(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】トンネル覆工施工システム、トンネル覆工施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
E21D11/10 A
(21)【出願番号】P 2018186547
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山本 将
(72)【発明者】
【氏名】木村 厚之
(72)【発明者】
【氏名】前田 全規
(72)【発明者】
【氏名】楠本 太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 勝之
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴之
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-212896(JP,A)
【文献】特開2015-090031(JP,A)
【文献】特開2018-035632(JP,A)
【文献】特開平07-091192(JP,A)
【文献】特開平04-030096(JP,A)
【文献】特開平06-221092(JP,A)
【文献】特開昭54-125837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0204372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートと覆工型枠の間にコンクリートを打込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムであって、
前記覆工型枠の妻型枠
において周方向に間隔を空けて複数設けられた打込み口の
いずれかに接続して前記コンクリートを打込む打込みノズルと、
前記防水シート表面と前記覆工型枠に複数設けられ、前記打込まれるコンクリートの打込み状況を前記設けられた位置において測定するセンサと、
前記トンネルの周方向に沿って設けられる打込みノズル移動ガイドと、
前記打込みノズル移動ガイドに沿って前記打込みノズルを前記トンネルの周方向に移動させる移動機構と、
前記覆工型枠の下端部から天端部側のうち、前記移動機構によって前記打込みノズルを、前記センサが設けられた位置における当該センサの検出結果に基づく打込み状況に応じた高さ
の打込み口に移動させ
てから接続し吹き上げ方式によって前記コンクリートの打込みをする稼働制御部と
を有するトンネル覆工施工システム。
【請求項2】
前記打込み口は、前記下端部から前記天端部までの間に複数設けられるとともに、それぞれ開閉シャッターが設けられ、
前記稼働制御部は、前記打込み対象の打込み口の前記開閉シャッターを開けて
前記打込み口に接続された前記打込みノズルからコンクリートの打込みを行
い、当該接続された打込み口よりも高さ方向において1つ上方の打込み口に到達すると前記開閉シャッターを閉じ、
前記1つ上方の打込み口である打込み対象の打込み口の高さに前記打込みノズルを移動させる
請求項1に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項3】
前記コンクリートの打込みを停止する停止指示を入力する停止指示入力部を有し、
前記稼働制御部は、前記打込みノズルから前記コンクリートの打込み途中において前記停止指示が入力されると前記コンクリートの打込みを停止する
請求項1または請求項2に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項4】
前記稼働制御部は、前記覆工型枠が前記トンネルの長手方向に沿った軸であるトンネル軸に沿って切羽側に移動される毎に前記コンクリートの打込みをする
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項5】
前記覆工型枠に複数設けられ前記コンクリートに振動を与える加振器を有し、
前記稼働制御部は、前記複数のセンサの測定結果に基づく打込み状況に応じて、前記複数の加振器のうち稼働させる加振器を選択し、選択された加振器を稼働させる
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のトンネル覆工施工システム。
【請求項6】
防水シートと覆工型枠の間にコンクリートを打込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムにおけるトンネル覆工施工方法であって、
前記トンネル覆工施工システムにおける制御装置が、コンクリートの打込み順序を表す打設制御パターンに基づいて、覆工型枠
の妻型枠において周方向に間隔を空けて複数設けられた打込み口のなかから、打込み対象の箇所に応じた打込み口を特定し、
前記制御装置が、前
記周方向に沿って設けられる打込みノズル移動ガイドに沿って、コンクリートを打込む打込みノズルを、前記特定された打込み口に対応する
高さまで移動機構によって移動させ
てから前記打込み口に接続して吹き上げ方式によって前記コンクリートの打込みをし、
前記制御装置が、前記防水シート表面と前記覆工型枠に複数設けられるセンサによって、前記打込まれるコンクリートの打込み状況を前記センサが設けられた位置において測定された測定結果を取得し、
前記制御装置が、前記測定結果に基づいて、前記打込み対象の箇所におけるコンクリートの打込み
の高さが
前記接続された打込み口よりも高さ方向において1つ上方の打込み口に到達した場合に、前記1つ上方の打込み口の高さに前記打込みノズルを移動させて
から当該1つ上方の打込み口に接続し吹き上げ方式によって前記コンクリートを打込む
