(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】積層体及び該積層体で構成される蓋材を用いた輸液容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20221006BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20221006BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20221006BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221006BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221006BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65D65/40 D
A61J1/05 315B
A61J1/10 335A
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2021133676
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2017187082の分割
【原出願日】2017-09-27
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 靖也
(72)【発明者】
【氏名】中田 清
(72)【発明者】
【氏名】多久島 和弘
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-338364(JP,A)
【文献】特開2006-298394(JP,A)
【文献】特開2014-015233(JP,A)
【文献】特開2006-143223(JP,A)
【文献】特開2009-132061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、B65D65/00-65/46、
A61J1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液容器であって、
袋と、
前記袋に設けられた、樹脂を含む口部と、
前記口部に設けられた
、積層体を含む蓋材と、を備え、
前記積層体は、前記口部側から前記口部とは反対側へ順に第1基材、第2基材及びイージーピール性を有するシーラント層をこの順で少なくとも備え
、
前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第1基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のIV値を有する単層構造からなる延伸フィルムである、
輸液容器。
【請求項2】
前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、ポリエチレンテレフタレートも含む、請求項1に記載の
輸液容器。
【請求項3】
前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材における、ポリエチレンテレフタレートの含有量が、30質量%以下である、請求項2に記載の
輸液容器。
【請求項4】
前記積層体の突き刺し強度が13N以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項5】
前記第1基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項6】
前記第1基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項7】
前記積層体は、
前記第1基材と前記第2基材との間に位置する印刷層を更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項8】
前記シーラント層は、ポリエチレンと、ポリプロピレンとを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項9】
前記積層体は、
前記第1基材と前記第2基材との間であって、前記第1基材又は前記第2基材の少なくともいずれか一方に設けられた透明蒸着層を少なくとも含むバリア層を更に備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の
輸液容器。
【請求項10】
前記透明蒸着層が、酸化アルミニウムを含み、
前記第1基材又は前記第2基材のうち、前記透明蒸着層の設けられた少なくともいずれか一方と、前記透明蒸着層との界面に、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合が形成されている、請求項9に記載の
輸液容器。
【請求項11】
前記バリア層が、前記透明蒸着層の面上に設けられたガスバリア性塗布膜を更に備える、請求項9又は10に記載の
輸液容器。
【請求項12】
前記口部と前記蓋材とを接合する第1シール部を更に備え、
前記第1シール部の、23℃におけるシール強度が、20N/15mm以下である、請求項
1乃至11のいずれか一項に記載の輸液容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び該積層体で構成される蓋材を用いた輸液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば点滴等に用いられる輸液用の容器として、輸液バッグ等の輸液容器が市場に出回っている。輸液容器には、内容物である輸液を取り出すための口部が設けられる。輸液容器の衛生性を確保するため、例えば特許文献1においては、口部に剥離用カバーを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸液容器の口部に設けられたカバーは、輸液容器の輸送時などに加わる衝撃に起因して破損してしまうことがある。この場合、孔などの破損箇所を通って雑菌が輸液容器の内部に侵入し、衛生性が確保できなくなることが考えられる。従って、カバーの材料には、突き刺し強度などの一定の強度を有することが求められる。
【0005】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、積層体であって、第1基材、第2基材及びイージーピール性を有するシーラント層をこの順で少なくとも備え、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第1基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のIV値を有する単層構造からなる延伸フィルムである、積層体である。
【0007】
本発明による積層体において、前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、ポリエチレンテレフタレートも含んでいてもよい。
【0008】
本発明による積層体において、前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材における、ポリエチレンテレフタレートの含有量が、30質量%以下であってもよい。
【0009】
本発明による積層体において、前記積層体の突き刺し強度が13N以上であってもよい。
【0010】
本発明による積層体において、前記第1基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0011】
本発明による積層体において、前記第1基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0012】
本発明による積層体において、前記第1基材と前記第2基材との間に位置する印刷層を更に備えていてもよい。
【0013】
本発明による積層体において、前記シーラント層は、ポリエチレンと、ポリプロピレンとを含んでいてもよい。
【0014】
本発明による積層体において、前記第1基材と前記第2基材との間であって、前記第1基材又は前記第2基材の少なくともいずれか一方に設けられた透明蒸着層を少なくとも含むバリア層を更に備えていてもよい。
【0015】
本発明による積層体において、前記透明蒸着層が、酸化アルミニウムを含み、前記第1基材又は前記第2基材のうち、前記透明蒸着層の設けられた少なくともいずれか一方と、前記透明蒸着層との界面に、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合が形成されていてもよい。
【0016】
本発明による積層体において、前記バリア層が、前記透明蒸着層の面上に設けられたガスバリア性塗布膜を更に備えていてもよい。
【0017】
