(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ナルフラフィンを含有する錠剤化された医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20221006BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20221006BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221006BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221006BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/40
A61P17/04
A61P25/00 101
A61P25/04
(21)【出願番号】P 2018517244
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013684
(87)【国際公開番号】W WO2018181920
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017070165
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆神 賢
(72)【発明者】
【氏名】高木 卓
(72)【発明者】
【氏名】太田 琴恵
(72)【発明者】
【氏名】堀内 保秀
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113841(WO,A1)
【文献】PARASRAMPURIA, Jagdish,Quantitation of Famotidine in Pharmaceutical Dosage Forms Using High-Performance Liquid Chromatograp,Drug Development and Industrial Pharmacy,1989年,Vol.15, No.12,p.1989-1997
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/485
A61K 9/20
A61K 47/26
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/40
A61P 17/04
A61P 25/00
A61P 25/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩
と、マルチトール、デキストリン及びプルランからなる群から選択される結合剤成分と、担体と、を含有し、
前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、0.1~10μg含有され、
前記結合剤成分の重量は、前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して100,000~2,000,000重量%であり、かつ、得られる医薬組成物の全重量に対して5~20重量%である、錠剤化された医薬組成物。
【請求項2】
ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩と、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースを含む結合剤成分と、担体と、を含有し、
前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、0.1~10μg含有され、
前記結合剤成分の重量は、前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して20,000~500,000重量%であり、かつ、得られる医薬組成物の全重量に対して1~5重量%である、錠剤化された医薬組成物。
【請求項3】
前記結合剤成分の重量は、前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して100,000~400,000重量%である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記結合剤成分の重量は、前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して20,000~100,000重量%である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、1~5μg含有されている、請求項1~4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記担体は、マンニトール、ブドウ糖、無水結晶果糖、乳糖及びマルチトールからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の医薬組成物からなる、錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を含有し、取り扱い可能な成形性を有し、類縁物質の品質管理が容易な高純度な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品固形製剤に対しては、製造時や医療現場での取り扱い時に形体が変化し粉塵などが発生することの無い一定の成形性が求められる。特に1錠あたりに含まれる有効成分の重量がきわめて低く、低含量で薬効を示す高活性な有効成分においては、粉塵の発生による医療従事者への暴露の抑制や、一包化包装において粉塵に由来する他剤とのコンタミネーション抑制の観点から、一定の成形性が付与されていることが重要である。
【0003】
また、品質管理の別の側面として、有効成分に由来する類縁物質の生成による副作用発症のリスクを低減させるために、類縁物質の管理は重要な品質管理項目に挙げられている。実際、ICHと呼ばれる日米EU医薬品規制調和会議において、類縁物質の管理すべき閾値が詳細に定められている(非特許文献1)。しかし、一般的に、1錠あたりの投与量に含まれる有効成分が少ない、高活性な有効成分の製剤化には、製剤を構成する医薬品添加物が有効成分の分析を妨害するため、類縁物質の管理が容易な高純度の固形製剤の提供は極めて困難である。
【0004】
本発明の有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、中枢性の痒みに対して強力な止痒作用を示す選択的オピオイドκ受容体作動薬であり、軟カプセル剤として上市されている。その有効成分の含量は、1錠あたりの有効成分が2.5μgであり、極めて低含量の高活性な有効成分である。
【0005】
特許文献1には、ナルフラフィン塩酸塩を含有する注射剤、軟カプセル剤、錠剤などが記載されている。本特許には、塩酸ナルフラフィンに特定の酸化防止剤、シネルギスト、糖類又は界面活性剤から選ばれる物質を添加することにより安定性が向上することが記載されている。
【0006】
