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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フレークアイス製造装置
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/142 20180101AFI20221006BHJP
   F25C 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   F25C 1/12 20060101ALI20221006BHJP
   F25C 5/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F25C1/142 B
F25C1/00 A
F25C1/12 Z
F25C5/04 302A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018029384
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019143906
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518403539
【氏名又は名称】ブランテックインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】廣兼 美雄
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-165277(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086464(WO,A1)
【文献】特開2017-161213(JP,A)
【文献】特開平01-234770(JP,A)
【文献】特開昭63-108177(JP,A)
【文献】特開2008-095999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
曲線部分を有する冷媒流路を内部に設けた1枚又は複数枚の金属プレートと、
前記金属プレートの一方又は両方の表面に向けてブラインを噴射するノズルと、
前記回転軸に固定されて回転するスクレーパと、
を備え、
前記冷媒流路は、前記金属プレートの側縁から当該金属プレートの中心側に向かう往路と、当該金属プレートの中心側の折返し部と、当該金属プレートの中心側から当該金属プレートの側縁に向かう復路とを備え、当該往路と当該復路とが交互に隣り合う渦巻き状に形成されており、
前記ノズルから前記金属プレートの表面に向けて噴射されたブラインが前記金属プレートの表面で凍結し生成された氷を回転する前記スクレーパによって掻き取ってフレークアイスを製造する、
フレークアイス製造装置。
【請求項2】
前記往路は、角筒状に形成され、前記復路は、円筒状に形成されている、
請求項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項3】
前記往路の断面積は、前記復路の断面積よりも大きくされている、
請求項又はに記載のフレークアイス製造装置。
【請求項4】
前記往路と前記復路とは、前記金属プレートの一方の表面側と他方の表面側とに偏在し
て形成されている、
請求項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項5】
前記往路と前記復路との少なくともいずれか一方は、渦巻き状に形成されている、
請求項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項6】
前記金属プレートは、銅製又は銅合金製である、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項7】
前記回転軸は、水平姿勢であり、前記金属プレートは、起立姿勢である、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項8】
前記金属プレートは、鋳造製である、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載のフレークアイス製造装置。
【請求項9】
回転軸と、
曲線部分を有する冷媒流路を内部に設けた1枚又は複数枚の製氷面を有する板と、
前記板の一方又は両方の表面に向けて水溶液を噴射するノズルと、
前記回転軸に固定されて回転するスクレーパと、
を備え、
前記冷媒流路は、前記板の側縁から当該板の中心側に向かう往路と、当該板の中心側の折返し部と、当該板の中心側から当該板の側縁に向かう復路とを備え、当該往路と当該復路とが交互に隣り合う渦巻き状に形成されており、
前記ノズルから前記板の前記製氷面に向けて噴射された水溶液が当該製氷面で凍結し生成された氷を回転する前記スクレーパによって掻き取ってフレークアイスを製造する、
フレークアイス製造装置。
【請求項10】
回転軸と、
曲線部分を有する冷媒流路を内部に設けた1枚又は複数枚の金属プレートと、
前記回転軸に固定されて回転するスクレーパと、
を備え、
前記冷媒流路は、前記金属プレートの側縁から当該金属プレートの中心側に向かう往路と、当該金属プレートの中心側の折返し部と、当該金属プレートの中心側から当該金属プレートの側縁に向かう復路とを備え、当該往路と当該復路とが交互に隣り合う渦巻き状に形成されており、
