(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
B60H1/22 651A
(21)【出願番号】P 2018101605
(22)【出願日】2018-05-28
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0174000(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有し、室内熱交換器において車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換することによって車室内の空気の温度または湿度を調節する冷媒回路と、
第1放熱体から放出された熱を吸収する第1熱媒体が流通する第1熱媒体回路と、
第2放熱体から放出された熱を吸収する第2熱媒体が流通する第2熱媒体回路と、
冷媒回路を流通する冷媒と第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体とを熱交換して第1熱媒体から冷媒に熱を放出させる第1熱媒体放熱器と、
第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体と第2熱媒体回路を流通する第2熱媒体とを熱交換して第2熱媒体から第1熱媒体に熱を放出させる第2熱媒体放熱器と、を備
え、
第1熱媒体回路は、第1熱媒体を加熱するヒータと、第1放熱体を迂回して第1熱媒体を循環させるバイパス流通路と、を有している
車両用空気調和装置。
【請求項2】
第2熱媒体回路は、第2熱媒体放熱器を迂回して第2熱媒体を循環させるバイパス流通路と、バイパス流通路を流通する第2熱媒体と車室外の空気とを熱交換するラジエータと、を有している
請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有し、室内熱交換器において車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換することによって車室内の空気の温度または湿度を調節する冷媒回路と、
第1放熱体から放出された熱を吸収する第1熱媒体が流通する第1熱媒体回路と、
第2放熱体から放出された熱を吸収する第2熱媒体が流通する第2熱媒体回路と、
冷媒回路を流通する冷媒と第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体とを熱交換して第1熱媒体から冷媒に熱を放出させる第1熱媒体放熱器と、
第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体と第2熱媒体回路を流通する第2熱媒体とを熱交換して第2熱媒体から第1熱媒体に熱を放出させる第2熱媒体放熱器と、を備え、
第2熱媒体回路は、第2熱媒体放熱器を迂回して第2熱媒体を循環させるバイパス流通路と、バイパス流通路を流通する第2熱媒体と車室外の空気とを熱交換するラジエータと、を有している、車両用空気調和装置。
【請求項4】
第1放熱体は、車両の走行用の電力を供給するバッテリであり、
第2放熱体は、車両の走行用の電動モータである
請求項1乃至
3のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、走行用の電動モータや走行用の電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリ等、使用によって熱が放出される複数の機器を備えた車両に適用可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有する冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給することによって車室内の冷房、暖房、除湿等を行っている。
【0003】
また、前記車両用空気調和装置が搭載される車両としては、電気自動車やハイブリッド車等、駆動源としての電動モータや、電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリ等、使用によって熱を放出する複数の機器を備えているものがある。
【0004】
このため、前記車両では、熱を放出する複数の機器を冷却水回路に接続し、冷却水回路を流通する冷却水によってそれぞれの機器を冷却するとともに、機器を冷却することによって熱を吸収した冷却水を、冷媒回路を流通する冷媒と熱交換することで放熱させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記車両おいて、冷却対象の複数の機器は、それぞれ目標の冷却温度が異なる。前記車両では、1つの冷却水回路に互いに目標の冷却温度が異なる複数の機器が接続されているため、冷却対象の複数の機器のそれぞれを目標の冷却温度とする制御が複雑となる可能性がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、冷却対象の複数の機器のそれぞれの目標の冷却温度が互いに異なる場合に、それぞれ容易に目標の冷却温度とすることのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用空気調和装置は、前記目的を達成するために、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有し、室内熱交換器において車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換することによって車室内の空気の温度または湿度を調節する冷媒回路と、第1放熱体から放出された熱を吸収する第1熱媒体が流通する第1熱媒体回路と、第2放熱体から放出された熱を吸収する第2熱媒体が流通する第2熱媒体回路と、冷媒回路を流通する冷媒と第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体とを熱交換して第1熱媒体から冷媒に熱を放出させる第1熱媒体放熱器と、第1熱媒体回路を流通する第1熱媒体と第2熱媒体回路を流通する第2熱媒体とを熱交換して第2熱媒体から第1熱媒体に熱を放出させる第2熱媒体放熱器と、を備えている。
【0009】
