(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】酸化染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20221006BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/19
A61K8/22
A61K8/35
A61Q5/10
(21)【出願番号】P 2018216223
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 基
(72)【発明者】
【氏名】小島 徹
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0210606(US,A1)
【文献】特開2007-191475(JP,A)
【文献】特開2005-336182(JP,A)
【文献】特開2018-104330(JP,A)
【文献】西独国実用新案公開第20115893(DE,U)
【文献】独国特許出願公開第10118894(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化染料、(B)アルカリ剤、(C)酸化剤、及び(D)炭素数3~5のケトースの群から選ばれる少なくとも一種を含む酸化染毛剤組成物であって、
前記(D)成分は、前記(A)成分及び(C)成分と別剤として保存され
、前記(A)成分~(D)成分を全て混合した後に毛髪に塗布して使用される酸化染毛剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分~(D)成分の混合物の10質量%水溶液の25℃におけるpHが9を超える請求項
1に記載の酸化染毛剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は、m-アミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、5-アミノ-o-クレゾール、2,6-ジアミノピリジン、レゾルシン、α-ナフトール、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種(A-1)を含有する請求項1
又は2に記載の酸化染毛剤組成物。
【請求項4】
前記(A)成分~(D)成分の混合物中において、前記(D)成分の含有量に対する前記(A-1)成分の含有量の質量比(A-1/D)は、0.001~4000である請求項
3に記載の酸化染毛剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染料及び酸化剤を含有する酸化染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する染毛剤組成物が知られている。そのような染毛剤組成物としては、例えば、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤組成物が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染毛力を向上させる。従来より、染毛力を向上させるため、その他の添加剤を配合した染毛剤組成物が知られている。例えば特許文献1に開示される酸化染毛剤組成物は、染色助剤としてアミノ酸を含有している。また、特許文献2に開示される毛髪処理セット剤は、アルカリ剤及び酸化剤を含有する酸化染毛剤と、該酸化染毛剤の毛髪への塗布処理中に適用され、キシロース等のアルドース等を含有する染毛用中間処理剤を含んで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-203746号公報
【文献】特開2018-20973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、酸化染料の染毛力を向上させた酸化染毛剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、酸化染毛剤に、別剤として特定のケトースを含有する剤を適用することにより、染毛力を向上できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(A)酸化染料、(B)アルカリ剤、(C)酸化剤、及び(D)炭素数3~5のケトースの群から選ばれる少なくとも一種を含む酸化染毛剤組成物であって、前記(D)成分は、前記(A)成分及び(C)成分と別剤として保存される酸化染毛剤組成物が提供される。
【0007】
前記(A)成分~(D)成分は、混合後に毛髪に塗布して使用されてもよい。
前記(A)成分~(D)成分の混合物の10質量%水溶液の25℃におけるpHが9を超えるように構成されてもよい。
【0008】
前記(A)成分は、m-アミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、5-アミノ-o-クレゾール、2,6-ジアミノピリジン、レゾルシン、α-ナフトール、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種(A-1)を含有してもよい。
【0009】
前記(A)成分~(D)成分の混合物中において、前記(D)成分の含有量に対する前記(A-1)成分の含有量の質量比(A-1/D)は、0.001~4000であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化染料の染毛力を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の酸化染毛剤組成物を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の酸化染毛剤組成物は、多剤式の酸化染毛剤組成物、例えば(A)酸化染料及び(B)アルカリ剤等を有する第1剤、(C)酸化剤等を含有する第2剤、(D)特定のケトースを含有する第3剤を含む3剤式等の酸化染毛剤組成物として構成される。以下、3剤式の酸化染毛剤組成物の成分について例示する。
【0012】
<3剤式の酸化染毛剤組成物>
3剤式の酸化染毛剤組成物は、(A)酸化染料及び(B)アルカリ剤を含有する第1剤と、(C)酸化剤等を含有する第2剤、(D)特定のケトースを含有する第3剤から構成される。
【0013】
(3剤式の酸化染毛剤組成物の第1剤)
酸化染毛剤組成物の第1剤は、上述したように(A)成分及び(B)成分等を含有する。(A)成分は、第2剤に含有される(C)成分による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、(A)成分は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
【0014】
