(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20221005BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20221005BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B29C49/20
F02M37/00 301J
(21)【出願番号】P 2022501663
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048274
(87)【国際公開番号】W WO2021166436
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020027751
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和元年10月23日~令和元年11月4日に、第46回東京モーターショー2019にて公開 (2)令和元年10月23日~令和元年11月4日に、第46回東京モーターショー2019の会場にてリーフレットを頒布 (3)令和元年10月28日、10月30日、11月5日、11月6日の複数回に分けて、https://www.yachiyo-ind.co.jp/pickup/tms2019に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和元年10月23日~令和元年11月4日に、第46回東京モーターショー2019にて公開 (2)令和元年10月23日~令和元年11月4日に、第46回東京モーターショー2019の会場にてリーフレットを頒布 (3)令和元年10月28日、10月30日、11月5日、11月6日の複数回に分けて、https://www.yachiyo-ind.co.jp/pickup/tms2019に掲載
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中屋 和成
(72)【発明者】
【氏名】青野 正樹
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132297(JP,A)
【文献】特開2018-114794(JP,A)
【文献】特開2019-77382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0141432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B29C 49/20
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵部品を有する燃料タンクであって、
前記内蔵部品は、複数の嵌合部を有する剛体であるキャリア部と、
前記キャリア部の複数の嵌合部それぞれに嵌合される被嵌合部を有する複数の支柱と、
前記燃料タンクの成形後収縮に伴って前記キャリア部の嵌合部に対して前記支柱の被嵌合部が摺動可能に嵌合される少なくとも1つの摺動可能嵌合部と、
前記キャリア部の嵌合部に対して前記支柱の被嵌合部が摺動不能に嵌合される固定嵌合部とを備え、
少なくとも1つの前記摺動可能嵌合部の摺動可能方向が前記固定嵌合部に向かう方向とされる、
ことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記摺動可能嵌合部は、摺動可能方向の一方側又は他方側の少なくとも何れかの側が開放される、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記摺動可能嵌合部は、開放側への前記被嵌合部の摺動を規制する摺動規制部材を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記摺動規制部材は、前記開放側から奥側に向かって上る傾斜面を備える爪である、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記摺動可能嵌合部は、前記被嵌合部が前記摺動可能嵌合部に嵌合した仮状態で係止する係止部を備える、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記支柱は、前記係止部により係止された状態での前記燃料タンクの成形後収縮時、前記係止部による係止が解除されて摺動可能領域において前記固定嵌合部に向かって摺動する、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記摺動可能領域の前記摺動可能方向の長さは、前記摺動可能嵌合部と前記固定嵌合部との間の距離、及び、前記内蔵部品を収容するパリソンの構成材料の収縮率に基づき、決定された値である、
