(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】複葉型吸収部材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20221006BHJP
A61F 13/505 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/505 100
(21)【出願番号】P 2018181502
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017189549
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 利宏
(72)【発明者】
【氏名】上林 達昭
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 宏隆
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072335(JP,A)
【文献】特表2004-508144(JP,A)
【文献】特開2013-198651(JP,A)
【文献】特開2013-118934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
A61F 13/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形形状の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第1の吸収性コアの対向する各長辺に沿って布帛からなる第1の堰状構造部とを有する第1の吸収性シートと、
第2の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第2の吸収性コアの両側に布帛からなる第2の堰状構造部とを有し、該第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性コアの短辺の1.0~1.5倍である第2の吸収性シートと、
から構成される複葉型吸収部材であって、
前記第1の堰状構造部及び前記第2の堰状構造部に、蛍光性を有する弾性糸が延設されており、
前記第2の堰状構造部の間に第1の吸収性シートが、載置されてなる複葉型吸収部材。
【請求項2】
弾性糸がポリウレタン系弾性糸である請求項1に記載の複葉型吸収部材。
【請求項3】
前
記第1の堰状構造部に、原着弾性糸が延設されている請求項
1または2に記載の複葉型吸収部材。
【請求項4】
前記第1の吸収性コアの表裏面を被覆する布帛がいずれも透水性の布帛である請求項1~
3のいずれかに記載の複葉型吸収部材。
【請求項5】
前記第2の吸収性コアの一方の面を被覆する布帛が透水性の布帛であり、もう一方の面を被覆する布帛が防水性の布帛である請求項1~
4のいずれかに記載の複葉型吸収部材。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の複葉型吸収部材が股間部に配置された使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ等に好適に用いられる吸収部材に関する。さらに詳しくは、複数の吸収性シート組み合わせることで、内側に位置する吸収性シートを取り換えることで外側の吸収性シートを複数回使用することが可能な複葉型吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等の吸収部材は、排泄物を漏らさないために吸収性コアの吸収力に加えて、伸縮性を有する部材が適切に配されている必要がある。
【0003】
また、紙おむつ等の吸収部材を使用する場面においては、介護人が着用者に装着するのを支援することがある。かかる際に、吸収部材の交換の負担を軽減するために、近年、紙おむつ等の吸収部材には吸収性シートに排泄物が付着するまで複数回使用する吸収性シートと排泄の都度廃棄する吸収性シートとからなる複葉型吸収部材が提案されている。これらの複葉型吸収部材は、着用者への負担を軽減にするために、介護人が明かりの少ないまたは薄暗い環境で交換することが多い。
【0004】
これらの吸収性シートを交換する際に、介護人の視認性を良好にするために吸収性シートの堰状構造部に原着ポリウレタン系弾性糸を延設する等の工夫が一般になされているが、ポリウレタン系弾性糸は不織布に挟まれており、暗所においては視認性が悪いため、照明を点灯して就寝中の着用者の睡眠を妨げる等着用者へ負担をかける場合が多い。
【0005】
また、特許文献1の様に暗所において紙おむつ等の吸収性物品の視認性を向上させるため、少なくとも1つの照光物質をトップシートやバックシート、吸収性コアに具備するおむつなどの吸収性物品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている吸収性シートは暗所で吸収性シート自体を見つけるためのものであり、吸収性シートの交換時に介護人の吸収部材の交換作業の負担を軽減するには十分なものではなかった。
【0008】
従って、本発明の課題は、暗所での排泄の都度廃棄する吸収性シートを取り換える時に視認性が良く、容易に取り換えられると共に、ポリウレタン系弾性糸の状態を確認することが容易にでき、不良の吸収性シートを見分けることが容易な複葉型吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための本発明は、以下の手段を採用する。