本発明は、輸液容器であって、袋と、前記袋に設けられた、樹脂を含む口部と、前記口部に設けられた、上記記載の積層体を含む蓋材と、を備える、輸液容器である。
【0018】
本発明による輸送容器において、前記口部と前記蓋材とを接合する第1シール部を更に備え、前記第1シール部の、23℃におけるシール強度が、20N/15mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐突き刺し性が向上され、且つカプロラクタムの溶出が抑制された積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態における輸液容器を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における輸液容器の口部を拡大して示す底面図である。
【
図3】袋を構成する積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【
図4】積層体の第1フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
【
図5】シール強度を測定するための試験片を準備する方法の一例を示す図である。
【
図6】袋を構成する積層体の層構成のその他の例を示す断面図である。
【
図7】袋を構成する積層体の層構成のその他の例を示す断面図である。
【
図8】突き刺し強度の測定方法の一例を示す図である。
【
図9】実施例1~4及び比較例1,2の層構成及び評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0022】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0023】
本実施の形態に係る輸液容器10について説明する。
図1は、本実施の形態による輸液容器10を示す正面図である。なお、
図1においては、内容物が充填される前の状態(内容物が収容されていない状態)の輸液容器10が示されている。以下、輸液容器10の構成について説明する。
【0024】
輸液容器
図1に示すように、輸液容器10は、袋11、袋11に設けられた口部12、及び口部12に設けられた蓋材13を備える。袋11は、その内部に輸液を収容する。袋11に収容された輸液は、口部12から取り出される。蓋材13は、輸液が口部12から取り出される前の期間において口部12を覆うよう、口部12に設けられている。以下、輸液容器10の各構成要素について説明する。
【0025】
袋11は、樹脂のフィルム11aを端部において貼り合わせて第2シール部11bを形成し、袋状に成形したものである。袋11は、輸液が収容される収容部11cを備える。袋11は、正面図において例えば略矩形状の輪郭を有する。
【0026】
口部12は、プラスチックを成形することによって作製されたプラスチック成形品である。口部12は、例えば筒状の形状を有する。口部12の一端は、袋11を構成するフィルム11aの間に挟み込まれている。さらに、口部12のうちフィルム11aの間に挟み込まれた部分の側面とフィルム11aとが接合されることにより、口部12が袋11に取り付けられている。口部12とフィルム11aとを接合している部分のことを、第3シール部15とも称する。
【0027】
口部12は、樹脂を含む。口部12の材料は、樹脂を含み、フィルム11a及び後述の蓋材13との間においてシール部を形成することが可能な材料であれば、特に限定されないが、例えばポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンである。
【0028】
口部12の内側に設けられた構成要素について説明する。
図2は、輸液容器10の口部12を拡大して示す底面図である。ここで、
図2においては、後述の蓋材13については輪郭のみを表示するとともに、口部12の内部の様子を示している。
図2に示すように、筒状の口部12の内部には、口栓体14が配置されている。口栓体14には、有底の筒部14aが形成されている。
【0029】
次に、蓋材13について説明する。
図1に示すように、蓋材13は、口部12の他端を覆うよう口部12に設けられている。具体的には、蓋材13は、口部12の他端側の端面(以下、底面とも称する)に接合されている。口部12の底面と蓋材13とを接合している部分のことを、第1シール部16とも称する。蓋材13で口部12の底面を封止することにより、口部12を通じて輸液容器10の収容部11c内に異物が混入するおそれを低減することができ、収容部11c内の衛生性を向上させることができる。
【0030】
輸液容器10の使用方法について説明する。まず蓋材13を口部12から引き剥がして、口部12の内部の口栓体14を露出させる。次に、一端に穿刺針が設けられた輸液チューブを用意し、穿刺針を口栓体14に穿刺する。口栓体14に筒部14aが形成されていることにより、筒部14aを通すようにして、輸液チューブの一端に設けられた穿刺針を口栓体14に穿刺することができる。穿刺針を口栓体14に穿刺することにより、収容部11c内と輸液チューブ内とを連通させ、輸液容器10内から輸液チューブを通じて輸液を取り出すことができる。
【0031】
蓋材を構成する積層体の層構成
次に、蓋材13の層構成について説明する。
図3は、蓋材13を構成する積層体30の一例を示す断面図である。
【0032】
図3に示すように、積層体30は、第1フィルム40、第2フィルム50及び第3フィルム60をこの順で少なくとも含む。第1フィルム40は、外面30y側に位置しており、第3フィルム60は、外面30yの反対側の内面30x側に位置している。内面30xは、収容部11c側に位置する面である。
【0033】
第1フィルム40は、
図3に示すように、第1基材41を少なくとも含む。第2フィルム50は、第2基材51を少なくとも含む。第3フィルム60は、シーラント層61を少なくとも含む。また、第1フィルム40と第2フィルム50とは第1接着剤層45によって接合されており、第2フィルム50と第3フィルム60とは第2接着剤層55によって接合されている。従って、第2の実施の形態に係る積層体30は、外面側から内面側へ順に
第1基材/第1接着剤層/第2基材/第2接着剤層/シーラント層、
を備えている、と言える。なお、「/」は層と層の境界を表している。図示はしないが、第1基材41と第2基材51との間において、印刷層が第1基材41又は第2基材51に設けられていてもよい。
【0034】
以下、第1フィルム40、第1接着剤層45、第2フィルム50、第2接着剤層55及び第3フィルム60についてそれぞれ詳細に説明する。
【0035】
(第1フィルム)
図3に示す例において、第1フィルム40は、積層体30の外面30yを構成する第1基材41を備える。
【0036】
〔第1基材〕
第1基材41は、主成分としてポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)を含む。例えば、第1基材41は、51質量%以上のPBTを含む。以下、第1基材41がPBTを含むことの利点について説明する。
【0037】
PBTは、寸法安定性に優れており、従って印刷適性に優れる。このため、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)の場合と同様に、PBTを含む第1基材41上に印刷層を設けることができる。
【0038】
また、PBTは、耐熱性に優れる。このため、蓋材13を用いた容器にボイル処理やレトルト処理などの殺菌処理を施す際に第1基材41が変形したり第1基材41の強度が低下したりすることを抑制することができる。レトルト処理とは、内容物を輸液容器10に充填して輸液容器10を密封した後、輸液容器10を加圧状態で加熱する処理である。レトルト処理の温度は、例えば120℃以上である。ボイル処理とは、内容物を輸液容器10に充填して輸液容器10を密封した後、輸液容器10を大気圧下で湯煎する処理である。ボイル処理の温度は、例えば90℃以上且つ100℃以下である。
【0039】
また、PBTは、高い強度を有する。このため、蓋材13を構成する積層体30がナイロンを含む場合と同様に、蓋材13に耐突き刺し性を持たせることができる。
【0040】
また、PBTは、ナイロンに比べて水分を吸収しにくいという特性を有する。このため、第1基材41が水分を吸収して積層体30のラミネート強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0041】
以下、PBTを含む第1基材41の構成について詳細に説明する。本実施の形態における、PBTを含む第1基材41の構成としては、下記の第1の構成又は第2の構成のいずれを採用してもよい。
【0042】
〔基材の第1の構成〕