ことを特徴とする請求項6に記載の燃料タンク。
【請求項8】
前記被嵌合部は、一対の平板を含む平板群による挟持によって前記固定嵌合部に嵌合する挟持部を備え、
前記固定嵌合部は、一方側は開放されて開放部が形成されるとともに他端側は閉塞端面が形成されて構成され、前記開放部と前記閉塞端面との間に前記挟持部の摺動を規制する摺動規制部材を備え、
前記挟持部は、前記摺動規制部材と前記閉塞端面とに係止される
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形後に生じる燃料タンクの収縮(以下、成形後収縮という)の吸収技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、熱可塑性合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクが記載されている。上記内蔵部品は、合成樹脂で一体的に形成されている。上記内蔵部品には上記燃料タンクの外壁の内面に溶着して上記内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、上記内蔵部品に上記燃料タンクの収縮又は膨張に応じて撓むことができる寸法変化吸収部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-132296号公報(特に請求項1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の内蔵部品20では、梁部材22に寸法変化吸収部材23が備えられる。このため、梁部材22が非剛体化し、燃料タンク1の内部に内蔵部品20を精度良く配置できない。
本発明が解決しようとする課題は、精度良く配置可能な内蔵部品を備える燃料タンクの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の燃料タンクは、内蔵部品を有する燃料タンクであって、前記内蔵部品は、複数の嵌合部を有する剛体であるキャリア部と、前記キャリア部の複数の嵌合部それぞれに嵌合される被嵌合部を有する複数の支柱と、前記燃料タンクの成形後収縮に伴って前記キャリア部の嵌合部に対して前記支柱の被嵌合部が摺動可能に嵌合される少なくとも1つの摺動可能嵌合部と、前記キャリア部の嵌合部に対して前記支柱の被嵌合部が摺動不能に嵌合される固定嵌合部とを備え、少なくとも1つの前記摺動可能嵌合部の摺動可能方向が前記固定嵌合部に向かう方向とされる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、精度良く配置可能な内蔵部品を備える燃料タンクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】内蔵部品による燃料タンクの成形後収縮の吸収を説明する図である。
【
図4】内蔵部品の上面図であって支柱を取り外した状態を示す上面図である。
【
図6】摺動可能嵌合部に支柱の被嵌合部を嵌合させた状態を示す斜視図である。
【
図9】成形後収縮時における支柱の動きを説明する図である。
【
図10】摺動可能嵌合部への支柱の組付けを説明する図である。
【
図11】
図10の組付け時に誤組が生じた場合を説明する図である。
【
図16】固定嵌合部への支柱の組付けを説明する図である。
【
図17】
図16の組付け時に誤組が生じた場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。ただし、本発明は以下の内容及び図示の内容になんら限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の記載において、異なる実施形態において同じ部材については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。また、同じ機能のものについては同じ名称を使用し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、燃料タンク1の外観斜視図である。燃料タンク1は、図示の例では、X方向を幅、Y方向を奥行、Z方向を高さとする箱型に構成される。燃料タンク1は、例えば自動車用であり、ガソリン、軽油等の燃料を収容できる。燃料タンク1は、給油ポンプ(図示しない)を設置可能な開口2を備える。給油ポンプにより、燃料タンク1に収容された燃料をエンジン(図示しない)に送液できる。
【0010】