トンネル覆工施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工施工システム、トンネル覆工施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中流動覆工コンクリートは、一般に、流動性に優れ、材料分離がないフレッシュコンクリートを移動型枠内に打込み、型枠バイブレータで締固めることで施工される。フレッシュコンクリートは、例えば、トラックミキサー車1台当たり例えば4m3を、移動型枠内左右に2m3ずつを目安にして、交互に打込みされる。このようなコンクリートの打込みを行うにあたり、作業員は、移動型枠に設けられた打込み口のうち、打込み対象となる打込み口に打込みノズルをつなぎ、コンクリートポンプ車の操作者と連携することで、コンクリートポンプ車からコンクリートを打込む。また、作業員は、コンクリートの打込みとは並行して、締固めを行う作業員と連携し、バイブレータ装置を駆動させる。締固めを行う作業員は、バイブレータ装置を駆動させ、コンクリートの締固めを行う。作業員は、打込まれたコンクリートの高さが、打込み口から所定の高さに近づいたことを確認すると、現在の打込み口よりも高い位置にある打込み口に打込みノズルを継ぎ替えを行い、これらの作業を繰り返すことで、順次、下端部から天端部まで打込みを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業員は、打込みノズルの継ぎ替えを行うだけでなく、コンクリートを打設するための各種機械の動作状況や、打設された高さの確認を行いつつ、品質向上のための作業も行う必要がある。また、複数の作業員が連携して作業を行うことも必要であり、連絡、調整、確認に時間を要する。また、打込みノズルの継ぎ替えの際、配管洗浄を行う必要もあり、このような作業は、移動型枠空間内の狭い領域で行う必要があり、大きな労力を要する。このように、作業員が行う作業の種類は多く、作業量も多い。そのため、コンクリート打設における作業員の作業効率を向上させることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、コンクリート打設における作業員の作業効率を向上させることができるトンネル覆工施工システム、トンネル覆工施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、防水シートと覆工型枠の間にコンクリートを打込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムであって、前記覆工型枠の妻型枠において周方向に間隔を空けて複数設けられた打込み口のいずれかに接続して前記コンクリートを打込む打込みノズルと、前記防水シート表面と前記覆工型枠に複数設けられ、前記打込まれるコンクリートの打込み状況を前記設けられた位置において測定するセンサと、前記トンネルの周方向に沿って設けられる打込みノズル移動ガイドと、前記打込みノズル移動ガイドに沿って前記打込みノズルを前記トンネルの周方向に移動させる移動機構と、前記覆工型枠の下端部から天端部側のうち、前記移動機構によって前記打込みノズルを、前記センサが設けられた位置における当該センサの検出結果に基づく打込み状況に応じた高さの打込み口に移動させてから接続し吹き上げ方式によって前記コンクリートの打込みをする稼働制御部とを有する。
【0007】
また、本発明は、防水シートと覆工型枠の間にコンクリートを打込んでトンネルの覆工を構築するトンネル覆工施工システムにおけるトンネル覆工施工方法であって、前記トンネル覆工施工システムにおける制御装置が、コンクリートの打込み順序を表す打設制御パターンに基づいて、覆工型枠の妻型枠において周方向に間隔を空けて複数設けられた打込み口のなかから、打込み対象の箇所に応じた打込み口を特定し、前記制御装置が、前記周方向に沿って設けられる打込みノズル移動ガイドに沿って、コンクリートを打込む打込みノズルを、前記特定された打込み口に対応する高さまで移動機構によって移動させてから前記打込み口に接続して吹き上げ方式によって前記コンクリートの打込みをし、前記制御装置が、前記防水シート表面と前記覆工型枠に複数設けられるセンサによって、前記打込まれるコンクリートの打込み状況を前記センサが設けられた位置において測定された測定結果を取得し、前記制御装置が、前記測定結果に基づいて、前記打込み対象の箇所におけるコンクリートの打込みの高さが前記接続された打込み口よりも高さ方向において1つ上方の打込み口に到達した場合に、前記1つ上方の打込み口の高さに前記打込みノズルを移動させてから当該1つ上方の打込み口に接続し吹き上げ方式によって前記コンクリートを打込むトンネル覆工施工方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、打込み順序が規定された打設制御パターンにしたがって、複数ある打込み口のなかから、打込み対象の打込み口を特定し、覆工型枠に複数設けられるセンサによって、打込まれるコンクリートの打込み状況を検出し、測定結果に基づいて、打込み対象の箇所におけるコンクリートの打込みが終了したと判定すると、覆工型枠の下端部から天端部側のうち、センサの検出結果に基づく打込み状況に応じた高さに打込みノズルをノズル移動ガイドに沿って移動機構によって移動させて、次の打込み対象の打込み口からコンクリートを打込むようにした。これにより、複数の作業員が連携して行っていた作業の一部をコンピュータを用いたシステム化をすることが可能となる。よって、コンクリート打設における作業員の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態によるトンネル覆工施工システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】トンネル覆工施工システム1のうち移動型枠10とその近傍を表す概略斜視図である。
【
図4A】移動型枠10と、移動型枠10および防水シート表面に取り付けられるセンサ20及び加振器30、打込み口11について説明する構成図である。
【
図4B】移動型枠10と、移動型枠10および防水シート表面に取り付けられるセンサ20及び加振器30、打込み口11について説明する構成図である。
【
図5】記憶部53に記憶される打設制御パターンの一例を示す図である。
【