第1の構成に係る第1基材41におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、さらには70質量%以上、特には75質量%以上が好ましく、最も好ましくは80質量%以上である。PBTの含有率を51質量%以上にすることにより、第1フィルム40に優れたインパクト強度および耐ピンホール性を持たせることができる。
【0043】
主たる構成成分として用いるPBTは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは、重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
【0044】
第1基材41は、PBT以外のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。これにより、例えばフィルム状の第1基材41を二軸延伸させる場合の成膜性や第1基材41の力学特性を調整することができる。
PBT以外のポリエステル樹脂としては、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)などのポリエステル樹脂のほか、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸が共重合されたPBT樹脂や、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が共重合されたPBT樹脂を挙げることができる。
【0045】
これらPBT以外のポリエステル樹脂の添加量は、49質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。PBT以外のポリエステル樹脂の添加量が49質量%を超えると、PBTとしての力学特性が損なわれ、インパクト強度や耐ピンホール性、絞り成形性が不十分となることが考えられる。
【0046】
第1基材41は、添加剤として、柔軟なポリエーテル成分、ポリカーボネート成分、ポリエステル成分の少なくともいずれかを共重合したポリエステル系およびポリアミド系エラストマーを含んでいてもよい。これにより、屈曲時の耐ピンホール性を改善することができる。添加剤の添加量は、例えば20質量%である。添加剤の添加量が20質量%を超えると、添加剤としての効果が飽和することや、第1基材41の透明性が低下することなどが起こり得る。
【0047】
第1の構成に係るフィルム状の第1基材41を作製する方法の一例について説明する。ここでは、キャスト法によってフィルム状の第1基材41を作製する方法について説明する。より具体的には、キャスト時に同一の組成の樹脂を多層化してキャストする方法について説明する。
【0048】
PBTは結晶化速度が速いため、キャスト時にも結晶化が進行する。このとき、多層化せずに単層でキャストした場合には、結晶の成長を抑制しうるような障壁が存在しないために、結晶が大きなサイズに成長してしまい、得られた未延伸原反の降伏応力が高くなる。このため、未延伸原反を二軸延伸する際に破断しやすくなる。また、得られた二軸延伸フィルムの降伏応力が高くなり、二軸延伸フィルムの成形性が不十分になってしまうことが考えられる。
これに対して、キャスト時に同一の樹脂を多層化すれば、未延伸シートの延伸応力を低減することができる。このため、安定した二軸延伸が可能となり、また、得られた二軸延伸フィルムの降伏応力が低くなる。このことにより、柔軟かつ破断強度の高いフィルムを得ることができる。
【0049】
図4は、第1フィルムの層構成の一例を示す断面図である。樹脂を多層化してキャストすることによって第1基材41が作製される場合、
図4に示すように、第1フィルム40の第1基材41は、複数の層41aを含む多層構造部からなる。複数の層41aはそれぞれ、主成分としてPBTを含む。例えば、複数の層41aはそれぞれ、好ましくは51質量%以上のPBTを含み、より好ましくは60質量%以上のPBTを含む。なお、複数の層41aにおいては、n番目の層41aの上にn+1番目の層41aが直接積層されている。すなわち、複数の層41aの間には、接着剤層や接着層が介在されていない。
【0050】
多層化によりPBTフィルムの特性が改善される原因については、下記のように推測する。樹脂を積層する場合、樹脂の組成が同一の場合であっても層の界面が存在し、その界面により結晶化が加速される。一方、層の厚みを越えた大きな結晶の成長は抑制される。このため、結晶(球晶)のサイズが小さくなるものと考えられる。
【0051】
多層化により球晶のサイズを小さくするための具体的な方法としては、一般的な多層化装置(多層フィードブロック、スタティックミキサー、多層マルチマニホールドなど)を用いることができる。例えば、二台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂を、フィードブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。なお、同一の組成の樹脂を多層化する場合、一台の押出機のみを用いて、押出機からダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することも可能である。
【0052】
第1基材41は、少なくとも10層以上、好ましくは60層以上、より好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上の層41aを含む多層構造部からなる。層数を多くすることにより、未延伸原反の状態のPBTにおける球晶のサイズを小さくすることができ、その後の二軸延伸を安定に実施することができる。また、二軸延伸フィルムの状態のPBTの降伏応力を小さくすることができる。好ましくは、未延伸原反のPBTにおける球晶の直径は、500nm以下である。
【0053】
PBTの未延伸原反を二軸延伸して二軸延伸フィルムを作製する際の、縦延伸方向(以下、MD)における延伸温度(以下、MD延伸温度とも記す)は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは45℃以上である。MD延伸温度を40℃以上にすることにより、フィルムの破断が生じることを抑制することができる。また、MD延伸温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは95℃以下である。MD延伸温度を100℃以下にすることにより、二軸延伸フィルムの配向が生じないという現象を抑制することができる。
【0054】
MDにおける延伸倍率(以下、MD延伸倍率とも記す)は、好ましくは2.5倍以上である。これにより、二軸延伸フィルムを配向させ、良好な力学特性や均一な厚みを実現することができる。MD延伸倍率は、例えば5倍以下である。
【0055】
横延伸方向(以下、TDとも記す)における延伸温度(以下、TD延伸温度とも記す)は、好ましくは40℃以上である。TD延伸温度を40℃以上にすることにより、フィルムの破断が生じることを抑制することができる。また、TD延伸温度は、好ましくは100℃以下である。TD延伸温度を100℃以下にすることにより、二軸延伸フィルムの配向が生じないという現象を抑制することができる。
【0056】
TDにおける延伸倍率(以下、TD延伸倍率とも記す)は、好ましくは2.5倍以上である。これにより、二軸延伸フィルムを配向させ、良好な力学特性や均一な厚みを実現することができる。MD延伸倍率は、例えば5倍以下である。
【0057】
TDリラックス率は、好ましくは0.5%以上である。これにより、PBTの二軸延伸フィルムの熱固定時に破断が生じることを抑制することができる。また、TDリラックス率は、好ましくは10%以下である。これにより、PBTの二軸延伸フィルムにたるみなどが生じて厚みムラが発生することを抑制することができる。
【0058】
図4に示す第1基材41の層41aの厚みは、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。また、層41aの厚みは、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
また、第1基材41の厚みは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第1基材41の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第1基材41の厚みを9μm以上にすることにより、第1基材41が十分な強度を有するようになる。また、第1基材41の厚みを25μm以下にすることにより、第1基材41が優れた成形性を示すようになる。このため、第1基材41を含む積層体30を加工して蓋材13を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0059】
〔基材の第2の構成〕
