(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】複合弁及びそれを用いた車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 41/20 20210101AFI20221006BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20221006BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20221006BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20221006BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20221006BHJP
F16K 11/048 20060101ALI20221006BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20221006BHJP
【FI】
F25B41/20 Z
B60H1/22 651B
B60H1/32 613B
F16K31/04 Z
F16K11/044 Z
F16K11/048 Z
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2018158330
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227367(JP,A)
【文献】特開2014-070867(JP,A)
【文献】特開2014-081159(JP,A)
【文献】特開2012-166679(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125697(WO,A1)
【文献】特開2018-124021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路に適用される複合弁であって、
第1冷媒入口、第1冷媒出口、第2冷媒入口、第2冷媒出口、及び、第3冷媒出口を有するハウジングと、
該ハウジング内に形成され、前記第1冷媒入口と前記第1冷媒出口間に渡る第1冷媒通路と、
前記ハウジング内に形成され、前記第2冷媒入口と前記第2冷媒出口間に渡る第2冷媒通路と、
前記第1冷媒通路に設けられ、当該第1冷媒通路を開閉する第1開閉弁部と、
前記第2冷媒通路に設けられ、当該第2冷媒通路を開閉する第2開閉弁部と、
前記ハウジング内に形成され、前記第2開閉弁部より前記第2冷媒入口側の前記第2冷媒通路から前記第3冷媒出口に至る第3冷媒通路と、
該第3冷媒通路に設けられ、前記第3冷媒通路の開度を調整する膨張弁部と、
アクチュエータを介して前記膨張弁部、前記第1開閉弁部、及び、前記第2開閉弁部を駆動する駆動装置と、
前記ハウジング内に形成され、前記第1開閉弁部より前記第1冷媒入口側の前記第1冷媒通路と、前記第2開閉弁部より前記第2冷媒出口側の前記第2冷媒通路とを連通する連通路と、
該連通路に設けられ、前記第2冷媒通路方向を順方向とされた逆止弁を備えたことを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記駆動装置により、
前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、前記膨張弁部が前記第3冷媒通路の開度を調整する状態と、
前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じ、前記膨張弁部が前記第3冷媒通路の開度を調整する状態とすることを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
【請求項3】
前記第1開閉弁部より前記第1冷媒入口側の前記第1冷媒通路と、前記第2開閉弁部より前記第2冷媒出口側の前記第2冷媒通路は、前記ハウジング内において隣接して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、
前記第1冷媒入口、前記第1冷媒出口、前記第1冷媒通路、及び、前記第1開閉弁部が設けられた第1ハウジング部材と、
前記第2冷媒入口、前記第2冷媒出口、前記第2冷媒通路、及び、前記第2開閉弁部が設けられた第2ハウジング部材と、
前記第3冷媒出口、前記第3冷媒通路、及び、前記膨張弁部が設けられた第3ハウジング部材とを結合して成り、
前記アクチュエータが前記各ハウジング部材に渡って設けられ、前記膨張弁部及び前記各開閉弁部を駆動することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の複合弁。
【請求項5】
前記第1開閉弁部より前記第1冷媒入口側の前記第1冷媒通路は前記第1ハウジング部材の一面に近接して当該第1ハウジング部材内に形成され、
前記第2開閉弁部より前記第2冷媒出口側の前記第2冷媒通路は前記第2ハウジング部材の一面に近接して当該第2ハウジング部材内に形成されていると共に、
前記第1ハウジング部材は、前記第1開閉弁部より前記第1冷媒入口側の前記第1冷媒通路から前記第1ハウジング部材の一面に至る第1連通部を有し、
前記第2ハウジング部材は、前記第2開閉弁部より前記第2冷媒出口側の前記第2冷媒通路から前記第2ハウジング部材の一面に至る第2連通部を有し、
前記第1及び第2ハウジング部材は、それらの前記一面同士が結合され、その状態で前記各連通部は合致して前記連通路を構成し、前記第3ハウジング部材は、前記第2ハウジングの他面に結合されることを特徴とする請求項4に記載の複合弁。
【請求項6】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
冷媒入口が前記圧縮機の吐出側の冷媒配管に接続され、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
冷媒出口が前記圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続され、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
前記放熱器の冷媒出口側の冷媒配管に接続され、車室外に設けられた室外熱交換器と、
前記吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、
制御装置を備え、
前記室外熱交換器の冷媒出口側の冷媒配管が前記複合弁の前記第1冷媒入口に接続され、
前記圧縮機の吸込側の冷媒配管が前記複合弁の前記第1冷媒出口に接続され、
前記放熱器の冷媒出口側の冷媒配管が前記複合弁の前記第2冷媒入口に接続され、
前記室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管が前記複合弁の前記第2冷媒出口に接続され、
前記室外熱交換器の冷媒入口側の冷媒配管が前記複合弁の前記第3冷媒出口に接続され、
前記制御装置により前記複合弁の駆動装置が制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の何れかの複合弁を用いた車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複合弁の駆動装置を制御することにより、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、前記膨張弁部により前記第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、前記吸熱器への冷媒の流入を阻止して、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を前記膨張弁部で減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、前記膨張弁部により前記第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、
放熱した当該冷媒の一部を前記第2開閉弁部を経て前記室内膨張弁に流し、該室内膨張弁で減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させ、前記放熱した冷媒の残りを前記膨張弁部で減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる除湿暖房モードと、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じ、前記膨張弁部により前記第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器と前記室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を前記複合弁の逆止弁を経て前記室内膨張弁に流し、該室内膨張弁で減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を前記複合弁の逆止弁を経て前記室内膨張弁に流し、前記室内膨張弁で減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、
を切り換えて実行することを特徴とする請求項6に記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
冷媒を用いて車両に搭載された被温調対象を冷却する被温調対象冷却装置を備え、
該被温調対象冷却装置は、冷媒を吸熱させて前記被温調対象を冷却するための被温調対象用熱交換器と、該被温調対象用熱交換器に流入する冷媒を減圧する補助膨張弁を有し、前記被温調対象用熱交換器の冷媒入口が前記室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管から分岐した分岐配管に接続され、前記被温調対象用熱交換器の冷媒出口が前記圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続されると共に、