特許文献2にはマンニトール及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、保存安定性に優れたナルフラフィン塩酸塩の固形製剤が開示されている。本特許には、ナルフラフィン塩酸塩を溶解させた結合剤溶液をマンニトールに噴霧して造粒物を調製する工程が記載されている。結合剤成分としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のポリマーを添加することにより安定性が改善することが記載されている。
【0007】
特許文献3にはマンニトール及びクロスポビドンもしくはカルボキシメチルスターチナトリウムを含有する、保存安定性及び口腔内での崩壊性に優れたナルフラフィン塩酸塩の錠剤が記載されている。本特許には、ナルフラフィン塩酸塩を溶解させた結合剤溶液を乳糖及び結晶セルロースの混合粉末に噴霧して造粒物を調製する工程が記載されている。結合剤成分としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL(登録商標)、日本曹達)が記載されている。
【0008】
特許文献4には、成形性の低い糖類に成形性の高い糖類を結合液として噴霧して製造される、崩壊性の高い口腔内崩壊錠が記載されている。
【0009】
非特許文献2、非特許文献3には、乳糖、マルチトールならびに一定の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースに関する規格が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第99/002158号公報
【文献】国際公開第08/133330号公報
【文献】国際公開第10/047381号公報
【文献】国際公開第95/020380号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】ICH-Q3 新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン
【文献】日本薬局方15改正
【文献】日本医薬品添加物協会編集、「医薬品添加物事典2016」、株式会社薬事日報社、2016年2月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1には、ナルフラフィン塩酸塩を含有する製剤が開示されているが、ナルフラフィン塩酸塩の含量は100μgであり、本発明で含まれる0.1~10μgの10倍以上である。特許文献1に開示された製剤は有効成分の含量が高いため、有効成分と類縁物質は容易に分離され、医薬品添加剤に由来する分析妨害も低減されることから、本願発明の課題である高純度に錠剤化された医薬組成物を提供するという課題を有していない。
【0013】
特許文献2には、ナルフラフィン塩酸塩をヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL(登録商標)、2%水溶液の粘度3~5.9mPa・s、日本曹達)とともに水に溶解させた結合剤溶液をマンニトールに噴霧して造粒物を調製する工程が記載されている。しかし、本願発明で見出した特定の粘度である、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースを用いて造粒すること、ならびに類縁物質の分析妨害については何ら記載されておらず、特定の粘度のヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤成分を用いることで、高純度に錠剤化された医薬組成物が得られることは示唆されていない。
【0014】
特許文献3には、ナルフラフィン塩酸塩水溶液を造粒液としマンニトールに噴霧して造粒物を調製する工程が記載され、得られた錠剤は口腔内で速崩壊性を示すことが記載されている。しかし、錠剤の成形性については記載されておらず、また特定の結合剤成分が分析妨害に与える影響については何ら記載されていない。
【0015】
特許文献4には、成形性の低い糖類であるマンニトール、乳糖、白糖、ブドウ糖、キシリットに成形性の高い糖類であるソルビトール、マルトース、乳糖、果糖を結合液として噴霧して製造される、崩壊性の高い口腔内崩壊錠が記載されている。しかし、特許文献4に記載されている有効成分はナルフラフィンとは異なるため、類縁物質の分析妨害性に与える影響は依然不明である。さらに有効成分の配合量についても約60μg~約21mgであり、有効成分の含有量が多く、良好な成形性と高純度の両立についても記載されていてない。
【0016】
一方、非特許文献2ならびに非特許文献3には、乳糖、マルチトールならびに一定の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースに関する規格が記載されている。規格には砒素や重金属などの不純物の閾値が規定されているが、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を含有する超低含量の錠剤の品質管理に適用可能なほど厳しい設定はなされていない。
【0017】
そこで、本発明は、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を含有する医薬組成物において、取り扱い可能な成形性を有し、類縁物質の管理が容易な高純度に錠剤化された医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは、医薬組成物中にナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩が0.1~10μg含有されるように錠剤化する際、特定の結合剤成分の重量を制御することにより、良好な成形性と類縁物質の品質管理の両立が可能であることを見出し、発明に至った。
【0019】
すなわち本発明は、下記の(1)~(7)の発明に関するものである。
(1) ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩と、マルチトール、デキストリン及びプルランからなる群から選択される結合剤成分と、担体と、を含有し、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、0.1~10μg含有され、上記結合剤成分の重量は、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して100,000~2,000,000重量%であり、かつ、得られる医薬組成物の全重量に対して5~20重量%である、錠剤化された医薬組成物。
(2) ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩と、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースを含む結合剤成分と、担体と、を含有し、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、0.1~10μg含有され、上記結合剤成分の重量は、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して20,000~500,000重量%であり、かつ、得られる医薬組成物の全重量に対して1~5重量%である、錠剤化された医薬組成物。
(3) 上記結合剤成分の重量は、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して100,000~400,000重量%である、(1)記載の医薬組成物。
