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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ロボットセンサ
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B25J19/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018185211
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055045
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ROBOMECH2018 in KITAKYUSHU ロボティクス・メカトロニクス 講演会2018 講演論文集 1P2-L16 公開日:平成30年6月1日 (2)ROBOMECH2018 in KITAKYUSHU ロボティクス・メカトロニクス 講演会2018 ポスター 1P2-L16 公開日:平成30年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】辻 聡史
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-532441(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131237(WO,A1)
【文献】特表2018-501973(JP,A)
【文献】特開平05-304198(JP,A)
【文献】特開平01-210292(JP,A)
【文献】特開昭63-127889(JP,A)
【文献】特開2013-096870(JP,A)
【文献】国際公開第2010/060475(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/144767(WO,A1)
【文献】特開昭63-238502(JP,A)
【文献】特開2018-132329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節ロボットの表面に配設されるToF(Time of Flight)センサと、
前記ToFセンサが配設される面と同一面に配設され、近接する対象物の静電容量に基づいて当該対象物の有無を検出する静電容量近接センサと
前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの検出結果に基づいて、前記多関節ロボットの駆動を制御するロボット駆動制御手段とを備え、
前記ロボット駆動制御手段が、前記ToFセンサが検知する前記対象物までの距離情報をもとに前記静電容量近接センサで検知した静電容量の値と、前記ToFセンサが検知する前記対象物までの距離情報をもとに予め前記対象物に応じて記憶されている静電容量の値と、を参照して前記対象物の種別を判別し、判別した前記対象物の種別に応じて前記多関節ロボットの駆動を制御する ロボットセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットセンサにおいて、
前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサが、前記多関節ロボットの表面における複数面に配設されているロボットセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロボットセンサにおいて、
前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの配設数が低減しているロボットセンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のロボットセンサにおいて、
前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサのサンプリング数が低減しているロボットセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のロボットセンサにおいて、
前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの動作を駆動制御するセンサ駆動制御手段を備え、
前記センサ駆動制御手段は、前記対象物との距離が所定の距離以上離れていると判断される場合は、前記ToFセンサを駆動し、前記対象物との距離が前記所定の距離よりも近いと判断されている場合に、前記静電容量近接センサを駆動するロボットセンサ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のロボットセンサにおいて、
前記静電容量近接センサが、静電容量に基づいて近接及び接触を検出する近接・接触センサであり、前記ToFセンサ及び前記近接・接触センサにより近接測定を行い、接触時には前記近接・接触センサにより接触状態を検出する ロボットセンサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のロボットセンサにおいて、
前記多関節ロボットの関節にトルクセンサを備え、当該トルクセンサに基づいて近接状態から接触状態までを連続的に測定する ロボットセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの安全性を確保するためのロボットセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化に伴い人と同じ場所で人と作業を行う協調ロボットへの期待が高まっている。これらが環境に応じて様々な作業を安全、効率的に行うためには、人間の五感を代行するセンサが必要である。この中でも、安全に作業するためには、近接覚センサが重要な役割を果たす。近接覚センサにより、対象物とロボットの接触前の近接(非接触)で対象物を事前に検出し、不意な衝突を避けるあるいは衝突による衝撃を弱めることが求められる。これまでに、ロボットの近接覚センサとして光センサを利用した研究(非特許文献1を参照)や静電容量センサを利用した研究(非特許文献2を参照)等がある。
【0003】
これらは対象物が近づいたことを検出することができるが、対象物の特性により測定値が異なることから、対象物までの距離を正確に検出することは難しい。一方、対象物までの距離が検出可能なToF(Time of Flight)センサが知られている。これらをロボットのセンサとして利用したものとして、ロボットハンドにToFセンサを取り付け、対象物を検出する研究(非特許文献3を参照)やロボットに取り付ける製品(非特許文献4を参照)が提案されている。しかしながら、これらはロボットの皮膚としてロボット全体の表面に取り付けることは想定されていない。また、非接触情報を取得するデバイスとして視覚センサ(カメラ)が主に用いられるが、死角の問題があり十分とは言えない。
【0004】
このような問題に関連して、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、ロボットアーム操作システムは、リアルタイムで受信した操縦指令値に基づいてロボットアームを操縦する遠隔操縦部と、障害物の3次元形状モデルを含む環境データを保存する環境データ保存部と、障害物との距離が近いほど斥力ベクトルが大きくなるように仮想的な斥力ベクトル場を設定する斥力ベクトル場生成処理部と、斥力ベクトル場を利用してロボットアームに対して障害物から遠ざかる方向への仮想的な斥力を算出する仮想力生成処理部と、仮想力生成処理部により算出された仮想的な斥力と遠隔操縦部からの操縦指令値とを組み合わせてロボットアームへの動作指令値を生成するロボットコントローラと、を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-11498号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】K.Hsiao, P.Nangeroni, K. Hsiao, P. Nangeroni, M. Huber, A. Saxenaand A. Y. Ng, “Reactive Grasping Using Optical Proximity Sensors”,in Proc. 2009 IEEE International Conference on Robotics andAutomation, pp. 2098-2105, 2009.
