(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20221005BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20221005BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B29C49/20
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2021574603
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000786
(87)【国際公開番号】W WO2021153226
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020015663
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中屋 和成
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 和義
(72)【発明者】
【氏名】三橋 寛也
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225413(WO,A1)
【文献】特表2013-513495(JP,A)
【文献】特開2009-132297(JP,A)
【文献】特開2019-188895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B29C 49/20
B29C 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部、首部、肩部を有する内蔵部品を有し、タンク本体成形時にパリソンを前記首部に回り込ませることで前記内蔵部品をタンク本体に固定させた燃料タンクであって、
前記頭部及び前記首部には、頭部端面側に開口する肉抜き部が形成され、
前記肉抜き部の開口を封止するキャップ部材を有することを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記首部には、外部と前記肉抜き部とに連通する第一連通部が形成されており、
前記肩部には、前記肉抜き部と前記タンク本体の内部とを連通する第二連通部が形成されており、
前記首部の外部の空気が前記第一連通部及び前記第二連通部を通って前記タンク本体の内部に流入することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記肉抜き部は複数形成されており、隣り合う前記肉抜き部同士に連通する第三連通部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンク等のブロー成形品にバルブ等の構成部品を内蔵部品として取り付ける方法が知られている。例えば特許文献1には、頭部、首部および肩部を備えた内蔵部品を内蔵した燃料タンクの製造方法が記載されている。この燃料タンクの製造方法では、タンク本体成形時にパリソンの外側から空気を送り込むことによってパリソンを首部に沿って賦形することで内蔵部品をタンク本体に固定する。その際に、首部からタンク本体に連通する孔を用いて、首部周辺の空気をタンク本体側に排出して空気抜きを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内蔵部品の固定強度を高めるためには頭部や首部を大径化することが有効である。頭部や首部を大径化した内蔵部品は、成形時にボイドが生じないように頭部や首部を中実ではなく肉抜きにする必要がある。しかし、頭部の端面に開口する肉抜きの場合、タンク本体に固定させるときに肉抜き部にパリソンが侵入してしまう。肉抜き部にパリソンが侵入すると、パリソンの厚さにばらつきが発生したり、バリア層が破断したりするという問題があった。
【0005】
本発明は、このような観点から創案されたものであって、内蔵部品の頭部及び首部に形成された肉抜き部にパリソンが侵入するのを防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、頭部、首部、肩部を有する内蔵部品を有し、タンク本体成形時にパリソンを前記首部に回り込ませることで前記内蔵部品をタンク本体に固定させた燃料タンクであって、前記頭部及び前記首部には、頭部端面側に開口する肉抜き部が形成され、前記肉抜き部の開口を封止するキャップ部材を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、肉抜き部の開口にキャップ部材を設けることで、成形時に頭部及び首部に形成された肉抜き部にパリソンが入り込むのを防ぐことができるため、パリソンの厚さのばらつきを抑制するとともに、バリア層が破断するのを防ぐことができる。