これにより、第1放熱体から放出された熱が、第1熱媒体を介して冷媒に吸収され、第2放熱体から放出された熱が、第2熱媒体及び第1熱媒体を介して冷媒に吸収されることから、冷媒と直接的に熱交換した第1熱媒体によって冷却される第1放熱体の温度よりも、第1熱媒体を介して冷媒と間接的に熱交換した第2熱媒体によって冷却される第2放熱体の温度が高温に保持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒と直接的に熱交換した第1熱媒体によって冷却される第1放熱体の温度よりも、第1熱媒体を介して冷媒と間接的に熱交換した第2熱媒体によって冷却される第2放熱体の温度を高温に保持することができるので、複数の放熱体をそれぞれ目標の冷却温度に応じて第1熱媒体回路または第2熱媒体回路に接続することによって、複雑な制御を行うことなく、容易に第1放熱体及び第2放熱体をそれぞれ目標の冷却温度とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図2】バッテリ冷却運転及び第1モータ冷却運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図3】第2モータ冷却運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図4】バッテリ加熱運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図5】モータ加熱運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の車両用空気調和装置1は、例えば電気自動車やハイブリッド車等、電動モータの駆動力によって走行可能な車両に適用されるものである。
【0014】
車両は、走行用の第2放熱体としての電動モータMと、電動モータMに供給する電力が蓄えられる走行用の第1放熱体としてのバッテリBと、を有している。電動モータM及びバッテリBは、それぞれ使用可能な温度帯が異なる。また、電動モータM及びバッテリBは、それぞれ使用によって熱を放出するものである。このため、電動モータM及びバッテリBは、それぞれ個別に冷却したり加熱したりする必要がある。電動モータMは、例えば30℃~50℃の範囲での使用が望ましく、バッテリBは、電動モータMの使用可能な温度範囲よりも低い、例えば10℃~30℃の範囲での使用が望ましい。
【0015】
この車両用空気調和装置1は、
図1に示すように、車両の車室内に設けられる空調ユニット10と、車室内および車室外にわたって設けられる冷媒回路20と、バッテリBから放出された熱を吸収したりバッテリBを加熱したりする第1熱媒体を流通させるための第1熱媒体回路30と、電動モータMから放出された熱を吸収したり電動モータMを加熱したりする第2熱媒体を流通させるための第2熱媒体回路40と、を備えている。
【0016】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通した空気を、搭乗者の足元に向かって吹き出させる図示しないフット吹出口、搭乗者の上半身に向かって吹き出させる図示しないベント吹出口、及び、車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させる図示しないデフ吹出口、が設けられている。
【0017】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0018】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。吸入口切換えダンパ13は、内気吸入口11bを閉鎖して外気吸入口11aが開放する外気供給モードと、外気吸入口11aを閉鎖して内気吸入口11bを開放する内気循環モードと、外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置させることで外気吸入口11aと内気吸入口11bとをそれぞれ開放する内外気吸入モードと、を切換えることが可能である。
【0019】
空気流通路11における室内送風機12の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための室内熱交換器としての吸熱器14が設けられている。また、空気流通路11における吸熱器14の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための室内熱交換器としての放熱器15が設けられている。
【0020】
放熱器15は、空気流通路11の直交方向一方側に配置され、空気流通路11の直交方向他方側には、放熱器15を迂回する放熱器バイパス流通路11cが形成される。空気流通路11における放熱器15の空気流通方向下流側には、車室内に供給する空気を加熱するための空気加熱ヒータ16が設けられている。
【0021】
空気流通路11における吸熱器14と放熱器15との間には、吸熱器14を通過した空気のうち、放熱器15によって加熱される空気の割合を調整するためのエアミックスダンパ17が設けられている。エアミックスダンパ17は、放熱器15及び放熱器バイパス流通路11cの空気流通方向上流側において、放熱器バイパス流通路11c及び放熱器15の一方の空気流通方向上流側を閉鎖して他方を開放したり、放熱器バイパス流通路11c及び放熱器15の両方を開放し、放熱器15の空気流通方向上流側の開度を調整したりする。エアミックスダンパ17は、空気流通路11における放熱器15の空気流通方向上流側を閉鎖して放熱器バイパス流通路11cを開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11における放熱器15の空気流通方向上流側を開放し、放熱器バイパス流通路11cを閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0022】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、冷媒回路20を流通する冷媒と第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体とを熱交換するための第1熱媒体放熱器としての第1熱媒体熱交換器23、全閉と全開との間で弁開度の調整が可能な第1乃至第3膨張弁24a,24b,24c、冷媒の流路を開閉するための第1及び第2電磁弁25a,25b、冷媒の流路における冷媒の流通方向を規制するための第1及び第2逆止弁26a,26b、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液体の冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ27を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。冷媒回路20を流通する冷媒としては、例えば、R-134a等が用いられる。