ブラインが前記金属プレートの表面で凍結し生成された氷を回転する前記スクレーパによって掻き取ってフレークアイスを製造する、
フレークアイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレークアイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の鮮度を保持したり、蓄冷剤を冷却したりするために、氷を薄片状に加工したフレークアイスが使用されている。従来より、フレークアイスを製造するための装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、同軸に配置された竪型の内筒及び外筒と、この内筒の中心軸に配置されて回転するシャフトと、このシャフトに軸方向に間隔を空けて取り付けられた複数枚の板状のスクレーパとを備えたシャーベット氷製造装置が記載されている。このシャーベット氷製造装置は、内筒とシャフトとの間が原水流路とされている。このシャーベット氷製造装置は、内筒と外筒の間が冷媒流路とされている。
【0004】
このシャーベット氷製造装置は、原水流路に供給された原水が、冷媒流路に供給された冷媒によって冷却され、内筒の内面に氷を生成する。このシャーベット氷製造装置は、シャフトが回転することによって、スクレーパが回転する。このシャーベット氷製造装置は、内筒の内面に生成された氷を回転するスクレーパが掻き取ることで、フレークアイスを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3208296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたシャーベット氷製造装置は、内筒と板状のスクレーパとの間のクリアランスが一定の間隔とされることで、均一なフレークアイスを製造することができる。そのためには、内筒は真円に形成されていなければならない。しかし、真円の内筒を製造することは困難である。さらに、内筒は、板状のスクレーパが回転するほどの内部空間を設けていることから、シャーベット氷製造装置が大型化する。
【0007】
本発明は、小型化が可能であり、容易に製造することができる構造のフレークアイス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフレークアイス製造装置は、
回転軸と、
曲線部分を有する冷媒流路を内部に設けた1枚又は複数枚の金属プレートと、
前記金属プレートの一方又は両方の表面に向けてブラインを噴射するノズルと、
前記回転軸に固定されて回転するスクレーパと、
を備え、
前記ノズルから前記金属プレートの表面に向けて噴射されたブラインが前記金属プレートの表面で凍結し生成された氷を回転する前記スクレーパによって掻き取ってフレークアイスを製造する。
【0009】
本発明に係るフレークアイス製造装置の一態様は、
前記冷媒流路は、前記金属プレートの側縁から前記金属プレートの中心側に向かう往路と、前記金属プレートの中心側から前記金属プレートの側縁に向かう復路とを備え、前記往路と前記復路とが隣り合い、前記金属プレートの中心側に折返し部を有する。
【0010】
本発明に係るフレークアイス製造装置の一態様において、前記往路と前記復路とは、交互に隣り合う渦巻き状に形成されていてよい。
この場合、前記往路は、角筒状に形成され、前記復路は、円筒状に形成されていてよい。
この場合、前記往路の断面積は、前記復路の断面積よりも大きくされていてよい。
【0011】
本発明に係るフレークアイス製造装置の一態様において、前記往路と前記復路とは、前記金属プレートの一方の表面側と他方の表面側とに偏在して形成されていてよい。
【0012】
この場合、前記往路と前記復路との少なくともいずれか一方は、渦巻き状に形成されていてよい。
【0013】
本発明に係るフレークアイス製造装置の前記金属プレートは、銅製又は銅合金製であってよい。
本発明に係るフレークアイス製造装置の前記金属プレートは、銅製又は銅合金製であってよい。
本発明に係るフレークアイス製造装置の前記金属プレートは、鋳造製であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に製造することができ、小型化されたフレークアイス製造装置及びフレークアイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るフレークアイス製造装置の一実施形態であって、図2のI-I線断面図である。
図2】本発明に係るフレークアイス製造装置の一実施形態を示す側面図である。
図3】本発明に係るフレークアイス製造装置の一実施形態であって、図2のIII-III線断面図である。
図4】本発明に係るフレークアイス製造装置に備えられたスクレーパを含む一実施形態を示す正面図である。
図5】本発明に係るフレークアイス製造装置に備えられた金属プレートの他実施形態を示す断面図である。
図6】本発明に係るフレークアイス製造装置の他実施形態を示す要部断面図である。
図7】本発明に係るフレークアイス製造装置の他実施形態であって、図6のVII-VII線断面図である。
図8】本発明に係るフレークアイス製造装置の他実施形態であって、図6のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のフレークアイス製造装置は、溶質を含有する水溶液(ブラインともいう)から生成した氷をフレーク(薄片)状に加工したフレークアイスを製造する装置である。ただし、ここで生成される氷は、ブラインインに含有される溶質の濃度が略均一となるように凝固させた氷であって、少なくとも以下の(a)及び(b)の条件を満たす氷(以下「ハイブリッドアイス」とも呼ぶ)のことをいう。
