(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】印刷版の校正装置、校正方法、および、印刷版の納入方法
(51)【国際特許分類】
B41N 3/00 20060101AFI20221006BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20221006BHJP
B41F 3/20 20060101ALI20221006BHJP
B41F 5/20 20060101ALI20221006BHJP
B41F 5/24 20060101ALI20221006BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41N3/00
B41C1/00
B41F3/20 A
B41F5/20
B41F5/24
B41F33/00 280
(21)【出願番号】P 2021038567
(22)【出願日】2021-03-10
(62)【分割の表示】P 2016202928の分割
【原出願日】2016-10-14
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】593008427
【氏名又は名称】日本電子精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】丸野 正徳
(72)【発明者】
【氏名】守本 英二
(72)【発明者】
【氏名】大縣 昭彦
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128822(JP,A)
【文献】特開2014-177050(JP,A)
【文献】米国特許第05001500(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 1/00-13/70
B41F 31/00-35/06
B41C 1/00- 3/08
B41N 1/00- 3/08
G03F 1/00- 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を保持する平面台と、
前記印刷版の表面に供給されたインクのパターンを測定する測定部と、
前記平面台または前記印刷版と前記測定部とを制御する第1制御部と、
複数の前記パターンを、1つのパターンに合成する第2制御部がある印刷版の校正装置であり、
作製された前記印刷版を前記平面台にセットする第1工程と、
第2ロールに被対象物を巻きつける第2工程と、
前記平面台と前記第2ロールと間隔を調整する第3工程と、
前記印刷版にインクを塗布する第4工程と、
前記第2ロールを回転させ、前記被対象物の表面に前記インクが転写される第5工程と、
前記被対象物上の前記インクを測定部で測定する第6工程と、
前記第1工程から前記第6工程までを複数回行う制御がされる校正装置。
【請求項2】
作製された印刷版
を平面台にセットする第1工程と、
第2ロールに被対象物を巻きつける第2工程と、
前記平面台と前記第2ロールと間隔を調整する第3工程と、
前記印刷版にインクを塗布する第4工程と、
前記第2ロールを回転させ、前記被対象物の表面に前記インクが転写される第5工程と、
前記被対象物上の前記インクを測定部で測定する第6工程と、
前記第1工程から前記第6工程までを複数回行う印刷版の校正方法。
【請求項3】
さらに、前記複数回行った結果得られた前記第6工程での測定データを合成する第7工程を有する請求項2記載の印刷版の校正方法。
【請求項4】
請求項2又は3で使用した前記複数の印刷版と、前記複数の印刷版で印刷された被印刷物と、前記複数の印刷版で印刷されたパターンのデータを合成したパターンデータとを、印刷会社へ納入する印刷版の納入方法。
【請求項5】
請求項2又は3で使用した複数の印刷版と、前記複数の印刷版で印刷された印刷物と、前記複数の印刷版で印刷されたパターンのデータを合成したパターンデータとを、印刷会社へ納入する印刷版の納入方法。
【請求項6】