矩形形状の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第1の吸収性コアの対向する各長辺に沿って布帛からなる第1の堰状構造部とを有する第1の吸収性シートと、
第2の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第2の吸収性コアの両側に布帛からなる第2の堰状構造部とを有し、該第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性コアの短辺の1.0~1.5倍である第2の吸収性シートと、
から構成される複葉型吸収部材であって、
前記第2の堰状構造部に、蛍光性を有する弾性糸が延設されており、
前記第2の堰状構造部の間に第1の吸収性シートが、載置されてなる複葉型吸収部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、暗所での排泄の都度廃棄する吸収性シート取り換え時に視認性が良く、容易に取り換えられると共に、ポリウレタン系弾性糸の状態を確認することが容易にでき、不良の吸収性シートを見分けることが容易な複葉型吸収部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】蛍光灯下で第1と第2の吸収性シートを分離して撮影した外観写真である。
【
図2】(a)蛍光灯下での本発明の複葉型吸収部材の外観写真、および、(b)(a)のA-A線断面の模式図である。
【
図3】ブラックライト下で第1と第2の吸収性シートを分離して撮影した外観写真である。
【
図4】ブラックライト下での本発明の複葉型吸収部材の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明は、矩形形状の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第1の吸収性コアの対向する各長辺に沿って布帛からなる第1の堰状構造部とを有する第1の吸収性シートと、
第2の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第2の吸収性コアの両側に布帛からなる第2の堰状構造部とを有し、該第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性コアの短辺の1.0~1.5倍である第2の吸収性シートと、
から構成される複葉型吸収部材であって、
前記第2の堰状構造部に、蛍光性を有するポリウレタン系弾性糸が延設されており、
前記第2の堰状構造部の間に第1の吸収性シートが、載置されてなる複葉型吸収部材である。
【0013】
「複葉型吸収部材」とは、体液等の漏出物や排泄物が付着して交換する都度、廃棄する吸収性シート(第1の吸収性シート)を、体液等の漏出物や排泄物が付着するまで複数回使用する吸収性シート(第2の吸収性シート)上に載置して用いる吸収部材をいい、着用または装用時には第1の吸収性シートを内側(体に当たる側)として用いる。
【0014】
「吸収性シート」とは、体液等の漏出物や排泄物である液体を吸収して封じ込める機能を有するシートを指し、具体的には、身体に着用または装用し、接触して配置して用いられるものである。
【0015】
ここで「複葉型」とは、上述のように使用時において、第1の吸収性シートを第2の吸収性シートに重ねて用いることを表すが、枚数についてはそれぞれ1枚ずつに限定されず、例えば、第1の吸収性シートを複数枚同時に用いることも含むものとする。
【0016】
ここで「載置」とは、接着や縫い合わせる等の不可逆的な取り付けではなく、取り換え可能な状態で置くことをいう。本発明においては、取り換え可能であることが重要であるため、再剥離が可能な粘着テープ等で緩やかな固定をすることのように、破ることなく外すことができる程度まで把持する態様も「載置」に含むものとする。
【0017】
本発明の複葉型吸収部材を構成する第1の吸収性シートは、矩形形状の吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第1の吸収性コアの対向する各長辺に沿って布帛からなる第1の堰状構造部とを有する。
【0018】
ここで「吸収性コア」とは、体液等の漏出物や排泄物である液体を吸収する材料を含むマット状の材料である。その材質は、具体的には吸収性ゲル化材料、又は超吸収性ポリマー(SAP)と称されるヒドロゲル形成ポリマー材料等の超吸収性ポリマー材料を含み、かかる超吸収性ポリマー材料は、パルプ、即ちセルロース繊維を有する吸収性材料と合わせて吸収性コアが形成される。この吸収性コアの表裏面を布帛で被覆したものとすることにより、体液等の漏出物や排泄物である液体を吸収すると共に表裏面の布帛により吸収性コアが体表面に密着することを防止するため、吸収性シートによるその使用中の液体の吸収及び閉じ込めにより、濡れた感触を低下させ、皮膚に対する乾燥度を向上させる。
【0019】
