(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】圧力調整ダンパー
(51)【国際特許分類】
F24F 13/14 20060101AFI20221006BHJP
F24F 1/56 20110101ALI20221006BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20221006BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F24F13/14 D
F24F1/56
F24F13/15 B
F24F13/02 D
(21)【出願番号】P 2018142339
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591224869
【氏名又は名称】クリフ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591023479
【氏名又は名称】ダイダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石井 要憲
(72)【発明者】
【氏名】間宮 啓介
(72)【発明者】
【氏名】仲井 章一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-001344(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0116569(KR,A)
【文献】実開昭60-113437(JP,U)
【文献】特開2002-267034(JP,A)
【文献】特開平06-241551(JP,A)
【文献】特開平01-102240(JP,A)
【文献】実開昭59-049127(JP,U)
【文献】中国実用新案第206036313(CN,U)
【文献】特開2013-050222(JP,A)
【文献】特開2011-038732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/14
F24F 1/56
F24F 13/15
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後両面に開口部を備える枠体の前面開口部に圧力調整用の羽根を開閉自在に装備するとともに、
当該羽根にモーメント調整手段を設けることにより構成した圧力調整ダンパーにおいて、
前記羽根は1または複数の羽根により構成するとともに前記モーメント調整手段は、前記羽根に取り付けたアームと当該アームにバランスウェイトを取り付けるとともに
、 前記羽根の取付面に対する角度を変更するアーム角度調整手段を設けることにより構成したことを特徴とする圧力調整ダンパー。
【請求項2】
前記モーメント調整手段の羽根に取り付けたアームは、1または複数のアームにより構成したことを特徴とする請求項1記載の圧力調整ダンパー。
【請求項3】
前記モーメント調整手段の羽根に取り付けたアームのバランスウェイトは、アームの長さ方向において移動自在に取り付け、その固定位置を調整することができるように構成したことを特徴とする請求項1または2記載の圧力調整ダンパー。
【請求項4】
前記モーメント調整手段のアームの角度調整手段は、折曲部の屈曲角の異なる複数のアームからダンパー調整条件に適合するアームを選択して取付ることにより構成したことを特徴とする請求項1
乃至3
のいずれかに記載の調整ダンパー。
【請求項5】
前記モーメント調整手段のアームの角度調整手段は、アームに装着したラチェット機構によりアームの羽根
の取付面に対する角度を可変自在に構成したことを特徴とする請求項1
乃至3
のいずれかに記載の圧力調整ダンパー。
【請求項6】
前記モーメント調整手段のアームの角度調整手段は、アームに装着した段付座金機構によりアームの羽根
の取付面に対する角度を可変自在に構成したことを特徴とする請求項1
乃至3
のいずれかに記載の圧力調整ダンパー。
【請求項7】
前記羽根にはモーメント調整手段としての羽根の自重を調整することのできるカウンターウェイトを着脱自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする請求項1乃至6
