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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】跳ねない食用油の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/02 20060101AFI20221005BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A23D9/02
A23D9/00 506
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021529757
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012808
(87)【国際公開番号】W WO2021191990
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516309327
【氏名又は名称】株式会社アクアデザイン
(73)【特許権者】
【識別番号】521227034
【氏名又は名称】森 陽子
(73)【特許権者】
【識別番号】521225122
【氏名又は名称】株式会社サクセスプロジェクト
(73)【特許権者】
【識別番号】520010466
【氏名又は名称】加藤 昭広
(73)【特許権者】
【識別番号】501461955
【氏名又は名称】入船 輝人
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭広
(72)【発明者】
【氏名】入船 輝人
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024487(JP,A)
【文献】特開2002-188094(JP,A)
【文献】特開2001-089789(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121897(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0022694(US,A1)
【文献】特開2019-183267(JP,A)
【文献】特開2008-154922(JP,A)
【文献】特開2004-144012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
C10G 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
跳ねない食用油の製造装置において、
上流端および下流端が食用油を貯留する貯留部に接続され循環流路と、
前記循環流路中の食用油を一方向に流すポンプと、
前記循環経路の管の外側に配置された電磁石を備え、前記電磁石は、その端部が前記循環流路と対向するように、前記循環流路の中心軸に対して径方向に延在していると共に、前記電磁石を磁場の発生源として用いて、前記循環流路を流れる食用油に対して周波数が200kHzよりも大きい磁場を印加する磁場発生装置と
を有することを特徴とする跳ねない食用油の製造装置。
【請求項2】
前記磁場の周波数は、350kHzよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載された跳ねない食用油の製造装置。
【請求項3】
前記電磁石は、前記循環経路の中心軸に対して所定の回転間隔で複数配置されており、前記循環流路と対向した端部が同一の極性になるように制御されることを特徴とする請求項1または2に記載された跳ねない食用油の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳ねない食用油の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、食用油の酸化劣化を防止する方法が開示されている。この方法では、食用油を貯留するタンク内に、コイル部を備える電磁波発生器を設置し、4kHz~10kHzの周波数帯域を有する交流電流がコイル部に供給される。このコイル部によって発生した電磁波がタンク内の食用油に印加される。
【0003】
また、食用油に関するものではないが、特許文献2には、燃料分子のクラスタを効果的に細分化し、かつ、再結合を防ぐことにより、内燃機関の燃費効率の改善に寄与する燃料処理装置が開示されている。この燃料処理装置は、燃料の供給管の途中に配置された複数の電磁石を備えている。これらの電磁石は、供給管の中心を向くように配置されており、例えば、90度間隔で4個といった如く、一定の回転角度を空けて配置されている。電磁石は、磁場を発生する状態と、磁場を発生しない状態とが反復するようにパルス電圧で制御され、これによって、供給管を流れる燃料に対して動的な磁場が印加される。パルス電圧の周波数は、10~200KHz、特に、60~80KHzの範囲とすることで、高い燃費向上効果が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/073435号
