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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】熱交換器および温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20221006BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F28D7/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018121019
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020003109
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】今藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 明信
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-302945(JP,A)
【文献】実開昭51-132653(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F28F 1/00-1/44
F28D 1/00-1/06,7/00-7/16
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に供給され、かつ上下高さ方向に起立した側壁部に凹溝が略水平に延びて形成されている缶体と、
前記凹溝に外周面部の一部が嵌入するようにして前記側壁部にロウ付け部を介して接合される胴パイプと、
を備えており、
前記ロウ付け部は、前記胴パイプの外周面部の上側のうち、前記側壁部に接触または接近する箇所から前記胴パイプと前記側壁部との相互間の隙間にわたってロウ材が存在する部分である 、熱交換器であって、
前記側壁部の前記凹溝の形成箇所に設けられ、かつ前記側壁部と前記胴パイプとの相互間に上部開口状の隙間が形成されるように、前記胴パイプとは反対側に向けて前記凹溝よりも窪んだ凹状部を、さらに備えていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記隙間は、上部および下部が開口し、かつこれら上部から下部まで一連に繋がった構成である、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記缶体は、
前記側壁部として、平面断面視略コ字状に繋がった第1ないし第3の側壁部を有し、かつ一側面が開口した缶体本体部と、
この缶体本体部に取付けられ、かつ前記一側面の開口部を塞ぐ第4の側壁部を有する補助部材と、
を備えており、
前記胴パイプは、平面視略コ字状に繋がった第1ないし第3の直状管体部を有し、かつこれら第1ないし第3の直状管体部は、前記第1ないし第3の側壁部のそれぞれに設けられている前記凹溝に嵌入されており、
前記第1および第2の直状管体部は、前記第1および第2の側壁部に沿って略水平方向に延びて前記第4の側壁部を貫通しており、
前記凹状部は、前記第1および第2の側壁部のうち、前記第4の側壁部の近傍に設けられている、熱交換器。
【請求項4】
加熱用気体が内部に供給され、かつ上下高さ方向に起立した側壁部に凹溝が略水平に延びて形成されている缶体と、
前記凹溝に外周面部の一部が嵌入するようにして前記側壁部にロウ付け部を介して接合される胴パイプと、
を備えており、
前記ロウ付け部は、前記胴パイプの外周面部の上側のうち、前記側壁部に接触または接近する箇所から前記胴パイプと前記側壁部との相互間の隙間にわたってロウ材が存在する部分である 、熱交換器であって、
前記側壁部の前記凹溝の形成箇所において、前記側壁部と前記胴パイプとの相互間に上部開口状の隙間が形成されるように、前記胴パイプの前記外周面部に設けられた凹状部を、さらに備えていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器と、
この熱交換器の前記缶体内に、前記加熱用気体としての燃焼ガスを供給するバーナと、
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体から熱回収を行なうタイプの熱交換器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水装置の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の温水装置は、バーナと、熱交換器とを備えており、熱交換器は、バーナにより発生された燃焼ガスが内部に供給される缶体と、この缶体内に配された複数のフィン付きの伝熱管と、胴パイプとを備えている。胴パイプは、缶体の側壁部を冷却し、側壁部が熱損傷することを防止するための部位であり、側壁部との接触面積を大きくすべく、側壁部には凹溝が形成され、かつこの凹溝に胴パイプの外周面部の一部が嵌入した構成とされている。