のいずれかに記載の圧力調整ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整ダンパーに係り、そして、本発明の圧力調整ダンパーは、例えばデータセンター空調システムに供されるパッケージ型空調システムのように、屋外に密集配置される室外機の熱交換空気を大気に排気するエアダクトにおいて、エアダクト内部の気圧が所定圧以上に変化することを防ぐことに有効な圧力調整ダンパーである。
【背景技術】
【0002】
屋外に施設された空調室外機の吐出側の圧力が大気圧よりも高くなるような環境下になった場合でも、自動制御により室外機の排気風量を増加させて熱交換排熱を維持し、安定した空調室外機運転を行う発明が特許文献1に開示されている。
【0003】
一方、対象空間内の圧力を調整をする他の技術として、カウンターウェイトを備えた羽で、クリーンルーム等の陽圧空間の余剰空気を逃がす圧力調整ダンパーが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-148769号公報
【文献】実開昭64-1344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッケージ型空調機の室外機(室外装置)を建屋の屋外バルコニー(架台)に施設するとき、同方向からの外風(強風)が室外機に連続して吹き当たることがある。この同方向からの連続した外風とは、季節風(冬季の北風)や一日の中の時間帯における一定方向の風(海からの風)などがある。
【0006】
前記室外機が上下階の両階バルコニーに施設される場合、室外機が吹き出す熱交換排気のショートサーキットを防ぐため、室外機の排気吐出側に、建屋に対向する方向に開口を有する排気用エアダクトを設けるが、エアダクト吐出口に前記外風が連続して当たり続けると、エアダクトにおいて熱交換排気が阻害され、逆流が連続し、室外機における熱交換が正常に行われなくなる不具合が生じる課題がある。
【0007】
この課題の対策として、前記特許文献1における空調機の室外装置200は、室外機がその吹出口側で大気圧よりも圧力が大きくなるような環境下に設置された場合でも安定した空調運転を維持し得る空調機の室外装置の提供を目的とするものである。
【0008】
然るに、当該室外装置200においては、
図18、19に示すように補助ファン(前記ブースターファン)206が必要となるとともに同補助ファン206の駆動制御手段に加えて室外ファン204との制御システムとその作動装置等の組込みが要求され(室外機の改造)、電源系統の追加工事および自動制御工事など高額の設備費が必要となるとともに省エネにもならないものである。
【0009】
さらに、当該室外機装置200における大気の逆流防止は、シャッター208によるものであるが排気通路領域209からの強風環境下の設置には強風による室外機211の排気の逆流は防止することができず、ショートサーキット現象を阻止できないものである。
そして、当該室外装置200を高密度に並べて施設した場合には、前記逆流が阻止されたとしても排熱の排気不良によるショートサーキットのリスクが存在するものである。
【0010】
一方、空間の圧力を逃がして空気の逆流を防止する装置として、特許文献2の微圧調整ダンパーが知られている。前記微圧ダンパーはクリーンルーム等の屋内の清浄な空間で用いられるが、その圧力開放の調整幅は狭く、構成部品点数が多く、長期に渡り日照や風雨、寒暖変化の暴露に耐える耐久性はない。よって、建物の上階バルコニーにおいて長期間使用する場合、ダンパーの部品(ウェイトやビス)が落下により地上の通行人に危険を及ぼす。
【0011】
又、
図15の圧力調整羽根103自体の構成において備えるバランスウエイト121とレバー部120の構成が開示されているが、当該構成から成るモーメント調整手段としては、技術上
図16、17の説明図に示す如く、枠体102と羽根103の支点122からのカウンターウェイト121の固定位置の変更またはその個数の変更により圧力調整羽根103の開きやすさ(力のモーメント)を調整することができる。
【0012】
すなわち、この時の力のモーメントM=F× L(F:力、L:支点122からのカウンターウェイト121の固定位置までの距離)により求めることが出来る。
【0013】
然るに、かかるモーメント調整手段の構成においては、前記レバー部120に対する固定位置の変更には、カウンターウェイト121を固定するビスが必要で、その作業は煩雑であるとともにその固定位置がレバー部120の長さに限定されることになり、調整の余地が狭い欠点がある。
【0014】
又、
