光源には、正に1つの絞りと正に1つの投射レンズが割り当てられており、それらの光源は、互いに別々に制御可能であること、
を特徴とする。
更に本発明の第2の視点により、
前記自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えた自動車投光器が提供される。
更に本発明の第3の視点により、
前記自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えるか、或いは前記自動車投光器を少なくとも1つ備えた自動車が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
少なくとも1つのマイクロ投射器と、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素とを含んだ自動車ライトモジュールであって、
少なくとも1つのマイクロ投射器は、所定の配光を生成するように構成されており、該配光は、予め設定可能な照射パターンのかたちで、少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射可能であり、
予め設定可能な照射パターンは、自動車ライトモジュールのスイッチオンの状態で、投射スクリーン要素のマイクロ投射器から離れる方を指向した側で可視であり、光学的に表示された情報を含むこと。
(形態2)
マイクロ投射器は、光を発生させるために構成された少なくとも1つの光源と、投射装置とを有し、該投射装置は、放射方向において少なくとも1つの光源のあとに備えられており、配光を形成し且つ配光を少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射するように構成されていること、が好ましい。
(形態3)
投射装置は、少なくとも1つの投射レンズと、少なくとも1つの絞りとを有し、少なくとも1つの絞りは、少なくとも1つの投射レンズの焦点面内に配設されており、また絞りエッジを有し、これらの絞りエッジは、予め設定可能な照射パターンに対応する形状を有すること、が好ましい。
(形態4)
絞りエッジは、表示すべき情報である少なくとも1つのシンボルを形成すること、が好ましい。
(形態5)
投射装置は、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の投射レンズと、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の絞りとを有し、各投射レンズには、1つの絞り、好ましくは正に1つの絞りが割り当てられており、異なる絞りの絞りエッジは、同じであるか又は異なって形成されていること、が好ましい。
(形態6)
少なくとも1つの投射レンズは、1mmと5mmの間のレンズ直径、好ましくは2mmのレンズ直径を有し、好ましくは少なくとも部分的にガラス、或いはプラスチック又はシリコーン樹脂のようなポリマーから成り、及び/又は、投射スクリーン要素は、少なくとも1つの投射レンズよりほぼ1cmからほぼ10cmで離間されていること、が好ましい。
(形態7)
少なくとも1つの光源は、半導体ベースの光源、例えばLED光源であること、が好ましい。
(形態8)
マイクロ投射器は、少なくとも1つの光源と投射装置との間に配設されたコリメータを追加的に含むこと、が好ましい。
(形態9)
少なくとも1つの投射スクリーン要素は、粒々状の面を有する透明層、又は乳白色のプラスチックディスク或いはガラスディスク、又は散乱粒子を含んだ透き通ったプラスチックディスク或いはガラスディスクであること、が好ましい。
(形態10)
形態1~9のいずれか1つに記載の自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えた自動車投光器。
(形態11)
少なくとも1つのマイクロ投射器が、自動車投光器の所定の領域に配設されており、少なくとも1つの投射スクリーン要素が、例えば自動車投光器カバーディスクの領域として構成されていること、が好ましい。
(形態12)
形態1~9のいずれか1つに記載の自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えるか、或いは形態10又は11に記載の自動車投光器を少なくとも1つ備えた自動車。
(形態13)
少なくとも1つの投射スクリーン要素が、自動車のフロント部に配設されており、好ましくは自動車のラジエタグリルの領域に構成されていること、が好ましい。
【0008】
この際、前記情報は、記号、ロゴ、文字(レタリング)などのかたちで表示されていることが可能である。
【0009】