(4) 上記結合剤成分の重量は、上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して20,000~100,000重量%である、(2)記載の医薬組成物。
(5) 上記ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩は、1~5μg含有されている、(1)~(4)のいずれか記載の医薬組成物。
(6) 上記担体は、マンニトール、ブドウ糖、無水結晶果糖、乳糖及びマルチトールからなる群から選択される、(1)~(5)のいずれか記載の医薬組成物。
(7) (1)~(6)のいずれか記載の医薬組成物からなる、錠剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形性及び類縁物質の品質管理に優れた、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を含有する錠剤化された医薬組成物を提供でき、医薬品としての有用性や安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ナルフラフィン塩酸塩水溶液、比較例1(PVP)及び参考例2(HPC-H)のクロマトグラム間のピーク比較
【
図2】ナルフラフィン塩酸塩水溶液、参考例13(無水結晶果糖)、参考例14(乳糖)及び比較例10(白糖)のクロマトグラム間のピーク比較
【
図3】実施例1~6及び比較例11のクロマトグラム間のピーク比較
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明における錠剤とは、粉体を圧縮して成形された固形状の製剤であり、経口錠剤又は非経口錠剤のどちらでも良い。具体的には、速放性錠剤、腸溶性錠剤、徐放性錠剤、口腔内崩壊錠及びミニタブレットが挙げられる。
【0024】
本発明の有効成分とは、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩である。薬理学的に許容される酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩及びリン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩及びフタル酸塩等の有機カルボン酸塩並びにメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びカンファースルホン酸塩等の有機スルホン酸塩等が挙げられ、中でも塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩及びメタンスルホン酸塩が好ましく、塩酸塩が入手しやすいことから最も好ましい。
【0025】
本発明における医薬組成物は、錠剤化されていれば、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩がどのように分錠されていてもよく、1つの錠剤に対して、全てのナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩が含有されていているものや、ミニタブレットのように複数の錠剤に対して、必要量のナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩が分割して含有されているものも含む。また、本発明における医薬組成物は、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩が0.1~10μg含有するように錠剤化されており、1~5μg含有するように錠剤化されていることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いる結合剤成分は、有効成分を粉末又は水溶液にした場合に、有効成分を含有する粒子同士を接着する特性を有するマルチトール、デキストリン、プルラン及び20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースであり、一般的に市販されているものを用いればよい。これらの結合剤成分は、接着性又は類縁物質管理の観点から錠剤化された医薬組成物中の最適な配合量が異なる。
【0027】
ヒドロキシプロピルセルロースは、重合度により溶解性が異なる。そのため、高い重合度のヒドロキシプロピルセルロースほど溶媒への溶解性が低くなり、結合剤成分としての機能をより発揮する。そのため、本発明におけるヒドロキシプロピルセルロースは重合度が高く、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きい性質を示す。20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースとして、例えば、HPC-L(日本曹達株式会社製)、HPC-M(日本曹達株式会社製)、HPC-H(日本曹達株式会社製)が挙げられる。
【0028】
本発明の結合剤成分の医薬組成物中の配合量は、マルチトール、デキストリン及びプルランからなる群から選択される場合、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して、100,000~2,000,000重量%であり好ましくは100,000~400,000重量%、かつ、医薬組成物の全重量に対し5~20重量%である。ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して100,000重量%未満の場合、又は、医薬組成物の全重量に対し5重量%未満の場合は、成形性が不十分となる。さらに、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して2,000,000重量%を超過する場合、又は、医薬組成物の全重量に対し20重量%を超過する場合は、結合剤成分の由来の分析ピークが多く検出されるため類縁物質管理が困難となる。
【0029】
また、医薬組成物中の結合剤成分の配合量は、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースの場合、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して、20,000~500,000重量%であり好ましくは20,000~100,000重量%、かつ、医薬組成物の全重量に対し、1~5重量%である。ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して20,000重量%未満の場合、又は、医薬組成物の全重量に対し1重量%未満の場合は、成形性が不十分となる。さらに、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の重量に対して500,000重量%を超過する場合、又は、医薬組成物の全重量に対し5重量%を超過する場合は、結合剤成分の由来の分析ピークが多く検出されるため類縁物質管理が困難となる。
【0030】
本発明の担体とは、錠剤を服薬しやすい大きさとなるように有効成分を希釈する添加剤であり、高純度な医薬品添加剤であれば制限なく使用可能である。担体の中でも、マンニトール、ブドウ糖、無水結晶果糖、乳糖及びマルチトールは、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩及びその類縁物質の分析での純度が高いため好ましい。
【0031】