図15のレバー部120に対するカウンターウェイト121の個数を変更するモーメント調整手段の場合には、レバー部120に対するカウンターウェイト121の増減には作業に手間が掛かり作業性に乏しい欠点が存在する。
【0015】
因って、本発明は前記特許文献2の微圧調整ダンパー100における前記欠点を解消し、そのモーメント調整手段において、羽根103の開きやすさ(力のモーメント)をレバー部120に対するカウンターウェイト121の固定位置、個数に限定されずに幅広い範囲作動開始圧を所定圧力に調整可能とし、振動による部材の緩みを防ぎ、耐久性と耐候性に優れる素材を採用することでメンテナンス性の高く汎用性の広い圧力調整ダンパーの提供を目的とするものである。
【0016】
そして、かかる圧力調整ダンパーの開発により、特許文献1記載の室外装置200における排気用エアダクトの逆流を解消することのできる圧力調整ダンパーと、当該圧力調整ダンパーを用いた空調設備の排気装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
因って、本発明の前記問題点を解決する手段としての請求項1は、前後両面に開口部を備える枠体の前面開口部に圧力調整用の羽根を開閉自在に装備するとともに、当該羽根にモーメント調整手段を設けることにより構成した圧力調整ダンパーにおいて、前記羽根は1または複数の羽根により構成するとともに前記モーメント調整手段は、前記羽根に取り付けたアームと当該アームにバランスウェイトを取り付けるとともに前記羽根の取付面に対する角度を変更するアーム角度調整手段を設けることにより構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2は、前記請求項1記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記モーメント調整手段の羽根に取り付けたアームは、1または複数のアームにより構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3は、前記請求項1または2記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記モーメント調整手段の羽根に取り付けたアームのバランスウェイトは、アームの長さ方向において移動自在に取り付け、その固定位置を調整することができるように構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項4は、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記モーメント調整手段のアームの鉛直方向の角度調整手段は、任意角度に曲げられた折曲部を備えるアームからダンパー調整条件に適合するアームを選択して取り付けることにより構成したことを特徴とする。
【0021】
請求項5は、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記モーメント調整手段のアームの鉛直方向の角度調整手段は、アームに装着したラチェット機構によりアームの羽根に対する鉛直方向の角度を可変自在に構成したことを特徴とする。
【0022】
請求項6は、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記モーメント調整手段のアームの角度調整手段は、アームに装着した段付座金機構によりアームの羽根に対する鉛直方向の角度を可変自在に構成したことを特徴とする。
【0023】
請求項7は、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の圧力調整ダンパーにおいて、前記羽根にはモーメント調整手段としての羽根の自重を調整することのできるカウンターウェイトを着脱自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1乃至7のいずれかに記載の圧力調整ダンパーによれば、羽根の構成において当該羽根の開きやすさ(力のモーメント)を調整するモーメント調整手段をアーム数やバランスウェイト数の増減による圧力調整にとどまらずアームの羽根の取付面に対する角度調整手段を設けることにより幅広い圧力調整から微調整までの汎用性の高い性能を発揮するとともに圧力調整ダンパーの作動開始における圧力調整作業の簡易、迅速性に加え、屋外における長期運用中の部品(アーム、バランスウェイト、ビス)の脱落を防ぐ耐久性を有する。この耐久性により、圧力調整機構の安定動作と階下の通行人等に対する部品落下事故を防ぐことができる。また、部品点数を少なくすることで、メンテナンスの簡便化にも寄与することができる圧力調整ダンパーを提供することが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明の圧力調整ダンパーの実施例1を示す一部を破断して示す正面図