燃料タンク1は、内蔵部品10(後記する)を内部に有する。内蔵部品10は、例えば燃料タンク1のブロー成形時に、燃料タンク1の内部に配置できる。即ち、円筒状のパリソン(図示しない)の内部に、又は、シート状の一対のパリソンの間に内蔵部品10を配置した状態でパリソンを成形及び冷却することで、内蔵部品10を燃料タンク1の内部に配置できる。
【0011】
内蔵部品10は、ブロー成形後の冷却時に生じる燃料タンク1の成形後収縮を吸収したり、使用時に生じる燃料タンク1の内部の正圧又は負圧に起因する膨張又は収縮を吸収したり、波消しを行うものである。成形後収縮について
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0012】
図2は、内蔵部品10による燃料タンク1の成形後収縮の吸収を説明する図である。
図2では、図示の便宜上、燃料タンク1の内部を可視化して示している。内蔵部品10の具体的構成については
図3以降を参照しながら後記する。内蔵部品10は、複数の嵌合部15に嵌められた各支柱12の上面12a及び下面(図示しない)によって、燃料タンク1の構成材料であるパリソン(図示しない)に固着される。従って、パリソンの冷却により生じる成形後収縮時、支柱12には燃料タンク1の収縮方向に力が作用する。
【0013】
成形後収縮は、通常、相似変形である。このため、摺動(移動)可能な支柱12(後記する摺動可能嵌合部13に嵌合した支柱12)には、固定された支柱12(後記する固定嵌合部14に嵌合した支柱12)に向かう力が作用する。この力の方向は、
図2上図において黒矢印で示す。長さL1の成形後収縮に起因して支柱12に力が作用したとき、摺動可能な支柱12は、固定された一つの支柱12に向かって摺動する。摺動後の内蔵部品10が
図2下図である。
【0014】
このように、摺動可能な支柱12が固定された支柱12に向かって摺動することで、相似変形に対応する成形後収縮を吸収でき、成形後収縮に起因する支柱12の燃料タンク1の内壁からの剥離又は脱離を抑制できる。この結果、成形後収縮後においても燃料タンク1の内部に内蔵部品10を保持でき、内蔵部品10による使用時等の燃料タンク1の変形を抑制できる。
【0015】
図3は、内蔵部品10の外観斜視図である。内蔵部品10は、キャリア部11と、支柱12と、摺動可能嵌合部13と、固定嵌合部14とを備える。例えば、XY平面上において一番大きな変位を有する摺動可能嵌合部13の支柱12と、固定嵌合部14の支柱12との間は距離は長さL2である。なお、支柱12,12の間の距離は、柱状の支柱12の中心P0,P0間の距離をいう。支柱12,12の間の距離は、図示の例では一部同じであり一部異なっているが、全て同じでもよく全て異なってもよい。
【0016】
キャリア部11は、嵌合部15を有する剛体である。嵌合部15は、被嵌合部30(
図5)が嵌合するものである。キャリア部11を剛体で構成することで、燃料タンク1の成形後収縮時に伴うキャリア部11の変形を抑制できる。また、内蔵部品10を燃料タンク1内に配置するとき、内蔵部品10の撓みを抑制できるため、内蔵部品10を精度良く燃料タンク1の内部に配置できる。嵌合部15は、複数備えられ、図示の例では7つであるが、2つ以上6つ以下でもよく、8つ以上でもよい。
【0017】
キャリア部11は、図示の例では、X方向及びY方向の双方に延在する枠状に構成される。枠状に構成することで、キャリア部11の剛性を向上できる。キャリア部11は、例えばポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂により構成される。キャリア部11の形状について、
図4を参照しながら説明する。
【0018】
図4は、内蔵部品10の上面図であって支柱12を取り外した状態を示す。内蔵部品10、より具体的には嵌合部15は、摺動可能嵌合部13及び固定嵌合部14を備える。摺動可能嵌合部13は、燃料タンク1(
図1)の成形後収縮に伴ってキャリア部11の嵌合部15(ここでは摺動可能嵌合部13)に対して支柱12(
図3、
図5)の被嵌合部30(
図3、
図5)が摺動可能に嵌合されるものである。本明細書において、成形後収縮時における支柱12の摺動方向を摺動可能方向と定義する。摺動可能方向は、
図4において黒矢印で示す方向である。摺動可能嵌合部13は少なくとも1つ備えられ、図示の例では6つであるが、2つ以上5つ以下でもよく、7つ以上でもよい。
【0019】
固定嵌合部14は、キャリア部11の嵌合部15(ここでは固定嵌合部14)に対して支柱12(
図3、
図5)の被嵌合部30(
図3、
図5)が摺動不能に嵌合されるものである。固定嵌合部14は、図示の例では1つのみ備えられる。
図4には、固定嵌合部14に嵌合される支柱12が簡略化して図示される。点Pは支柱12の軸中心である。
【0020】
