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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】燃料ポンプ駆動構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/10 20060101AFI20221006BHJP
   F02M 39/02 20060101ALI20221006BHJP
   F02M 37/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F02M59/10 Z
F02M59/10 C
F02M39/02 Z
F02M37/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018015902
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019132215
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】小林 優介
(72)【発明者】
【氏名】大石 和貴
(72)【発明者】
【氏名】中西 良
(72)【発明者】
【氏名】山城 竜太郎
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-193074(JP,A)
【文献】特開2005-133581(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057252(WO,A1)
【文献】特開2011-064073(JP,A)
【文献】特開2009-275599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/10
F02M 39/02
F02M 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュロッドの往復によってバルブが開閉して燃焼室への吸気又は排気が行われるエンジンの燃料ポンプ駆動構造であって、
弁駆動カムと低圧ポンプ駆動カムと高圧ポンプ駆動カムとを有するカムシャフトと、
低圧燃料ポンプ及び高圧燃料ポンプと、を備え、
前記低圧燃料ポンプは、前記高圧燃料ポンプ側へ燃料を供給し、
前記高圧燃料ポンプは、前記低圧燃料ポンプ側から供給された燃料を前記燃焼室側へ供給し、
前記プッシュロッドは、前記カムシャフトの回転に伴って回転する前記弁駆動カムによって往復して前記バルブを開閉し、
前記低圧燃料ポンプは、前記カムシャフトの回転に伴って回転する前記低圧ポンプ駆動カムによって駆動され、
前記高圧燃料ポンプは、前記カムシャフトの回転に伴って回転する前記高圧ポンプ駆動カムによって駆動され、
前記低圧燃料ポンプのポンプ軸と前記高圧燃料ポンプのポンプ軸とは、非平行に配置され、且つ何れも前記プッシュロッドのロッド軸に対して傾斜し、
前記カムシャフトにおいて、前記低圧ポンプ駆動カムと前記高圧ポンプ駆動カムとの間に前記弁駆動カムが配置される
ことを特徴とする燃料ポンプ駆動構造。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料ポンプ駆動構造であって、
前記低圧燃料ポンプの前記ポンプ軸と前記高圧燃料ポンプの前記ポンプ軸とは、何れも前記エンジンのシリンダ軸に対して傾斜する
ことを特徴とする燃料ポンプ駆動構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの燃焼室側へ燃料を供給するための燃料ポンプ駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディーゼル機関車のエンジンが記載されている。このエンジンでは、高圧燃料ポンプによって燃料を噴射ノズルから噴射する。エンジンのカムシャフトには、吸気及び排気弁を動かすための弁ローブが設けられ、弁ローブに機械的エネルギーを供給して吸気及び排気弁を動かすために、各カムシャフトの被駆動端部における駆動歯車からトルクが伝達される。高圧燃料ポンプは、カムシャフトに設置された燃料ローブによって動かされる。また、特許文献1には、燃料ローブを弁ローブに隣接して配置した状態が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-501296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OHV(Over Head Valve)方式のエンジンでは、カムシャフトの弁駆動カム(弁ローブ)に駆動されて往復するプッシュロッドが設けられ、プッシュロッドによってロッカーアームが押し上げられてバルブ(吸気弁又は排気弁)が開閉する。特許文献1の技術はOHV方式のエンジンに対しても適用可能であり、OHV方式のエンジンに特許文献1の技術を適用した場合、燃料ポンプは、弁駆動カムに隣接するポンプ駆動カム(燃料ローブ)によって駆動される。
