(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】解析システムおよびセラミックスの製造システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20221006BHJP
C04B 35/622 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N21/17 630
C04B35/622
(21)【出願番号】P 2019503067
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007541
(87)【国際公開番号】W WO2018159689
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017037446
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓実
(72)【発明者】
【氏名】多々見 純一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0181470(US,A1)
【文献】特表2007-523386(JP,A)
【文献】特開2006-041134(JP,A)
【文献】STRAKOWSKI,M. et al.,Polarization state analysis in optical coherence tomography,PROCEEDINGS OF SPIE,2006年10月12日,Vol.6347,63471J1-6
【文献】植松敬三,顆粒および成形体内部構造の可視化による評価-浸液透光法-,粉体工学会誌,1991年,Vol.28 NO.4,251-256
【文献】植松敬三他,セラミックス成形体の内部微細構造の直接観察法-アルミナ成形体を例として-,日本セラミックス協会学術論文誌,1990年,98[5],515-516
【文献】AVANAKI,M.R.N et al.,A new algorithm for speckle reduction of optical coherence tomography images,Proceedings of SPIE,2014年,Vol.83934,893437.1-893437.9
【文献】多々見純一他,光コヒーレンストモグラフィー(OCT)によるセラミックススラリー、成形体、焼結体の三次元リアルタイム,平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿,3AM-F01,2017年11月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17 - 21/61
B28B 17/00
C04B 35/00 - 35/84
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影にてセラミックスの製造過程における物性状態それぞれの断層画像を生成する断層画像生成部と、
前記物性状態それぞれにおける断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行う解析処理部と、
を備える解析システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の解析システムと、
調製装置、成形装置および焼結装置のうち少なくとも何れか1つとを備え、
調製装置、成形装置および焼結装置のうち少なくとも何れか1つは、前記解析システムによる解析結果に基づいて、セラミックスの調製、成形、焼結のうち少なくとも何れか1つの条件を変化させる、セラミックスの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システムおよびセラミックスの製造システムに関する。
本願は、2017年2月28日に、日本に出願された特願2017-037446号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスの内部構造は、原料粉体からスラリー、成形体、焼結体に至るプロセス中に大きく変化することが知られている。従来、セラミックスの内部構造の観察には、光学顕微鏡を用いる方法(例えば、非特許文献1参照)、X線CTを用いる方法(例えば、非特許文献2参照)等が用いられてきた。
【0003】
セラミックスの特性は、セラミックス構造に支配されることが知られている。したがって、原料から最終製品であるセラミックスまでのセラミックスプロセスチェーンにおける構造の形成過程を的確に把握し、その構造を制御することができれば、優れた機能と高い信頼性を有するセラミックスを製造することができる。また、このような構造形成過程の観察方法を活かして、製造プロセス中に刻々と変化するスラリー、成形体、焼結体等の構造をリアルタイムに評価することができれば、目視または職人芸に頼ることなく、比較的前段の工程にて不均一な構造が形成される要因を検知して、それを取り除くことが可能となる。
【0004】
さらに、最終製品の内部構造の全数検査を、高速、高分解能かつ広範囲で安価に行うことができれば、製品の信頼性の向上と検査に要するコストの低減を図ることができる。
このように、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程を動的かつ三次元的に観察して、科学的に理解することは、セラミックスの歩留りの向上や信頼性の向上のために極めて重要である。
【0005】
一方、セラミックスの製造プロセスにおける各単位操作には、数多くの制御因子が存在する。例えば、セラミックス微粒子の分散では、分散剤の種類や添加量が制御因子に相当する。セラミックス微粒子の分散媒への分散は、分散剤のセラミックス微粒子への吸着、分散媒のセラミックス微粒子に対する濡れ性等が関与した複雑な現象である。そのため、スラリーを調製するための制御因子について、勘と経験による見かけの最適化が行われていた。
【0006】
また、セラミックス微粒子毎に、溶媒との親和性や分散剤の吸着挙動といった、粒子と液相の界面に関する現象が異なるはずである。したがって、後段の成形プロセスを勘案すると、スラリーの粘度、スラリーにおける固体含有量、スラリーに含まれる有機物(バインダー、可塑剤、滑剤等)等を考慮して、制御因子の最適化を図る必要がある。
【0007】
また、シート状の成形体を乾燥させる際には、セラミックス微粒子が液中に分散していた構造から、固体同士が接触する構造に動的に変化するはずである。この変化は凝集に類似している。もし、成形体の乾燥と同時に、成形体の内部構造の変化を的確に把握し、構造形成の制御因子を科学的に解明できれば、割れや変形のない均質な成形体を得るための乾燥温度、時間および雰囲気を、より解析的に決定することができると考えられる。
さらに、エネルギーを多く消費する、成形体の焼結プロセスにおいても、昇温プロファイルは職人芸的な設定によるところが大きい。もし、焼結プロセスにおける制御因子を科学的に解明して的確に最適化できれば、エネルギー消費量を削減することができ、ひいては、コストの低減を図ることができる。
【0008】
このように、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程の理解と、その制御因子の化学的解明とを実現できれば、セラミックスの製造プロセス技術の体系化を図ることが可能となる。そして、セラミックスプロセスチェーン全体の最適化を通じて、セラミックスの普及に対する障害となっている多様な技術課題を解決することができる。その結果、セラミックスの製造において歩留りの向上、低コスト化、および、高信頼性化等を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】K. Uematsu, J.-Y. Kim, Z. Kato, N. Uchida, K. Saito, "Direct Observation Method for Internal Structure of Ceramic Green Body -Alumina Green Body as an Example", The Ceramic Society of Japan, 1990年, 98[5], p.515-516
【文献】T. Hondo, Z. Kato, S. Tanaka, "Enhancing the contrast of low-density packing regions in images of ceramic powder compacts using a contrast agent for micro-X-ray computer tomography", Jorunal of the Ceramic Society of Japan, 2014年, 122[7], p.574-576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができるセラミックスの内部構造観察方法、セラミックスの製造方法、解析システムおよびセラミックスの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、セラミックスの内部構造観察方法は、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割する工程と、前記セラミックスに前記照射光を照射する工程と、反射させた前記参照光と、前記セラミックスに前記照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察することにより、光干渉断層撮影を用いて前記セラミックスの内部構造を観察する工程とを含む。
【0012】
前記赤外線領域の光は、中心波長が700ナノメートルから2000ナノメートルまで範囲内の光であって、かつ前記セラミックスにて反射する光であってもよい。
【0013】
前記セラミックスの内部構造観察方法が、前記光干渉断層撮影にてセラミックスの製造過程における物性状態それぞれの断層画像を生成する工程と、前記物性状態それぞれにおける断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行う工程とをさらに含むようにしてもよい。
【0014】
前記物性状態は、前記製造過程おける前記セラミックスの原料を含むスラリー状態、前記スラリー状態の材料を乾燥させた乾燥状態、前記スラリー状態の材料を乾燥後に成形した成形状態、および、前記成形状態の材料を焼結させた焼結状態のうち、少なくとも何れか2つ以上であってもよい。
【0015】
前記解析処理は、前記断層画像において前記物性状態を構成する微粒子に起因したスペックルノイズの除去処理を行う工程と、前記スペックルノイズの除去処理後の断層画像で輝度が他と異なるエリアの形状および大きさに基づいて、いずれの前記物性状態において前記光学的不均一状態が生じているかを判定する工程とをさらに含むようにしてもよい。
【0016】
前記セラミックスの内部構造観察方法が、前記スペックルノイズの除去処理における処理方法を前記物性状態毎の機械学習に基づいて決定する工程をさらに含むようにしてもよい。
【0017】
前記セラミックスの内部構造観察方法が、前記スペックルノイズの除去処理における処理方法を前記光学的不均一状態の種類毎の機械学習に基づいて決定する工程をさらに含むようにしてもよい。
【0018】
前記セラミックスの内部構造観察方法が、前記光干渉断層撮影に基づく方法以外の方法で前記光学的不均一状態の種類を特定して得られた学習用データに基づいて前記機械学習を行う工程をさらに含むようにしてもよい。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、セラミックスの製造方法は、光干渉断層撮影を用いたセラミックスの製造方法であって、セラミックスの原料物質である無機化合物を含むスラリー、または前記無機化合物の顆粒を調製する調製工程と、前記無機化合物を含むスラリーまたは前記顆粒を成形して成形体とする成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程と、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割し、前記調製工程における前記スラリーもしくは前記顆粒、前記成形工程における前記成形体または前記焼結工程における焼結体のいずれかに、前記照射光を照射し、反射させた前記参照光と、前記スラリー、前記顆粒、前記成形体または前記焼結体に前記照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察することにより、前記スラリー、前記顆粒、前記成形体または前記焼結体の内部構造を観察する観察工程と、を含む。