図4において黒矢印で示すように、少なくとも1つ(1つでもよい)の摺動可能嵌合部13の摺動可能方向が、固定嵌合部14に向かう方向とされる。図示の例では、複数の摺動可能嵌合部13のそれぞれの摺動可能方向は、固定嵌合部14に嵌合された被嵌合部30(
図3、
図5)を備える支柱12(
図3、
図5)における点Pを通る。摺動可能方向を固定嵌合部14に向かう方向にすることで、成形後収縮を吸収できる。
【0021】
摺動可能嵌合部13は、摺動可能方向の一方側又は他方側の少なくとも何れかの側が開放される。開放側には、開放部21が形成される。何れかの側を開放することで、空いている側から支柱12の被嵌合部30(
図3、
図5)を摺動可能嵌合部13に嵌めることができる。図示の例では、摺動可能嵌合部13において固定嵌合部14とは反対側が開放され、開放部21が形成される。このようにすることで、成形後収縮によって
図4において黒矢印で示す方向に被嵌合部30が摺動しても、開放部21からの被嵌合部30の脱落を抑制できる。
【0022】
図5は、支柱12の斜視図である。図示の例では、支柱12は、摺動可能嵌合部13及び固定嵌合部14の全ての嵌合部15に嵌合可能であるが、例えば、摺動可能嵌合部13に嵌合する支柱12の形状と、固定嵌合部14に嵌合する支柱12の形状とが異なってもよい。
【0023】
支柱12は、円柱状に構成された支持柱17と、被嵌合部30とを備える。被嵌合部30は、キャリア部11の複数の嵌合部15それぞれに嵌合されるものである。被嵌合部30の+Z方向及び-Z方向には、それぞれ同じ形状の支持柱17が延在する。被嵌合部30は、四隅に切り欠き部36を備える矩形又は略矩形の平板31を有する。被嵌合部30は、四辺のうちの対向する二辺に切り欠き部32(一方の辺の形成された切り欠き部32のみを図示)を備える矩形又は略矩形の平板33を有する。ここでいう略矩形とは、厳密な矩形ではないものの、上面視で概ね矩形の形状をいう。具体的には例えば、角を直角とせずに、例えば面取りによってR形状にした形状である。
【0024】
被嵌合部30は、挟持部35を備える。挟持部35は、対向して配置された一対の平板31,33を含む平板群34による挟持によって嵌合部15(
図2)に嵌合するものである。挟持部35は、一対の平板31,33間に、いずれも
図6に示すように、開放部21のX方向の長さL3及びZ方向の長さL4と同じ寸法を有する角柱18を備える。
【0025】
図6は、摺動可能嵌合部13に支柱12の被嵌合部30を嵌合させた状態を示す斜視図である。開放部21のX方向の長さ(幅)は長さL3である。摺動可能嵌合部13のX方向の長さ(挟持部35が挟持される部分)は、摺動可能嵌合部13のY方向全域において長さL3である。開放部21のZ方向の長さ(高さ)は長さL4である。摺動可能嵌合部13のZ方向の長さ(挟持部35が挟持される部分)も、長さL4である。従って、開放部21を通じて被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に挿入することで、被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に嵌合できる。
【0026】
摺動可能嵌合部13は、開放部21が形成された開放側への被嵌合部30の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。摺動規制部材41を備えることで、摺動可能嵌合部13に嵌められた被嵌合部30が開放部21から脱落することを抑制できる。
【0027】
摺動規制部材41は、開放部21が形成された開放側(-Y方向)から奥側(+Y方向)に向かって上る傾斜面42aを備える爪42である。爪42の前辺以外の3辺が切り欠かれることにより、爪42の後端が自由端となり、爪42が弾性変形可能である。爪42を備えることで、開放部21から被嵌合部30を挿入したときに傾斜面42aを-Z方向に押し込むようにして被嵌合部30を+Y方向に摺動できる。そして、爪42の奥側の端部42bを乗り越えることで、反力により傾斜面42aが+Z方向に持ち上がり、被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に係止できる。
【0028】
図7は、
図6の上面図である。
図7は、
図6において+Z方向から-Z方向を視る図である。摺動可能嵌合部13への被嵌合部30の係止は、開放部21側の2つの切り欠き部36の端面36aが爪42の端部42bに接触することで行われる。爪42による切り欠き部36の係止時、爪42の端部42bのY方向位置と、角柱18の前側の端部18aのY方向位置とはほぼ一致する。
【0029】