【0005】
このようにOHV方式のエンジンのカムシャフトにポンプ駆動カムを設け、ポンプ駆動カムをバルブ駆動カムに隣接して配置する場合において、燃料ポンプのポンプ軸をプッシュロッドのロッド軸と略平行に設定すると(カムシャフトのシャフト軸とプッシュロッドのロッド軸と燃料ポンプのポンプ軸とを略同一平面内に配置すると)、燃料ポンプがプッシュロッドと干渉しないようにポンプ駆動カムを弁駆動カムから大きく離間させなければならず、カムシャフトが伸長してエンジンの大型化を招く。
【0006】
そこで、本開示は、エンジンの大型化を抑制しつつ、燃料ポンプをカムシャフトによって駆動可能な燃料ポンプ駆動構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、プッシュロッドの往復によってバルブが開閉して燃焼室への吸気又は排気が行われるエンジンの燃料ポンプ駆動構造であって、カムシャフトと低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとを備える。
【0008】
カムシャフトは、弁駆動カムと低圧ポンプ駆動カムと高圧ポンプ駆動カムとを有する。低圧燃料ポンプは、高圧燃料ポンプ側へ燃料を供給する。高圧燃料ポンプは、低圧燃料ポンプ側から供給された燃料を燃焼室側へ供給する。プッシュロッドは、カムシャフトの回転に伴って回転する弁駆動カムによって往復してバルブを開閉する。低圧燃料ポンプは、カムシャフトの回転に伴って回転する低圧ポンプ駆動カムによって駆動される。高圧燃料ポンプは、カムシャフトの回転に伴って回転する高圧ポンプ駆動カムによって駆動される。低圧燃料ポンプのポンプ軸と高圧燃料ポンプのポンプ軸とは、非平行に配置され、且つ何れもプッシュロッドのロッド軸に対して傾斜する。カムシャフトにおいて、低圧ポンプ駆動カムと高圧ポンプ駆動カムとの間に弁駆動カムが配置される。
【0009】
上記構成では、低圧燃料ポンプのポンプ軸と高圧燃料ポンプのポンプ軸とをプッシュロッドのロッド軸に対して傾斜させているので、低圧燃料ポンプ及び高圧燃料ポンプがプッシュロッドと干渉しないように低圧ポンプ駆動カム及び高圧ポンプ駆動カムを弁駆動カムから離間させる際の離間量を、2つのポンプ軸とロッド軸とを略平行に設定する場合に比べて小さく抑える(低圧ポンプ駆動カム及び高圧ポンプ駆動カムと弁駆動カムとの距離を短縮する)ことができる。従って、カムシャフトの伸長によるエンジンの大型化(カムシャフトの軸方向に沿ったエンジン幅の増大)を抑制しつつ、低圧燃料ポンプ及び高圧燃料ポンプをカムシャフトによって駆動することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様の燃料ポンプ駆動構造であって、低圧燃料ポンプのポンプ軸と高圧燃料ポンプのポンプ軸とは、何れもエンジンのシリンダ軸に対して傾斜する。
【0011】
上記構成では、低圧燃料ポンプのポンプ軸と高圧燃料ポンプのポンプ軸とをエンジンのシリンダ軸に対して傾斜させているので、低圧燃料ポンプ及び高圧燃料ポンプが燃焼室の上部構造(例えばシリンダヘッド)と干渉しないように低圧ポンプ駆動カム及び高圧ポンプ駆動カム(カムシャフト)をシリンダ軸から離間させる際の離間量を、2つのポンプ軸とシリンダ軸とを略平行に設定する場合に比べて小さく抑える(カムシャフトとシリンダ軸との距離を短縮する)ことができる。従って、カムシャフトをシリンダ軸から離間させることによるエンジンの大型化(カムシャフトの軸方向と直交する方向に沿ったエンジン幅の増大)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、エンジンの大型化を抑制しつつ、燃料ポンプをカムシャフトによって駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料ポンプ駆動構造を適用したエンジンの概略図である。
