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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電気装置の固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20221006BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018041884
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019155993
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 潤
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-16214(JP,A)
【文献】特開2017-196941(JP,A)
【文献】特開2013-159306(JP,A)
【文献】特開2004-149031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203668(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103264633(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のフロアパネル上でシートの下側に設けられる電気装置と、
前記フロアパネル上に設けられ、車両幅方向に延びるフロアクロスメンバとを有する電気装置の固定構造において、
前記電気装置には、前記フロアクロスメンバに接続されるフロアクロスメンバ固定部が設けられ、
前記電気装置の車両内側には、前記フロアパネルに固定されるフロア固定部が設けられ、
前記フロア固定部は、
前記フロアパネル側に取付けるフロアパネル側取付点と電気装置側取付点との間に形成される複数の屈曲点を有し、
前記電気装置の底面と前記フロアパネルとの間には、空間が設けられていることを特徴とする電気装置の固定構造。
【請求項2】
前記電気装置側取付点は、前記電気装置の下面における車両内側に接続され、
前記フロアパネル側取付点は、前記電気装置の下面よりも車両内側で前記フロアパネルに取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気装置の固定構造。
【請求項3】
前記複数の屈曲点によって、前記フロアパネル側取付点と前記電気装置側取付点との間で下方に凹となるクランク状部を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気装置の固定構造。
【請求項4】
前記フロアパネル側取付点は、前記クランク状部よりも高い位置で前記フロアパネルに取付けられ、
前記フロア固定部は、前記クランク状部の内側端から前記フロアパネル側取付点に向かって内側上方に傾斜する傾斜部が形成され、
前記傾斜部は、前記クランク状部と前記フロアパネル側取付点との間であって、前記電気装置よりも内側位置には前記屈曲点が形成されていることを特徴とする請求項3に記載
の電気装置の固定構造。
【請求項5】
前記フロアクロスメンバ固定部は、前記電気装置の車両幅方向の外半部側に位置し、前記電気装置の車両幅方向の外側端よりも車両内側に位置する箇所に設けられていることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の電気装置の固定構造。
【請求項6】
前記電気装置は、車両前後方向に延びるセンタートンネル及びサイドシルと、前記フロアクロスメンバとに囲まれた領域に配置され、
前記フロアクロスメンバは、前記領域の前方に位置する前側フロアクロスメンバと、前記領域の後方に位置する後側フロアクロスメンバとを有し、
前記電気装置は、車両前後方向において前記前側フロアクロスメンバと前記後側フロアクロスメンバとの間に配置され、
前記フロアクロスメンバ固定部は、前記前側フロアクロスメンバに固定される前側固定部と、前記後側フロアクロスメンバに固定される後側固定部とを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気装置の固定構造。
【請求項7】
車両前後方向に延びるサイドシルと、
車両前後方向に延びるセンタートンネルを有し、
前記電気装置は、車両幅方向において前記サイドシル及び前記センタートンネルの間に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気装置の固定構造。
【請求項8】
前記センタートンネルの車両幅方向左右両側に位置する前記フロアパネルには、車両前後方向に沿った閉断面部が設けられ、
前記フロア固定部は、前記電気装置から車幅方向内側に延びるブラケットであり、前記電気装置側取付点は、前記ブラケットの車幅方向の外側部に設けられ、前記フロアパネル側取付点は、前記ブラケットの車幅方向の内側部に設けられ、前記フロアパネル側取付点は、前記閉断面部に接続されて固定されていることを特徴とする請求項6に記載の電気装置の固定構造。
【請求項9】
前記電気装置と前記センタートンネルとの間の車両幅方向の距離及び前記電気装置と前記サイドシルとの間の車両幅方向の距離は、前記電気装置と前記フロアクロスメンバとの間の車両前後方向の距離よりも大きく設定され、
前記フロアクロスメンバには、シートブラケットが固定されており、