つまり少なくとも1つの投射スクリーン要素は、配光を構成する光を少なくとも部分的に散乱させ、少なくとも部分的に吸収することができ、それにより予め設定可能な照射パターンは、自動車ライトモジュールから見て、外方に向かって可視となり、即ち見えるようになる。
【0010】
照らし出される文字は、例えば夜間では遥かに良く見えるので、本発明による自動車ライトモジュールを用い、例えば、照らし出されるデザインブランディングの価値を明らかに高めることが可能とされる。
【0011】
自律的な走行の分野における(アナログ世界との)通信要素のためにも、本発明による自動車ライトモジュールを使用することができる。
【0012】
マイクロ投射器が、光を発生させるために構成された少なくとも1つの光源と、投射装置とを有すると、目的に適い得て、この際、投射装置は、放射方向において少なくとも1つの光源に後置して備えられており、配光を形成し且つ配光を少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素上に投射するように構成されている。
【0013】
この際、投射装置は、少なくとも1つの投射レンズと、少なくとも1つの絞り(シェード)とを有することを規定することができ、この際、少なくとも1つの絞りは、少なくとも1つの投射レンズの焦点面内に配設されており、また絞りエッジ(絞り縁部)を有し、これらの絞りエッジは、予め設定可能な照射パターンに対応する形状を有する。つまり絞りの絞りエッジの形態により、照らすべき照射パターンの形状を予め設定することができる。好ましくは、絞りは、マイクロ投射器の光軸線に対して横方向(左右方向)に位置(配向)する面内に配設されている(図を参照)。この場合、絞りは、焦点面と単に交差する代わりに、全体的に焦点面内に位置することができる。
【0014】
有利には、絞りエッジは、表示すべき情報である少なくとも1つのシンボルを形成し、該シンボルは、好ましくは完全に焦点面内に位置することを規定することができる。
【0015】
好ましい一実施形態において、有利には、投射装置は、1つのアレイ内で行列状(マトリックス状)に配設された複数の投射レンズ(投射レンズアレイ)と、1つのアレイ内で行列状に配設された複数の絞り(絞りアレイ)とを有するよう配設することができ、この際、各投射レンズには、1つの絞り、好ましくは正に1つの絞りが割り当てられており、この際、異なる絞りの絞りエッジは、同じであるか又は異なって形成されている。それにより同じ又は異なる複数の照射パターンを生成することができる。複数の絞りを用い、例えば、アルファベットの文字、自動車メーカブランディングのようなロゴ、危険物表示シンボルなどを実現することができる。
【0016】
実際に実証された一実施形態では、投射レンズアレイも絞りアレイも一体形であるよう配設することができる。投射レンズアレイは、プラスチックのような材料から成る光学系本体とすることができる。光学系本体は、ガラスプレートと、ガラスプレート上に付着しているシリコーンレンズアレイとの複合体とすることもできる。投射レンズアレイ及び/又は絞りアレイは、好ましくは、光軸線に対して横方向(左右方向)に位置(配向)する面内に延在している。
【0017】
有利には、少なくとも1つの投射レンズは、1mmと5mmの間のレンズ直径、好ましくは2mmのレンズ直径を有し、好ましくは少なくとも部分的にガラス又はシリコーン樹脂から成り、及び/又は、投射スクリーン要素は、少なくとも1つの投射レンズよりほぼ1cmからほぼ10cmだけ離間されているよう配設することができる。この際、極めてコンパクトな自動車ライトモジュールが得られ、それにより主投光器及び/又は車両フロント部における取り付けが遥かに簡単になる。投射レンズの製造のために、ガラス、又はポリマーのような材料、例えばプラスチック又はシリコーンを使用することは、自動車ライトモジュールをよりリーズナブルにする。
【0018】
それぞれのマイクロ投射器の少なくとも1つの投射レンズと、このマイクロ投射器のまえに備えられた投射スクリーン要素との間における間隔が僅かであることにより、投射スクリーン要素上の光強度は、照射パターンを可視とするためには十分である。しかし照射パターンは、所定の白色スクリーン(光技術ラボ内の測定スクリーン)に対する10m~25mの間隔(距離)ではもはや測定不能となり、それにより認可上(最大散乱光値)の問題が起こることはない。また出力の強い光源も必要とされない。以下で言及するように、出力の弱いLED光源が使用されると、これらのLED光源は、これらのLED光源を冷却するために設けられる冷却体を必要としない。
【0019】