前記制御装置は、前記複合弁の駆動装置を制御することにより、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を前記複合弁の逆止弁を経て前記室内膨張弁と前記補助膨張弁に流し、前記室内膨張弁で減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させ、前記補助膨張弁で減圧した後、前記被温調対象用熱交換器で吸熱させる冷房/被温調対象冷却モードと、
前記複合弁の前記第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により前記第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、前記吸熱器への冷媒の流入を阻止し、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を前記複合弁の逆止弁を経て前記補助膨張弁に流し、当該補助膨張弁で減圧した後、前記被温調対象用熱交換器で吸熱させる被温調対象冷却モードと、
を切り換えて実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路に適用される複合弁、及び、それを用いたヒートポンプ式の車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に適用することができる空気調和装置として、圧縮機と、放熱器と、吸熱器と、室外熱交換器が接続された冷媒回路を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器において吸熱させることで車室内を暖房する暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室内膨張弁で減圧した後、吸熱器において吸熱させることで車室内を冷房する冷房モード等を切り換えて実行する車両用空気調和装置が開発されている。また、このような車室内の運転モードは、多数の電磁弁や膨張弁を用いて切り換えることにより実現されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-237052号公報
【文献】特開2015-45453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の車両用空気調和装置の運転モードを多数の電磁弁や膨張弁を用いることで切り換えていたため、部品点数が多くなり、コストも高騰すると共に、限られたエンジンルーム(電気自動車の場合にはエンジンは存在しないが、走行や空調に関わる装置が設置される車室外の空間を意味する)のスペースを占有してしまう不都合があった。
【0005】
一方、単一の駆動手段で複数の弁体を駆動する統合弁(複合弁)も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、車両用空気調和装置で従来用いられていた複数の電磁弁や膨張弁を複合化することで、部品点数の削減を図ることができる複合弁、及び、それを用いた車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合弁は、冷媒回路に適用されるものであって、第1冷媒入口、第1冷媒出口、第2冷媒入口、第2冷媒出口、及び、第3冷媒出口を有するハウジングと、このハウジング内に形成され、第1冷媒入口と第1冷媒出口間に渡る第1冷媒通路と、ハウジング内に形成され、第2冷媒入口と第2冷媒出口間に渡る第2冷媒通路と、第1冷媒通路に設けられ、当該第1冷媒通路を開閉する第1開閉弁部と、第2冷媒通路に設けられ、当該第2冷媒通路を開閉する第2開閉弁部と、ハウジング内に形成され、第2開閉弁部より第2冷媒入口側の第2冷媒通路から第3冷媒出口に至る第3冷媒通路と、この第3冷媒通路に設けられ、第3冷媒通路の開度を調整する膨張弁部と、アクチュエータを介して膨張弁部、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部を駆動する駆動装置と、ハウジング内に形成され、第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路と、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路とを連通する連通路と、この連通路に設けられ、第2冷媒通路方向を順方向とされた逆止弁を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の複合弁は、上記発明において駆動装置により、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、膨張弁部が第3冷媒通路の開度を調整する状態と、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じ、膨張弁部が第3冷媒通路の開度を調整する状態とすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の複合弁は、上記各発明において第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路と、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路は、ハウジング内において隣接して形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の複合弁は、上記各発明においてハウジングは、第1冷媒入口、第1冷媒出口、第1冷媒通路、及び、第1開閉弁部が設けられた第1ハウジング部材と、第2冷媒入口、第2冷媒出口、第2冷媒通路、及び、第2開閉弁部が設けられた第2ハウジング部材と、第3冷媒出口、第3冷媒通路、及び、膨張弁部が設けられた第3ハウジング部材とを結合して成り、アクチュエータが各ハウジング部材に渡って設けられ、膨張弁部及び各開閉弁部を駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の複合弁は、上記発明において第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路は第1ハウジング部材の一面に近接して当該第1ハウジング部材内に形成され、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路は第2ハウジング部材の一面に近接して当該第2ハウジング部材内に形成されていると共に、第1ハウジング部材は、第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路から第1ハウジング部材の一面に至る第1連通部を有し、第2ハウジング部材は、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路から第2ハウジング部材の一面に至る第2連通部を有し、第1及び第2ハウジング部材は、それらの一面同士が結合され、その状態で各連通部は合致して連通路を構成し、第3ハウジング部材は、第2ハウジング部材の他面に結合されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明の複合弁と、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒入口が圧縮機の吐出側の冷媒配管に接続され、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒出口が圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続され、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、放熱器の冷媒出口側の冷媒配管に接続され、車室外に設けられた室外熱交換器と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、制御装置を備え、室外熱交換器の冷媒出口側の冷媒配管が複合弁の第1冷媒入口に接続され、圧縮機の吸込側の冷媒配管が複合弁の第1冷媒出口に接続され、放熱器の冷媒出口側の冷媒配管が複合弁の第2冷媒入口に接続され、室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管が複合弁の第2冷媒出口に接続され、室外熱交換器の冷媒入口側の冷媒配管が複合弁の第3冷媒出口に接続され、制御装置により複合弁の駆動装置が制御されることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、複合弁の駆動装置を制御することにより、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、膨張弁部により第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、吸熱器への冷媒の流入を阻止して、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を膨張弁部で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、膨張弁部により第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒の一部を第2開閉弁部を経て室内膨張弁に流し、この室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、放熱した冷媒の残りを膨張弁部で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる除湿暖房モードと、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じ、膨張弁部により第3冷媒通路の開度を調整する状態とし、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器と室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を複合弁の逆止弁を経て室内膨張弁に流し、この室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を複合弁の逆止弁を経て室内膨張弁に流し、室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、を切り換えて実行することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