第2の構成に係る第1基材41は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む単層フィルムからなる。例えば、第1基材41は、グリコール成分としての1,4-ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモ、またはコポリマータイプのポリエステルを含む。第2の構成に係る第1基材41におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、さらには80質量%以上が好ましく、最も好ましくは90質量%以上である。また、第2の構成に係る第1基材41は、ポリブチレンテレフタレートと添加剤のみで構成されていることが好ましい。
【0060】
第1基材41に機械的強度を付与するためには、PBTのうち、融点が200℃以上且つ250℃以下、IV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のものが好ましい。さらには、融点が215℃以上且つ225℃以下、IV値が1.15dl/g以上且つ1.30dl/g以下のものが特に好ましい。これらのIV値は、第1基材41を構成する材料全体によって満たされていてもよい。IV値は、JIS K 7367-5:2000に基づいて算出され得る。
【0061】
第2の構成に係る第1基材41は、PETなどPBT以外のポリエステル樹脂を30質量%以下の範囲で含んでいてもよい。第1基材41がPBTに加えてPETを含むことにより、PBT結晶化を抑制することができ、PBTフィルムの延伸加工性を向上させることができる。第1基材41のPBTに配合するPETとしては、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを用いることができる。例えば、グリコール成分としてのエチレングリコール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプを好ましく用いることができる。良好な機械的強度特性を付与するためには、PETのうち、融点が240℃以上且つ265℃以下、IV値が0.55dl/g以上且つ0.90dl/g以下のものが好ましい。さらには、融点が245℃以上且つ260℃以下、IV値が0.60dl/g以上且つ0.80dl/g以下のものが特に好ましい。
PETの配合量を30質量%以下にすることにより、未延伸原反及び延伸フィルムの剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、延伸フィルムがもろくなり、延伸フィルムの耐圧強度、衝撃強度、突き刺し強度などが低下してしまうことを抑制することができる。また、未延伸原反を延伸する際の延伸不調が発生することを抑制することができる。
【0062】
第1基材41は、必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、第1基材41の原料として用いるポリエステル系樹脂ペレットは、加熱溶融時の加水分解による粘度低下を避けるため、加熱溶融前に水分率が0.05重量%以下、好ましくは0.01重量%以下になるように十分予備乾燥を行った上で使用するのが好ましい。
【0063】
第2の構成に係るフィルム状の第1基材41を作製する方法の一例について説明する。
【0064】
上述の構成の第1基材41のフィルムを安定的に作製するためには、未延伸原反の状態における結晶の成長を抑制することが重要になる。具体的には、押出されたPBT系溶融体を冷却して成膜する際、該ポリマーの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち原反冷却速度が重要な因子となる。原反冷却速度は、例えば200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上である。高い冷却速度で成膜された未延伸原反は、低い結晶状態を保っているため、延伸時のバブルの安定性が向上する。さらには高速での成膜も可能になるので、フィルムの生産性も向上する。冷却速度が200℃/秒未満である場合、得られた未延伸原反の結晶性が高くなり延伸性が低下することが考えられる。また、極端な場合には、延伸バブルが破裂し、延伸が継続しないことも考えられる。
【0065】
PBTを主成分として含む未延伸原反は、雰囲気温度を25℃以下、好ましくは20℃以下に保ちながら、二軸延伸を行う空間まで搬送されることが好ましい。これにより、滞留時間が長くなった場合であっても、成膜直後の未延伸原反の結晶性を維持することができる。
【0066】
未延伸原反を延伸させて延伸フィルムを得るための二軸延伸法は、特には限定されない。例えば、チューブラー法又はテンター法により、縦方向及び横方向を同時に延伸してもよく、若しくは、縦方向及び横方向を逐次延伸してもよい。このうち、チューブラー法は、周方向の物性バランスが良好な延伸フィルムを得ることができ、特に好ましく採用される。
【0067】
チューブラー法において、延伸空間に導かれた未延伸原反は、一対の低速ニップロール間に挿通された後、中に空気を圧入しながら延伸用ヒーターで加熱される。延伸終了後、延伸フィルムには、冷却ショルダーエアーリングによりエアーが吹き付けられる。延伸倍率は、延伸安定性や延伸フィルムの強度物性、透明性、および厚み均一性を考慮すると、MD、およびTDそれぞれ2.7倍以上且つ4.5倍以下であることが好ましい。延伸倍率を2.7倍以上にすることにより、延伸フィルムの引張弾性率や衝撃強度を十分に確保することができる。また、延伸倍率を4.5倍以下にすることにより、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生することを抑制し、延伸加工時に破断やパンクが発生することを抑制できるので、延伸フィルムを安定に作製することができる。
【0068】
延伸温度は、40℃以上且つ80℃以下が好ましく、特に好ましくは45℃以上且つ65℃以下である。上述の高い冷却速度で製造した未延伸原反は、結晶性が低いため、延伸温度が比較的に低温の場合であっても、安定して未延伸原反を延伸することができる。また、延伸温度を80℃以下にすることにより、延伸バブルの揺れを抑制し、厚み精度の良好な延伸フィルムを得ることができる。また、延伸温度を40℃以上にすることにより、低温延伸による過度な延伸配向結晶化が発生することを抑制して、フィルムの白化等を防ぐことができる。
【0069】
上述のようにして作製される第1基材41は、例えば、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む単一の層によって構成されている。上述の作製方法によれば、高い冷却速度で未延伸原反を成膜するので、未延伸原反が単一の層によって構成される場合であっても、低い結晶状態を保つことができ、このため、安定して未延伸原反を延伸することができる。
【0070】
(第1接着剤層)
第1接着剤層45は、第1フィルム40と第2フィルム50とを接着するための第1接着剤を含む。第1接着剤の例としては、エーテル系の二液反応型接着剤、エステル系の二液反応型接着剤などを挙げることができる。
【0071】
エーテル系の二液反応型接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリウレタンなどを挙げることができる。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族系イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂肪族系イソシアネート化合物、あるいは、上記各種イソシアネート化合物の付加体または多量体を用いることができる。
【0072】
エステル系の二液反応型接着剤としては、例えば、ポリエステルポリウレタンやポリエステルなどが挙げられる。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。イソシアネート化合物の例は、上述のエーテル系の接着剤の場合と同様である。
【0073】
(第2フィルム)
第2フィルム50は、第2基材51を少なくとも含む。第2基材51は、主成分としてPETを含む。例えば、第2基材51は、51質量%以上のPETを含む。
【0074】
第2基材51がPETを含むことにより、第2基材51が耐熱性を有することができる。例えば、第2基材51がナイロンを含む場合に比べて、第2基材51の融点が高くなり、また、第2基材51の吸湿性が低くなる。これにより、輸液容器10を加熱するとき、過熱された水などに起因して、第2基材51に穴が開いてしまうことを抑制することができる。また、PETの耐熱性は、PBTの耐熱性よりも高い。このため、本実施の形態によれば、第2基材51がPBTからなる場合に比べても、積層体30の耐熱性を高めることができる。これにより、例えば、輸液容器10を加熱した時に積層体30がダメージを受けて積層体30の性能が低下することを抑制することができる。
【0075】