【0020】
前記観察工程は、前記スラリーもしくは前記顆粒、または前記成形体の内部構造の観察結果に応じて、前記成形工程における成形条件または前記焼結工程における焼結条件を制御することを含むようにしてもよい。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、解析システムは、光干渉断層撮影にてセラミックスの製造過程における物性状態それぞれの断層画像を生成する断層画像生成部と、前記物性状態それぞれにおける断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行う解析処理部と、を備える。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、セラミックスの製造システムは、上記した解析システムと、調製装置、成形装置および焼結装置のうち少なくとも何れか1つとを備え、調製装置、成形装置および焼結装置のうち少なくとも何れか1つは、前記解析システムによる解析結果に基づいて、セラミックスの調製、成形、焼結のうち少なくとも何れか1つの条件を変化させる。
【発明の効果】
【0023】
上記したセラミックスの内部構造観察方法、セラミックスの製造方法、解析システムおよびセラミックスの製造システムによれば、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図7】実験例3における成形体の光干渉断層撮影像である。
【
図9】実験例5における薄膜の光干渉断層撮影像である。
【
図10】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図11】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図12】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図13】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図14】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図15】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図16】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図17】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図18】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図19】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図20】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図21】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図22】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図23】実験例5における焼結体の光干渉断層撮影像である。
【
図24】実施形態に係る解析システムの機能構成の例を示す概略ブロック図である。
【
図25】実施形態に係るセラミックスである試料の物性状態の分類例を示す図である。
【
図26】実施形態に係る学習用データの第1例を示す図である。
【
図27】実施形態に係る学習用データの第2例を示す図である。
【
図28】セラミックスの全ての物性状態、および、全ての光学的不均一状態に対して同一のスペックルノイズの除去処理方法を適用する不都合性の例を示す図である。
【
図29】実施形態で、試料の解析を行う際に解析装置が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図30】実施形態で、解析処理部が解析処理で行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図31】実施形態で、スペックルノイズ除去方法を機械学習する際に学習装置の機械学習部が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図32】実施形態で、スペックルノイズ除去処理部がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第1例を示す図である。
【
図33】実施形態で、スペックルノイズ除去処理部がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第2例を示す図である。
【
図34】スペックルノイズ除去処理部293がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第3例を示す図である。
【
図35】実施形態に係るセラミックスの製造システムの機能構成の例を示す概略ブロック図である。
【
図36】実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
[セラミックスの内部構造観察方法]
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法は、光干渉断層撮影を用いたセラミックスの内部構造観察方法であって、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割し、セラミックスに照射光を照射し、反射させた参照光と、セラミックスに照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察することにより、セラミックスの内部構造を観察する。
【0027】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法で観察対象となるセラミックスは、セラミックスの原料物質である無機化合物のスラリー、無機化合物の顆粒、無機化合物の乾燥体、無機化合物の成形体、無機化合物の焼結体のいずれか1種類以上である。
無機化合物のスラリーは、セラミックスのスラリーの例に該当する。無機化合物の顆粒は、セラミックスの原料の例に該当する。無機化合物の乾燥体は、セラミックスの乾燥体の例に該当する、無機化合物の形成体は、セラミックスの形成体の例に該当する。無機化合物の焼結体は、セラミックスの焼結体の例に該当する。
【0028】
セラミックスの原料物質である無機化合物は、赤外線領域の光を透過する物質であればよく、特定のものに限定されない。このような無機化合物の例として、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、水酸化アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ホウ素(BN)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、および、チタン酸バリウム(BaTiO3)が挙げられる。
【0029】
無機化合物を含むスラリーは、上記の無機化合物と、溶媒(分散媒)とを含む。
溶媒としては、上記の無機化合物を分散することができるとともに、本実施形態で使用する赤外線領域の光の少なくとも一部を透過するものであればよく、特定のもの限定されない。溶媒の例として、水、キシレン、トルエン、および、エタノールが挙げられる。
また、スラリーは、無機化合物の特性を阻害しない範囲で分散剤や可塑剤等を含んでいてもよい。分散剤の例として、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、および、高級脂肪酸エステルが挙げられる。
【0030】
無機化合物の顆粒として、例えば、上記の無機化合物を用いて、噴霧乾燥法等で生成したものを用いることができる。
無機化合物の成形体の例として、上記のスラリーを成形用の型に投入し所定の形状に成形したもの、および、無機化合物の顆粒を金型に充填して圧縮成形したものが挙げられる。成形体は溶媒を含んでいてもよい。
無機化合物の焼結体の例として、上記の成形体を完全に焼結したもの、および、部分的に焼結したものが挙げられる。
【0031】
ここで、光干渉断層撮影について説明する。光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography、OCT)は、光の干渉性を利用して、試料の内部構造を高分解能・高速で撮影する技術である。
本実施形態では、例えば、
図1に示すような光干渉断層撮影(OCT)装置が用いられる。
図1に示す光干渉断層撮影装置10は、光源11と、ハーフミラー12と、参照ミラー13と、検出器14とを備える。
【0032】
光源11は、試料100に赤外線領域の光を照射するためのものである。本実施形態では、試料100はセラミックスである。
また、光源11は、中心波長が700nm(ナノメートル)から2000nmまでの光であって、かつ上記の本実施形態におけるセラミックスにて反射する光を発する。セラミックスにて反射する光は、例えばセラミックスに吸収されない光である。
【0033】
ハーフミラー12は、光源11から発せられた光の光路上に設けられている。また、ハーフミラー12は、その光源11側の面12aが、前記の光路に対して光源11側に45°の角度で傾斜するように配置されている。
ハーフミラー12は、光源11から発せられた光を、試料100に照射する照射光と、参照ミラー13に入射する参照光に分割する。そして、ハーフミラー12は、分割した照射光を反射させて試料100に入射させる。また、ハーフミラー12は、分割した参照光を透過させて参照ミラー13に入射させる。
【0034】
参照ミラー13は、光源11から発せられた光の光路上に設けられている。
参照ミラー13は、ハーフミラー12を透過した参照光を反射して、その反射光をハーフミラー12へ戻す。そのために、参照ミラー13は、ハーフミラー12と対向するように設けられている。
また、参照ミラー13は、光源11から発せられた光の光路方向に沿って移動可能となっている。すなわち、参照ミラー13は、ハーフミラー12との距離を調節できるようになっている。参照ミラー13を移動可能とする代わりに、波長可変光源を用いて同様の機能を果たすようにしてもよい。
【0035】
検出器14は、試料100に照射光を照射して得られた戻り光の光路上と、参照光の光路上とに設けられている。参照光は、参照ミラー13で反射されてハーフミラー12に戻り、さらに、ハーフミラー12で反射される。
検出器14は、上記の戻り光と参照光とを観測するためのものである。
【0036】
光干渉断層撮影装置10を用いた試料100の内部構造の観察または撮影は、以下のようにして行われる。
光源11が、赤外線領域の光を発する。ここで、赤外線領域の光は、中心波長が700nmから2000nmまでの光であって、かつセラミックスにて反射する光である。
光源11から発せられた光をハーフミラー12が、試料100に照射する照射光と、参照ミラー13に入射する参照光に分割する。ハーフミラー12は、分割した照射光を反射させて試料100に入射させる。また、ハーフミラー12は、分割した参照光を透過させて参照ミラー13に入射させる。
【0037】
試料100に入射した照射光は、試料100の表面や内部構造等、屈折率に差がある界面で反射されて、戻り光として試料100の表面から出射される。
試料100に照射光を照射して得られた戻り光と、参照ミラー13で反射されて戻ってきた参照光とは、ハーフミラー12上で再び重ね合わされる。このとき、試料100からの戻り光と、参照ミラー13からの参照光とが通ってきた距離が等しければ、2つの光は強め合う。一方、試料100からの戻り光と、参照ミラー13からの参照光とが通ってきた距離にずれがあり光の位相が逆になると、2つの光は打ち消し合う。
【0038】
ここで、参照ミラー13を動かして参照ミラー13とハーフミラー12の距離を調節し、検出器14上で2つの光が干渉し強め合う位置を観測する。この観測により、試料100内のどの深さに反射面があるかを知ることができる。これにより、試料100の内部構造を観察することができる。また、監察結果を画像化することで、試料100の内部構造を撮影することができる。
光干渉断層撮影装置10によれば、このような試料100の内部構造の観察または撮影をリアルタイムで行うことができる。さらには、光干渉断層撮影装置10によれば、試料100の内部構造の観察を動画で記録することができる。
