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  • 特許-低圧配電線の電圧管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】低圧配電線の電圧管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H02J3/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021204314
(22)【出願日】2021-12-16
【審査請求日】2022-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
(72)【発明者】
【氏名】久野 泰治
(72)【発明者】
【氏名】森 恭平
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 大輔
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123450(JP,A)
【文献】特開2019-187224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有し、
低圧用電圧調整装置は、
低圧配電線の電圧が所定範囲内であるとともに基準値が含まれる不動作域内にあるときは、低圧配電線への無効電力の供給は行わずに低圧配電線の電圧を調整せず、
低圧配電線の電圧が不動作域外となったときは、低圧配電線に無効電力を供給して低圧配電線の電圧が不動作域内となるように調整し、
低圧配電線の電圧が不動作域内であるとともに基準値より大きいときに、低圧配電線に無効電力を進み無効電力の状態で待機し、
低圧配電線の電圧が不動作域内であるとともに基準値より小さいときに、低圧配電線に無効電力を遅れ無効電力の状態で待機する、電圧管理システム。
【請求項2】
低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有し、
低圧用電圧調整装置は、
高圧配電線の電圧を基準値に維持するための高圧用電圧調整装置が電圧を調整しない不動作域に基づき、低圧配電線の電圧の調整を行う動作基準域が設定されており、
動作基準域の中心値より上方であるとともに動作基準域の上限値を含む上側動作調整域内、及び、動作基準域の中心値より下方であるとともに動作基準域の下限値を含む下側動作調整域内において低圧配電線の電圧を調整する、電圧管理システム。
【請求項3】
低圧用電圧調整装置は、
低圧配電線の電圧が動作基準域内であるとともに動作基準域の中心値より大きいときに、低圧配電線に無効電力を進み無効電力の状態で待機し、
低圧配電線の電圧が動作基準域内であるとともに動作基準域の中心値より小さいときに、低圧配電線に無効電力を遅れ無効電力の状態で待機する、請求項に記載の電圧管理システム。
【請求項4】
低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有し、
低圧用電圧調整装置は、
高圧配電線の電圧を基準値に維持するための高圧用電圧調整装置が電圧を調整しない高圧配電線用不動作域に基づいて、低電圧配線用不動作域が設定されており、
低圧配電線の電圧が所定範囲内であるとともに基準値が含まれる低電圧配線用不動作域内にあるときは、低圧配電線への無効電力の供給は行わずに低圧配電線の電圧を調整せず、
低圧配電線の電圧が低電圧配線用不動作域外となったときは、低圧配電線に無効電力を供給して低圧配電線の電圧が不動作域内となるように調整する、電圧管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、低圧配電線の電圧管理システムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、配電線に電圧変動が生じた際、配電線に無効電力を供給し、配電線の電圧変動を抑制する(基準電圧に復帰させる)技術が開示されている。特許文献1では、高圧配電線に高圧配電線の電圧を所定範囲内に保持する低圧用電圧調整装置(無効電力補償装置)を配置し、低圧配電線に低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持する低圧用電圧調整装置(無効電力補償装置)を配置している。特許文献1では、高圧用電圧調整装置及び低圧用電圧調整装置は、各々高圧配電線及び低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-078237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、低圧配電線用電圧調整装置は、低圧配電線の電圧に基づいて低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するようにオン・オフを繰り返す。しかしながら、近年、太陽光発電装置等の分散電源の普及に伴い、配電線の電圧変動が起こりやすくなっている。そのため、低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するために、低圧配電線用電圧調整装置を頻繁に作動させる必要が生じる。その結果、低圧配電線用電圧調整装置の容量が枯渇しやすくなり、電圧調整力が低下する可能性がある。よって、低圧配電線用電圧調整装置の容量を確保するための新たな電圧管理システムが必要とされている。