図2図1を矢印II方向から視た概略図である。
図3】カムシャフトの要部断面を図2の矢印III方向から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、CL1はクランクシャフト9の回転軸を、CL2はカムシャフト13の回転軸を、CL3はエンジン1のシリンダ軸を、CL4はプッシュロッド15のロッド軸を、CL5はサプライポンプ12のポンプ軸を、CL6はフィードポンプ11のポンプ軸それぞれ示す。また、図3ではフィードポンプ11の図示を省略している。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る燃料ポンプ駆動構造は、例えば、コモンレール式燃料噴射システムを備えるディーゼルエンジン1(以下、単にエンジン1という。)に適用される。エンジン1は、カムシャフト13の弁駆動カム16,17に駆動されて往復するプッシュロッド15によってロッカーアーム14が押し上げられてバルブ(吸気弁6又は排気弁(図示省略))が開閉するOHV(Over Head Valve)方式のエンジンである。
【0016】
エンジン1にはフィードポンプ(燃料ポンプ)11とサプライポンプ(燃料ポンプ)12とが設けられている。コモンレール式燃料噴射システムでは、燃料タンク3内の燃料をフィードポンプ(低圧ポンプ)11によってサプライポンプ(高圧ポンプ)12側へ供給し、サプライポンプ12によって燃料を加圧してコモンレール4(燃料の流通方向における燃焼室2側のコモンレール4)へ供給し、サプライポンプ12によって加圧された高圧の燃料をコモンレール4に貯留し、コモンレール4に貯留された高圧の燃料を複数(本実施形態では、4つ)のインジェクタ5からエンジン1の複数(本実施形態では、4つ)の燃焼室2へそれぞれ噴射する。
【0017】
エンジン1には、燃焼室2への吸気を制御する吸気弁6と、燃焼室2からの排気を制御する排気弁(図示省略)と、シリンダ軸CL3に沿って往復するピストン8と、クランクシャフト9と、カムシャフト13とが設けられている。インジェクタ5から燃焼室2へ噴射された燃料は、燃焼室2内でピストン8によって圧縮された高温の空気によって着火して燃焼し、この燃焼によって膨張したガスが、ピストン8を押し下げてエンジン1のクランクシャフト9を回転させる。
【0018】
プッシュロッド15は、吸気弁6及び排気弁の各々に対して設けられる。吸気弁6は閉方向(図2中上方)に常時付勢され、プッシュロッド15はロッド軸方向CL4に沿って往復自在にエンジン1のシリンダブロック1aに支持されている。後述するようにカムシャフト13の回転によってプッシュロッド15が開方向(図2中上方)へ移動し、ロッカーアーム14の一端側がプッシュロッド15によって押し上げられてロッカーアーム14が傾動すると、ロッカーアーム14の他端側が付勢力に抗して吸気弁6を押下げ、吸気弁6が開口して燃焼室2への吸気が行われる。排気弁も同様であり、カムシャフト13の回転によってプッシュロッド15が開方向へ移動すると、排気弁が開口して燃焼室2からの排気が行われる。すなわち、吸気弁6に対応するプッシュロッド15の往復により吸気弁6が開閉して燃焼室2への吸気が行われ、排気弁に対応するプッシュロッド15の往復によって排気弁が開閉して燃焼室2からの排気が行われる。
【0019】
図1図3に示すように、カムシャフト13は、棒状部材であって、複数のカムを一体的に有し、エンジン1のシリンダブロック1aに回転自在に支持される。複数のカムには、複数(本実施形態では、4つ)の吸気弁駆動カム(弁駆動カム)16と、複数(本実施形態では、4つ)の排気弁駆動カム(弁駆動カム)17と、フィードポンプ駆動カム(ポンプ駆動カム)18と、サプライポンプ駆動カム(ポンプ駆動カム)19とが含まれる。カムシャフト13は、カムシャフト13の軸方向(延設方向)に延びる回転軸CL2を有し、カムシャフト13の回転軸CL2がクランクシャフト9の回転軸CL1と略平行になるように配置される。カムシャフト13の一端側の端部には、入力ギア20が固定的に設けられる。入力ギア20は、ギア又はチェーン等を介してクランクシャフト9に固定的に設けられた出力ギア26に連結される。この連結によって、カムシャフト13の入力ギア20には、カムシャフト13を回転させるための力がクランクシャフト9の出力ギア26から入力し、カムシャフト13は、クランクシャフト9の回転に伴って回転する。
【0020】
