(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両のバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20221006BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20221006BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/02
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2019083545
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 修実
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智志
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 隆
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5015545(US,A)
【文献】特開2018-114911(JP,A)
【文献】特開2012-243449(JP,A)
【文献】特開2011-228301(JP,A)
【文献】特開2011-88611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 11/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下部に車体前後方向に伸びるようにしてトンネル部が設けられ、該トンネル部内に、複数の板状のバッテリセルにより構成されたバッテリが配設されている車両のバッテリ装置において、
前記複数のバッテリセルは、バッテリセルの厚み方向を車体前後方向となるようにした状態でバッテリセルを車体前後方向に重ねて配設される第1バッテリセルと、車体上下方向で該第1バッテリセルの上段又は下段に配置されてバッテリセルの厚み方向を車体上下方向となるように配設された第2バッテリセルと、を備える、
ことを特徴とする車両のバッテリ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1バッテリセルが、複数枚のバッテリセルを該各バッテリセルの厚み方向を車体前後方向に向けつつ車体前後方向に重ねる第1バッテリセル群として構成され、
前記第2バッテリセルが、複数枚のバッテリセルを該各バッテリセルの厚み方向を車体上下方向に向けつつ車体上下方向に重ねる第2バッテリセル群として構成されている、
ことを特徴とする車両のバッテリ装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の端子が、車幅方向一方側面に設けられ、
前記第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の車幅方向他方側面に対して、該第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群を冷却するための冷却部材が当接されている、
ことを特徴とする車両のバッテリ装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記トンネル部の内部空間は、その車幅方向間隔が車体上下方向で下方側から上方側に向かうに従って狭まるように形成され、
前記複数の板状の各バッテリセルが、板面が長方形とされた平板形状として形成され、
前記第1バッテリセル群が、車体上下方向で前記トンネル部内の下部側に配置されて、該第1バッテリセル群におけるバッテリセルの長辺伸び方向を車幅方向に向けつつ該各バッテリセルの厚み方向を車体前後方向に向けるように構成され、
前記第2バッテリセル群が、車体上下方向で前記第1バッテリセル群の上段に配置されて、該第2バッテリセル群のバッテリセルの長辺伸び方向を車体前後方向に向けつつ該バッテリセルの厚み方向を車体上下方向に向けるように構成されている、