本明細書は、低圧配電線の新たな電圧管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する電圧管理システムは、低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。この電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有している。そして、低圧用電圧調整装置は、低圧配電線の電圧が所定範囲内であるとともに基準値が含まれる不動作域内にあるときは、低圧配電線への無効電力の供給は行わずに低圧配電線の電圧を調整しない。また、低圧用電圧調整装置は、低圧配電線の電圧が不動作域外となったときは、低圧配電線に無効電力を供給して低圧配電線の電圧が不動作域内となるように調整する。
【0006】
本明細書で開示する他の電圧管理システムは、低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。この電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有している。そして、低圧用電圧調整装置は、高圧配電線の電圧を基準値に維持するための高圧用電圧調整装置が電圧を調整しない不動作域に基づき、低圧配電線の電圧の調整を行う動作基準域が設定されている。また、低圧用電圧調整装置は、動作基準域の中心値より上方であるとともに動作基準域の上限値を含む上側動作調整域内、及び、動作基準域の中心値より下方であるとともに動作基準域の下限値を含む下側動作調整域内において低圧配電線の電圧を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電圧管理システムの概略図を示す。
図2】不動作域を説明するための図を示す。
図3】実施例の電圧管理システムの特徴を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示する電圧管理システムは、配電線への負荷接続、分散電源による配電線への有効電力の供給等により低圧配電線の電圧が所定範囲外になったときに、低圧配電線の電圧を所定範囲内に回復(復帰)させ、低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。なお、分散電源の一例として、太陽光発電装置が挙げられる。発電所(または変電所)から需要家に電力を供給する配電線には、発電所からの電力が供給される高圧配電線と、需要家に電力を供給する低圧配電線が存在する。低圧配電線は、変圧器を介して高圧配電線に接続されている。
【0009】
電圧管理システムは、変圧器を介して高圧配電線に接続されている低圧配電線の電圧を一定にする(所定範囲内に保持する)電圧調整装置を備えていてよい。電圧調整装置は、低圧配電線の電圧が所定範囲外になったときに電圧を所定範囲内に回復するために、低圧配電線に接続されていてよい。電圧調整装置は、無効電力補償機能を有し、低圧配電線の電圧を所定範囲内に保持するために、低圧配電線に無効電力を供給してよい。電圧調整装置は、低圧配電線の電圧が所定範囲外になったときに、数m秒から十数m秒で、低圧配電線の電圧を所定範囲内に回復(無効電力を供給)してよい。電圧調整装置として、例えば、無効電力補償装置、スマートインバータ等が挙げられる。
【0010】
電圧管理システムは、電圧調整装置に対し、低圧配電線の電圧が基準値から変動しても低圧配電線の電圧を調整しない不動作域を設定してよい。不動作域は、所定範囲(低圧電源線の管理電圧範囲)内において、所定範囲より狭い範囲で設定してよい。具体的には、不動作域は、所定範囲の中央値(電圧管理基準値)の上下に、等しい範囲だけ設定されてよい。また、不動作域は、高圧配電線に接続されている高圧用電圧調整装置の不動作域に基づいて設定してよい。具体的には、電圧調整装置の不動作域は、低圧配電線の電圧が、高圧用電圧調整装置の不動作域の電圧に対応する電圧である範囲に設定してよい。典型的に、高圧用電圧調整装置の不動作域は、高圧配電性の電圧が基準値から大きく離れていない範囲(管理電圧範囲の上下限から離れている範囲)に設定される。また、低圧配電線は、変圧器を介して高圧配電線に接続されている。そのため、高圧配電線の電圧が高圧用電圧調整装置の不動作域の電圧である場合、低圧配電線の電圧も基準値から大きく離れていないことが多い。そのため、電圧調整装置に対し不動作域を設定しても、低圧配電線の電圧が所定範囲(低圧電源線の管理電圧範囲)から外れることは起こりにくい。電圧管理システムは、電圧調整装置に対して不動作域を設定することにより、電圧調整装置が頻繁に作動することが抑制され、電圧調整装置の容量が確保されやすい。その結果、電圧調整装置の電圧調整力が低下することを抑制することができる。
【0011】
電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が不動作域外になったときに、低圧配電線に無効電力を供給して低圧配電線の電圧を不動作域外の所定範囲内で調整してよい。電圧調整装置は、数m秒から十数m秒といった短時間で、低圧配電線の電圧を所定範囲内に回復することができる。そのため、低圧配電線の電圧が所定範囲の上下限近傍(不動作域外)、あるいは、所定範囲外になったときに低圧配電線に無効電力を供給しても、即座に低圧配電線の電圧を所定範囲内に回復することができる。しかしながら、例えば低圧配電線の電圧が所定範囲外になったときに低圧配電線の電圧を管理基準値(不動作域の中央値)まで回復させると、電圧調整装置の容量が大きく失われる。低圧配電線の電圧を不動作域外の所定範囲内で調整することにより、電圧調整装置の容量をさらに確保することができる。