(a)融解完了時の温度が0℃未満である
(b)融解過程で氷が融解した水溶液(ブライン)の溶質濃度の変化率が30%以内である
【0017】
ここで、「ブライン」とは、1種類又は2種類以上の溶質を含有する、凝固点の低い水溶液を意味する。ブラインの具体例としては、例えば、塩化ナトリウム水溶液(塩水)や塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、エチレングリコール水溶液等がある。
【0018】
食塩を溶質とするブライン(塩水)の熱伝導率は、約0.58W/m Kであるが、食塩を溶質とするブラインが凍結したフレークアイスの熱伝導率は約2.2W/m Kである。即ち、熱伝導率は、ブライン(液体)よりもフレークアイス(固体)の方が高いため、フレークアイス(固体)の方が被冷却品を早く冷却することができることになる。
【0019】
このようなブラインを容器に溜めて外部から冷却しても、ハイブリッドアイスと同等の性質を有する氷を製造することはできない。これは、冷却速度が十分でないことに起因すると考えられる。
【0020】
しかしながら、図1乃至図8に示す本実施形態に係るフレークアイス製造装置1では、溶質を含有するブラインを噴射することで霧状にし、これをブラインの凝固点以下の温度に予め冷却された金属プレートに接触させることによって凍結させ、そのまま金属プレートに付着させることができる。これにより、上記(a)及び(b)の条件を満たす冷却能の高い氷(ハイブリッドアイス)を生成することができる。
【0021】
図1は、フレークアイス製造装置101の一実施形態であって、図2のI-I線断面図である。図2は、フレークアイス製造装置101の一実施形態を示す側面図である。図3は、フレークアイス製造装置1の一実施形態であって、図2のIII-III線断面図である。
【0022】
図1乃至図3に示すように、フレークアイス製造装置101は、回転軸110と、金属プレート120と、ノズル130と、スクレーパ141とを備える。フレークアイス製造装置101は、さらに、ポジショナ150とカバー160と、冷媒の冷却機170を備える。
【0023】
回転軸110は、水平姿勢とされた駆動シャフト111と、この駆動シャフト111の一端部に固定されたモータ(例えばインバータモータ)112とを備え、任意の回転速度で回転する。モータ112及びモータ112を固定した駆動シャフト111の一端部を除いた駆動シャフト111と、金属プレート120と、ノズル130と、スクレーパ141がカバー160によって覆われている。カバー160の下面側は開口し、フレークアイス排出口161とされている。カバー160は、断熱性を有するFRP製とされ、カバー160内が外気の影響を受けないようにされている。フレークアイス排出口161の下方には、フレークアイス貯留タンク(図示せず)が置かれている。
【0024】
金属プレート120は、両表面を製氷面とした平板である。図1に示すように、金属プレート120の内部には、冷媒流路121が設けられている。金属プレート120の中心部には、駆動シャフト111(以下、回転軸110として説明する)が貫通する貫通穴122が形成されている。金属プレート120は、起立姿勢で複数枚(図1では2枚)、平行に向き合って並べられている。金属プレート120は、回転軸110が回転しても、回転しないように固定されている。
【0025】
金属プレート120を構成する部材としては、熱伝導率が高い銅や銅合金が採用される。ただし、金属プレート120は、ステンレス鋼などを採用してもよい。金属プレート120の表面は、耐摩耗性の金属、例えばクロムによってメッキされている。金属プレート120は、正方形等の多角形だけでなく、円盤形状であってもよい。いずれにしても、金属プレート120は、表面と裏面が平行な板状体で(板厚は例えば25mm)、鋳造によって形成される。
【0026】
図1に示すように、冷媒流路121は、例えば、金属プレート120の中心側である貫通穴122(図2参照)を取り巻くような渦巻き状に形成されている。冷媒流路121は、金属プレート120の一方の側縁120aから貫通穴122に向かう往路121aと、貫通穴122側から金属プレート120の他方の側縁120bに向かう復路121bとを備えている。冷媒流路121の往路121aと復路121bは、仕切壁121cを介して隣り合うように形成される。冷媒流路121の往路121aと復路121bの折返し部121dが金属プレート120の中心側に設けられる。金属プレート120の中心側は、貫通穴122側に隣接した位置だけでなく、貫通穴122付近も含まれる。
【0027】
金属プレート120が鋳造によって形成されるため、中子を型に嵌め込むことで、仕切壁121cによって仕切られる冷媒流路121を容易に設けることができる。すなわち、金属プレート120の内部に形成しようとする流路形状に対応する中子を鋳造型内に配置して、溶融金属(湯)を注入し、固まった後にその内部の中子を崩し、取り出すことによって金属プレート120の内部に所望の流路を形成することができる。
【0028】
往路121aの上流側を流れる冷媒と復路121bの下流側を流れる冷媒とでは、温度差が生じる。したがって、仕切壁121cは、断熱のために厚く形成される。冷媒流路121と金属プレート120の表面との肉厚は、冷媒の冷熱が金属プレート120の表面に伝熱されやすいように薄く形成される。
