(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20221006BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20221006BHJP
B65G 33/02 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
B65G43/00 C
B23Q11/00 R
B65G33/02
(21)【出願番号】P 2018144774
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220457
【氏名又は名称】東京精密発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】前田 高明
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-143612(JP,A)
【文献】特開2010-137931(JP,A)
【文献】特表2016-529488(JP,A)
【文献】特開2017-007070(JP,A)
【文献】米国特許第04364831(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-43/10
B23Q 11/00
B65G 33/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、モータにより駆動されることにより被搬送物を所定方向に搬送する搬送体と、モータの回転を制御する制御装置とを有するコンベアであって、制御装置は、モータに接続される周波数インバータと、周波数インバータからモータに出力される動力値に基いて現時点の実効動力値を求める動力値演算手段と、動力値演算手段により求めた実効動力値をあらかじめ定めた目標動力値と比較する動力値比較手段と、動力値比較手段による判定結果に基いて、実効動力値が目標動力値を上回ったときはモータ回転数を
低下させるための減速制御信号を周波数インバータに出力し、実効動力値が目標動力値を下回ったときはモータ回転数を
増加させるための加速制御信号を周波数インバータに出力する制御信号送信手段と、を有することを特徴とするコンベア。
【請求項2】
前記制御装置は、さらに、前記動力値演算手段により求めた実効動力値と現時点のモータ回転数とに基いて現時点の搬送トルクを演算するトルク演算手段と、トルク演算手段により求めた搬送トルクをあらかじめ定めた最大トルク値と比較するトルク比較手段とを有し、前記制御信号送信手段は、トルク比較手段により前記搬送トルクが前記最大トルクを上回ると判定されたときに、モータ回転を停止させる停止制御信号を周波数インバータに出力することを特徴とする、請求項1記載のコンベア。
【請求項3】
前記動力値比較手段は、さらに、前記動力値演算手段により求めた実効動力値をあらかじめ定めた動力上限値と比較して、前記実効動力値が前記動力上限値を上回るときに、その判定結果に基づいて、前記制御信号送信手段は、モータ回転を停止させる停止制御信号を周波数インバータに出力することを特徴とする、請求項1または2記載のコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削加工により生じた切屑などを搬送するに適したコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコンベアとして公知であるスパイラルコンベア1は、特許文献1、非特許文献1および
図1に示すように、トレイ2に収容したコイルスプリング状の搬送スパイラル3を減速機付モータ4で所定方向に低速回転することにより、トレイ2に投入した切屑5を固液分離しながらトレイ2内で所定方向に搬送して、トレイ2の出口に接続した排出ダクト6へと排出するものである。切屑5と共にトレイ2に投入される切削液7は、搬送途中でトレイ2から重力落下して切屑から分離され、下方に設けられた切削液タンク8に回収される。
【0003】
このような構造を有するスパイラルコンベアは、大きく膨張した長鎖状の連続切屑から針状の微細切屑まで多種多様な形状・寸法・材質であっても切屑が絡み付かずにスムーズに搬送できること、構造が簡単であり低コストで製造・提供可能であること、多種・多数の工作機械を連結する加工システムにおいて切屑の長距離搬送が可能であること、切屑に付着した切削液を効率的に分離回収できることなどから、多くの工作機械に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】http://www.to-hatsu.co.jp/products/sc_built.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスパイラルコンベアでは、一般に、モータを一定の速度で回転させて搬送スパイラルを駆動している(通常運転)。一例として、1500RPM(50Hz)または1800RPM(60Hz)のモータを減速比1/30の減速機で50RPM(50Hz)または60RPM(60Hz)に減速して搬送スパイラルを駆動している。しかしながら、切屑が投入されていないときや投入量が少量であるときも通常運転が行われるため、消費電力に無駄が生じ、また、通常運転時の振動や騒音が常に発生していた。