ことを特徴とする車両のバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバッテリ装置には、特許文献1に示すように、車両の下部に車体前後方向に伸びるようにしてトンネル部を設け、そのトンネル部内に、バッテリとして、複数の板状のバッテリセルにより構成されたものを配設し、その各バッテリセルの厚み方向を、トンネル部内において車体前後方向に向けたものが提案されている。これによれば、強度部材としてのトンネル部を利用して、衝突時に、その衝撃力からバッテリを保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記車両のバッテリ装置においては、板状の各バッテリセルが、トンネル部内においてそのバッテリセルの厚み方向を車体前後方向に向けて配設されることから、バッテリセルの積み重ねに要する上下長さ(特許文献1では、短辺伸び方向長さ)が長く、バッテリセルを上方に積み上げようとした場合、トンネル部の頂部内面との干渉に基づき、バッテリセルは早々と積み上げられない状態となる傾向を示す。このため、トンネル部の頂部内面と最上段のバッテリセルとの間に、未だ空間があるにもかかわらず、その空間をバッテリセルの配設に有効に利用することができず、トンネル部内において、多くの数のバッテリセルを収納することが困難となっている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、トンネル部内において、極力多くの数のバッテリセルを収納することができる車両のバッテリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)~(4)とした構成とされている。
【0007】
(1)車両の下部に車体前後方向に伸びるようにしてトンネル部が設けられ、該トンネル部内に、複数の板状のバッテリセルにより構成されたバッテリが配設されている車両のバッテリ装置において、
前記複数のバッテリセルは、バッテリセルの厚み方向を車体前後方向となるようにした状態でバッテリセルを車体前後方向に重ねて配設される第1バッテリセルと、車体上下方向で該第1バッテリセルの上段又は下段に配置されてバッテリセルの厚み方向を車体上下方向となるように配設された第2バッテリセルと、を備える構成とされている。
【0008】
この構成によれば、第1バッテリセルを、その比較的短いバッテリセルの厚みを単位として、車体前後方向において重ね合わせること(重ね調整)ができることになり、バッテリセルをトンネル部の前、後端近くまで干渉させることなく配設させることができる。その一方で、第1バッテリセルの上段又は下段に第2バッテリセルが配置されて、その比較的短いバッテリセルの厚みを単位として、その第2バッテリセルを、トンネル部内において、収納すべきバッテリセルの収納高さ(上下方向長さ)調整のために利用することができ、トンネル部内に収納すべきバッテリセルをトンネル部の頂部近くまで干渉させることなく配設させることができる。このため、車体前後方向及び上下方向において、比較的短いバッテリセルの厚みを単位として、バッテリセルの収納調整を行うことができることになり、その両者の組み合わせ利用により、トンネル部内において、極力多くの数のバッテリセルを収納することができる。
【0009】
(2)前述の(1)の構成の下で、
前記第1バッテリセルが、複数枚のバッテリセルを該各バッテリセルの厚み方向を車体前後方向に向けつつ車体前後方向に重ねる第1バッテリセル群として構成され、
前記第2バッテリセルが、複数枚のバッテリセルを該各バッテリセルの厚み方向を車体上下方向に向けつつ車体上下方向に重ねる第2バッテリセル群として構成されている構成とされている。
【0010】
この構成によれば、第2バッテリセル群を、その比較的短いバッテリセルの厚みを単位として、上下方向に積み重ね調整することができることになり、車体前後方向における重ね調整だけでなく、上下方向における積み重ね調整が加わることになり、トンネル部内において、具体的に、極力多くの数のバッテリセルを収納することができる。
【0011】
(3)前述の(2)の構成の下で、
前記第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の端子が、車幅方向一方側面に設けられ、
前記第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の車幅方向他方側面に対して、該第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群を冷却するための冷却部材が当接されている構成とされている。
【0012】
この構成によれば、第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の端子の使用に支障を与えることなく、その第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群を的確に冷却することができる。また、第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群の端子が、いずれも、車幅方向一方側面に設けられることから、各接続の取り廻し構造をその車幅方向一方側にまとめることができ、その簡素化を図ることができる。さらには、第1バッテリセル群及び第2バッテリセル群のいずれについても、その各車幅方向他方側面に冷却部材が当接されることから、冷却部材の一連の構造をその車幅方向他方側にまとめることができ、その簡素化を図ることができる。