【0029】
各冷媒流路121は、第1、第2の配管171,172によって冷却機170に接続されている。冷却機170によって冷却された冷媒は、一方の配管171→冷媒流路121→他方の配管172というように循環するように流れる。冷媒としては、沸騰温度が例えば-60℃のフロン(HCFC22)やハイドロフルオロカーボン(HFC)等が使用される。
【0030】
図2に示すように、ノズル130は、ブラインを金属プレート120の両方(図2において左面と右面)の表面に向けて噴射する。詳しくは後述するが、金属プレート120は、冷媒流路121内に冷媒が流れて冷却されているため、金属プレート120に付着したブラインは急速冷凍されて氷(ハイブリッドアイス)となる。
【0031】
ノズル130は、金属プレート120から少しの間隔をあけて配置されたパイプ131に多数形成される。2枚の金属プレート120の間に配置されたパイプ131には、両金属プレート120に向けてブラインを噴射できるようにノズル130が二方向に形成されている。
【0032】
スクレーパ141には、金属プレート120に付着した氷を掻き取るための棒状の刃部であり、ブレード140に備えられる。スクレーパ141は、金属プレート120の表面とパイプ131との間で回転する。図1及び図3に示すように、スクレーパ141は、2本が反対方向に向けて直線状に配置されている。ブレード140は、直線状に配置されたスクレーパ141の長さを直径とする円環状のリング142を備えている。リング142が金属プレート120に固定されたポジショナ150(図4参照)によって、スクレーパ141が撓むことがないように保形される。スクレーパ141とリング142とを合わせてワイパー(採番せず)と呼ぶ。
【0033】
図4は、ブレード140の変形例を示す正面図である。図4に示すブレード140は、中心から120°の等間隔で3本配置されている。ブレード140は、図示しないが、90°の等間隔で4本配置されている等、等間隔で複数本配置されてもよい。
【0034】
いずれにしても、スクレーパ141は、尖端部141aと凹曲部141bとを交互に形成した波形状の棒状とされる。尖端部141aが氷に割り込み、氷を凹曲部141bへ流すようにすることで、氷を掻き取りやすくされている。なお、図1に示したスクレーパ141は、波形状に描かれていないが、当然ながら、波形状に形成されていることが好ましい。
【0035】
スクレーパ141は、金属プレート120に接触しない方がよい。スクレーパ141は、例えば、0.2mm程度のクリアランスをもって金属プレート120から離れている。フレークアイス製造装置101は、このクリアランスを維持するように、ポジショナ150を備えている。
【0036】
ここで、このフレークアイス製造装置101によってフレークアイスを製造する方法について説明する。
【0037】
冷媒を冷媒流路121内に流すことで、起立姿勢の金属プレート120が冷却される。冷媒は、第1の配管171から冷媒流路121の往路121aを貫通穴122の方へ流れ、折返し部121dで進行方向が反転し、復路121bから第2の配管172へ流れる。冷媒流路121が渦巻き状に形成されていることで、流動抵抗が小さく、冷媒がスムーズに流れる。冷媒が-60℃であると、金属プレート120が熱伝導率の高い銅製又は銅合金製とされていることで、金属プレート120も-60℃に冷却される。金属プレート120は、カバー160で覆われていることから、外気の影響を受けることなく、-60℃を維持する。
【0038】
そして、ブラインがパイプ131内に供給され、ノズル130から金属プレート120の表面である製氷面に向けて噴射される。食塩水(飽和状態)の凝固点は-21℃であり、塩化マグネシウム水溶液(飽和状態)の凝固点は-26.7℃である。したがって、食塩水やマグネシウム水溶液をブラインとして使用した場合は、ブラインが金属プレート120に付着すると、急速冷凍され、氷(ハイブリッドアイス)の膜が金属プレート120の表面に生成される。しかも、金属プレート120は、カバー160によって覆われ、外気の影響を受けないため、冷却された状態を維持する。
【0039】
ここで、スクレーパ141を備えたブレード140(以下、「スクレーパ141」として説明する)の動作について説明する。スクレーパ141が図1及び図3に示した2本のタイプである場合は、図3に示すように、金属プレート120を座標面に見立てたときに、第1象限を第1領域A、第2象限を第2領域B、第3象限を第3の領域C、第4象限を第4領域Dと呼ぶ。
【0040】
スクレーパ141は、図1及び図3に示すような縦向きの姿勢になる直前に、第1領域Aと第3領域Cにノズル130から金属プレート120に向けてブラインが瞬間的に噴射される。このブラインが瞬間冷凍され、均一な厚さの氷が生成された状態で、スクレーパ141が一方向(図面では時計方向)に回転して第1領域Aと第3の領域Cに進入し、氷を掻き取る。このようにスクレーパ141が第1領域Aと第3の領域C内を回転している間に、第2領域Bと第4領域Dにノズル130から金属プレート120に向けてブラインが瞬間的に噴射される。このブラインが瞬間冷凍され、均一な厚さの氷が生成された状態で、スクレーパ141が一方向(図面では時計方向)に回転し、第2領域Bと第4領域Dに進入し、氷を掻き取る。
【0041】
このようにスクレーパ141が一方向に連続して回転し、金属プレート120に生成された氷を掻き取られた領域A,B,C,Dにノズル130からブラインが噴射され、瞬間冷凍されて生成された氷がスクレーパ141によって掻き取られる動作が繰り返される。ただし、スクレーパ141は、90°回転するたびに停止するようにしてもよい。