図6】打設制御パターンに含まれる情報の一つであって、加振器30を振動させるパターンを表す加振パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるトンネル覆工施工システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態によるトンネル覆工施工システム1の構成を示す概略ブロック図である。トンネル覆工施工システム1は、防水シートと覆工型枠(セントル)の間にコンクリートを打込んでトンネルの覆工を構築する施工管理を支援するシステムである。コンクリートとしては、例えば、中流動覆工コンクリートを用いることができる。このトンネル覆工施工システム1において、移動型枠10は、切羽側10a(妻側ともいう)と坑口側10b(既設覆工側、ラップ側ともいう)とがある。移動型枠10は、覆工型枠の一例である。移動型枠10は、トンネルの長手方向に沿った軸であるトンネル軸の方向から見た形状は、アーチ状である。
【0011】
打込み口11は、移動型枠10において切羽側10aに設けられる。この打込み口11は、切羽側10aにおいて、トンネルの長手方向に沿った軸であるトンネル軸を基準とした周方向に沿って複数設けられる。
センサ20は、防水シート表面と移動型枠10に複数に設けられ、打込まれるコンクリートの打込み状況を、自センサ20が設けられた位置において測定する。打込み状況としては、コンクリートの表面高さ、移動型枠10の側面における側圧、移動型枠10の各部における温度と圧力、加速度等がある。この複数のセンサ20は、移動型枠10における高さ方向においてそれぞれ異なる位置に設けられる。センサ20は、コンクリートに接触したか否かを検出するコンクリートセンサ(例えば後述するコンクリートセンサcL1~cL16、cR1~cR16)、加速度センサ、圧力温度センサのそれぞれが複数設けられる。
【0012】
型枠バイブレータ(以下、加振器と称する)30は、移動型枠10に複数設けられ、稼働することにより移動型枠10を介してコンクリートに振動を与える。加振器30は、移動型枠10の内周面側(移動型枠10の防水シートに向く面とは反対側の面)に設けられる。加振器30は、移動型枠10における高さ方向においてそれぞれ異なる位置に設けられる。また、加振器30は、移動型枠10の坑口側と切羽側との間においてトンネル軸に沿って複数設けられるとともに、移動型枠10においてトンネル軸を基準とした周方向に沿って複数設けられる。
【0013】
打込みノズル32は、移動型枠10の切羽側10aに設けられた打込み口11からコンクリートを打込む。
打込みノズル移動ガイド33は、移動型枠10の切羽側10aにおいてトンネルの周方向に沿って設けられる。この打込みノズル移動ガイド33には、打込みノズル32を当該打込みノズル移動ガイド33に沿って周方向に移動させる移動機構が設けられる。
【0014】
操作盤40は、各センサ20の検出結果を取得する機能、作業者からの操作入力を受け付ける複数の操作ボタン、制御装置50から出力される情報を受信する機能、各種情報を表示する表示パネル41、コンピュータ60と通信をする機能を含む。表示パネル41は、各種情報を表示することができ、例えば、各センサ20が設けられた位置における当該センサの測定結果に基づく打込み状況と、各加振器30が設けられた位置における加振器の稼働状況を表示する。表示パネル41は、例えば、液晶表示装置を用いることができる。
【0015】
制御装置50は、操作盤40と各加振器30に接続されており、各センサ20の測定結果を操作盤40を介して取得するとともに、各加振器30に駆動信号を供給することで加振器30を駆動させる機能を有する。制御装置50は、稼働制御部51と選択部52と記憶部53とを有する。
稼働制御部51は、移動型枠10における各部を制御する。たとえば、稼働制御部51は、センサ20(特にコンクリートセンサ)からの検出結果に基づいて、コンクリートの打込み速度を検出する。例えば、異なる高さに設置されたコンクリートセンサの検出結果に基づいて、低い位置に設置されたコンクリートセンサによってコンクリートが到達したことが検出された時刻と高い位置に設置されたコンクリートセンサによってコンクリートが到達したことが検出された時刻との差と、これらのコンクリートセンサの高さの差とに基づいて、コンクリートの打込み速度を算出する。例えば、稼働制御部51は、このコンクリートの打込み速度が打込み高1.5~2.0m/h、12~16m3/h程度となるように打込み速度を制御する。
稼働制御部51は、各センサ20の測定結果に基づく打込み状況に応じて、打込まれたコンクリートの高さ方向の位置がいずれであるかを判定し、打込まれたコンクリートの高さ方向の位置に対応して稼働させる加振器30を選択し、選択された加振器30に対して駆動信号を供給することで稼働させる加振器制御機能を有する。
また、稼働制御部51は、移動型枠10の下端部から天端部側のうち、移動機構によって打込みノズル32を、センサ20が設けられた位置における当該センサの検出結果に基づく打込み状況に応じた高さに移動させてコンクリートの打込みをする打込みノズル移動制御機能を有する。
【0016】
選択部52は、打込み状況に基づいて、移動型枠10に複数設けられコンクリートを打込むための打込み口11のうち、いずれの打込み口からコンクリートを打込むかを打設制御パターンに基づいて選択し、選択結果を外部に出力する。出力先となる外部としては、例えば、操作盤40であり、選択結果を表示パネル41にさせることができる。例えば、コンクリートを打込む作業員は、表示パネル41に表示された選択結果を確認することで、選択結果に応じた打込み口11からコンクリートを打込むか否かを確認や判断をした上で、打込み指示を入力することができる。
【0017】
記憶部53は、打設制御パターンを記憶するとともに、各種稼働結果(各センサ20の測定結果及び各加振器30の稼働結果等)を記憶する。記憶部53に記憶される情報を参照することで、打設状況の履歴を把握するだけでなく、コンクリートの打ち止めと脱型枠強度を数値化、可視化することも可能となり、覆工品質の確認を容易に行うことが可能である。