、請求項6又は請求項7の発明において冷媒を用いて車両に搭載された被温調対象を冷却する被温調対象冷却装置を備え、この被温調対象冷却装置は、冷媒を吸熱させて被温調対象を冷却するための被温調対象用熱交換器と、この被温調対象用熱交換器に流入する冷媒を減圧する補助膨張弁を有し、被温調対象用熱交換器の冷媒入口が室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管から分岐した分岐配管に接続され、被温調対象用熱交換器の冷媒出口が圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続されると共に、制御装置は、複合弁の駆動装置を制御することにより、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を複合弁の逆止弁を経て室内膨張弁と補助膨張弁に流し、室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、補助膨張弁で減圧した後、被温調対象用熱交換器で吸熱させる冷房/被温調対象冷却モードと、複合弁の第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部により第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じた状態で、吸熱器への冷媒の流入を阻止し、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を複合弁の逆止弁を経て補助膨張弁に流し、当該補助膨張弁で減圧した後、被温調対象用熱交換器で吸熱させる被温調対象冷却モードと、を切り換えて実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷媒回路に適用される複合弁において、第1冷媒入口、第1冷媒出口、第2冷媒入口、第2冷媒出口、及び、第3冷媒出口を有するハウジングと、このハウジング内に形成され、第1冷媒入口と第1冷媒出口間に渡る第1冷媒通路と、ハウジング内に形成され、第2冷媒入口と第2冷媒出口間に渡る第2冷媒通路と、第1冷媒通路に設けられ、当該第1冷媒通路を開閉する第1開閉弁部と、第2冷媒通路に設けられ、当該第2冷媒通路を開閉する第2開閉弁部と、ハウジング内に形成され、第2開閉弁部より第2冷媒入口側の第2冷媒通路から第3冷媒出口に至る第3冷媒通路と、この第3冷媒通路に設けられ、第3冷媒通路の開度を調整する膨張弁部と、アクチュエータを介して膨張弁部、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部を駆動する駆動装置と、ハウジング内に形成され、第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路と、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路とを連通する連通路と、この連通路に設けられ、第2冷媒通路方向を順方向とされた逆止弁を備えているので、例えば、請求項2の発明の如く駆動装置により、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を開き、膨張弁部が第3冷媒通路の開度を調整する状態と、第1開閉弁部、及び、第2開閉弁部が第1冷媒通路、及び、第2冷媒通路を閉じ、膨張弁部が第3冷媒通路の開度を調整する状態とすることができるようにし、請求項6の発明の如く冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒入口が圧縮機の吐出側の冷媒配管に接続され、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒出口が圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続され、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、放熱器の冷媒出口側の冷媒配管に接続され、車室外に設けられた室外熱交換器と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、制御装置を備えた車両用空気調和装置に適用し、室外熱交換器の冷媒出口側の冷媒配管を複合弁の第1冷媒入口に接続し、圧縮機の吸込側の冷媒配管を複合弁の第1冷媒出口に接続し、放熱器の冷媒出口側の冷媒配管を複合弁の第2冷媒入口に接続し、室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管を複合弁の第2冷媒出口に接続し、室外熱交換器の冷媒入口側の冷媒配管を複合弁の第3冷媒出口に接続すれば、制御装置により複合弁の駆動装置を制御することで、請求項7の発明の如き暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、及び、冷房モードを切り換えて実行することが可能となる。
【0016】
また、請求項8の発明の如く冷媒を用いて車両に搭載された被温調対象を冷却する被温調対象冷却装置を設け、この被温調対象冷却装置に、冷媒を吸熱させて被温調対象を冷却するための被温調対象用熱交換器と、この被温調対象用熱交換器に流入する冷媒を減圧する補助膨張弁を設けて被温調対象用熱交換器の冷媒入口を室内膨張弁の冷媒入口側の冷媒配管から分岐した分岐配管に接続し、被温調対象用熱交換器の冷媒出口を圧縮機の吸込側の冷媒配管に接続すれば、制御装置により複合弁の駆動装置を制御することで、冷房/被温調対象冷却モードと被温調対象冷却モードを切り換えて実行することが可能となる。
【0017】
即ち、従来複数の電磁弁が担っていた車両用空気調和装置の運転モードの切り換え機能と、膨張弁が担っていた冷媒の減圧機能を、複合弁に集約することができるようになり、部品点数の削減による部品コストや生産コストの低減と、設置スペースの縮小を図ることができるようになる。
【0018】
この場合、請求項3の発明の如く第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路と、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路を、ハウジング内において隣接して形成すれば、第1冷媒通路と第2冷媒通路を短い寸法の連通路にて連通することができるようになり、連通路における圧損等のロスを最低限に抑制することが可能となる。
【0019】
また、請求項4の発明の如くハウジングを、第1冷媒入口、第1冷媒出口、第1冷媒通路、及び、第1開閉弁部が設けられた第1ハウジング部材と、第2冷媒入口、第2冷媒出口、第2冷媒通路、及び、第2開閉弁部が設けられた第2ハウジング部材と、第3冷媒出口、第3冷媒通路、及び、膨張弁部が設けられた第3ハウジング部材とを結合して構成し、アクチュエータを各ハウジング部材に渡って設けて膨張弁部及び各開閉弁部を駆動するようにすれば、複合弁の製造/組立作業も容易となる。
【0020】
特に、請求項5の発明の如く第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路を第1ハウジング部材の一面に近接して当該第1ハウジング部材内に形成し、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路を第2ハウジング部材の一面に近接して当該第2ハウジング部材内に形成すると共に、第1ハウジング部材に、第1開閉弁部より第1冷媒入口側の第1冷媒通路から第1ハウジング部材の一面に至る第1連通部を形成し、第2ハウジング部材に、第2開閉弁部より第2冷媒出口側の第2冷媒通路から第2ハウジング部材の一面に至る第2連通部を形成して、第1及び第2ハウジング部材の一面同士を結合したときに各連通部が合致して連通路を構成し、第3ハウジング部材は、第2ハウジング部材の他面に結合するようにすれば、短い寸法の連通路を容易に構成し、逆止弁の取り付けも容易となる共に、第3ハウジング部材も支障無く結合することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した一実施例の複合弁の断面図である(膨張弁部が開度を調整し、第1開閉弁部及び第2開閉弁部が開いた状態)。
【
図2】膨張弁部が第3冷媒通路を全閉とし、第1開閉弁部及び第2開閉弁部が第1及び第2冷媒通路を開いた状態の
図1の複合弁の断面図である。
【
図3】膨張弁部が第3冷媒通路の開度を調整し、第1開閉弁部及び第2開閉弁部が第1及び第2冷媒通路を閉じた状態の
図1の複合弁の断面図である。
【
図4】膨張弁部が第3冷媒通路を全開とし、第1開閉弁部及び第2開閉弁部が第1及び第2冷媒通路を閉じた状態の
図1の複合弁の断面図である。
【
図6】
図1の複合弁を適用した車両用空気調和装置の一実施例の構成図である。
【
図7】
図6の車両用空気調和装置の制御装置としての空調コントローラのブロック図である。
【
図8】
図7の空調コントローラによる暖房モードを説明する図である。
【
図9】
図7の空調コントローラによる除湿暖房モードを説明する図である。
【
図10】
図7の空調コントローラによる除湿冷房モード/冷房モードを説明する図である。
【
図11】
図7の空調コントローラによる冷房/被温調対象冷却モードを説明する図である。
【
図12】
図7の空調コントローラによる被温調対象冷却モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
(1)複合弁81
図1乃至
図4は本発明を適用した一実施例の複合弁81の断面図を示し、
図5は複合弁81の動作を説明する図である。本発明の複合弁81は後述する車両用空気調和装置1等の冷媒回路Rに適用されるものであって、アルミニウム等の金属から構成されたハウジング82と、このハウジング82内に設けられた膨張弁部6、逆止弁18、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22と、これら膨張弁部6、第1及び第2開閉弁部21、22を駆動する駆動装置83を備えている。
【0023】
駆動装置83はアクチュエータ84を介して膨張弁部6を調整駆動し、更に、第1及び第2開閉弁部21、22を開閉駆動するものである。この実施例の駆動装置83はステッピングモータにて構成されている。