第1の吸収性コアの表裏面を被覆する布帛としては、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材であればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、さらには開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルムを積層した複合不織布といった材料が適用可能である。また、液透過性が良好な材料として、表面にエンボス加工や穿孔加工を施されたものを適用してもよい。かかる場合のエンボス加工や穿孔加工の方法は、特に限定されない。また、肌への刺激が低い材料として、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有した材料を適用することも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、目付は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。形状としては、特に制限はないが、体液を漏れがないように吸収体へと誘導するため、吸収体を覆う形状であればよい。
【0020】
また、着衣側(第2の吸収シート側)の布帛には吸収体が吸収した体液が下着に漏れないような液不透過性を有する基材を適用することも好ましい。液不透過性を有する基材としては、不織布、樹脂フィルムを積層した複合不織布といった基材が挙げられる。
【0021】
かかる基材を得るために用いられる不織布として、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料があげられる。
【0022】
また、かかる基材を得るために用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等があげられる。強度及び加工性の点から、目付は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有することが好ましい。例えば、フィラーを含有する樹脂フィルムや、エンボス加工が施された樹脂フィルムが挙げられる。好ましいフィラーとしては、炭酸カルシウムを挙げることができる。
【0023】
第1の吸収性シートに用いられる第1の吸収性コアは矩形形状である。「矩形形状」とは、内接する最大の長方形と実面積との比が、100~125%の範囲であることをいう。かかる範囲であれば辺が直線でなくてもよいし、角が丸まった形状であってもよい。
【0024】
第1の吸収性シートには矩形形状の第1の吸収性コアの対向する各長辺に沿って布帛からなる第1の堰状構造部が設けられている。堰状構造部とは、吸収性シートの端部に設けられ、吸収性シートの外側に体液等の漏出物や排泄物である液体が流出するのを堰き止める機能を有する折り返し部分をいう。ここでいう、外側に液体が流出する、とは、吸収性シートの体液等の漏出物や排泄物である液体が当たる側の面の端部を超えて反対面に液体が回り込むことをいう。堰状構造部を有することにより、体液等の漏出物や排泄物である液体が、吸収性コアの表裏面を被覆する布帛を通過して吸収コアに吸収されるまでの間、第1の吸収性シートの外に流出することを抑止することができる。
【0025】
本発明の複葉型吸収部材を構成する第2の吸収性シートは、吸収性コアとその表裏面を被覆する布帛と第2の吸収性コアの両側に布帛からなる第2の堰状構造部とを有する。
【0026】
第2の吸収性シートに用いられる第2の吸収性コアは、第1の吸収性シートと第2の吸収性シートとの相対的な寸法の関係、すなわち、第2の吸収性シートの第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性コアの短辺の1.0~1.5倍であることを満たし得る限り形状は特に限定されない。
【0027】
また、第2の吸収性コアの材質は、第1の吸収性コアと同様であり、その表裏面を被覆する布帛についても、第1の吸収性シートと同様である。ただし、第2の吸収性シートは、装用あるいは着用時に、第1の吸収性シートの外側となることから、第1の吸収性シート側の布帛には、第1の吸収性シートの場合と同様に透水性のよいものが、好ましいが、着衣側の布帛には、衣類等の汚損防止等のため、不透水性のものを適用することが好ましい。
【0028】
また、第2の吸収性シートには第2の吸収性コアの両側に布帛からなる第2の堰状構造部を有する。第2の堰状構造部の機能は、第1の堰状構造部と同様の吸収性シートの外側に体液等の漏出物や排泄物である液体が流出するのを堰き止める機能に加え、前記第2の堰状構造部の間に第1の吸収性シートを載置した際の位置を保持する役割がある。かかる理由により、第2の吸収性シートにおける第2の堰状構造部の間の最短部の距離は、第1の吸収性コアの短辺の1.0~1.5倍である。第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性シートの短辺の1.0倍以下であると、第1の吸収性シートを載置した際に第2の堰状構造部に干渉して排泄物の保持が困難となる。一方、第2の吸収性シートの第2の堰状構造部の間の最短部の距離が、第1の吸収性シートの短辺の1.5倍以上であると、装用時または着用時にずれやすく排泄物等の保持が困難となる。好ましくは該第2の堰状構造部の間の最短部の距離が第1の吸収性シートの短辺の1.05~1.2倍である。
【0029】
また本発明においては、前記第2の堰状構造部に、蛍光性を有する弾性糸が延設されている。「延設」とは、弾性糸が堰状構造部の長手方向と平行方向に引き延ばされた状態で堰状構造部に固定されていることを表す。弾性糸が堰状構造部に延設されていることにより、吸収性シートを曲げたときに襞の部分が堰状に立ち上がり、堰状となる。このとき、堰状構造部の弾性糸が切断していたり、偏在していると、堰状構造部が立ち上がらなかったり一部分で高さが偏り、排泄物の漏出を抑える堰状構造部としての役目が損なわれる。
【0030】