【0013】
(4)前述の(2)又は(3)の構成の下で、
前記トンネル部の内部空間は、その車幅方向間隔が車体上下方向で下方側から上方側に向かうに従って狭まるように形成され、
前記複数の板状の各バッテリセルが、板面が長方形とされた平板形状として形成され、
前記第1バッテリセル群が、車体上下方向で前記トンネル部内の下部側に配置されて、該第1バッテリセル群におけるバッテリセルの長辺伸び方向を車幅方向に向けつつ該各バッテリセルの厚み方向を車体前後方向に向けるように構成され、
前記第2バッテリセル群が、車体上下方向で前記第1バッテリセル群の上段に配置されて、該第2バッテリセル群のバッテリセルの長辺伸び方向を車体前後方向に向けつつ該バッテリセルの厚み方向を車体上下方向に向けるように構成されている構成とされている。
【0014】
この構成によれば、トンネル部における内部空間の車幅方向間隔が下方側から上方側に向かうに従って狭まる特有形状であることと、そのトンネル部の特有形状に対して入れ込む各バッテリセルの形状が長方形板面の平板形状であることとを考慮して、第1バッテリセル群と第2バッテリセル群との配置態様に基づき、トンネル部内へバッテリセルを効果的(効率的)に収納することができる。このため、トンネル部の特有な形状の下でも、そのトンネル部内にバッテリセルを、極力多く収納することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トンネル部内において、極力多くの数のバッテリセルを収納することができる車両のバッテリ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る車両の構造を簡易的に示す説明図。
【
図3】
図2の下部側から見たバッテリ装置を示す図。
【
図5】第1バッテリセル群に用いられるバッテリセルを示す斜視図。
【
図6】第2バッテリセル群に用いられるバッテリセルを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1において、符号1は、車両である。この車両1には、本実施形態においては、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド車両が用いられている。このため、この車両1においては、車輪2がモータ3のみで駆動され、そのモータ3には、バッテリ(具体的にはリチウムイオンバッテリ)4とジェネレータ5とにより電力が供給される。モータ3とバッテリ4とは、インバータ・コンバータ6を介して接続されており、そのインバータ・コンバータ6は、バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給すると共に、減速中に発電機として機能するモータ3が発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ4に供給する。ジェネレータ5は、エンジン7に駆動されることにより発電し、その電力は、モータ3に直接に供給され、またはインバータ・コンバータ6を介してバッテリ4に供給される。
【0019】
前記車両1には、
図2に示すように、車両下部においてフロアパネル9が設けられている。このフロアパネル9は、その車幅方向中央部において、車体前後方向(後述の
図3において左右方向)に伸びるトンネル部10を有しており、そのトンネル部10は、その全長に亘って上方に膨出されている。このため、トンネル部10は、
図2~
図4に示すように、下方に開口する内部空間11を有し、その内部空間11の下側開口12は、車幅方向(
図4中、左右方向)に略一定とされ、その内部空間11の車幅方向間隔は、下方側から上方側に向かうに従って次第に狭まっている。例えば、内部空間11の車幅方向長さは、
図4に示すように、下部においてB1=250~280mm程度に形成され、上部においてB2=150~200mm程度に形成されている。
【0020】
前記トンネル部10内には、
図2~
図4に示すように、収納ケース13が収納されている。収納ケース13は、バッテリトレイ部14と、該バッテリトレイ部14上に取付けられる上蓋部15とを有している。バッテリトレイ部14は、内部空間11の下側開口12を覆うようにしつつ車体前後方向に伸びている。このバッテリトレイ部14の長手方向両端部及び長手方向中央部には、その幅方向両側外方に張り出すフランジ部16がそれぞれ設けられ、その各フランジ部16はトンネル部10の下側両開口縁部にねじ留めされている。このバッテリトレイ部14の上面には、その幅方向両側において起立部17がそれぞれ設けられている。両起立部17は、トンネル部10の下側開口12内面にそれぞれ近接した状態でバッテリトレイ部14上面から起立しており、その各起立部17は、バッテリトレイ部14の幅方向両側縁部に沿いつつ車体前後方向に伸びている。
【0021】