また、第2基材51がナイロンを含む場合には、ナイロンから、ナイロンの原料であり、厚生省告示第370号「器具及び容器包装」にて溶出基準が定められているカプロラクタムなどが蓋材13から輸液容器10内に溶出し、内容物に混入するおそれがある。これに対して、本実施の形態によれば、第2基材51をPETで構成することにより、カプロラクタムなどが溶出するおそれを低減することができる。
【0076】
第2基材51の厚みは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第2基材51の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第2基材51の厚みを9μm以上にすることにより、第2基材51が十分な強度を有するようになる。また、第2基材51の厚みを25μm以下にすることにより、第2基材51が優れた成形性を示すようになる。このため、蓋材13を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0077】
(第2接着剤層)
第2接着剤層55は、第2フィルム50と第3フィルム60とを接着するための第2接着剤を含む。第2接着剤の例としては、エーテル系の二液反応型接着剤を挙げることができる。エーテル系の二液反応型接着剤としては、第1接着剤の場合と同様に、ポリウレタンなどを挙げることができる。ポリウレタンは、主剤としてのポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。なお、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールを用いることができるが、ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0078】
イソシアネート化合物としては、上述のように、芳香族系イソシアネート化合物及び脂肪族系イソシアネート化合物が存在する。このうち芳香族系イソシアネート化合物は、加熱殺菌などの高温環境下において、医薬品や食品等の用途で使用できない成分が溶出する。ところで、第2接着剤層55は、
図3に示すように、第3フィルム60に接している。このため、第2接着剤層55が芳香族系イソシアネート化合物を含む場合、芳香族系イソシアネート化合物から溶出された成分が、積層体30によって構成された蓋材13を備える輸液容器10の内容物に付着することがある。
【0079】
このような課題を考慮し、第2接着剤層55を構成する第2接着剤として、主剤としてのポリオールと、硬化剤としての脂肪族系イソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物を用いることを提案する。これにより、第2接着剤層55に起因する医薬品や食品等の用途で使用できない成分が、輸液容器10の内容物に付着することを防止することができる。
【0080】
(第3フィルム)
第3フィルム60は、積層体30の内面30xを構成するシーラント層61を少なくとも含む。
〔シーラント層〕
シーラント層61を構成する材料としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種または2種以上の樹脂を用いることができる。シーラント層61は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラント層61は、未延伸のフィルムから構成されていてもよい。
【0081】
シーラント層61は、積層体30の内面30xを口部12に対して溶着させることによって形成される、第1シール部16のシール強度が、23℃において20N/15mm以下となるよう構成される。言い換えると、シーラント層61は、いわゆるイージーピール性を備える。イージーピール性は、例えば、シーラント層61を2種類以上の樹脂で構成し、一の樹脂と他の樹脂とを非相溶性とすることにより、発現することができる。例えば、シーラント層61は、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む。
【0082】
シーラント層61がイージーピール性を備えることにより、第1シール部16のシール強度を小さくすることができる。このため、蓋材13を用いた容器を使用する際に、より容易に、容器から蓋材13を引き剥がすことができる。
【0083】
シーラント層61は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含んでいてもよい。例えば、シーラント層を構成するフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする未延伸フィルムである。また、シーラント層61は、プロピレン・エチレンランダム共重合体、またはホモポリプロピレンなどのポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0084】
以下、
図1における第1シール部16のシール強度を測定する方法について説明する。
図5は、輸液容器10の蓋材13を拡大して示す底面図であり、シール強度を測定するための試験片90を準備する方法の例を示している。
図5においては、蓋材13の輪郭を実線で表示するとともに、口部12の底面における外縁を破線で表示している。
【0085】
まず、
図5に示すように、口部12に接合されている蓋材13の一部を、第1辺91、第2辺92、第3辺93及び第4辺94を有する略矩形状に切り出して試験片90とする。第1辺91は、蓋材13の外縁の一部である。第2辺92は、第1辺91に対向する辺である。第3辺93は、第1辺91の一端と第2辺92の一端との間に延びる辺であり、第4辺94は、第1辺91の他端と第2辺92の他端との間に延びる辺である。第3辺93及び第4辺94が延びる方向が、試験片90の長手方向となる。
【0086】
試験片90の幅方向(試験片90の長手方向に直交する方向)における第1シール部16の幅S1は、例えば6mmである。試験片90の長手方向における第1シール部16の長さS2は、例えば3mm以上である。また、長手方向における試験片90の長さS3は、例えば10mm以上である。
【0087】
続いて、第1シール部16のシール強度を、JIS Z 0238に準拠して測定する。測定器としては、例えば、オリエンテック社製の引張試験機 RTC-1310Aを用いることができる。
【0088】
まず、試験片90の蓋材13の第2辺92側と、口部12とを、それぞれ、測定器内において対向するつかみ具で把持する。また、対向するつかみ具をそれぞれ、口部12の底面の法線方向において互いに逆向きに、300mm/分の速度で引っ張り、引張応力の最大値を測定する。
【0089】
例えば5個の試験片90について、引張応力の最大値を測定し、その平均値を第1シール部16のシール強度とすることができる。引っ張りを開始する際の、対向するつかみ具間の間隔は例えば12mmであり、引っ張りを終了する際の、対向するつかみ具間の間隔は例えば18mm以上である。
【0090】
〔印刷層〕
上述の通り、第1基材41と第2基材51との間において、印刷層が第1基材41又は第2基材51に設けられていてもよい。印刷層が第1基材41に設けられる場合には、印刷層は第1フィルム40に含まれる。また、印刷層が第2基材51に設けられる場合には、印刷層は第2フィルム50に含まれる。
【0091】
印刷層は、蓋材13に製品情報を示したり、蓋材13に美感を付与したり、蓋材13を視認しやすくしたりするために印刷によって設けられた層である。印刷層は、文字、数字、記号、図形、絵柄などを表現する。印刷層においては、複数の色の層が、同一平面内において広がっている。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキを用いることができる。グラビア印刷用のインキの具体例としては、DICグラフィックス株式会社製のフィナートを挙げることができる。
【0092】
印刷層は、少なくとも部分的にベタ層であってもよい。ベタ層とは、網点の面積率が100%である領域を有する印刷層のことである。ベタ層の例としては、白色の網点の面積率が100%である白ベタ層などを挙げることができる。
【0093】
蓋材13に含まれる積層体が印刷層を有することにより、蓋材13が着色され、蓋材13を視認しやすくなる。そのため、蓋材13を含む容器の使用者が、蓋材13を引き剥がしたかどうかを容易に確認することができる。
【0094】
第1フィルムの製造方法
次に、第1フィルム40の製造方法の一例について説明する。
【0095】
まず、主成分としてPBTを含む樹脂材料を準備する。続いて、キャスト法やチューブラー法などの溶融押出法で樹脂材料を押し出すことにより、フィルム状の第1基材41を作製する。このようにして、第1基材41を備える第1フィルム40を得ることができる。
【0096】
積層体の製造方法