摺動可能嵌合部13において、開放部21から視て奥側(開放部21とは反対側)に存在する端面43と爪42の端部42bとの間の距離は長さL5である。支柱12において、角柱18の+Y方向の端面18bと切り欠き部36の-Y方向の端面36aとの間の距離は長さL6である。長さL5は長さL6よりも長い。このため、支柱12は、端面43と端部42bとの間に形成される摺動可能領域において摺動する。摺動可能領域での摺動時の摺動量は、長さL5から長さL6を引いた長さである。
【0030】
平板31のX方向の長さは長さL7である。摺動規制部材41,41の間隔は長さL8である。長さL7は長さL8よりも長い。このため、平板31は、開放部21側に摺動しようとしても平板31が摺動規制部材41,41に引っ掛かり、支柱12を摺動可能嵌合部13の端面43と爪42の端部42bとの間に配置できる。
【0031】
図8は、
図6の下面図である。
図8は、
図6において-Z方向から+Z方向を視る図である。
図8は、開放部21側の2つの切り欠き部36(
図7)の端面36a(
図7)が爪42の端部42b(
図7)に接触している状態を示す。
【0032】
上記のように、平板33は、四辺のうちの対向する二辺に切り欠き部32を備える。摺動可能嵌合部13は、切り欠き部32と対向する位置に、被嵌合部30が摺動可能嵌合部13に嵌合した仮状態で係止する係止部45を備える。ここでいう仮状態は、成形後収縮前の状態であり、具体的には例えば、内蔵部品10を配置した状態でのブロー成型後パリソンの冷却前の状態をいう。従って、摺動可能嵌合部13は、係止部45により構成される摺動可能方向(Y方向)への位置決め機構を備える。係止部45は、例えば、応力が作用していないときに切り欠き部32に屈曲部45aが嵌るように構成された板ばねである。係止部45を備えることで、被嵌合部30が摺動可能嵌合部13に嵌合した仮状態で支柱12を係止できる。これにより、支柱12を係止した状態で内蔵部品10を燃料タンク1に配置できる。
【0033】
係止部45は、支柱12を挟むように一対備えられる。一対の係止部45,45同士のX方向の長さは長さL9である。なお、対向する二辺に備えられる切り欠き部32,32同士のX方向の長さも長さL9である。また、平板33のX方向の長さは長さL10である。長さL10は長さL9よりも長い。このため、係止部45によって平板33を有する支柱12を係止できる。
【0034】
図9は、成形後収縮時における支柱12の動きを説明する図である。
図9の上図(
図8と同じ状態)に示すように、仮状態では、切り欠き部32は係止部45によって係止される。このとき、係止部45,45同士のX方向の間隔は、切り欠き部32,32同士のX方向の間隔と等しく、長さL9(
図8)である。
【0035】
係止部45により係止された状態での燃料タンク1(
図1)の成形後収縮時、
図2を参照して説明したように、嵌合部15の位置(XY位置)が維持された状態、即ち、キャリア部11の位置が維持された状態で、支柱12が移動する。この結果、係止部45による係止が解除され、支柱12は摺動可能領域において固定嵌合部14に向かって摺動する。支柱12が成形後収縮時に係止を解除して固定嵌合部14に向かって摺動することで、支柱12を係止した状態で配置した内蔵部品10により、上記
図2のように、相似変形に対応する成形後収縮を吸収できる。
【0036】
図9の下図に示すように、支柱12は摺動量L11だけ摺動する。支柱12の摺動量L11は、摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離、及び、内蔵部品10を収容するパリソン(燃料タンク1において成形後収縮する部材)の構成材料の収縮率から決定できる。摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離は、摺動量L11を決定する支柱12毎に決定され、例えば上記
図3の例でいえば、XY平面上において一番大きな変位を有する摺動可能嵌合部13の支柱12の摺動量は、固定嵌合部14の支柱12との間のXY平面上の距離である長さL2に基づき決定できる。また、内蔵部品10を収容するパリソンの構成材料の収縮率は、構成材料に応じて既知の値から選択してもよく、実験等によって決定してもよい。
【0037】
成形後収縮前と成形後収縮後との収縮率が把握できれば、上記距離に上記収縮率を乗じることで、成形後収縮の大きさ、即ち支柱12の摺動量L11を算出できる。支柱12は、摺動可能嵌合部13の端面43と爪42の端部42bとの間に形成されるY方向の長さL5(
図7)の摺動可能領域において摺動する。また、長さL6(