かかる第2の堰状構造部に延設された弾性糸が蛍光性を有する弾性糸であると、第1の吸収性シートを取り換える際に、ブラックライトを照射することで、暗所でも視認性が良く、容易に取り換えられる。また、同様にブラックライトを照射することで、暗所でも堰状構造部のポリウレタン系弾性糸が切断していないことや偏在していないことを確認することができる。
【0031】
また本発明においては、前記第1の堰状構造部に、蛍光性を有する弾性糸が延設されていることが好ましい。前記第1の堰状構造部にも、蛍光性を有する弾性糸が延設されていることで、ブラックライトを照射することで、第1の吸収性シートの位置も把握しやすくなるので、暗所でもさらに容易に取り換えることができる。
【0032】
また本発明においては、前記第1の堰状構造部に、蛍光性を有する弾性糸が延設されている場合において、さらに、前記第1の吸収性シートの各長辺及び/または第1の堰状構造部に、原着弾性糸が延設されていることが好ましい。原着弾性糸が蛍光性を有する弾性糸と併設されることで、明るい場所や、やや照度の低い場所においてブラックライトを使用しなくても視認性が確保でき、第2の吸収性シートの並行する堰状構造部の間に第1の吸収性シートを載置することが容易であるためである。
【0033】
図1は、蛍光灯下で本発明の複葉型吸収部材を第1の吸収性シート1と、第2の吸収性シート2と、に分離して撮影した外観写真である。すなわち、本発明の第1の吸収性シート1を第2の吸収性シート2の上に載置する前の状態を示している。
図1は着用時に体に接触する面を撮影したものである。
図2の(a)は、蛍光灯下で第1の吸収性シート1を、第2の吸収性シート2の上に載置した本発明の複葉型吸収部材の外観写真、(b)は、(a)のA-A線断面の模式図である。組み合わせ方としては、第2の吸収性シート2の並行する堰状構造部10の間に第1の吸収性シート1を載置したものである。このとき、第2の吸収性シートの堰状構造部10は第1の吸収性シートの堰状構造部6と並行となるように組み合わせることが好ましい。
【0034】
多くの病院や介護施設では、着用者が就寝する夜間にも第1の吸収性シート1を交換する。すなわち、第2の吸収性シート2に第1の吸収性シート1を載置する際に、介護人が、明かりの少ないまたは薄暗い環境下で交換することが多い。しかも、介護人は多くの着用者に正確にすばやく着用させる必要がある。また、に第1の吸収性シート1の品質を薄暗い環境下で確認する必要もある。すなわち、第1の吸収性シートにおける、堰状構造部中の弾性糸が切断していないことや偏在していないことを視認する必要がある。
【0035】
図3は、ブラックライト下で本発明の複葉型吸収部材を第1の吸収性シート1と、第2の吸収性シート2と、に離して撮影した外観写真である。堰状構造部中のポリウレタン系弾性糸が発光しているため、第1の吸収性シートおよび第2の吸収性シートの堰状構造部の位置が正確に視認できる。また、同時に堰状構造部中のポリウレタン系弾性糸が切断していないことや偏在していないことも容易に視認できる。
【0036】
図4は、ブラックライト下で第1の吸収性シートを、第2の吸収性シート上に載置した複葉型吸収部材の外観写真である。堰状構造部中のポリウレタン系弾性糸が発光しているため、第2の吸収性シートの並行する堰状構造部の間に第1の吸収性シートを載置することが容易である。
【0037】
本発明において、蛍光性とは、紫外(UV)光を吸収し、可視領域にスペクトル(紫-青領域の場合が多い)を有する光線(蛍光と呼ばれる場合もある)を再放射する性質を有する事を意味する。蛍光性を有することにより、基材によって反射される光に輝かしい白色度を与える。
【0038】
弾性糸とは、ゴム弾性を有し可逆的に伸縮可能な繊維である。弾性糸の力学特性としては、破断伸度が300%以上であるものが好ましい。より好ましくは400%以上である。また、300%伸張を5回繰り返し、5回目の300%伸長状態にて30秒間保持後に応力を解放した後の歪み率が50%以下であるものが好ましく35%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。かかる弾性糸としては、ポリウレタン系弾性糸やポリエーテル・エステル系弾性繊維が好ましい。
【0039】
原着弾性糸とは前記弾性糸において着色のされ方に特徴を有するものであり、着色するための染料や顔料が予め含有された弾性糸を意味する。本発明においては堰状構造部を構成する不織布に挟まれた状態においても容易に視認できる程度の濃さに着色された原着弾性糸を用いることが望ましい。白色の不織布を使用した場合において、原着弾性糸の着色の具体的な濃さについては、ポリウレタン弾性糸をシート状に隙間無く巻き付けた測色用サンプルを一般的な測色計(例えばコニカミノルタ社製分光測色計“CM-700d”)でL*a*b*色空間を測定した際のL *値が80以下であることが好ましい。より好ましくは60以下である。
【0040】
ポリウレタン系弾性糸とは、ソフトセグメントにコポリエステルジオールなどの長鎖ジオール、ハードセグメントにジフェニルメタン-4,4ジイソシアネートなどのジイソシアネート、および、鎖伸長剤に二官能性水素化合物を主たる構成成分とする構造を有するものが好ましい。
【0041】
また、ポリエーテル・エステル系弾性繊維とは、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール、ハードセグメントとしてポリブチルテレフタレートまたはポリブチルイソフタレートを主たる構成成分とする構造を有するものが好ましい。
【0042】
本発明においては、最終製品に所望の伸縮性を付与させる観点から、ポリウレタン系弾性繊維を用いるのが好ましい。
【0043】