【0024】
また、実施例のハウジング82は、何れもアルミニウム等の金属ブロックから構成された第1ハウジング部材86と第2ハウジング部材87と第3ハウジング部材85の三部品を結合して構成されており、第1ハウジング部材86の一方の側面及び他方の側面にはそれぞれ第1冷媒入口88及び第1冷媒出口89が形成され、第1ハウジング部材86の内部にはこれら第1冷媒入口88と第1冷媒出口89間に渡る第1冷媒通路91が形成されている。
【0025】
また、第2ハウジング部材87の他方の側面及び一方の側面にはそれぞれ第2冷媒入口92及び第2冷媒出口93が形成され、第2ハウジング部材87の内部にはこれら第2冷媒入口92と第2冷媒出口93間に渡る第2冷媒通路94が形成されている。更に、第3ハウジング部材85の他方の側面には第3冷媒出口97が形成され、一面には開口85Aが形成されており、第3ハウジング部材85の内部にはこれら開口85Aと第3冷媒出口97間に渡る第3冷媒通路98が形成されている。
【0026】
前記第1開閉弁部21は、第1冷媒通路91に設けられた第1弁座21Aとこの第1弁座21Aに当接して第1冷媒通路91を開閉するための第1弁体21Bから構成されており、前記第2開閉弁部22は、第2冷媒通路94に設けられた第2弁座22Aとこの第2弁座22Aに当接して第2冷媒通路94を開閉するための第2弁体22Bから構成されている。
【0027】
前記膨張弁部6は、第3冷媒通路98に設けられた第3弁座6Aと、この第3弁座6Aに当接して第3冷媒通路98の開度を調整するための第3弁体6Bと、この第3弁体6Bに離接自在に当接するニードル弁体6Cとから構成されており、第3弁座6Aは開口85Aよりも第3冷媒出口97側の第3冷媒通路98内に位置している。第3弁体6B内には、第3弁座6A側の面から一側面に渡って内部通路6Dが形成されており、ニードル弁体6Cはこの内部通路6Dの第3弁座6A側の面の開口の開度を調整する。
【0028】
前記第1ハウジング部材86と第2ハウジング部材87はそれらの一面同士が結合され、第3ハウジング部材85の一面が第2ハウジング部材87の他面(一面の反対側の面)に結合されて一体化されたハウジング82となるが、第2ハウジング部材87の他面には第2開閉弁部22よりも第2冷媒入口92側の第2冷媒通路94に連通した開口87Aが形成されており、この開口87Aは第2ハウジング部材87の他面と第3ハウジング部材85の一面が結合されたときに第3ハウジング部材85の開口85Aと合致して相互に連通する。
【0029】
駆動装置83は第3ハウジング部材85の他面(一面の反対側の面)に取り付けられている。駆動装置83のアクチュエータ84は第1アクチュエータ部材84Aと第2アクチュエータ部材84Bと第3アクチュエータ部材84Cから成り、第1アクチュエータ部材84Aが駆動装置83側に位置し、ニードル弁体6Cはこの第1アクチュエータ部材84Aの先端に取り付けられている。第2アクチュエータ部材84Bは開口85Aと87Aの連通部分に位置して第3弁体6Bの第3弁座6Aとは反対側の面と第2弁体22B間に取り付けられ、伸縮可能とされている。第3アクチュエータ部材84Cは第2ハウジング部材87を貫通して第2弁体22Bと第1弁体21B間に取り付けられている。これにより、アクチュエータ84は各ハウジング部材85、87、86に渡って設けられ、膨張弁部6及び各開閉弁部21、22を駆動する。
【0030】
駆動装置83(ステッピングモータ)はパルス数で回転制御される。駆動装置83が回転すると、アクチュエータ84(第1~第3アクチュエータ部材84A~84C)によりニードル弁体6Cが上下に移動され、このニードル弁体6Cを介して第3弁体6B、第1弁体21B、及び、第2弁体22Bが同時に駆動される。即ち、実施例では駆動装置83が0パルスの位置にあるとき、第1アクチュエータ部材84A及びニードル弁体6Cは最も駆動装置83側に位置している。この状態では、第3弁体6Bは第3弁座6Aに当接して当該第3弁座6Aを閉じているが、ニードル弁体6Cは第3弁体6Bの内部通路6Dの開口に近接して当該内部通路6Dを開き、第3冷媒通路98の開度を絞る状態(開度を調整する状態)となる。また、第1弁体21Bは第1弁座21Aから離間して第1開閉弁部21が第1冷媒通路91を開き、且つ、第2弁体22Bが第2弁座22Aから離間して第2開閉弁部22が第2冷媒通路84を開く(
図1)。
【0031】
図1の状態から駆動装置83が数パルス正回転されると、第1アクチュエータ部材84Aがニードル弁体6Cを第3弁体6B側に移動させ、やがてニードル弁体6Cが第3弁体6Bの内部通路6Dの開口に当接して閉じ、この状態で膨張弁部6は第3冷媒通路98を全閉とする状態となる。尚、この出願において開度を調整するとは全閉や全開も含む概念とする。この状態が
図2の状態であり、この時点では依然第1弁体21Bは第1弁座21Aから離間して第1開閉弁部21が第1冷媒通路91を開き、第2弁体22Bが第2弁座22Aから離間して第2開閉弁部22が第2冷媒通路84を開いている(
図2)。
【0032】
図2の状態から駆動装置83が更に数パルス正回転されると、ニードル弁体6Cが第3弁体6Bを第2弁体22B方向に押すので、今度は第3弁体6Bが第3弁座6Aから離間し、再度第3冷媒通路98の開度を絞る状態(開度を調整する状態)となる。この状態が
図3の状態であり、この時点で第1弁体21Bは第1弁座21Aに当接して第1開閉弁部21が第1冷媒通路91を閉じ、第2弁体22Bが第2弁座22Aに当接して第2開閉弁部22が第2冷媒通路84を閉じる(
図3)。
【0033】
図3の状態から駆動装置83が更に数パルス正回転されると、ニードル弁体6Cが第3弁体6Bを第2弁体22B方向に押すので、やがて第3弁体6Bが第3弁座6Aから大きく離間し、第3冷媒通路98と全開とする状態となる。この状態が
図4の状態であり、この状態では第2アクチュエータ部材84Bが縮小するので、第1弁体21Bは第1弁座21Aに当接して第1開閉弁部21が第1冷媒通路91を閉じ、第2弁体22Bが第2弁座22Aに当接して第2開閉弁部22が第2冷媒通路84を閉じた状態を維持する(
図4)。
【0034】
また、駆動装置83を逆回転させば上記とは逆の動作となる。
図5に上記の動作を纏めて示している。尚、
図5の横軸は駆動装置83のパルス数、縦軸は各冷媒通路91、94、98の開口面積を示している。図中太い実線は膨張弁部6による第3冷媒通路98の開度、太い破線は第1開閉弁部21による第1冷媒通路91の開閉状態、細い破線は第2開閉弁22による第2冷媒通路94の開閉状態を示している。
図5中P1で示すパルス数が
図1の状態、P2は
図2の状態、P3は
図3の状態、P4は
図4の状態をそれぞれ示しており、この図に「暖房」で示すのは後述する車両用空気調和装置1の暖房モードでの制御範囲、「除湿暖房」で示すのは後述する除湿暖房モードでの制御範囲、「除湿冷房」で示すのは後述する除湿冷房モードでの制御範囲、「冷房」で示すのは後述する冷房モードでの制御範囲を示している。この図からの明らかな如く、除湿暖房モードでは膨張弁部6が第3冷媒通路98の開度を調整する状態から全閉とする状態までが使用される。このように、複合弁81は単一の駆動装置83により、膨張弁部6の開度調整と、二つの開閉弁部21及び22の開閉駆動を同時に行うように構成されている。
【0035】
また、第1弁座21Aより第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91は、第1ハウジング部材86の一面に近接して形成されており、この近接した部分から一面に至る第1連通部96Aが形成されている。また、第2弁座22Aより第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94は、第2ハウジング部材87の一面に近接して形成されており、この近接した部分から一面に至る第2連通部96Bが形成されている。そして、各連通部96A及び96Bは各ハウジング部材86及び87の一面同士が結合された状態で相互に合致し、連通路96を構成する。このとき、逆止弁18を何れか一方の連通部(96A、或いは、96B)に取り付けておき、各ハウジング部材86、87を結合するときに他方の連通部(96B、或いは、96A)内に進入させるようにすれば、逆止弁18も容易に取り付けられるようになる。
【0036】
また、係る構成で第1弁座21Aより第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91と、第2弁座22Aより第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94は、ハウジング82内において隣接するかたちとなる。連通路96は第1弁座21Aより第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91と、第2弁座22Aより第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94とを連通するものであり、この連通路96に逆止弁18が設けられ、第2冷媒通路94方向を順方向とされる。
【0037】
複合弁81は
図1の如く膨張弁部6のニードル弁体6Cが第3弁体6B内の内部通路6Dを開き、第3冷媒通路98の開度を調整する状態となり、第1開閉弁部21及び第2開閉弁部22が第1冷媒通路91及び第2冷媒通路94を開くと、第2冷媒入口92から流入した冷媒は分流され、一方は膨張弁部6にて絞られて第3冷媒出口97から流出し、他方は第2開閉弁部22を通過して第2冷媒出口93から流出する。また、第1冷媒入口88から流入した冷媒は第1開閉弁部21を通過して第1冷媒出口89から流出する(
図1に白抜き矢印と細線矢印で示す)。
【0038】
駆動装置83により複合弁81が
図2の状態となると、膨張弁部6は第3冷媒通路98を閉じるので、第2冷媒入口92から流入した冷媒が第2開閉弁部22を通過して第2冷媒出口93から流出し、第1冷媒入口88から流入した冷媒が第1開閉弁部21を通過して第1冷媒出口89から流出する状態となる(
図1に白抜き矢印で示す)。
【0039】
駆動装置83により複合弁81が
図3の状態となると、第2冷媒入口92から流入した冷媒が膨張弁部6にて絞られて第3冷媒出口97から流出し、第1冷媒入口88から第1冷媒通路91に流入した冷媒が逆止弁18を経て第2冷媒通路94に至り、第2冷媒出口93から流出するようになる(
図3に白抜き矢印と細線矢印で示す)。
