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  • 特許-固体電解質アルカリ電池 図1A
  • 特許-固体電解質アルカリ電池 図1B
  • 特許-固体電解質アルカリ電池 図2A
  • 特許-固体電解質アルカリ電池 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】固体電解質アルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20221006BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/403 E
H01M50/434
H01M50/44
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/466
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020159487
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052944
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2021-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
(72)【発明者】
【氏名】川野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】長 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 政尚
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/118892(WO,A1)
【文献】特開平01-227363(JP,A)
【文献】特開2018-206659(JP,A)
【文献】特開平09-259921(JP,A)
【文献】特開2006-170918(JP,A)
【文献】特開2012-089388(JP,A)
【文献】特開2021-057291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/24-10/34
H01M 50/40-50/497
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と正極とが蛇腹状のセパレータを挟んで交互に配置された電極群と、
加圧機構と、
電解液を備え、
前記電極群の側端部を囲む枠形部材と、前記枠形部材の開口部を対向して覆う第1蓋部材と第2蓋部材とを備え、
前記負極の上端部が前記第1蓋部材の内側の面に当接し、前記正極の下端部が前記第2蓋部材の内側の面に当接しており、
前記加圧機構が前記電極群を垂直方向に加圧し、
前記セパレータが固体電解質を有する固体電解質アルカリ電池。
【請求項2】
前記セパレータがプラズマ処理またはフッ素ガス処理されている請求項1に記載の固体電解質アルカリ電池。
【請求項3】
前記固体電解質が金属酸化物である請求項1または2に記載の固体電解質アルカリ電池。
【請求項4】
前記金属酸化物がジルコニアまたは酸化イットリウムを含んでいる請求項3に記載の固体電解質アルカリ電池。
【請求項5】
前記セパレータは不織布に比表面積が20~120m2/gの前記金属酸化物を均一に分散配置した請求項4に記載の固体電解質アルカリ電池。
【請求項6】
前記金属酸化物が球状の粒子である請求項5に記載の固体電解質アルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の構造に関し、詳しくは、固体電解質を用いた積層電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に適した二次電池としてリチウムイオン電池が注目を集めいている。全固体電池は、可燃性の有機電解液を不燃性の無機固体電解質に置き換えた安全性の高い電池である。電池の大型化、高エネルギー密度化に向けて、革新的な蓄電池の開発が期待されているなかで、全固体電池が注目されている(非特許文献1)。
【0003】
特に、近年、電池における重要な構成要素である「電解質」として、固体電解質を用いた電池が注目されている。それは、固体電解質は電池特有の問題である漏液のおそれが無く、また従来の液体系の電池に比べて発熱等に対する引火性が低くなるため安全性が向上すること、および高分子固体電解質の優れた成形性により、電池自身の加工性が向上し、薄型で自由な形状の電池を実現することが可能である等の多くの特長を有するためである(特許文献1)。
【0004】
固体電解質は、液体電解質に比べてイオン導電性に劣るとともに、活物質に対する接触性が悪いため、十分な電池容量を得られにくい。そこで近年、このような問題点を克服する手段として、液体電解質と高分子固体電解質とを共に用いたゲル状高分子固体電解質電池が開発され、実用化されつつある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-268866号公報