本発明の錠剤化された医薬組成物とは、次に記載の高速クロマトグラフィー(以下、HPLCと称することがある)を用いた分析法で錠剤を分析したときにナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩及びその類縁物質の保持時間20~75分以内に、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩及びその類縁物質のピークを除き、対有効成分に換算して1%以上の不純物の成分量を認めず、より好ましくは0.1%以上の不純物の成分量を認めないことを意味する。これらの不純物の基準は、ICHによって定められている不純物の安全性確認ならびに報告の閾値より設定されている(非特許文献1)。
<HPLC条件>
試料調製 :医薬組成物に測定時のナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の濃度が1μg/mLになるように水を添加し、適宜撹拌して抽出する。この抽出液を遠心分離し、上澄みを測定試料とする。
標準液調製:ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩の濃度が1μg/mLになるように水を添加し溶解し、測定試料とする。
検出器 :紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム :内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
移動相A液 :50mMリン酸二水素ナトリウム水溶液/アセトニトリル=95/5(v/v)
移動相B液 :50mMリン酸二水素ナトリウム水溶液/アセトニトリル=60/40(v/v)
カラム温度 :40℃付近の一定温度
流量 :1.0mL/分
分析時間 :20分から75分
濃度勾配 :
HPLCのグラジエント条件
【表1】
表1は、HPLC条件である時間ごとの移動相A及びBの体積%変化(グラジエント条件)を示したものである。
【0032】
また、得られたHPLCピークから、以下の式1及び2を用いて、参考例、比較例及び実施例における不純物の成分量を算出し、その中から成分量が最大の不純物を求めた。
参考例1~10及び比較例1~10における不純物の成分量(%)=(試料中の各成分のHPLCピークの面積値/標準液中のナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩のHPLCピークの面積値)×100% ・・・式1
実施例1~5及び比較例11における不純物の成分量(%)=(試料中の各成分のHPLCピークの面積値/分析時間内のHPLCピークの面積値の総和)×100% ・・・式2
【0033】
本発明の錠剤化された医薬組成物には、上述の成分の他、必要に応じて一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で加えることが可能である。このような添加剤として、例えば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色剤及び甘味剤等が挙げられる。
【0034】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0035】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、酒石酸カリウムナトリウム、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、硬化油及び硬化ナタネ油等が挙げられる。
【0036】
コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースナトリウム及びポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0037】
流動化剤としては、例えば、タルク、含水二酸化ケイ素及び軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0038】
矯味剤としては、例えば、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム及びメントール等が挙げられる。
【0039】
香料としては、例えば、オレンジ、バニラ、ストロベリー及びヨーグルト風味の香料及びメントール等が挙げられる。
【0040】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、タルク、食用赤色3号、食用黄色5号及び食用青色1号等の食用色素並びにリボフラビン等が挙げられる。
【0041】
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム及びステビア等が挙げられる。
【0042】
本発明の錠剤化された医薬組成物の製造方法は、湿式造粒工程又は乾式造粒工程若しくは乾式混合工程を経て圧縮成形により製造することができる。
【0043】
湿式造粒工程において結合剤成分を液体又は懸濁状態として添加する方法に限定はないが、例えば、結合剤成分を水若しくは薬理学的に許容される溶媒に溶解又は懸濁し、得られた液体(溶液又は懸濁液)を担体に添加して造粒物を得る方法が挙げられる。この場合、有効成分を結合剤成分の溶液に溶解させて造粒物を製造しても良いし、造粒物に有効成分を混合しても良い。
【0044】
また、湿式造粒工程において結合剤成分を固体で添加する方法に限定はないが、例えば結合剤成分と担体を混合し、この混合物に薬理学的に許容される溶媒を噴霧して造粒物を得る方法が挙げられる。この場合、有効成分を溶液として溶媒とともに噴霧しても良いし、造粒物に有効成分を混合しても良い。
【0045】
湿式造粒工程には、一般的に使用される装置が用いられ、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、攪拌造粒機、円筒押出造粒機又は湿式押出造粒機等が挙げられる。有効成分の溶解又は懸濁溶媒として、例えば水を用いた場合、流動層造粒機、転動流動層造粒機又は攪拌造粒機が好適である。
【0046】
乾式造粒工程において結合剤成分を添加する方法に限定はないが、例えば、有効成分、結合剤成分及び担体を混合機で混合した混合物、又は乾式混合物をフレーク状に圧縮して適当な大きさに粉砕する方法が挙げられる。
【0047】
乾式造粒工程には、一般的に使用される装置が用いられ、たとえばスラッグ法又はローラーコンパクター法が挙げられる。
【0048】
乾式混合工程においては有効成分、結合剤成分、担体を混合し、この混合物を圧縮成形する方法が挙げられる。
【0049】
また、着色剤として、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄又は黒酸化鉄を医薬組成物に含有させることにより、固形製剤中の光安定性を更に向上させることができる。着色剤の添加方法に限定は無いが、粉末又は水若しくは薬理学的に許容される溶媒に懸濁して添加することができる。
【0050】
圧縮成形は、一般的に使用される装置が用いられ、例えば単発式打錠機、ロータリー式打錠機等が挙げられる。打錠の際の成型圧力は、取り扱い上問題とならない程度の錠剤の硬度を有していればよく、特に制限はない。
【0051】