複数の吸気弁駆動カム16及び複数の排気弁駆動カム17は、カムシャフト13の回転軸CL2から吸気弁駆動カム16及び排気弁駆動カム17の外周面までの距離が一定ではない板カムであって、カムシャフト13に対して、カムシャフト13の軸方向に所定間隔を空けて交互に設けられる。本実施形態では、カムシャフト13の一端側(入力ギア20側)から他端側へ、吸気弁駆動カム16、排気弁駆動カム17、吸気弁駆動カム16、...、排気弁駆動カム17の順に交互に配置される。カムシャフト13の入力ギア20から1番目及び2番目の弁駆動カム16,17は、入力ギア20に最も近い燃焼室2の吸気弁6及び排気弁(以下、弁6と称する。)に対応し、入力ギア20から3番目及び4番目の弁駆動カム16,17は、入力ギア20から2番目の燃焼室2の弁6に対応し、入力ギア20から5番目及び6番目の弁駆動カム16,17は、入力ギア20から3番目の燃焼室2の弁6に対応し、入力ギア20から7番目及び8番目の弁駆動カム16,17は、入力ギア20から4番目の燃焼室2の弁6に対応する。各吸気弁駆動カム16の外周面には、吸気弁6を開閉するプッシュロッド15の先端が当接し(図2参照)、各排気弁駆動カム17の外周面には、排気弁を開閉するプッシュロッド15の先端が当接している。複数の吸気弁駆動カム16及び複数の排気弁駆動カム17は、カムシャフト13の回転によって回転軸CL2を中心として回転し、吸気弁6または排気弁のプッシュロッド15をロッド軸CL4に沿って往復運動させる。プッシュロッド15は、往復運動することによってロッカーアーム14を介して吸気弁6または排気弁を駆動する。複数の吸気弁駆動カム16及び複数の排気弁駆動カム17は、複数の吸気弁6及び複数の排気弁毎に予め定められた所定の開閉タイミングに応じて各弁6が開閉するように、それぞれ設定される。なお、図2には、サプライポンプ駆動カム19、吸気弁6及び吸気弁駆動カム16を図示し、フィードポンプ駆動カム18、排気弁及び排気弁駆動カム17の図示を省略している。また、弁駆動カム16,17間の上記所定間隔は、吸気弁6及び排気弁間の距離やエンジン1の複数の燃焼室2間の距離に基づいて定まる。
【0021】
フィードポンプ駆動カム18は、カムシャフト13の回転軸CL2からフィードポンプ駆動カム18の外周面までの距離が一定ではない板カムであって、カムシャフト13の弁駆動カム16,17のうち、カムシャフト13の入力ギア20に対して2番目に近い位置に配置される弁駆動カム(本実施形態では、入力ギア20に最も近い位置に配置される燃焼室2に対応する排気弁駆動カム17)と、入力ギア20に対して3番目に近い位置に配置される弁駆動カム(本実施形態では、入力ギア20から2番目の燃焼室2に対応する吸気弁駆動カム16)との間に配置される。フィードポンプ駆動カム18の外周面には、フィードポンプ11のタペットローラ(図示省略)が当接している。フィードポンプ駆動カム18は、カムシャフト13の回転によって回転軸CL2を中心として回転し、フィードポンプ11のロッド(図示省略)を往復運動させることによってフィードポンプ11を駆動させる。
【0022】
サプライポンプ駆動カム19は、カムシャフト13の回転軸CL2からサプライポンプ駆動カム19の外周面までの距離が一定ではない板カムであって、カムシャフト13の弁駆動カム16,17のうち、カムシャフト13の入力ギア20に最も近い位置に配置される弁駆動カム(本実施形態では、入力ギア20に最も近い位置に配置される燃焼室2に対応する吸気弁駆動カム16)と、入力ギア20に対して2番目に近い位置に配置される弁駆動カム(本実施形態では、入力ギア20に最も近い位置に配置される燃焼室2に対応する排気弁駆動カム17)との間に配置される。すなわち、サプライポンプ駆動カム19と入力ギア20との間の距離は、フィードポンプ駆動カム18と入力ギア20との間の距離よりも短い。サプライポンプ駆動カム19の外周面には、サプライポンプ12の後述するタペットローラ23が当接している(図3参照)。サプライポンプ駆動カム19は、カムシャフト13の回転によって回転軸CL2を中心として回転し、サプライポンプ12の後述するプランジャ24を往復運動させることによってサプライポンプ12を駆動させる。
【0023】