染料中間体の具体例としては、例えばp-フェニレンジアミン、p-トルイレンジアミン(トルエン-2,5-ジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0015】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーの具体例としては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。(A)成分は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料の具体例以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
【0016】
これらの(A)成分の具体例のうち(D)成分による染毛力の向上効果に適する観点から、(A-1)レゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2,6-ジアミノピリジン、それらの塩が好ましく適用される。
【0017】
第1剤~第3剤の混合物、すなわち毛髪に適用された染毛処理時の酸化染毛剤組成物中における(A)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。(A)成分の含有量が0.01質量%以上であると、特に染毛力をより向上させることができる。
【0018】
第1剤~第3剤の混合物中における(A)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。(A)の含有量が10質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上させることができる。
【0019】
第1剤~第3剤の混合物中における(A-1)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。(A-1)成分の含有量が0.005質量%以上であると、特に染毛力をより向上させることができる。
【0020】
第1剤~第3剤の混合物中における(A-1)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。(A-1)の含有量が5質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上させることができる。
【0021】
第1剤に含有する(B)成分は、第2剤に含有される(C)成分の作用を促進させることにより、毛髪の染毛効果を向上する働きをする。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩の具体例としては、例えば硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物の具体例としては、例えば塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらの(B)成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、染毛効果の向上の観点から、アンモニア、アンモニウム塩、及びアルカノールアミンが好ましく適用される。
【0022】
第1剤~第3剤の混合物中における(B)成分の含有量は、混合物のpHの下限が、7以上となる量が好ましく、9を超える量がより好ましい。また、(B)成分の含有量は、混合物のpHの上限が12以下となる量で配合されることが好ましい。混合物のpHを7以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤の作用をより促進することができる。また、pH9を超えることにより、染毛力をより向上させる。混合物のpHを12以下とすることにより、毛髪の損傷をより抑制することができる。低刺激性の観点から、混合物をpH9以下に調整してもよい。なお、混合物のpHは、第1剤~第3剤の混合物を水で10倍希釈し、10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0023】
酸化染毛剤組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、水溶性ポリマー、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、上記以外のpH調整剤、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0024】
可溶化剤は、例えば、剤型を液状等にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、第1剤と第2剤の混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0025】
水溶性ポリマーは、酸化染毛剤組成物に適度な粘度を与える。そのため、酸化染毛剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物型高分子が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
【0026】
半合成高分子の具体例としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0027】
合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ポリクオタニウム-6)(マーコート100:メルク社製)、イタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0028】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、酸化染毛剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0029】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、ラノリン、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油等が挙げられる。ロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリンロウ等が挙げられる。高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0030】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0031】
エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0032】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0033】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0034】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として酸化染毛剤組成物を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、酸化染毛剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0035】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。リン酸エステル型界面活性剤の具体例としては、POEオレイルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0036】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。塩化アルキルトリメチルアンモニウムの具体例としては、例えば塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレンセチルエーテル、POEポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0039】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0040】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0041】
pH調整剤は、酸化染毛剤組成物(混合物)のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤は、酸化染料の種類により、適宜公知のものから選択される。pH調整剤の具体例としては、例えば無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。有機酸としては、例えばクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、酸性アミノ酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、ピロリン酸等のリン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類、亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩類、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
【0043】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、固形状の剤型の場合、分散剤を配合してもよい。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。噴射剤又は発泡剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。
【0044】
(3剤式の酸化染毛剤組成物の第2剤)
第2剤は、(C)成分の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。(C)成分は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性をより向上させる。(C)成分の具体例としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。第2剤中における(C)成分の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上である。(C)成分の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における(C)の含有量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。(C)成分の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪の損傷等をより抑制することができる。
【0045】
(C)成分として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウム等が挙げられる。第2剤は、酸化染毛剤組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0046】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。また、固形状の剤型の場合、分散剤を配合してもよい。
【0047】
(3剤式の酸化染毛剤組成物の第3剤)
第3剤は、(D)炭素数3~5のケトースの群から選ばれる少なくとも一種の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。(D)成分は、(A)成分の重合反応を促進し、染毛力を向上させる。(D)成分は、ケトン基をもつ単糖類であり、三炭糖、四炭糖、及び五炭糖が挙げられる。三炭糖の具体例として、ジヒドロキシアセトンが挙げられる。四炭糖の具体例として、エリトルロース(エリスルロース)が挙げられる。五炭糖の具体例として、キシルロース、リブロースが挙げられる。これらのケトースは、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(D)成分の中でも、単位質量当たりの還元力が高く、毛髪中への浸透性に優れ、染毛力の向上効果が優れる観点から、三炭糖、四炭糖が好ましく、三炭糖がより好ましい。
【0048】
第1剤~第3剤の混合物中における(D)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。混合物中において0.001質量%以上の場合、染毛力をより向上できる。
【0049】
第1剤~第3剤の混合物中における(D)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下となる量である。混合物中において10質量%以下の場合、染毛力をより向上できる。また、製剤調製時における(D)成分の溶解性を向上させる。
【0050】
混合物中における(D)成分は、染毛力をより向上させる観点から、(D)成分の含有量に対する上述した好ましい(A)成分である(A-1)成分の含有量の質量比(A-1/D)を考慮して設定されることが好ましい。混合物中におけるA-1/Dの質量比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上である。かかる質量比の上限は、好ましくは4000以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは20以下である。
【0051】
染毛力をより向上させる観点から、混合物中における(C)成分の含有量に対する(D)成分の含有量の質量比(D/C)を考慮して設定されることが好ましい。混合物中におけるD/Cの質量比の下限は、好ましくは0.0002以上、より好ましくは0.002以上である。かかる質量比の上限は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。なお、(C)成分は、過酸化水素のみから構成され、D/Cの質量比を上記範囲に規定することがより好ましい。