【
図2】
図2は本発明の圧力調整ダンパーの実施例1を示す一部を破断して示す縦断側面図
【
図3】
図3は本発明の圧力調整ダンパーの実施例2を示す一部を破断して示す正面図
【
図4】
図4は本発明の圧力調整ダンパーの実施例2を示す一部を破断して示す側面図
【
図5】
図5は本発明の圧力調整ダンパーの実施例2を示す一部を破断して示す縦断側面図
【
図6】
図6はアームの角度調整手段の実施例を示す説明図
【
図7】
図7はアームの角度調整手段の実施例を示す説明図
【
図9】
図9(a)、(b)は
図6、7とは別の実施例を示すアームの角度調整手段の実施例を示す説明図
【
図10】
図10は
図6~9とはとは別の実施例を示すアームの角度調整手段の実施例を示す説明図
【
図11】
図11(a)~(c)は
図6~10とはとは別の実施例を示すアームの角度調整手段の実施例を示す説明図
【
図12】
図12は本発明のサーバー室のパッケージ型空調機の室外装置の実施例1を示す説明図
【
図13】
図13は本発明のサーバー室のパッケージ型空調機の室外装置の実施例2を示す建屋に対する取付状態を示す説明図
【
図14】
図14は本発明のサーバー室のパッケージ型空調機の室外装置の実施例2を示す説明図
【
図16】
図16は従来の圧力調整ダンパーにおけるモーメント調整手段の説明図
【
図17】
図17は従来の圧力調整ダンパーにおけるモーメント調整手段の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の圧力調整ダンパーは、前後両面に開口部を備える枠体の前面開口部に圧力調整用の羽根を開閉自在に装備するとともに、当該羽根にモーメント調整手段を設けることにより構成した圧力調整ダンパーにおいて、前記羽根は1または複数の羽根により構成するとともに前記モーメント調整手段は、前記羽根に取り付けたアームと当該アームにバランスウェイトを取り付けるとともに羽根の取付面に対する角度調整手段を設けることにより構成して実施する。
【実施例1】
【0032】
図1、2により本発明の圧力調整ダンパー1の実施例1について説明する。
そして、
図1は同ダンパー1の正面図、
図2は同図の中央縦断側面図である。
【0033】
図1において10は長方形状の枠体から成るケースで当該ケース10の前面開口部10aには、左右両側枠11、12に取り付けた軸受22の回転軸23を介して羽根2を開閉自在に装着するとともに後面開口部10bにはパンチングカバー13を装備することにより構成されている。
【0034】
また、前記羽根2には、その背面に複数個のカウンターウェイト14を着脱自在に取り付けるとともに前面中央に固着したアーム支持台15にアーム3を取り外し自在に取り付け、かつ当該アーム3にはバランスウェイト4を、アーム3の長さ方向に於いて取付位置を可変自在に固定しつつ取り付けることができるように構成されている。
【0035】
尚、前記アーム3はアーム支持台15に対して取付端部3aを取り外し自在に取り付けるためにアーム支持台15に設けた取付穴15aに当該取付端部3aを装入した後、締着ネジ16により締着けつつ固定することができるように構成したが、必要に応じて前記アーム3の取付端部3aをアーム支持台15の取付穴15aに装入した後、これを溶接等の手段にて締着ネジ16を用いずに固着することにより固定して実施することも可能である。
【0036】
17はアーム3に対するバランスウェイト4を固定位置を、アーム3の長さ方向にスライドしつつ固定するための締着ネジ、18はケース10の前面開口部10aの開口縁に添設したパッキン、19は羽根2の取付用支持枠、20は当該支持枠19をケース10の枠体に固着する固定ビス、21はバランスウェイト4の脱落防止用ナットをそれぞれ示すものである。
【0037】
しかして、以上の構成から成る圧力調整ダンパー1は、
図2に示すように所要の建造物の取付枠31に開口した開口部32に対して前記圧力調整ダンパー1のケース10をガスケット33を介して装着することにより構成する。
【実施例2】
【0038】
図3~5は、本発明の圧力調整ダンパー1の実施例2を示すもので、
図1の実施例1に示した圧力調整ダンパー1の構成において、