好ましい一変形形態において、有利には、少なくとも1つの光源は、半導体を基礎にした半導体ベースの光源、例えばLED光源であるよう配設することができる。複数の光源の場合には、これらの光源は、異なる色の光を放射することができる。それにより通行人又は他の交通参加者の注意を遥かに効果的に喚起することができる。
【0020】
マイクロ投射器が、少なくとも1つの光源と投射装置との間に配設されたコリメータを追加的に含むと、目的に適い得る。それにより例えば、絞りをより均等に照らすことを保証することができる。
【0021】
照射パターンのより良い可視性(より良く見えること)に関し、少なくとも1つの投射スクリーン要素が、粒々状の面(ざらざらの面)を有する透明層、又は乳白色のプラスチックディスク或いはガラスディスク、又は散乱粒子を含んだ透き通ったプラスチックディスク或いは透き通ったガラスディスクであると、有利であり得る。
【0022】
散乱粒子は、通常は、プラスチック又はガラスのような透明な或いは透き通った材料において、目には不可視である。
【0023】
乳白色のプラスチックディスクは、例えば不透明なプラスチックからできていることが可能である。しかし乳白色のプラスチックディスクは(透明な)プラスチックディスクの表面の特殊コーティングによるか、又は対応のフィルムを透明なプラスチックディスクの表面に接着することによっても得ることができる。好ましくは、光透過率がほぼ20%~ほぼ70%の乳白色のプラスチックディスクが使用される。
【0024】
散乱粒子を含んだプラスチックディスクにおいて、散乱粒子は、プラスチックディスクに入射された光が、理想的な場合には均等に面を介して前方に向かって出射されるために用いられる。例えばエボニック社(Evonik)のディスクは、透き通って見えるが、LED光源のような光源の光、又はマイクロ投射器の光がそのディスク内に進入すると、光は、前述したように粒子において散乱される。
【0025】
前記課題は、上記の自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えた自動車投光器によっても解決される。
【0026】
より良い自動車ブランディングを達成するために、有利には、少なくとも1つのマイクロ投射器が、自動車投光器の所定の(後部)領域に配設されており、少なくとも1つの投射スクリーン要素が、例えば自動車投光器カバーディスクの領域として構成されているよう配設することができる。
【0027】
更に前記課題は、上記の自動車ライトモジュールを少なくとも1つ備えた自動車により解決される。
【0028】
アナログ環境との通信に関し、有利には、少なくとも1つの投射スクリーン要素が、自動車のフロント部に配設されており、好ましくは自動車のラジエタグリル(フロントグリル)の領域に構成されているよう配設することができる。
【0029】
「ラジエタグリルの領域」とは、従来の自動車においてラジエタグリルが配設されている領域として理解される。しかし例えば最新の電気自動車において通常の形式のラジエタグリルはもはや存在しないので「ラジエタグリルの領域」とは、ラジエタグリルが配設されているであろう自動車フロント部における領域として理解される。
【0030】
サイドドア部又はリヤ部におけるような自動車の他の領域に投射スクリーン要素と自動車ライトモジュールを取り付けることも、同様に考えられる。
【0031】
本発明の更なる一利点は、少なくとも1つのマイクロ投射器が、そのあとに備えられた投射スクリーン要素により外側から不可視であり、環境影響(石の衝突、太陽光線、化学物質など)からも保護されるということにある。
【0032】
本発明との関連で「部分透明性の投射スクリーン要素」、「部分的に透光性の投射スクリーン要素」などの概念は、光散乱要素を有する投射スクリーン要素として理解され、該投射スクリーン要素は、該投射スクリーン要素に入射する光を部分的に透過させ、部分的に(全ての方向に)散乱させ、部分的に吸収する。この際、散乱された光の量は、投射スクリーン要素上に投射された配光が投射スクリーン要素の両側で(昼夜において肉眼で)可視であるためには十分である。光散乱要素は、マイクロ投射器を用いて投射スクリーン要素上に投射された像が、投射スクリーン要素のマイクロ投射器の方を指向した側でも、投射スクリーン要素のマイクロ投射器から離れる方を指向した側でも可視であることをもたらす。部分透明性の投射スクリーン要素は、例えば、乳白色のプラスチックディスク、粒々状の表面(ざらざらの表面)を有する透明ディスク、又は散乱粒子を含んだプラスチックディスク(例えばエボニック社のもの)とすることができる。
【0033】
以下、図面に具体的に示されている例示の実施形態に基づき、本発明を更なる利点と共に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一ライトモジュールの分解図を示す図である。