【0040】
駆動装置83により複合弁81が
図4の状態となると、第2冷媒入口92から流入した冷媒が膨張弁部6をそのまま通過して第3冷媒出口97から流出し、第1冷媒入口88から第1冷媒通路91に流入した冷媒が逆止弁18を経て第2冷媒通路94に至り、第2冷媒出口93から流出するようになる(
図4に白抜き矢印と細線矢印で示す)。
【0041】
(2)車両用空気調和装置1の回路構成
次に、
図6を用いて本発明の複合弁81が適用される車両用空気調和装置1について説明する。
図6は一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。ここで、実施例の車両用空気調和装置1を適用する車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、車両にバッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を走行用モータ(電動モータ)に供給することで駆動し、走行するものである。
【0042】
即ち、車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、冷房/被温調対象冷却モード、及び、被温調対象冷却モードの各運転モードを選択的に実行することで車室内の空調を行い、更に、後述する被温調対象55の冷却も行うものである。
【0043】
尚、車両として係る電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車や通常のエンジン駆動式の自動車にも本発明が有効であることは云うまでもない。
【0044】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機(電動圧縮機)2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器4と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせるための室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器9と、アキュムレータ12と、前述した複合弁81等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
【0045】
尚、室内膨張弁8は、冷媒を減圧膨張させると共に、全開や全閉も可能とされている。また、放熱器4の冷媒入口は圧縮機2の吐出側の冷媒配管13Gに接続されている。また、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
【0046】
また、室外熱交換器7の冷媒出口側の冷媒配管13Aが複合弁81の第1冷媒入口88に接続され、複合弁81の第2冷媒出口93に室内膨張弁8の冷媒入口側の冷媒配管13Bが接続されている。複合弁81の第1冷媒出口89には圧縮機2の吸込側の冷媒配管の一部を構成する冷媒配管13Dが接続され、この冷媒配管13Dは吸熱器9の冷媒出口側に接続された冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cは圧縮機2の吸込側の冷媒配管の主体を構成するものである。そして、この冷媒配管13Dの接続点より下流側の冷媒配管13Cには逆止弁20が接続され、この逆止弁20より下流側の冷媒配管13Cがアキュムレータ12を介して圧縮機2の吸込側に接続されている。尚、逆止弁20はアキュムレータ12側が順方向とされている。また、吸熱器9の冷媒出口側から圧縮機2の吸込側に至る冷媒配管の全体を符号13Cで示す。
【0047】
更に、放熱器4の冷媒出口側の冷媒配管13Eが複合弁81の第2冷媒入口92に接続されており、室外熱交換器7の冷媒入口側の冷媒配管13Jが複合弁81の第3冷媒出口97に接続されている。
【0048】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(
図6では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0049】
また、
図6において23は補助加熱装置としての補助ヒータである。この補助ヒータ23は実施例ではPTCヒータ(電気ヒータ)から構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気下流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23が通電されて発熱すると、これが所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を補完する。
【0050】
また、放熱器4の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を放熱器4及び補助ヒータ23に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(
図6では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0051】
(3)被温調対象冷却装置61
更に、車両用空気調和装置1は、車両に搭載されたバッテリや走行用モータ等の被温調対象55に熱媒体を循環させて冷却するための被温調対象冷却装置61を備えている。即ち、実施例においてはバッテリや走行用モータが車両に搭載された被温調対象55となるが、以下は被温調対象55がバッテリであるものとして説明する。尚、本発明における被温調対象としてはバッテリや走行用モータに限らず、走行用モータを駆動するためのインバータ回路等の電気機器も含むものとする。
【0052】
実施例の被温調対象冷却装置61は、被温調対象55に熱媒体を循環させるための循環装置としての循環ポンプ62と、被温調対象用熱交換器64を備え、それらと被温調対象55が熱媒体配管68にて接続されている。実施例の場合、循環ポンプ62の吐出側に被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aの入口が接続され、この熱媒体流路64Aの出口に被温調対象55が接続されている。そして、被温調対象55の出口が循環ポンプ62の吸込側に接続されている。
【0053】
この被温調対象冷却装置61で使用される熱媒体としては、例えば水、HFO-1234yfのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。尚、実施例では水を熱媒体として採用している。また、被温調対象55(バッテリ)の周囲には例えば熱媒体が当該被温調対象55と熱交換関係で流通可能なジャケット構造が施されているものとする。
【0054】
そして、循環ポンプ62が運転されると、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aに流入する。この被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aを出た熱媒体は被温調対象55に至り、熱媒体はそこで被温調対象55と熱交換する。この被温調対象55と熱交換した熱媒体は循環ポンプ62に吸い込まれることで熱媒体配管68内を循環される。
【0055】
一方、室内膨張弁8の冷媒入口側の冷媒配管13Bには分岐配管72の一端が接続されている。この分岐配管72には電動弁から構成された補助膨張弁73が設けられている。この補助膨張弁73は被温調対象用熱交換器64の後述する冷媒流路64Bに流入する冷媒を減圧膨張させると共に全閉も可能とされている。
【0056】
そして、分岐配管72の他端は被温調対象用熱交換器64の冷媒流路64Bの冷媒入口に接続されており、この冷媒流路64Bの冷媒出口は冷媒配管74を介して逆止弁20の冷媒下流側であってアキュムレータ12の手前(冷媒上流側)の冷媒配管13Cに連通接続されている。従って、冷媒配管74も圧縮機2の吸込側の冷媒配管の一部を構成する。そして、これら補助膨張弁73等も冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、被温調対象冷却装置61の一部をも構成することになる。
【0057】
補助膨張弁73が開いている場合、冷媒配管13Bに流入した冷媒は分岐配管72に流れ、補助膨張弁73で減圧された後、被温調対象用熱交換器64の冷媒流路64Bに流入して、そこで蒸発する。冷媒は冷媒流路64Bを流れる過程で熱媒体流路64Aを流れる熱媒体から吸熱した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれることになる。
【0058】
(4)車両用空気調和装置1の空調コントローラ32(制御装置)
次に、
図7において、32は車両用空気調和装置1の制御を司る制御装置としての空調コントローラ32である。この空調コントローラ32は、被温調対象55(バッテリや走行用モータ)の制御を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ35(ECU)に車両通信バス45を介して接続され、情報の送受信を行う構成とされている。これら空調コントローラ32や車両コントローラ35(ECU)は何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータから構成されている。
【0059】
空調コントローラ32(制御装置)の入力には、車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ44と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TCI)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、空調のON/OFF、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO。室外熱交換器7が蒸発器として機能するとき、室外熱交換器温度TXOは室外熱交換器7における冷媒の蒸発温度となる)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
【0060】
また、空調コントローラ32の入力には更に、車両に搭載された被温調対象55(例えば、バッテリ)の温度(被温調対象55自体の温度、又は、被温調対象55を出た熱媒体の温度、或いは、被温調対象55に入る熱媒体の温度:被温調対象温度Tw)を検出する被温調対象温度センサ76の出力も接続されている。