【0023】
具体的に説明すると、圧縮機21の冷媒吐出側には、放熱器15の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20aが形成されている。放熱器15の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20bが形成されている。冷媒流通路20bには、第1膨張弁24aが設けられている。室外熱交換器22の冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20cが形成されている。冷媒流通路20cには、室外熱交換器22側から順に、第1逆止弁26a、第2膨張弁24bが設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側を接続することにより、冷媒流通路20dが形成されている。冷媒流通路20dには、吸熱器14側から順に、第2逆止弁26b、アキュムレータ27が設けられている。また、冷媒流通路20bにおける放熱器15と第1膨張弁24aとの間には、室外熱交換器22を迂回し、冷媒流通路20cにおける第1逆止弁26aと第2膨張弁24bとの間を接続することにより、冷媒流通路20eが形成されている。冷媒流通路20eには、第1電磁弁25aが設けられている。冷媒流通路20cにおける冷媒流通路20eの接続部と第2膨張弁24bとの間には、第1熱媒体熱交換器23の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20fが形成されている。冷媒流通路20fには、第3膨張弁24cが設けられている。第1熱媒体熱交換器23の冷媒流出側には、冷媒流通路20dにおける第2逆止弁26bとアキュムレータ27との間を接続することにより、冷媒流通路20gが形成されている。冷媒流通路20cにおける室外熱交換器22と第1逆止弁26aとの間には、冷媒流通路20dにおける吸熱器14と第2逆止弁26bとの間を接続することにより、冷媒流通路20hが形成されている。冷媒流通路20hには、第2電磁弁25bが設けられている。
【0024】
第1熱媒体回路30は、前記第1熱媒体熱交換器23、第1熱媒体を圧送するための第1熱媒体ポンプ31、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体と第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体とを熱交換するための第2熱媒体放熱器としての第2熱媒体熱交換器32、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体を加熱するための熱媒体加熱ヒータ33、第1熱媒体三方弁34、車両走行用の電力を蓄えるためのバッテリB、を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体としては、例えば、エチレングリコール等の不凍液が用いられる。
【0025】
具体的に説明すると、第1熱媒体ポンプ31の熱媒体吐出側には、第1熱媒体熱交換器23の第1熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30aが形成されている。第1熱媒体熱交換器23の第1熱媒体流出側には、第2熱媒体熱交換器32の第1熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30bが形成されている。第2熱媒体熱交換器32の第1熱媒体流出側には、第1熱媒体三方弁34の熱媒体流入口を接続することにより、熱媒体流通路30cが形成されている。熱媒体流通路30cには、熱媒体加熱ヒータ33が設けられている。第1熱媒体三方弁34の二つの熱媒体流出口のうちの一方には、バッテリBの熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30dが形成されている。バッテリBの熱媒体流出側には、第1熱媒体ポンプ31の熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路30eが形成されている。また、第1熱媒体三方弁34の他方の熱媒体流出口には、バッテリBをバイパスして第1熱媒体ポンプ31の熱媒体吸入側に接続することにより、バイパス流通路としての熱媒体流通路30fが形成されている。第1熱媒体三方弁34は、熱媒体流通路30cが連通する先を熱媒体流通路30d側または熱媒体流通路30e側に切り替える。
【0026】
第2熱媒体回路40は、前記第2熱媒体熱交換器32、第2熱媒体を圧送するための第2熱媒体ポンプ41、第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体と車室外の空気とを熱交換するためのラジエータ42、第2熱媒体三方弁43、車両走行用の電動モータM、を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体としては、例えば、エチレングリコール等の不凍液が用いられる。
【0027】