【0052】
第3剤は、酸化染毛剤組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0053】
第3剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。これらの中で、第1剤及び第2剤との混合性を向上させる観点から、固形状以外の剤型が好ましい。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。
【0054】
3剤式の酸化染毛剤組成物の第1剤~第3剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性、適用方法等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは0.5:0.5:1~10:10:1で、より好ましくは1:1:1~8:8:1であり、更に好ましくは3:3:1~6:6:1である。3剤式の酸化染毛剤組成物の第1剤+第2剤と第3剤の混合比の場合、好ましくは1:0.00001~1で、より好ましくは1:0.0001~0.8であり、更に好ましくは1:0.001~0.5である。混合物の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0055】
次に、酸化染毛剤組成物の使用方法を以下に説明する。
酸化染毛剤組成物は、第1剤~第3剤を混合した後、毛髪に塗布されてもよい。また、第1剤と第2剤の混合物を毛髪に塗布した後、第3剤をその上に重ねて塗布してもよい。また、先に第3剤を毛髪に塗布した後、第1剤と第2剤の混合物をその上に重ねて塗布してもよい。これらの中で、染毛力に優れる観点から、第1剤~第3剤を混合した後、毛髪に塗布する方法、第1剤と第2剤の混合物を毛髪に塗布した後、第3剤をその上に重ねて塗布する方法が好ましい。さらに、使用方法が簡易である観点から、第1剤~第3剤を混合した後、毛髪に塗布する方法がより好ましい。
【0056】
各剤を混合する方法は、特に限定されず、例えば撹拌棒又は刷毛等を使用し、手で撹拌してもよく、撹拌子及び電動式撹拌機等を使用してもよい。混合物又は各剤の毛髪への塗布は、公知の方法、例えば薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布する方法を適用することができる。
【0057】
毛髪上で各剤を混合しながら塗布される場合、染毛力向上の観点から、最後に塗布される剤は、予め毛髪に塗布された各剤の混合物と、十分に混ざり合うようコーミングしながら塗布されることが好ましい。第1剤と第2剤の混合物が毛髪に塗布された後、第3剤が、第1剤と第2剤の混合物が塗布された毛髪に重ねて塗布される場合、第3剤は、第1剤と第2剤の混合物が毛髪に塗布された後、直ぐに塗布してもよく、所定時間経過後に塗布してもよい。第3剤は、第1剤と第2剤の混合物が毛髪に塗布されてから、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上経過した後、毛髪に塗布される。かかる構成により、(A)成分が毛髪内へ十分に浸透した後、(D)成分による(A)成分の重合が促進されることから、染毛力をより向上させることができる。また、第3剤は、第1剤と第2剤の混合物が毛髪に塗布された後、好ましくは40分以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは20分以内に毛髪に塗布される。
【0058】
第1剤~第3剤の混合物が毛髪に塗布された後又は毛髪上で第1剤~第3剤が混合された後、所定時間経過後、常法に従い毛髪に塗布した混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いシャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。シャンプー用組成物は、毛髪の洗浄用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のシャンプー用組成物を適用することができる。シャンプー用組成物には、例えば、洗髪剤(ヘアシャンプー)の他、リンスインシャンプー、スキャルプシャンプー等が含まれるものとする。次に、好ましくは常法に従いリンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。リンス用組成物は、毛髪のリンス用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のリンス用組成物を適用することができる。リンス用組成物には、例えば、ヘアリンス、カラーリンス、クリームリンス、酸性リンス、テンポラリーリンス、コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク等が含まれるものとする。リンス用組成物を用いた処理工程は、公知のリンス用組成物を適用することができる。次に、好ましくは常法に従い毛髪を乾燥する工程が行われる。
【0059】
本実施形態の酸化染毛剤組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、(A)~(C)成分を含有する酸化染毛剤組成物において、別剤として保存される(D)炭素数3~5のケトースの群から選ばれる少なくとも一種を適用した。したがって、酸化染料による染毛力を向上することができる。
【0060】
(2)また、当該(D)成分を使用しない通常の酸化染毛処理に比べて、染毛時間の短縮を図ることも可能である。また、感作性も低減させることができる。
(3)また、(A)成分等を含有する第1剤又は(C)成分等を含有する第2剤に、還元糖である(D)成分を配合又は混合する構成に比べて、製剤の保存安定性及び染毛力を向上させることができる。例えば、第1剤に(D)成分を配合すると酸化染料の安定性が損なわれ、第2剤に(D)成分を配合すると過酸化水素等の酸化剤の安定性が損なわれる。
【0061】
(4)(A)成分~(D)成分は、混合後に毛髪に塗布して使用される場合、後で第3剤を毛髪に塗布する構成に比べて、染毛処理を簡便に行うことができる。
(5)(A)成分~(D)成分の混合物の10質量%水溶液の25℃におけるpHが中性付近ではなく、例えばpH9を超えるアルカリ性であっても使用することができる。混合物のpHがアルカリ性の場合、毛髪の脱色性をより向上できる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。
【0063】
・上記実施形態において、(A)成分等を含有する第1剤、(C)成分等を含有する第2剤、(D)成分等を含有する第3剤の多剤式の酸化染毛剤組成物として構成した。
しかしながら、酸化染毛剤組成物は、3剤式に限定されず、第1剤、第2剤、及び第3剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、3剤式以上に構成してもよい。例えば、3剤式の第1剤について、アルカリ剤を含有する剤と、アルカリ剤以外の組成を有する剤の2つに分け、4剤式の酸化染毛剤組成物として構成してもよい。この場合、より良好な製剤安定性を有する。