【文献】特開平11-283673号公報
【文献】特開2015-225826号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】“全固体電池の最前線”、化学 Vol.67 No.7( 2012)p19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池の内部に電解液がなくなると、二次電池は電池として機能しなくなる。これはセパレータに保持された電解液がなくなると、正負電極間のイオン流通性が失われるからである。このような現象はドライアウトとして知られており、電池寿命を規制する一要因と位置付けられている。
【0008】
ドライアウトが生じる要因としては、電池内に存在する水素ガスによりセパレータが還元を受けてその親水性を失うことが主たる要因と考えられている。すなわち、セパレータに施されている親水基が水素により還元されて親水性を失った結果、セパレータが疎水性もしくは撥水性を示すようになる。セパレータの親水性が失われたセパレータは電解液の保持機能をなくし、この結果、正負極間のイオン導電性がなくなり電池として作用しなくなる。
【0009】
セパレータの親水処理法としてスルホン化処理が知られている。スルホン化処理して親水性を付与したセパレータは、スルホン基(-SO3H)が水素により還元されて、H2SO4となり親水性を失う。また、コロナ放電およびプラズマ放電を利用してセパレータに水酸基(-OH)もしくはカルボキシル基(-COOH)を取付けて親水性を付与することができる。しかし、水酸基およびカルボキシル基は水素により還元されて、セパレータは親水性を失う。このように、従来のセパレータは水素ガスにより還元されるので、電池寿命の観点から問題を有している。
【0010】
電池内に水素ガスが存在する理由として、電池が過充電されると正極から酸素が発生し負極から水素が発生する。過充電により生じた酸素が電池内の部品を酸化して消費されると結果的に水素が電池内に残ることになる。この他、電池内に意図的に水素ガスが封入された電池も存在する(例えば、特許文献3)。
【0011】
液体の電解質は流動性があり、反応活物質と接触してイオンの移動を促す。しかし、固体電解質の場合はイオン透過性に後述するような課題があり、電極間に圧力をかける加圧装置を必要とするが、電池の重量および容積が増大するという問題が生じる。
【0012】
本発明は、以上の事情に鑑みなされたものであって、従来の液体系の電池に比べて安全性が向上する固体電解質を用いることにより、固体電解質のイオン透過性の向上を図った二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するために、本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に介在して固体電解質を有するセパレータとを備えた第1電極群と、前記第1電極群を加圧する加圧機構と、電解液とを備えている。
【0014】
この構成によれば、イオン透過性の劣る固体電解質を有するセパレータに加圧機構を用いて大きな圧力を印加することにより固体電解質のイオン透過性を改善することができる。
【0015】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記セパレータがプラズマ処理またはフッ素ガス処理されている。この構成において、セパレータに親水処理を施して電解液によるイオン透過性を改善することができる。
【0016】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記固体電解質が金属酸化物である。また、本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記金属酸化物がジルコニアまたは酸化イットリウムを含んでいる。
【0017】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記セパレータは不織布に比表面積が20~120m2/gの前記金属酸化物を均一に分散配置されている。また、本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記金属酸化物の球状の粒子である。
【0018】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記第1電極群が、筒状の外装体の軸方向に沿って積層されており、前記第1電極群を前記外装体の軸方向に沿って貫通している導電性を有する集電体を備えていて、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極が、前記外装体の内面に当接して、前記外装体と電気的に接続されている一方、前記集電体と接触しておらず、前記正極および前記負極のいずれか他方の電極が、前記外装体に接触していない一方、前記集電体の外側面に当接して、前記集電体と電気的に接続されており、前記加圧機構が前記第1電極群を前記外装体の軸方向に加圧するようになっている。