【0012】
電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が不動作域内であるとともに基準値より大きいときに、低圧配電線に無効電力を供給せずに進み無効電力の状態で待機してよい。また、低圧配電線の電圧が不動作域内であるとともに基準値より小さいときに、低圧配電線に無効電力を供給せずに遅れ無効電力の状態で待機してよい。この場合、低圧配電線に無効電力が供給されないので、電圧調整装置の容量は失われない。また、進み無効電力、あるいは、遅れ無効電力の状態で待機しているので、低圧配電線の電圧が不動作域外になったときに、即座に低圧配電線に無効電力を供給することができる。その結果、低圧配電線の電圧が正常値に回復する時間を短くすることができる。なお、進み無効電力、遅れ無効電力の状態で待機する場合、各々進み無効電力最大、遅れ無効電力最大状態で待機してよい。
【0013】
電圧管理システムは、電圧調整装置に対し、不動作域を設定することに代え、低圧配電線の電圧の調整を行う動作基準域を設定してもよい。動作基準域は、高圧用電圧調整装置が電圧を調整しない不動作域に基づいて設定されてよい。具体的には、動作基準域は、低圧配電線の電圧が、高圧用電圧調整装置の不動作域の電圧に対応する電圧である範囲に設定してよい。そして、電圧調整装置に動作基準域を設定する場合、電圧調整装置は、動作基準域の中心値より上方であるとともに動作基準域の上限値を含む上側動作調整域内、及び、動作基準域の中心値より下方であるとともに動作基準域の下限値を含む下側動作調整域内において低圧配電線の電圧を調整。すなわち、低圧配電線の電圧を、高圧用電圧調整装置の不動作域の電圧に対応する電圧の上限値近傍(上側動作調整域)、又は、高圧用電圧調整装置の不動作域の電圧に対応する電圧の下側値近傍(下側動作調整域)で調整してよい。低圧配電線の電圧を管理基準値(動作基準域の中央値)まで回復させる場合と比較して、電圧調整装置の容量を大きく確保することができる。
【0014】
電圧調整装置に対して動作基準域を設定する場合も、電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が動作基準域内であるとともに動作基準域の中心値より大きいときに、低圧配電線に無効電力を供給せずに進み無効電力の状態で待機してよい。また、低圧配電線の電圧が動作基準域内であるとともに動作基準域の中心値より小さいときに、低圧配電線に無効電力を供給せずに遅れ無効電力の状態で待機してよい。低圧配電線の電圧が所定範囲外になったときに、即座に低圧配電線に無効電力を供給することができる。なお、進み無効電力、遅れ無効電力の状態で待機する場合、各々進み無効電力最大、遅れ無効電力最大状態で待機してよい。
【実施例
【0015】
図1を参照し、電圧管理システム10について説明する。電圧管理システム10は、高圧配電線3の配線に接続されている高圧用無効電力補償装置30と、低圧配電線12a,14a及び16aに接続されている低圧用無効電力補償装置20を備えている。まず、高圧配電線3と、低圧配電線12a,14a及び16aの関係について説明する。
【0016】
高圧配電線3には、発電所2から電力が供給される。また、高圧配電線3には、変圧器(ポールトランス)Trを介して低圧配線(低圧配電線)12a,14a及び16aが接続されている。高圧配電線3は、3本の高圧配線(3相の配線)4,6,8を有している。低圧配電線12a,14a及び16aは、第1配線(第1相)4,第2配線(第2相)6及び第3配線(第3相)8のうちの2相に接続されている。低圧配電線12a,14a及び16aは、接続している高圧配線に応じて、3グループに区別することができる。具体的には、第1グループ16の低圧配線(第1低圧配電線16a)は、第1配線4及び第2配線6に接続されている。第2グループ14の低圧配線(第2低圧配電線14a)は、第2配線6及び第3配線8に接続されている。第3グループ12の低圧配線(第3低圧配電線12a)は、第1配線4及び第3配線8に接続されている。図1に示すように、グループ12,14,16のうち、第1グループ16の低圧配線(第1低圧配電線16a)が最も多く、第2グループ14の低圧配線(第2低圧配電線14a)が最も少ない。そのため、第1配線4に最も多くの低圧配線が接続されており、第3配線8に最も少ない低圧配線が接続されている。
【0017】
高圧配電線3には、高圧用無効電力補償装置30が接続されている。高圧用無効電力補償装置30は、第1配線4,第2配線6及び第3配線8に接続されており、各配線4,6,8の電圧を常時検出している。また、高圧用無効電力補償装置30は、各配線4,6,8の電圧に相違が生じたときに、各配線4,6,8に無効電力を供給し、各配線4,6,8の電圧を均一に調整する。高圧用無効電力補償装置30は、高圧用電圧調整装置の一例である。
【0018】