次に、積層体30の製造方法の一例について説明する。
【0097】
まず、上述の第1フィルム40、及び第2フィルム50を準備する。続いて、ドライラミネート法により、第1フィルム40と第2フィルム50とを、第1接着剤層45を介して積層する。その後、ドライラミネート法により、第1フィルム40及び第2フィルム50を含む積層体と、第3フィルム60とを、第2接着剤層55を介して積層する。これによって、第1フィルム40、第2フィルム50及び第3フィルム60を備える積層体30を得ることができる。
【0098】
若しくは、まず第2フィルム50と第3フィルム60とを第2接着剤層55を介して積層し、その後、第1フィルム40と、第2フィルム50及び第3フィルム60を含む積層体とを第1接着剤層45を介して積層することにより、積層体30を製造してもよい。
【0099】
輸液容器の製造方法
上述の積層体30から構成された蓋材13を準備する。また、内部に口栓体14が形成された口部12と袋11とを一体化し、袋11の収容部11cには輸液を充填したものを準備する。続いて、蓋材13を、口部12を塞ぐように配置し、蓋材13と口部12との接触面をヒートシールして、第1シール部16を形成する。このようにして、輸液が収容され封止された輸液容器10を得ることができる。なお、輸液は、輸液容器10を製造した後に、必要に応じて注射針等で口部12から注入することも可能である。
【0100】
以下、本実施の形態に係る輸液容器10の利点について説明する。
【0101】
本実施の形態においては、輸液容器10の蓋材13を構成する積層体30が、PBTを主成分とする第1基材41を含むことにより、下記の効果を奏することができる。
まず、PBTは、印刷適性に優れる。このため、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)の場合と同様に、PBTを含む第1基材41上に印刷層を設けることができる。
また、PBTは、耐熱性に優れる。このため、輸液容器10にレトルト処理やボイル処理などを施す際に第1基材41が変形したり第1基材41の強度が低下したりすることを抑制することができる。
また、PBTは、高い強度を有する。このため、積層体がナイロンを含む場合と同様に、積層体30及び積層体30から構成された蓋材13の突き刺し強度を高めることができる。積層体30の突き刺し強度は、13N以上であることが好ましく、15N以上であることがより好ましく、17N以上であることが更に好ましい。突き刺し強度の測定方法については、後述する実施例1において説明する。
また、PBTは、ナイロンに比べて水分を吸収しにくいという特性を有する。このため、PBTを含む第1基材41を積層体30の外面30yに配置した場合であっても、第1基材41が水分を吸収して積層体30のラミネート強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0102】
また、第2基材51がPBTからなる場合に比べて、積層体30の耐熱性を高めることができる。これにより、例えば、輸液容器10を加熱した時に蓋材13がダメージを受けて蓋材13の性能が低下することを抑制することができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、蓋材13を構成する積層体30のシーラント層61が、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。このため、蓋材13の耐衝撃性や耐突き刺し性を高めることができる。
【0104】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0105】
(層構成の変形例)
上述の本実施の形態においては、第1基材41が51質量%以上のPBTを含み、第2基材51が51質量%以上のPETを含むことによって積層体30の耐突き刺し性及び耐熱性を高める例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1基材41が51質量%以上のPETを含み、第2基材51が51質量%以上のPBTを含むことによって積層体30の耐突き刺し性及び耐熱性を高めてもよい。第2基材51のPBTとしては、上述の第1基材41で説明した第1の構成に係るPBT又は第2の構成に係るPBTを用いることができる。
【0106】
第2基材51が51質量%以上のPBTを含み、第1基材41が51質量%以上のPETを含むことは、積層体30の寸法安定性、印刷適性の向上にも寄与する。
【0107】
また、第2基材51がPBTを含むことにより、第2基材51がPETを含む場合と同様の効果を得ることができる。つまり、第2基材51をPBTで構成することにより、カプロラクタムなどが蓋材13から輸液容器10内に溶出するおそれを低減することができる。
【0108】
また、第1基材41及び第2基材51の両方が、51質量%以上のPBTを含んでいてもよい。この場合のPBTとしても、上述の第1基材41で説明した第1の構成に係るPBT又は第2の構成に係るPBTを用いることができる。
【0109】
第1基材41及び第2基材51を構成する材料の組み合わせの例をまとめて表1に示す。なお、表1において、「PBT」という表記は、第1基材41又は第2基材51のフィルムを構成する樹脂中に51質量%以上のPBTが含まれることを意味する。また、表1において、「PET」という表記は、第1基材41又は第2基材51のフィルムを構成する樹脂中に51質量%以上のPETが含まれることを意味する。
【表1】
【0110】
第1基材41がPETを含むか、PBTを含むかを選択可能な場合には、ヒートシール性の観点からは、第1基材41がPETを含むことが好ましい。PETは、PBTよりも比較的高い融点を有する。よって、蓋材13のより外面30y側に位置する基材である第1基材41がPETを含むことにより、第1基材41の耐熱性がより向上する。以上より、第1シール部16をヒートシールによって形成する場合に、より高温にてヒートシールを行うことが可能となる。
【0111】
(第2の実施の形態に係る積層体)
次に、第2の実施の形態における積層体30について説明する。第3の実施の形態に係る積層体30は、第1基材41又は第2基材51の少なくともいずれか一方に設けられたバリア層80を更に備える点が異なるのみであり、他の構成は、
図3に示す上述の第1の実施の形態に係る積層体30と略同一である。第2の実施の形態に係る積層体30において、第1の実施の形態に係る積層体30と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が第2の実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0112】
図6は、第2の実施の形態における積層体30の一例を示す断面図である。
図6に示す例において、積層体30は、第1基材41の内面30x側の面に設けられたバリア層80を備える。
図7は、第2の実施の形態における蓋材13を構成する積層体30のその他の例を示す断面図である。
図7に示す例において、積層体30は、第2基材51の外面30y側の面に設けられたバリア層80を備える。従って、第3の実施の形態による積層体30は、外面側から内面側へ順に
第1基材/バリア層/第1接着剤層/第2基材/第2接着剤層/シーラント層、
または、
第1基材/第1接着剤層/バリア層/第2基材/第2接着剤層/シーラント層
を備えている、と言える。なお、「/」は層と層の境界を表している。図示はしないが、上述の印刷層がバリア層80と第1接着剤層45との間に設けられていてもよい。
【0113】
〔バリア層〕
以下、バリア層80について説明する。
【0114】
〔透明蒸着層〕
図6及び
図7に示すように、バリア層80は、透明蒸着層81を少なくとも含む。透明蒸着層81は、
図6に示すように第1基材41に設けられるか、又は
図7に示すように第2基材51に設けられる。透明蒸着層81は、従来公知の方法により形成することができる蒸着層からなる層である。透明蒸着層81を備えることで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性を、付与ないし向上させることができる。なお、バリア層80は、透明蒸着層81を2層以上備えていてもよい。バリア層80が透明蒸着層81を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0115】
透明蒸着層81は、無機酸化物の蒸着層からなる。透明蒸着層81としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物の蒸着層を使用することができる。特に、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の蒸着層を備えることが好ましい。
【0116】