【文献】特開2004-144012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フライヤーや鍋などに貯留された食用油を加熱しながら、食材を投入した場合、食材中の水分に起因して食用油が跳ねてしまい、火事や火傷を招く危険性がある。本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、食用油に特殊な処理を施すことで、このような状態でも跳ねない食用油が得られることが判明した。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱時に水分が混入しても跳ねない食用油を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、循環流路と、ポンプと、磁場発生装置とを有する、跳ねない食用油の製造装置を提供する。循環流路は、上流端および下流端が食用油を貯留する貯留部に接続され。ポンプは、循環流路中の食用油を一方向に流す。磁場発生装置は、循環経路の管の外側に配置された電磁石を備える。この電磁石は、その端部が循環経路と対向するように、循環経路の中心軸に対して径方向に延在している。磁場発生装置は、電磁石を磁場の発生源として用いて、循環経路を流れる食用油に対して周波数が200kHzよりも大きい磁場を印加する。
【0010】
ここで、本発明において、上記磁場の周波数は、350kHzよりも小さいことが好ましい。
【0011】
本発明において、上記電磁石は、循環経路の中心軸に対して所定の回転間隔で複数配置されており、循環流路と対向した端部が同一の極性になるように制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯留部より供給されて循環経路を流れる食用油に対して周波数が200kHzよりも大きい磁場を印加することで、跳ねない食用油を得ることができる。これにより、その後の使用時に食材などの投入によって水分が混入しても、油の跳ねを有効に低減できる。特に、循環経路の管の外側に配置された電磁石を用いることで、循環流路の内側に交番磁場が発生して食用油を細分化するため、細分化された状態を長期間に亘って維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】跳ねない食用油の製造装置の構成図
図2】磁場発生装置の構成図
図3】複数の磁場発生装置を設置した状態を示す図
図4】複数の磁場発生装置を回転させた状態を示す図
図5】180度に加熱されたサラダ油(食用油)に水分を滴下した状態を示す比較写真
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る、跳ねない食用油の製造装置の構成図である。この食用油の製造装置1は、貯留部2と、循環流路3と、ポンプ4と、磁場発生装置5とを有する。貯留部2は、処理対象となる食用油を貯留する。この製造装置1は、食用油全般、例えば、サラダ油、オリーブ油、ごま油、椿油、こめ油、大豆油、えごま油(しそ油)、ゴマ油、キャノーラ油、アマニ油、グレープシード油、ひまわり油(サンフラワー油)、ココナッツオイル、MCTオイル、グリーンナッツオイル、紅花油(サフラワー油)、アボガドオイル、落花生オイル、綿実油、コーン油、茶油、アーモンドオイルなどを広く処理対象とする。また、食用油の供給および回収は、貯留部2を介して行われる。循環流路3は、その上流端および下流端が貯留部2の異なる位置に接続されており、これによって、貯留部2内の食用油を循環させる循環路が形成される。ポンプ4は、循環流路3中の食用油を一方向に流す。磁場発生装置5は、循環流路3の近傍に配置されており、循環流路3を流れる食用油に対して、磁場が周期的に変化する磁場を印加する。
【0015】
食用油に印加される磁場、換言すれば、磁場発生装置5が発生する磁場の周波数は、その下限として、200kHzよりも大きいことが必要である。それ以下の周波数では、高温になった食用油が跳ねる現象の防止効果が十分に得られないか、得られる効果の度合いが小さい。また、周波数の上限については特段存在しないが、350kHzよりも小さいことが望ましい。これ以上では、食用油の跳ねを防止する効果に目立った差異はなく、むしろ磁場発生装置5を駆動させる電力の浪費を招くからである。
【0016】
また、食用油に印加される磁場は、磁場の大きさが連続的に変化する交流磁場であってもよいし、磁場の大きさがステップ的に変化するパルス状の磁場であってもよい。