該シートブラケットは、車両幅方向で前記電気装置の前記フロアクロスメンバ固定部と前記サイドシルとの間に配置されているとともに、前記フロアクロスメンバ固定部と隣接した位置に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載の電気装置の固定構造。
【請求項10】
前記電気装置は、電気装置本体と、該電気装置本体の周囲を覆うハウジングケースを有し、
前記電気装置本体の周囲と前記ハウジングケースとの間には隙間が設けられ、
前記電気装置本体の車両外側面に対する隙間は、車両外側面以外の面に対する隙間よりも大きな隙間が設けられており、
前記ハウジングケースの車両前後面には、前記電気装置本体の車両前後面と係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の電気装置の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気装置の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジン始動時のスターターへの電力供給や電装品への電力供給などに用いる電気装置(バッテリーやコンバータなど)が搭載されている。従来の電気装置の固定構造の中には、バッテリーを車両のシート下の空間に配置したバッテリー配置構造がある(例えば、特許文献1参照)。この構造では、フロアパネル上に設けたバッテリーとサイドシルとの間に、サイドシルに対して距離を置いて室内空調用ダクトを配置し、該室内空調用ダクトを、バッテリーの一部に取付けるとともに、サイドシルの一部にも取付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-74406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電気装置の固定構造は、フロアパネル上に設けたバッテリーとサイドシルとの間に室内空調用ダクトを配置し、該室内空調用ダクトをバッテリー及びサイドシルの一部に取付けているに過ぎないので、側面衝突時などに入力される衝撃荷重を十分に吸収することができないという問題を有していた。
また、従来の電気装置の固定構造にあっては、将来的にバッテリーが大型化した際に、サイドシルなどに対して十分に距離を置いて配置することが難しいので、側突時の車体への挟み込みによるバッテリーの破損や脱落などが発生してしまうという懸念を有していた。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、側面衝突時に電気装置とフロアクロスメンバとの固定を保持したまま車両幅方向内側に移動させ、車両内側に位置するブラケットの変形により衝撃荷重を吸収しながら、電気装置と車体との固定を破断させることなく衝突後も維持して、電気装置が車体構造体と衝突することを防止することが可能な電気装置の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車室内のフロアパネル上でシートの下側に設けられる電気装置前記フロアパネル上に設けられ、車両幅方向に延びるロアクロスメンバとを有する電気装置の固定構造において前記電気装置には、前記フロアクロスメンバに接続されるフロアクロスメンバ固定部が設けられ、前記電気装置の車両内側には、前記フロアパネルに固定されるフロア固定部が設けられ、前記フロア固定部は、前記フロアパネル側に取付けるフロアパネル側取付点と電気装置側取付点との間に形成される複数の屈曲点を有し、前記電気装置の底面と前記フロアパネルとの間には、空間が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る電気装置の固定構造は、車室内のフロアパネル上でシートの下側に設けられる電気装置前記フロアパネル上に設けられ、車両幅方向に延びるロアクロスメンバとを有ており、前記電気装置には、前記フロアクロスメンバに接続されるフロアクロスメンバ固定部が設けられ、前記電気装置の車両内側には、前記フロアパネルに固定されるフロア固定部が設けられ、前記フロア固定部は、前記フロアパネル側に取付けるフロアパネル側取付点と電気装置側取付点との間に形成される複数の屈曲点を有し、前記電気装置の底面と前記フロアパネルとの間には、空間が設けられている。
そのため、本発明の電気装置の固定構造では、側面衝突時において、衝突範囲が広い場合はロアクロスメンバが衝撃荷重を受け、フロアパネルが変形してロアクロスメンバは車両幅方向内側に移動する。その際、剛性の高いフロアクロスメンバは、変形量が小さいので、電気装置とフロアクロスメンバとの固定が保持されたまま車両内側に移動することになる。
したがって、本発明の電気装置の固定構造によれば、側面衝突時に加わる衝撃荷重を吸収しながら、電気装置と車体との固定を破断させることなく衝突後も維持することができるとともに、電気装置が車体構造体と衝突することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る固定構造が適用された電気装置のバッテリーを車両上方から見た平面図である。
図2図1のZ部を拡大して示す平面図である。
図3図2におけるA-A線断面図である。
図4図1の電気装置の電気装置本体及びハウジングケースを車両上方から見た平面図である。
図5図4における電気装置本体及びハウジングケースを車両前方から見た正面図である。
図6図4における電気装置本体及びハウジングケースを車両前側の斜め上方から見た斜視図である。