本発明の錠剤化された医薬組成物は、粉塵の発生による医療従事者への暴露の抑制や、一包化包装において粉塵に由来する他剤とのコンタミネーション抑制する一定の成形性を有する。そのような錠剤の硬度は例えば、直径が6mmφ以上であれば40N以上であればよく、より好ましくは50N以上である。他の例としては、直径が6mmφに満たない場合は20N以上あればよく、より好ましくは30N以上である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の優れた効果を明らかにするために、比較例、参考例及び実施例を用いて説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。なお、参考例及び比較例においては、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩に由来するピークと、結合剤成分等の有効成分以外に由来するピークを明確に区別するため、有効成分を添加せずに実験を行った。
【0053】
(比較例1)
有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、ポリビニルピロリドン(PVP)(コリドン(登録商標)30、BASF社製)10mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0054】
(比較例2)
比較例1のPVPを、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学株式会社製)に代えたこと以外は比較例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学株式会社製)10mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0055】
(比較例3)
比較例1のPVPを、20℃における2%水溶液の粘度が3~5.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社製)に代えたこと以外は比較例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が3~5.9mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社製)10mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0056】
(参考例1)
比較例1のPVPを、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)に代えたこと以外は比較例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)10mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0057】
(参考例2)
比較例1のPVPを、20℃における2%水溶液の粘度が1000~4000mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H、日本曹達株式会社製)に代えたこと以外は比較例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が1000~4000mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H、日本曹達株式会社製)10mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0058】
【0059】
表2は、比較例1~3並びに参考例1及び2における結合剤成分としての各種高分子の違いによる錠剤の成形性及び錠剤化された医薬組成物の純度への影響を示したものである。表2に示されるように、20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースを添加した参考例1及び2の錠剤は、成形性が高く、保持時間20~75分以内に、対有効成分に換算して不純物の成分量が1%以上のピークを認めなかったことから、高純度に錠剤化された医薬組成物であった。
【0060】
(比較例4)
参考例1のマンニトールの配合量を895mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を100mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)895mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)100mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0061】
(参考例3)
参考例1のマンニトールの配合量を945mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を50mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)50mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0062】
(参考例4)
参考例1のマンニトールの配合量を955mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を40mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)50mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0063】
(参考例5)
参考例1のマンニトールの配合量を965mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を30mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)965mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)30mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0064】
(参考例6)
参考例1のマンニトールの配合量を975mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を20mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)975mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)20mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0065】
(参考例7)
参考例1のマンニトールの配合量を985mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を10mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)985mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)10mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)20mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0066】