図1の実施例1の羽根2を2枚の羽根2a、2bをケース10の開口部10aに開閉自在に装着することにより構成したものである。
【0039】
当該2枚の羽根2a、2bによって前記実施例1に於ける羽根2の作用効果を個別的に発揮し、外風圧6に対する開きやすさをより微調整なモーメント調整手段としての作用を備える構成としたものである。
尚、
図3~5に於ける羽根2a、2bの構成及びその他の構成について、
図1、2と同一構成につき同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
また、当該実施例2の圧力調整ダンパー1の各羽根2a、2bには圧力調整上に於いて各羽根2a、2bにはストッパー機構26を設けることにより羽根2a、2bごとに作動状態を制御調整することができるように構成されている。
尚、24は開口部10aに張設した整流板、25は背面開口部10bに設けたサイドプレートである。
【0041】
前記実施例1、2にて説明した圧力調整ダンパー1としては、それぞれ開口部10aに羽根2、2a、2bを開閉自在に装着することにより構成した実施例を示したが、その他の実施例としては、実開昭64-1344号公報記載の微圧調整ダンパー(不図示)を適用することにより実施することも可能である。
尚、かかる実開昭64-1344号公報記載の微圧調整ダンパーについての説明は同公報記載の発明を引用し、その説明と図示は省略するものである。
【0042】
さて、以上の構成から成る圧力調整ダンパー1に於いては、外風圧30に対するモーメント調整手段としての作用を、前記ケース10に装着した羽根2により達成するものであるが、かかる作用構成を
図8により具体的に説明する。
【0043】
先ず、前記圧力調整ダンパー1の羽根2の自重(羽根重量)により
図8の外風圧30を避圧することができるが、前記
図1に於ける羽根2にはアーム3を取り付けるとともに当該アーム3にはバランスウェイト4を、固定位置を移動自在に取り付け、かつこれを着脱自在としたり、これの個数の増減を自在にする構成が可能である。
さらに、前記羽根2の背面には、複数のカウンターウェイト14を、着脱かつ個数を増減自在に取り付ける構成を説明
することができる。
【0044】
しかし、羽根2による外風圧30の避圧をしつつ前記圧力調整ダンパー1のケース10に設けた開口部10aを介して排出するものであるが、前記したように羽根2によるモーメント調整手段の作用構成手段としては
図1に示すように羽根2とアーム3並びにこれとのバランスウェイト4とその取付位置の変更により調整することにより構成することができる。
【0045】
バランスウェイト4とその取付位置は、事前にエアダクト内圧力値とバランスウェイト4位置の相関グラフを製作しておくことで、任意の圧力調整設定をすることができる。
【0046】
すなわち、羽根2の自重による圧力調整に加えてアーム3の取付、これに対するバランスウェイト4の取付とその取付位置の変更またはバランスウェイト4の取付個数の変更により、圧力調整ダンパー1の外風圧30に対する開きやすさ(力のモーメント)を調整することができる。
【0047】
しかし、かかる構成からのモーメント調整手段によっては、前記アーム3に対してバランスウェイト4の固定には締着ネジ17が必要であるとともにその取付位置による調整には、取付位置の変更作業が要求されるとともに取付位置はアーム3の長さ範囲に限定されることになる。
【0048】
よって、
図1のモーメント調整手段の構成と作業に於ける欠点をアーム3の羽根2の取付面に対する角度を
図8に示すバランスウェイト4のウェイト位置Aとウェイト位置B間のアーム3の角度3Aを変更することによって前記外風圧30に対する羽根2の開きやすさ(力のモーメントM)が変化し(すなわち羽根2の開きやすさが変化)、それと同時に幅広い範囲の圧力調整と圧力調整ダンパー1の作動開始圧を無段階に調整可能とし、モーメント調整幅を広く確保できることで圧力調整範囲幅を広くすることができる。
【0049】
尚、
図8において、前記羽根2の開きやすさを力のモーメントMとすると、力のモーメントM=F × L(F:力、L:支点(軸)からの距離)によって求められるとともに
図8においても、力のモーメントM=F × L(F:力、F
A、F
B:羽根重量とウェイトバランス取付位置AまたはBのウェイト重量の合計、L:支点からの距離、L
A、L
B:ウェイトバランス位置AまたはBの時の支点からの距離)によりそれぞれ求めることができる。
【0050】