【0061】
一方、空調コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室内膨張弁8と、複合弁81の駆動装置83と、補助ヒータ23と、被温調対象冷却装置61の循環ポンプ62と、補助膨張弁73が接続されている。そして、空調コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定、車両コントローラ35からの情報に基づいてこれらを制御するものである。
【0062】
(5)複合弁81を含む車両用空気調和装置1の動作
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作について説明する。空調コントローラ32(制御装置)は実施例では暖房モードと、除湿暖房モードと、除湿冷房モードと、冷房モードと、冷房/被温調対象冷却モード、被温調対象冷却モードを切り換えて実行可能とされている。以下、各運転モードについて説明する。
【0063】
(5-1)暖房モード
最初に、
図8を参照しながら暖房モードについて説明する。
図8は暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。空調コントローラ32により(オートモード)、或いは、空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、空調コントローラ32は複合弁81の駆動装置83を制御して、アクチュエータ84により膨張弁部6が第3冷媒通路98の開度を調整する状態とし、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22により第1冷媒通路91、及び、第2冷媒通路94を開く(
図1の状態)。また、室内膨張弁8及び補助膨張弁73を全閉とする(吸熱器9及び被温調対象用熱交換器64への冷媒の流入を阻止)。
【0064】
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4及び補助ヒータ23に通風される割合を調整する状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0065】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て複合弁81の膨張弁部6に至る。膨張弁部6に流入した冷媒はそこで減圧された後、冷媒配管13Jを経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(吸熱)。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13Aから複合弁81の第1冷媒通路91に入り、第1開閉弁部21を経て冷媒配管13Dに出る。
【0066】
冷媒配管13Dに出た冷媒は冷媒配管13Cに入り、逆止弁20を経てアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。尚、複合弁81の第2開閉弁部22も開いているが、室内膨張弁8及び補助膨張弁73が全閉となっているので第2冷媒通路94に冷媒は流れない。
【0067】
空調コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標ヒータ温度TCO(放熱器4の風下側の空気温度の目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器4の圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TCI)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づき、複合弁81の駆動装置83を制御して膨張弁部6による第3冷媒通路98の開度を調整し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度を制御する。前記目標ヒータ温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。また、放熱器4による暖房能力が不足する場合には補助ヒータ23に通電して発熱させ、暖房能力を補完する。
【0068】
(5-2)除湿暖房モード
次に、
図9を参照しながら除湿暖房モードについて説明する。
図9は除湿暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。除湿暖房モードでは、空調コントローラ32は上記暖房モードの状態において、室内膨張弁8を開いて冷媒を減圧膨張させる状態とする。これにより、放熱器4を経て冷媒配管13Eから複合弁81の第2冷媒入口92に至った冷媒の一部が複合弁81の第2開閉弁部22を経て第2冷媒通路94に分流され、この分流された冷媒が第2冷媒出口93から冷媒配管13Bに流入し、この冷媒配管13Bから室内膨張弁8に流れ、残りの冷媒が膨張弁部6に流れるようになる。即ち、分流された一部の冷媒が室内膨張弁8にて減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。
【0069】
空調コントローラ32は吸熱器9の出口における冷媒の過熱度(SH)を所定値に維持するように室内膨張弁8の弁開度を制御するが、このときに吸熱器9で生じる冷媒の吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。分流された残りの冷媒は、膨張弁部6で減圧された後、冷媒配管13Jを経て室外熱交換器7に入り、蒸発することになる。
【0070】
吸熱器9で蒸発した冷媒は、冷媒配管13Cに出て冷媒配管13Dからの冷媒(室外熱交換器7からの冷媒)と合流した後、逆止弁20及びアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。
【0071】
空調コントローラ32は目標ヒータ温度TCOから算出される目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて複合弁81の駆動装置83を制御し、膨張弁部6による第3冷媒通路98の開度を調整する。
【0072】
尚、前述した如くこの除湿暖房モードでは複合弁81の膨張弁部6は全閉にもなる。従って、
図9の除湿暖房モードにおいて
図2の如く膨張弁部6が全閉となった場合には、室外熱交換器7への冷媒の流入は阻止されることになるので、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒は複合弁81の第2開閉弁部22に全て流れるようになる。そして、冷媒は複合弁81の第2冷媒通路94を経て冷媒配管13Bから室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0073】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13Cを流れ、逆止弁20及びアキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより、車室内の除湿暖房が行われることになるが、この運転では室内側の空気流通路3内にある放熱器4(放熱)と吸熱器9(吸熱)の間で冷媒が循環されるので、外気からの熱の汲み上げは行われず、圧縮機2の消費動力分の暖房能力が発揮されることになる。従って、除湿作用を発揮する吸熱器9には冷媒の全量が流れるので、除湿能力は高いが、暖房能力は低くなる。
【0074】
(5-3)除湿冷房モード
次に、
図10を参照しながら除湿冷房モードについて説明する。
図10は除湿冷房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。除湿冷房モードでは、空調コントローラ32は室内膨張弁8を開いて冷媒を減圧膨張させる状態とし、複合弁81の駆動装置83によりアクチュエータ84を介して膨張弁部6により第3冷媒通路98の開度を調整する状態とし、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22により第1冷媒通路91、及び、第2冷媒通路94を閉じる(
図3の状態)。また、補助膨張弁73は全閉とされる(被温調対象用熱交換器64への冷媒の流入を阻止)。
【0075】
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4及び補助ヒータ23に通風される割合を調整する状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
【0076】
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て複合弁81の膨張弁部6に至り、そこで若干絞られた後、冷媒配管13Jを経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aに流出し、複合弁81の第1冷媒入口88から第1冷媒通路91に入る。
【0077】
このとき、第1開閉弁部21と第2開閉弁部22は閉じているので、第1冷媒通路91に流入した冷媒は、連通路96及び逆止弁18を経て第2冷媒通路94に入り、第2冷媒出口93から冷媒配管13Bに入るようになる。この冷媒配管13Bに流入した冷媒は、室内膨張弁8に至り、この室内膨張弁8にて減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0078】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13C及び逆止弁20を経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程でリヒート(再加熱:暖房、除湿暖房時よりも放熱能力は低い)されるので、これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
【0079】