【0039】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法では、光源11から、赤外線領域の光として、中心波長が700nmから2000nmまでの光であって、かつ試料100にて反射する光を試料100に照射するとともに、参照ミラー13を動かすことにより、セラミックスである試料100を観察する。これにより、従来は観察できなかったセラミックスの内部構造を三次元的に観察することができる。なお、参照ミラー13を移動可能とする代わりに波長可変光源を用いた場合には、波長可変光源から発する光の波長や強度を調整することにより、試料100を観察するようにしてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法を適用可能な事例を示す。
[事例1]
複数種類の粒子からなる複合粒子を利用することは、セラミックスの微構造を制御したり、セラミックスを高機能化・多機能化したりするための手法の1つである。複数種類の粒子からなる複合粒子を利用する例として、機械的処理によるナノ複合粒子の調整と、これを利用したセラミックスの微構造の制御とが挙げられる。
【0041】
例えば、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを低コストで製造できる製造プロセスであるポスト反応焼結法に着目する。そして、ケイ素(Si)と焼結助剤である酸化イットリウム(Y2O3)および酸化アルミニウム(Al2O3)とからなるナノ複合粒子を用いて成形体の構造の制御を行うことを考える。この制御により、均質な窒化体および綴密な焼結体を生成する。
ナノ複合粒子を用いることにより、焼結助剤がケイ素粒子同士の接触を抑制し、ケイ素粒子が溶融することなく均質に窒化できることが明らかとなった。また、ナノ複合粒子を用い、高温で緻密化することにより、緻密であり、かつ粗大な気孔がない窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを生成できることが明らかとなった。
【0042】
このようにナノ複合粒子の利用は、セラミックスの微構造の制御とセラミックスの製造プロセスの改善に有効である。しかしながら、例えば、ナノ複合粒子を用いて成形された成形体の構造は、一般的な複合化されていない微粒子を用いた混合プロセスで生成した成形体と異なるはずである。それにもかかわらず、ナノ複合粒子を用いて成形された成形体の構造と、成形体の焼結挙動との相関については明らかとなっていない。
【0043】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、ナノ複合粒子を用いて成形された成形体の構造や成形過程、スラリーの乾燥過程、成形体の焼結挙動をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、ナノ複合粒子を用いて成形された成形体の構造と、成形体の焼結挙動との相関について明らかにすることが可能である。
【0044】
[事例2]
これまで勘と経験に頼られてきた微粒子の表面設計と分散プロセスを、スラリーの流動特性や粒子間の相互作用の評価に基づく科学的観点から解明した方法が提案されている。
その方法によれば、粒子の材質と分散媒の種類に応じた個別の表面設計により、微粒子を分散媒に分散させることができる。例えば、多段階化学反応による微粒子の表面修飾、および、新規表面修飾剤の設計と適切な表面修飾操作法の開発により、各種材質の微粒子の溶剤・樹指への高度な分散を達成している。また、カチオン性高分子と脂肪酸の会合体形成により、簡便で設計的な高分子分散剤の改質プロセスを開発し、様々な粒子材質に使用できる分散剤の設計や高濃度多成分系スラリーの分散化に成功している。
【0045】
しかしながら、上述の技術においては、微粒子と会合体および溶媒との濡れ性、並びに、バインダーや滑剤等の他の有機物が共存する下における界面構造の理解と最適化がなされていない。また、上述の技術は、現時点で微粒子の分散に特化したものであり、セラミックスの製造における、微粒子の乾燥プロセスや、微粒子の成形プロセスも考慮した粒子界面の設計はなされていない。
【0046】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、微粒子の乾燥プロセス、および、微粒子の成形プロセスをリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、微粒子の乾燥プロセス、および、微粒子の成形プロセスを考慮した粒子界面の設計が可能となる。
【0047】
[事例3]
セラミックス粉体に適量の分散剤を添加することにより、高濃度かつ高分散性のスラリーを調製することができる。また、このスラリーは温度上昇とともにその粘度が大きく変化する。このような現象を利用することにより、高密度かつ均質な成形体を生成することができる。
この現象を利用し、酸化ケイ素(SiO2)ガラス成形体を生成し、そのガラス成形体を空気中にて1400℃で焼成する。これにより、高温で溶融することなく、複雑形状の透明酸化ケイ素(SiO2)焼結体を生成することができる。さらに、三次元プリンタを用いて、樹脂で構造体を生成し、この構造体を鋳型として、高濃度かつ高分散性のスラリーを鋳込んで成形体を形成し、その成形体を焼成することにより、透明微小構造体を生成することができる。
【0048】
このような樹脂鋳型を用いたセラミックス微小構造体の製造方法をさらに発展させるためには、材料の性状によらず、高濃度かつ高分散性のスラリーの調製を可能にする必要がある。また、均質な成形体や焼結体の製造プロセスにおける構造形成過程を解明し、その結果に基づいて製造プロセスを設計する必要がある。
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、成形体や焼結体の製造プロセスにおける構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、成形体や焼結体の製造プロセスにおける構造形成過程を解明し、その結果に基づいて製造プロセスを設計することができる。
【0049】
[事例4]
セラミックスの製造コストを低減することを目的として、直接窒化法で合成された低コスト粉体を原料とした高強度な窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを生成することが考えられる。
しかし、従来の方法で生成した窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの強度は低い。
【0050】
これは、粗大な亀裂状の空隙が破壊源となっていることに起因していることが明らかとなった。赤外線顕微鏡により、低コスト粉体の成形体の内部構造を観察した結果、粗大な粒子を用いた場合には、粒子界面に大きな欠陥が存在している様子が確認された。これらの欠陥は、前記の成形体を焼結して得られた焼結体にも粗大欠陥として残存するため、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの強度の低下を引き起こしたと推測される。
【0051】
これに対して、微粒子を原料として用いた場合には、粗大な粒子を用いた場合よりも、得られた窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの曲げ強度がはるかに高くなる。この曲げ強度は、イミド分解法により合成された窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの曲げ強度とほぼ同程度であった。微粒子を原料とする窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスは、破壊源が20μm(マイクロメートル)以下の未焼結領域であった。この窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを赤外線顕微鏡で観察した場合、その内部構造には10μmから20μm程度の欠陥が観察される。しかし、この窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスは、従来の方法で生成した窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスよりも均質であることが分かった。
【0052】
さらに、微粒子を用い、繰り返し数10回の冷間静水圧加圧(Cold Isostatic Pressing、CIP)成形を施した成形体の密度は、繰り返し数1回のCIP成形を施した成形体の密度よりも向上することが分かった。この繰り返し数10回のCIP成形を施した成形体の焼結体は、曲げ強度は、イミド分解法により合成された窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの曲げ強度よりも高い値を示した。
すなわち、近赤外線領域の光を用いた成形体および焼結体の観察により、これらの内部構造の解明に有効であることが明らかとなった。また、近赤外線領域の光を用いた成形体および焼結体の観察により、微粒子の利用、および、繰り返しCIP成形の利用が、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの高強度化に効果的であることが明らかとなった。
【0053】
この考え方を他の材料にも拡張して、セラミックスの信頼性を向上させるためには、微粒子から成形体への構造形成過程の解明、成形体から焼結体への構造形成過程の解明、および、添加物等の制御因子の解明が必要である。
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、微粒子から成形体への構造形成過程や、成形体から焼結体への構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、微粒子から成形体への構造形成過程や、成形体から焼結体への構造形成過程を解明することができる。
【0054】
[事例5]
成形体を均質化するとともに、成形体を焼結する際の微粒子の挙動を制御することにより、光の散乱源となる気孔を成形体内から完全に除去することができれば、セラミックスを透明化することが可能である。上述の繰り返しCIP成形法と、焼結時の微粒子の挙動の解明とに基づいて、サイアロンセラミックスを低温で緻密化することにより、透明蛍光サイアロンセラミックスを開発することができた。すなわち、成形体の内部構造を制御することにより、成形体中の気孔を効率的に除去することで、透明化という新たな機能をセラミックスに付与できることが分かった。
【0055】
このような透明セラミックスを実現するには、原料粉体からスラリーの調製、成形体の成形、成形体の焼結まで一貫した製造プロセスを設計する必要がある。
しかしながら、これまでの研究開発では、それぞれの操作の関連については十分に検討されておらず、セラミックスプロセスチェーン全体を最適化することができていなかった。
【0056】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、原料粉体からスラリーへの構造形成過程、原料粉体から成形体への構造形成過程、および、成形体から焼結体への構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、それぞれの操作の関連について十分に検討することが可能となり、セラミックスプロセスチェーン全体を最適化することができる。
【0057】
[事例6]
結晶質セラミックスの特性向上と新機能発現のための1つの手法としては、結晶を配向させることによる異方性の利用が挙げられる。結晶配向材料の生成方法としては、粒子の幾何学形状を利用したシート成形等による力学的手法、および、粒子の磁気異方性を利用して超伝導磁石により粒子を磁場配向させる方法等が報告されている。力学的手法は、セラミックスの外形に対して配向できる方向が限定されるという課題があった。粒子を磁場配向させる方法は、磁場により粒子を配向させる方向を制御できる。しかし、この方法は、一般的な反磁性磁化率の絶対値が小さいセラミックス粉体を配向させるためには、超伝導磁石が必須である。また、この方法は、場合によっては、微粒子に対して、磁場を回転させながら印加する必要があるという課題があった。これに対し、磁気トルクを担う粒子として異方的巨大反磁性を有するグラフェンを母体微粒子に複合化して、粉体に磁化率異方性を付与することが考えられる。これにより、低磁場かつ静磁場にて微粒子に効果的に磁気トルクを与えて配向セラミックスを生成する。
【0058】