また、胴パイプと側壁部とはロウ付けされている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、胴パイプを缶体の側壁部にロウ付けする場合、たとえば胴パイプの上部上にロウ材を塗布して加熱溶融させるが、この溶融ロウ材の一部は、胴パイプの長手方向に流れていく。このため、本来的には、ロウ付けしたくない箇所にまで溶融ロウ材が流れる場合がある。これでは、本来意図していない部分が不当にロウ付けされる不具合を生じる他、本来意図する胴パイプと缶体の側壁部とのロウ付け箇所に流れるロウ材の量が少なくなり、ロウ付けの強度が低くなる虞がある。これを解消するには、ロウ材塗布量を多く必要があるが、そうすると高コスト化を招き、また本来意図していない部分に向けて流れるロウ材の無駄が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-116203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、缶体の側壁部に対する胴パイプのロウ付けを適切かつ経済的に行なうことが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に供給され、かつ上下高さ方向に起立した側壁部に凹溝が略水平に延びて形成されている缶体と、前記凹溝に外周面部の一部が嵌入するようにして前記側壁部にロウ付け部を介して接合される胴パイプと、を備えており、前記ロウ付け部は、前記胴パイプの外周面部の上側のうち、前記側壁部に接触または接近する箇所から前記胴パイプと前記側壁部との相互間の隙間にわたってロウ材が存在する部分である、熱交換器であって、前記側壁部の前記凹溝の形成箇所に設けられ、かつ前記側壁部と前記胴パイプとの相互間に上部開口状の隙間が形成されるように、前記胴パイプとは反対側に向けて前記凹溝よりも窪んだ凹状部を、さらに備えていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、胴パイプを缶体の側壁部にロウ付けする工程において、ロウ材を加熱溶融した場合に、この溶融ロウ材が胴パイプ長手方向に流れる現象を生じたとし
ても、この溶融ロウ材が前記凹状部による隙間の位置に到達すると、この隙間に溶融ロウ材が進入する。このため、溶融ロウ材が、前記隙間を越えてさらに胴パイプの長手方向に流れていくことは適切に防止または抑制される。このようなことから、本発明によれば、溶融ロウ材が胴パイプの長手方向に無駄に多く流れていくことを防止することができ、本来意図しない部分がロウ付けされる不具合を解消し、また胴パイプと缶体の側壁部との本来のロウ付けに必要とされるロウ材の量が少なくなることを抑制し、それらを適切かつ強固にロウ付けすることができる。ロウ材の無駄を少なくすることができるので、経済性にも優れる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記隙間は、上部および下部が開口し、かつこれら上部から下部まで一連に繋がった構成である。
【0011】
このような構成によれば、溶融ロウ材が前記隙間に到達した場合において、溶融ロウ材の量が多い場合に、その一部を隙間の下部からその下方に流れさせることができる。このため、溶融ロウ材が隙間を越えて胴パイプの長手方向に進むことを、より確実に防止することが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記缶体は、前記側壁部として、平面断面視略コ字状に繋がった第1ないし第3の側壁部を有し、かつ一側面が開口した缶体本体部と、この缶体本体部に取付けられ、かつ前記一側面の開口部を塞ぐ第4の側壁部を有する補助部材と、を備えており、前記胴パイプは、平面視略コ字状に繋がった第1ないし第3の直状管体部を有し、かつこれら第1ないし第3の直状管体部は、前記第1ないし第3の側壁部のそれぞれに設けられている前記凹溝に嵌入されており、前記第1および第2の直状管体部は、前記第1および第2の側壁部に沿って略水平方向に延びて前記第4の側壁部を貫通しており、前記凹状部は、前記第1および第2の側壁部のうち、前記第4の側壁部の近傍に設けられている。
【0013】
このような構成によれば、缶体および胴パイプの構成を組み立てが容易であって、構成の簡易なものとすることができる。加えて、胴パイプを缶体の第1ないし第3の側壁部にロウ付けする場合に、溶融ロウ材が、胴パイプを伝って補助部材の第4の側壁部まで流れることが、前記隙間の存在により適切に防止される。
【0014】