空調コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づき、吸熱器温度Teを目標吸熱器温度TEOにするように圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)と目標ヒータ温度TCOから算出される目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)に基づき、放熱器圧力PCIを目標放熱器圧力PCOにするように複合弁81の駆動装置83を制御し、膨張弁部6により第3冷媒通路98の開度を制御することで放熱器4による必要なリヒート量を得る。
【0080】
(5-4)冷房モード
次に、冷房モードについて説明する。冷媒回路Rの流れは
図10の除湿冷房モードと同様である。冷房モードでは、空調コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において複合弁81の膨張弁部6の開度を全開とする(
図4の状態)。尚、エアミックスダンパ28は放熱器4及び補助ヒータ23に空気が通風される割合を調整する状態とする。
【0081】
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気は通風されるものの、その割合は小さくなるので(冷房時のリヒートのみのため)、ここは殆ど通過するのみとなり、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て複合弁81の膨張弁部6に至る。このとき膨張弁部6は第3冷媒通路98を全開としているので冷媒はそのまま膨張弁部6を経て冷媒配管13Jを通過し、室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13A、複合弁81の第1冷媒通路91、連通路96(逆止弁18)、第2冷媒通路94を経て冷媒配管13Bに入り、室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着し、空気は冷却される。
【0082】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13C及び逆止弁20を経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は吹出口29から車室内に吹き出されるので、これにより車室内の冷房が行われることになる。この冷房モードにおいては、空調コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0083】
(5-5)暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、及び、冷房モードの切り換え
空調コントローラ32は下記式(I)から前述した目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度の目標値である。
TAO=(Tset-Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(I)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する車室内空気の温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
【0084】
そして、空調コントローラ32は起動時には外気温度センサ33が検出する外気温度Tamと目標吹出温度TAOとに基づいて暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、及び、冷房モードのうちの何れかの運転モードを選択する。また、起動後は外気温度Tamや目標吹出温度TAO等の環境や設定条件の変化に応じて前記各運転モードを選択し、切り換えていくものである。
【0085】
(5-6)冷房/被温調対象冷却モード
次に、
図11を参照しながら上記冷房モード中における空調コントローラ32による冷房/被温調対象冷却モードについて説明する。ここで、バッテリ(被温調対象)は外気温度により温度が上昇すると共に、充放電時の自己発熱によっても温度が上昇する。即ち、外気温度が高温環境であるときには、バッテリの温度が極めて高くなり、充放電が困難となる(尚、走行用モータも同様に運転や環境条件によって温度が極めて高くなり、機能不全に陥って故障する場合がある)。
【0086】
そこで、実施例の車両用空気調和装置1の空調コントローラ32は、被温調対象温度Twに所定の目標被温調対象温度TWO(例えば、バッテリの目標温度)と、その上下に所定のヒステリシスをもって上限値TWH、下限値TWLを設定し、上記の如き冷房モードを実行しているときに、被温調対象温度センサ76が検出する被温調対象温度Twが所定の上限値TWH以上に上昇した場合、冷房モードから冷房/被温調対象冷却モードに移行する。
図11はこの冷房/被温調対象冷却モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)と被温調対象冷却装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0087】
この冷房/被温調対象冷却モードでは、空調コントローラ32は
図10に示した冷媒回路Rの冷房モードの状態で補助膨張弁73を開き、被温調対象用熱交換器64における冷媒の過熱度に基づいてその弁開度を制御する状態とする。そして、被温調対象冷却装置61の循環ポンプ62を運転する。これにより、放熱器4から出た冷媒は前述した如く複合弁81の膨張弁部6を通過して室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13A、複合弁81の第1冷媒通路91、連通路96(逆止弁18)、第2冷媒通路94を経て冷媒配管13Bに入り、室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着し、空気は冷却される。
【0088】
吸熱器9で蒸発した冷媒は冷媒配管13C及び逆止弁20を経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。一方、冷媒配管13Bに入った冷媒の一部は分岐配管72に入り、補助膨張弁73で減圧された後、分岐配管72を経て被温調対象用熱交換器64の冷媒流路64Bに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路64Bで蒸発した冷媒は、冷媒配管74、冷媒配管13C及びアキュムレータ12を順次経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す(
図11に実線矢印で示す)。
【0089】
一方、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は熱媒体配管68内を被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aに至り、そこで冷媒流路64B内で蒸発する冷媒により吸熱され、熱媒体は冷却される。この被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aを出た熱媒体は、被温調対象55に至り、当該被温調対象55と熱交換して冷却する。そして、被温調対象55と熱交換した熱媒体は循環ポンプ62に吸い込まれる循環を繰り返す(
図11に破線矢印で示す)。
【0090】
このように被温調対象55が冷却されてその温度Twが下限値TWL以下に低下した場合、空調コントローラ32は、補助膨張弁73を全閉とし、循環ポンプ62も停止して冷房/被温調対象冷却モードから冷房モードに復帰する。このようにして、被温調対象55(例えば、バッテリ)の温度Twを所定の目標被温調対象温度TWOに維持するものである。
【0091】
尚、上記冷房/被温調対象冷却モードは、冷房モードの運転中のみならず、停車してバッテリ(被温調対象55)に充電しているときに、空調操作部53で空調ON(空調要求)されている場合にも実行される。冷媒回路Rの冷媒の流れ、及び、被温調対象冷却装置61の熱媒体の流れは変わらない。但し、その場合には空調コントローラ32は被温調対象温度センサ76が検出する被温調対象温度Twに基づいて圧縮機2の回転数を制御し、吸熱器温度Teに基づいて室内膨張弁8の弁開度を制御し、吸熱器9における冷媒の過熱度を制御するようになる。即ち、充電中における冷房/被温調対象冷却モードでは被温調対象の冷却が優先され、走行中の冷房/被温調対象冷却モードでは車室内の冷房が優先されることになる。
【0092】
(5-7)被温調対象冷却モード
次に、
図12を参照しながらバッテリ(被温調対象55)の充電中に車室内の空調要求が無い(空調OFF)場合における空調コントローラ32による被温調対象冷却モードについて説明する。バッテリは充電中発熱するため、実施例の空調コントローラ32はこの場合も、被温調対象温度Twに所定の目標被温調対象温度TWO(バッテリの目標温度)と、その上下に所定のヒステリシスをもって上限値TWH、下限値TWLを設定し、充電によって被温調対象温度センサ76が検出する被温調対象温度Twが所定の上限値TWH以上に上昇した場合、被温調対象冷却モードに移行する。
図12はこの被温調対象冷却モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)と被温調対象冷却装置61の熱媒体の流れ(破線矢印)を示している。
【0093】
この被温調対象冷却モードでは、空調コントローラ32は複合弁81の駆動装置83により膨張弁部6により第3冷媒通路98を全開とし、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22により第1冷媒通路91、及び、第2冷媒通路94を閉じる(
図4の状態)。また、室内膨張弁8は全閉とし(吸熱器9への冷媒の流入を阻止)、補助膨張弁73を開いてその弁開度を調整する状態とする。また、循環ポンプ62を運転する。
【0094】
そして、圧縮機2、及び、室外送風機15を運転し、室内送風機27は停止する。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4を経て複合弁81の膨張弁部6を通過し、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aに流出し、複合弁81の第1冷媒入口88から第1冷媒通路91に入る。
【0095】