図7参照)は、上記のように、角柱18の+Y方向の端面18bと切り欠き部36の-Y方向の端面36aとの間の距離である。従って、摺動部分である長さL5から長さL6を引いた値が摺動量L11以上であれば、成形後収縮時の摺動可能嵌合部13による移動の規制を抑制できる。
【0038】
このように、摺動可能領域の摺動可能方向の長さ(長さL5)は、摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離(
図3の例では長さL2)、及び、前記内蔵部品を収容するパリソンの構成材料の収縮率に基づき、決定された値であることが好ましい。これにより、成形後収縮時の摺動量を推測し、十分な摺動可能領域を設けることができる。
【0039】
図10は、摺動可能嵌合部13への支柱12の組付けを説明する図である。黒矢印で示すように支柱12を開放部21に挿入することで、摺動可能嵌合部13への支柱12の組付けが行われる。支柱12は、摺動規制部材41,41の配置方向(X方向)と、長さL5を有する平板31の長手方向とが同一方向になるように、開放部21に挿入される。これにより、
図6~
図8に示したように摺動可能嵌合部13に支柱12が組付けられる。
【0040】
支柱12の組付け時、仮に、
図10に示す支柱12の向きとは異なる向きで摺動可能嵌合部13に組付けようとすると、誤組(組付け異常)が生じる。内蔵部品10では、このような誤組を検知できる。
【0041】
図11は、
図10の組付け時に誤組が生じた場合を説明する図である。
図11の例では、
図10に示した支柱12の向きからXY平面内で90°回転させた状態で支柱12を開放部21に挿入した様子を示している。
【0042】
図12は、
図10の上面図である。図示の例では、平板31の短手方向の長さは長さL12である。長さL12は、開放部21のX方向長さの長さL3よりも長い。このため、
図10に示した支柱12の向きからXY平面内で90°回転させた状態で支柱12を開放部21に挿入しても、被嵌合部30は摺動可能嵌合部13に嵌合する。また、長さL12は、摺動規制部材41,41同士の間隔の長さL8よりも長い。このため、
図10に示した支柱12の向きからXY平面内で90°回転させた状態で支柱12を開放部21に挿入しても、平板31の開放部21側への摺動は摺動規制部材41により規制される。
【0043】
図13は、
図10の下面図である。上記のように、支柱12は、
図10に示した向きから90°回転させた状態で開放部21に挿入される。平板33の短手方向の長さは長さL13である。長さL13は、一対の係止部45,45同士のX方向の長さL9よりも短い。このため、平板33は一対の係止部45,45に接触しない。さらには、平板33に備えられる切り欠き部32と、摺動可能嵌合部13に備えられる係止部45とも接触しない。このため、
図13に示す状態では、係止部45は支柱12の平板33を係止せず、位置決めが行われない。この結果、支柱12がぐらつき、摺動可能嵌合部13での支柱12の誤組を検知できる。
【0044】
図14は、固定嵌合部14の斜視図である。固定嵌合部14は、摺動可能嵌合部13と同様に、支柱12の挟持部35の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。ただし、固定嵌合部14は、摺動可能嵌合部13とは異なり、リブ51を備える。リブ51と摺動規制部材41との間には支柱12の挟持部35が配置される。
【0045】
図15は、
図14の上面図である。リブ51は、平板31を挟むようにして対称に一対設けられる。リブ51は、平板31のY方向の位置を規制することが可能な形状を有していればよく、例えば、L字形状を有し、開放部21の方向(Y方向)とともに開放部21に平行な方向(X方向)の二方向に延在する。図示の例では、リブ51は、X方向に延在するリブ51cと、Y方向に延在するリブ51bとを含む。これらのうち、リブ51cにより、支柱12の固定時に支柱12のX方向への位置決めを行うことができる。リブ51bにより、詳細は
図16を参照しながら後記するが、開放部21からの支柱12の挿入時、+Y方向への挿入を案内できる。
【0046】
一方のリブ51における-X方向の端部51aと、他方のリブ51における+X方向の端部51aとの間の距離は長さL14である。長さL14は、X方向に延在する平板31の端面のうちの切り欠き部36を除いた部分の端面31aの長さL15よりもわずかに長い。従って、端部51a,51aの間には、平板31の一部が配置される。これにより、平板31を備える支柱12のX方向への位置決めが行われる。
【0047】