また、前記アーム3に於けるバランスウェイト4のウェイト位置Aからウェイト位置Bまでのアーム3の角度3Aを変更する具体的構成手段については、
図6、7の実施例3において具体的に説明する。
【0051】
尚、
図2においては、羽根2の背面に着脱自在に取り付けたカウンターウェイト14によって羽根2の自重を変更することができ、当該構成も前記外風圧30に対するモーメント調整手段として作用するものであることは言うまでもない。
【実施例3】
【0052】
図6、7は本発明の圧力調整ダンパー1の実施例3を示すもので、特に
図8にて説明したアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度3A(
図8のバランスウェイト位置Aとバランスウェイト位置Bの角度を参照)を変更することによって、外風圧30に対する羽根2の開きやすさを無段階的に調整することができる。
【0053】
従って、前記角度3Aを調整するアーム3の角度調整手段としての具体的な構成の実施例を示すものである。
【0054】
而して、
図6、7はその角度調整手段として羽根2の取付面に対するアーム3の取付用支持台15とアーム3間にラチェット機構27を介装することによりアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度3A(
図8のウェイト位Aとウェイト位置B間の角度3A)を調整しつつ強固に固定することができるように構成したものである。
【0055】
すなわち
図6において圧力調整ダンパー1の羽根2に対するアーム3の支持台15との取付部側のアーム3の基部3bにラチェット爪28を設けるとともにラチェットギア29をアーム3のバランスウェイト4の取付部3cに設けることによりアーム3の基部3bとバランスウェイト4の取付部3c間にラチェット機構27を介装することによりアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度調整手段を構成したものである。
【0056】
また、
図6のラチェット機構27においては、例えばバランスウェイト4の位置を羽根2の取付面2Aに対する角度3Aを0°、30°、-30°、-60°、-90°の5段階に調整する実施例を挙げることができる。
【0057】
尚、ラチェット機構27の構成については従来公知のラチェットを使用することができ、ラチェットギア29は一方向にのみ回転可能とするとともにラチェット爪28はON、OFFの切替レバー28aによりラチェットギア29の回転を制御することができる。
【実施例4】
【0058】
図9、10は、前記実施例3の圧力調整ダンパー1の構成に於けるアーム3の鉛直方向の角度調整手段としてのラチェット機構27による実施に換えて、段付座金機構60による実施例を示すものである。
【0059】
すなわち、
図9は羽根2に取り付ける前記アーム3を、
図9(a)に示す一対の羽子板ボルト61、62によって構成するとともに当該一対の羽子板ボルト61、62の羽子板部61a、62aを枢着ボルト63によって枢着し、さらにこの枢着部64に段付座金機構60を介装することにより羽子板ボルト61(アーム3の基部3b)に対して羽子板ボルト62(バランスウェイト4の取付部3c)を角度可変に連結することにより構成したもので、これによりアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度3Aを無段階的に可変可能に構成したものである。
【0060】
そして、
図9(b)に示す如く前記羽子板ボルト61、62の枢着ボルト63による羽子板部61a、62a間の枢着部64に介装される段付座金機構60は、羽子板部61a、62a間にワッシャー65~67を介装するとともに最外側にそれぞれスプリングワッシャー68、69を介装し、さらにこれを締付するダブルナット70、71を枢着ボルト63に螺着することにより構成されている。
【0061】
すなわち、羽子板部61a、62aの枢着部64をダブルナット70、71の締着力を弛緩しつつ羽子板ボルト61に対する羽子板ボルト62の角度を可変調整した後、これを所要角度に調整固定することによりアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度3Aを調整することができるように構成し、所要の角度調整手段としての作用効果を得ることができる。
【0062】
尚、