【文献】B. Sekoranja, D. Basic, M. Svaco, F. Suligoj and B. Jerbic, “Human-Robot Interaction Based on use of Capacitive Sensors”, Procedia Engineering, Vol. 69, pp. 464-468, 2014.
【文献】一村リサ, 鈴木陽介, 明愛国, 下条誠,“ロボットハンドへの搭載を目的としたTOF型近接覚センサの基礎特性に関する研究”, ロボティクス・メカトロニクス講演会2016, 2A2-03b2, 2016
【文献】https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00010006-newswitch-ind, access date: 2018.2.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す技術は、ロボットアームの表面に複数の距離センサを配設し、センサの検出結果に応じてロボットを制御するものであるが、1種類の距離センサを使用しただけでは、非常に近距離にある対象物やロボットアームに接触した状態などを検出するのが困難になってしまう。また、例えば、仮にカメラなどと組み合わせて複数センサを用いた場合であっても、上述したようにカメラには死角が多すぎて実用的ではないという課題を有する。
【0008】
本発明は、多関節ロボットの表面にToFセンサと、静電容量で対象物の近接を検出する近接センサとを配設することで、多関節ロボットの作業を効率化しつつ、安全性を確保することができるロボットセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロボットセンサは、多関節ロボットの表面に配設されるToF(Time of Flight)センサと、前記ToFセンサが配設される面と同一面に配設され、近接する対象物の静電容量に基づいて当該対象物の有無を検出する静電容量近接センサとを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、多関節ロボットの表面に配設されるToF(Time of Flight)センサと、前記ToFセンサが配設される面と同一面に配設され、近接する対象物の静電容量に基づいて当該対象物の有無を検出する静電容量近接センサとを備えるため、ToFセンサで生じてしまう死角をX-Y軸方向に広く検出することができる静電容量に基づいた静電容量近接センサで補うことができ、死角をなくして安全な多関節ロボットの動作を実現することが可能になるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係るロボットセンサは、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサが、前記多関節ロボットの表面における複数面に配設されているものである。
【0012】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、ToFセンサ及び前記静電容量近接センサが、前記多関節ロボットの表面における複数面に配設されているため、ロボットの皮膚としてセンシングすることが可能となり、より安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係るロボットセンサは、前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの配設数が低減しているものである。
【0014】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの配設数が低減しているため、多関節ロボットの動き(変位)が大きくなる先端部ほどセンサの配設数を多くして検出精度を向上させると共に、動き(変位)が小さい基端部ほどセンサの配設数を少なくして演算量及び通信量を低減して、効率よく処理を行うことができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係るロボットセンサは、前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサのサンプリング数が低減しているものである。