【0042】
スクレーパ141が図4に示した3本のタイプである場合は、採番しない領域が6つ設けられる。3本のスクレーパ141であっても、2本のスクレーパ141と同様に停止と回転を繰り返し、スクレーパ141が金属プレートに生成された氷を掻き取る。
【0043】
このようにしてスクレーパ141によって金属プレート120から掻き取られることで生成されたフレークアイスは、カバー160の下面側のフレークアイス排出口161から下方に落下し、フレークアイス貯留タンク内に溜められる。まとめると、スクレーパ141が停止している状態において、冷却されている起立姿勢の金属プレート120にノズル130からブラインが噴射され、金属プレート120の表面に氷の膜が均一な厚さで成形された後、スクレーパ141が回転し、氷を掻き取るという動作を繰り返すことで、フレークアイスが次々とフレークアイス貯留タンク内に溜められる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。また本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、ブラインは、上述した実施形態では塩水(塩化ナトリウム水溶液)や塩化マグネシウム水溶液を例示したが、特に限定されない。具体的には、例えば塩化カルシウム水溶液、エチレングリコール等を採用することができる。これにより、溶質又は濃度の違いに応じて凝固点の異なる複数種類のブラインを用意することも可能となる。
【0046】
上述した実施形態では、冷媒流路121を形成する仕切壁121cは厚く、冷媒流路121と金属プレート120の表面との肉厚を薄く形成した。図5に示すように、冷媒流路121は、さらに冷却力を向上させるため、往路121aの表面積や断面積が大きな断面四角形状とし、復路121bの表面積や断面積が小さな断面円形状に形成してもよい。
【0047】
往路121aを流れる冷媒の温度は、復路121bを流れる冷媒の温度より低温である。したがって、冷媒流路121では、表面積の大きな通路とした往路121a内で冷却能力の高い冷媒が流速を遅くして(滞留時間を長くして)流動し、表面積の小さな流路とした復路121b内で冷却能力の低下した冷媒が流速を速くして(滞留時間を短くして)流動する。これにより、冷媒流路121は、冷媒の金属プレート120に対する冷却能力を高めている。
【0048】
上述した実施形態では、冷媒流路121は、往路121aと復路121bがともに渦巻き状で、隣り合って設けられた。しかし、図6乃至図8に示すように、冷媒流路121は、往路121pが金属プレート120渦巻き状に形成され、復路121qが金属プレート120内で直線状に形成されてもよい。
【0049】
図7に示すように、往路121pは、復路121qと交差する部位において、金属プレート120の表面側に偏在する。図8に示すように、往路121pは、復路121qと交差しない部位において、金属プレート120の幅方向中心に位置する。換言すれば、往路121pは金属プレート120のほぼ全面において金属プレート120の両表面から均等の距離に位置する。したがって、この金属プレート120は、両表面が均等に冷却される。
【0050】
さらに、図示しないが、冷媒流路121は、往路121pを金属プレート120の一方の表面側に偏在し、復路121qを金属プレート120の他方の表面側に偏在し、往路121pも復路121qもともに渦巻き状に形成したものとしてもよい。
【0051】
さらに、金属プレート120は、鋳造によって形成される以外に、厚さ方向に二分割した二つの部分で構成してもよい。この金属プレート120は、一方の部分に機械加工で冷媒流路121を形成し、この一方の部分の冷媒流路121を塞ぐように他方の部分を重ね合わせて形成することができる。
【0052】
さらに、フレークアイス製造装置101は、ブラインを金属プレート120の表面に噴射するためのノズル130をパイプ131に備えた。ノズル130が、パイプ131ではなく、スクレーパ141に追尾して回転するように設けられ、スクレーパ141と一体のブレード(図示せず)を備えてもよい。ノズル130がスクレーパ141に追尾するように設けられることで、スクレーパ141が氷を掻き取った後にノズル130からブラインが噴射され、次のスクレーパ141が回転してくるまでの間に瞬間冷凍され、氷の膜が生成される。
【0053】
このようなノズル130は、スクレーパ141に追尾するのではなく、スクレーパ141に先行して回転し、ブラインがスクレーパ141の後方に向けて噴射されるようにしてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、金属プレート120は、貫通穴122を形成したが、貫通穴122でなく、切込みであってもよく、さらに、上下2枚に分離したものであってもよい。金属プレート120は、複数枚備えられるとしたが、1枚でもよい。金属プレート20には、耐摩耗性の金属でメッキするとしたが、スクレーパ141が回転する範囲でメッキしてもよい。
【0055】
上述した実施形態における冷媒流路121やパイプ131のレイアウトは、一例を図示しただけであり、そのレイアウトは、任意に変更できる。
【0056】
以上まとめると、本発明が適用されるフレークアイス製造装置101は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