図2を参照し、高圧用無効電力補償装置30の動作について説明する。高圧用無効電力補償装置30は、各配線4,6,8の電圧を管理基準値(所定範囲)内に調整する。具体的には、高圧用無効電力補償装置30各配線4,6,8の電圧が上昇すると電圧を低下させ、各配線4,6,8の電圧が低下すると電圧を上昇させる動作を行う。そして、各配線4,6,8の電圧を、管理基準値としての上限値V-下限値Vの間に調整する。しかしながら、高圧用無効電力補償装置30には、電圧の変動に係わらず、高圧配電線3の電圧を調整しない不動作域(電圧V-V間)が設定されている。不動作域V-Vは、管理基準値の上限値V及び下限値Vに対して十分な余裕がある範囲が設定される。そのため、具体的動作を説明すると、タイミングTにおいて高圧配電線3の電圧がVaの場合、高圧用無効電力補償装置30は高圧配電線3に無効電力を供給しない。一方、タイミングTにおいて高圧配電線3の電圧がVbの場合、高圧用無効電力補償装置30は高圧配電線3に無効電力を供給し、高圧配電線3の電圧を低下させる。また、タイミングTにおいて高圧配電線3の電圧がVcの場合、高圧用無効電力補償装置30は高圧配電線3に無効電力を供給し、高圧配電線3の電圧を上昇させる。
【0019】
図1に戻り、低圧配電線12a,14a及び16aについて説明する。低圧配電線12a,14a及び16aには、負荷(電力の需要家等)24が接続されている。また、低圧配電線12a,14a及び16aの各々に、低圧用無効電力補償装置20が接続されている。低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aに供給する無効電力の出力を変化させ、低圧配電線12a,14a,16a2の電圧を所定範囲内に維持する。すなわち、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が所定範囲外に変動すると、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給し、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を所定範囲内に維持する(回復させる)。低圧用無効電力補償装置20は、低圧用電圧調整装置の一例である。
【0020】
高圧配電線3から低圧配電線12a,14a,16aに供給される電圧は、変圧器Trによって、管理基準値(所定範囲)内に調整される。そのため、高圧配電線3の電圧が上昇すると、低圧配電線12a,14a,16aの電圧も上昇する。一方、高圧配電線3の電圧が低下すると、低圧配電線12a,14a,16aの電圧も低下する。
【0021】
(第1実施例)
図3を参照し、低圧用無効電力補償装置20の動作について説明する。上述したように、高圧配電線3から低圧配電線12a,14a,16aに供給される電圧は、変圧器Trによって管理基準値内に調整される。そのため、高圧配電線3の電圧が管理基準値の上限値Vの場合、低圧配電線12a,14a,16aの電圧は管理基準値の上限値V11に調整される。高圧配電線3の電圧が管理基準値の下限値Vの場合、低圧配電線12a,14a,16aの電圧は管理基準値の下限値V12に調整される。一例として、上限値V11は222Vであり、下限値V12は182Vである。この上限値V11と下限値V12の間を管理基準域V11-V12と設定する。
【0022】
低圧用無効電力補償装置20にも、電圧の変動に係わらず、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を調整しない不動作域が設定されている。低圧用無効電力補償装置20の不動作域は、高圧配電線3の不動作域V-Vに基づいて設定されている(図2も参照)。具体的には、低圧用無効電力補償装置20の不動作域は、高圧配電線3の不動作域V-Vを変圧器Trによって変圧した範囲(電圧V-V間)に設定される。低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V-V内の場合、低圧配電線12a,14a,16aの電圧変動に係わらず動作せず、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給しない。
【0023】
しかしながら、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V-V内の場合であっても、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給するための準備状態で待機している。具体的には、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が基準値Vより大きく、不動作域の上限値V以下のときは、進み無効電力最大の状態で待機している。また、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が基準値Vより小さく、不動作域の下限値V以上のときは、遅れ無効電力最大の状態で待機している。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V-V外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給し、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を調整する。なお、基準値Vは、不動作域V-Vの中央値であり、また、管理基準値V11-V12の中央値でもある。
【0024】