機械的手法で調製した、グラフェンで被覆された窒化ケイ素(Si3N4)粒子は、ネオジム磁石程度の低磁場かつ静磁場で配向させることが可能である。以下、グラフェンで被覆された窒化ケイ素(Si3N4)粒子を、グラフェン被覆粒子とも称する。グラフェン被覆粒子を用いることにより、従来必須であった超伝導磁石を用いることなくC軸配向した窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを生成することができる。
超伝導磁石を用いない、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの製造方法を示す。まず、磁場中にて、グラフェン被覆粒子を配向させて成形体を形成する。次いで、グラフェンを酸化して、成形体からグラフェンを除去する。次いで、グラフェンを除去した成形体を高温で焼成し、C軸配向した窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスを得る。
【0059】
この製造プロセスは、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスに限らず多くのセラミックスに適用可能であり、大量生産にも展開できる。また、このようなセラミックスの製造技術は、セラミックスの本質的な特性を発揮することを可能とする重要な微構造の制御法である。このセラミックスの製造技術を他の材料系に展開していくためには、グラフェン被覆粒子の適切な分散やスラリーの低粘度化、および、焼結収縮の異方性の解明と制御等、それぞれの操作を高度化する必要がある。加えて、セラミックスプロセスチェーン全体を最適化する必要がある。しかしながら、現在、これらの知見が十分に得られているとは言い難く、さらなる検討が必要である。
【0060】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、スラリー中におけるグラフェン被覆粒子の分散状態や、成形体を焼結する際の収縮の異方性をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、グラフェン被覆粒子の適切な分散やスラリーの低粘度化、焼結収縮の異方性の解明と制御等を可能とするとともに、それぞれの操作を高度化し、セラミックスプロセスチェーン全体を最適化することができる。
【0061】
[事例7]
セラミックスの焼結に伴う収縮は、場合によっては、セラミックスの割れや変形を引き起こす。そのため、均質なセラミックスを生成するためには、セラミックスの焼結に伴う収縮挙動を評価すること、および、その収縮挙動を制御することが必要である。これまでに、古典的な焼結理論を拡張させたマスターシンタリングカーブ(MSC)理論が提案されている。ここで、各種セラミックスの焼結収縮曲線のその場測定を行ない、これにMSC理論を適用して解析するとともに、得られたMSCを用いて、セラミックスの焼結収縮を制御することが考えられる。さらに、本発明者等は、新規に液相焼結に関するマスターシンタリングカーブ理論を提案し、窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスの焼結収縮挙動の解析に適用することが考えられる。
【0062】
しかしながら、MSCと成形体の構造との関係は明らかとなっておらず、焼結収縮挙動の制御を成形体の構造形成にフィードバックできていない。また、従来のMSC理論は、外部応力印加時には原理的に適用不可能であるため、有限要素解析に導入して複雑形状の焼結収縮挙動をシミュレーションすることができず、さらなる展開が必要であった。
【0063】
本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、焼結中の成形体の構造変化をリアルタイムに三次元的に観察することができる。ゆえに、本実施形態のセラミックスの内部構造観察方法によれば、MSCと焼結中の成形体の構造変化との関係を明らかにし、セラミックスの焼結収縮挙動の制御を成形体の構造形成にフィードバックすることができる。
【0064】
[セラミックスの製造方法]
本実施形態のセラミックスの製造方法は、光干渉断層撮影を用いたセラミックスの製造方法であって、セラミックスの原料物質である無機化合物を含むスラリー、または無機化合物の顆粒を調製する調製工程と、無機化合物を含むスラリーまたは顆粒を成形して成形体とする成形工程と、成形体を焼結する焼結工程と、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割し、調製工程におけるスラリーもしくは顆粒、成形工程における成形体または焼結工程における焼結体のいずれかに、照射光を照射し、反射させた参照光と、スラリー、顆粒、成形体または焼結体に照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察することにより、スラリー、顆粒、成形体または焼結体の内部構造を観察する観察工程とを有する。
【0065】
調製工程では、上記の溶媒に、上記の無機化合物を分散させて無機化合物を含むスラリーを調製する。また、調製工程では、上記の無機化合物を用いて、噴霧乾燥法等により、無機化合物の顆粒を調製する。
調製工程では、必要に応じて、分散剤や可塑剤等を用いるようにしてもよい。
【0066】
成形工程では、調製工程で調製したスラリーを、所定の形状の成形用の型に投入して、所定の形状に成形する。また、成形工程では、調製工程で調製した顆粒を金型に充填して圧縮成形して、所定の形状に成形する。
焼結工程では、成形工程で成形した成形体を所定の温度で焼結して、無機化合物の焼結体を得る。
【0067】
観察工程では、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割し、調製工程におけるスラリーもしくは顆粒、成形工程における成形体または焼結工程における焼結体のいずれかに、照射光を照射し、反射させた参照光と、スラリー、顆粒、成形体または焼結体に照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察する。これにより、スラリー、顆粒、成形体または焼結体の内部構造を観察する。
観察工程における内部構造の観察は、上述のセラミックスの内部構造観察方法と同様に行われる。
【0068】
本実施形態のセラミックスの製造方法によれば、観察工程を有することにより、その観察結果を成形工程における成形条件や、焼結工程における焼結条件にフィードバックすることができる。これにより、緻密かつ均質なセラミックスを効率的に製造することができる。その結果、セラミックスの製造において、歩留りの向上、低コスト化、高信頼性化等を実現することができる。
【0069】
本実施形態のセラミックスの製造方法では、観察工程におけるスラリーもしくは顆粒、または成形体の内部構造の観察結果に応じて、成形工程における成形条件または焼結工程における焼結条件を制御するようにしてもよい。すなわち、観察工程におけるスラリーまたは顆粒の観察結果に応じて、成形工程における成形条件を制御することや、観察工程における成形体の内部構造の観察結果に応じて、焼結工程における焼結条件を制御するようにしてもよい。
これにより、本実施形態のセラミックスの製造方法において、成形工程における成形条件や、焼結工程における焼結条件を最適化することができる。
【0070】
[セラミックスの製造システム]
本実施形態のセラミックスの製造システムは、調製装置、成形装置および焼結装置からなる群から選択される少なくとも1種と、光干渉断層撮影装置と、を備える。光干渉断層撮影装置は、セラミックスの原料物質である無機化合物を含むスラリーもしくは無機化合物の顆粒、スラリーもしくは顆粒の成形体または成形体を焼結した焼結体のいずれかに、赤外線領域の光を照射する光源と、スラリー、顆粒、成形体または焼結体に照射した光の戻り光と、参照光との干渉を観測する検出器とを有する。成形装置は、検出器で観測された結果に応じて、スラリーまたは顆粒の成形条件を制御する制御部を有する。焼結装置は、検出器で観測された結果に応じて、成形体の焼結条件を制御する制御部を有する。
【0071】
光干渉断層撮影装置としては、上述のセラミックスの内部構造観察方法で用いられるものと同様のものが挙げられる。
調製装置は、上記の溶媒に、上記の無機化合物を分散させて無機化合物を含むスラリーを調製する。調製装置として、例えば一般的にスラリーの調製に用いられる装置を用いることができる。また、調製装置は、上記の無機化合物を顆粒にする。調製装置として、例えば、上記の無機化合物を噴霧乾燥法により顆粒にすることができる装置が用いられる。
【0072】
成形装置としては、スラリーまたは顆粒を型に投入して所定の形状の成形体に成形することができる成形型を備えたものであればよく、特定のもの限定されない。成形装置として、例えば、一般的にスラリーを用いた湿式成形、または、顆粒を用いた乾式成形に用いられる装置を用いることができる。
焼結装置は、上記の成形体を焼結する焼結炉を備えたものであればよく、特定のものに限定されない。焼結装置として、一般的にスラリーまたは顆粒からなる成形体の焼結に用いられる装置を用いることができる。
【0073】
本実施形態のセラミックスの製造システムによれば、成形装置が、光干渉断層撮影装置の検出器で観測された結果に応じて、スラリーまたは顆粒の成形条件を制御する制御部を有するため、より緻密かつ均質な成形体を成形することができる。また、本実施形態のセラミックスの製造システムによれば、焼結装置が、光干渉断層撮影装置の検出器で観測された結果に応じて、成形体の焼結条件を制御する制御部を有するため、より反りや割れが低減された焼結体を得ることができる。すなわち、本実施形態のセラミックスの製造システムによれば、セラミックスの製造において、歩留りの向上、低コスト化、高信頼性化等を実現することができる。
【0074】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
水に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を分散したアルミナスラリーを調製した。なお、アルミナスラリーとしては、分散剤のポリカルボン酸アンモニウムを添加したものと、分散剤を添加していないものとを調製した。
このアルミナスラリーに、
図1に示したものと同様の光干渉断層撮影(OCT)装置を用いて、中心波長930nmの光を照射し、アルミナスラリーの内部構造を観察した。光干渉断層装置として、商品名:GAN930V2-BU、ソーラボジャパン社製を用いた。
【0075】
結果を
図2および
図3に示す。
図2は、分散剤無添加のアルミナスラリーの光干渉断層撮影像である。
図3は、分散剤を添加したアルミナスラリーの光干渉断層撮影像である。
光干渉断層撮影装置では、光の干渉を利用して像を得ているため、より強く光が散乱した領域でコントラストが大きくなる。
図2の結果から、分散剤無添加のアルミナスラリーでは、数十μm程度の構造が現れていることが確認された。一方、
図3の結果から、分散剤を添加したアルミナスラリーでは、分散剤無添加のアルミナスラリーのような構造が現われていないことが確認された。
【0076】
また、従来の静的な構造観察では分からないが、光干渉断層撮影装置による動的な構造観察によって、以下のようなことが明らかとなった。
分散剤無添加のアルミナスラリーの内部構造は、時間の経過に伴って、比較的ゆっくりと数百μm程度のスケールで変化していた。
一方、分散剤を添加したアルミナスラリーの内部構造は、酸化アルミニウム微粒子のブラウン運動に起因すると思われる速い構造の揺らぎが観察された。また、分散剤を添加したアルミナスラリーは、その表面から乾燥に伴うと思われる構造の変化も確認された。
【0077】
[実験例2]
トルエンに、窒化ケイ素(Si
3N
4)を分散した窒化ケイ素スラリーを調製した。なお、窒化ケイ素スラリーには、分散剤としてポリエレンイミンとオレイン酸の会合体を添加した。
この窒化ケイ素スラリーに、
図1に示したものと同様の光干渉断層撮影(OCT)装置を用いて、中心波長1310nmの光を照射し、窒化ケイ素スラリーの内部構造を観察した。光干渉断層撮影装置として、商品名:IVS-2000、santec社製を用いた。
【0078】
結果を
図4から
図6に示す。
図4は、窒化ケイ素スラリーの光干渉断層撮影像であり、窒化ケイ素スラリー(流動層)を示す図である。
図5は、窒化ケイ素スラリーの光干渉断層撮影像であり、窒化ケイ素スラリーを滴下したスライドガラスと、窒化ケイ素スラリー(流動層)とを示し、乾燥途中の窒化ケイ素スラリーを示す図である。
図6は、窒化ケイ素スラリーの光干渉断層撮影像であり、窒化ケイ素スラリーを滴下したスライドガラスと、窒化ケイ素スラリー(流動層)とを示し、乾燥後の窒化ケイ素スラリーを示す図である。