【0008】
また、前記首部には、外部と前記肉抜き部とに連通する第一連通部が形成されており、前記肩部には、前記肉抜き部と前記タンク本体の内部とを連通する第二連通部が形成されており、前記首部の外部の空気が前記第一連通部及び前記第二連通部を通って前記タンク本体の内部に流入することが好ましい。このようにすることで、首部周辺の空気をタンク本体側へ排出させることができるため、首回りにパリソンを確実に賦形することができる。
【0009】
また、前記肉抜き部は複数形成されており、隣り合う前記肉抜き部同士に連通する第三連通部が形成されていることが好ましい。このようにすることで、第一連通部第二連通部及び第三連通部を通じて、首部周辺の空気をタンク本体の内部へより効率的に排出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る燃料タンクは、頭部及び首部に形成された肉抜き部にパリソンが侵入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料タンクの概略断面図である。
【
図8】成形時において内蔵部品の端部周りにおけるパリソンの転写状況を説明するための図である。
【
図9】成形時において内蔵部品の端部周りにおけるパリソンの転写状況を説明するための図である。
【
図10】燃料タンク製造装置における燃料タンクの製造方法を説明するための図であり、(a)はパリソンの射出工程を示し、(b)は内蔵部品の投入工程を示し、(c)は内蔵部品の仮セット工程を示す。
【
図11】燃料タンク製造装置における燃料タンクの製造方法を説明するための図であり、(a)は成形型の閉鎖工程を示し、(b)はブロー成形工程を示し、(c)はパリソンの冷却工程を示し、(d)は成形型の開放工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪実施形態に係る燃料タンク≫
図1に示す燃料タンクTは、自動車やバイク並びに船舶等の移動手段に搭載されるものであり、タンク本体Taと、内蔵部品6とで主に構成されている。
図1に示すように、本実施形態では内蔵部品6として燃料タンクTの強度を保つための柱状の補強部材を例示するが、内蔵部品6はバルブや波消し板などであってもよい。以下の説明における「上下」、「左右」は
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。なお、
図1の左右方向は、燃料タンクTを製造する一対の成形型の開閉方向に対応している。
【0013】
タンク本体Taは、ガソリン等の燃料を貯溜する樹脂製の中空容器であり、例えばバリア層を含んだ複数層構造になっている。タンク本体Taは、例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を主な材料としている。タンク本体Taは、例えばブロー成形等によって形成される。
【0014】
図2ないし
図6を参照して、内蔵部品6の構成について説明する。内蔵部品6は、タンク本体Taの前駆体であるパリソンS(
図7参照)と溶着可能な材料(例えばPE(ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂)、溶着不可能な材料(例えばPOM等)のどちらが用いられてもよい。パリソンSは、HDPE(高密度ポリエチレン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)及び接着層などにより多層断面構造になっている。
【0015】
図2に示すように、内蔵部品6は、胴部6aと、胴部6aの両端に形成される肩部6b,6bと、肩部6b,6bの外側に形成される首部6c,6cと、頭部6d,6dとを備えて構成されている。内蔵部品6の構造は、左右(紙面上下)が鏡面対称になっている。そのため、ここでは、明示しない限り、片側だけ説明する。また、内蔵部品6の説明において、胴部6a側に臨む面を「裏面」と称し、「裏面」の反対側の面を「表面」と称する。
【0016】
図2に示す胴部6aは、内蔵部品6の本体になる部位である。胴部6aは、円柱状を呈しており、その先端部分は肩部6bへ向かう方向に広がるような形状となっている。胴部6aの端部には、複数の支柱肉抜き穴6gが形成されている。支柱肉抜き穴6gは、連通部6h(
図5B)とタンク本体Taとに連通する孔である。支柱肉抜き穴6gは、後述するパリソンSを内蔵部品6へ溶着させる際に空気が流通する部位である。
【0017】
図2に示す肩部6bは、
図7に示す第1成形型3の凹部3dまたは第2成形型4の凹部4dを覆う部位である。肩部6bの形状やサイズは、凹部3d,4dを覆うことができればよく、特に限定されるものではない。ここでの肩部6bは、薄板の円板状を呈し、
図3に示すように肩部6bの外径rbは胴部6aの外径raよりも大きくなっている。