さらに、前記印刷物を印刷した時の印刷条件も納入する請求項5記載の印刷版の納入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版の校正装置、校正方法、および、印刷版の納入方法に関する。特に、フレキソ印刷版の校正装置、校正方法、および、フレキソ印刷版の納入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷版を作製した後、その印刷版を検査する検査機(校正装置)があった(特許文献1)。特許文献1は、レーザで印刷版の表面凹凸を検査するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷版全体をレーザで検査すると、測定時間、データ処理に時間がかかる。そのため、印刷版を用いて、校正装置で、実際に、時間と人手をかけて印刷し、印刷物を検査する方法が行われている。つまり、時間と人手がかかっている。
【0005】
このため、本願の課題は、時間と人手をかけず、印刷版を検査する方法、装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、印刷版を保持する平面台と、前記印刷版の表面に供給されたインクのパターンを測定する測定部と、前記平面台または前記印刷版と前記測定部とを制御する第1制御部と、複数の前記パターンを、1つのパターンに合成する第2制御部がある印刷版の校正装置を用いる。
【0007】
また、作製された印刷版を前記平面台にセットする第1工程と、前記印刷版にインクを塗布する第2工程と、前記印刷版上の前記インクを測定部で測定する第3工程と、前記第1工程から前記第3工程までを、完成パターンに必要な色ごとで繰り返し、前記第3工程の測定データを重ね合わせる第4工程と、を有する印刷版の校正方法を用いる。
【0008】
また、前記複数の印刷版と、前記複数の印刷版で印刷された被印刷物と、前記複数の印刷版で印刷されたパターンのデータを合成したパターンデータとを、印刷会社へ納入する印刷版の納入方法を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、時間と人手をかけず印刷版の検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)~(h)実施の形態1の校正装置の測定データを示す図
【
図3】(a)~(b)実施の形態1の校正装置での測定データを合成した図
【
図7】(a)~(c)実施の形態5の印刷版の販売の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態の例示をする。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の校正装置の断面図である。
<装置構成>
実施の形態1の校正装置は、第1ロール11と第2ロール12と制御部17と測定部15とインク供給部18を含む。
【0012】
第1ロール11は、円筒形の金属ロールであり、その外周に印刷版14がセットされる。
第2ロール12は、円筒形の金属ロールであり、その外周に被対象物16がセットされる。
【0013】
測定部15は、イメージセンサなど光学式の測定器であり、被対象物16上に印刷されたインクのパターンを測定する。イメージセンサ以外でも、パターンを測定できればよい。
制御部17は、第1ロール11、第2ロール12、測定部15などの校正装置全体の制御をする。測定部15で測定された測定データなどの処理、記録もできる。装置の制御を第1制御部で行い、測定データの処理を第2制御部で行ってもよい。
【0014】
インク供給部18は、インクを印刷版14へ塗布するものである。インク供給部18を無くし、人がインクを印刷版14へ塗布してもよい。
<プロセス>
第1工程で、作製された印刷版14を第1ロール11の外周に巻きつける。
【0015】
第2工程で、第2ロール12に被対象物16を巻きつける。なお、第1,2工程時、第1ロール11と第2ロール12とはその間の距離を相対的に離すことができる。図示しないが、そのための機構がある。第1、2工程は逆の順番でもよい。
第3工程で、第1ロール11と第2ロール12とを近づける。
【0016】
第4工程で、インク供給部18で印刷版14にインクを塗布する。手動でインクを塗布してもよい。
第5工程で、第1ロール11と第2ロール12とを回転させる。被対象物16の表面にインクが転写される。
【0017】
第6工程で、被対象物16上のインクを測定部15で測定する。
第1工程から第6工程を、完成パターンに必要な印刷版14の数だけ複数回繰り返す。1つの印刷物を作製するために、例えば、4色使用する場合、印刷版14は、少なくとも4つである。色ごとに印刷版14がある。
【0018】