【0007】
また、その構造上詰まりが生じにくいスパイラルコンベアではあるが、切屑の投入量や形状などによっては詰まりが生ずることがあり、あるいは、異物が混入することによっても詰まりが生ずることがある。このような搬送異常が発生したときにも通常運転を継続すると、モータの出力軸やベアリングを破損させる恐れがある。
【0008】
この問題に対する解決手段として、モータに流れる電流値をサーマルリレーやショックリレーなどを用いて計測し、過電流(過負荷)を検知したときにアラームを鳴らして自動停止させるように制御することが従来から一部で行われているが、サーマルリレーはモータの焼損を防ぐためのものであり、反応が遅く、停止するまでの間に駆動系が破損する恐れがある。ショックリレーは反応が早いがきわめて高価であり、スパイラルコンベアに使用することは実際上コスト面で難しい。また、過電流を検知してモータを停止させる制御は通常運転時には何ら働かないので、切屑が投入されていないときや投入量が少量であるときも通常運転が行われることによる消費電力の無駄や通常運転時の振動や騒音という前述の問題を解決することができない。
【0009】
工作機械、特にMC(マシニングセンター)やTC(タッピングセンター)などの複合機から排出される切屑は様々な形状・重量・容積を有し、これらを機外に搬送し、切屑と切削液とを分離・排出する役目を担うスパイラルコンベアにおいて必要とされる搬送力(推力)は、切屑の性状や投入量、あるいは搬送路が平面であるか傾斜面であるかなどによって、極端に言えば0から無限大まで大きく異なり、且つ、刻一刻と変化する。したがって、制御対象である推力を直接検出(たとえば、搬送スパイラル3と固定部の間に設置した軸方向力検出器により検出)することは、制御の目標値を設定することがきわめて困難であり、実際的ではない。
【0010】
そこで、本発明者は、搬送時の負荷に応じて変化するモータ動力を検出し、この変化からモータ出力トルクやスパイラルトルクを算定し、さらにネジ原理に基いて搬送力を算定する手法を創案し、いわば制御目標である推力を間接的に推定することにより、負荷が様々に変化する搬送時にも的確且つリアルタイムに制御可能になることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、上記の背景に鑑みて、コンベアの省電力化や制振・静音効果を向上させることができ、且つ、切屑の詰まりや異物の混入が発生した場合にもスムーズに対応することができるように改良されたコンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、モータと、モータにより駆動されることにより被搬送物を所定方向に搬送する搬送体と、モータの回転を制御する制御装置とを有するコンベアであって、制御装置は、モータに接続される周波数インバータと、周波数インバータからモータに出力される動力値に基いて現時点の実効動力値を求める動力値演算手段と、動力値演算手段により求めた実効動力値をあらかじめ定めた目標動力値と比較する動力値比較手段と、動力値比較手段による判定結果に基いて、実効動力値が目標動力値を上回ったときはモータ回転数を低下させるための減速制御信号を周波数インバータに出力し、実効動力値が目標動力値を下回ったときはモータ回転数を増加させるための加速制御信号を周波数インバータに出力する制御信号送信手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のコンベアにおいて、前記制御装置が、さらに、前記動力値演算手段により求めた実効動力値と現時点のモータ回転数とに基いて現時点のモータトルクまたはスパイラルトルクを演算するトルク演算手段と、トルク演算手段により求めたモータトルクまたはスパイラルトルクをあらかじめ定めた最大トルク値と比較するトルク比較手段とを有し、前記制御信号送信手段は、トルク比較手段により前記モータトルクまたはスパイラルトルクが前記最大トルクを上回ると判定されたときに、モータ回転を停止させる停止制御信号を周波数インバータに出力することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載のコンベアにおいて、前記動力値比較手段は、さらに、前記動力値演算手段により求めた実効動力値をあらかじめ定めた動力上限値と比較して、前記実効動力値が前記動力上限値を上回るときに、その判定結果に基づいて、前記制御信号送信手段は、モータ回転を停止させる停止制御信号を周波数インバータに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によれば、周波数インバータからモータに出力される動力値に基いて求められる現時点の実効動力値を、現時点のモータ回転数に基いて算出される目標動力値と比較し、その判定結果に基いてモータの回転数を制御するので、切屑が投入されていないときや投入量が少量であるときにはモータを減速させて消費電力に無駄を無くすと共に制振・静音効果を高めることができ、また、一時的に大量の切屑が投入されたような場合にはモータを増速させてスムーズな搬送を可能にすることができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によれば、現時点の搬送トルクが既定の最大値を超えたときにモータを停止させる制御を行うので、切屑の詰りが発生したような場合にはモータを強制停止させて、モータ出力軸やベアリングの破損を未然に防止することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によれば、現時点の実効動力値が既定の動力上限値を超えたときにモータを停止させる制御を行うので、切屑の詰りが発生したような場合にはモータを強制停止させて、モータ出力軸やベアリングの破損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】スパイラルコンベアの基本構造を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるスパイラルコンベアの要部上面図である。
【
図3】このスパイラルコンベアの動作を制御するフローである。
【
図4】このスパイラルコンベアにおける具体的な制御説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態によるスパイラルコンベアについて、
図2ないし
図4を参照して説明する。このスパイラルコンベア10は、
図1のスパイラルコンベア1と同様の基本構造を有し、その基本的な動作ないし作用も
図1について既述したと同様であるが、三相誘導モータ12(
図1において符号4で示す)の回転速度および回転/停止を自動制御するために周波数インバータ17および制御装置18とを備えている。
【0020】
より具体的に説明すると、減速機11を備えたモータ12の出力軸13は、ナックル14を介して、搬送スパイラル15(
図1において符号3で示す)の始端部に溶接固定された駆動スリーブ16に連結されており、モータ出力軸13の回転速度(減速後)と略同一の速度で搬送スパイラル15を回転させて、トレイ2内において切屑(
図2において図示省略、
図1において符号5で示す)を図において右方向に搬送する。
【0021】
スパイラルコンベア10で切屑5を搬送するとき、モータ12ないし搬送スパイラル15に働く負荷トルクの大きさは、投入した切屑の重量や大きさ、使用状態(水平搬送、傾斜搬送)などによって様々に、また刻一刻と変化する。したがって、目標とするトルク値(または推力値)を一律に設定することは実際的ではない。
【0022】
そこで、このスパイラルコンベア10では、モータ12に接続した周波数インバータ17から出力される動力値(検出動力値Wm)に基いて演算される実効動力値Waに着眼し、制御装置18においてこの実効動力値Waを目標動力値Wpと比較し、その結果に基づいてモータ12に対する出力周波数を増減ないし停止するように制御する。公知のように、周波数インバータ17は、モータ12に流れる3相モータ電流U,V,Wを検出する各相電流検出器171を備え、その検出結果などに基いて、周波数変換回路172で適正な周波数を決定して、モータ12に出力する。また、制御装置18は、
図3のフローのS1,S2,S4を実行する入力回路181と、
図3のフローのS3,S5~S7を実行する演算回路182と、
図3のフローのS8,S9,S11を実行する判定回路183と、判定結果に基いて周波数を変更する制御信号を周波数インバータ17の周波数変換回路172に出力することにより
図3のフローのS10,S12~S15
を実行する制御信号出力回路184とを備えている。
【0023】
以下、
図3の制御フローを参照して説明する。周波数インバータ17から出力される検出動力値Wm(W)は、切屑5が存在しないとき(空転時)にも必要とされる動力値(空転時動力値Wl)を含むので、あらかじめ取得してS1に格納しておいた空転時動力値Wlと、S2で取得した検出動力値Wmとから、S3で実効動力値Waを取得する(Wa=Wm-Wl)。
【0024】
また、S4に格納されている所定の周波数データf(一般に50Hzまたは60Hz)から、S5で、演算式:Nm=120×f/p(pはモータの極数)によりモータ回転数Nm(rpm)を取得し、S3で取得した実効動力値WaとS5で取得したモータ回転数Nmとに基いて、S6で、演算式:Tm=γ×Wa/Nm(γは換算定数)によりモータトルクTm(kgf・cm)を取得し、さらに、S6で取得したモータトルクTmに基いて、S7で、演算式:Ts=β×Tm(減速比:1/β)によりスパイラルトルクTsを取得する。そして、S8で、S7で取得したスパイラルトルクTsを、あらかじめ設定したスパイラルトルク最大値Tsmaxと比較して、Ts>Tsmaxであるか否かを判定する。