(比較例5)
参考例1のマンニトールの配合量を990mgとし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の配合量を5mgに代えたこと以外は参考例1と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)990mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)20mgを200μLの水に溶解させ結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しながら乳鉢造粒し造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し、最大となる不純物の成分量を算出した。
【0067】
20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いた場合の望ましい添加量範囲
【表3】
【0068】
表3は、比較例4及び5並びに参考例3~7における、有効成分に対する結合剤成分の重量比率及び医薬組成物中の結合剤成分の配合比を変更したことによる、錠剤の成形性及び錠剤化された医薬組成物の純度への影響を示したものである。表3に示されるように、参考例3~7の20℃における2%水溶液の粘度が5.9mPa・sより大きいヒドロキシプロピルセルロースの医薬組成物中の配合比は、1~5重量%の範囲で成形性と高純度が両立可能であった。
【0069】
(クロマトグラム間のピーク比較)
図1に示されるように、高速クロマトグラフィーを用いた分析法で参考例2及び比較例1の錠剤を分析し、それらのクロマトグラムを比較すると、参考例2は20~75分以内に、対有効成分に換算して不純物の成分量が1%以上のピークを認めなかったことから、高純度に錠剤化された医薬組成物であった。
【0070】
(比較例6)
有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にソルビトール(ロケットジャパン社製)50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0071】
(比較例7)
比較例6のソルビトールを乳糖(乳糖一水和物、DMV-Fonterra Excipients社製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に乳糖50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0072】
(比較例8)
比較例6のソルビトールを無水結晶果糖(ダニスコジャパン株式会社製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次に無水結晶果糖50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0073】
(比較例9)
比較例6のソルビトールをマルトース(株式会社林原製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にマルトース50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0074】
(参考例8)
比較例6のソルビトールをプルラン(株式会社林原製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にプルラン50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0075】
(参考例9)
比較例6のソルビトールをデキストリン(日澱化学株式会社製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にデキストリン50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0076】
(参考例10)
比較例6のソルビトールをマンニトール(ロケットジャパン社製)に代えたこと以外は比較例6と同様の方法で実験した。具体的には、有効成分であるナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を100mgあたり1μg相当含有すると想定した錠剤として、マンニトール(ペアリトール(登録商標)50C、ロケットジャパン社製)945mgとステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)5mgを袋内にて混合し、混合試料とした。次にマンニトール50mgを200μLの水に溶解させて結合剤成分の溶液とし、これを混合試料に添加しつつ乳鉢造粒し、造粒物を調製した。この造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した(有効成分の想定含量1μg/錠剤)。この錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。また、この造粒物0.5g(有効成分の想定含量5μg)から水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。
【0077】
【0078】
表4は、比較例6~9及び参考例8~10における、結合剤成分の違いによる錠剤の成形性及び錠剤化された医薬組成物の純度への影響を示したものである。表4に示されるように、比較例6~9に比べ、参考例8~10のプルラン、デキストリン、マンニトール及びHPC-Lでは、成形性と高純度について両立可能であった。
【0079】
(参考例11)
ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管にマンニトール1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを参考例11とした。参考例11をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、参考例11の最大の不純物の成分量は0.00%であった。
【0080】
(参考例12)
参考例11のマンニトールをブドウ糖(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に代えたこと以外は同様の方法で参考例12を作成した。具体的には、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管にブドウ糖(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを参考例12とした。また、参考例11と同様の方法で実験し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、参考例12の最大の不純物の成分量は0.00%であった。
【0081】
(参考例13)