上記繰り返し後、第7工程で、各々の印刷版14ごとに、測定部15で測定された測定データを制御部17で重ね合わせる。結果、完成パターンである印刷物の画像が分かる。なお、制御部17は、装置の制御と、測定データの制御とは別の制御部を用いてもよい。
全体の工程と通して、使用するインクは、複数種類用いてもよいが1種類が好ましい。このことで、インクの色変えをせずに済む。これは、測定データ上で処理ができるためである。
【0019】
印刷版14の第1ロール11へのセットは、厳密な位置合わせが不要である。制御部17において、測定データ上で処理ができるためである。つまり、印刷版14にマーク19が付けてあり、被対象物16上にもマーク19の部分が印刷される。このマーク19の部分を基準に各測定データを重なるためである。なお、マーク19は、1つの印刷版14に3点以上あるのが好ましい。
【0020】
なお、各工程の順番はこの順である必要はなく、可能な範囲で順番を変更できる。
<データ処理>
図2(a)~
図2(h)を用いて、測定データについて説明する。
【0021】
図2(a)、
図2(b)、
図2(e)、
図2(f)は、印刷版14の平面図である。
図2(c)、
図2(d)、
図2(g)、
図2(h)は、それぞれ、上記印刷版14で印刷された被対象物16上のパターン(インク)の平面図である。このパターンが測定部15で測定されるデータである。
【0022】
この場合、4色、4つの印刷版14で1つの印刷物を作製する場合である。
次にデータの合成を説明する。
図3(a)は、
図2(c)、
図2(d)、
図2(g)、
図2(h)を単に、合成した結果である。
図3(b)は、
図2(c)、
図2(d)、
図2(g)、
図2(h)をそれぞれの目的の色にデータ上で変更して合成した結果である。
【0023】
測定データ上で色を変更することで、目的の印刷物である
図3(b)が得られる。
図3(b)を検査することで印刷版14の検査ができる。
ここで、検査とは、印刷版14を作製する元データと、上記測定データ(
図3(b))とを、制御部17(パソコンなど)上で比較し、検査することである。印刷版14のパターンのデザイン、印刷版14のパターンの位置、印刷版14のパターンの高さなどを、デジタル的に、照合検査する。両者を目視で検査してもよい。
【0024】
上記により、複数色を用いずに印刷版14の検査ができる。第1ロール11と印刷版14との位置合わせ、また、第2ロール12と被対象物16との位置合わせは、厳密にする必要がない。上記のようにマーク19により、制御部17上で位置合わせできる。測定データ上で調整できるためである。
【0025】
印刷版14の間違い、セットミスがあっても、測定データ上で修正できる。
なお、測定部15で被対象物16を測定せず、別途、スキャナーなどで被対象物16を測定してもよい。上記同様、データを重ね、
図3(b)の画像を形成できる。
【0026】
(実施の形態2)
実施の形態2を
図4の断面図で説明する。説明しない事項は、実施の形態1と同様である。
実施の形態1と異なり、測定部15の位置が、第1ロール11上にある。
【0027】
測定部15は、インク供給部18で供給された印刷版14上のインクを測定する。印刷版14の凸部を、インクなしに、その形状を測定するのは、コントラストなどの問題から時間がかかる。
しかし、印刷版14の凸部にインクを付け、インク部分を測定するのは容易である。実際にインク部分が印字されるので、インク部分を測定することで転写される予定のパターンを測定できる。結果、実施の形態1と同様のパターンを測定できる。
【0028】
<プロセス>
プロセスは、実施の形態1のプロセスで、第2ロール12の動作の部分を削除したプロセスとなる。また、測定部15は、印刷版14上のインクを測定する。
<効果>
実施の形態1の効果に付け加えて、第2ロール12、被対象物16が不要で、より簡素化できる。
【0029】
(実施の形態3)
実施の形態3を
図5の断面図で説明する。説明しない事項は、実施の形態1と同様である。
実施の形態1と異なり、被対象物16の供給のやり方が異なる。被対象物16を連続したシートとして供給する。被対象物ロール23から供給ロール20と経由して、第2ロール12に、被対象物16を供給する。また、第2ロール12から回収ロール21で被対象物16が巻き取られる。
【0030】
測定部15は、第2ロール12で被対象物16に印刷された後の場所で、被対象物16が、テンションを持って貼られている場所に配置される。
<プロセス>
実施の形態1のプロセスとの相違点のみ記載する。第2工程で、第2ロール12に被対象物16を巻きつける必要ない。連続で被対象物16を供給している。