本発明の第2の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に供給され、かつ上下高さ方向に起立した側壁部に凹溝が略水平に延びて形成されている缶体と、前記凹溝に外周面部の一部が嵌入するようにして前記側壁部にロウ付け部を介して接合される胴パイプと、を備えており、前記ロウ付け部は、前記胴パイプの外周面部の上側のうち、前記側壁部に接触または接近する箇所から前記胴パイプと前記側壁部との相互間の隙間にわたってロウ材が存在する部分である、熱交換器であって、前記側壁部の前記凹溝の形成箇所において、前記側壁部と前記胴パイプとの相互間に上部開口状の隙間が形成されるように、前記胴パイプの前記外周面部に設けられた凹状部を、さらに備えていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器と同様に、胴パイプと缶体の側壁部とをロウ付けする際に、溶融ロウ材が胴パイプの長手方向に流れることが、前記隙間の存在によって適切に阻止される。したがって、本来意図しない部分がロウ付けされる不具合や、胴パイプと缶体の側壁部との本来のロウ付けに必要とされるロウ材の量が少なくなるといった不具合を適切に解消することが可能である。
【0016】
本発明の第3の側面により提供される温水装置は、本発明の第1または第2の側面により提供される熱交換器と、この熱交換器の前記缶体内に、前記加熱用気体としての燃焼ガスを供給するバーナと、を備えていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、本発明の第1または第2の側面により提供される熱交換器に
ついて述べたのと同様な効果が得られる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す熱交換器とバーナとを組み合わせた温水装置の一例を示す要部断面図であり、図1のII-II断面に相当する。
図3】(a)は、図2の平面断面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図であり、(c)は、(a)のIIIc-IIIc断面図である。
図4図3(a)の分解平面断面図である。
図5】(a)は、本発明の他の例を示す要部平面断面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb断面図である。
図6】(a)は、本発明の他の例を示す要部平面断面図であり、(b)は、(a)のVIb-VIb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図2に示す温水装置WHは、熱交換器HEと、仮想線で一部分が示されたバーナ1とを具備している。熱交換器HEの下方に追加の熱交換器(2次熱交換器)をさらに設けた構成とすることもできる。
【0022】
バーナ1は、たとえば特許文献1に記載されたものなど、従来既知のものが用いられている。このバーナ1においては、不図示のファンから吐出される燃焼用空気に燃料ガスが混合され、この混合気は、熱交換器HEの缶体2の上部開口部から下向きに臨むように設けられた通気性を有する混合気噴射部材10を介して缶体2内に噴射される。混合気には点火がなされ、缶体2内には加熱用気体としての燃焼ガスが供給される。
【0023】
図1および図2において、熱交換器HEは、前記した缶体2に加え、伝熱管3、プレート状の複数のフィン4、および複数の胴パイプ5を備えている。これら各部は、たとえばステンレス製であるが、その具体的な材質は限定されない。
【0024】
伝熱管3および複数のフィン4は、缶体2内の下部寄り領域に配されている。伝熱管3は、複数の直状管体部30が缶体2の外部において略U字状のベンド管31を介して一連に接続された構成である。この熱交換器HEにおいては、胴パイプ5の入水口59に供給され、かつ胴パイプ5を通過した湯水が、伝熱管3に送り込まれて加熱され、その出湯口39から出湯するように構成されている。複数のフィン4は、吸熱用であり、直状管体部30の軸長方向に適当な間隔で並んで接合されている。
【0025】
缶体2は、上下両面部が開口した略矩形筒状であり、図3および図4によく表れているように、缶体本体部20と、補助部材21とを組み合わせて構成されている。缶体本体部20は、平面断面視略コ字状であり、第1ないし第3の側壁部22a~22cがコーナ部23を介して繋がり、かつ一側面部に開口部24が形成された構成である。補助部材21は、缶体本体部20に設けられたフランジ部25に当接して接合され、缶体本体部20の一側面部の開口部24を塞ぐ第4の側壁部22dを有している。
【0026】
胴パイプ5は、湯水加熱に利用されるとともに、缶体2の第1ないし第3の側壁部22a~22cを冷却してその熱損傷を防止するための部材である。この胴パイプ5は、平面
視略コ字状であり、第1ないし第3の直状管体部50a~50cが曲げ部51を介して繋がっている。第4の側壁部22dは、後述するヘッダ部6内の湯水により冷却されるため、胴パイプ5による冷却は省略されている。複数の胴パイプ5は、複数のフィン4および伝熱管3よりも上方に位置し、かつ缶体2の第1ないし第3の側壁部22a~22cに接触するようにして上下複数段に設けられている。第1ないし第3の側壁部22a~22cには、第1ないし第3の直状管体部50a~50cの外周面部の一部が嵌入し、これらの接触面積(伝熱面積)を良好にするための複数の凹溝26が設けられている。各凹溝26は、第1ないし第3の側壁部22a~22cに段押し加工を施すことにより形成されており、略水平に直線状に延びている。各凹溝26は、缶体本体部20のコーナ部23の近傍においては省略されている。第1ないし第3の直状管体部50a~50cのそれぞれは、凹溝26の内面にロウ付けされている。