【
図2】複数の投射レンズを備えたマイクロ投射器を有する一ライトモジュールの分解図を示す図である。
【
図3】コリメータを備えたマイクロ投射器を有する一ライトモジュールの分解図を示す図である。
【
図4】複数のLED光源と複数の投射レンズを備えたマイクロ投射器を有する一ライトモジュールの分解図を示す図である。
【
図5】複数のLED光源を備えた複数のマイクロ投射器を有する一ライトモジュールの分解図を示す図である。
【実施例】
【0035】
先ず
図1について説明する。
図1は、本発明による自動車ライトモジュールに対応することのできるライトモジュール1を示している。ライトモジュール1は、マイクロ投射器(マイクロプロジェクタ)2と、少なくとも部分的に透光性の投射スクリーン要素(プロジェクションスクリーンエレメント)3とを有する。マイクロ投射器2は、予め設定可能な配光4を生成するように構成されており、配光4は、マイクロ投射器2がスイッチオンにされているときに、予め設定可能な照射パターン5のかたちで、少なくとも部分的に透光性の投射スクリーン要素3上に投射される。投射スクリーン要素3が部分的に透光性であることにより、配光4を形成する光は、投射スクリーン要素3において少なくとも部分的に散乱される。それにより予め設定可能な照射パターン5は、ライトモジュール1が稼働状態にされると、投射スクリーン要素3のマイクロ投射器2から離れる方を指向した側30の面上で可視となる。投射スクリーン要素3のマイクロ投射器2から離れる方を指向した側30は、好ましくは、投射スクリーン要素3においてマイクロ投射器2の方を指向した側とは反対側の面である。マイクロ投射器2は、予め設定可能な照射パターン5が光学的に表示される情報を含むように構成されている。この際、マイクロ投射器2により生成される配光4は、投射により投射スクリーン要素3上に表示される情報を運んでいるということが理解される。マイクロ投射器2から離れる方を指向した側30の面上における照射パターン5の可視性は、それにより例えば予め設定可能な通知情報(メッセージ)をライトモジュール1の周辺に送り出すことができるという利点を有する。この通知情報を受け取るためには、マイクロ投射器2と投射スクリーン要素3との間にいる必要はもはやなく、なぜなら通知情報は、光を用いて送り出され、この光は、投射スクリーン要素3を通過し、マイクロ投射器2の放射方向Zに散乱されるからである。投射スクリーン要素3は、
図1から
図5において見てとれるように、ライトモジュール1の光軸線に対して横方向(左右方向)に配設されていることが可能である。しかしながら例えば車両輪郭を考慮するために、ないし直角方向投射スクリーン要素を光軸線に対して傾斜させて配設することも勿論考えられる。
【0036】
少なくとも1つの投射スクリーン要素3は、例えば、粒々状の面(ざらざらの面)を有する透明層として、又は既述したように、乳白色のプラスチックディスク、又は散乱粒子を含んだプラスチックディスクとして構成されていることが可能である。上述したように、投射スクリーン要素3は、入射する光の少なくとも一部分を前方に(例えば放射方向Zに)散乱させることを可能とするために、少なくとも部分的に透過性とすべきである。例えば透き通った材料から成る投射スクリーン要素では、粗い表面が設けられていることが可能である。この際、粗さ(粗さの深さ)は、マイクロメートル範囲内、例えばほぼ5マイクロメートルから40マイクロメートルまで、好ましくは10マイクロメートルから30マイクロメートルまで、特に20マイクロメートルの値をとることができる。それに加え、投射スクリーン要素3は、ガラス又はポリマーから成り且つ滑らかな表面を有する例えばエボニック社(Evonik)のディスクとすることができる。既述したように、投射スクリーン要素3は、乳白色のディスク、又は散乱粒子を含んだディスクとすることができる。
【0037】
マイクロ投射器2は、1つ又は複数の光源20を有することができる。
図1から
図5では、LED光源が示されている。また光源は、例えば、他の光源、例えばレーザ光源のような半導体を基礎にした半導体ベースの光源とすることもできる。それに加え、マイクロ投射器2は、投射装置21を有し、投射装置21は、放射方向Zにおいて光源20に(光進行方向に関し)後置して備えられており、配光4を形成し且つ配光4を少なくとも部分的に透光性の少なくとも1つの投射スクリーン要素3上に投射するように構成されている。
【0038】
光源20は、1つのアレイ内で行列状(マトリックス状)に配設されていることが可能である。複数のLED光源は、放射方向Zに対して実質的に垂直に位置する共通の1つの基板上(