【0018】
図2に示す首部6cは、肩部6bと頭部6dとを連結する部位であって、
図3に示すように、肩部6b及び頭部6dよりも小径になっている。ここでの首部6cは、肩部6bの表面6fから立設され、円柱状を呈する。肩部6bと首部6cとで構成される隅部および頭部6dと首部6cとで構成される隅部には、丸み(アール)が形成されている。
【0019】
図2に示すように、首部6cには、周方向に沿って6つの連通部(第一連通部)6mが形成されている。連通部6mは、首部6cの外部と肉抜き部6k(
図5A参照)とを連通する孔である。連通部6mは、成形時において隙間6j(後述)にパリソンSが入り込んだ際に、隙間6j内の空気を排出する空気抜け経路としての役割を担うものである。連通部6mは、空気を排出することができればよく、形状、個数などは特に限定されない。
【0020】
図2に示す頭部6dは、肩部6bよりも厚い厚板の円板状を呈する。なお、ここでの肩部6bおよび頭部6dの厚さの関係はあくまで例示であり、頭部6dに対して肩部6bが厚く形成されていてもよい。
図3に示すように、頭部6dの外径rdは、首部6cの外径rcよりも大きく、肩部6bの外径rbよりも小さくなっている。このような形状により、肩部6bと頭部6dとの間には、首部6cを底部とする隙間6jが形成される。隙間6jは、成形時においてパリソンSが入り込む部位である。
【0021】
頭部6dの形状やサイズは、頭部6d及び首部6cの周囲にパリソンSが入り込むことでタンク本体Ta(
図1参照)に内蔵部品6を固定することができればよく、特に限定されるものではない。首部6cに回り込ませたパリソンSに相当する部分を「パリソン相当部W」と称する(
図9参照)。
【0022】
図2に示すキャップ部材6eは、頭部6dの端面に載置され、肉抜き部6kの開口(
図4参照)を封止する部材である。キャップ部材6eは、肉抜き部6kの開口を封止することで、成形時においてパリソンSが肉抜き部6kに侵入するのを防ぐことができる。キャップ部材6eの材料は特に制限されないが、本実施形態では、例えば、内蔵部品6と同じ材料で形成されている。
【0023】
図4に示すように、頭部6d及び首部6cには肉抜き部6kが複数形成されている。肉抜き部6kは、頭部6dの端面に開口しており、頭部6dから首部6cにわたって中空となっている。本実施形態では、肉抜き部6kの開口は、キャップ部材6eによって封止されている。
【0024】
図5Aに示すようにキャップ部材6eは、蓋部6e1と脚部6e2とで構成されている。蓋部6e1を肉抜き部6kの開口を封止するように載置すると、脚部6e2が肉抜き部6kに挿入されて係合する。脚部6e2が肉抜き部6k内で係合することで蓋部6e1の回転を防止し固定することができる。
【0025】
蓋部6e1は、平面を有して構成され全ての肉抜き部6kの開口を塞ぎ、肉抜き部6k内にパリソンS等が流入することを防ぐ役割を担っている。蓋部6e1の形状は、肉抜き部6kの開口を封止できる形状であればよく、頭部6dの形状に合わせて適宜設定すればよい。
【0026】
脚部6e2は、二股に分かれて形成されており、肉抜き部6kに挿入されると係合して固定される。脚部6e2の形状は、蓋部6e1が外れたり、回転したりするのを防ぐことができればよく、形状は特に限定されない。なお、蓋部6e1を固定できる他の機構を備えていれば、脚部6e2は省略してもよい。
【0027】
図4に示すように、頭部6dには、周方向に6つの連通部(第三連通部)6iが溝状に形成されている。連通部6iは、頭部6dの端面に形成されており、キャップ部材6eが頭部6dに載置されることにより、空気抜き用の孔としての役割を担う。例えば、連通部6iaは、中央に形成された肉抜き部6kcと、その径方向外側に形成された肉抜き部6kaとに連通している。また、例えば、連通部6ibは、中央に形成された肉抜き部6kcと、その径方向外側に形成された肉抜き部6kbとに連通している。
【0028】
また、肩部6bには、四つの連通部(第二連通部)6hが形成されている。
図6に示すように、連通部6hは、肉抜き部6kと、胴部6a(タンク本体Ta内)とを連通するように設けられている。なお、連通部6i及び連通部6hは、空気を排出することができればよく、形状、個数などは特に限定されない。
【0029】
次に、
図4(適宜
図5A及び
図5Bも参照)を参照して成形時の空気の流れについて説明する。例えば、首部6cの外部から連通部6maに入った空気は、肉抜き部6ka、連通部6ha、支柱肉抜き穴6gを通ってタンク本体Ta内に排出される。
また、例えば、首部6cの連通部6mbから入った空気は、肉抜き部6kb、連通部6ib、肉抜き部6kc、連通部6ia、肉抜き部6ka、連通部6ha、支柱肉抜き穴6gを通ってタンク本体Ta内に排出される。