【0016】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、前記多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサのサンプリング数が低減しているため、多関節ロボットの動き(変位)が大きくなる先端部ほどセンサのサンプリング数を多くして検出精度を向上させると共に、動き(変位)が小さい基端部ほどセンサのサンプリング数を少なくして演算量及び通信量を低減して、効率よく処理を行うことができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係るロボットセンサは、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの動作を駆動制御するセンサ駆動制御手段を備え、前記センサ駆動制御手段は、前記対象物との距離が所定の距離以上離れていると判断される場合は、前記ToFセンサを駆動し、前記対象物との距離が前記所定の距離よりも近いと判断されている場合に、前記静電容量近接センサを駆動するものである。
【0018】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、前記ToFセンサ及び前記近接静電容量センサの動作を駆動制御するセンサ駆動制御手段を備え、前記センサ駆動制御手段は、前記対象物との距離が所定の距離以上離れていると判断される場合は、前記ToFセンサを駆動し、前記対象物との距離が前記所定の距離よりも近いと判断されている場合に、前記静電容量近接センサを駆動するため、対象物の距離に応じて必要なセンサのみを適正に駆動することで、演算量及び通信量を低減して、効率よく処理を行うことができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係るロボットセンサは、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの検出結果に基づいて、前記多関節ロボットの駆動を制御するロボット駆動制御手段を備え、前記ロボット駆動制御手段が、前記ToFセンサが検知する前記対象物までの距離と、前記静電容量近接センサで検知する静電容量とに基づいて、前記対象物の種別を判別し、判別した前記対象物の種別に応じて前記多関節ロボットの駆動を制御するものである。
【0020】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、前記ToFセンサ及び前記静電容量近接センサの検出結果に基づいて、前記多関節ロボットの駆動を制御するロボット駆動制御手段を備え、前記ロボット駆動制御手段が、前記ToFセンサが検知する前記対象物までの距離と、前記静電容量近接センサで検知する静電容量とに基づいて、前記対象物の種別を判別し、判別した前記対象物の種別に応じて前記多関節ロボットの駆動を制御するため、対象物の種別に応じた適正な駆動を実現することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係るロボットセンサは、前記静電容量近接センサが、静電容量に基づいて近接及び接触を検出する近接・接触センサであり、前記ToFセンサ及び前記近接・接触センサにより近接測定を行い、接触時には前記近接・接触センサにより接触状態を検出するものである。
【0022】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、静電容量近接センサが、静電容量に基づいて近接及び接触を検出する近接・接触センサであり、前記ToFセンサ及び前記近接・接触センサにより近接測定を行い、接触時には前記近接・接触センサにより接触状態を検出する近接測定から接触までの検出を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係るロボットセンサは、前記多関節ロボットの関節にトルクセンサを備え、当該トルクセンサに基づいて、近接状態から接触状態までを連続的に測定するものである。
【0024】
このように、本発明に係るロボットセンサにおいては、多関節ロボットの関節にトルクセンサを備え、トルクセンサに基づいて、近接状態から接触状態までを連続的に測定するため、ToFセンサや静電容量近接センサで近接状態を測定し、トルクセンサにより接触状態を測定することが可能となり、多関節ロボットの状態を連続的に把握して安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0025】
