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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】上吊引き戸の防水機構
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20221006BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20221006BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20221006BHJP
   E05C 1/06 20060101ALI20221006BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/16 C
E06B7/22 B
E05C1/06 B
E04H9/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019089256
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020076286
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2018211816
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-184224(JP,A)
【文献】実開昭55-138268(JP,U)
【文献】特開2008-150829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出入口に設置した枠体に形成される開口部をドア部材により開口、閉鎖する上吊引き戸に備えられ、開口部から建物内へ水が浸入するのを防止するように構成された上吊引き戸の防水機構において、防水機構は、装置本体に対して上下方向に移動する軸部材を備えた施錠装置と、ドア部材の下方に向けて移動するロッド部材と、開口部に設けた押付部とから成る作動部と、開口部に沿って配置されるシール部材とから構成され、開口部を閉鎖した状態のドア部材の下方を作動部によって突き合わせ方向に移動させると共に、シール部材を押付けるように移動させることを特徴とする上吊引き戸の防水機構。
【請求項2】
前記施錠装置は、着脱可能なハンドルを用いて軸部材を装置本体に対して上下方向に移動させることを特徴とする請求項1記載の上吊引き戸の防水機構。
【請求項3】
前記押付部には傾斜部と案内部材が備えられ、傾斜部に係合したロッド部材を介してドア部材の下方を突き合わせ方向に移動させると共に、案内部材に係合したロッド部材を介してドア部材の下方をシール部材を押付けるように移動させることを特徴とする請求項1または2記載の上吊引き戸の防水機構。
【請求項4】
前記傾斜部の位置を調整可能としたことを特徴とする請求項3記載の上吊引き戸の防水機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口に設置した枠体に形成される開口部をドア部材により開口、閉鎖する上吊引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の上吊引き戸として例示する自動ドア装置では、集中豪雨等によって生じた水がドア部材と床面との隙間から建物内へ水が浸入するおそれがある。そこで、特許文献1に記載のように、一方のドアの収納部には外部へ引き出し可能な金属製のバリケードが収容され、他方のドアには前記バリケードを引き出す電磁石装置が設けられ、左右のドアの開閉動作によって電磁石装置に吸着されたバリケードを開口部の床面に設置させると共に、左右のドアの収納部内に収納された状態とすることで、開口部にある左右のドアの下端部と床面との間が前記バリケードによって塞がれるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017―160735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のものでは左右のドアの開閉動作を速やかに行わないと、大量の水が開口部から建物内へ浸入してしまう問題があった。また、集中豪雨等によってドアの中間位置付近まで水位が急上昇した場合に、水圧によって左右のドアの開閉動作が行えない場合があった。
そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、開閉動作を行うことなくドア部材と床面との間を塞ぐようにした上吊引き戸の防水機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、建物の出入口に設置した枠体に形成される開口部をドア部材により開口、閉鎖する上吊引き戸に備えられ、開口部から建物内へ水が浸入するのを防止するように構成された上吊引き戸の防水機構において、防水機構は、装置本体に対して上下方向に移動する軸部材を備えた施錠装置と、ドア部材の下方に向けて移動するロッド部材と、開口部に設けた押付部とから成る作動部と、開口部に沿って配置されるシール部材とから構成され、開口部を閉鎖した状態のドア部材の下方を作動部によって突き合わせ方向に移動させると共に、シール部材を押付けるように移動させることを特徴とする。具体的には、前記施錠装置は、着脱可能なハンドルを用いて軸部材を装置本体に対して上下方向に移動させることを特徴とする。また、前記押付部には傾斜部と案内部材が備えられ、傾斜部に係合したロッド部材を介してドア部材の下方を突き合わせ方向に移動させると共に、案内部材に係合したロッド部材を介してドア部材の下方をシール部材を押付けるように移動させることを特徴とする。更に、前記傾斜部の位置を調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、防水機構は、装置本体に対して上下方向に移動する軸部材を備えた施錠装置と、ドア部材の下方に向けて移動するロッド部材と、開口部に設けた押付部とから成る作動部と、開口部に沿って配置されるシール部材とから構成され、開口部を閉鎖した状態のドア部材の下方を作動部によって突き合わせ方向に移動させると共に、シール部材を押付けるように移動させることで、開口部の前の水位が上昇しても速やかにドア部材と床面との間を塞ぐことが可能である。また、前記施錠装置は、着脱可能なハンドルを用いて軸部材を装置本体に対して上下方向に移動させることで、いたずら等により間違ってハンドルが回動されることがない。更に、前記押付部には傾斜部と案内部材が備えられ、傾斜部に係合したロッド部材を介してドア部材の下方を突き合わせ方向に移動させると共に、案内部材に係合したロッド部材を介してドア部材の下方をシール部材を押付けるように移動させることで、簡単な構成でドア部材の下方を移動させることが可能である。更に、前記傾斜部の位置を調整可能としたことで、突き合わせ方向への押付力の調整が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の防水機構を備えた自動ドア装置であって、開口部を閉鎖した状態を示す図である。
図2】開口部を開口した状態を示す図である。
図3図1のIII-III線拡大断面図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5図4のV-V線拡大断面図である。
図6】ハンドルを用いて防水機構を作動させた状態を示す図である。
図7図6のVII-VII線部分拡大断面図である。
図8図7のVIII-VIII線拡大断面図である。
図9図5のIX-IX線断面図であって、押付部を示す図である。
図10】他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1、2は、建物の出入口2に設置した枠体3に形成される開口部4をドア部材5、6により開口、閉鎖する上吊引き戸として例示する自動ドア装置1である。前記枠体3は複数の枠7~12を組み合わせたものであり、中央に開口部4が形成されている。左右のドア部材5、6は各ドア部材5、6の上部に設けた複数の吊車13を介して枠体3の上枠7のレール部材14に吊下げられている。ドア部材5、6と床面F(下枠8)との間には隙間がある。各ドア部材5、6の下端には下枠8内に突出するようにL字状の当接片15が取り付けられている。枠体3の上枠7には左右のドア部材5、6を移動させる駆動装置16が設置されている。駆動装置16は図示しないセンサの信号に基づき駆動する。この自動ドア装置1には防水機構17が備えられ、集中豪雨等によって生じた水がドア部材と床面Fとの間から建物内へ浸入するのを防止するようになっている。
【0009】
前記の防水機構17について説明する。防水機構17は、例えば特開2015-10364号公報に記載のハンドル18の回動により装置本体19aに対して上下方向に移動する軸部材19bを備えた施錠装置19と、ドア部材5、6の上下方向に移動可能なロッド部材20と、枠体3の下枠8に設けた押付部21とから成る作動部22と、枠体3に形成される開口部4に沿って配置されるシール部材23とから構成される。本実施形態では、シール部材23は枠体3に配置されている。各ドア部材5、6の戸先側と突き合わせ側に施錠装置19が夫々設置され、施錠装置19の軸部材19bにロッド部材20が連結されている。ロッド部材20の先端には複数の傾斜面24a、24bを備えた係合部材24が取り付けられている。ドア部材5、6の下端には前記係合部材24が通過する通過孔25が設けられている。そして、ロッド部材20は、施錠装置19の軸部材19bの移動によりドア部材5、6の下端にある係合部材24の先端が下枠8内に移動する長さにしてある。また、前記施錠装置19は、着脱可能なハンドル18を用いて軸部材19bを装置本体19aに対して上下方向に移動させるようにしたことで、ハンドル18は防水機構17を作動させるとき以外は、常時建物内の所定の場所で保管される。
【0010】