具体的に説明すると、第2熱媒体ポンプ41の熱媒体吐出側には、電動モータMの熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路40aが形成されている。電動モータMの熱媒体流出側には、第2熱媒体三方弁43の熱媒体流入口を接続することにより、熱媒体流通路40bが形成されている。第2熱媒体三方弁43の二つの熱媒体流出口のうち、一方の熱媒体流出口には、第2熱媒体熱交換器32の第2熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路40cが形成されている。第2熱媒体熱交換器32の第2熱媒体流出側には、第2熱媒体ポンプ41の熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路40dが形成されている。第2熱媒体三方弁43の他方の熱媒体流出口には、ラジエータ42の熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路40eが形成されている。ラジエータ42の熱媒体流出側には、第2熱媒体ポンプ41の熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路40fが形成されている。第2熱媒体三方弁43は、熱媒体流通路40bが連通する先を熱媒体流通路40c側または熱媒体流通路40e側に切り替える。
【0028】
また、室外熱交換器22及びラジエータ42は、フィンとチューブとからなる熱交換器であり、エンジンルーム等の車室外において空気の流通方向となる車両の前後方向に配置されている。室外熱交換器22及びラジエータ42の近傍には、車両の停止時に車室外の空気を前後方向に流通させるための室外送風機22aが設けられている。
【0029】
以上のように構成された車両用空気調和装置1では、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の空気の温度及び湿度を調節する。
【0030】
例えば、車室内の温度を低下させる冷房運転では、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%に設定する。また、冷媒回路20において、第1膨張弁24aを全開、第2膨張弁24bを所定の弁開度、第3膨張弁24cを全閉、第1電磁弁25aを閉鎖、第2電磁弁25bを閉鎖した状態で圧縮機21を駆動させる。
【0031】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図1の実線の矢印で示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22、冷媒流通路20c、吸熱器14、冷媒流通路20dの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0032】
冷媒回路20を流通する冷媒は、エアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0033】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却されて車室内に吹き出される。
【0034】
また、例えば、車室内の温度及び湿度を低下させる除湿冷房運転では、冷房運転時における冷媒回路20の冷媒の流路において、空調ユニット10のエアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きい開度に設定する。
【0035】
これにより、冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15及び室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0036】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって除湿されるとともに冷却され、放熱器15において目標吹出温度まで加熱されて車室内に吹き出される。
【0037】
また、例えば、車室内の湿度を低下させるとともに温度を上昇させる除湿暖房運転では、冷房運転時の冷媒回路20の冷媒の流路において、第1膨張弁24aを全開よりも小さい所定の弁開度とする。また、空調ユニット10のエアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きい開度に設定する。
【0038】
これにより、冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22及び吸熱器14において吸熱する。
【0039】
空調ユニット10の空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって除湿されるとともに冷却され、放熱器15において目標吹き出し温度まで加熱されて吹出される。
【0040】
また、例えば、車室内の温度を上昇させる暖房運転では、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%よりも大きい開度に設定する。また、冷媒回路20において、第1膨張弁24aを全開よりも小さい所定の弁開度、第2膨張弁24b及び第3膨張弁24cを全閉、第1電磁弁25aを閉鎖、第2電磁弁25bを開放した状態で、圧縮機21を駆動させる。
【0041】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図1の破線の矢印で示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22、冷媒流通路20cの一部,冷媒流通路20h,冷媒流通路20dの一部の順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0042】
冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0043】
空調ユニット10の空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する冷媒と熱交換することによって加熱されて車室内に吹き出される。
【0044】
また、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の温度及び湿度を調節している状態において、車両の走行時には、電動モータM及びバッテリBから熱が放出される。このため、車両用空気調和装置1では、
図2に示すように、バッテリBを冷却するためのバッテリ冷却運転と、
図2及び
図3に示すように、電動モータMを冷却するためのモータ冷却運転と、を行う。
【0045】
バッテリ冷却運転は、冷媒回路20において、第3膨張弁24cを所定の弁開度に設定するとともに、第1熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁34の流路を熱媒体流通路30d側に連通させ、第1熱媒体ポンプ31を駆動させる。