参考例11のマンニトールを無水結晶果糖(ダニスコジャパン株式会社製)に代えたこと以外は同様の方法で参考例13を作成した。具体的には、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管に無水結晶果糖(ダニスコジャパン株式会社製)1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを参考例13とした。また、参考例11と同様の方法で実験し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、参考例13の最大の不純物の成分量は0.00%であった。
【0082】
(参考例14)
参考例11のマンニトールを乳糖(乳糖一水和物、DMV-Fonterra Excipients製)に代えたこと以外は同様の方法で参考例14を作成した。具体的には、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管に乳糖(乳糖一水和物、DMV-Fonterra Excipients製)1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを参考例14とした。また、参考例11と同様の方法で実験し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、参考例14の最大の不純物の成分量は0.35%であった。
【0083】
(参考例15)
参考例11のマンニトールをマルチトール(株式会社林原製)に代えたこと以外は同様の方法で参考例15を作成した。具体的には、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管にマルチトール(株式会社林原製)1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを参考例15とした。また、参考例11と同様の方法で実験し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、参考例15の最大の不純物の成分量は0.32%であった。
【0084】
(比較例10)
参考例11のマンニトールを白糖(鈴粉末薬品株式会社製)に代えたこと以外は同様の方法で比較例10を作成した。具体的には、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される酸付加塩を想定添加量10μgとし、遠心管に白糖(鈴粉末薬品株式会社製)1gを入れ蒸留水10mLを添加して撹拌し、得られた上澄みを比較例10とした。また、参考例11と同様の方法で実験し、得られたピークの面積値を1μg/mLナルフラフィン塩酸塩の面積値と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表5に示すとおり、比較例10の最大の不純物の成分量は1.28%であった。
【0085】
【0086】
表5は、参考例11~15及び比較例10における、担体の違いによる錠剤化された医薬組成物の純度への影響を示したものである。
【0087】
(クロマトグラムの比較)
図2に示されるように、高速クロマトグラフィーを用いた分析法で参考例13、14及び比較例10の錠剤を分析し、それらのクロマトグラムを比較すると、参考例13及び14は20~75分以内に、対有効成分に換算して不純物の成分量が1%以上のピークを認めなかったことから、高純度に錠剤化された医薬組成物であった。
【0088】
白糖では対有効成分に換算して不純物の成分量が1%以上のピークを認めたのに対し、乳糖及びマルチトール並びに単糖類であるマンニトール、ブドウ糖及び無水結晶果糖では、ピークの出現は僅かであり、高純度に錠剤化された医薬組成物が得られ、その効果は単糖類でより顕著であった。
【0089】
(実施例1)
マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)97.895部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)1部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製し、実施例1とした。実施例1の結合剤成分であるヒドロキシプロピルセルロースの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して1重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては20,000重量%となる。
【0090】
実施例1の錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。表6に示すとおり、実施例1の錠剤の硬度は93Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0091】
また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を分析時間内のピーク面積値の総和と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表6に示すとおり、実施例1の最大の不純物の成分量は0.20%であり、高純度の基準に照らすと○であった。
【0092】
(実施例2)
実施例1のマンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)の添加量を93.895部に変更し、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)の添加量を5部に変更した以外は実施例1と同様の方法で6mmφ錠剤(1錠)を調製した。具体的には、マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)93.895部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部、20℃における2%水溶液の粘度が6~10mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社製)5部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製し、実施例2とした。また、実施例2の最大の不純物の成分量及び錠剤の硬度について、同様の測定を行った。実施例2の結合剤成分であるヒドロキシプロピルセルロースの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して5重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては100,000重量%となる。
【0093】
また、表6に示すとおり、実施例2の最大の不純物の成分量は0.25%であり、高純度の基準に照らすと○であった。また、表6に示すとおり、実施例2の錠剤の硬度は119Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0094】
(実施例3)
マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)93.895部、マルチトール(粉末マビット、株式会社林原製)5部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤を調製し、実施例3とした。実施例3の結合剤成分であるマルチトールの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して5重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては100,000重量%となる。