【0064】
また、粉末状の(B)成分と粉末状の(C)成分とすることにより、(A)及び(B)成分と(C)成分とを同一の剤中に保存する構成を採用してもよい。粉末状の剤が用いられる場合、上述した溶媒に溶解させることにより使用される。
【0065】
酸化染毛剤組成物を4剤式以上の組成物又は粉末状の剤を含む組成物の構成を採用した場合であっても、本発明の効果を奏する限りにおいて依然として本発明に含まれるものとする。
【実施例】
【0066】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。実施例17,18は、参考例17,18に置き換えるものとする。
<試験例1:染毛力の評価>
酸化染毛剤組成物として、表1に示す各成分を含有するクリーム状の剤型の第1剤、表2に示す各成分を含有するクリーム状の剤型の第2剤、表3,4に示す各成分を含有する第3剤をそれぞれ調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。化合物名POEの括弧中の数値はE.O.の付加モル数を示す。また、各剤のpHは、調製した各剤を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを示す。
【0067】
各実施例及び比較例1,2について、第1剤~第3剤を、表3,4に示される質量比で混合して、各例の酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。比較例3は、ケトースを第1剤に配合した第1剤(1-9)を使用し、第1剤と第2剤を1:1で混合することにより、酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。
【0068】
得られた混合物を、長さ10cmの評価用の白毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布した。混合物を毛束に塗布してから15分後に、毛束に付着した混合物を水で洗い流し、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。
【0069】
染毛処理が施された各例の毛束について、下記に示す方法に従い染毛力について評価を行った。なお、各表中「成分」欄における(A)~(D)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「d」の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0070】
(染毛力(相対評価))
上記各例の染毛処理を施した毛束について、パネラー5名が標準光源下で目視にて発色度合いを、対照毛束と比較し、以下の基準で評価することにより、発色が良いか否かについて判断した。
【0071】
対照毛束は、各例の酸化染毛剤組成物において、それぞれ第3剤の代わりに水を適用して上記と同様に染毛処理したものを用意した。なお、比較例3の対照毛束は、実施例1で使用した対照毛束を適用した。
【0072】
対照毛束を基準として、非常に染毛力が向上(4点)、染毛力が向上(3点)、変わらない(2点)、染毛力が低下(1点)の4段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「優れる:4」、2.6点以上3.6点未満を「良好:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3,4に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
表3,4に示されるように、各実施例は、染毛時間が15分であっても染毛力が良好以上の結果であることが確認された。
表4に示されるように、ケトースとして六炭糖を使用した比較例1は、各実施例に対して染毛時間15分における染毛力の評価が劣ることが確認された。還元糖としてアルドースを使用した比較例2は、本実施例の第1剤~第3剤を混合して毛髪に塗布する使用方法において、各実施例に対して染毛力の評価が劣ることが確認された。酸化染料を含有する第1剤に(D)ケトースを配合した比較例3は、各実施例に対して染毛力の評価が劣ることが確認された。
【0078】
(実施例17)
実施例1の酸化染毛剤組成物において、第1剤と第2剤を混合した混合物を調製した。得られた混合物を、毛束に刷毛を用いて塗布した。混合物を毛束に塗布してから5分後に、第3剤を第1剤と第2剤の混合物が塗布されている毛束に重ねてコーミングしながら塗布した。第3剤を毛束に塗布してから10分後に試験例1の方法に従い混合物を水で洗い流し、乾燥させ、染毛処理が施された毛束を得た。
【0079】
得られた毛束について、試験例1と同様の方法にて、染毛力について評価したところ評価4であった。
(実施例18)
実施例1の酸化染毛剤組成物において、最初に第3剤を毛束に刷毛を用いて塗布した。第3剤を毛束に塗布してから直ちに、第1剤と第2剤の混合物を調製し、第3剤が塗布されている毛束に重ねてコーミングしながら塗布した。混合物を毛束に塗布してから15分後に試験例1の方法に従い混合物を水で洗い流し、乾燥させ、染毛処理が施された毛束を得た。
【0080】
試験例1と同様の方法にて、染毛力について評価したところ評価3であった。
<試験例2:発色速度の評価>
上記実施例1,2及び比較例4の酸化染毛剤組成物について発色速度を評価した。比較例4は、実施例1の酸化染毛剤組成物において、第3剤を水に置き換えたものを適用した。まず、試験例1と同様に、各例の第1剤~第3剤を混合し、混合物を調製した。得られた混合物を毛束に刷毛を用いて塗布した。混合後(反応開始後)10,15,30分後に、試験例1に記載の方法に従い、混合物を洗い流し、乾燥処理した。染毛処理が施された各例の毛束について、下記に示す方法に従い染毛力について評価を行った。
【0081】
(染毛力(絶対評価))
上記各例の染毛処理を施した毛束について、パネラー5名が標準光源下で目視にて発色度合いを、以下の基準で評価することにより、発色が良いか否かについて判断した。良く染まっている(4点)、染まっている(3点)、染まりが僅かに浅い(2点)、染まりが浅い(1点)の4段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「優れる:4」、2.6点以上3.6点未満を「良好:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表5に示す。
【0082】
【0083】
表5に示されるように、各実施例においては、短時間のうちに発色反応が進むことが確認された。一方、比較例4は、発色速度が遅く、染毛処理に長時間を要することが示唆された。したがって、試験例1,2の結果より、染毛力を向上させながら、さらに染毛処理時間の短縮を図るためには、各実施例の構成が適していることが確認された。