【0046】
冷媒回路20を流通する冷媒は、
図2に示すように、冷媒流通路20fを流通して第1熱媒体熱交換器23に流入して吸熱し、冷媒流通路20gを流通して冷媒流通路20dに合流して圧縮機21に吸入される。
【0047】
一方、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体は、バッテリBから放出された熱によって加熱され、第1熱媒体熱交換器23において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0048】
バッテリBは、冷媒と直接的に熱交換した第1熱媒体によって冷却される。
【0049】
モータ冷却運転は、電動モータMから放出される熱を、
図2に示すように、ラジエータ42を介して車室外の空気中に放出するための第1モータ冷却運転と、
図3に示すように、第2熱媒体熱交換器32を介して第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体に放出する第2モータ冷却運転と、を行うことができる。
【0050】
第1モータ冷却運転では、第2熱媒体回路40において、第2熱媒体三方弁43の流路を熱媒体流通路40e側に設定し、第2熱媒体ポンプ41を駆動させる。
【0051】
第1モータ冷却運転において、第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体は、
図2に示すように、電動モータMから放出される熱によって加熱され、ラジエータ42において車室外の空気と熱交換することによって冷却される。
【0052】
電動モータMは、ラジエータ42を介して車室外の空気と熱交換した第2熱媒体によって冷却される。
【0053】
また、第2モータ冷却運転では、第1熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁34の流路を熱媒体流通路30f側に設定し、第1熱媒体ポンプ31を駆動させる。また、第2熱媒体回路40では、第2熱媒体三方弁43の流路を熱媒体流通路40c側に設定し、第2熱媒体ポンプ41を駆動させる。
【0054】
図3に示すように、第2モータ冷却運転において、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体は、第1熱媒体熱交換器23において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却される。また、第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体は、電動モータMから放出される熱によって加熱され、第2熱媒体熱交換器32において第1熱媒体と熱交換することによって冷却される。
【0055】
電動モータMは、第1熱媒体を介して冷媒と間接的に熱交換した第2熱媒体によって冷却されるため、冷媒と直接的に熱交換した第1熱媒体によって冷却されるバッテリBよりも高温に保持される。
【0056】
このとき、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体は、第2熱媒体熱交換器32において第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体と熱交換する際に、バッテリBをバイパスして流通する。このため、バッテリBは、電動モータMから放出される熱の影響を受けることはない。
【0057】
また、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の温度及び湿度を調節している状態において、電動モータMを冷却するとともに、バッテリBを加熱する必要がある場合に、電動モータMを第1モータ冷却運転で冷却するとともに、バッテリBを加熱するバッテリ加熱運転を行う。
【0058】
バッテリ加熱運転では、冷媒回路20において、第3膨張弁24cの弁開度を全閉に設定するとともに、第1熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁34の流路を熱媒体流通路30d側に設定し、第1熱媒体ポンプ31を駆動させるとともに、熱媒体加熱ヒータ33を駆動させる。
【0059】
図4に示すように、冷媒回路20を流通する冷媒は、第1熱媒体熱交換器23への流入が規制される。また、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体は、熱媒体加熱ヒータ33によって加熱される。バッテリBは、熱媒体加熱ヒータ33によって加熱された第1熱媒体によって加熱される。
【0060】
また、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の温度及び湿度を調節している状態において、バッテリBの冷却または加熱の必要なく、電動モータMのみを加熱する必要がある場合に、モータ加熱運転を行う。
【0061】
モータ加熱運転では、冷媒回路20において、第3膨張弁24cの弁開度を全閉に設定する。また、第1熱媒体回路30においては、第1熱媒体三方弁34の流路を熱媒体流通路30f側に設定し、第1熱媒体ポンプ31を駆動させるとともに、熱媒体加熱ヒータ33を駆動させる。さらに、第2熱媒体回路40においては、第2熱媒体三方弁43の流路を熱媒体流通路40c側に設定し、第2熱媒体ポンプ41を駆動させる。
【0062】
図5に示すように、冷媒回路20を流通する冷媒は、第1熱媒体熱交換器23への流入が規制される。また、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体は、バッテリBに対して放熱することなく、熱媒体加熱ヒータ33によって加熱される。さらに、第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体は、第2熱媒体熱交換器32において熱媒体加熱ヒータ33によって加熱された第1熱媒体と熱交換することによって加熱される。電動モータMは、第1熱媒体との熱交換によって加熱された第2熱媒体によって加熱される。
【0063】