【0025】
Ts>Tsmaxのとき(S8:Yes)は、切屑5の投入量が過大であったり、あるいは長い切屑5が搬送スパイラル15に絡み付いたりして、搬送スパイラル15に切屑5が詰まっている恐れがあるので、S10で、制御装置18から周波数インバータ17に対して出力周波数をゼロにするように制御信号を送信して、モータ12を強制停止させる。
【0026】
また、S9で、S3で取得した実効動力値Waを、
図4を参照して後述する動力上限値Wmaxと比較して、Wa>Wmaxであるか否かを判定する。Wa>Wmaxのとき(S9:Yes)は、Ts>Tsmaxのときと同様に、切屑5の投入量が過大であったり、あるいは長い切屑5が搬送スパイラル15に絡み付いたりして、搬送スパイラル15に切屑5が詰まっている恐れがあるので、S10で、制御装置18から周波数インバータ17に対して出力周波数をゼロにするように制御信号を送信して、モータ12を強制停止させる。
【0027】
Ts≦Tsmax(S8:No)且つWa≦Wmax(S9:No)のときは、S11に進み、実効動力値Waを、あらかじめ設定しておいた目標動力値(Wp)と比較する。Wa>Wpのときは、切屑5の量や搬送速度などとの関連において現在のスパイラルトルクTsが不足していることを意味するので、S12で、後述するように
図4を参照して適正なスパイラルトルクTsを演算し、S13で、該適正スパイラルトルクTsが得られるように周波数を低下させる制御信号を周波数インバータ17に送信して、モータ12を減速制御する。Wa<Wpのときは、切屑5の量や搬送速度などとの関連において現在のスパイラルトルクTsが過大であることを意味するので、S14で、後述するように
図4を参照して適正なスパイラルトルクTsを演算し、S15で、該適正スパイラルトルクTsが得られるように周波数を低下させる制御信号を周波数インバータ17に出力して、モータ12を増速制御する。
【0028】
なお、図示省略されているが、Wa=Wpのときは、現在のモータ回転数Nmで適正なスパイラルトルクTsが得られていることを意味するので、制御を行わずに現在のモータ回転数Nmを維持する。
【0029】
S8~S15で行う制御について、
図4を参照してより具体的に説明する。
図4には、スパイラルトルクTs(kgf・cm)とスパイラル回転数Nsとの相関で変化する動力値ラインが示されている。スパイラル回転数Nsはモータ回転数Nm(rpm)に比例する(Ns=Nm×1/β))から、
図4に示す目標動力値Wpラインを参照して、モータ回転数Nmと実効動力値WaとによってスパイラルトルクTsの適正値が特定される。既述したように、実効動力値Waは、周波数インバータ17による検出動力値Wmから空転時動力値Wlを差し引いたWa=Wm-Wl(この例ではWl=100W)として求めることができる。
【0030】
図4には、実効動力値Wa=300Wおよび400Wの場合における、スパイラル回転数Nsに対するスパイラルトルクTsの適正値が示されている。スパイラルコンベア10に投入された切屑の量が多ければ多いほど実効動力値Waが大きくなるが、モータ12への過負荷を避けるため、ここではWa=400Wを動力上限値Wmaxとし、この動力上限値Wmax=400Wの75%に相当する300Wの動力値(目標動力値Wp)を制御目標とした。また、スパイラル回転数Nsは32~60rmpの範囲内で制御するものとし、スパイラル回転数Ns=32rpmのときの目標動力値Wpラインが示す913kgf・cmをスパイラルトルク最大値Tsmaxとした。
【0031】
たとえば、スパイラル回転数Ns=50rpmのときの検出動力値Wm=450W(したがって、実効動力値Wa=450-100=350W)であり、
図3に示す制御フローのS7で取得したスパイラルトルクTsがTs=682kgf・cmであったとする(地点P1)。このスパイラルトルクTs=682kgf・cmは、
図4に示すスパイラル回転数Ns=50rmpにおける目標動力値Wpより大きく、目標動力値Wpラインに対応させると、スパイラル回転数Ns=42rpmのときの適正スパイラルトルクであることが分かる。すなわち、この場合は、切屑の投入量などに対してスパイラル回転数Nsが必要以上に大きく、実効動力値Waが目標動力値Wpを上回っている(Wa>Wp)。
【0032】
したがって、この場合、制御装置18は、
図3の制御フローのS11でWa>Wpを判定し、S12で、
図4の目標動力値Wpラインを参照して、Ts=682kgf・cmが目標動力値Wpラインに合致する地点(P2)のスパイラル回転数NsがNs=42rpmであることを求め、S13で、スパイラル回転数Ns=42rpmが得られるように、周波数インバータ17に対して出力周波数を低下させる制御信号を送信して、スパイラル回転数Ns(したがってモータ回転数Nm)を低下させるように減速制御する。
【0033】