【0079】
図5の結果から、乾燥途中の窒化ケイ素スラリーでは光が散乱するため、スライドガラスと窒化ケイ素スラリーの界面が明確に確認された。
分散剤を添加した窒化ケイ素スラリーの内部構造は、窒化ケイ素微粒子のブラウン運動に起因すると思われる速い構造の揺らぎが観察された。また、分散剤を添加した窒化ケイ素スラリーは、その表面から乾燥に伴うと思われる構造の変化も確認された。
【0080】
[実験例3]
市販の酸化アルミニウム顆粒(商品名:AKS-20、住友化学社製)を用いて乾式成形により成形体を得た。
得られた成形体に、
図1に示したものと同様の光干渉断層撮影(OCT)装置(商品名:IVS-2000、santec社製)を用いて、中心波長1310nmの光を照射し、成形体の内部構造を観察した。
結果を
図7に示す。
図7は、成形体の光干渉断層撮影像である。
図7において、酸化アルミニウム顆粒に相当する寸法の構造が観察された。
【0081】
[実験例4]
実験例3における顆粒を透明な成形型に投入して、加圧しながら内部構造を観察した。
図1に示したものと同様の光干渉断層撮影(OCT)装置を用いて、波長1310nmの光を照射し、内部構造を観察した。光干渉断層撮影装置として、商品名:IVS-2000、santec社製を用いた。
結果を
図8に示す。
図8は、酸化アルミニウム顆粒の光干渉断層撮影像である。
実験例4では、顆粒が変形しながら顆粒間の隙間が減少し、成形されていく様子がリアルタイムで観察された。
【0082】
[実験例5]
実験例3で生成した酸化アルミニウムの成形体を、1400℃にて2時間焼成し、焼結体を生成した。
得られた焼結体に、
図1に示したものと同様の光干渉断層撮影(OCT)装置を用いて、中心波長1310nmの光を照射し、焼結体の内部構造を観察した。光干渉断層撮影装置として、商品名:IVS-2000、santec社製を用いた。実験例5では、波長可変光源を用いて、焼結体の内部構造を厚み方向に沿って順に観察した。
【0083】
結果を
図9から
図23に示す。
図9から
図23は、それぞれ、焼結体の光干渉断層撮影像である。
図9から
図23は、光源に近い側から順に、焼結体の内部構造を厚み方向に沿って観察した結果を示す。
図9から
図23の結果から、焼結体はおおむね均質であった。また、
図9から
図23において、いくつかのコントラストが大きい領域が観察された。この領域は、光干渉断層撮影で得られる像の性質を考えると、緻密化が不十分な領域に相当すると思われる。
【0084】
[解析システムおよび解析方法]
次に、本実施形態に係る解析システムおよび解析方法について説明する。
図24は、本実施形態に係る解析システムの機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図24に示す構成で、解析システム1は、光干渉断層撮影装置10と、解析装置20と、学習装置30とを備える。解析装置20は、第1通信部210と、第1記憶部280と、第1制御部290とを備える。第1制御部290は、断層画像生成部291と、解析処理部292と、スペックルノイズ除去処理部293と、不均一状態検出部294とを備える。学習装置30は、第2通信部310と、第2記憶部380と、第2制御部390とを備える。第2記憶部380は、学習用データ記憶部381を備える。第2制御部390は、学習用データ取得部391と、機械学習部392とを備える。
図24における光干渉断層撮影装置10は、
図1における光干渉断層撮影装置10と同様であり、同一の符号(10)を付して説明を省略する。
【0085】
解析システム1は、セラミックスである試料100を解析する。特に、解析システム1は、試料100の断層画像を取得し、断層画像内における輝度に基づいて、試料100の状態を解析する。
解析装置20は、光干渉断層撮影装置10による試料100の測定結果に基づいて試料100の断層画像を生成し、得られた断層画像を用いて試料100の状態を解析する。
解析装置20は、例えばパソコン(Personal Computer;PC)またはワークステーション(Workstation)等のコンピュータを用いて構成される。
【0086】
第1通信部210は、他の装置と通信を行う。特に、第1通信部210は、光干渉断層撮影装置10と通信を行って、光干渉断層撮影装置10による試料100の測定結果を受信する。また、第1通信部210は、学習装置30の第2通信部310と通信を行って、学習装置30によるスペックルノイズ(Speckle Noise)除去処理の学習結果を学習装置30から受信する。さらに、第1通信部210は、学習装置30の第2通信部310と通信を行って、試料100の断層画像を学習装置30へ送信する。
【0087】
第1記憶部280は、各種データを記憶する。第1記憶部280は、解析装置20が備える記憶デバイスを用いて構成される。
第1制御部290は、解析装置20の各部を制御して各種処理を行う。第1制御部290は、解析装置20が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、第1記憶部280からプログラムを読み出して実行することで構成される。
【0088】
断層画像生成部291は、光干渉断層撮影装置10による光干渉断層撮影にてセラミックスの製造過程における物性状態それぞれの断層画像を生成する。具体的には、断層画像生成部291は、光干渉断層撮影装置10による試料100の測定結果に基づいて試料100の断層画像を生成する。断層画像生成部291が断層画像を生成する方法として、光干渉断層撮影における公知の断層画像生成方法を用いることができる。
【0089】
断層画像生成部291が生成する断層画像の向きは特定の向きに限定されない。例えば、光干渉断層撮影装置10が試料100を3次元的にスキャンし、断層画像生成部291が試料100の3次元画像を生成するようにしてもよい。これにより、断層画像生成部291は、試料100のスキャン範囲内における任意の位置および任意の向きの断層画像を生成することができる。
【0090】
図25は、セラミックスである試料100の物性状態の分類例を示す図である。
図25の例では、セラミックスの物性状態が原料状態、スラリー状態、乾燥状態、成形状態および焼結状態に分類されている。
原料状態は、セラミックスの原料粉体と溶媒とを混ぜ合せる前の状態である。
セラミックスの原料紛体と溶媒とを混ぜ合わせることで、スラリーを得られる。スラリー状態は、セラミックスがスラリーの状態である。
【0091】
スラリーを乾燥させることで、乾燥体を得られる。乾燥状態は、セラミックスが乾燥体の状態である。
乾燥体を成形することで成形体を得られる。成形状態は、セラミックスが成形体の状態である。
成形体を焼結することで焼結体を得られる。焼結状態は、セラミックスが焼結体の状態である。
【0092】
断層画像生成部291は、セラミックスである試料100の物性状態のうち何れか1つ以上について試料100の断層画像を生成する。特に、断層画像生成部291が、上記の物性状態の全部について試料100の断層画像を生成するなど、試料100の物性状態のうち何れか複数それぞれについて試料100の断層画像を生成するようにしてもよい。解析装置20が、試料100の複数の物性状態それぞれについて試料100の断層画像を解析することで、試料100における光学的不均一状態の有無を判定できるだけでなく、どの物性状態で光学的不均一状態が生じたかについて情報を得られる。
【0093】
解析処理部292は、断層画像生成部291が生成した試料100の断層画像を用いて、試料100における光学的不均一状態を検出する。ここでいう試料100における光学的不均一状態は、光の反射の状況が、試料100全体における傾向と異なる状態である。試料100の断層画像では、光学的不均一状態は、輝度の違いとして示される。以下では、断層画像内で輝度が断層画像全体における傾向と異なる部分を、断層画像における光学的不均一部分と称する。
上記のように、断層画像生成部291が試料100の複数の物性状態のそれぞれにおける試料100の断層画像を生成し、解析処理部292が、それらの断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行うようにしてもよい。
【0094】
スペックルノイズ除去処理部293は、試料100の断層画像におけるノイズを除去する。特に、スペックルノイズ除去処理部293は、試料100の断層画像におけるスペックルノイズを除去する。セラミックスの断層画像の場合、スペックルノイズは、セラミックスの物性状態を構成する微粒子に起因して生じる。
スペックルノイズ除去処理部293は、学習装置30が機械学習にて取得するスペックルノイズ除去方法に従って、断層画像に適用するスペックルノイズの除去方法を決定し、決定した方法を実行する。
【0095】
不均一状態検出部294は、スペックルノイズの除去処理後の試料100の断層画像を用いて、試料100における光学的不均一状態を検出する。不均一状態検出部294は、断層画像内で光学的不均一状態が生じているエリアを検出することに加えて、光学的不均一状態の種類を判定する。具体的には、断層画像で輝度が他と異なるエリアの形状および大きさに基づいて、光学的不均一状態が気孔またはき裂の何れかを判定する。但し、不均一状態検出部294が検出する光学的不均一状態は気孔またはき裂に限定されない。
不均一状態検出部294が、試料100の複数の物性状態のそれぞれにおけるスペックルノイズの除去処理後の試料100の断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行うようにしてもよい。
【0096】
学習装置30は、断層画像からスペックルノイズを除去する方法を機械学習する。学習装置30は、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に、断層画像からスペックルノイズを除去する方法を機械学習する。あるいは後述するように、学習装置30が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に、断層画像からスペックルノイズを除去する方法を機械学習するようにしてもよい。
学習装置30は、例えばパソコン(Personal Computer;PC)またはワークステーション(Workstation)等のコンピュータを用いて構成される。
【0097】
第2通信部310は、他の装置と通信を行う。特に、第2通信部310は、解析装置20の第1通信部210と通信を行って、学習装置30によるスペックルノイズ除去処理の学習結果を解析装置20へ送信する。また、第2通信部310は、解析装置20の第1通信部210と通信を行って、試料100の断層画像を解析装置20から受信する。
第2記憶部380は、各種データを記憶する。第2記憶部380は、学習装置30が備える記憶デバイスを用いて構成される。
【0098】
学習用データ記憶部381は、学習用データを記憶する。ここでいう学習用データは、学習装置30がスペックルノイズの除去方法を機械学習するためのデータである。
学習用データ記憶部381は、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に、学習用データを記憶する。あるいは、学習用データ記憶部381が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に、学習用データを記憶するようにしてもよい。
【0099】
図26は、学習用データの第1例を示す図である。
図26は、セラミックスの焼結体における気孔を検出する場合に断層画像に適用するスペックルノイズの除去方法を学習するための学習用データの例を示している。
図26では、学習用データが表形式で示されており、1行が1つの学習用データに該当する。学習用データの各々は、識別番号と、原画像と、目標画像とを組み合わせて構成されている。
【0100】
識別番号は、学習用データを識別する番号である。
原画像としては、セラミックスの物性状態および光学的不均一状態の種類がユーザに既知となっている、スペックルノイズ除去前の断層画像が用いられる。
図26では、セラミックスの焼結体における気孔を検出する場合について機械学習を行うためのデータの例を示していることから、気孔が写っている断層画像が原画像として用いられている。
原画像の背景部分にはスペックルノイズが含まれている。識別番号A1の学習用データの場合、領域A111が背景部分に該当し、領域A112が気孔の部分の画像の領域に該当し、領域A113が気孔と気孔以外の部分との境界部分の画像の領域に該当する。
【0101】
気孔の部分の画像の領域である領域A112は、比較的暗い領域となっている。気孔の境界部分の画像の領域である領域A113は、比較的明るい領域となっている。