なお、本発明に係るロボットセンサは、多関節ロボットのみならず、人型ロボットや無人搬送機等の自動機の表面に取り付けて適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来の多関節ロボットの実用化イメージと本実施形態に係る多関節ロボットの実用化イメージを示す図である。
図2】第1の実施形態に係るロボットセンサの構成を示す概略図である。
図3図1におけるセンサ部の一部を拡大した構成の一例を示す図である。
図4図2におけるセンサの測定のイメージである。
図5】第1の実施形態で用いる近接・接触センサの構造の一例を示す図である。
図6】近接・接触センサの測定のイメージ図である。
図7】シールド電極及びグラウンド電極の機能を示すイメージ図である。
図8】ToFセンサと静電容量近接センサとをマイコンから制御回路に接続する場合のイメージ図である。
図9】第1の実施形態に係るロボットセンサを多関節ロボットのアームの表面の複数面に取り付けた状態を示す第2の図である。
図10】第1の実施形態に係るロボットセンサを用いた多関節ロボットの制御システムの機能ブロック図である。
図11】ToFセンサと近接・接触センサとをマイコンに接続する場合のイメージ図である。
図12】実施例において試作したロボットセンサを平面に設置した場合の図である。
図13図12におけるロボットセンサの実験の様子を示す図である。
図14図12におけるロボットセンサの測定結果を示す第1の図である。
図15図12におけるロボットセンサの測定結果を示す第2の図である。
図16】実施例において試作したロボットセンサを曲面に設置した場合の図である。
図17図16におけるロボットセンサの実験の様子及び測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0028】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るロボットセンサについて、図1ないし図10を用いて説明する。本実施形態に係るロボットセンサは、多関節ロボットの表面に取り付け可能な近接覚センサである。図1は、従来の多関節ロボットの実用化イメージと本実施形態に係る多関節ロボットの実用化イメージを示す図である。特に、多関節ロボットの複数面(好ましくは表面全体)に取り付けることで近接覚皮膚センサとして機能することが可能となっている。図1(A)は従来の実用化イメージ、図1(B)は本実施形態の場合の実用化イメージである。
【0029】
図1(A)に示すように、これまでのロボットの多くは、主に工場で利用されている産業用ロボットであり、これらの多くは安全性を確保するためにロボットと人との作業スペースが安全柵などで分けられている。このような中、モータ出力が80W以下のロボット又は適切な安全対策が施されたロボットには安全柵を設置する必要がなく、図1(B)に示すように、ロボットと人とが同じスペースで協調作業することが期待される。
【0030】
本実施形態においては、多関節ロボットのアーム表面にToFセンサ、及び静電容量に基づいて近接を検知する近接センサ(以下、静電容量近接センサという)を配設することで、ToFセンサと静電容量近接センサとにより確実に対象物を検出すると共に、アーム表面の複数面(好ましくは全面)をToFセンサ及び静電容量近接センサで覆った場合には、近接覚皮膚センサを実現することができ、作業する人とロボットとの衝突を避けて安全性を確保することが可能となっている。
【0031】
なお、静電容量近接センサは、静電容量に基づいて近接/接触を検知する近接・接触センサを用いてもよい。近接・接触センサについては、発明者が開発した技術(参考文献:特開2016-167252号公報に記載の技術)を活用することが可能である。
【0032】
図2は、本実施形態に係るロボットセンサの構成を示す概略図である。本実施形態に係るロボットセンサ1は、ToFセンサ10、静電容量近接センサ20及びマイコンを有しており、各センサ(以下、ToFセンサ10及び静電容量近接センサ20を合わせてセンサ部30という)はマイコン60により制御される。センサ部30とマイコン60とは、ICバスで接続されている。なお、図2においては、センサ部30を単一のToFセンサ10と単一の静電容量近接センサ20とで構成しているが、複数のToFセンサ10及び静電容量近接センサ20を備えるようにしてもよい。
【0033】
ToFセンサ10は、非接触状態で対象物までの距離を検出可能なセンサであり、発光素子から赤外線を対象物に向かって照射し、受光素子が反射光を受信するまでの時間を計測することで、対象物までの距離を検出するものである。図2において、ToFセンサ10は、IC(Inter-Integrated Circuit)通信を利用しており、省配線でシステムを構築することが可能となっている。