【0018】
コンピュータ60は、操作盤40に接続されるとともに、ネットワーク70に接続され、操作盤40の表示パネル41に表示される画面データを外部に送信することが可能である。また、コンピュータ60は、外部(端末装置80)からの操作入力データをネットワーク70を介して受信し、操作盤40に出力する。この操作入力データに基づいて、操作盤40が操作入力データに応じた各種操作内容に応じた処理を実行することが可能である。
【0019】
ネットワーク70は、例えばインターネットや公衆回線網であり、有線や無線であってもよい。
端末装置80は、ネットワーク70を介してコンピュータ60と通信することで、操作盤40の表示パネル41の表示内容を、端末装置80の画面上に表示する。また、端末装置80のタッチパネルやキーボードなどの入力デバイスを介して作業員からの操作に応じて操作入力データの入力を受け付けることで、作業者が操作盤40から離れた場所において操作盤40に対する操作が可能である。端末装置80は、コンピュータやタブレット端末、スマートフォン等であってもよい。すなわち、端末装置80は、操作盤40における各種データの出力や操作指示の入力を遠隔地から行うこともできる。
【0020】
図2は、トンネル覆工施工システム1のうち移動型枠10とその近傍を表す概略斜視図であり、
図3は、打込み口11近傍を拡大した拡大図である。
打込みに用いられるコンクリート100は、中流動コンクリートである。中流動コンクリートは、流動性に優れ、材料分離がなく、型枠バイブレータを用いて加振することで、コンクリート表面は水平状態にすることができるという特性がある。この実施形態におけるコンクリートの打込みは、この特性を活かし、切羽側10aに設けられた打込み口11から吹き上げ方式で行われる。すなわち、切羽側10aからコンクリートを打込んだとしても、加振することで、コンクリートの上面は切羽側10a側から抗口側10bの間において、切羽側10aに偏ることがなく、水平状態にすることが可能である。
【0021】
中流動コンクリートの打込みは、妻型枠一体型コンクリート打込み装置及びマニピュレータを用いることができる。打込み口11は、移動型枠10の切羽側妻型枠に複数設けられる。例えば、打込み口11は、トンネル周方向に最大2.0m間隔、移動型枠10の左右それぞれ4箇所とトンネル中心の天端部1箇所の合計9箇所に設けられる。
妻型枠一体型コンクリート打込み装置は、トンネル半径方向に可動する妻板部と、妻板打込み口部ならびに打込みノズル、打込みノズル移動装置と打込みノズル移動ガイドから構成され、マニピュレータは、可動配管と配管切り替え装置から構成されるようにしてもよい。妻型枠一体型コンクリート打込み装置及びマニピュレータは、移動型枠10をトンネル軸に沿った方向におけるコンクリートの打込み対象の位置に設置した後、移動型枠に対して固定するようにして設置される。
マニピュレータ200(200a、200b)は、切羽側10aから見て左側(マニピュレータ200a)と右側(マニピュレータ200b)にそれぞれ1本ずつ設けられる。
また、マニピュレータ200は、多関節コンクリート配管が組み合わされることで構成される。マニピュレータの一端側には、打込みノズル32が連結され、もう一方の一端側は、配管切り替え装置202が接続される。
配管切り替え装置202は、第1開口部と、第2開口部と、第3開口部とを有する。第1開口部には、ポンプ205に接続されたコンクリート配管に接続される。第2開口部には、マニピュレータ200aの打込みノズル32が設けられた端部とは反対側の端部が接続されるとともに、マニピュレータ200bの打込みノズル32が設けられた端部とは反対側の端部が接続される。
【0022】
配管切り替え装置202は、制御装置50からの制御信号に基づいて、第1開口部から取り込んだコンクリートを第2開口部または第3開口部のいずれか一方に切り替えて排出する。これにより、ポンプ205により圧送されたコンクリートは、マニピュレータマニピュレータ200a側の打込みノズル32aとマニピュレータ200b側の打込みノズル32bのいずれか一方から打込まれる。
このマニピュレータの関節は、制御装置50から出力される制御指示に基づいて油圧制御されることで、各関節の姿勢が制御される。マニピュレータ200が駆動することで、ノズル移動装置(32c、32d)が、打込みノズル移動ガイド33の外周面側(掘削された天井面あるは壁面に向く面)の上をトンネル周方向に沿って移動する。これにより、打込みノズル32(32a、32b)は、複数の打込み口11のうち、いずれの打込み口11の近傍まで移動することができ、コンクリートを打ち込むかを切り替えることができる。
打込みノズル32a、打込みノズル32bの打込み口11への脱着は、打込みノズル移動装置(32c、32d)のトンネル軸方向前後方向に打込みノズル32a、打込みノズル32bを延伸するように移動させることで行う。この移動は、マニピュレータ200によって行ってもよい。
【0023】
打込み口11には、開閉シャッター120と洗浄装置とが設けられる。開閉シャッター120が開いた状態でノズル接続部110に対して打込みノズル32を挿入し、固定した後、コンクリートを打込む。打込みノズル32の引出し(ノズル接続部110からの離間)時や、打込みノズル移動ガイド33に沿って移動する際には、打込み口開閉シリンダー125で開閉シャッター120を閉じる。例えば、打込み口開閉シリンダー125の一端と開閉シャッター120とが連結されており、打込み口開閉シリンダー125が縮む方向に駆動することに応じて、開閉シャッター120が中心軸129を基準として周方向に沿って移動することで、開閉シャッター120が開く。打込み口開閉シリンダー125が延びる方向に駆動することに応じて、開閉シャッター120が中心軸129を基準として周方向に移動し、これにより開閉シャッター120が閉じる。打込み口開閉シリンダー125は、制御装置50からの駆動信号に応じて駆動する。