背景画像の領域A111は、比較的暗い領域だが、スペックルノイズが含まれているため領域A112よりも明るくなっている。領域A111がやや明るいことで、領域A111と領域A112とが比較的区別しにくい。この点で、スペックルノイズ除去前の画像では気孔の領域を検出しにくい。
【0102】
識別番号A2の学習用データの場合、領域A121が背景部分に該当し、領域A122が気孔の部分の画像の領域に該当し、領域A123が気孔と気孔以外の部分との境界部分の画像の領域に該当する。識別番号A3の学習用データの場合、領域A131が背景部分に該当し、領域A132が気孔の部分の画像の領域に該当し、領域A133が気孔と気孔以外の部分との境界部分の画像の領域に該当する。
【0103】
目標画像としては、原画像からスペックルノイズを除去した画像が用いられる。実際に原画像に対してスペックルノイズ除去処理を行った画像を目標画像として用いるようにしてもよい。
あるいは、ユーザが原画像に基づいて生成した画像を目標画像として用いるようにしてもよい。例えば、ユーザが原画像を加工して目標画像を生成するようにしてもよい。あるいは、ユーザが、原画像を参照して目標画像を描画するようにしてもよい。
あるいは、原画像と同じ画角となるように設置された赤外線カメラが撮影した画像など、光干渉断層撮影以外の方法で撮影された断層画像を目標画像として用いるようにしてもよい。
【0104】
識別番号A1の学習用データの場合、領域A211が、原画像の領域A111およびA112に相当する。背景画像の領域からスペックルノイズが除去されたことで、背景画像の領域と機能の部分の画像の領域とが同様の輝度になっている。領域A212は、原画像の領域A113に相当する。領域A212は、領域A113と同じく、比較的明るい領域となっている。
背景画像の領域からスペックルノイズが除去されて暗くなったことで、比較的明るい領域A212を検出し易くなっている。この点で、スペックルノイズ除去後の画像では、気孔の領域を検出し易くなっている。
【0105】
識別番号A2の学習用データの場合、領域A221が、原画像の領域A121およびA122に相当する。領域A222が、原画像の領域A123に相当する。識別番号A3の学習用データの場合、領域A231が、原画像の領域A131およびA132に相当する。領域A232が、原画像の領域A133に相当する。
【0106】
図27は、学習用データの第2例を示す図である。
図27は、セラミックスの焼結体におけるき裂を検出する場合に断層画像に適用するスペックルノイズの除去方法を学習するための学習用データの例を示している。
図27では、学習用データが表形式で示されており、1行が1つの学習用データに該当する。
図26を参照して説明したように、学習用データの各々は、識別番号と、原画像と、目標画像とを組み合わせて構成されている。
【0107】
図26を参照して説明したように、識別番号は、学習用データを識別する番号である。
図26を参照して説明したように、原画像としては、セラミックスの物性状態および光学的不均一状態の種類がユーザに既知となっている、スペックルノイズ除去前の断層画像が用いられる。
【0108】
図27では、セラミックスの焼結体におけるき裂を検出する場合について機械学習を行うためのデータの例を示していることから、き裂が写っている断層画像が原画像として用いられている。
図26を参照して説明したように、原画像の背景部分にはスペックルノイズが含まれている。
識別番号B1の学習用データの場合、領域A311が背景部分に該当し、領域A312がき裂の部分の画像の領域に該当する。
【0109】
き裂の部分の画像の領域である領域A312は、比較的明るい領域となっている。背景画像の領域A311は、比較的暗い領域だが、スペックルノイズが含まれていることで、やや明るくなっている。領域A311がやや明るいことで、領域A311と領域A312とが比較的区別しにくい。この点で、スペックルノイズ除去前の画像ではき裂の領域を検出しにくい。
【0110】
識別番号B2の学習用データの場合、領域A321が背景部分に該当し、領域A322がき裂の部分の画像の領域に該当する。識別番号B3の学習用データの場合、領域A331が背景部分に該当し、領域A332がき裂の部分の画像の領域に該当する。
【0111】
図26を参照して説明したように、目標画像としては、原画像からスペックルノイズを除去した画像が用いられる。
識別番号B1の学習用データの場合、領域A411が、原画像の領域A311に相当する。背景画像の領域からスペックルノイズが除去されたことで、背景画像の領域がスペックルノイズ除去前より暗くなっている。領域A412は、原画像の領域A312に相当する。領域A412は、領域A312と同じく、比較的明るい領域となっている。
背景画像の領域からスペックルノイズが除去されて暗くなったことで、比較的明るい領域A412を検出し易くなっている。この点で、スペックルノイズ除去後の画像では、き裂の領域を検出し易くなっている。
【0112】
識別番号B2の学習用データの場合、領域A421が、原画像の領域A321に相当する。領域A422が、原画像の領域A322に相当する。識別番号B3の学習用データの場合、領域A431が、原画像の領域A331に相当する。領域A432が、原画像の領域A332に相当する。
【0113】
第2制御部390は、学習装置30の各部を制御して各種処理を行う。第2制御部390は、学習装置30が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、第2記憶部380からプログラムを読み出して実行することで構成される。
学習用データ取得部391は、学習用データを取得する。例えば、第2通信部310を介してユーザのパソコンなど学習用データを記憶している他の装置と通信を行い、学習用データを受信するようにしてもよい。あるいは、学習用データ取得部391が描画ツールに原画像を表示し、ユーザが原画像を目的画像に加工することで、学習用データ取得部391が原画像と目的画像との組を取得するようにしてもよい。そして、学習用データ取得部391が、得られた組毎に識別番号を付すことで学習用データを取得するようにしてもよい。
【0114】
学習用データ取得部391は、学習用データをセラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に学習用データ記憶部381に記憶させる。そのために、学習用データ取得部391が、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に分類された学習用データを取得するようにしてもよい。あるいは、ユーザが、学習用データ毎にセラミックスの物性状態および光学的不均一状態の種類を特定し、学習用データ取得部391が、ユーザの特定に従って学習用データを分類するようにしてもよい。
あるいは、学習用データ取得部391が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に分類された学習用データを取得するようにしてもよい。あるいは、学習用データ取得部391が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に学習用データを分類するようにしてもよい。
【0115】
学習用データ取得部391が、光干渉断層撮影に基づく方法以外の方法で光学的不均一状態の種類を特定して得られた学習用データを取得するようにしてもよい。例えば、ユーザが、赤外線カメラを用いて試料100を撮影するなど、光干渉断層撮影に基づく方法以外の方法で撮影された画像を参照して光学的不均一状態を特定するようにしてもよい。あるいは、ユーザが試料100を切断して断面を目視確認することで、光学的不均一状態を特定するようにしてもよい。
【0116】
機械学習部392は、スペックルノイズの除去処理における処理方法を、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に機械学習する。機械学習部392は、学習用データ記憶部381からセラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に学習用データを取得することで、物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に機械学習を行う。あるいは、機械学習部392が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に学習用データを取得するようにしてもよい。機械学習部392が、この学習用データを用いて、物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に機械学習を行うようにしてもよい。
機械学習部392が用いる機械学習アルゴリズムは、特定のものに限定されない。機械学習部392が用いる機械学習アルゴリズムとして、原画像および目的画像を含む学習用データを適用可能な、公知のいろいろなアルゴリズムを用いることができる。
【0117】
図28は、セラミックスの全ての物性状態、および、全ての光学的不均一状態に対して同一のスペックルノイズの除去処理方法を適用する不都合性の例を示す図である。
図28では、物性状態と光学的不均一状態との組み合わせ毎に、「処理前」、「処理後(好適)」、「処理後(不適)」の画像を示している。
図28に示す、物性状態と光学的不均一状態との組み合わせは、(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合、(2)成形体における顆粒痕を検出する場合、(3)焼結体における球状欠陥(気孔)を検出する場合、(4)焼結体における面状欠陥(クラック)を検出する場合である。
【0118】
「処理前」の画像は、スペックルノイズ除去処理前の画像である。
「処理後(好適)」の画像は、物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に好適なスペックルノイズ除去処理アルゴリズムを選択し処理を行った場合の画像である。
(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合、「処理後(好適)」での処理として、画素値の8ビット(bit)化、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化、明るさおよびコントラストの調整の順に処理を行っている。
【0119】
(2)成形体における顆粒痕を検出する場合、「処理後(好適)」での処理として、画素値の8ビット化、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化、フィルタ処理による画素の平均化、明るさおよびコントラストの調整の順に処理を行っている。この場合、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化における設定値、および、明るさおよびコントラストの調整における設定値は、(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合と異なる。
【0120】
(3)焼結体における球状欠陥を検出する場合、「処理後(好適)」での処理として、画素値の8ビット化、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化、明るさおよびコントラストの調整の順に処理を行っている。処理手順自体は(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合と同様であるが、明るさおよびコントラストの調整における設定値が異なる。(3)焼結体における球状欠陥を検出する場合の、「処理後(好適)」における画像では、破線で囲んだ部分に球状欠陥の画像を抽出できている。
【0121】
(4)焼結体における面状欠陥を検出する場合、「処理後(好適)」での処理として、画素値の8ビット化、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化、明るさおよびコントラストの調整の順に処理を行っている。処理手順自体は(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合と同様であるが、バックグラウンド処理による背景輝度の平均化における設定値、および、明るさおよびコントラストの調整における設定値が異なる。
【0122】