【0027】
補助部材21は、複数の胴パイプ5の相互間で湯水を流通させるための複数のヘッダ部6(6a,6b)を備えている。各ヘッダ部6は、図3にその一部の断面が示されているように、第4の側壁部22dの外面に接合されたベース部材60に、カバー部材61が接合され、かつこれらの内側にチャンバ62が形成された構成である。複数の胴パイプ5の両端部(第1および第2の直状管体部50a,50bの外側の端部)は、第4の側壁部22dを貫通しており、チャンバ62に連通した状態、入水口59が設けられた構成、あるいはベンド管32を介して伝熱管3に接続された構成とされている。
【0028】
複数の胴パイプ5による湯水経路は、次のようになっている。
すなわち、最上段の胴パイプ5aの一端部の入水口59に供給された湯水は、この胴パイプ5aを通過して上段のヘッダ部6aに流入する。その後は、2段目の胴パイプ5bに流入して通過した後に、下段のヘッダ部6bに流入し、さらに3段目の胴パイプ5cに流入する。この胴パイプ5cを通過した湯水は、ベンド管32を介して伝熱管3に流入し、その後出湯口39に到達する。湯水は、前記した過程において、燃焼ガスにより加熱される。
【0029】
図3(a)によく表れているように、缶体2の第1および第2の側壁部22a,22bのうち、第4の側壁部22dの近傍には、凹状部27が部分的に設けられている。
この凹状部27は、ロウ付けをコントロールし、後述するように、ロウ材が第4の側壁部22d側に流れることを防止または抑制するための部位である。この凹状部27は、図3(c)に示すように、凹溝26の形成箇所に、この凹溝26よりもさらに窪んだ状態に設けられている。このことにより、第1および第2の側壁部22a,22bと胴パイプ5の外周面部との相互間には、隙間7が形成されている。この隙間7は、第1および第2の側壁部22a,22bのそれぞれと、胴パイプ5との相互間において上下高さ方向に一連に繋がり、かつこの隙間7の上部および下部は、胴パイプ5の上面側および下面側において開口している。
前記した凹状部27および隙間7は、複数の胴パイプ5の個々に対応して設けられている。
【0030】
次に、前記した熱交換器HEおよびこれを備えた温水装置WHの作用について説明する。
【0031】
胴パイプ5は、缶体2の第1ないし第3の側壁部22a~22cにロウ付けされているが、このロウ付けに際しては、まず図3(b)に示すように、ロウ材Bを、胴パイプ5の外周面部の上側のうち、第1ないし第3の側壁部22a~22cの内面に接触または接近する箇所に塗布しておく。図3(a)における平面視においては、ロウ材Bの塗布領域は、隙間7よりも左側(第4の側壁部22dとは反対側)の領域とする。胴パイプ5の曲げ部51には、塗布しない。
【0032】
次いで、前記した状態において、ロウ材Bを加熱溶融させると、溶融ロウ材は、第1ないし第3の直状管体部50a~50cの長手方向に広がりながら、これらと第1ないし第3の側壁部22a~22cとの相互間の微小隙間内(胴パイプ5と凹溝26との嵌合部)に進入していく。ここで、第1および第2の直状管体部50a,50b上の溶融ロウ材が、図3(a)の矢印Na方向に進行し、隙間7の位置に到達すると、溶融ロウ材はこの隙間7内に流入する。このため、前記溶融ロウ材は、隙間7を越えて第4の側壁部22dまで進行することは適切に阻止される。第4の側壁部22dには、たとえばフランジ部25が交差した方向で当接しており、この部分は、溶融ロウ材が下方に流れ易い構造となっている。したがって、仮に、溶融ロウ材が第4の側壁部22dまで進行すると、多くの溶融ロウ材が第4の側壁部22dとフランジ部25との当接箇所を伝って下方に流れる虞がある。このような経路で流れる溶融ロウ材は無駄であるばかりか、第1および第2の直状管体部50a,50bと第1および第2の側壁部22a,22bとを接合させるのに必要な溶融ロウ材の量に不足を生じさせる原因となる。
【0033】
これに対し、本実施形態によれば、隙間7の位置で溶融ロウ材の進行を阻止することができるため、前記したような不具合を適切になくすことが可能である。本実施形態においては、第1および第2の直状管体部50a,50bと第1および第2の側壁部22a,22bとの相互間の微小隙間に、多くの溶融ロウ材を効率良くかつ適切に進入させ、それらの部位を強固にロウ付けすることが可能となる。
【0034】
隙間7は、上部および下部が開口しているため、この隙間7に進行してきた溶融ロウ材を隙間7内に確実に進入させることができる。また、隙間7に進入する溶融ロウ材の量が比較的多い場合には、その一部が隙間7の下方に流出し、隙間7が溶融ロウ材によって簡単に埋まらないようにすることができるために、隙間7が溶融ロウ材によって埋まり、多くの溶融ロウ材が第4の側壁部22dに向けて進行しないようにすることがより確実化される。