図4)又は別個の複数の基板上(
図5)に配設されていることが可能である。
【0039】
ここで、投射スクリーン要素3は、好ましくは放射方向Zに対して実質的に直角に配設されていることを述べておく。しかしながら投射スクリーン要素3を放射方向Zに対して傾斜させて位置決めすること、従って斜めに配設された面(投射スクリーン要素)上に照射パターン5を生成することも勿論考えられる。それに加え、投射スクリーン要素3が異なる色の領域を有することも考えられる。更に投射スクリーン要素3を予め設定された色で構成することが可能である。それによりデザイン可能性の数が更に増やされる。
【0040】
投射装置21は、1つ又は複数の投射レンズ210と、投射レンズ210に割り当てられた1つ又は複数の絞り(シェード)211とを有することができる。各投射レンズ210は、例えば、平凸状又は平凹状、或いは自由形状レンズとすることができる。好ましくは、各絞り211には、少なくとも1つの投射レンズ210が割り当てられている。投射レンズ210も絞り211も、行列状の状態で、好ましくは放射方向Zに対して実質的に直角に位置する面内に配設されていることが可能である。それに加え、全ての投射レンズ210と絞り211は、それぞれ、唯一のモノリシック構造体(
図4)又は複数の別個のモノリシック構造体(
図5)を構成することができる。絞り211(単数又は複数)は、好ましくは完全に、それぞれの投射レンズ210(単数又は複数)の焦点面内に配設されている。それに加え、各絞り211は、予め設定可能な照射パターン5に対応する形状を有する絞りエッジ(絞り縁部)212を有する。各絞り211の絞りエッジ212は、予め設定可能な照射パターン5全体(
図1から
図3)と一致するか又はその一部分のみ(
図4及び
図5)と一致するパターンを形成することができる。つまり投射スクリーン要素3上に生じる照射パターン5は、少なくとも1つの絞り211の絞りエッジ212の形状と延在形態により予め設定されていることが可能である。しかしまた照射パターンは、光源(単数又は複数)がレーザ光源である場合には、レーザを用いて光変換要素(ライトコンバージョンエレメント)上で生成されることも可能である(非図示)。
【0041】
つまり各絞り211の絞りエッジ212は、表示すべき情報を構成するシンボル213又はシンボルの一部分を形成することができる。絞り211は、例えば、対応の形状の切欠き部(ないし切抜き部)を有する金属板として構成されていることが可能であり、又はリソグラフィ法を用いてガラス基板又はプラスチック基板の1つの側の面にプリントされていることが可能である。ガラス基板又はプラスチック基板の反対側の面には、例えばシリコーンから成る投射レンズ210が取り付けられていることが可能である。この場合にガラス基板又はプラスチック基板は、投射レンズ210のための支持体として用いられ、この場合は複合レンズに関するものである。更に絞り211は、対応のフォトレジストの塗布により又は金属化とレーザ除去を用いて得られることが考えられる。
【0042】
図1から
図5において見てとれるように、シンボルは、極めて異なるものとすることができる:文字、ロゴ(それにより例えば照らし出される自動車メーカブランディングが可能である)、警告記号のような記号などである。
【0043】
図1から
図5に示されたライトモジュールにおける投射レンズ210は、1mmと5mmの間のレンズ直径、好ましくは2mmのレンズ直径を有し、少なくとも部分的にシリコーン樹脂から構成されていることができる。更に投射レンズ210は、エポキシ樹脂、アクリレート、又は他のプラスチックを含むか、或いはこれらの材料から構成されていることが可能である。投射スクリーン要素3は、投射レンズ(単数又は複数)よりほぼ1cmからほぼ10cmで離間されていることが可能である。
【0044】
図2は(放射方向Zにおいて)絞り211のあとに複数の投射レンズ210(3×3アレイが示されている)が備えられているライトモジュール1の一実施形態を示している。それにより予め設定可能な照射パターン5内の光強度をより良く調節すること、ないし照射パターン5をより明るくすることが可能である。そのような構成は、勿論、
図1及び
図3から
図5におけるライトモジュールにおいても可能である。
【0045】
図2に示された実施形態では、投射スクリーン要素3が投射装置21の像焦点面内に配設されていると、目的に適い得る。
【0046】
図1及び
図3から
図5に示された実施形態では、投射装置21の像焦点面が無限遠にあると、目的に適い得る。この際、投射スクリーン要素3は、放射方向Zにおいて投射装置21のあとに、規定された間隔、例えばほぼ10mmからほぼ100mmまで、好ましくはほぼ25mmから50mmまでの間隔で備えられ、それにより投射スクリーン要素3の両側で可視の照射パターン5が生成される。