また、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の暖房または除湿暖房を行っている状態において、冷媒の吸熱量が不足する場合には、第1熱媒体回路30及び第2熱媒体回路40の一方または両方から放熱される熱を冷媒の吸熱に利用することが可能である。
【0064】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換することによって車室内の空気の温度または湿度を調節する冷媒回路20と、バッテリBから放出された熱を吸収する第1熱媒体が流通する第1熱媒体回路30と、電動モータMから放出された熱を吸収する第2熱媒体が流通する第2熱媒体回路40と、冷媒回路20を流通する冷媒と第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体とを熱交換して第1熱媒体から冷媒に熱を放出させる第1熱媒体熱交換器23と、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体と第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体とを熱交換して第2熱媒体から第1熱媒体に熱を放出させる第2熱媒体熱交換器32と、を備えている。
【0065】
これにより、冷媒と直接的に熱交換した第1熱媒体によって冷却されるバッテリBの温度よりも、第1熱媒体を介して冷媒と間接的に熱交換した第2熱媒体によって冷却される電動モータMの温度を高温に保持することができるので、バッテリB及び電動モータMの目標の冷却温度が互いに異なる場合に、複雑な制御を行うことなく、容易にバッテリB及び電動モータMをそれぞれ目標の冷却温度とすることが可能となる。
【0066】
また、第1熱媒体回路30は、バッテリBを迂回して第1熱媒体を循環させる熱媒体流通路30fを有している。
【0067】
これにより、第2熱媒体回路40に接続された電動モータMを、第1熱媒体回路30を介して冷媒回路20を流通する冷媒によって冷却したり、熱媒体加熱ヒータ33によって加熱された第1熱媒体によって加熱したりする場合に、バッテリBが電動モータMの熱の影響を受けたり、電動モータMに対してバッテリBの熱の影響を与えたりする状態を抑制することが可能となる。
【0068】
また、第1熱媒体回路30は、流通する第1熱媒体を加熱する熱媒体加熱ヒータ33を有している。
【0069】
これにより、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体を加熱することができるので、低温度の環境において車両の走行を開始するとき等、バッテリB及び電動モータMの加熱が必要な場合に、加熱された第1熱媒体によってバッテリBや電動モータMを加熱することが可能となる。また、暖房運転時において、冷媒回路20における室外熱交換器22からの吸熱量が不足する場合に、第1熱媒体熱交換器23を介して第1熱媒体から冷媒回路20を流通する冷媒に吸熱させることが可能となる。
【0070】
また、第2熱媒体回路40は、第2熱媒体熱交換器32を迂回して第2熱媒体を循環させる熱媒体流通路40e,40fと、熱媒体流通路40e,40fを流通する第2熱媒体と車室外の空気とを熱交換するラジエータ42と、を有している。
【0071】
これにより、第2熱媒体から車室外の空気中に放熱させることができるので、冷媒回路20及び第1熱媒体回路30を介することなく電動モータMを冷却することが可能となる。
【0072】
また、第1熱媒体回路30には、車両の走行用の電力を供給するためのバッテリBが接続され、第2熱媒体回路40には、車両の走行用の電動モータMが接続されている。
【0073】
これにより、電気自動車等の車両において、互いに使用可能な温度帯が異なるバッテリB及び電動モータMを、それぞれ異なる温度に冷却することが可能となる。
【0074】
尚、前記実施形態では、第1放熱体としてのバッテリB及び第2放熱体としての電動モータMを冷却対象の機器として示したが、これに限られるものではない。第2放熱体の目標冷却温度が第1放熱体の目標冷却温度よりも高いものであれば、例えば、車両の構成部品としてのコンバータ等の電源装置や電子部品を第1放熱体として、電動モータMを第2放熱体として用いてもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、第1熱媒体から冷媒に放熱させるための第1熱媒体熱交換器23と、第2熱媒体から第1熱媒体に放熱させるための第2熱媒体熱交換器32と、を別体の部品としたものを示したが、第1熱媒体熱交換器23及び第2熱媒体熱交換器32の機能を有する一体の三熱媒体熱交換器を用いてもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、第2熱媒体回路40に、第2熱媒体熱交換器32を迂回して第2熱媒体を循環させる熱媒体流通路40e,40fと、熱媒体流通路40e,40fを流通する第2熱媒体と車室外の空気とを熱交換するラジエータ42と、を設けたものを示している。第2熱媒体回路40と同様に、第1熱媒体回路30に対しても、第1熱媒体熱交換器23及び第2熱媒体熱交換器32を迂回して熱媒体を循環させるバイパス流通路と、バイパス流通路を流通する第1熱媒体と車室外の空気とを熱交換するラジエータと、を設けるようにしてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、第1熱媒体回路30を流通する第1熱媒体、第2熱媒体回路40を流通する第2熱媒体として、それぞれ不凍液を用いたものを示したが、これに限られるものではない。冷媒と第1熱媒体との間、第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換可能であれば、例えば、水や油等を第1及び第2熱媒体として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
14…吸熱器、15…放熱器、20…冷媒回路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、23…第1熱媒体熱交換器、30…第1熱媒体回路、30f…熱媒体流通路、32…第2熱媒体熱交換器、33…熱媒体加熱ヒータ、40…第2熱媒体回路、42…ラジエータ、B…バッテリ、M…電動モータ。