図9(a)のアーム3の構成については、具体的な図示を省略したが、前記実施例1~3に於ける構成と同一の構成により実施するもので、アーム3の取付端部3aとしての羽子板ボルト61のボルト部61b端部61cは、羽根2の支持台15に設けた取付穴15aに対して着脱自在に取り付ける場合には支持台15の取付穴15aに螺子穴(不図示)を設け、ボルト部61bの端部61cを螺着することにより取り付け、また脱着自在の実施が不必要な場合には取付穴15aに対して端部61Cを溶接等の手段にて固着することにより実施する。
【0063】
また、羽子板ボルト62のボルト部62bにはバランスウェイト4をボルト部62bの螺子の長さ方向に螺進自在(移動自在)に取り付けて実施することができる。
【0064】
尚、これらの構成についての具体的な実施例については、後述する
図10の実施例によって明示するものである。
【0065】
図9(b)中の72は、枢着ボルト63の端部63aに固着した板止めナットを示すものである。
【0066】
次に
図10に示したのは、
図9の段付座金機構60のスプリングワッシャー68、69およびワッシャー65~67の構成に換えて
図9(a)図示の一対の羽子板ボルト61、62の羽子板部61a、62aの対向面に緩み止めワッシャー73、74を介装することにより段付座金機構60を構成した実施例を示すものである。
【0067】
そして、
図10には、
図9(a)、(b)の実施例にて説明した構成については同一番号を付しその説明を省略する。
【0068】
尚、
図10の73、74は羽子板ボルト62のボルト部62bに取り付けたバランスウェイト4をボルト部62bの長さ方向に移動調整自在に固定するナットを示すものである。
【0069】
よって、
図10の一対の羽子板ボルト61、62にて構成したアーム3は羽根2の支持台15に対してアーム3の取り付け端部3aとなる羽子板ボルト61の端部61cを支持台15の取付穴15aに装着することにより取り付ける。
【0070】
そして、段付座金機構60を構成する羽子板ボルト61、62の羽子板部61a、62aの対向面に介装した緩み止めワッシャー73、74をダブルナット70、71によって枢着ボルト63のボルト頭63aに締着することにより羽子板ボルト61、62の羽子板部61a、62aの枢着部64を固定することができる。
【0071】
かかる固定状態を前記枢着ボルト63のダブルナット70、71による締着力を弛めつつ羽子板ボルト62を羽根2の取付面2A方向に回動することにより羽子板ボルト62の羽根2の取付面2Aに対する角度3A(アームの鉛直方向の角度)を可変することができる。
【0072】
すなわち、羽子板ボルト62の回動操作によりアーム3のバランスウェイト4の取付部3cの羽根2の取付面2Aに対する角度3Aを調整することができる。
【0073】
そして、前記羽子板ボルト62の回動操作とその調整により当該羽子板ボルト62を所要角度に調整した後、再度前記ダブルナット70、71により羽子板部61a、62bの枢着部64を緩み止めワッシャー73、74を介して締着することによりアーム3の羽根2の取付面2Aに対する所要角度による取り付け操作を達成することができるとともに、これまでの説明によるアーム3の角度調整手段によって達成することのできる同一の作用効果をも達成することができる。
【実施例5】
【0074】
図11は、前記してきた圧力調整ダンパー1の構成に於ける角度調整手段の実施例とは別の実施例を示すものである。
【0075】
また、
図11(a)~(c)は、圧力調整ダンパー1の構成に於ける羽根2の支持台15に着脱自在に装着することができるように構成したアーム3の要部を示す説明図である。
【0076】
図11(a)~(c)の各アーム3により各折曲部80の角度によって前記してきた圧力調整ダンパー1の構成に於いて
図8に於けるアーム3の羽根2の取付面2Aに対する角度3A(すなわちアーム3の鉛直方向の角度)を調整することができるとともに
図11(a)~(c)の各アーム3を用意しておき、圧力調整ダンパー1に要求される圧力調整の必要に応じて各アーム3(圧力調整ダンパー1のダンパー調整条件に適合するアーム3)を選択して羽根2の支持台15に取り付けて実施することにより、各アーム3の折曲部80の角度に対応する所要の圧力調整作用効果を得ることができる。
【0077】
尚、当該実施例は必要な角度を持った折曲部80を備える複数のアーム3が要求されると同時にそのアーム3の差し替え作業操作が要求されることになるので、予め実施する圧力調整ダンパー1に要求される圧力調整可能範囲を備える折曲角度のアーム3を固定して構成し、その他のモーメント調整手段にて調整しつつ実施することが好適である。