【0057】
即ち、本発明が適用されるフレークアイス製造装置101は、
回転軸110と、
曲線部分を有する冷媒流路121を内部に設けた1枚又は複数枚の金属プレート120と、
金属プレート120の一方又は両方の表面に向けてブラインを噴射するノズル130と、
回転軸に固定されて回転するスクレーパ141と、
を備え、
ノズル130から金属プレート120の表面に向けて噴射されたブラインが前記金属プレート120の表面で凍結し生成された氷を回転するスクレーパ141によって掻き取ってフレークアイスを製造する。
【0058】
このフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120に設けられた冷媒流路121が曲線部分を有することにより、冷媒流路121内を流動抵抗が小さくなり、冷媒が冷媒流路121内をスムーズに流れ、金属プレート120を効率的に冷却することができる。
【0059】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
冷媒流路121は、金属プレート120の側縁120aから金属プレート120の中心側に向かう往路121aと、金属プレート120の中心側から金属プレート120の側縁120bに向かう復路121bとを備え、往路121aと復路121bとが隣り合い、金属プレート120の中心側に折返し部121dを有する。
このフレークアイス製造装置101によれば、冷媒流路121が隣り合う往路121aと復路121bとを有し、往路121aが金属プレート120の側縁120aから中心側に向かい、復路121bが金属プレート120の中心側から側縁120bに向かうことで、金属プレート120の側縁120aから側縁120bへ設けられた冷媒流路121を設けることができる。さらに、往路121aと復路121bは、上記実施形態では金属プレート120の対向する辺の側縁120a,120bに設けたが、どの辺の側縁に設けてもよい。
【0060】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
往路121aと復路121bとは、交互に隣り合う渦巻き状に形成されている。
このフレークアイス製造装置101によれば、往路121aと復路121bとが隣り合う渦巻き状に形成されることで、冷媒流路121を密に設けることができる。
【0061】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
往路121aは、角筒状に形成され、復路121bは、円筒状に形成されている。
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
往路121aの断面積は、復路121bの断面積よりも大きくされている。
これらのフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120の冷却力を向上させることができる。
【0062】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
往路121pと復路121qとは、金属プレート120の一方の表面側と他方の表面側とに偏在して形成されている。
このフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120の片面側を効率的に冷却することができる。
【0063】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
往路121pと復路121qとの少なくともいずれか一方は、渦巻き状に形成されている。
このフレークアイス製造装置101によれば、往路121pと復路121qの少なくともいずれか一方が渦巻き状に形成されていることにより、冷媒がスムーズに流れるようにすることができる。
【0064】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
前記金属プレート120は、銅製又は銅合金製である。
このフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120の内部に設けられた冷媒流路21内を流れる冷媒が金属プレート120を効率的に冷却することができる。
【0065】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
回転軸110は、水平姿勢であり、金属プレート120は、起立姿勢である。
このフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120の表面に生成された氷を自重によって掻き落とすことができる。
【0066】
本発明が適用されるフレークアイス製造装置101において、
金属プレート120は、鋳造製である。
このフレークアイス製造装置101によれば、金属プレート120が鋳造製とされることにより、冷媒流路121を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0067】
101:フレークアイス製造装置、110:回転軸、120:金属プレート、120a:側縁、120b:側縁、121:冷媒流路、121a:往路、121b:復路、121c:仕切壁、121d:折返し部、121p:往路、121q:復路、130:ノズル、131:パイプ、141:スクレーパ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8