【0034】
なお、ToFセンサ10は、IC通信によりICデバイスアドレスを変更することができ、複数のToFセンサ10を用いる場合は、初期設定でICを設定するためにI/Oを用いるようにしてもよい。図2においては、例えば、マイコン60のI/Oを用いる構成となっている。
【0035】
C通信は、ICデバイスアドレスが異なるデバイスを同一バスラインで通信可能であるが、同一バスラインでの負荷容量の合計が400pF以下とする必要がある。そこで、本実施形態においては、センサ部30を複数取り付けるために制御回路70とセンサ部30との間にバッファ回路を配設する構成とするのが望ましい。
【0036】
図3は、図1におけるセンサーの一部を拡大した構成の一例を示す図である。ここでは、センサ部30が複数連接して配設されており、静電容量近接センサ20の一方の対角線上の角にそれぞれToFセンサ10が配設されている。図4は、センサ部30における測定イメージ図である。図4に示すように、ToFセンサ10を用いることである程度周囲の状態を検知して安全性を確保することは可能であるが、本実施形態においては、ToFセンサ10に加えて静電容量近接センサ20を備える構成となっている。ToFセンサ10は、距離の検出が可能であるが、指向性が高いためX-Y軸方向における広範囲の測定は難しい。一方、静電容量近接センサ20は、X-Y軸方向に広く検出することができる。このようにToFセンサ10及び静電容量近接センサ20を有するセンサ部30により広範囲に死角なく対象を検出することができる。なお、静電容量近接センサは、接触機能を有する近接・接触センサを用いてもよい。以下、近接・接触センサについて詳細に説明する。
【0037】
近接・接触センサは、上述したように参考文献に記載された技術を用いることができる。図5は、本実施形態で用いる近接・接触センサ20の構造の一例を示す図である。近接・接触センサ20は、対象物が接近し、接触・押下される平板状の上部電極101と、上部電極101に対向して配設される平板状の下部電極102と、上部電極101及び下部電極102の間に配設され弾性力を有する弾性体103と、下部電極102の周囲に配設されるシールド電極104と、シールド電極104の周囲に配設されるグラウンド電極105と、上部電極101の接続を切り替えるスイッチS1と、下部電極102の接続を切り替えるスイッチS2と、上部電極101や下部電極102の静電容量を検出する検出回路106とを備える。弾性体103としては、例えば、厚さ数ミリ程度のウレタンゲル(硬度0)を用いる。また、測定対象物と上部電極101とを絶縁するために上部電極101の測定対象物が近接、接触する側の面にシリコーンシートを設置する。なお、シールド電極104及びグラウンド電極105は必ずしも配設されなくてもよい。
【0038】
図5において、スイッチS1及びS2により上部電極101及び下部電極102を切り替えて、上部電極101又は下部電極102の静電容量を測定する。図5は、近接・接触センサ20の測定のイメージ図である。図6(A)は、スイッチS1及びS2をA(接続A)に設定し、下部電極102の静電容量Cを測定した場合を示している。図6(A)に示すように、上部電極101はグラウンドに接続されているため、上部電極101の上部からの電気的な影響を除去することができ、対象物が上部電極101に接触するまで(近接している間)はCが変化しない。対象物が上部電極101の表面に接触した場合、グラウンドに接続された上部電極101と下部電極102との間の距離が変化し、その距離の変化に伴いCが変化する。これにより、押圧力(押し込み量)を検出することができる。
【0039】
これに対して、図6(B)は、スイッチS1及びS2をB(接続B)に設定し、上部電極101の静電容量Cを測定した場合を示している。このとき、下部電極102には上部電極101と同位相の電圧を印加することでシールドとする。この状態で、図6(B)に示すように、対象物が近づくと上部電極101の静電容量Cが変化する。このCの変化により対象物の接近及び予め対象物の種別が特定されている場合は、上部電極101の表面までの距離を検出することができる。
【0040】