「処理後(不適)」の画像は、「処理後(好適)」の場合とは異なるスペックルノイズ除去処理アルゴリズムで処理を行った場合の画像を示している。具体的には、(3)焼結体における球状欠陥を検出する場合の「処理後(好適)」における処理を、(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合、(2)成形体における顆粒痕を検出する場合、(4)焼結体における面状欠陥を検出する場合の各々に適用している。この処理は、(3)焼結体における球状欠陥を検出する場合には好適な処理であるため、(3)焼結体における球状欠陥を検出する場合の「処理後(不適)」の画像は示されていない。
【0123】
(1)スラリーにおける凝集構造を検出する場合、「処理後(不適)」では、輝度の大きい一部の点のみが抽出されている。この画像は、比較的輝度が小さい点が抽出されていない点で、凝集構造が十分に示されていない画像となっている。
(2)成形体における顆粒痕を検出する場合、「処理後(不適)」では、スペックルノイズを十分に除去できていない。この画像は、スペックルノイズを十分に除去できていない点で画像全体が不明瞭であり、光学的不均一状態の判定が困難になっている。
【0124】
(4)焼結体における面状欠陥を検出する場合、「処理後(不適)」では、輝度の小さい領域の抽出が不十分である。この場合の「処理後(好適)」における画像と「処理後(不適)」における画像とを比較すると、「処理後(好適)」では、破線で囲んだ部分に面状欠陥の画像を抽出できている。これに対し、「処理後(不適)」では、破線で囲んだ部分に面状欠陥の画像を抽出できていない。
【0125】
このように、光学的不均一状態を検出するために、セラミックスの物性状態に応じて、かつ、光学的不均一状態に応じて、スペックルノイズ除去のための処理方法を選択する必要がある。そこで、機械学習部392は、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に機械学習を行って、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に処理方法を決定する。
【0126】
また、セラミックスの原料によっても好適な処理方法が異なることが考えられる。一方、異なる原料であっても、屈折率および光の吸収率など光学的な特性が同じであれば、原料毎に処理方法を変える必要はないと考えられる。そこで、機械学習部392が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎(特に、物質を光学的な特性で分類した種類毎)に機械学習を行って、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に処理方法を決定するようにしてもよい。
【0127】
解析装置20に代えて光干渉断層撮影装置10が、断層画像生成部291を備えるようにしてもよい。あるいは、断層画像生成部291が、光干渉断層撮影装置10および解析装置20の何れとも別の装置として構成されていてもよい。
解析装置20と学習装置30とが、同一のコンピュータを用いて構成されるなど、1つの装置として構成されていてもよい。
【0128】
次に、
図29から
図34を用いて解析システム1の動作について説明する。
図29は、試料100の解析を行う際に解析装置20が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図29の処理で、断層画像生成部291は、第1通信部210が光干渉断層撮影装置10から受信する試料100の測定結果を取得し、得られた測定結果に基づいて試料100の断層画像を生成する(ステップS11)。
そして、解析処理部292は、ステップS11で得られた断層画像を解析する(ステップS12)。
ステップS12の後、解析装置20は、
図29の処理を終了する。
【0129】
図30は、解析処理部292が、
図29のステップS12(解析処理)で行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図30の処理で、解析処理部292は、光学的不均一状態の種類毎に処理を行うループL1を開始する(ステップS21)。光学的不均一状態の種類の例として、気孔およびき裂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
次に、解析処理部292のスペックルノイズ除去処理部293は、断層画像生成部291が
図29のステップS11で生成した断層画像に対してスペックルノイズ除去処理を行う(ステップS22)。上述したように、学習装置30は、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に機械学習を行ってスペックルノイズ除去方法を決定している。スペックルノイズ除去処理部293は、学習装置30が決定したスペックルノイズ除去方法のうち、解析対象の断層画像におけるセラミックスの物性状態、および、ループL1で処置対象となっている光学的不均一状態の種類に応じたスペックルノイズ除去方法を用いる。
あるいは、学習装置30が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類に応じたスペックルノイズ除去方法を選択するようにしてもよい。例えばユーザが、セラミックスを構成する物質の種類を学習装置30にユーザ入力し、学習装置30が、ユーザ入力に応じたスペックルノイズ除去方法を選択するようにしてもよい。
【0131】
次に、解析処理部292の不均一状態検出部294は、ステップS22で得られたノイズ除去後の断層画像を用いて、試料100における光学的不均一状態を検出する(ステップS23)。具体的には、不均一状態検出部294は、ノイズ除去後の断層画像における光学的不均一部分を検出する。光学的不均一部分を検出した場合、不均一状態検出部294は、光学的不均一部分の大きさおよび形状に基づいて、光学的不均一状態の種類を判定する。
【0132】
そして、解析処理部292は、ループL1の終端処理を行う(ステップS24)。具体的には、解析処理部292は、光学的不均一状態の全種類についてループL1の処理を行ったか否かを判定する。未処理の光学的不均一状態の種類があると判定した場合、ステップS21に戻り、未処理の光学的不均一状態の種類について引き続きループL1の処理を行う。一方、光学的不均一状態の全種類についてループL1の処理を行ったと判定した場合、解析処理部292は、ループL1を終了する。
ステップS24でループL1を終了した場合、解析処理部292は、
図30の処理を終了する。
【0133】
図31は、スペックルノイズ除去方法を機械学習する際に学習装置30の機械学習部392が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。上述したように、学習用データ記憶部381はセラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に学習用データを記憶している。機械学習部392は、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に
図31の処理を行って、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎にスペックルノイズ除去方法を決定する。
【0134】
図31の処理で、機械学習部392は、セラミックスの物性状態毎に処理を行うループL2を開始する(ステップS31)。
さらに、機械学習部392は、光学的不均一状態の種類毎に処理を行うループL3を開始する(ステップS32)。
次に、機械学習部392は、学習用データを取得する(ステップS33)。具体的には、機械学習部392は、ループL2で処理対象となっているセラミックスの物性状態、および、ループL3で処理対象となっている光学的不均一状態の種類の学習用データを学習用データ記憶部381から読み出す。
【0135】
次に、機械学習部392は、ステップS33で得られた学習用データを用いてスペックルノイズ除去方法を機械学習する(ステップS34)。この機械学習により、機械学習部392は、ループL2で処理対象となっているセラミックスの物性状態、かつ、ループL3で処理対象となっている光学的不均一状態の種類の場合のペックルノイズ除去方法を決定する。
【0136】
そして、機械学習部392は、ループL3の終端処理を行う(ステップS35)。具体的には、機械学習部392は、光学的不均一状態の全種類についてループL3の処理を行ったか否かを判定する。未処理の光学的不均一状態の種類があると判定した場合、ステップS32に戻り、未処理の光学的不均一状態の種類について引き続きループL3の処理を行う。一方、光学的不均一状態の全種類についてループL3の処理を行ったと判定した場合、機械学習部392は、ループL3を終了する。
【0137】
ステップS35でループL3を終了した場合、機械学習部392は、ループL2の終端処理を行う(ステップS36)。機械学習部392は、セラミックスの全ての物性状態についてループL2の処理を行ったか否かを判定する。未処理の物性状態があると判定した場合、ステップS31に戻り、未処理の物性状態について引き続きループL2の処理を行う。一方、セラミックスの全ての物性状態についてループL2の処理を行ったと判定した場合、機械学習部392は、ループL2を終了する。
ステップS36でループL2を終了した場合、機械学習部392は、
図31の処理を終了する。
【0138】
あるいは、機械学習部392が、セラミックスの物性状態毎、光学的不均一状態の種類毎、かつ、セラミックスを構成する物質の種類毎に機械学習を行うようにしてもよい。そのために、危害学習部392が、
図31の処理で、セラミックスの物性状態毎のループ、および、光学的不均一状態の種類毎のループに加えて、セラミックスを構成する物質の種類毎のループを含む3重ループの処理を行うようにしてもよい。
【0139】
図32は、スペックルノイズ除去処理部293がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第1例を示す図である。
図32は、例えば、焼結体における気孔を検出する場合にスペックルノイズ除去処理部293が行う処理の手順の例を示している。スペックルノイズ除去処理部293は、
図30のステップS22で、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に行うスペックルノイズ除去処理の1つとして、
図32の処理を行う。
【0140】
図32で、原画像は、スペックルノイズ除去前の画像である。目的画像は、スペックルノイズ除去後の画像である。
図32の処理で、スペックルノイズ除去処理部293は、原画像を用いて処理Aを行う(ステップS41)。次に、スペックルノイズ除去処理部293は、処理Aで得られた画像と原画像とを用いて処理Bを行う(ステップS42)。さらに、スペックルノイズ除去処理部293は、処理Bで得られた画像を用いて処理Cを行う(ステップS43)。また、スペックルノイズ除去処理部293は、原画像を用いて処理Dを行う(ステップS44)。そして、スペックルノイズ除去処理部293は、処理Cで得られた画像と処理Dで得られた画像とを用いて処理Eを行う(ステップS45)。処理Eにて目的画像を得られる。
機械学習部392が、焼結体における気孔を検出する場合について、機械学習にて
図32の処理手順に決定する。スペックルノイズ除去処理部293は、機械学習部392が決定した処理手順に従って、
図32の処理を行う。
【0141】
図33は、スペックルノイズ除去処理部293がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第2例を示す図である。
図33は、例えば焼結体におけるき裂を検出する場合など、
図32の場合とは異なる物性状態および光学的不均一状態の場合の処理手順の例を示している。スペックルノイズ除去処理部293は、
図30のステップS22で、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に行うスペックルノイズ除去処理の1つとして、
図33の処理を行う。
【0142】
図33で、原画像は、スペックルノイズ除去前の画像である。目的画像は、スペックルノイズ除去後の画像である。
図33に示す例で、スペックルノイズ除去処理部293は、原画像を用いて処理Bを行い(ステップS51)、処理Bで得られた画像を用いて処理Fを行う(ステップS52)。さらに、スペックルノイズ除去処理部293は、処理Fで得られた画像を用いて処理Cを行い(ステップS53)、処理Cで得られた画像を用いて処理Bを行う(ステップS54)。さらに、スペックルノイズ除去処理部293は、ステップS54の処理Bで得られた画像を用いて処理Gを行い、目的画像を得る。
【0143】
図32が原画像を複数回用いる場合の例を示しているのに対し、
図33は、原画像を1回用いる場合の例を示している。