図7図4における電気装置本体及びハウジングケースを車両後側の斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図7は本発明の実施形態に係る電気装置の固定構造を示すものである。なお、図1図3において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印O方向は車両外側を示し、矢印U方向は車両上方を示している。また、矢印X方向は車両幅方向を示し、矢印Y方向は車両前後方向を示している。
【0010】
図1図3に示すように、本発明の実施形態に係る電気装置の固定構造は、車室内のフロアパネル1上でシート(図示せず)の下側に設けられる電気装置2を固定する構造であり、車両前後方向に延びるセンタートンネル3及びサイドシル4と、車両幅方向に延びる前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6とを有している。これらフロアパネル1、センタートンネル3、サイドシル4、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6は、本実施形態の固定構造が適用される車体の一部を構成しており、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6は、通常、フロアパネル1よりも高い剛性を有している。また、電気装置2としては、例えば、バッテリー、コンバータなどが挙げられるが、本実施形態の電気装置2は、バッテリーに適用されている。
【0011】
本実施形態のセンタートンネル3は、車両上方に突出する断面略U字形状に形成され、車両中央部に配置されており、サイドシル4は、車両側部の左右両側に配置されている。また、前側フロアクロスメンバ5は電気装置2に対して車両前方側に配置され、後側フロアクロスメンバ6は電気装置2に対して車両後方側に配置されており、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の端部は、センタートンネル3とサイドシル4にそれぞれ接続されて固定されている。さらに、前側フロアクロスメンバ5の上面は、電気装置2の上面よりも低い位置となるように設定されている一方、後側フロアクロスメンバ6の上面は、電気装置2の底面と同等もしくは電気装置2の底面よりも低い位置となるように設定されている。
そして、電気装置2は、図1に示すように、センタートンネル3、サイドシル4と、車両幅方向に延びる前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6に囲まれた空間の領域Rに配置されている。しかも、電気装置2の車両下方に位置するフロアパネル1の下面には、図3に示すように、車両前後方向に延びるフロアサイドメンバ11が設けられている。そのため、電気装置2は、車両幅方向においてフロアサイドメンバ11を跨いで配置されている。なお、サイドシル4の車両上方には、サイドドア12が設けられている。
【0012】
本実施形態における電気装置2の車両前後部と車両内側部には、図1図7に示すように、電気装置2の車体への固定部として、前後固定部21,22と内側固定部23が設けられており、電気装置2の車両外側部には、車体への固定部が設けられていない。前側固定部21と後側固定部22は、車両幅方向で同一の位置に設けられ、フロアサイドメンバ11よりも車両外側に位置しており、内側固定部23は、フロアサイドメンバ11よりも車両内側に位置している。そして、前側固定部21は電気装置2の上部側に配置され、後側固定部22及び内側固定部23は電気装置2の下部側に配置されている。
また、前側固定部21及び後側固定部22は、電気装置2から車両前後方向に延びるステーであり、前側固定部21は、一端がボルトなどの締結具を用いて前側フロアクロスメンバ5に固定され、後側固定部22は、一端がボルトなどの締結具を用いて後側フロアクロスメンバ6に固定されている。そして、内側固定部23は、電気装置2から車両幅方向に延びるブラケットであり、ボルトなどの締結具を用いてセンタートンネル3もしくはセンタートンネル3付近のフロアパネル1に固定されている。しかも、車両幅方向の衝撃荷重に対しては、前後固定部21,22よりも内側固定部23の方が脆弱に構成されている。なお、前側固定部21及び後側固定部22の他端は、後述のハウジングケースに固定されている。
【0013】
本実施形態の固定構造において、前後固定部21,22は、図2に示すように、電気装置2の車両幅方向の外半部側に位置し、かつ電気装置2の車両幅方向の外側端2aよりも車両内側に位置する箇所に設けられている。すなわち、前後固定部21,22は、電気装置2の車両幅方向において、電気装置2の中心軸Cと電気装置2の外側端2aとの間に配置されている。これにより、車両側面衝突時において、電気装置2と前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6とが一緒に移動するようになっている。
【0014】
また、本実施形態の内側固定部23は、図3図6に示すように、車体側取付点23Aと電気装置側取付点23Bとの間で車両幅方向に複数の屈曲点23Cを有する形状に形成されたブラケットで構成されており、該ブラケットの形状としては、クランク状、Z字状、U字状、ハット形状など、種々の形状が適用可能である。屈曲点23Cを有する内側固定部23は、車両幅方向の衝撃荷重に対して、変形しやすくなっている。
一方、本実施形態のセンタートンネル3の車両幅方向左右両側に位置するフロアパネル1の下面には、図3に示すように、車両前後方向に沿った閉断面部13が設けられている。この閉断面部13は、フロアパネル1と、車両前後方向へ延び、当該フロアパネル1の下面に接合される断面ハット型形状のトンネルサイドメンバ9とによって構成されている。そして、電気装置2の内側固定部23を構成するブラケットは、閉断面部13に接続されて固定されている。このような閉断面部13の箇所に内側固定部23のブラケットを固定することで、車両側面から入力された衝撃荷重による内側固定部23の車体側取付点23Aの部分の変形が低減され、内側固定部23のブラケットに変形が確実に発生するように構成されている。