【実施例6】
【0078】
図12、13は前記した実施例1~3の圧力調整ダンパー1を使用して空調機の排気装置を構成する場合の実施例を示すもので、
図12は室外装置としての実施例を示す説明図である。
【0079】
図12において排気装置40は、建屋バルコニーにパッケージ型空調機の室外機41に施設した実施例を示すもので、当該室外機41には屋外排出用開口42と室外機用排気出口41aとの接続用開口43を備えるダクト部材(L型ダクト)44を設けてある。ダクト部材44は、建屋に対向する方向に屋外排出用開口42を有する。
【0080】
そして、前記ダクト部材44の屋外排出用開口42との対向面となる側壁部45に前記実施例1~3にて説明したモーメント調整手段を備える圧力調整ダンパー1を装備することにより排気装置40を構成する。
【0081】
また、
図13は
図12の排気装置40をデータセンターの建物50の各階バルコニー51に設置した実施例を示すものである。
【0082】
因って、
図12の排気装置40によれば室外機41による各階室外機からの吸気52は室外機41で熱交換排気ダクト部材44を介して屋外53に排気される。
【0083】
そして、排気装置40に対する屋外53の無風あるいは弱風時にはダクト部材44の排出用開口42より問題なく外部に排出することができるが、強風時には室外機41による排気が強風によって押し戻されることになる。
【0084】
しかし、本発明の圧力調整ダンパー1を採用した排気装置40によれば、ダクト部材44の排出用開口42の対向面の側壁部45に圧力調整ダンパー1を設けてあるので、当該圧力調整ダンパー1の羽根2によるモーメント調整手段によって圧力調整ダンパー1の開口部10aより強風により押し戻される排気を排出することができ、ダクト部材44内の圧力を大気圧に近い所定の圧力付近に維持することで、排気装置40は正常に熱交換排気を排出用開口42から外部へ排気し、ショートサーキット現象を阻止することができる。
【0085】
従って、排気装置40の室外機41に対する強風時の排気の逆流による排熱の逆流を圧力調整ダンパー1によって回避しつつ室外機41のパッケージ型空調機における高温異常警報の発報を防止することができる。
【0086】
すなわち、高温異常警報が発報するとパッケージ型空調機は停止または能力低下を起こすので同時に複数台の空調機で警報が発報するとデータセンター室内のサーバー機器の冷却ができずにサーバー機器が異常停止して深刻な影響を及ぼすことになるが、この問題をも本発明の圧力調整ダンパー1を採用した排気装置40により解決することができるものである。
【実施例7】
【0087】
図14は、前記実施例4の排気装置40のダクト部材44による構成に換えて、パッケージ型空調機の室外機41の上部に設けた消音チャンバー46により構成した実施例を示したものである。
【0088】
消音チャンバー46における構成中、実施例6のダクト部材44と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。
【0089】
そして、作用効果についても実施例6と同一の作用効果を得ることができその説明については省略する。
【符号の説明】
【0090】
1 圧力調整ダンパー
2、2a、2b 羽根
2A アームの取付面
3 アーム
3A アーム3の角度
3a アームの取付端部
3b 基部
3c 取付部
4 バランスウェイト
10 ケース
10a 前側開口部
10b 後側開口部
11 右側枠
12 左側枠
13 パンチングカバー
14 カウンターウェイト
15 支持台
15a 取付穴
16、17 締着ネジ
18 パッキン
19 支持枠
20 固定ビス
21 脱落防止ナット
22 軸受
23 回転軸
24 整流板
25 サイドプレート
26 ストッパー機構
27 ラチェット機構
28 ラチェット爪
29 ラチェットギア
30 外風圧
31 取付枠
32 開口部
40 排気装置
41 室外機
41a 室外機用排出口
42 屋外排出用開口
43 接続用開口
44 ダクト部材
45 側壁部
46 消音チャンバー
50 建物
51 バルコニー
52 吸気
53 屋外
60 段付座金機構
61、62 羽子板ボルト
61a、62a 羽子板部
61b、62b ボルト部
61c ボルト端部
63 枢着ボルト
64 枢着部
65~67 ワッシャー
68、69 スプリングワッシャー
70、71 ダブルナット
72 板止めナット
73、74 緩み止めワッシャー
80 折曲部
81 角度調整部