無機酸化物の表記は、例えば、SiOX、AlOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1.5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~2、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0117】
透明蒸着層81は、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合を含む無機化合物の混合物からなる層であってもよい。
【0118】
透明蒸着層81を、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合を含む無機化合物の混合物からなる層とする場合において、透明蒸着層81は、X線光電子分光装置(測定条件:X線源AlKα、X線出力120W)を用い、深さ方向にイオンエッチングにより測定したピークにアルミニウム原子と炭素原子の共有結合の存在を示し、また、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等の透過を妨げるガスバリア性を有してもよい。
【0119】
透明蒸着層81と、第1基材41又は第2基材51との界面には、金属原子と炭素原子の共有結合が形成されていてもよい。例えば、透明蒸着層81が酸化アルミニウムを含む場合、第1基材41又は第2基材51と透明蒸着層81との界面には、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合が形成されているものとすることができる。共有結合は、X線光電子分光法による測定(以下、略して「XPS測定」という)によって検出され得る。
【0120】
また、透明蒸着層81においては、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合の存在比率が、XPS測定により第1基材41又は第2基材51との界面を測定した場合に観察される炭素原子を含む全結合のうちの0.3%以上且つ30%以下の範囲内であることが好ましい。これにより、透明蒸着層81と第1基材41又は第2基材51との密着性が強化され、透明性も優れ、ガスバリア性の蒸着フィルムとしてバランスのよい性能のものが得られる。
【0121】
アルミニウム原子と炭素原子の共有結合の存在比率が0.3%未満であると、透明蒸着層81の密着性の改善が不十分であり、バリア性を安定して維持することが困難になる。
【0122】
さらに、酸化アルミニウムを主成分とする透明蒸着層81の、AL(アルミニウム)/O(酸素)比が、第1基材41又は第2基材51と透明蒸着層81との界面から、第1基材41又は第2基材51とは反対側の透明蒸着層81の表面に向かって3nmまでの範囲内において、1.0以下であることが好ましい。
透明蒸着層81と第1基材41又は第2基材51との界面から第1基材41又は第2基材51とは反対側の透明蒸着層81の表面に向かう範囲内においてAL/Oの比が1.0を超えると、第1基材41又は第2基材51の透明蒸着層81側の面と透明蒸着層81との密着性が不十分となり、かつアルミニウムの割合が高まり、透明蒸着層81の透明性が低下する。
【0123】
透明蒸着層81の層厚としては、使用する無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50Å以上2000Å以下、好ましくは、100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムあるいは酸化ケイ素の蒸着層の場合には、層厚50Å以上500Å以下、更に、好ましくは、100Å以上300Å以下が望ましいものである。
【0124】
透明蒸着層81は、第1基材41又は第2基材51に以下の形成方法を用いて形成することができる。蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。具体的には、ローラー式蒸着膜成膜装置を用いて、成膜ローラー上において蒸着層を形成することができる。
【0125】
特に、透明蒸着層81と、第1基材41又は第2基材51との界面に、金属原子と炭素原子の共有結合を形成する場合には、透明蒸着層81を形成しようとする第1基材41又は第2基材51の面に対し前処理を施す。前処理は、前処理装置により、0.1Pa以上100Pa以下の減圧環境下において、第1基材41又は第2基材51の面に対してプラズマを供給することにより、行うことができる。プラズマは、アルゴン等の不活性ガス単独又は酸素、窒素、炭酸ガス及びそれらの1種以上のガスとの混合ガスをプラズマ原料ガスとして用い、高周波電圧等による電位差によって、プラズマ原料ガスを励起状態にすることにより、発生させることができる。
【0126】
前処理により、第1基材41又は第2基材51の表面近傍にプラズマを閉じ込めることができる。これにより、基材の表面の形状や、化学的な結合状態や官能基を変化させ、基材の表面の化学的性状を変化させることができる。このことにより、蒸着層の形成時に、第1基材41又は第2基材51と透明蒸着層81との密着性を向上させることが可能となる。
【0127】
〔ガスバリア性塗布膜〕
バリア層80は、ガスバリア性塗布膜82を更に備えてもよい。ガスバリア性塗布膜82は、上記の透明蒸着層81の面上に設けられる。ガスバリア性塗布膜82は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する塗膜である。ガスバリア性塗布膜82は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
【0128】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用することができる。また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものが使用される。
【0129】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他などを使用することができる。本実施の形態において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタンなどを挙げることができる。また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0130】
また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他などのアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他などを挙げることができる。なお、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0131】
上記のガスバリア性組成物を調製する際、例えば、シランカップリング剤などを添加してもよい。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。本実施の形態においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、一種または二種以上を混合して用いてもよい。
【0132】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態においては、積層体30が、第1基材41又は第2基材51の少なくともいずれか一方に設けられたバリア層80を備えている。このため、積層体30から構成される蓋材13のガスバリア性を向上させることができる。
【0133】
本実施の形態においては、輸液容器10の蓋材13として積層体30を用いる例を示したが、積層体30の用途はこれに限定されない。例えば積層体30は、食品や医薬品など、人が口にする等の方法で摂取するものを内容物とする容器の蓋材に用いることができる。内容物の具体例としては、ゼリー、プリン、惣菜、米飯等を挙げることができる。
【0134】
(他の態様)
本発明の他の態様は、
積層体であって、第1基材、第2基材及びイージーピール性を有するシーラント層をこの順で少なくとも備え、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第1基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む、積層体である。
【0135】
本発明の他の態様による積層体において、前記積層体の突き刺し強度が13N以上であってもよい。
【0136】
本発明の他の態様による積層体において、第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、10層以上を含む多層構造部を有していてもよい。
【0137】