本発明で使用され得るポリウレタン系弾性糸に用いるポリウレタン重合体は、いずれも長鎖のポリエーテルセグメント、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルエステルセグメント等を主構成成分とするソフトセグメントとイソシアネートと鎖伸長剤であるジアミンまたはジオールを主構成成分とするハードセグメントとから構成されることが好ましい。
【0044】
かかるポリウレタン重合体のソフトセグメントを構成する原料としては、1)テトラヒドロフラン、テトラメチレングリコール、3-メチル-1、5-ペンタンジオール、テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン等から得られる重合体または共重合体であるポリエーテルセグメント、2)エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2、2-ジメチル-1、3-プロパンジオール等のジオールとアジピン酸、コハク酸等の二塩基酸とから得られるポリエステルセグメント、3)ポリ-(ペンタン-1、5-カーボネート)ジオール、ポリ-(ヘキサン-1、6-カーボネート)ジオール等から得られるポリエーテルエステルセグメントを用いることができるが、中でもテトラメチレングリコールから得られるポリエーテルセグメント、すなわちポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略する)が好ましい。
【0045】
本発明に用いられる弾性繊維においてポリウレタン重合体は、ヒドロキシル末端ソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートで重付加反応させること(キャッピング反応)によって得られたプレポリマ生成物をアミン鎖伸長剤またはジオール鎖伸長剤で鎖伸長させて得ることができる。さらには、熱軟化点を調整する目的で、プレポリマ生成物にさらに有機ジイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤を反応させて得ることも好適である。
【0046】
本発明においてポリウレタン重合体に供する有機ジイソシアネートとしては、ビス-(p-イソシアナートフェニル)-メタン(以下、MDIと略する)、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略する)、ビス-(4-イソシアナートシクロヘキシル)-メタン(以下、PICMと略する)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3、3、5-トリメチル-5-メチレンシクロヘキシルジイソシアネート等を用いることができるが、中でもMDIが好ましい。
【0047】
種々のジアミン、たとえばエチレンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等がポリウレタンウレアを形成させるためのアミン鎖伸長剤として好ましく使用される。
【0048】
アミン鎖伸長剤は、1種のみのジアミンに限定されるわけでなく、複数種のアミンからなるものであってもよい。鎖停止剤は、ポリウレタンウレアの最終的な分子量の調節を助けるために反応混合物に包有させることができる。通常、鎖停止剤として活性水素を有する一官能性化合物、たとえばジエチルアミン等を使用することができる。
【0049】
また、鎖伸長剤としては、上記アミンに限定されることはなく、ジオールであってもよい。特に、100℃~180℃の熱軟化点を有する弾性繊維を得るのに好適である。例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびパラキシリレンジオール等を用いることができる。ジオール鎖伸長剤は、1種のみのジオールに限定されるわけでなく、複数種のジオールからなるものであってもよい。また、イソシアネート基と反応する1個の水酸基を含む化合物と併用していてもよい。この場合、このようなポリウレタンを得る方法については溶融重合法、溶液重合法など各種方法を採用することができ、限定されるものではない。重合の処方についても、特に限定されずに、たとえば、ポリオールとジイソシアネートと、ジオールからなる鎖伸長剤とを同時に反応させることにより、ポリウレタンを合成する方法等を採用することができ、いずれの方法によるものでもよい。
【0050】
本発明に使用されるポリウレタン系弾性糸に蛍光性を付与するため、蛍光増白剤を含有させることが好ましい。ポリウレタン系弾性糸に蛍光増白剤を含有させる方法としては、ポリウレタン重合体に蛍光増白剤を内部添加することが均一な蛍光性を発現させる観点から好ましい。
【0051】
蛍光増白剤としては、オキサゾール、ビフェニル、クマリン、スチルベン、ピラゾレン、ローダミン、及びフルオレセインまたはかかるメンバーの組み合わせからなるものが挙げられる。例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の商品名ユビテックス「Uvitex」(登録商標)OB、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)製の商品名イーストブライト「Eastobrite」(登録商標)OB-1、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の商品名「ユビテックス」(登録商標)FP、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)製の商品名「ロイコピュア(Leucopure)」(登録商標)EGMで等を含有させることが好ましい。