上蓋部15は、バッテリトレイ部14の長手方向全長に亘って、そのバッテリトレイ部14における両起立部17からトンネル部10の内面に沿いつつ上方に膨らむ形状として形成されている。具体的には、上蓋部15には、その車幅方向下側開口両縁部においてフランジ部18が設けられ、その両フランジ部18が前記バッテリトレイ部14上の両起立部17の上端面にねじ留めされている。上蓋部15は、その両側部15aがその各起立部17から互いに対向しつつ立ち上がった後、トンネル部10の側部内面を考慮して、上方に向かうに従って互いに近づくように傾斜され、トンネル部10の頂部よりも低い所定の高さにおいて、両側部15aが、平坦面を形成する頂部15bを介して連なることになる。これにより、トンネル部10内面と収納ケース13外面との間に一定の空間が形成されることになり、収納ケース13をトンネル部10内に収納する際の作業容易性が確保される。
【0022】
前記バッテリ4は、
図2~
図4に示すように、前記収納ケース13におけるバッテリトレイ部14上に載置固定されている。バッテリ4は、複数のセル積層体20により構成されており、その複数のセル積層体20は、収納ケース13の内部空間形状を考慮し、バッテリトレイ部14上に載置固定される下段側セル積層体20Aと、その下段側セル積層体20A上に載置固定される上段側セル積層体20Bとをもって上下2段に積まれた構造として構成されている。但し、本実施形態では、バッテリトレイ部14の長手方向中央部において、下段側セル積層体20Aが省かれ、上段側セル積層体20Bがバッテリトレイ部14上に直接載置されることになっている(
図2、
図3参照)。
【0023】
前記下段側セル積層体20Aは、バッテリトレイ部14上に車体前後方向に順次配置されて、列(1列)を形成している。この各下段側セル積層体20Aは、複数枚のバッテリセル21Aを積層することにより構成されている。各バッテリセル21Aは、
図5に示すように、平板状に形成されており、その板面は長方形に形成されている。本実施形態においては、短辺C1が50~90mm、長辺C2が120~150mm、厚みC3が12~18mmとされている。この各バッテリセル21Aにおける長辺C2の伸び方向一方側側面21cには、正極セル端子22aと負極セル端子22bとが短辺C1の伸び方向に間隔をあけて設けられており、その正極セル端子22aと負極セル端子22bとの間から所定電圧が出力されることになる。各バッテリセル21Aにおける長辺C2伸び方向他方側側面21dには、特別な要素は設けられておらず、その長辺C2伸び方向他方側側面21dは平坦面として形成されている。
【0024】
前記各下段側セル積層体20Aは、
図2~
図4に示すように、その各バッテリセル21Aの長辺C2伸び方向を車幅方向に向けつつその各バッテリセル21Aの厚みC3方向を車体前後方向に向けた状態で、その各バッテリセル21Aを車体前後方向に重ねる態様(具体的な第1バッテリセル群の態様)を取っている。このため、この各下段側セル積層体20Aにおけるバッテリセル21A群(第1バッテリセル群)の各バッテリセル21Aは、トンネル部10下部付近における内部空間11の車幅方向間隔が上部の車幅方向間隔よりも広くされてバッテリセル21Aの長辺C2以上の長さとされていることを利用して、その長辺C2の伸び方向を車幅方向に向けつつその厚みC3方向を車体前後方向に向けた状態でトンネル部10内に収納できることになり、車体前後方向に順次配列される各下段側セル積層体20Aの各バッテリセル21Aは、短辺C1及び長辺C2よりもかなり短い厚みC3を単位として車体前後方向においてバッテリセル21Aを重ね合わせること(重ね調整)ができることになる。このため、無駄な空間(厚みC3方向以外の方向を車体前後方向とした場合に形成されるデッドスペース)の形成を抑制しつつ、バッテリセル21Aをトンネル部10の前、後端近くまで干渉させることなく配設させることができることになる。尚、本実施形態においては、前述した如く、バッテリトレイ部14の長手方向中央部において、下段側セル積層体20Aが省かれ、上段側セル積層体20Bがバッテリトレイ部14上に直接載置される(
図2、
図3参照)。
【0025】
この場合、各下段側セル積層体20Aにおいては、各バッテリセル21Aの長辺C2伸び方向他方側側面21dが、車幅方向他方側(
図4中、右側)に向けられている一方で、長辺C2伸び方向一方側側面21cが車幅方向一方側(
図4中、左側)に向けられ、正極セル端子22aと負極セル端子22bとは同方向に臨んでいる。この各下段側セル積層体20Aにおいては、各バッテリセル21Aの端子22a、22bが順次、直列に接続されており、各下段側セル積層体20Aは、所定の電圧を出力することになる。
図4において、符号30は、各バッテリセル21Aの正極セル端子22aと負極セル端子22bとを順次、接続する接続具を簡易的に示したものである。