【0035】
なお、本実施形態においては、胴パイプ5の第1および第2の直状管体部50a,50bのうち、曲げ部51寄りの位置には、凹状部27による隙間7は設けられていないが、曲げ部51は、缶体2のコーナ部23の内面に接触しておらず、これらの部位には、比較的大きな幅の隙間が元々生じている。このため、溶融ロウ材が曲げ部51側に向けて仮に進行したとしても、一定以上の多くの溶融ロウ材が曲げ部51側に向けて次々と進行していく不具合はない。第3の直状管体部50cは、その両端部が曲げ部51となっているため、前記したのと同様な理由により、凹状部27による隙間7は設けられていない。勿論、本実施形態とは異なり、第1および第2の直状管体部50a,50bの曲げ部51寄りの位置や、第3の直状管体部50cの適当な箇所に、凹状部27による隙間7を設けた構成とすることもできる。
【0036】
図5および図6は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0037】
図5に示す実施形態においては、胴パイプ5の直状管体部50(第1の直状管体部50a)の外周面部のうち、缶体2の側壁部22(第1の側壁部22a)の凹溝26に対向する部分に凹状部54が設けられている。このことにより、この凹状部54と凹溝26との内面どうしの相互間には、隙間7Aが形成されている。この隙間7Aは、その上部から下部まで一連に繋がり、かつ上部および下部のそれぞれが開口した形態である。
【0038】
図6に示す実施形態においては、胴パイプ5の直状管体部50の外周面部に、缶体2の
側壁部22の凹溝26に対向する部分を一部とする環状の凹状部54Aが設けられ、この凹状部54Aと凹溝26との内面どうしの相互間に、隙間7Bが形成されている。この隙間7Bの構成は、図5に示す隙間7Aと同様である。
【0039】
これら図5および図6のいずれの実施形態においても、ロウ付け工程において、溶融ロウ材が直状管体部50上をその長手方向に流れた場合に、隙間7A,7Bを越えて溶融ロウ材が進行することを阻止し、前記実施形態と同様な作用を得ることが可能である。
これらの実施形態から理解されるように、本発明における凹状部は、缶体の側壁部に設けることに代えて、または加えて、胴パイプに設けた構成とすることもできる。なお、胴パイプに凹状部を設けた場合には、胴パイプの流路抵抗が大きくなるため、この不具合を回避する観点からすると、凹状部を缶体の側壁部に設けることが好ましい。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0041】
上述の実施形態においては、缶体2の所定の第4の側壁部22dに向けて溶融ロウ材が進行することを阻止することを目的として、凹状部および隙間を設けているが、本発明はこれに限定されない。本発明は、凹状部および隙間を設けることにより、ロウ材が不必要な箇所に進行することを規制しようとするものであり、凹状部および隙間が設けられる具体的な位置は限定されない。前記隙間は、上部および下部の双方が開口した形態とすることが好ましいものの、これに限定されず、たとえば隙間の下部が閉塞した上部開口状であってもよい。この場合であっても、胴パイプに沿って隙間まで進行してきた溶融ロウ材を隙間内に進入させ、溶融ロウ材が隙間を越えてそれ以上進行することを防止または抑制することが可能である。
凹状部および隙間の具体的なサイズ(深さ、幅など)も限定されない。また、それらの数も限定されない。
【0042】
缶体や胴パイプの具体的な形状なども限定されない。胴パイプは、缶体内に配置させることに代えて、缶体の外側に配置させて、缶体の側壁部の外面に当接させた構成とすることもできる。また、胴パイプは、たとえば平面視略矩形の螺旋状パイプとすることもできる。
ロウ材の具体的な材質なども限定されない。
上述の実施形態においては、熱交換器の上にバーナが配されたいわゆる逆燃式とされているが、本発明はこれに限定されず、熱交換器の下にバーナが配されたいわゆる正燃式とすることもできる。加熱用気体は、燃焼ガスに限定されず、たとえばコージェネレーションシステムにおいて発生する高温の排ガスなどとすることもできる。
本発明でいう温水装置は、湯水を加熱して温水を生成する機能を備えたものであり、一般的な給湯装置の他、たとえば風呂給湯装置、暖房用温水装置、融雪用の温水装置なども含む。
【符号の説明】
【0043】
WH 温水装置
HE 熱交換器
1 バーナ
2 缶体
20 缶体本体部
21 補助部材
22a~22d 第1ないし第4の側壁部(缶体の)
23 コーナ部
24 開口部
26 凹溝
27 凹状部
3 伝熱管
4 フィン
5 胴パイプ
50a~50c 第1ないし第3の直状管体部
51 曲げ部
54,54A 凹状部
7,7A,7B 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6