図3(E1)は、低圧用無効電力補償装置20の電圧調整範囲を示している。管理基準域V11-V12の範囲内に不動作域V-Vを設定し、不動作域V-Vの外側に動作調整域V-V31及びV-V32を設定している。低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域の上限値Vを超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を上側動作調整域電圧V-V31の範囲内、好ましくは、上限値V未満となるように調整する。具体的には、電圧が上限値Vを超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、電圧が上限値Vとなるように遅れ無効電力を低圧配電線12a,14a,16aに最大出力で供給する。遅れ無効電力を最大出力で供給した結果、電圧が上側動作調整域電圧V-V31の範囲内になった場合は、電圧が上限値Vとなるように出力を増減調整しながら遅れ無効電力を供給し続ける。また、遅れ無効電力を最大出力で供給した結果、電圧が上限値V未満になった場合は、遅れ無効電力の出力を徐々に減らしながら電圧が上限値V未満に安定するまで供給を続け、電圧が上限値V未満で安定したと判断したときに出力を停止して準備状態に待機する。これにより、出力停止後に電圧が上限値Vに急激に上昇することを回避できる。
【0025】
一方、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域の下限値Vより低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を下側動作調整域電圧V-V32の範囲内、好ましくは、下限値V超過となるように調整する。具体的には、電圧が下限値Vより低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、電圧が下限値Vとなるように進み無効電力を低圧配電線12a,14a,16aに最大出力で供給する。進み無効電力を最大出力で供給した結果、電圧が下側動作調整域電圧V-V32の範囲内になった場合は、電圧が下限値Vとなるように進み無効電力の出力を増減調整しながら進み無効電力を供給し続ける。また、進み無効電力を最大出力で供給した結果、電圧が下限値V超過となった場合は、進み無効電力の出力を徐々に減らしながら電圧が下限値V超過に安定するまで供給を続け、電圧が下限値V超過で安定したと判断した場合ときに出力を停止して準備状態に待機する。これにより、出力停止後に電圧が下限値Vに急激に降下すること回避できる。低圧用無効電力補償装置20の動作調整範囲は、例えば、電圧Vと電圧V31の差は3Vであり、電圧Vと電圧V32の差も3Vである。すなわち、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V-V外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を不動作域V-V内まで回復するように電圧調整する。
【0026】
(第2実施例)
図3(E2)は、低圧用無効電力補償装置20の動作の変形例を示している。本実施例においては、管理基準域V11-V12の範囲内に不感知域V-Vを設定し、不感知域V-Vの外側に動作待機域V-V41及びV-V42を設定し、動作待機域V-V41,V-V42の外に動作調整域V41-V11及びV42-V12を設定している点が、第1実施例と異なる。すなわち、不感知域V-V及び動作待機域V-V41,V-V42を合わせて、不動作域V41-V42を設定している。低圧用無効電力補償装置20に不感知域V-Vが設定され、低圧用無効電力補償装置20は、不感知域V-Vでは動作しない。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不感知域の上限値V以上となったときは、進み無効電力最大の状態で待機し、不感知域の下限値V以下となったときは、遅れ無効電力最大の状態で待機している。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が上側動作値V41外及び下側動作値V42外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。
【0027】
本実施例では、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が上側動作値V41を超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を上側動作調整域V11-V41の範囲内、好ましくは、上側動作値V41未満となるように調整する。一方、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が下側動作値V42より低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を下側動作調整域V12-V42の範囲内、好ましくは、下側動作値V42超過となるように調整する。低圧用無効電力補償装置20の動作調整域(V11-V41,V12-V42)は、例えば、上側動作調整域V11-V41は3Vであり、下側動作調整域V12-V42も3Vである。すなわち、本実施例では、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不感知域V-V外になったときに、低圧用無効電力補償装置20は、無効電力最大の状態で待機し、上側動作値V41外及び下側動作値V42外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を不動作域V41-V42を内まで回復するように電圧調整する。