また、他の例として、たとえば、スパイラル回転数Ns=50rpmのときの検出動力値Wm=350W(したがって、実効動力値Wa=350-100=250W)であり、
図3に示す制御フローのS7で取得したスパイラルトルクTsがTs=505kgf・cmであったとする(地点Q1)。このスパイラルトルクTs=505kgf・cmは、
図4に示すスパイラル回転数Ns=50rmpにおける目標動力値Wpより小さく、目標動力値Wpラインに対応させると、スパイラル回転数Ns=58rpmのときの適正スパイラルトルクであることが分かる。すなわち、この場合は、切屑5の投入量などに対してスパイラル回転数Nsが不足しており、実効動力値Waが目標動力値Wpを下回っている(Wa<Wp)。
【0034】
したがって、この場合、制御装置18は、
図3の制御フローのS11でWa<Wpを判定し、S14で、
図4の目標動力値Wpラインを参照して、Ts=505kgf・cmが目標動力値Wpラインに合致する地点(Q2)のスパイラル回転数NsがNs=58rpmであることを求め、S15で、スパイラル回転数Ns=58rpmが得られるように、周波数インバータ17に対して出力周波数を増大させる制御信号を送信して、スパイラル回転数Ns(したがってモータ回転数Nm)を増大させるように増速制御する。
【0035】
なお、既述したように、
図3に示す制御フローのS7で取得したスパイラルトルクTsがTsmax(913kgf/cm)より大きいとき(S8:Yes、
図4において右上がりの斜線で示す領域にあるとき)、または、S2で取得した実効動力値Waが
図4に示す動力上限値Wmaxを超えたとき(S9:Yes、
図4において左上がりの斜線で示す領域にあるとき)は、制御装置18は、S10で、周波数インバータ17に対して出力周波数をゼロにするように制御信号を与えて、モータ12を強制停止させる。
【0036】
以上に本発明を図示実施形態に基づいて詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基いて確定される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施することができる。
【0037】
たとえば、図示実施形態では、スパイラル回転数NsおよびスパイラルトルクTsの相関において
図4の動力上限値Wmaxラインおよび目標動力値Wpラインを設定すると共にスパイラルトルクの上限値Tsmaxを設定して制御に用いているが、スパイラル回転数NsおよびスパイラルトルクTsはそれぞれモータ回転数NmおよびモータトルクTmと比例関係にあるので、スパイラル回転数NsおよびスパイラルトルクTsに代えて、モータ回転数NmおよびモータトルクTmの相関において
図4の動力上限値Wmaxラインおよび目標動力値Wpラインを設定すると共にモータトルクの上限値Tmmaxを設定して制御に用いても良い。
【0038】
また、図示実施形態のスパイラルコンベア10は中心軸を持たない中空の搬送スパイラル15を有するタイプのものであるが、本発明は、中心軸を持った搬送スパイラル16を有するタイプのスパイラルコンベアにも適用可能であり、さらにスパイラルコンベア以外のコンベア(いわゆるチップコンベアなど)にも適用可能である。また、
図1に示すスパイラルコンベア1は、トレイ2の出口に搬出ダクト6を接続して切屑を斜め上方に移送させるようにしているが、このようなリフトアップダクトを持たないスパイラルコンベアにも、本発明は適用可能である。
【0039】
また、図示実施形態では1台のスパイラルコンベア10についての制御を対象としているが、1台の工作機械に複数台のスパイラルコンベア10を用いる場合(たとえば、機械内部で発生した切屑や切削液を機外搬出する1ないし複数のコンベアと、これによりされた切屑と切削液とを分離しながら搬送する1ないし複数のコンベアが設置される場合)にも本発明は適用可能である。この場合、各コンベアに用いられるモータ12の仕様(動力値、減速比など)が異なるため、周波数インバータ17はモータ12ごとにセットで設置する必要があるが、制御装置18については一つの制御装置18に制御結果(
図3のフローのS10,S13,S15)のデータを集積し、これをビッグデータとして分析することにより、複数の周波数インバータ17を一括制御することが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 スパイラルコンベア
2 トレイ
3 搬送スパイラル
4 減速機付モータ
5 切屑
6 排出ダクト
7 切削液
8 切削液タンク
10 スパイラルコンベア
11 減速機
12 モータ
13 モータ出力軸
14 ナックル
15 搬送スパイラル(搬送体)
16 駆動スリーブ
17 周波数インバータ
171 各相電流検出器
172 周波数変換回路
18 制御装置
181 入力回路
182 演算回路(動力値演算手段、トルク演算手段)
183 判定回路(動力値比較手段、トルク比較手段)
184 制御信号出力回路(制御信号送信手段)