【0052】
ポリウレタン系弾性糸中の蛍光増白剤の含有量としては、着色を抑えること及び十分な蛍光性を発現させる観点から0.001質量%から1質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.001質量%から0.3質量%の範囲である。
【0053】
さらに本発明の効果を損なわない範囲で安定剤、熱伝導性改良剤、顔料を配合することも好ましい。
【0054】
例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー(登録商標)”GA-80などをはじめとするヒンダードフェノール系薬剤、BASF社製“チヌビン(登録商標)”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、リン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、ポリフッ化ビニリデンなどを基とするフッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸化合物、リン酸エステル化合物などの各種の帯電防止剤などが添加されてもよいし、またポリマと反応して存在してもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN-150、Clariant Corporation製“Hostanox(登録商標)”SE10等、熱酸化安定剤などを含有させることが好ましい。
【0055】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0056】
例えば、顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸ジルコニウムなどを含有させることが好ましい。中でも弾性繊維の目剥きによるギラツキを抑え、弾性繊維が目立たない均質な外観の複合積層体を得るという観点からは酸化チタンが好ましい。酸化チタンであればルチル型、アナターゼ型のいずれでも好ましく用いられる。また、光の反射を抑え、かつポリウレタン系弾性糸を安定的に製造するという観点から、平均一次粒子径が0.15μmから0.3μmの範囲のものであることが好ましい。また、ポリウレタン系弾性糸中への含有量はギラツキの防止という観点から0.3質量%以上であることが好ましく、口金への詰まり等を防ぎ安定的にポリウレタン弾性繊維を紡糸するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0057】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0058】
ポリウレタン重合体を溶液とする場合に用いる溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略する)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等を使用することができるが、DMAcが最も一般的に使用される溶媒である。
【0059】
ポリウレタン重合体の溶液濃度としては、30~50質量%(溶液の全質量を基準にして)の溶液濃度にてポリウレタン系弾性繊維のフィラメント糸を得る乾式紡糸法が好ましい。
【0060】
本発明においては、ポリウレタン重合体からポリウレタン系弾性繊維を紡糸する方法は特に限定されるものではないが、例えば、1)ジオールを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、溶融紡糸法、乾式紡糸法または湿式紡糸法等を採用することができる。また2)アミンを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、通常乾式紡糸法を採用することができる。
【0061】
本発明の弾性繊維の繊度は、1~3000デシテックスがより好ましく、最も好ましくは、310~1240デシテックスである。
【0062】
繊度が、100デシテックスに満たない弾性繊維を用いると製造時、走行摩擦に弾性繊維が耐えられず糸切れが生じやすくなるという傾向があり、また、5000デシテックスを越える弾性繊維を用いると、製造時、走行摩擦にセンサー側が耐えきれずに破損する傾向がある。
【0063】
本発明で使用される弾性繊維として好ましいのは、工程通過性も含め、実用上の問題がないものを得る観点から、熱軟化点が100℃以上240℃以下の範囲となるものが好ましい。熱軟化点が100℃より低いと、ホットメルト接着剤の塗布時や熱ロールおよび超音波ウエルダーを使用した際に糸切れする場合があり、240℃より大きいと、ホットメルト接着剤と弾性繊維が交差する箇所での弾性繊維の存在が目立ち、不満足な外観を呈する場合が起こり、伸縮性部材の厚みが大きくなりすぎる場合がある。熱軟化点の範囲はより好ましくは、110℃以上230℃以下、さらに、最も好ましいのは120℃以上220℃の範囲である。
【符号の説明】
【0064】
1:第1の吸収性シート
2:第2の吸収性シート
3:第1の吸収性シートにおける身体側の布帛
4:第1の吸収性コア
5:第1の吸収性シートにおける第2の吸収性シート側の布帛
6:第1の堰状構造部
7:第2の吸収性シートにおける第1の吸収性シート側の布帛
8:第2の吸収性コア
9:第2の吸収性シートにおける着衣側の布帛
10:第2の堰状構造部
11:弾性糸