【0019】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、前記正極と前記負極とが蛇腹状の前記セパレータを挟んで交互に配置された第2電極群を有し、前記第2電極群の側端部を囲む枠形部材と、前記枠形部材の開口部を対向して覆う第1蓋部材と第2蓋部材とを備え、前記負極の上端部が前記第1蓋部材の内側の面に当接し、前記正極の下端部が前記第2蓋部材の内側の面に当接しており、前記加圧機構が前記第2電極群を垂直方向に加圧するようになっている。
【0020】
本発明に係るアルカリ電池電池用のセパレータは、負極と正極の間に介在し、球状の粒子のジルコニアまたは酸化イットリウムが分散配置され、加圧機構により加圧が可能となっている。
【発明の効果】
【0021】
電極群を加圧することにより、固体電解質を有するセパレータのイオン透過性がよくなり、ドライアウトを未然に防止すると共に、セパレータ抵抗が減少して充放電効率が高くなる。更に、電池の電極全体をまとめて加圧することにより重量エネルギー密度の低下が少ない二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】第1実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の軸方向断面図である。
図1B】第1実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の側面図である。
図2A】第2実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の構造を示す一部破断図である。
図2B】第2実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の各実施形態について説明するのに先立ち、本発明が適用されるアルカリ電池としてニッケル水素電池を例に取り説明する。なお、二次電池のタイプはニッケル水素電池に限定されるものでない。
【0025】
電極基板は、電気伝導性が高く、保持した電極材料に通電し得る材料であれば特に限定されない。正極は、電解液中の安定性と耐酸化性の観点から電極基板としてはNiが好ましい。なお、鉄にニッケルを被覆したものを用いてもよい。負極基板は、電解液中の安定性と耐還元性の観点からNi等が好ましい。なお、鉄にニッケルやカーボンを被覆したものを用いてもよい。
【0026】
電極基板の形状としては、線状、棒状、板状、箔状、網状、織布、不織布、エキスパンド、多孔体、エンボス体又は発泡体があり、このうち充填密度を高めることができること、出力特性が良好なことから、エンボス体又は発泡体が好ましい。
【0027】
正極材料としては、例えば、酸化銀、二酸化マンガン、オキシ水酸化ニッケルがあげられる。負極材料としては、水素吸蔵合金、白金、パラジウムがあげられる。このうち、水素貯蔵容量、充放電特性、自己放電特性およびサイクル寿命特性の観点から、AB5型の希土類-ニッケル合金である、MmNiCoMnAlのミッシュメタルを含んだ5元系合金であることが好ましい。あるいは、超格子水素吸蔵合金といわれるLaMgNi系であることが好ましい。なお、これら合金は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0028】
導電助剤は、活物質に導電性を付与し、その利用率を高めるためのものである。導電助剤は、放電時に電解液に溶出することなく、かつ、水素で還元されにくい炭素材料であることが好ましい。
【0029】
正極材料、結着剤、および、導電性粉末を混合してペースト状に混練する。このペーストを、電極基板に塗布または充填し、乾燥させる。その後、ローラープレス等で電極基板を圧延することにより、正極を作製する。同様に、負極材料、結着剤、および、導電性粉末を混合してペースト状に混練する。このペーストを、電極基板に塗布または充填し、乾燥させる。その後、ローラープレス等で電極基板を圧延することにより、負極を作製する。
【0030】
結着剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)を含むものが使用できる。
【0031】
また、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用してもよい。PTFEは、水素により還元されにくく、水素雰囲気中で長期間使用しても劣化が進みにくく、長寿命が期待できる。
【0032】
正負極材料、結着剤、および、導電助剤の合計を100質量%とした場合、正負極に配合される結着剤の質量比は、20質量%以下に設定するのが好ましく、10質量%以下に設定するのがより好ましい。
【0033】
電解質は、水素を活物質とする電池で用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)および水酸化カリウム(KOH)を水に溶かしたものが好適である。
【0034】