【0026】
本実施形態においては、トンネル部10内に上蓋部15(収納ケース13)が設けられる構成となっているが、この上蓋部15は、トンネル部10内への組込み作業性、トンネル部10内に対する予め収納すべきバッテリセル21A、21Bの数を考慮して、それらバッテリセル21A、21B(下段側セル積層体20A及び上段側セル積層体20Bの予め設定されている配置形状に近い形状)に近接するように設計されている。
【0027】
前記上段側セル積層体20Bは、
図2~
図4に示すように、前記下段側セル積層体20Aの列上に車体前後方向に順次配置されて、列(1列)を形成している。本実施形態においては、各上段側セル積層体20Bは、下段側セル積層体の車幅方向略中央部において載置固定され、その状態が、下段側セル積層体20Aの列全長に亘って維持されている。この各上段側セル積層体20Bは、複数枚のバッテリセル21Bを積層することにより構成されており、その各バッテリセル21Bは、
図6に示すように、前記バッテリセル21Aと基本的に同一の構成(短辺C1,長辺C2,厚みC3)とされている。ただ、正極セル端子22aと負極セル端子22bとについては、各バッテリセル21Bにおける短辺C1の伸び方向一方側側面21aに長辺C2の伸び方向に間隔をあけて設けられ、その正極セル端子22aと負極セル端子22bとの間から所定電圧が出力されることになる(
図6参照)。尚、本実施形態においては、前述した如く、バッテリトレイ部14の長手方向中央部において、下段側セル積層体20Aが省かれ、上段側セル積層体20Bがバッテリトレイ部14上に直接載置される(
図2、
図3参照)。
【0028】
前記各上段側セル積層体20Bは、
図2~
図4に示すように、その各バッテリセル21Aの長辺C2伸び方向を車体前後方向に向けつつその各バッテリセル21Aの厚みC3方向を上下方向に向けた状態で、その各バッテリセル21Bを上下方向に重ねる態様(具体的な第2バッテリセル群の態様)取っている。このため、この各上段側セル積層体20Bにおけるバッテリセル21B群(第2バッテリセル群)の各バッテリセル21Bは、トンネル部10上部付近における内部空間11の車幅方向間隔が下部の車幅方向間隔よりも次第に狭まるとしても、各バッテリセル21Bの長辺C2伸び方向を車体前後方向に向けつつその各バッテリセル21Aの厚みC3方向を上下方向に向けた状態とすることにより、各バッテリセル21Bをトンネル部10内の上部において収納できるようすることができるだけでなく、各バッテリセル21Bを、短辺C1及び長辺C2よりもかなり短い厚みC3を単位として、上下方向においてを重ね合わせること(重ね調整)ができることになる。このため、無駄な空間(厚みC3方向以外の方向を上下方向とした場合に形成されるデッドスペース)の形成を抑制しつつ、最上段のバッテリセル21Bをトンネル部10の頂部内面近くまで干渉させることなく配設させることができる。尚、上蓋部15(収納ケース13)については、予め収納すべきバッテリセル21A、21Bの数を考慮して設計されていることは、前述の通りであり、その設計に当たっては、上述の最上段のバッテリセル21Bとトンネル部10の頂部内面との関係が考慮に入れられる。
【0029】
この場合、各上段側セル積層体20Bにおいては、各バッテリセル21Bの短辺C1伸び方向他方側側面21bが、車幅方向他方側(
図4中、右側)に向けられている一方で、各バッテリセル21Bの短辺C1伸び方向一方側側面21cが車幅方向一方側(
図4中、左側)に向けられ、正極セル端子22aと負極セル端子22bとは同方向に臨んでいる。各上段側セル積層体20Aにおいては、各バッテリセル21Aの端子22a、22bが順次、直列に接続されており、各上段側セル積層体20Bは、所定の電圧を出力することになる。
図4においては、符号31は、各バッテリセル21Bの正極セル端子22aと負極セル端子22bとを順次、接続する接続具を簡易的に示したものである。
【0030】
これら各セル積層体20(20A,20B)は直列に接続されており、その各セル積層体20の接続により数百Vの電圧が得られることになる。
【0031】
前記各上段側セル積層体20B及び各下段側セル積層体20Aには、
図4に示すように、冷却部材としてのウォータジャケット部24が関連付けられている。ウォータジャケット部24は、下段側セル積層体20Aの列を冷却するための下段側ウォータジャケット部24Aと、上段側セル積層体20Bの列を冷却するための上段側ウォータジャケット部24Bとを一体的に備えており、これら上段側ウォータジャケット部24B及び下段側ウォータジャケット部24Aとは、それらの内部に形成された内部通路25を介して連なっている。上段側ウォータジャケット部24Bは、上段側セル積層体20Bの列において、その各上段側セル積層体20Bにおける全てのバッテリセル21の短辺C1伸び方向他方側面21b(セル端子22a,22bが存在しない面:車幅方向他方側面)に当接しつつ上段側セル積層体20Bの列の全長に亘って伸びている。下段側ウォータジャケット部24Aは、下段側セル積層体20Aの列において、その各下段側セル積層体20Aにおける全てのバッテリセル21の長辺C2伸び方向他方側面21b(セル端子22a,22bが存在しない面:車幅方向他方側面)に当接しつつ上段側セル積層体20Bの列の全長に亘って伸びている。