スイッチS1及びスイッチS2は、断続的に切り替えを行って測定しており、近接及び接触、押し込みを連続的に測定することができる。そして、スイッチS1及びS2が接続Aに接続されている場合に、対象物が上部電極101に非接触であると判別した場合、上述したようにCの変化により近接における対象物を検出することができると共に、対象物が上部電極101に接触していると判別した場合は、Cの変化によりある程度の対象物の判別が可能である。つまり、予め対象物の種別ごとに誘電率をメモリに記憶しておき、静電容量Cの変化から該当する種別を特定することが可能である。なお、この処理は、対象物が上部電極101に非接触である場合や、押し込み中の間は省略することで処理を軽くすることができる。
【0041】
なお、シールド電極104及びグラウンド電極105を備えない場合は、図7(A)に示すように、下部電極102からの電気力線が上部電極101及び下部電極102の外側に出てしまうため、側面方向からの影響が出てしまう。これに対して、シールド電極104(上部電極101と同位相の電圧を印加)及びグラウンド電極105を配設する場合は、図7(B)に示すように、電気力線の電極外へのはみ出しはシールド電極104からが主となり、さらにグラウンド電極105を配設することで電位が一定となる。それにより、下部電極102の値が外部からの影響を受けずに測定することが可能となる。また、最下層に下方からのノイズ等を低減するためのグラウンド層やシールド層を配設するようにしてもよい。
【0042】
上記センサ部30を制御回路70に接続する場合のイメージ図を図8に示す。図8(A)は、各センサ部30に接続するマイコンのアドレスが異なる場合のイメージ図、図8(B)は、各センサ部30に接続するマイコンのアドレスが同じ場合のイメージ図、図8(C)は、各センサ部30が1つの場合のイメージ図である。
【0043】
図8(A)のように、各センサに接続するマイコンのアドレスが異なる場合は、一つのシリアルバスラインで簡易的に構成することができる。図8(B)においては、各センサのICのアドレスが同じであるため、シリアルデータ線(SDA)をマルチプレクサ回路で切り替える。図8(C)のように、各センサ部30が1つの場合も、同様に簡易的に構成することができる。なお、図8において、制御回路70はロボットを制御するコントローラと通信可能に接続されており、制御回路70で取得した情報に基づいて、ロボットを制御することが可能となっている。
【0044】
図8(A)のような構成にすることで、多関節ロボットに合わせてセンサ部30の増減を容易に行うことができ、センサ構成の自由度を向上することができる。なお、この場合の通信もICバスを用いて行うが、各センサ部30のアドレスを変更することにより単一のICバスラインで通信することも可能となる。
【0045】
このようなロボットセンサ1を、多関節ロボットのアームの表面の複数面(好ましくは全面)に取り付けて、近接覚皮膚センサとして機能させることもできる。ToFセンサ10は、距離の検出ができるが、視野角が狭いため死角が生まれやすいという問題がある。一方、静電容量近接センサ20は、対象物の電気特性や形状により静電容量の値が異なるため、近接における距離の検出が難しく検出距離が短いものの、電極上の近接状態をX-Y軸方向(平面方向)に広く検出することができる。すなわち、本実施形態に係るロボットセンサ1のように、ToFセンサ10と近接・接触センサ20とをモジュール化し、センサモジュールを複数並べることにより、対象物の近接状態を死角なく確実に検出することができる。
【0046】
また、ToFセンサ10は、対象物が数m~数cm程度の距離で正確に検出可能であるが、発光した光の反射時間の関係から近距離(特に、1cm以下)で対象物を検知するのは困難である。一方、静電容量近接センサ20は、対象物が10cm以下から接触まで検知することが可能であるが、対象物の電気特性が電極の重なりにより、その距離を検出するのが困難である。
【0047】
つまり、本実施形態のように、ToFセンサ10と静電容量近接センサ20とを組み合わせて使用することで、様々な角度に存在する対象物に対して、ある程度遠目の距離をToFセンサ10で検知し、近目の距離を静電容量近接センサ20で検知すると共に、近接におけるToFセンサ10の距離情報(例えば、10cm程度~1cm程度の距離)をもとに静電容量近接センサ20で検知した静電容量の値と、予め対象物に応じて記憶されている静電容量の値とを参照して比較することで、接触前に電気的特性の違いによる対象物をある程度識別することができる。例えば、対象物が「人」であるのか金属やプラスチック等の「物(人以外の物)」であるのかを判別することができ、その判別された対象物に応じて多関節ロボットの動作を制御することが可能となる。
【0048】