セパレータとしては、水素を活物質とする電池に用いられる公知のものが使用できる。セパレータの形状としては、微多孔膜、織布、不織布、圧粉体が挙げられ、このうち、出力特性と作製コストの観点から不織布が好ましい。セパレータの材質としては、特に限定されないが、耐アルカリ性、耐酸化性、耐還元性を有することが好ましい。ポリオレフィン系繊維がより好ましく、例えば、ポリプロピレンもしくはポリエチレンが好ましい。
【0035】
具体的には、ポリオレフィン系の不織布を用いた。ポリオレフィン系繊維は疎水性であるので、プラズマ処理により親水化処理を施した。水素ガスが封入された電池の場合は、フッ素ガス処理を施したセパレータであってもよい。
【0036】
不織布の内部または表面の少なくとも一方に金属酸化物を有するセパレータは、耐水素還元性および耐アルカリ性の観点から好ましい。
【0037】
金属酸化物としては例えば、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、イットリウム酸化物等の固体電解質が挙げられる。このうち、ジルコニア(ZrO)もしくは酸化イットリウム(Y)が好ましい。これら固体電解質は親水性を有しており、かつ、水素により劣化しにくいので長期にわたって親水性を保持し、電解液のドライアウトを抑制することが可能である。
【0038】
ジルコニアは比表面積が20~120m2/gの粉体状としたものを水に分散させてスラリーにし、グラビアロールを用いて前述の不織布にコーティングした後に乾燥させて固体電解質セパレータを製作した。この結果、不織布内部に均一にジルコニアをコーティングすることができた。
【0039】
ジルコニア粒子の比表面積が小さすぎるとセパレータの保液性が低くなり、大きすぎると不織布内部への充填率、均一性が低下する。なお、ジルコニア粒子の形状としては球形が好ましく、球形から外れ異形になるとそれに応じて最密充填が難しくなる。粒子径が小さすぎると均一な分散が難しくなる。
【0040】
以上のように、固体電解質を用いてセパレータを製造することにより、耐水素還元性の向上を図ると共に、長期に渡る親水性・保水性の維持を図ることが可能となりアルカリ水素電池の寿命改善を図ることが可能となる。
【0041】
しかし、固体電解質は硬質の固体を使用するため、活物質と固体電解質間の界面の電気抵抗が高いという課題がある。そこで、固体電解質を含む電極に加圧装置を用いてイオン導電性の改善を図ることを可能にした。以下に、詳述する。
【0042】
<第1実施形態のアルカリ電池>
アルカリ電池の構造の形態は特に限定されないが、積層型の電池が加圧機構を取り付けるのに好都合である。
【0043】
図1Aに本発明に係る固体電解質アルカリ電池の軸方向断面図を示す。図1Bは固体電解質アルカリ電池の側面図である。図1Aに示す積層型のアルカリ電池11は、筒状の外装体12と棒状の集電体17と外装体内部に収納される電極群13とを主な構成要素として備えている。外装体12の両端開口部に取り付けられた蓋部材16は、電極群13を外装体12に収納後に開口部において密に嵌合される。
【0044】
集電体17は、鉄にニッケルメッキを施した材料でできている。電極群13は、集電体を貫通して順次積み重ねるように配されている。集電体17がセパレータ13cに含まれる電解液により腐食されるのを防止するために、ニッケルメッキが施されている。集電体の軸部17aは、正極13aと負極13bとセパレータ13cとから構成される電極群13の中央を、外装体12の軸方向(図1AのX方向)に貫通している。
【0045】
正極13aと、負極13bと、正極13aと負極13bの間に介在するセパレータ13cとから構成される電極群13は、外装体12の軸方向(図1AのX方向)に積層して外装体12の内部に収納されている。負極13bの中央に設けられた穴の径は、集電体の軸部17aの外径より小さいので、負極13bは穴の周縁部において集電体の軸部17aと接触して、負極13bと集電体17は、電気的に接続されている。正極13aの外径は外装体12の内径より少し大きいので、正極13aはその外縁部において外装体の内面12aと接触しており、正極13aと外装体12は電気的に接続されている。
【0046】
負極13bの外径は外装体12の内径よりも小さく、負極13bは外装体12に接触せず、負極13bと外装体12は電気的に絶縁されている。一方、正極13aの中央に設けられた穴の径は、軸部17aの外径より大きく、正極の穴の周縁部は軸部17aと接触せず、正極13aと集電体17は、電気的に絶縁されている。外装体12は正極端子として機能し、集電体の軸部17aは負極端子を構成する。
【0047】
セパレータ13cの外縁が、正極13aにより覆われており、セパレータ13cにおける集電体17が貫通する穴の周縁が負極13bにより覆われており、負極13bの外縁がセパレータ13cにより覆われており、正極13aにおける集電体17が貫通する穴の周縁がセパレータ13cにより覆われている。この結果、正負電極間、正極と集電体および負極と外装体との間は確実に絶縁されている。
【0048】