【0015】
さらに、電気装置2の底面2bとフロアパネル1との間には、空間Sが設けられている。このような空間Sを設けることにより、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の両方に衝撃荷重が入力される広範囲での車両側面衝突時において、電気装置2が、フロアパネル1に影響されることなく、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6と一緒に移動できるような構造にしている。
【0016】
また、本実施形態の固定構造において、電気装置2とセンタートンネル3との間の車両幅方向の距離L1及び電気装置2とサイドシル4との間の車両幅方向の距離L2は、図2に示すように、電気装置2と前側フロアクロスメンバ5との間の車両前後方向の距離L3及び電気装置2と後側フロアクロスメンバ6との間の車両前後方向の距離L4よりもそれぞれ大きく設定されており(L1,L2>L3,L4)、電気装置2は、センタートンネル3及びサイドシル4から離れた位置に配置されている。これにより、車両側面衝突時において、電気装置2とセンタートンネル3及びサイドシル4との衝突発生が低減されるようになっている。
【0017】
しかも、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の上面には、図1及び図2に示すように、シート(図示せず)を固定する断面ハット型形状のシートブラケット7,8がそれぞれ固定されている。これらシートブラケット7,8は、車両幅方向で電気装置2の前後固定部21,22とサイドシル4との間に配置されているとともに、前後固定部21,22と隣接した位置に設けられている。シートブラケット7,8は、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6を補強する役割を有しており、車両側面衝突時に、電気装置2の前後固定部21,22よりも車両外側に位置する前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の変形がシートブラケット7,8によって抑えられ、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の変位と共に、電気装置2が移動するように構成されている。
【0018】
一方、本実施形態の固定構造に適用される電気装置2は、図1図7に示すように、平面視で四角形状の電気装置本体2Aと、該電気装置本体2Aの周囲を覆うハウジングケース2Bを有している。これら電気装置本体2Aの周囲とハウジングケース2Bとの間には、隙間c1,c2が設けられており、電気装置本体2Aの車両外側面に対する隙間c1は、図5に示すように、車両外側面以外の面に対する隙間c2よりも大きな隙間が設けられている(c1>c2)。そのため、ハウジングケース2Bの外側端部は、電気装置本体2Aの外側端部から更に車両側部方向に延長されており、電気装置本体2Aとハウジングケース2Bとの間に所定の隙間c1が設けられるように構成されている。また、ハウジングケース2Bの車両前後面には、電気装置本体2Aの車両前後面と係止する係止部24,25が設けられており、これら前面側係止部24及び後面側係止部25は、電気装置本体2Aとハウジングケース2Bとの間に設けられた隙間c1,c2を保持するために設けられている。ただし、ハウジングケース2Bと車両側部のサイドシル4との間には、空間が確保されており、電気装置本体2A及びハウジングケース2Bは、サイドシル4から離れた位置(図2中の距離L2)に配置されている。これによって、車両側面衝突時にハウジングケース2Bが変形することで衝撃荷重吸収部材として機能し、電気装置本体2Aへの衝撃が緩和されるように構成されている。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係る電気装置2の固定構造は、車室内のフロアパネル1上でシートの下側に設けられる電気装置2を固定する構造であり、車両前後方向に延びるセンタートンネル3及びサイドシル4と、車両幅方向に延びる前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6とを有している。前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6は、センタートンネル3とサイドシル4にそれぞれ接続されて固定されているとともに、電気装置2は、センタートンネル3、サイドシル4、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6に囲まれた領域Rに配置されている。そして、電気装置2の車両前後部と車両内側部には、電気装置2の車体への固定部として前後固定部21,22と内側固定部23が設けられ、前後固定部21,22は、電気装置2から車両前後方向に延び、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6に固定され、内側固定部23は、センタートンネル3もしくはセンタートンネル3付近のフロアパネル1に固定されている。また、前後固定部21,22は、電気装置2の車両幅方向の外半部側に位置し、かつ電気装置2の車両幅方向の外側端2aよりも車両内側に位置する箇所に設けられ、内側固定部23は、車体側取付点23Aと電気装置側取付点23Bとの間で車両幅方向に複数の屈曲点23Cを有する形状に形成されたブラケットで構成され、電気装置2の底面2bとフロアパネル1との間には、空間Sが設けられている。