打込みノズル引出し後、洗浄装置で打込み口と打込みノズルが洗浄され、汚水は排水ピットに導水され、排水される。
【0024】
コンクリートを打込む対象の打込み口11は、打込みコンクリートの表面が自身よりも1つ上方の打込み口11に到達した時点で、現在打込みを行っている打込み口11の開閉シャッター120を閉める。そして、1つ上方の打込み口11まで打込みノズル32を移動させて打込みノズル移動ガイド33に沿って移動させてから開閉シャッター120を開き、ノズル接続部110に対して打込みノズル32を挿入し、固定することで切り替えを行う。
【0025】
図4は、移動型枠10と、移動型枠10および防水シート表面に取り付けられるセンサ20及び加振器30、打込み口11について説明する構成図である。
図4Aは、移動型枠10を上方側から見た図であり、
図4Bは、移動型枠10を切羽側から見た図である。
段R1、段R2、段R3、段R4、段R5、段R6、段L1、段L2、段L3、段L4、段L5、段L6は、移動型枠10の高さ方向の位置を表している。段R1、段R2、段R3、段R4、段R5、段R6は、切羽側10aから見て右側の移動型枠10の下端部から天端部(クラウン部)の間でお互いに異なる高さの位置であり、段R1から段R6に向かうほど高い位置となる関係である。また、段L1、段L2、段L3、段L4、段L5、段L6は、切羽側10aから見て左側の移動型枠10の下端部から天端部(クラウン部)の間でお互いに異なる高さの位置である。段R1と段L1、段R2と段L2、段R3と段L3、段R4と段L4、段R5と段L5、段R6と段L6がそれぞれ同じ高さである。
【0026】
列S1、列S2、列S3、列S4、列S5は、坑口側10bの端部から切羽側10aの端部の間(トンネル軸の沿う方向)のいずれかの位置である。列S1、列S2、列S3、列S4、列S5は、お互いに異なる位置であって、列S1が坑口側10bに最も近く、列S2、列S3、列S4、列S5の順に、坑口側10bから離れる位置(列S5は、切羽側10aに最も近い位置)となるように定められている。
【0027】
打込み口11は、ここでは、打込み口IL1、打込み口IL2、打込み口IL3、打込み口IL4、打込み口IR1、打込み口IR2、打込み口IR3、打込み口IR4、打込み口IR5として合計9カ所あり、それぞれが切羽側10aの端部近傍に沿って設けられる。
打込み口IL1は、段L1と段L1の間、打込み口IL2は、段L2と段L3の間、打込み口IL3は、段L3と段L4の間、打込み口IL4は、段L5と段L6の間、打込み口IR1は、段R1と段R2の間、打込み口IR2は、段R2と段R3の間、打込み口IR3は、段R3と段R4の間、打込み口IR4は、段R5と段R6の間に設けられる。打込み口IR5は、段L6と段R6の間であって天端部C1近傍に設けられる。
【0028】
これら打込み口IL1、打込み口IL2、打込み口IL3、打込み口IL4は、移動型枠10の左側の移動型枠10の下端部から天端部近傍に対してコンクリートを打込む際に利用される。打込み口IR1、打込み口IR2、打込み口IR3、打込み口IR4は、移動型枠10の右側の移動型枠10の下端部から天端部近傍に対してコンクリートを打込む際に利用される。打込み口IR5は、移動型枠10の天端部に対してコンクリートを打込む際に利用される。
【0029】
加振器30は、移動型枠10において、段R1、段R2、段R3、段R4、段R5、段R6、段L1、段L2、段L3、段L4、段L5、段L6に示す高さ方向における各位置と、列S1、列S2、列S3、列S4、列S5に示す坑口側10bから見た奥行き方向の各位置との交点に対応する各位置にそれぞれ設けられる。ここでは、一例として、加振器30は、これら交点のそれぞれの位置に設けられることで、合計60個の加振器30が設けられる。加振器30の配置間隔は、例えば、高さ方向においては1.5m程度の間隔以下、延長方向(トンネル軸に沿った奥行き方向)においては3.0m程度以下となるように配置される。加振器30は、自身が設けられた位置から20cm上方を締固めることを基本として稼働させ、コンクリートの表面レベル(表面の高さ)に応じて、上方の加振器30を稼働するように稼働パターンを切り替える。
また、加振器30は、トンネル軸の奥行き方向に並ぶ5台を同時に稼働させることを締固めの基本パターンとし、1回当たり作動時間は15秒程度に設定することができる。この作動時間は、打込まれたコンクリートの表面高さが切羽側10aから坑口側10bの間において概ね水平となり流動が止まる状態となる時間が予め設定される。
なお、箱抜きする対象の箇所については、その箱抜き箇所を除く締固めパターンを採用するようにしてもよい。
加振器30の作動回数は、1台当たり最大5回(15sec×5=75sec)とし、加振器30の稼働時間は最大で1時間を目安として設定される。
【0030】
締固めエネルギー増分は、コンクリート表面下の加振段について、打込み締固めの都度、加速度センサMpが設けられた位置と、加速度センサM1が設けられた位置の2点、列S1と列S2の間に移動型枠10の周方向に沿って設けられた各加速度センサMR2、MR3、MR4、MR5、MR6、ML2、ML3、ML4、ML5、ML6の10点、ブロック端部中間のアーチ部6点(加速度センサMfL、MfC、MfR、MeL、MeC、MeR)、の合計18点の加速度を測定し、最大加速度から算定、画面表示する。
締固めエネルギーは、制御装置50において算出されるものであり、締固めエネルギー増分を累積し、表示パネル41の画面に表示されるとともに、記憶部53に記憶される。
締固め時間は、締固めの都度、制御装置50において計測され、締固め時間を累積し、締固めエネルギーの累積値とともに表示パネル41の画面に表示されるとともに、記憶部53に記憶される。
【0031】
センサ20は、ここでは、コンクリートセンサ、圧力温度センサ、加速度センサを用いることができる。