【0028】
(第3実施例)
図3(E3)は、低圧用無効電力補償装置20の動作の変形例を示している。本実施例においては、低圧用無効電力補償装置20の動作調整域を電圧領域V11-V及びVL-V12の中央に設定している点が第2実施例と異なる。すなわち、管理基準域V11-V12の範囲内に不感知域V-Vを設定し、不感知域V-Vの外に動作待機域V-V51及びV-V52を設定し、動作待機域V-V51,V-V52の外に動作調整域V51-V53及びV52-V54を設定する。不感知域V-V及び動作待機域V-V51,V-V52を合わせて、不動作域V51-V52を設定している。低圧用無効電力補償装置20に不感知域V-Vが設定され、低圧用無効電力補償装置20は、不感知域V-Vでは動作しない。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不感知域の上限値V以上となったときは、進み無効電力最大の状態で待機し、不感知域の下限値V以下となったときは、遅れ無効電力最大の状態で待機している。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が上側動作値V51外及び下側動作値V52外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。
【0029】
本実施例では、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が上側動作値V51を超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を動作調整域V51-V53の範囲内、好ましくは、上側動作値V51未満となるように調整する。一方、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が下側動作値V52より低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を動作調整域V52-V54の範囲内、好ましくは、下側動作値V52超過となるように調整する。低圧用無効電力補償装置20の動作調整域(V51-V53及びV52-V54)は、例えば、上側動作調整域V51-V53は3Vであり、下側動作調整域V52-V54も3Vである。また、上側動作調整域V51-V53の中央値は電圧V11-Vの中央値であり、下側動作調整域V52-V54の中央値は電圧VL-V12の中央値である。すなわち、本実施例では、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不感知域V-V外になったときに、低圧用無効電力補償装置20は、無効電力最大の状態で待機し、上側動作値V51外及び下側動作値V52外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を不動作域V51-V52を内まで回復するように電圧調整する。
【0030】
(第4実施例)
図3(E4)は、低圧用無効電力補償装置20の動作の変形例を示している。本実施例においては、第1実施例における不動作域V-Vを動作基準域V-Vと設定し、動作基準域V-V内に動作調整域V61-V及びV62-Vを設定している点が第1実施例と異なる。すなわち、管理基準域V11-V12の範囲内かつ、動作基準域V-V内に、上側動作値V61及び下側動作値V62を設定し、上側動作値V61と下側動作値V62の間を不動作域V61-V62とし、不動作域V61-V62外に動作調整域V61-V及びV62-Vを設定している。低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V61-V62では動作しない。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域の上側動作値V61外及び下側動作値V62外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。
【0031】
本実施例では、上限値Vと下限値Vに基づいて動作基準域V-Vを設定し、この動作基準域V-V内に上側動作値V61及び下側動作値V62を設定し、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が調整される上側動作調整域V-V61と下側動作調整域V-V62が設定される。また、上側動作値V61と下側動作値V62の間を不動作域V61-V62と設定する。上側動作値V61は、基準値Vより大きく、上限値Vより小さい。下側動作値V62は、基準値Vより小さく、下限値Vより大きい。例えば、電圧Vと電圧V61の差は3Vであり、電圧Vと電圧V62の差も3Vである。
【0032】