【0020】
そのため、本実施形態の電気装置2の固定構造では、車両側面衝突時において、衝突範囲が広い場合(前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の両方に衝撃荷重の入力がある場合)に、前後のフロアクロスメンバ5,6が衝撃荷重を受け、フロアパネル1が変形して前後のフロアクロスメンバ5,6は車両幅方向内側に移動することになる。その際、剛性の高い前後のフロアクロスメンバ5,6は、衝撃荷重による変形量が小さいので、電気装置2と前後のフロアクロスメンバ5,6との固定が前後固定部21,22を介して保持されたまま、車両内側に移動することになる。また、車両内側に位置する内側固定部23のブラケットは、屈曲点23Cの箇所で変形しながらストロークすることになる。
したがって、本実施形態の電気装置2の固定構造によれば、側面衝突時に加わる衝撃荷重を吸収しながら、電気装置2と車体との固定は破断せず、衝突後も維持されることになるので、電気装置2が周辺の車体構造体と衝突して破損することを防止することができる。
【0021】
また、本実施形態の電気装置2の固定構造においては、電気装置2とセンタートンネル3との間の車両幅方向の距離L1及び電気装置2とサイドシル4との間の車両幅方向の距離L2が、電気装置2と前側フロアクロスメンバ5との間の車両前後方向の距離L3及び電気装置2と後側フロアクロスメンバ6との間の車両前後方向の距離L4よりも大きく設定されている。しかも、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6には、シートブラケット7,8がそれぞれ固定されており、シートブラケット7,8は、車両幅方向で電気装置2の前後固定部21,22とサイドシル4との間に配置されているとともに、前後固定部21,22と隣接した位置に配置されている。
したがって、本実施形態の電気装置2の固定構造では、側面衝突時における電気装置2の車両幅方向への移動距離が確保されているとともに、シートブラケット7,8により前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6が補強されているので、側面衝突時において、前後固定部21,22よりも車両外側の電気装置2の変形を抑えることができるとともに、前側フロアクロスメンバ5及び後側フロアクロスメンバ6の変位と同様に電気装置2を確実に移動させることができる。
【0022】
さらに、本実施形態の電気装置2の固定構造において、電気装置2は、電気装置本体2Aと、電気装置本体2Aの周囲を覆うハウジングケース2Bを有し、電気装置本体2Aの周囲とハウジングケース2Bとの間には隙間c1,c2が設けられ、電気装置本体2Aの車両外側面に対する隙間c1は、車両外側面以外の面に対する隙間c2よりも大きな隙間が設けられている。そして、ハウジングケース2Bの車両前後面には、電気装置本体2Aの車両前後面と係止する係止部24,25が設けられている。
したがって、本実施形態の電気装置2の固定構造では、車両側面衝突時にハウジングケース2Bが変形することで衝撃荷重吸収部材として機能するので、電気装置本体2Aへの衝撃を緩和し、電気装置本体2Aの被害を低減させることができる。しかも、ポール側突等のように、衝撃荷重が車両側面に局所的に入力される場合では、電気装置本体2Aの外側に位置するハウジングケース2Bとの空間部で衝撃荷重を吸収しつつ内側固定部23のブラケットが変形することで、電気装置本体2Aへの衝撃荷重を吸収し、ストロークを確保するので、電気装置本体2Aの破損を防ぐことができる。
【0023】
そして、本実施形態の電気装置2の固定構造において、センタートンネル3の車両幅方向左右両側に位置するフロアパネル1には、車両前後方向に沿った閉断面部13が設けられ、電気装置2の内側固定部23を構成するブラケットは、閉断面部13に接続されて固定されている。
したがって、本実施形態の電気装置2の固定構造では、車両側面から入力された衝撃荷重による内側固定部23の車体側取付点23Aの部分の変形が低減されるので、内側固定部23のブラケットを確実に変形させることができ、車両側面からの衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0025】
例えば、既述の実施形態の固定構造では、電気装置本体2Aの車両外側面に対する隙間c1を大きくするために、ハウジングケース2Bの外側端部を車両側部方向へ延長しているが、ハウジングケース2Bの延長部に代えて、衝撃変形する部材が電気装置本体2Aの車両外側面などに設けられていても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 フロアパネル
2 電気装置
2a 外側端
2b 底面
3 センタートンネル
4 サイドシル
5 前側フロアクロスメンバ
6 後側フロアクロスメンバ
7,8 シートブラケット
9 トンネルサイドメンバ
11 フロアサイドメンバ
13 閉断面部
21 前側固定部
22 後側固定部
23 内側固定部
23A 車体側取付点
23B 電気装置側取付点
23C 屈曲点
24 前面側係止部
25 後面側係止部
c1,c2 隙間
R 領域
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7