フィードポンプ11は、フィードポンプ11に要求される圧力がサプライポンプ12に要求される圧力よりも低い低圧燃料ポンプであって、エンジン1のシリンダブロック1aに固定され、燃料タンク3内の燃料をサプライポンプ12側へ供給する。シリンダブロック1aには、カムシャフト13のフィードポンプ駆動カム18に向かって開口する貫通孔(図示省略)が形成され、該貫通孔には、フィードポンプ11のロッド(図示省略)が挿通する。ロッドが前記貫通孔を挿通した状態で、ロッドの先端のタペットローラ(図示省略)は、カムシャフト13のフィードポンプ駆動カム18に当接する。フィードポンプ11は、カムシャフト13の回転運動をロッドの往復運動に変換し、ロッドの往復運動によってピストン(図示省略)を往復運動させて、燃料タンク3内の燃料をサプライポンプ12側へ供給する。
【0024】
図2に示すように、サプライポンプ12は、サプライポンプ12に要求される圧力がフィードポンプ11に要求される圧力よりも高い高圧燃料ポンプであって、エンジン1のシリンダブロック1aに対してアダプタ30を介して固定され、フィードポンプ11からの燃料を加圧して燃焼室2側のコモンレール4へ供給する。シリンダブロック1aには、カムシャフト13のサプライポンプ駆動カム19に向かって貫通するアダプタ装着部25が形成され、アダプタ装着部25には、略筒状のアダプタ30が挿入される。アダプタ装着部25は、フィードポンプ11のロッドが挿通するシリンダブロック1aの貫通孔よりもカムシャフト13の軸方向の入力ギア20側に配置される。なお、カムシャフト13に対する負荷は、フィードポンプ11よりもサプライポンプ12の方が高い。
【0025】
アダプタ30は、所定方向(ポンプ軸CL5)に沿って延びてシリンダブロック1aのアダプタ装着部25に挿入される筒状部31と、筒状部31の一端側から径方向の外側へ突出する鍔状のフランジ部32とを有する。筒状部31の内径面はポンプ室29の外周を区画し、フランジ部32はシリンダブロック1aの外面に対して固定される。
【0026】
サプライポンプ12には、プランジャ24、タペット27等が設けられ、タペット27にはタペットローラ23が回転自在に支持される。タペット27は、サプライポンプ駆動カム19に向かって付勢された状態で、サプライポンプ駆動カム19に当接する。タペットローラ23の回転軸は、カムシャフト13の回転軸CL2と略平行になるように設定される。
【0027】
カムシャフト13の回転によってサプライポンプ駆動カム19が回転すると、タペットローラ23が回転しつつ、タペット27及びプランジャ24がポンプ軸CL5に沿って往復運動し、プランジャ24がポンプ室29で燃料を加圧してコモンレール4側へ供給する。すなわち、サプライポンプ12は、カムシャフト13の回転運動をプランジャ24の往復運動に変換し、プランジャ24の往復運動によって燃料を加圧してコモンレール4へ供給する。
【0028】
図3に示すように、フィードポンプ11のポンプ軸CL6と、サプライポンプ12のポンプ軸CL5と、プッシュロッド15のロッド軸CL4とは、何れもカムシャフト13の回転軸CL2に対して略直交する。また、図2に示すように、カムシャフト13の回転軸CL2の軸方向から視ると、サプライポンプ12のポンプ軸CL5及びフィードポンプ11のポンプ軸CL6は、プッシュロッド15のロッド軸CL4に対して傾斜するとともに、エンジン1のシリンダ軸CL3に対しても傾斜する。なお、プッシュロッド15のロッド軸CL4もエンジン1のシリンダ軸CL3に対して傾斜し、フィードポンプ11のポンプ軸CL6とサプライポンプ12のポンプ軸CL5とは非平行である。
【0029】
本実施形態によれば、カムシャフト13は、複数の吸気弁駆動カム16と複数の排気弁駆動カム17とフィードポンプ駆動カム18とサプライポンプ駆動カム19とを有し、フィードポンプ11及びサプライポンプ12は、カムシャフト13の回転に伴って回転するフィードポンプ駆動カム18及びサプライポンプ駆動カム19によって駆動される。
【0030】
また、サプライポンプ12のポンプ軸CL5をプッシュロッド15のロッド軸CL4に対して傾斜させているので、サプライポンプ12がプッシュロッド15と干渉しないようにサプライポンプ駆動カム19を弁駆動カム16,17から離間させる際の離間量を、ポンプ軸CL5とロッド軸CL4とを略平行に設定する場合に比べて小さく抑える(サプライポンプ駆動カム19と弁駆動カム16,17との距離を短縮する)ことができる。同様に、フィードポンプ11のポンプ軸CL6をプッシュロッド15のロッド軸CL4に対して傾斜させているので、フィードポンプ11がプッシュロッド15と干渉しないようにフィードポンプ駆動カム18を弁駆動カム16,17から離間させる際の離間量を、ポンプ軸CL6とロッド軸CL4とを略平行に設定する場合に比べて小さく抑える(フィードポンプ駆動カム18と弁駆動カム16,17との距離を短縮する)ことができる。従って、カムシャフト13の伸長によるエンジン1の大型化(カムシャフト13の軸方向CL2に沿ったエンジン幅の増大)を抑制しつつ、サプライポンプ12及びフィードポンプ11をカムシャフト13によって駆動することができる。