コンクリートセンサ21は、施工単位の打込み高さである約40~60cm間隔となるように、施工ブロックの中央(例えば、列S3に沿った位置)において、移動型枠10の下端部から所定の高さ毎に異なる位置となるように設けられる。コンクリートセンサ21の配置位置は、右側及び左側において対称となるように設けられてもよい。ここでは例えば、移動型枠10の右側の下端部から高さ約50cm毎にコンクリートセンサ21が1つずつ設けられ、移動型枠10の左側の下端部から高さ約50cm毎にコンクリートセンサ21が1つずつ設けられる。このコンクリートセンサ21は、例えば、打込みされたコンクリートが接触したか否かを検出する。これにより、いずれのコンクリートセンサ21によってコンクリートに接触したか否かの検出結果について操作盤40を介して制御装置50が取得し、これら検出結果に基づいて、コンクリートが打込みされた高さを判定することで、打込みされたコンクリートの表面位置を検出することができる。
【0032】
稼働制御部51は、いずれのコンクリートセンサ21によってコンクリートに接触したかの検出結果を操作盤40を介して取得し、これら検出結果に基づいて、コンクリートが打込みされた高さを判定することで、打込みされたコンクリートの表面位置を検出する。また、このコンクリートセンサ21の検出結果を基に、稼働制御部51は、このコンクリートセンサ21の検出結果を参照することで、コンクリートの打込み単位での打込み開始タイミングを把握することができる。例えば、コンクリートの打込み単位としては、高さ方向において約50cm程度高くなる量のコンクリートを1回の施工単位とし、移動型枠10の右側と左側を交互に打込む。
また、制御装置50は、このコンクリートセンサ21の検出結果を参照することで、加振器30を稼働させる稼働パターンを決定することができる。稼働パターンは、複数の加振器30のうち、稼働させる対象の加振器30を特定する情報、加振器30の稼働を開始するタイミング、加振器30の稼働を停止させるタイミング、加振器30の稼働時間を表す情報、加振器30を稼働させる順序を規定する情報、等を用いることができる。
【0033】
加速度センサM1は、列S4と列S5の間であって、段L3に設けられる。加速度センサMpは、列S4と列S5との間であって、段L2の高さの位置に設けられる。加速度センサMpは、列S2と加速度センサML3の間であって、段L3の高さの位置に設けられる。これら加速度センサM1、加速度センサMpは、加速度を検出することで、制御装置50は、これら加速度センサM1、加速度センサMpが加速度を検出した期間の回数をカウントし、加振器30の稼働回数を測定することができる。
【0034】
加速度センサMR2、MR3、MR4、MR5、MR6、ML2、ML3、ML4、ML5、ML6は、列S1と列S2の間に設けられる。このうち、加速度センサMR2は段R2、加速度センサMR3は段R3、加速度センサMR4は段R4、加速度センサMR5は段R5、加速度センサMR6は段R6に設けられ、加速度センサML2は段L2、加速度センサML3は段L3、加速度センサML4は段L4、加速度センサML5は段L5、加速度センサML6は段L6に設けられる。これら加速度センサM1、MR2、MR3、MR4、MR5、MR6、ML2、ML3、ML4、ML5、ML6は、例えば、コンクリートが打込みされ加振器30によって加振された際にコンクリートを介して伝搬する加振器30の振動を検出する。例えば、コンクリートが段毎に打込まれる際に、その段において加振器30によって加振された際にコンクリートが受けた加速度が測定される。
【0035】
加速度センサMeL、MeC、MeRは、列S1と移動型枠10の坑口側10bとの間であって、段L5、天端部C1、段R5のそれぞれの位置に1つずつ設けられる。これら加速度センサMeL、MeC、MeRは、打込まれたコンクリートを介して伝搬する加振器30の振動を検出する。特に、加速度センサMeL、MeC、MeRによって加速度が検出されている時間を計測することで、加振器30を駆動させて坑口側10bにおいて締固めを行った時間を把握することができる。
加速度センサMfL、MfC、MfRは、列S5と移動型枠10の切羽側10aとの間であって、段L5、天端部C1、段R5のそれぞれの位置に1つずつ設けられる。これら加速度センサMfL、MfC、MfRは、打込まれたコンクリートを介して伝搬する加振器30の振動を検出する。特に、加速度センサMfL、MfC、MfRによって加速度が検出されている時間を計測することで、加振器30を駆動させて切羽側10aにおいて締固めを行った時間を把握することができる。
【0036】
圧力温度センサ27は、列S3のうち天端部C1に対応する位置に設けられる。圧力温度センサ28は、列S5と切羽側10aの端部との間であって、天端部C1に対応する位置に設けられる。圧力温度センサ29は、列S1と坑口側10bの端部との間であって、天端部C1に対応する位置に設けられる。
これら圧力温度センサ27、28、29は、自身が設けられた位置において圧力と温度を検出する。これにより、それぞれの圧力温度センサ23の検出結果が操作盤40を介して制御装置50によって取得される。制御装置50は、これら圧力温度センサ23の検出結果に基づいて、移動型枠10の外力と、コンクリートの打ち上げ速度を検出することができる。
圧力温度センサ27、28、29は、地山に対して設けられるトンネル支保構造の内空表面に張り付けられた防水シートの内空側表面に張り付けられる。
【0037】
次に、上述したトンネル覆工施工システム1の動作等について説明する。
まずは、移動型枠10をトンネル軸の方向のうちコンクリートを打込む対象の位置まで移動させ、対象位置に到達した場合にはその場所に設置する。次に、移動型枠10に対して妻型枠一体型打込み装置及びマニピュレータを設置する。そして、コンクリートを供給するポンプ車の供給口とポンプ205を接続する。これにより、ポンプ車から供給されるコンクリートは配管切り替え装置202まで供給可能な状態となる。ここで打込み開始時においては、打込みノズル32aは打込み口IL1の高さ、打込みノズル32bは打込み口IR1の高さに設定されている。