機械学習部392が、焼結体におけるき裂を検出する場合について、機械学習にて
図33の処理手順に決定する。スペックルノイズ除去処理部293は、機械学習部392が決定した処理手順に従って、
図33の処理を行う。
【0144】
図34は、スペックルノイズ除去処理部293がスペックルノイズ除去処理を行う処理の手順の第3例を示す図である。
図34は、例えば焼結体における球状欠陥(気孔)を検出する場合の処理手順の例を、
図32の場合よりも詳細に示している。
図32および
図33では、スペックルノイズ除去処理部293が行う処理として想定されるパターンの例を示しているのに対し、
図34では、より具体的な処理の例を示している。スペックルノイズ除去処理部293は、
図30のステップS22で、セラミックスの物性状態毎、かつ、光学的不均一状態の種類毎に行うスペックルノイズ除去処理の1つとして、
図34の処理を行う。
【0145】
図34で、原画像は、スペックルノイズ除去前の画像である。目的画像は、スペックルノイズ除去後の画像である。また、四角の各々が、画像に対する処理を示す。
例えば、Green、Blue、Redは、それぞれ画像の緑の画素値、青の画素値、赤の画素値を読み込む処理を示す。Clo(Closing)は、最大値フィルタによる拡張を行い、拡張と同じ回数だけ最小値フィルタによる収縮を行う処理を示す。BDAは、判別分析法で計算した閾値による二値化を示す。Ran(Range)は、画素ごとに注目画素を中心とした3×3ウィンドウ内の画素の最大値-最小値を出力する処理を示す。LBWは、外接矩形に対して充填率の低いもの(例えば、0.9未満)を残す処理を示す。Ave(Average)は、平均化処理((f1+f2)/2)を示す。
【0146】
機械学習部392は、例えば、原画像、目標画像に加えて重み画像を含む学習用データを用いて、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm;GA)と、遺伝的プログラミング(Genetic Programming;GP)とを併用した進化計算による機械学習を行って、
図34の処理手順に決定する。遺伝的プログラミングでは、演算を木構造で表した木を対象として遺伝的アルゴリズムの場合と同様の処理を行う。
スペックルノイズ除去処理部293は、機械学習部392が決定した処理手順に従って、
図34の処理を行う。
但し、上述したように、機械学習部392が用いる機械学習アルゴリズムは、特定のものに限定されない。
【0147】
[セラミックスの製造システムの構成]
解析システム1を用いてセラミックスの製造システムを構成するようにしてもよい。
図35は、本実施形態に係るセラミックスの製造システムの機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図35に示す構成で、セラミックスの製造システム2は、解析システム1と、調製装置40と、成形装置50と、焼結装置60とを備える。調製装置40は、調製制御部41を備える。成形装置50は、成形制御部51を備える。焼結装置60は、焼結制御部61を備える。
図35における解析システム1は、
図24における解析システム1と同様であり、同一の符号(1)を付して説明を省略する。
【0148】
セラミックスの製造システム2は、セラミックスを製造する。
調製装置40は、セラミックスの原料および溶媒を調製する。ここでいう調製は、セラミックスの原料及び溶媒を所定の分量で混ぜ合わせることである。調製によってスラリーを得られる。
調製制御部41は、調製装置40による調製を制御する。例えば、調製制御部41は、原料および溶媒の分量、混ぜ合わせの強さ、および、混ぜ合わせの時間を制御する。解析システム1の解析で調製の際に光学的不均一状態が生じたと判定された場合、調製制御部41は、解析結果に従って調製の制御を行う。
【0149】
成形装置50は、セラミックスの成形を行う。具体的には、成形装置50は、調製装置40が生成したスラリーを乾燥させた乾燥体に対して成形を行う。
成形制御部51は、成形装置50による成形を制御する。例えば、成形装置50が乾燥体に対してプレスを行う場合、成形制御部51は、プレスの強さおよび時間を制御する。解析システム1の解析で成形の際に光学的不均一状態が生じたと判定された場合、調製制御部41は、解析結果に従って成形の制御を行う。
【0150】
焼結装置60は、セラミックスの焼結を行う。具体的には、焼結装置60は、成形装置50が生成した成形体に対して焼結を行う。
焼結制御部61は、焼結装置60による焼結を制御する。例えば、焼結制御部61は、焼結の温度および時間を制御する。解析システム1の解析で焼結の際に光学的不均一状態が生じたと判定された場合、調製制御部41は、解析結果に従って焼結の制御を行う。
【0151】
このように、セラミックスの製造システム2が解析システム1による解析結果に基づいてセラミックスの製造を制御することで、例えば気孔およびき裂の発生頻度の低下など、セラミックス製造の精度の向上が期待される。
調製制御部41、成形制御部51および焼結制御部61のうち何れか1つ以上が、解析システム1の一部として構成されていてもよい。あるいは、調製制御部41、成形制御部51および焼結制御部61のうち何れか1つ以上が、解析システム1、調製装置40、成形装置50および焼結装置60の何れとも別の装置として構成されていてもよい。
【0152】
以上のように、ハーフミラー12は、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割し、セラミックスである試料100に照射光を照射する。参照ミラー13は、参照光を反射させる。検出器14は、参照ミラー13で反射した参照光と、セラミックスに照射光を照射して得られた戻り光との干渉を検出することにより、光干渉断層撮影を用いて試料100の内部構造を検出する。
光干渉断層撮影装置10によれば、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。具体的には、光干渉断層撮影装置10によれば、セラミックスの製造プロセスにおけるいろいろな工程で、いろいろな深度でセラミックスの断層画像を得られる。
【0153】
上記の赤外線領域の光は、中心波長が700ナノメートルから2000ナノメートルまで範囲内の光であって、かつセラミックスにて反射する光であってもよい。
これにより、光がセラミックスに吸収されず、光干渉断層撮影によるセラミックスの測定をより高精度に行えることが期待される。
【0154】
また、断層画像生成部291は、光干渉断層撮影にてセラミックスの製造過程における物性状態それぞれの断層画像を生成する。解析処理部292は、物性状態それぞれにおける断層画像を用いて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかの解析処理を行う。
解析システム1によればセラミックスの製造過程における気孔またはき裂等の光学的不均一状態の発生状態を把握することができ、セラミックスの製造工程における条件の見直しに反映させることができる。
【0155】
上記の物性状態は、前記製造過程おける前記セラミックスの原料を含むスラリー状態、前記スラリー状態の材料を乾燥させた乾燥状態、前記スラリー状態の材料を乾燥後に成形した成形状態、および、前記成形状態の材料を焼結させた焼結状態のうち何れか複数であってもよい。
これにより、解析システム1では、セラミックスにおける光学的不均一状態の有無を検出できるだけでなく、どの物性状態で光学的不均一状態が生じたかについて情報を得られる。
【0156】
また、スペックルノイズ除去処理部293は、断層画像において物性状態を構成する微粒子に起因したスペックルノイズの除去処理を行う。不均一状態検出部294は、スペックルノイズの除去処理後の断層画像で輝度が他と異なるエリアの形状および大きさに基づいて、いずれの物性状態において光学的不均一状態が生じているかを判定する。
不均一状態検出部294が、スペックルノイズ除去処理後の断層画像を用いて光学的不均一状態の検出を行う点で、光学的不均一状態の検出を高精度に行うことができる。
【0157】
また、機械学習部392は、スペックルノイズの除去処理における処理方法を物性状態毎の機械学習に基づいて決定する。
機械学習部392が、スペックルノイズの除去処理における処理方法を物性状態毎に決定することで、スペックルノイズ除去処理部293は、物性状態に応じてスペックルノイズの除去処理の方法を選択することができる。この点でスペックルノイズ除去処理部293は、スペックルノイズの除去処理を高精度に行うことができる。
【0158】
また、機械学習部392は、スペックルノイズの除去処理における処理方法を光学的不均一状態の種類毎の機械学習に基づいて決定する。
機械学習部392が、スペックルノイズの除去処理における処理方法を光学的不均一状態の種類毎に決定することで、スペックルノイズ除去処理部293は、光学的不均一状態の種類毎にスペックルノイズの除去処理を行うことができる。これにより、不均一状態検出部294による不均一状態の検出精度の向上が期待される。
【0159】
また、機械学習部392は、光干渉断層撮影に基づく方法以外の方法で光学的不均一状態の種類を特定して得られた学習用データに基づいて機械学習を行う。
これにより、学習用データの光学的不均一状態の種類毎の分類を高精度に行えると期待される。学習用データを光学的不均一状態の種類毎に高精度に分類できることで、機械学習部392によるスペックルノイズの除去処理の方法の学習精度の向上が期待される。
【0160】
また、調製装置40、成形装置50および焼結装置60のうち少なくとも何れか1つは、解析システム1による解析結果に基づいて、セラミックスの調製、成形、焼結のうち少なくとも何れか1つの条件を変化させる。
これにより、例えば気孔およびき裂の発生頻度の低下など、セラミックス製造の精度の向上が期待される。
【0161】
上記したように、解析装置20および学習装置30は、いずれもコンピュータを用いて構成されていてもよい。
図36は、実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図36に示すコンピュータ70は、CPU71と、主記憶装置72と、補助記憶装置73と、インタフェース74とを備える。
【0162】
コンピュータ70を用いて解析装置20を構成する場合、第1制御部290の各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置73に記憶されている。CPU71は、プログラムを補助記憶装置73から読み出して主記憶装置72に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU71は、プログラムに従って、第1記憶部280に対応する記憶領域を主記憶装置72に確保する。
【0163】
コンピュータ70を用いて学習装置30を構成する場合、第2制御部390の各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置73に記憶されている。CPU71は、プログラムを補助記憶装置73から読み出して主記憶装置72に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU71は、プログラムに従って、第2記憶部380に対応する記憶領域を主記憶装置72に確保する。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の実施形態は、光干渉断層撮影を用いたセラミックスの内部構造観察方法であって、赤外線領域の光を参照光と照射光に分割する工程と、前記セラミックスに前記照射光を照射する工程と、反射させた前記参照光と、前記セラミックスに前記照射光を照射して得られた戻り光との干渉を観察することにより、前記セラミックスの内部構造を観察する工程とを含む、セラミックスの内部構造観察方法に関する。
この実施形態によれば、セラミックスの製造プロセスにおける構造形成過程をリアルタイムに三次元的に観察することができる。
【符号の説明】
【0165】
1 解析システム
2 セラミックスの製造システム
10 光干渉断層撮影装置
11 光源
12 ハーフミラー
13 参照ミラー
14 検出器
20 解析装置
30 学習装置
40 調製装置
41 調製制御部
50 成形装置
51 成形制御部
60 焼結装置
61 焼結制御部
100 試料
210 第1通信部
280 第1記憶部
290 第1制御部
291 断層画像生成部
292 解析処理部
293 スペックルノイズ除去処理部
294 不均一状態検出部
310 第2通信部
380 第2記憶部
381 学習用データ記憶部
390 第2制御部
391 学習用データ取得部
392 機械学習部