【0031】
<効果>
被対象物16の交換が不要である。被対象物16を連続して、同じ状態で供給できる。測定部15が、被対象物16を平面状態で測定できる。
(実施の形態4)
実施の形態4を
図6の断面図で説明する。説明しない事項は、実施の形態1、2と同様である。
【0032】
実施の形態2と異なり、第1ロール11がなく、平面台22がある。この上で印刷版14にインクが供給され、測定部15で、インクのパターンを測定する。
<プロセス>
第1工程で、作製された印刷版14を平面台22上にセットする。
【0033】
第2工程で、インク供給部18で印刷版14にインクを塗布する。手動でインクを塗布してもよい。
第3工程で、印刷版14上のインクを測定部15で測定する。測定部15が印刷版14と相対的に移動する。
【0034】
第1工程から第3工程を、完成パターンに必要な印刷版14の数だけ繰り返す。1つの印刷物を作製するために、例えば、4色使用する場合、印刷版14は4つである。色ごとに印刷版14がある。
上記繰り返し後、第4工程で、各々の印刷版14ごとに、測定部15で測定された測定データを制御部17で重ね合わせる。結果、完成パターンである印刷物の画像が分かる。
【0035】
<効果>
第1ロール11、第2ロール12が無く、簡単に機構で印刷版14を検査できる。
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態1~4のいずれかで得られたデータ(
図3(b))の使用方法である。
【0036】
図7(a)は、印刷版14の取引での会社間の流れを示す。印刷会社は、ダンボールなどへの印刷をするために、印刷版14を版作製会社へ注文する。版作製会社は印刷版14を作製し、印刷版14を印刷会社へ納入する。
印刷会社は、印刷版14によりダンボールなどへの印刷を行う。印刷会社は、ダンボールなどを、別の企業へ納品する。
【0037】
この場合、版作製会社は、単に印刷版14のみを、印刷会社へ納品するのでなく、印刷版14で印刷された印刷物である被対象物26も検査結果として納品する。
印刷会社は、この被対象物26を見て検収できる。この場合、被対象物26として印刷した印刷物とともに、そのパターンデータ(デジタルデータ)を納入できる。印刷会社は、この納品されたパターンデータと発注時のパターンデータとを比較、差分することで、検査できる。また、印刷版14とともに、納品されたパターンデータとを保管管理できる。
【0038】
版作製会社は、さらに、
図7(b)に示すものを、印刷会社へ納品できる。つまり、印刷版14と被対象物26と印刷条件27とである。
印刷条件27は、被対象物26を作製する時の条件である。特に、
図1、
図5の第1ロール11と第2ロール12間の距離のデータである。印刷会社が印刷版14を印刷機にセットする時に参考となる。
【0039】
また、印刷条件27として、印刷版14の種類も合わせると好ましい。印刷版14の種類とは、シート材料から作製された版、液状材料から作製された版であるかなどである。印刷版14の厚みも加えるとより好ましい。
なお、被対象物26と印刷条件27とはデジタルデータで納品することが保管上好ましい。
【0040】
上記印刷条件27もデジタル化し、被対象物26のデジタルデータといっしょにする(合体する)のが好ましい。
図7(c)では、さらに、複数の印刷条件37を納品する。
【0041】
複数の条件とは、例えば、
図1の第1ロール11と第2ロール12間の複数の距離である。この距離をいくつか変えて、その結果の印刷版14、また、その複数のパターンデータを納入できる。
印刷会社は、複数の印刷条件37を参考に、印刷機に印刷版14をセットできる。複数の印刷条件37は、インクの種類を変えて印刷したパターンデータでもよい。
【0042】
(なお書き)
上記実施の形態は、組み合わせることができる。
データはデジタルデータが好ましい。処理がしやすい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願の印刷版の校正装置、校正方法は、広く印刷版、印刷機の分野で広く利用できる。
【符号の説明】
【0044】
11…第1ロール、12…第2ロール、14…印刷版,印刷物、15…測定部、16,26…被対象物、17…制御部、18…インク供給部、19…マーク、20…供給ロール、21…回収ロール、22…平面台、23…被対象物ロール、27,37…印刷条件、28…修正条件。