移動型枠10や妻型枠一体型打込み装置、マニピュレータの設置、打込みノズル32a及び32bが正しく設定されると、作業員は、打込み開始の指示を操作盤40から入力する。制御装置50は、操作盤40において打込み開始指示が入力されたことを検出すると、打込み処理を開始する。すなわち、制御装置50は、打設制御パターンに基づいて打込み開始箇所を選択し、打込みノズル32aを打込み口IL1に挿入するようにマニピュレータ200a指示する。これにより、ノズル移動装置は、打込みノズル32aをトンネル軸に沿う方向であって、打込み口IL1のノズル接続部110に向かって打込みノズル32aを移動させ、打込みノズル32aがノズル接続部110に当接した状態で固定する。
【0038】
打込みノズル32aがノズル接続部110に接続されると、コンクリートの打込みを行う。ここでは、打込まれたコンクリートの表面の高さに応じて切羽側10aから見て移動型枠10の左右に切り替え装置202によって切り替えながら打込むことで、下端部から天端部まで打込む。ここでは、コンクリートの打込み状況に応じて加振器30によってコンクリートに振動を与える。これにより締固めされる。
密充填されたこと、打ち止め圧力が所定の圧力まで到達したこと、ポンプ車からのコンクリートの供給が停止されたことについて、移動型枠の変位量をセンサから得られた値や視認することで、作業員によって確認がなされると、コンクリートの打込みを停止する指示を操作盤40に入力する。このようなコンクリートの打込みは、移動型枠10の下端部から天端部まで行われる。天端部へのコンクリートの打設が終了すると、コンクリートの打込みが終了する。その後、トンネル軸の奥行き方向に沿って次の打込み対象の位置に移動型枠10を移動させてコンクリートを打込む。制御装置50の稼働制御部51は、移動型枠10がトンネル軸に沿って切羽側に移動される毎にコンクリートの打込みをする。
【0039】
次に、上述の作業員がコンクリート打込みの指示を行ってからコンクリートの打込みの流れについてさらに説明する。
図5は、記憶部53に記憶されるコンクリートの打込みパターン及び加振器30による加振パターンを含む打設制御パターンの一例を示す図である。この図において、打込み対象領域は、切羽側10aから見て移動型枠10の右側あるいは左側のいずれが打込み対象であるかを示す。
【0040】
対象箇所は、コンクリートの打込みをする箇所、打込みを行う際に参照する対象となるコンクリートセンサ、コンクリートの打込みをする対象の打込み口、締固めを行うために稼働させる対象となる加振器30についての情報が含まれる。稼働条件は、打込み箇所を特定する情報、参照先のコンクリートセンサを特定する情報、打込み口を特定する情報、稼働させる加振器30を特定する情報が含まれる。
【0041】
制御装置50は、コンクリートの打込みを行うにあたり、この記憶部53に記憶された打設制御パターンを参照することで、各部を稼働させる。
ここでは、例えば、コンクリートの打込みは、打込み箇所pL1から開始する。打込み箇所pL1から打込むにあたり、制御装置50は、記憶部53に記憶された打設制御パターンを参照し、打込み箇所pL1に対応する打込み口が打込み口IL1であることを特定し、打込み箇所pL1に対して打込み口IL1から打込むことが選択されたことを操作盤40に送信し表示パネル41に表示させる。作業員は、打込み箇所pL1に対して打込み口IL1から打込むことを確認し、問題がないと判断すると、操作盤40の確認ボタンを押す。この確認ボタンが押されると、制御装置50は、打込み口IL1に打込みノズル32aを接続する。接続が完了した後、操作盤40から打込み指示が入力されると、制御装置50は、ポンプ205を駆動させてコンクリートを圧送する。その際、制御装置50は、打込み箇所pL1に対応するコンクリートセンサがコンクリートセンサcL1であるため、コンクリートセンサcL1の検出結果を参照し、コンクリートセンサcL1の検出結果において所定の圧力を越えたと判定すると、コンクリートセンサcL1が設けられた高さまでコンクリートが打込まれたことを検出し、打込み箇所pL1に対するコンクリートの打込みを停止し、打込み箇所pL1に対応する加振器30の段が加振段VL1であることを特定し、加振対象が加振段VL1であることが選択されたことを操作盤40に送信し表示パネル41に表示させる。作業員は、加振対象が加振段VL1であることを確認し、問題がないと判断すると、操作盤40の確認ボタンを押す。この確認ボタンが押されると、制御装置50は、加振段VL1に対応する位置に配置された加振器30を稼働させる。打設制御パターンには、加振器30の稼働時間も含まれており、加振器30の稼働が開始してから、打設制御パターンに設定された稼働時間が到来すると、制御装置50は、加振器30の稼働を停止する。ここでは、加振対象の加振段を表示パネル41に表示して確認ボタンを押下してもらう構成について説明したが、確認ボタンが押下されなくても加振するようにすることもできる。
【0042】
なお、ここで、コンクリートの打込み状況の情報の一つとして、コンクリートセンサcl1の検出結果が制御装置50から操作盤40に送信され表示パネル41に表示される。作業員は、この検出状況を見て、コンクリートの打込み状況を把握することができる。また、作業員は、打込み状況を確認し、必要があれば操作盤40の停止指示入力ボタンから打込み停止の操作を入力することもできる。稼働制御部51は、この打込み停止の指示が入力されると、打込みノズルからコンクリートの打込み途中であってもコンクリートの打込みを停止する。これにより、例えば、緊急停止する必要が生じた場合は、作業員が判断して停止することができる。また、緊急停止をする理由が解消された場合には、作業員は、操作盤40から打込み再開の指示を入力することで、打込みを再開することができる。
以上のようにして、打込み箇所pL1に対するコンクリートの打込みが終了する。
【0043】