【0095】
実施例3の錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。表6に示すとおり、実施例3の錠剤の硬度は117Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0096】
また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を分析時間内のピーク面積値の総和と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表6に示すとおり、実施例3の最大の不純物の成分量は0.28%であり、高純度の基準に照らすと○であった。
【0097】
(実施例4)
実施例3のマンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)の添加量を78.895部に変更し、マルチトール(粉末マビット、株式会社林原製)の添加量を20部に変更した以外は実施例3と同様の方法で6mmφ錠剤(1錠)を調製した。具体的には、マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)78.895部、マルチトール(粉末マビット、株式会社林原製)20部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤を調製し、実施例4とした。また、実施例4の最大の不純物の成分量及び錠剤の硬度について、同様の測定を行った。実施例4の結合剤成分であるマルチトールの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して20重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては400,000重量%となる。
【0098】
また、表6に示すとおり、実施例4の最大の不純物の成分量は0.60%であり、高純度の基準に照らすと○であった。また、表6に示すとおり、実施例4の錠剤の硬度は183Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0099】
(実施例5)
実施例3のマルチトールをプルラン(日本薬局方プルラン、株式会社林原製)に変更した以外は実施例3と同様の方法で実験した。具体的には、マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)93.895部、プルラン(日本薬局方プルラン、株式会社林原製)5部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤を調製し、実施例5とした。また、実施例5の最大の不純物の成分量及び錠剤の硬度について、同様の測定を行った。実施例5の結合剤成分であるプルランの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して5重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては100,000重量%となる。
【0100】
また、表6に示すとおり、実施例5の最大の不純物の成分量は0.24%であり、高純度の基準に照らすと○であった。また、表6に示すとおり、実施例5の錠剤の硬度は87Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0101】
(実施例6)
実施例4のマルチトールをプルラン(日本薬局方プルラン、株式会社林原製)に変更した以外は実施例4と同様の方法で実験した。具体的には、マンニトール(ペアリトール200SD(登録商標)、ロケットジャパン社製)78.895部、プルラン(日本薬局方プルラン、株式会社林原製)20部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤を調製し、実施例6とした。また、実施例6の最大の不純物の成分量及び錠剤の硬度について、同様の測定を行った。実施例6の結合剤成分であるプルランの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して20重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては400,000重量%となる。
【0102】
また、表6に示すとおり、実施例4の最大の不純物の成分量は0.50%であり、高純度の基準に照らすと○であった。また、表6に示すとおり、実施例4の錠剤の硬度は161Nであり、成形性の基準に照らすと◎であった。
【0103】
(比較例11)
乳糖(Pharmatose200M(登録商標)、DMV-Fonterra Excipients製)87.1464部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)(LH-11、信越化学株式会社製)8.75部を秤りとって、乳鉢に投入した。この顆粒に対して、ナルフラフィン塩酸塩(東レ株式会社製)0.0036部、チオ硫酸ナトリウム水和物(国産化学株式会社製)0.1部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学株式会社製)3部を蒸留水に溶解した液を滴下しながら乳鉢で混合し、検体乾燥器にて45℃で2時間乾燥し造粒顆粒を得た。ここにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を1部添加して袋内で混合した。得られた造粒物100mgを油圧プレス機にて100kgfで加圧して6mmφ錠剤(1錠)を調製した。比較例11の結合剤成分であるヒドロキシプロピルセルロースの重量は、錠剤化された医薬組成物に対して3重量%であり、ナルフラフィン塩酸塩に対しては83,333重量%となる。
【0104】
比較例11の錠剤の硬度を硬度計(岡田精工株式会社製、PC-30)にて測定した。表6に示すとおり、比較例11の錠剤の硬度は46Nであり、成形性の基準に照らすと○であった。
【0105】
また、この造粒物0.5gから水5mLで抽出した抽出物をHPLCにて分析し、得られたピークの面積値を分析時間内のピーク面積値の総和と比較し最大の不純物の成分量を算出した。表6は、比較例6~9及び参考例8~10における、結合剤成分の違いによる錠剤の成形性及び錠剤化された医薬組成物の純度への影響を示したものである。表6に示すとおり、比較例11の最大の不純物の成分量は15.59%であり、高純度の基準に照らすと×であった。
【0106】
さらに、
図3に示されるように、高速クロマトグラフィーを用いた分析法で実施例1~6の錠剤を分析し、それらのクロマトグラムを比較すると、いずれも20~75分以内に、対有効成分に換算して不純物の成分量が1%以上のピークを認めなかったことから、高純度に錠剤化された医薬組成物であった。
【0107】
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、ナルフラフィン塩酸又はその薬理学的に許容される酸付加塩を含有する錠剤化された医薬組成物において成形性の確保と類縁物質管理の容易さが両立できる。これにより、類縁物質の検出精度が向上し、わずかな量の類縁物質を測定可能になる。