上記の空気の流れは例示であって、本実施形態では中央に形成された肉抜き部6kcと複数の連通部6iとがそれぞれ連通しているため、例えば、連通部6maから入った空気は連通部6ha,6hb,6hc,6hdのいずれか又は全部から排出することができる。
【0030】
≪実施形態に係る燃料タンク製造方法≫
図7に示す燃料タンク製造装置1は、円筒状のパリソンSをブロー成形して内蔵部品6を有する燃料タンクT(
図1参照)を製造する装置である。なお、燃料タンクTは、シート状のパリソン(図示せず)を成形して製造することもできる。
【0031】
図7に示すように、燃料タンク製造装置1は、ダイ2と、一対をなす第1成形型3および第2成形型4と、第1成形型3および第2成形型4の間を昇降する昇降機5と、を主に備えている。
【0032】
ダイ2は、第1成形型3および第2成形型4の上部に配置され、第1成形型3および第2成形型4にパリソンSを供給する供給手段である。パリソンSは、HDPE(高密度ポリエチレン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)及び接着層などにより多層断面構造になっており、燃料タンクT(
図1参照)を構成するタンク本体Taの前駆体である。
【0033】
図7に示す第1成形型3および第2成形型4は、燃料タンクT(
図1参照)を型締め成形する成形手段である。第1成形型3および第2成形型4は向かい合って配置されており、対向面には凹状の成形部3a,4aが形成されている。第1成形型3および第2成形型4は左右方向に移動することで開閉可能であり、第1成形型3および第2成形型4を開いた状態(
図7に示す状態)でパリソンSが供給される。また、第1成形型3および第2成形型4は、第1成形型3および第2成形型4内に空気を送り込むための図示しないブローピンを備えており、図示しない第1正圧付与手段によって第1成形型3および第2成形型4内の空気圧(ブロー圧)は適切に調整される。第1正圧付与手段によって、成形部3a,4aにパリソンSが転写される。
【0034】
第1成形型3は、分離するように構成されており、本体部3bと、本体部3bから分離可能な分離部3cとを備えている。同様に、第2成形型4は、分離するように構成されており、本体部4bと、本体部4bから分離可能な分離部4cとを備えている。分離部3c,4cには内蔵部品6の両端部分の形状に対応した凹部3d,4dが形成されており、凹部3d,4dは内蔵部品6の一部を収納する。ここでの凹部3d,4dは、円柱状を呈する。また、凹部3d,4dの底部3f,4fには、凹部3d,4d内に空気を送り込むための複数の空気孔3g,4gがそれぞれ形成されており、図示しない第2正圧付与手段によって凹部3d,4d内の空気圧(ブロー圧)は適正に調整される。
【0035】
昇降機5は、内蔵部品6を取付け位置まで移動させる移動手段である。ここでの取付け位置は、円筒状のパリソンSの内側であって、分離部3c,4cの間である。
【0036】
次に、燃料タンク製造装置1の動作について説明する。燃料タンク製造装置1による燃料タンクT(
図1参照)の製造方法の全工程を説明する前に、内蔵部品6の端部周りの転写状況について説明する。
【0037】
<内蔵部品の端部周りの転写状況>
図8および
図9を参照しつつ(適宜、
図1ないし
図7参照)、成形時において内蔵部品6の端部周りにおけるパリソンSの転写状況について説明する。なお、ここでは第1成形型3について説明するが、第2成形型4についても同様である。
図8および
図9に示す内蔵部品6は、
図4のB-B位置で切断した状態を示している。
燃料タンク製造工程において、
図8に示すように、第1成形型3を矢印方向に移動させて型締めすることにより、パリソンSと共に内蔵部品6の首部6cおよび頭部6dが凹部3d内に押し込まれる。
【0038】
図9に示すように、肩部6bがパリソンSに接触して凹部3dの開口部を覆い、凹部3dに首部6cおよび頭部6dが完全に押し込まれたら(収納されたら)、第1成形型3内に空気を送り込むことでパリソンS内に正圧P1(第1の正圧)を発生させ、第1成形型3にパリソンSを転写させる。また、凹部3dに形成される空気孔3gから凹部3d内に空気を送り込むことで凹部3d内に正圧P2(第2の正圧)を発生させ、肩部6bと頭部6dとの間の隙間6jにパリソンSを入り込ませて転写させる。隙間6j内の空気は、前記したように、連通部(第一連通部)6m、連通部(第二連通部)6h、連通部(第三連通部)6i、肉抜き部6k、支柱肉抜き穴6gを適宜通ってタンク本体Taの内部に排出される。
【0039】
またこのとき、パリソンSが肩部6bと第1成形型3との間で押し付けられて、パリソンSと肩部6bとが溶着される。また、正圧P2によってパリソンSが頭部6dに押し付けられて、パリソンSと頭部6dとが溶着される。なお、内蔵部品6を凹部3dに向かって押し込み、パリソンSを頭部6dと底部3fとの間で挟持することによりパリソンSとキャップ部材6eとを溶着させてもよい。