リブ51b,51bの間の距離は長さL16である。長さL16は、平板31のX方向の長さである長さL7より長い。従って、平板31は、リブ51b,51bの間に配置される。リブ51のうちY方向に延在するリブ51bは、摺動可能方向と同方向(Y方向)に延在する平板31の端面31bのそれぞれと対向する。また、リブ51cは、開放部21から遠い側に配置される2つの切り欠き部36におけるY方向の端面36aのそれぞれと対向する。リブ51cは、端面36aから視て開放部21とは反対側に配置される。
【0048】
固定嵌合部14では、摺動可能嵌合部13とは異なり、平板31を備える支柱12が固定される。このため、固定嵌合部14は、一方側は開放されて開放部21が形成されるとともに、他端側は端面43(閉塞端面)が形成されて構成される。固定嵌合部14は、開放部21と端面43との間に、挟持部35の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。挟持部35は、摺動規制部材41と端面43とに係止される。図示の例では、挟持部35を構成する角柱18の端面18bのY方向位置は、固定嵌合部14の端面43のY方向位置とほぼ一致する。即ち、端面18bは端面43に接触する。また、開放部21側の2つの切り欠き部36の端面36aのY方向位置は、摺動規制部材41を構成する爪42の端部42bのY方向位置とほぼ一致する。即ち、端部42bは端面36aに接触する。このようにすることで、支柱12を固定嵌合部14に固定できる。
【0049】
リブ51cと摺動規制部材41の端部42bとの間の距離は長さL17である。また、Y方向に延在する平板31の端面のうちの切り欠き部36を除いた部分の端面31bの長さは長さL18である。長さL17は長さL18よりも長い。従って、平板31は、摺動規制部材41の端部42bとリブ51cとの間に配置される。
【0050】
図16は、固定嵌合部14への支柱12の組付けを説明する図である。黒矢印で示すように支柱12を開放部21に挿入することで、固定嵌合部14への支柱12の組付けが行われる。支柱12は、摺動規制部材41,41の配置方向(X方向)と、長さL5を有する平板31の長手方向とが同一方向になるように、開放部21に挿入される。このとき、上記のように、支柱12の+Y方向への挿入はリブ51bによって案内される。これにより、
図14及び
図15に示したように固定嵌合部14に支柱12が組付けられる。
【0051】
支柱12の組付け時、仮に、
図16に示す支柱12の向きとは異なる向きで固定嵌合部14に組付けようとすると、誤組(組付け異常)が生じる。内蔵部品10では、このような誤組を検知できる。
【0052】
図17は、
図16の組付け時に誤組が生じた場合を説明する図である。
図17の例では、
図16に示した支柱12の向きからXY平面内で90°回転させた状態で支柱12を開放部21に挿入した様子を示している。
【0053】
図18は、
図17の上面図である。摺動規制部材41,41の間隔は長さL8である。また、平板31の短手方向の長さは長さL12である。長さL12は長さL8よりも長い。このため、開放部21に支柱12を挿入したとき、平板31は摺動規制部材41,41の上に配置される。
【0054】
また、X方向に延在する平板31の端面のうちの切り欠き部36を除いた部分の端面31aのX方向の長さは長さL15である。また、リブ51cと摺動規制部材41の端部42bとの間の距離は長さL17である。長さL14は長さL17よりも長い。従って、平板31を開放部21から最も奥まで挿入しても、平板31は、リブ51cと摺動規制部材41の端部42bとの間に嵌らず、摺動規制部材41,41の上に配置されたままとなる。この結果、支柱12は固定されず、少しの力で支柱12が抜けるため、固定嵌合部14での支柱12の誤組を検知できる。
【0055】
以上説明したように、燃料タンク1に備えられる内蔵部品10では、キャリア部11の嵌合部15に対して支柱12の被嵌合部30が摺動可能に嵌合される。このため、キャリア部11自体の非剛体化を抑制でき、内蔵部品10を精度良く燃料タンク1内に配置できる。これにより、燃料タンク1の成形後収縮を適切に吸収できる。
【0056】
また、複数の摺動可能嵌合部13の摺動可能方向が固定嵌合部14に向かう方向とされる。このため、複雑な燃料タンク1の成型後収縮による変位を従来よりも吸収できる。これにより、成形後収縮に伴う支柱12の燃料タンク1からの剥離を抑制でき、燃料タンク1の信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料タンク
10 内蔵部品
11 キャリア部
12 支柱
13 摺動可能嵌合部
14 固定嵌合部
15 嵌合部
30 被嵌合部
32 切り欠き部
33 平板
35 挟持部
36 切り欠き部
41 摺動規制部材
42 爪
42a 傾斜面
42b 端部
43 端面(閉塞端面)
45 係止部