打込み箇所pL1への打込みが終了すると、制御装置50は、打設制御パターンに基づいて次の打込み箇所が打込み箇所pR1であることを特定し、上述した動作の流れと同様に、打込み箇所pR1に対する打込み処理を行う。ここでは、打込み箇所pR1は、移動型枠10の右側であるため、配管切り替え装置202によって右側のマニピュレータ200bに切り替えてから、対象の打込み口に打込みノズル32bを接続する。ここでは、制御装置50は、打設制御パターンに従い、コンクリートセンサcR1の検出結果を用いる。また、制御装置50は、打込み箇所pR1に対応する加振器30の段が加振段VR1であることを特定し、加振段VR1に対応する加振器30を稼働させ、所定時間が経過すると稼働を停止させる。これにより、打込み箇所pR1に対するコンクリートの打込みが終了する。
【0044】
図6は、打設制御パターンに含まれる情報の一つであって、加振器30を振動させるパターンを表す加振パターンの一例を示す図である。この図に示すように、加振パターンは、コンクリートを打込む対象の打込み箇所に応じて、いずれの加振器30を稼働させるかを規定した情報である。稼働制御部51は、この加振パターンを参照することで、どの加振器30を稼働させるかを選択することができる。
加振パターンは、任意のパターンを設定することができる。例えば、トンネル軸方向に沿って配置された5台の加振器30を1つの稼働対象グループとし、この稼働対象グループに属する加振器30を所定時間(例えば15秒)駆動させるパターンとすることができる。駆動させる時間は、コンクリートの締固めを十分に行うことができる時間に応じて決めるようにしてもよい。
ここで、トンネル側部(例えば、移動型枠10の下端部側から天端部の間のうちいずれかの段)において、消火栓などの非常用施設を設置する対象の位置である非常用施設設置位置が設定されている場合がある。このような非常用施設設置位置では、トンネル側部は掘り込まれ、この中に移動型枠にセットされた箱抜き部型枠を定置する。この箱抜き部型枠が取り付けられた移動型枠部に取り付けてある型枠バイブレータは、稼働対象グループにおいて停止(off)状態として設定される。
例えば、段VR4から段VR6、段VL1から段VL6のうち、それぞれの段については、トンネル軸方向において非常用施設設置位置が設定されていないため、トンネル軸方向に沿って配置された5台の加振器30を1つの稼働対象グループとして設定されている。そのため、これらの段における稼働対象グループには、VB作動パターンtableにおけるパターン1が設定される。
一方、段VR1から段VL3のそれぞれの段において、列S1、列S2について、非常用施設設置位置とされている場合には、VB作動パターンtableにおけるパターン5が設定される。
このように、必要に応じて、トンネル軸方向における一部の加振器30が停止(off)に設定された稼働対象グループを設定することができる。
【0045】
以後も同様に、制御装置50は、打設制御パターンを参照し、打込み箇所pL2、打込み箇所pR2のように、左側と右側を切り替えながら、順次上段から打設をする。そして、打込み箇所p17に到達すると、天端部への打込みが行われる。
【0046】
なお、上述した実施形態において、制御装置50は、移動型枠10における左右にコンクリートを打込むとともに、1つの打込みを行う都度、加振器30によって締固めを行う。このようなコンクリートの打設位置の選択や打設、締固め位置の選択と締固めを制御装置50が主体となって実行することで、複数の作業員同士が連携する作業を削減することができるため、作業効率を向上させることができる。また、作業員は、トンネル覆工施工システム1の操作や、トンネル覆工施工システム1における機械各部の作動状況の確認、品質向上のための補助作業を行えばよいため、従来行なっていた業務量に比べて削減することができる。
【0047】
また、上述の実施形態によれば、稼働制御部51は、打込み対象の打込み口の開閉シャッターを開けて打込みノズルからコンクリートの打込みを行った後、開閉シャッターを閉じ、次の打込み対象の打込み口の高さに打込みノズルを移動させる。これにより、打込み口の切り替えや打込みノズルの移動を作業員自身が行う必要がないため、作業量を削減することができる。
【0048】
また、制御装置50は、打設制御パターンに基づいて各部を制御するようにしたので、中流動覆工コンクリートの打込み締固めを行うブロック毎の作業順をパターン化し、施工することが可能となり、覆工コンクリート仕上がり品質の均質化、打込み締固め作業の機械制御システムによる自動化を可能となる。
【0049】
また、上述した実施形態によれば、コンクリートを打込むにあたり、切羽側10aから吹き上げ方式によって中流動コンクリートを打込み、坑口側10bまで流動させることができるため、トンネル軸に沿った複数の箇所から打込むための移動型枠内のコンクリート配管を設ける必要がない。
また、少ない作業員でコンクリートを打設することができ、複数の作業員同士における作業の進め方の確認作業を削減することができ、コンクリート品質の均質化と施工時間短縮による品質向上および省人化を図ることも可能となる。
【0050】
また、上述したように、コンピュータシステムを用いて、コンクリートの打設を行うようにしたので、覆工コンクリート施工のワンマンによる自動化、連続作業を実現することも可能であり、作業効率を向上させることができる。
【0051】
上述した実施形態における制御装置50や操作盤40の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…トンネル覆工施工システム、10…移動型枠、11,IL1,IL2,IL3,IL4,IR1,IR2,IR3,IR4,IR5…打込み口、20…センサ、21…コンクリートセンサ、27,28,29…圧力温度センサ、30…加振器、32,32a,32b…打込みノズル、32c,32d…ノズル移動装置、33…打込みノズル移動ガイド、40…操作盤、41…表示パネル、50…制御装置、51…稼働制御部、52…選択部、53…記憶部、60…コンピュータ、70…ネットワーク、80…端末装置、110…ノズル接続部、120…開閉シャッター、125…打込み口開閉シリンダー、M1,Mp,MR2,MR3,MR4,MR5,MR6,ML2,ML3,ML4,ML5,ML6,MeL,MeC,MeR,MfL,MfC,MfR…加速度センサ