【0040】
次に、燃料タンク製造装置1の全体の工程について説明する。
<パリソンの射出工程>
図10(a)に示すように、ダイ2は、開いた状態の第1成形型3および第2成形型4の間に円筒状のパリソンSを射出する。
【0041】
<内蔵部品の投入工程>
次に、
図10(b)に示すように、昇降機5は内蔵部品6を保持した状態で上昇し、内蔵部品6を取付け位置まで移動させる。ここで取付け位置は、パリソンSの内側であって、分離部3c,4cの間である。
【0042】
<内蔵部品の仮セット工程>
次に、
図10(c)に示すように、第1成形型3および第2成形型4の分離部3c,4cは、互いに対向する方向に移動し、内蔵部品6を両端側から挟み込むように保持する。そして、昇降機5は内蔵部品6を離した状態で降下し、初期位置まで退避する。昇降機5の初期位置は、第1成形型3および第2成形型4の本体部3b,4bを閉じた場合に干渉しない位置であればよい。
【0043】
<成形型の閉鎖工程>
次に、
図11(a)に示すように、第1成形型3および第2成形型4の本体部3b,4bは、互いに対向する方向に移動し、第1成形型3および第2成形型4が型締めされる。
【0044】
<ブロー成形工程>
次に、
図11(b)に示すように、図示しない第1正圧付与手段は、第1成形型3および第2成形型4内のパリソンSの内側から正圧P1(第1の正圧)を付与する。これにより、パリソンSは、第1成形型3および第2成形型4の成形部3a,4aに押し付けられて転写される。また、図示しない第2正圧付与手段は、第1成形型3および第2成形型4の凹部3d,4d(
図7参照)内のパリソンSの外側から正圧P2(第2の正圧)を付与する。これにより、パリソンSは、内蔵部品6の首部6cに沿って賦形される(
図9参照)。なお、正圧P1、正圧P2を付与する方法や順番は特に限定されるものではない。正圧P2は正圧P1よりも高く設定されているのが好ましい。
【0045】
<パリソンの冷却工程>
次に、
図11(c)に示すように、図示しない冷却手段を用いて第1成形型3および第2成形型4内で冷却空気Cを循環させる。これにより、パリソンSは冷やされて硬化する。
【0046】
<成形型の開放工程>
次に、
図11(d)に示すように、第1成形型3および第2成形型4を開いて成形品Uを取り出す。そして、両端に形成される不要なバリを切断することで燃料タンクT(
図1参照)が完成する。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、内蔵部品6の頭部6dにキャップ部材6eを備えることにより、成形時にパリソンSが肉抜き部6k内へ入り込むことを防ぐことができる。そのため、パリソンSの厚さのばらつきを抑制するとともに、バリア層が破断又は損傷するのを防ぐことができる。
【0048】
また、肩部6bには、連通部6hが形成されているので、肉抜き部6k内の空気を胴部6a側へ排出することができる。つまり、隙間6j内の空気を連通部6mから肉抜き部6k内へと流し、肉抜き部6k内の空気を連通部6hからタンク本体Taの内部へ排出することができるため、空気抜きを確実に行うことができ、首部6cの周りにパリソンを確実に賦形することができる。
【0049】
また、肉抜き部6kは複数形成されており、隣り合う肉抜き部6k同士に連通する連通部6i(第三連通部)が形成されているので、連通部(第一連通部)6m、連通部(第二連通部)6h及び連通部6iを通じて、首部6c周辺の空気をタンク本体Taの内部へより効率的に排出することができる。特に、本実施形態では中央に形成された肉抜き部6kcと複数の連通部6iとがそれぞれ連通しているため、例えば、連通部6maから入った空気は連通部6ha,6hb,6hc,6hdのいずれか又は全部から排出することができるため、空気の排出効率を高めることができる。
【0050】
以上発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、支柱肉抜き穴6gを断面網目状に設けているが、肉抜き部6kの空気がタンク本体Ta内に流通可能であればどのような形状であってもよい。また、連通部6iは、本実施形態では肉抜き部6kの開口端に溝状に設けたが、連通部6mや連通部6hと同様に孔としてもよい。連通部6iの形状を孔とする場合、隣り合う肉抜き部6k,6kを連通可能であればどの位置に設けてもよい。
【0051】
また本実施形態では、パリソンの外側からの正圧(ブロー成形)によって、パリソンを首部に回り込ませて内蔵部品を固定させたが、他の成形方法で成形してもよい。
【符号の説明】
【0052】
6 内蔵部品
6a 胴部
6b 肩部
6c 首部
6d 頭部
6e キャップ部材
6m 連通部(第一連通部)
6h 連通部(第二連通部)
6i 連通部(第三連通部)
6k 肉抜き部
S パリソン
T 燃料タンク
Ta タンク本体