本実施例では、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が上側動作値V61を超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を上側動作調整域V61-Vの範囲内、好ましくは、上側動作値V61未満となるように調整する。一方、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が下側動作値V62より低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を下側動作調整域V62-Vの範囲内、好ましくは、下側動作値V62超過となるように調整する。なお、本実施例では、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が基準値V-電圧V61のときは進み無効電力最大の状態で待機し、基準値V-電圧V62のときは遅れ無効電力最大の状態で待機している。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が動作基準域V-V外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。
【0033】
(第5実施例)
図3(E5)は、低圧用無効電力補償装置20の動作の変形例を示している。本実施例においては、動作基準域V-Vの上限値V及び下限値Vが、低圧用無効電力補償装置20の動作調整域V71-V73及びV72-V74の中央に設定されている点が第4実施例と異なる。すなわち、管理基準域V11-V12の範囲内に、上限値Vと下限値Vを設定し、上限値Vと下限値Vの間を動作基準域V-Vとし、上側動作値V71及び下側動作値V72を設定し、上側動作値V71と下側動作値V72の間を不動作域V71-V72とし、不動作域V71-V72外に動作調整域V71-V73及びV72-V74を設定し、動作調整域V71-V73,V72-V74の中央値を上限値Vと下限値Vとしている。すなわち、上側動作調整域V71-V73は上限値Vを含んでおり、下側動作調整域V72-V74は下限値Vを含んでいる。具体的には、上側動作調整域V71-V73の中央値が上限値Vであり、下側動作調整域V72-V74の中央値が下限値Vである。例えば、電圧V71と電圧V73の差は3Vであり、電圧V72と電圧V74の差も3Vである。低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V71-V72では動作しない。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域の上側動作値V71外及び下側動作値V72外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。
【0034】
本実施例では、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が動作基準域の上限値Vを超えた場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を上側動作調整域V71-V73内に調整する。一方、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が動作基準域の下限値Vより低下した場合、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧を下側動作調整域V72-V74内に調整する。なお、本実施例では、低圧用無効電力補償装置20は、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V71-V72では動作しない。そして、低圧配電線12a,14a,16aの電圧が不動作域V71-V72外になったときに、低圧配電線12a,14a,16aに無効電力を供給する。これにより、低圧配電線12a,14a,16aの電圧は、動作基準域V-Vの近傍で調整する。
【0035】
(他の変形例)
上記実施例では、基準値Vを、不感帯域V-Vの中央値、及び、管理基準域V11-V12の中央値として説明した。しかしながら、基準値Vは、不感帯域V-V及び管理基準域V11-V12の中央値でなくてもよく、任意で設定すればよい。例えば、基準値Vを、不感帯域V-V及び管理基準域V11-V12の上方側、または、下方側に偏って設定してもよい。
【0036】
第1実施例、第2実施例、第3実施例では、低圧用無効電力補償装置20の動作調整域を電圧範囲V-V11及び電圧範囲V-V12の下限、上限又は中央に設定する例について説明した。しかしながら、動作調整域は、電圧範囲V-V11及び電圧範囲V-V12の範囲内であれば、任意の範囲に設定することができる。
【0037】
第1実施例、第2実施例、第3実施例では、無効電力最大の状態で待機する例について説明した。しかしながら、必ずしも無効電力最大の状態で待機する必要はなく、例えば無効電力の半分の状態で待機してもよく、任意の状態を選択することができる。また、無効電力を供給しない状態において、必ずしも待機する必要はない。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
3:高圧配電線
10:電圧管理システム
12a,14a,16a:低圧配電線
20:低圧用電圧調整器
30:高圧用電圧調整器
-V:不動作域,動作基準域
【要約】
【課題】低圧配電線の新たな電圧管理システムを提供する。
【解決手段】
電圧管理システムは、低圧配電線の電圧が変動した際に低圧配電線に無効電力を供給し、低圧配電線の電圧を基準値に維持する低圧用電圧調整装置を有する。この電圧調整装置は、低圧配電線の電圧が所定範囲内であるとともに基準値が含まれる不動作域内にあるときは、低圧配電線への無効電力の供給は行わずに低圧配電線の電圧を調整せず、低圧配電線の電圧が不動作域外となったときは、低圧配電線に無効電力を供給して低圧配電線の電圧が不動作域内となるように調整する。
【選択図】図1
図1
図2
図3