【0017】
跳ねない食用油を製造する手順としては、まず、貯留部2に食用油を供給する。つぎに、ポンプ4を駆動させて循環流路3中の食用油を循環させると共に、磁場発生装置5によって、食用油に対する磁場の印加を繰り返す。そして、所定の時間が経過した後、貯留部2より食用油が回収され、跳ねない食用油が得られる。
【0018】
図2は、磁場発生装置5の構成図である。この磁場発生装置5は、本体部5aと、複数の電磁石5b~5dとを有する。本体部5aは、円盤状の形状を有し、合成樹脂、ガラス、金属などによって形成されている。本体部5aの中央には、循環流路3の管の外径に対応した内径を有する貫通孔が形成されており、この貫通孔には循環流路3の管が挿通されている。また、本体部5aの一方の面には、鉄芯にコイルが巻回された電磁石5b~5eが複数取り付けられている。これらの電磁石5b~5eは、それぞれの端部が循環流路3側を向くように、循環流路3の中心軸に対して径方向に延在しており、かつ、一定の回転間隔(例えば90度の等間隔)で点対称に配置されている。なお、電磁石は、少なくもと一つあれば足りるが、循環流路3中の食用油に対して磁界をより強力に作用させるという観点では、複数個の方が有利である(ただし、その個数は任意である。)。
【0019】
食用油に印加する磁場の発生源を永久磁石ではなく電磁石とすることの利点は、以下のとおりである。すなわち、永久磁石および本装置のどちらでも、循環流路3が鋼管(鉄)以外の銅、アルミニウム、ステンレス等の材質であれば、磁力を通して、循環流路3中の食用油を細分化することができる。しかしながら、永久磁石の場合、時間的な変化(周波数)を持たないため、食用油は時間とともに直ぐに元の状態に戻ろうとする。これに対して、電磁石の場合には、循環流路3の内側に交番磁場が発生して食用油を細分化するため、細分化された状態が長期間に亘って維持される。
【0020】
複数の電磁石5b~5eは、常に、循環流路3と対向した端部が同一の極性になるように制御される。すなわち、ある電磁石5bの対向端がN極のときには、これ以外の電磁石5c~5dの対向端部もN極となり、電磁石5bの対向端がS極のときには、これ以外の電磁石5c~5dの対向端部もS極となる。電磁石5b~5eが発生する磁場の向きは、食用油の跳ねを防止する効果を得る上で重要な要素となり、本実施形態のように、電磁石5b~5eの端部(極)が循環流路3と対向するように、換言すれば、循環流路3に対して電磁石5b~5dが径方向に延在するように配置した場合、最も良好な効果が得られる。
【0021】
磁場発生装置5は、循環流路3中の1箇所にのみ設けてもよいが、図3に示すように、複数の磁場発生装置5A~5Cを循環流路3中の複数の異なる箇所に設けてもよい。この場合、図4に示すように、それぞれの磁場発生装置5A~5Cを回転方向にずらして配置することが好ましい。同図の例では、3つの磁場発生装置5A~5Cを30度ずつオフセットさせている。これにより、循環流路3中の食用油に対して、磁界をより均等に作用させることができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、食用油に対して、周波数が200kHzよりも大きい磁場を印加することで、加熱時に食材などの投入によって水分が混入しても、跳ねない食用油を得ることができる。図5は、180度に加熱された1~1.5リットルのサラダ油(食用油)にスポイトで所定量の水分を滴下した状態を示す比較写真である。同図右は、サラダ油に対して周波数が216kHzの磁場を印加した実施例の状態を示し、同図左は、このような処理を行っていない同量のサラダ油(比較例)の状態を示している。実施例の処理条件は、磁場の印加時間が40分程度、1個あたりのインダクタンスが約220μHのものを12個使用、コイルへの電圧供給源としてマイナスの高電圧回路(入力:12V、0.3A、出力:-12,000V)を使用、ACアダプターは合計DC12V、1.3Aの消費電力である。比較例では、サラダ油が勢いよく跳ねているのに対して、実施例では、このような跳ねがまったく生じていないことが分かる。なお、食用油に対する処理時間の一般的に目安としては、食用油の量が10~50リットルまでは、常温で30~60分ほど循環させればよい。
【0023】
また、本実施形態によれば、循環流路3中を循環する食用油に対する磁場の印加を繰り返すことで、製造装置1の大型化を招くことなく、磁場の印加を効率的に行うことができる。
【0024】
なお、本明細書において、食用油が「跳ねない」とは、跳ねが全く生じないことはもとより、処理前の食用油と比較して跳ねが大幅に低減されることを含む意味で用いられる。
【符号の説明】
【0025】
1 食用油の製造装置
2 貯留部
3 循環流路
4 ポンプ
5,5A~5C 磁場発生装置

図1
図2
図3
図4
図5