【0032】
このウォータジャケット部24には、上段側ウォータジャケット部24Bの一端側から冷却水が供給され、その冷却水は、上段側ウォータジャケット部24Bの他端側を経て、その上段側ウォータジャケット部24Bに連なる下段側ウォータジャケット部24A内に供給される。これにより、各上段側セル積層体20B及び各下段側セル積層体20Aが冷却水により冷却されることになる。この場合、上段側ウォータジャケット部24B及び下段側ウォータジャケット部24Aのいずれもが、上段側セル積層体20B及び下段側セル積層体20Aに対して車幅方向他方側に配置されることになることから、その車幅方向他方側にその上段側ウォータジャケット部24B及び下段側ウォータジャケット部24Aをまとめることができ、ウォータジャケット部24(24A,24B)の構造を簡素化することができる。その一方で、各上段側セル積層体20Bにおける各バッテリセル21B同士の接続具、各下段側セル積層体20Bにおける各バッテリセル21B同士の接続具、各上段側セル積層体20B同士の接続具、各下段側セル積層体20A同士の接続具、上段側セル積層体20Bと下段側セル積層体20Aとの接続具等のいずれもが、車幅方向一方側に配置されることになり、その車幅方向一方側に接続具等をまとめることができることになる。これにより、接続の取り廻し構造を簡素化することができることになる。
【0033】
このようなバッテリ装置においては、バッテリセル21が板状であることを利用し、トンネル部10内で、かなり短い長さのバッテリセル21の厚みを単位として、車体前後方向においてバッテリセル21Aの重ね合わせ(重ね調整)を行うことができると共に、上下方向においてバッテリセル21Bの重ね合わせ(重ね調整)を行うことができることになる。このため、バッテリセル21Aをトンネル部10の前、後端近くまで積み重ねると共に、バッテリセル21Bをトンネル部10の頂部内面近くまで積み重ねることができることになり、その両者の組み合わせ利用により、トンネル部10内において、極力多くの数のバッテリセル21(21A,21B)を収納することができることになる。
【0034】
しかもこの場合、トンネル部10における内部空間11の車幅方向間隔が下方側から上方側に向かうに従って狭まる特有形状であるとしても、そのトンネル部10の特有形状に対して入れ込む各バッテリセル21の形状(長方形板面の平板形状)を考慮し、車体前後方向及び上下方向の両方向においてバッテリセル21A、21Bの厚みを単位とした重ね合わせ(重ね調整)を行う観点から、トンネル部10内にバッテリセル21(21A、21B)を的確に収納することができることになる。
【0035】
以上実施形態について述べたが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)上蓋部15を省くこと。
(2)各種のハイブリット車両、電気自動車に用いること。
(3)下段側セル積層体20Aと上段側セル積層体20Bとを、バッテリトレイ部14の全長に亘って、下段側セル積層体20Aと上段側セル積層体20Bとの上下2段構造を維持しつつ配列すること。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、トンネル部10内において、極力多くの数のバッテリセル21を収納するために利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
4 バッテリ
10 トンネル部
20 セル積層体
20A 下段側セル積層体
20B 上段側セル積層体
21 バッテリセル
21A 下段側セル積層体20Aのバッテリセル(第1バッテリセル)
21B 上段側セル積層体20Bのバッテリセル(第2バッテリセル)
21c バッテリセル21Aの長辺伸び方向一方側面(車幅方向一方側面)
21d バッテリセル21Aの長辺伸び方向他方側面(車幅方向他方側面)
21a バッテリセル21Bの短辺伸び方向一方側面(車幅方向一方側面)
21b バッテリセル21Bの短辺伸び方向他方側面(車幅方向他方側面)
22a 正極セル端子(バッテリセルの端子)
22b 負極セル端子(バッテリセルの端子)
24 ウォータジャケット部(冷却部材)
24A 下段側ウォータジャケット部(冷却部材)
24B 下段側ウォータジャケット部(冷却部材)
C1 バッテリセルの短辺
C2 バッテリセルの長辺
C3 バッテリセルの厚み