このとき、第1開閉弁部21と第2開閉弁部22は閉じているので、第1冷媒通路91に流入した冷媒は、連通路96及び逆止弁18を経て第2冷媒通路94に入り、第2冷媒出口93から冷媒配管13Bに入るようになる。この冷媒配管13Bに流入した冷媒は、分岐配管72に流入して補助膨張弁73に至り、この補助膨張弁73で減圧された後、被温調対象用熱交換器64の冷媒流路64Bに流入して蒸発する。
【0096】
この冷媒流路64Bで蒸発した冷媒は冷媒配管74に流出し、冷媒配管13C及び逆止弁20を経てアキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。一方、循環ポンプ62から吐出された熱媒体は熱媒体配管68内を被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aに至り、そこで冷媒流路64B内で蒸発する冷媒により吸熱され、熱媒体は冷却される。この被温調対象用熱交換器64の熱媒体流路64Aを出た熱媒体は、被温調対象55に至り、当該被温調対象55と熱交換して冷却する。そして、被温調対象55と熱交換した熱媒体は循環ポンプ62に吸い込まれる循環を繰り返す(
図12に破線矢印で示す)。
【0097】
空調コントローラ32は被温調対象温度センサ76が検出する被温調対象55の温度(被温調対象温度Tw)とその目標値である目標被温調対象温度TWOに基づき、被温調対象温度Tw(実施例ではバッテリの温度)を目標被温調対象温度TWOにするように圧縮機2の回転数を制御するものである。
【0098】
以上詳述した如く本発明の複合弁81は、第1冷媒入口88、第1冷媒出口89、第2冷媒入口92、第2冷媒出口973、及び、第3冷媒出口97を有するハウジング82と、このハウジング82内に形成され、第1冷媒入口88と第1冷媒出口89間に渡る第1冷媒通路91と、ハウジング82内に形成され、第2冷媒入口92と第2冷媒出口93間に渡る第2冷媒通路94と、第1冷媒通路91に設けられ、当該第1冷媒通路91を開閉する第1開閉弁部21と、第2冷媒通路94に設けられ、当該第2冷媒通路94を開閉する第2開閉弁部22と、ハウジング82内に形成され、第2開閉弁部22より第2冷媒入口92側の第2冷媒通路94から第3冷媒出口97に至る第3冷媒通路98と、この第3冷媒通路98に設けられ、第3冷媒通路98の開度を調整する膨張弁部6と、アクチュエータ84を介して膨張弁部6、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22を駆動する駆動装置83と、ハウジング82内に形成され、第1開閉弁部21より第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91と、第2開閉弁部22より第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94とを連通する連通路96と、この連通路96に設けられ、第2冷媒通路94方向を順方向とされた逆止弁18を備えているので、実施例の如く駆動装置83により、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22が第1冷媒通路91、及び、第2冷媒通路94を開き、膨張弁部6が第3冷媒通路98の開度を調整する状態と、第1開閉弁部21、及び、第2開閉弁部22が第1冷媒通路91、及び、第2冷媒通路94を閉じ、膨張弁部6が第3冷媒通路98の開度を調整する状態とすることができるようにし、実施例の如く冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷媒入口が圧縮機2の吐出側の冷媒配管13Gに接続され、冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器4と、冷媒出口が圧縮機2の吸込側の冷媒配管13Cに接続され、冷媒を吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器9と、放熱器4の冷媒出口側の冷媒配管13Eに接続され、車室外に設けられた室外熱交換器7と、吸熱器9に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁8と、空調コントローラ32を備えた車両用空気調和装置1に適用し、室外熱交換器7の冷媒出口側の冷媒配管13Aを複合弁81の第1冷媒入口88に接続し、圧縮機2の吸込側の冷媒配管13D(冷媒配管13Cに連通)を複合弁81の第1冷媒出口89に接続し、放熱器4の冷媒出口側の冷媒配管13Eを複合弁81の第2冷媒入口92に接続し、室内膨張弁8の冷媒入口側の冷媒配管13Bを複合弁81の第2冷媒出口93に接続し、室外熱交換器7の冷媒入口側の冷媒配管13Jを複合弁81の第3冷媒出口97に接続すれば、空調コントローラ32により複合弁81の駆動装置83を制御することで、実施例の如き暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、及び、冷房モードを切り換えて実行することが可能となる。
【0099】
また、実施例の如く冷媒を用いて車両に搭載された被温調対象55(バッテリや走行用モータ)を冷却する被温調対象冷却装置61を設け、この被温調対象冷却装置61に、冷媒を吸熱させて被温調対象55を冷却するための被温調対象用熱交換器64と、この被温調対象用熱交換器64に流入する冷媒を減圧する補助膨張弁73を設けて被温調対象用熱交換器64の冷媒入口を室内膨張弁8の冷媒入口側の冷媒配管13Bから分岐した分岐配管72に接続し、被温調対象用熱交換器64の冷媒出口を冷媒配管74を介して圧縮機2の吸込側の冷媒配管13Cに接続すれば、空調コントローラ32により複合弁81の駆動装置73を制御することで、冷房/被温調対象冷却モードと被温調対象冷却モードを切り換えて実行することが可能となる。
【0100】
即ち、従来複数の電磁弁が担っていた車両用空気調和装置1の運転モードの切り換え機能と、室外膨張弁が担っていた冷媒の減圧機能を、複合弁81に集約することができるようになり、部品点数の削減による部品コストや生産コストの低減と、設置スペースの縮小を図ることができるようになる。
【0101】
この場合、実施例では第1開閉弁部21より第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91と、第2開閉弁部22より第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94を、ハウジング82内において隣接して形成しているので、第1冷媒通路91と第2冷媒通路94を短い寸法の連通路96にて連通することができるようになり、連通路96における圧損等のロスを最低限に抑制することが可能となる。
【0102】
また、実施例ではハウジング82を、第1冷媒入口88、第1冷媒出口89、第1冷媒通路91、及び、第1開閉弁部21が設けられた第1ハウジング部材86と、第2冷媒入口92、第2冷媒出口93、第2冷媒通路94、及び、第2開閉弁部22が設けられた第2ハウジング部材87と、第3冷媒出口97、第3冷媒通路98、及び、膨張弁部6が設けられた第3ハウジング部材85とを結合して構成し、アクチュエータ84を各ハウジング部材85、87、86に渡って設けて膨張弁部6及び各開閉弁部21、22を駆動するようにしているので、複合弁81の製造/組立作業も容易となる。
【0103】
特に、実施例では第1開閉弁部21より第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91を第1ハウジング部材86の一面に近接して当該第1ハウジング部材86内に形成し、第2開閉弁部22より第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94を第2ハウジング部材87の一面に近接して当該第2ハウジング部材87内に形成すると共に、第1ハウジング部材86に、第1開閉弁部21より第1冷媒入口88側の第1冷媒通路91から第1ハウジング部材86の一面に至る第1連通部96Aを形成し、第2ハウジング部材87に、第2開閉弁部22より第2冷媒出口93側の第2冷媒通路94から第2ハウジング部材87の一面に至る第2連通部96Bを形成して、第1及び第2ハウジング部材86、87の一面同士を結合したときに各連通部96A、96Bが合致して連通路96を構成し、第3ハウジング部材85は、第2ハウジング部材87の他面に結合するようにしているので、短い寸法の連通路96を容易に構成し、逆止弁18の取り付けも容易となる共に、第3ハウジング部材85も支障無く結合することができるようになる。
【0104】
尚、実施例で説明した複合弁81の構成、車両用空気調和装置1の構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。また、実施例では室内膨張弁8や補助膨張弁73を電動弁にて構成し、全閉として吸熱器9や被温調対象用熱交換器64への冷媒の流入を阻止するようにしたが、それに限らず、室内膨張弁8や補助膨張弁73を機械式の膨張弁にて構成し、直列に電磁弁を接続して冷媒の流入を阻止できるようにしてもよい。
【0105】
更に、実施例では熱媒体を介して冷媒により被温調対象55を冷却する被温調対象冷却装置61を採用したが、それに限らず、被温調対象用熱交換器64にて冷媒により被温調対象55を直接冷却するようにしてもよい。更にまた、実施例では車両用空気調和装置に本発明の複合弁を適用したが、それに限らず、冷媒回路を有する各種装置に採用可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0106】
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
4 放熱器
6 膨張弁部
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
18 逆止弁
21 第1開閉弁部
22 第2開閉弁部
32 空調コントローラ(制御装置)
55 被温調対象
61 被温調対象冷却装置
62 循環ポンプ
64 被温調対象用熱交換器
72 分岐配管
73 補助膨張弁
81 複合弁
82 ハウジング
83 駆動装置
84 アクチュエータ
85 第3ハウジング部材
86 第1ハウジング部材
87 第2ハウジング部材
88 第1冷媒入口
89 第1冷媒出口
91 第1冷媒通路
92 第2冷媒入口
93 第2冷媒出口
94 第2冷媒通路
96 連通路
96A 第1連通部
96B 第2連通部
97 第3冷媒出口
98 第3冷媒通路