本発明の他の態様による積層体において、前記第1基材及び前記第2基材のうち51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む基材は、1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のIV値を有する単層構造からなっていてもよい。
【0138】
本発明の他の態様による積層体において、前記第1基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0139】
本発明の他の態様による積層体において、前記第1基材が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0140】
本発明の他の態様による積層体において、前記第1基材と前記第2基材との間に位置する印刷層を更に備えていてもよい。
【0141】
本発明の他の態様による積層体において、前記シーラント層は、ポリエチレンと、ポリプロピレンとを含んでいてもよい。
【0142】
本発明の他の態様による積層体において、前記第1基材と前記第2基材との間であって、前記第1基材又は前記第2基材の少なくともいずれか一方に設けられた透明蒸着層を少なくとも含むバリア層を更に備えていてもよい。
【0143】
本発明の他の態様による積層体において、前記透明蒸着層が、酸化アルミニウムを含み、前記第1基材又は前記第2基材のうち、前記透明蒸着層の設けられた少なくともいずれか一方と、前記透明蒸着層との界面に、アルミニウム原子と炭素原子の共有結合が形成されていてもよい。
【0144】
本発明の更なる態様は、輸液容器であって、袋と、前記袋に設けられた、樹脂を含む口部と、前記口部に設けられた、積層体を含む蓋材と、を備え、前記積層体は、前記口部側から前記口部とは反対側へ順に第1基材、第2基材及びイージーピール性を有するシーラント層をこの順で少なくとも備え、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第2基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第1基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む、輸液容器である。
【0145】
本発明の更なる態様による輸送容器において、前記積層体は、前記第1基材と前記第2基材との間に位置する印刷層を更に備えていてもよい。
【0146】
本発明の更なる態様による輸送容器において、前記口部と前記蓋材とを接合する第1シール部を更に備え、前記第1シール部の、23℃におけるシール強度が、20N/15mm以下であってもよい。
【実施例】
【0147】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0148】
(実施例1)
上述の第1の構成で説明した、複数の層41aを含み、キャスト法で作製されたフィルム状の第1基材41を準備した。各層41aにおけるPBTの含有率は80%であり、層41aの層数は1024であり、第1基材41の厚みは15μmであった。続いて、フィルム状の第1基材41上に、DICグラフィックス株式会社製のフィナートを用いて印刷層を形成した。
【0149】
また、第2基材51を含むフィルム状の第2フィルム50を準備した。第2基材51としては、100質量%のPETを含むものを用いた。第2基材51の厚みは12μmであった。
【0150】
また、シーラント層61を含むフィルム状の第3フィルム60を準備した。シーラント層61としては、三井化学東セロ製 TAF680Cを用いた。シーラント層61の厚みは50μmであった。
【0151】
次に、第1接着剤層45を介して第1フィルム40と第2フィルム50とをドライラミネート法により積層した。第1接着剤層45としては、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。RU-40は、ポリエステルポリオールを含む。H-4は、脂肪族系イソシアネート化合物を含む。第1接着剤層45の厚みは、3μmであった。
【0152】
次に、第1フィルム40及び第2フィルム50の積層体と、第3フィルム60とをドライラミネート法により積層し、積層体30を得た。第2接着剤層55としては、第1接着剤層45と同様に、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。第2接着剤層55の厚みは、3μmであった。
【0153】
続いて、積層体30の突き刺し強度を、JIS Z1707 7.4に準拠して測定した。測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いた。具体的には、
図8に示すように、固定されている状態の積層体30の試験片に対して、外面30y側から、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針70を、50mm/分(1分あたり50mm)の速度で突き刺し、針70が積層体30を貫通するまでの応力の最大値を測定した。5個以上の試験片について、応力の最大値を測定し、その平均値を積層体30の突き刺し強度とした。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。結果、突き刺し強度は15Nであった。
【0154】
(実施例2)
第1フィルム40の第1基材41として、上述の第2の構成で説明した、100質量%のPBTを含み、PBTの融点が224℃、IV値が1.26dl/gであり、チューブラー法で作製された単層フィルムを用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、積層体30を作製した。第1基材41はPBT及び添加剤のみで構成される単層のフィルムであり、第1基材41の厚みは15μmであった。
【0155】
続いて、実施例1の場合と同様にして、積層体30の突き刺し強度を測定した。結果、突き刺し強度は16Nであった。
【0156】
(実施例3)
実施例1の第1基材41を構成するPBTを第2基材51として用い、実施例1の第2基材51を構成するPETを第1基材41として用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、積層体30を作製した。
【0157】
続いて、実施例1の場合と同様にして、積層体30の突き刺し強度を測定した。結果、突き刺し強度は15Nであった。
【0158】
(実施例4)
実施例2の第1基材41を構成するPBTを第2基材51として用い、実施例2の第2基材51を構成するPETを第1基材41として用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、積層体30を作製した。
【0159】
続いて、実施例1の場合と同様にして、積層体30の突き刺し強度を測定した。結果、突き刺し強度は16Nであった。
【0160】
(比較例1)
第1フィルム40の第1基材41として、100質量%のPETを含む基材を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、積層体30を作製した。第1基材41の厚みは12μmであった。
【0161】
続いて、実施例1の場合と同様にして、積層体30の突き刺し強度を測定した。結果、突き刺し強度は11Nであった。
【0162】
(比較例2)
第2フィルム50の第2基材51として、厚み15μmのナイロンフィルム(興人ホールディングス株式会社製 ボニールW)を用いたこと以外は、比較例1の場合と同様にして、積層体30を作製した。
【0163】
続いて、実施例1の場合と同様にして、積層体30の突き刺し強度を測定した。結果、突き刺し強度は16Nであった。
【0164】
実施例1~4及び比較例1,2の積層体の層構成及び評価結果を、
図9にまとめて示す。
図9において、「層構成」の欄には、接着剤層を除く積層体の構成要素を、外面側の層から順に上から記載している。実施例1~4と比較例1,2の比較から分かるように、第1基材41又は第2基材51がPBTを含むことにより、第1基材41及び第2基材51の両方がPETを含む場合に比べて高く、第2基材がナイロンを含む場合と同程度の突き刺し強度を実現することができた。
【符号の説明】
【0165】
10 輸液容器
11 袋
11a フィルム
11b 第2シール部
11c 収容部
12 口部
13 蓋材
14 口栓体
14a 筒部
15 第3シール部
16 第1シール部
27 開封予定部
30 積層体
40 第1フィルム
41 第1基材
41a 層
45 第1接着剤層
50 第2フィルム
51 第2基材
55 第2接着剤層
60 第3フィルム
61 シーラント層
80 バリア層
81 透明蒸着層
82 ガスバリア性塗布膜
90 試験片
91 第1辺
92 第2辺
93 第3辺
94 第4辺