前記押付部21は、図4、5に示すように、箱状の本体26に、板部材27に取り付けたブラケット28が嵌め込まれたものである。押付部21は下枠8に図示しないネジ部材によって固定されている。ブラケット28には傾斜面29aを備えた傾斜部29と円筒状の案内部材30が備えられている。ブラケット28の下部には長手方向に延びる案内溝31が形成され、その案内溝31に傾斜部29が嵌め込まれている。傾斜部29の下部にはブラケット28を挟み込むように固定部材32がネジ部材33を介して取り付けられている。傾斜部29はネジ部材33を緩めること案内溝31に沿って移動させることができる。また、板部材27には前記のロッド部材20の係合部材24が通過するように孔34が設けられている。押付部21はドア部材5、6に設置した施錠装置19に対応するように下枠8に複数設けられている。尚、ドア部材5、6の戸先側を突き合わせ方向に移動させる必要がないために押付部21の傾斜部29はブラケット28から取り外されている。
【0011】
上記のように構成された作動部22では、ハンドル18の回動により装置本体19aに対して上下方向に移動する軸部材19bを備えた施錠装置19によってロッド部材20の先端をドア部材5、6の下方に向けて移動させ、ロッド部材20の係合部材24を下枠8に設けた押付部21に挿入させる。ロッド部材20は押付部21の傾斜部29と案内部材30によって2方向に傾けられる。そのロッド部材20を介してドア部材5、6の下方を2方向に移動させるようになっている。具体的には、図7、8のように、傾斜部29の傾斜面29aと係合部材24の傾斜面24aによってドア部材5(6)の下方を突き合わせ方向に移動させる。そして、案内部材30と係合部材24の傾斜面24bによってドア部材5(6)の下方を開口部4(枠体3)に向けて移動させる。本実施形態では、ドア部材5(6)の下方に取り付けた当接片15を開口部4に沿って配置されるシール部材23に押付けるようにしたが、図10に示すように、ドア部材5(6)の下方の当接片15Aにシール部材23Aを取付け、シール部材23Aを開口部4(枠体3)に押付けるようにしてもよい。更に、傾斜部29の位置を案内溝31に沿って移動させることで突き合わせ方向への押付力Pを調整することが可能となる。
【0012】
本発明の防水機構17の動作について説明する。集中豪雨等により出入口2の前の水位が上昇したと判断されると、左右のドア部材5、6によって開口部4を閉鎖させた状態において、装置本体19aに対して上下方向に移動する軸部材19bを備えた施錠装置19によってロッド部材20の先端をドア部材5、6の下方に向けて移動させる。ロッド部材20の係合部材24を枠体3の下枠8に設けた押付部21内に挿入させ、係合部材24を傾斜部29、案内部材30に係合させる。そして、各ドア部材5、6の下方を突き合わせ方向に移動させると共に、各ドア部材5、6の下方をシール部材23を押付けるように移動させる。こうして、左右のドア部材5、6と床面Fとの間の隙間が塞がれることになる。尚、本発明の防水機構17を、左右のドア部材5、6で開口部4を開口、閉鎖する引き分け式自動ドア装置1に備えたが、1枚のドア部材で開口部を開口、閉鎖する片引き式自動ドア装置に備えてもよい。更に、上枠7にシール部材23を設け、上記の防水機構17を用いてドア部材5、6の上方をシール部材23を押付けるように移動させることで、自動ドア装置1の気密性を向上させることができる。また、施錠装置19はICカード等からのデータを受信することで軸部材19bを装置本体19aに対して上下方向に移動させるように構成されたものであってもよい。
【0013】
従って、防水機構17は、装置本体19aに対して上下方向に移動する軸部材19bを備えた施錠装置19と、ドア部材5、6の下方に向けて移動するロッド部材20と、開口部4に設けた押付部21とから成る作動部22と、開口部4に沿って配置されるシール部材23とから構成され、開口部4を閉鎖した状態のドア部材5、6の下方を作動部22によって突き合わせ方向に移動させると共に、シール部材23を押付けるように移動させることで、従来のものに比べて開口部4を閉鎖した状態のまま速やかにドア部材5、6と床面Fとの間を塞ぐことができる。前記施錠装置19は、着脱可能なハンドル18を用いて軸部材19bを装置本体19aに対して上下方向に移動させることで、いたずら等により間違ってハンドル18が回動されることを防止できる。更に、前記押付部21には傾斜部29と案内部材30が備えられ、傾斜部29に係合したロッド部材20を介してドア部材5、6の下方を突き合わせ方向に移動させると共に、案内部材30に係合したロッド部材20を介してドア部材5、6の下方をシール部材23を押付けるように移動させることで、簡単な構成でドア部材5、6の下方を移動させることができる。また、前記傾斜部29の位置を調整可能としたことで、突き合わせ方向への押付力Pを調整することが容易にできる。
【符号の説明】
【0014】
1 自動ドア装置
2 出入口
4 開口部
5 ドア部材
6 ドア部材
17 防水機構
18 ハンドル
19 施錠装置
19a 装置本体
19b 軸部材
20 ロッド部材
21 押付部
22 作動部
23 シール部材
29 傾斜部
30 案内部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10