【0047】
照射パターン5の照射強度は、LED光源のような光源の出力と、マイクロ投射器2と投射スクリーン要素3の間の間隔とに応じて変化することができる。
【0048】
図3からは、マイクロ投射器2が、光源20と投射装置21の間に配設されたコリメータ22を追加的に含むことができることを見てとれる。コリメータは、
図1、
図2、及び
図4、
図5に示されたマイクロ投射器においても同様に設けられ、対応の光源のあとに備えられていることが可能である。
【0049】
図4は、複数のLED光源20と複数の絞り211と複数の投射レンズ210を有する一例を示しており、この際、各LED光源20には、正に1つの絞りと正に1つの投射レンズ210が割り当てられており、このようなシステムは、概念的に1つの部分マイクロ投射器にまとめられることが可能である。LED光源20が互いに別々に制御可能である場合には、上記の通知情報は、単語全体、数字、文全体、又は文字などとすることができる。単語の個々の文字は、全て一緒に又は予め定められた時間順序で、投射スクリーン要素3上に光らせることができる。
【0050】
図5は、複数のマイクロ投射器2を有するライトモジュール1を示している。各マイクロ投射器2は、他のマイクロ投射器2に依存しないで制御されることが可能である。それに加え、各マイクロ投射器2は、複数のLED光源20と、異なるシンボルを有する複数の絞り211とを有する。マイクロ投射器2の制御が互いに調整されると、可能な様々な照射パターン5の数、従って送り出すべき通知情報の数が遥かに増加する。更に
図5からは、この際に通知情報全体が同じマイクロ投射器2により生成される必要はないことが見てとれる。即ち1つのマイクロ投射器は、この場合は共通の投射スクリーン要素3上にシンボル「G」を投射し、他の1つのマイクロ投射器は、シンボル「O」と「>」を投射し、そして三番目のマイクロ投射器は、シンボル「>」を投射する。
【0051】
図5のライトモジュールは、各投射レンズ210が1つのレンズアレイとして構成されていることにより改善され得る。この際、レンズアレイ内の各レンズに正確に1つのLEDが対応すると、特に有利である。それにより投射レンズ210の縁部領域における歪みが減少されるので、特に鮮明な結像を生成することができる。例えば、投射レンズは、3x3レンズアレイとして、
図4の投射レンズ210の配設構成に類似して構成されていることが可能であり、従って同様に3x3アレイを構成する基板上の個々のLEDの配設構成に対応することができる。
【0052】
従って
図4と
図5は、個々のマイクロ投射器2及び/又は個々の光源20のスイッチオンとスイッチオフにより文字全体を実現することのできる、本発明による自動車ライトモジュールの例を示している。
【0053】
それに加え、
図4と
図5では、複数の自動車ライトモジュールが、全ライトモジュールのための構成要素として使用され得ることが明らかにされている。つまりモジュール構造が可能であり、この際、異なる自動車ライトモジュールは、異なって形成された光線絞り211を有することができる。
【0054】
マイクロ投射器2が複数ある場合、及び/又は光源20ないしLED光源のアレイが複数ある場合には、これらは、互いに相並んで配設されることが可能である。
【0055】
上述のライトモジュールは、例えば、主投光器の領域におけるデザインイノベーション(照らし出されるロゴ、文字など)のために使用されるが、また例えば自動化された走行ないし自律的な走行の分野における(アナログ環境との)通信要素として使用されることも可能である。
【0056】
請求項における参照符号は、本発明のより良い理解のためだけに用いられ、決して本発明の限定を意味するものではない。
【0057】
上記の実施形態のいずれかの説明から必然的に明らかではない限り、説明された実施形態は、任意に互いに組み合わせることができるものとする。とりわけこのことは、1つの実施形態(ないし実施例)の技術的な特徴を、他の1つの実施形態(ないし実施例)の技術的な特徴と、個々で且つ互いに依存しないで任意に組み合わせることも可能であり、このようにして同じ発明の更なる1つの実施形態(ないし実施例)が達成されることも意味する。
【符号の説明】
【0058】
1 ライトモジュール
2 マイクロ投射器
3 投射スクリーン要素
4 配光
5 照射パターン
20 光源
21 投射装置
22 コリメータ
210 投射レンズ
211 絞り
212 絞りエッジ
213 シンボル
30 投射スクリーン要素の側(の面)