外装体12の両端の蓋部材16は、絶縁板14を介して電極群13に当接している。2つの蓋部材16は連結ボルト18により互いに連結されている。蓋部材16には連結ボルト18を通すための穴が設けられている。図1Bでは6本の連結ボルト18により蓋部材18が互いに連結されている。連結ボルトの数は4以上であることが好ましく、6乃至は10であってもよい。
【0049】
連結ボルト18の両端部又は全体にネジが切られており、連結ボルト18で連結してナット19で固定することによりアルカリ電池11を組み立てる。
【0050】
複数のボルト18で連結された左右の蓋部材16にサンドイッチされた電極群13は、ナット19を締め付けることにより、電極の積層方向(図1AのX方向)に加圧・圧縮される。この圧縮による応力は蓋部材16を介して電極群13の固体電解質を含むセパレータ13cに伝わる。これにより、固体電解質を含むセパレータ13cのイオン透過性が高まる。なお、ナット19には緩み止めのロックナットを装備してもよい。
【0051】
加圧機構を利用してセパレータを圧縮すれば、固体電解質を含むセパレータのイオン透過性を高めることできる。
【0052】
<第2実施形態のアルカリ電池>
図2Aは、本発明の第2実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の構造を示す一部破断断面図である。図2Bは、第2実施形態に係る固体電解質アルカリ電池の側面図である。アルカリ電池31は、第1実施形態と同様、水素吸蔵合金を主材料とした負極33と、水酸化ニッケルを主材料とした活物質からなる正極34と、固体電解質を有するポリオレフィン系の不織布からなるセパレータ35とを有する。なお、負極3と正極34とセパレータ35とを合わせて電極群32と称する。電極群32の周囲を取り囲むように形成された矩形の枠形部材37と、枠形部材37と電極群32とを上下から覆う矩形の第1蓋部材38と第2蓋部材39とによって角形のアルカリ電池31が構成されている。
【0053】
図2Aに示すように、アルカリ電池31の内部には、短冊状の負極33と短冊状の正極34とが、蛇腹状(プリーツ状)に折り曲げられたセパレータ35を介して互いに対向して交互に挟みこまれ、セパレータ35の上方に負極33、下方に正極34となるよう配置されている。そして、負極33と第1蓋部材38の負極集電面38aとが当接し、正極34と第2蓋部材39の正極集電面39aとが当接した状態となっている。
【0054】
なお、第1蓋部材38および第2蓋部材39はニッケルめっきを施した鋼板で形成されており、第1蓋部材38は負極端子として機能し、第2蓋部材39が正極端子として機能する。電極群32を内包した蓋部材38,39は、絶縁性のケース40の内部に収納されている。
【0055】
また、第1蓋部材38および第2蓋部材39の材料としては、ニッケルめっきした鋼板を用いたが、例えばニッケル金属や炭素板およびニッケルめっきした炭素板でもよい。蓋部材38,39の内方空間には所定量の電解液が装填されている。なお、電極群32の周囲を囲む枠形部材37は絶縁材からなる。
【0056】
積層された電極群32の一方の端面であって、電極群32と枠形部材37の間に押板41が配置されている。ケース40の側面にねじ穴43が設けられていて、このねじ穴43に押しボルト42が螺合するようになっている。押しボルト42の先端は枠形部材37を貫通して押板41に当接している。
【0057】
押しボルト42を回転させることにより、押しボルト42は左方に移動して電極群32を加圧・圧縮する。これにより固体電解質を含んだセパレータ35の垂直方向に大きな応力が作用する。このように押しボルトを利用した加圧機構を用いてセパレータを圧縮することにより、固体電解質を含むセパレータのイオン透過性を高めることできる。図2Bはアルカリ電池31の側面図である。図2Bでは3本の押しボルト42で加圧機構を構成しているが、押しボルトの数はこれより多くても少なくてもよい。
【0058】
なお、押板41の側面にはシール剤が塗布されていて、第1蓋部材38及び第2蓋部材39と押板41の隙間から電解液が漏れるのを防いでいる。
【0059】
第1実施形態および第2実施形態のアルカリ電池は、いずれも積層タイプの電池である。積層電池の場合、加圧機構を設けることが容易であって、その寸法も小さいことは各実施形態に示すとおりである。加圧機構を用いても、電池の容積当たりの電気量を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る固体電解質アルカリ電池は、産業用のみならず民生用の蓄電装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
11 アルカリ電池
12 外装体(a:側部内面)
13 電極群(a:正極、b:負極、c:セパレータ)
14 絶縁板
16 蓋部材
17 集電体(a:軸部)
18 連通ボルト
19 ナット
31 アルカリ電池
32 電極群
33 負極
34 正極
35 セパレータ
37 枠形部材
38 第1蓋部材(a 負極集電面)
39 第2蓋部材(a 正極集電面)
40 ケース
41 押板
42 押しボルト
43 ねじ穴

図1A
図1B
図2A
図2B