【0031】
また、サプライポンプ12のポンプ軸CL5及びフィードポンプ11のポンプ軸CL6をエンジン1のシリンダ軸CL3に対してそれぞれ傾斜させているので、サプライポンプ12及びフィードポンプ11が燃焼室2の上部構造(例えばシリンダヘッド)と干渉しないようにサプライポンプ駆動カム19及びフィードポンプ駆動カム18(カムシャフト13)をシリンダ軸CL3から離間させる際の離間量を、ポンプ軸CL5,CL6とシリンダ軸CL3とを略平行に設定する場合に比べて小さく抑える(カムシャフト13とシリンダ軸CL3との距離を短縮する)ことができる。従って、カムシャフト13をシリンダ軸CL3から離間させることによるエンジン1の大型化(カムシャフト13の回転軸CL2と直交する方向(図2中の左右方向)に沿ったエンジン幅の増大)を抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、吸気弁駆動カム16及び排気弁駆動カム17の双方を有するカムシャフト13に対してポンプ駆動カム18,19を設けたが、吸気弁駆動カム16及び排気弁駆動カム17の少なくとも一方を有するカムシャフト13に対してポンプ駆動カム18,19を設けてもよい。
【0033】
カムシャフト13に設けられる複数のカムには、吸気弁駆動カム16及び排気弁駆動カム17の少なくとも一方のカムと、フィードポンプ駆動カム18及びサプライポンプ駆動カム19の少なくとも一方のカムが含まれていればよく、また、上記カム16,17,18,19以外のカムが含まれていてもよい。
【0034】
本実施形態では、サプライポンプ12を、エンジン1のシリンダブロック1aに対してアダプタ30を介して固定したが、アダプタ30を介することなく固定してもよい。フィードポンプ11もサプライポンプ12と同様に、エンジン1のシリンダブロック1aに対してアダプタを介して固定してもよいし、アダプタを介することなく固定してもよい。
【0035】
本実施形態では、フィードポンプ駆動カム18及びサプライポンプ駆動カム19の双方を、弁駆動カム16,17間に配置したが、これに限定されるものではない。例えば、フィードポンプ駆動カム18のみを弁駆動カム16,17間に配置し、サプライポンプ駆動カム19をカムシャフト13の入力ギア20と、入力ギア20に最も近い位置に配置される弁駆動カム(本実施形態では、入力ギア20に最も近い位置に配置される燃焼室2に対応する吸気弁駆動カム16)との間に配置してもよい。或いは、フィードポンプ駆動カム18及びサプライポンプ駆動カム19の双方を、弁駆動カム16,17間に配置することなく、カムシャフト13の端部領域に配置してもよい。
【0036】
また、エンジン1の燃焼室2に対する各弁6の数や弁駆動カム16,17の数は、上記に限定されるものではない。また、各弁6の配置位置や弁駆動カム16,17の配置位置は、上記に限定されるものではない。
【0037】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、本開示に係る燃料ポンプ駆動構造を、複数の燃焼室2を有するエンジン1に適用したが、1つの燃焼室2を有するエンジンに適用してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、本開示に係る燃料ポンプ駆動構造を、ディーゼルエンジン1に適用したが、ガソリンエンジンに適用してもよい。また、コモンレール式燃料噴射システムを備えないエンジンに適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:ディーゼルエンジン(エンジン)
2:燃焼室
6:吸気弁(バルブ)
11:フィードポンプ(燃料ポンプ)
12:サプライポンプ(燃料ポンプ)
13:カムシャフト
15:プッシュロッド
16:吸気弁駆動カム(弁駆動カム)
17:排気弁駆動カム(弁駆動カム)
18:フィードポンプ駆動カム(ポンプ駆動カム)
19:サプライポンプ駆動カム(ポンプ駆動カム)
CL1:クランクシャフトの回転軸
CL2:カムシャフトの回転軸
CL3:エンジンのシリンダ軸
CL4:プッシュロッドのロッド軸
CL5:サプライポンプのポンプ軸
CL6:フィードポンプのポンプ軸
図1
図2
図3