なお、ロボットセンサ1を多関節ロボットのアームに取り付ける場合には、図9(A)に示すように、多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、ToFセンサ10及び近接・接触センサ20の配設数が低減するように構成されてもよい。すなわち、多関節ロボットの動き(移動距離)が大きくなる先端部分ほど、より安全性を向上させるためにセンサ部30を多く配設して検出精度を上げ、動き(移動距離)が小さい基端部ほどセンサ部30の数を減らして演算量及び通信量を低減し、処理効率を上げるようにしてもよい。
【0049】
また、図9(B)に示すように、多関節ロボットの各関節ごとのアームには同数のセンサ部30を配設するが、多関節ロボットの先端部から基端部に行くにしたがって、センサ部30のサンプリング数が低減するように構成されてもよい。すなわち、多関節ロボットの動き(移動距離)が大きくなる先端部分ほど、より安全性を向上させるためにセンサ部30のサンプリング数を多くして検出精度を上げ、動き(移動距離)が小さい基端部ほどセンサ部30のサンプリング数を減らして演算量及び通信量を低減し、処理効率を上げるようにしてもよい。なお、図9においては、多関節ロボットの一側面しか図示していないが、複数面(好ましくは全面)において図9に示すようなセンサ配置がなされている。
【0050】
さらに、各センサのサンプリング数に関しては、多関節ロボットが移動している方向と同方向に配設されているセンサのサンプリング数を多くし、多関節ロボットが移動している方向と反対方向に配設されているセンサのサンプリング数を少なくしてもよい。例えば、多関節ロボットのアームが右方向に移動している場合には、右方向に配設されているセンサのサンプリング数をn、左方向に配設されているセンサのサンプリング数をn/2、上方向及び下方向に配設されているセンサのサンプリング数を2n/3というように、アームの移動方向と同方向に配設されているセンサのサンプリング数が最も多く、アームの移動方向と反対方向に配設されているセンサのサンプリング数を最も少なく、その間の方向(センシング方向ベクトルがアームの移動方向とその反対方向との間となる面)に配設されているセンサのサンプリング数をその間のサンプリング数としてもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係るロボットセンサ1を用いた多関節ロボットの制御について説明する。図10は、本実施形態に係るロボットセンサを用いた多関節ロボットの制御システムの機能ブロック図である。図10において、制御システム100は、多関節ロボット110と、当該多関節ロボット110の駆動を制御するコントローラ120と、前記第1の実施形態において説明した制御回路70及びセンサ部11とを備える。コントローラ120は、センサ部11で検出された情報を制御回路70から受け取り、センサ部11の検出結果に基づいて、多関節ロボット110の駆動を制御する。
【0052】
具体的には、センサ部30が対象物を検知した時点で制御回路70からコントローラ120に対象物が接近している情報が通知され、コントローラ120の制御により多関節ロボット110の動作を停止又は速度を落とすように制御する。また、他のセンサ群30の出力結果に基づいて、対象物を避けるような回避動作を行うように制御してもよい。さらに、このとき、対象物に対して警報音や警報ランプを出力するようにしてもよい。
【0053】
また、上述したように、対象物の種別ごとに距離に応じた静電容量の値の対応情報を記憶しておき、ToFセンサ10で検知した対象物までの距離情報と、静電容量近接センサ20で検知した静電容量とで前記対応情報を参照し、対象物の種別に応じて多関節ロボットの動作を制御することも可能である。例えば、対象物が人である場合には完全にアームを停止し、対象物が人以外である場合にはアームの動作を低速にするように対象物の種別に応じて多関節ロボットを制御してもよい。
【0054】
さらに、対象物が検知されてない状態から遠目の距離(例えば、数m~数十cm)に検知されるまではToFセンサ10のみを駆動状態にすると共に、近接・接触センサ20を停止状態とし、それよりも接近した場合に、センサの状態を切り替えて、ToFセンサ10を停止状態とし、静電容量近接センサ20のみを駆動状態としてもよい。
【0055】
静電容量近接センサの代わりに近接・接触センサを用いれば、対象物が近接している場合には、上記のように検出することが可能であるが、万が一接触してしまった場合であっても、近接・接触センサにより対象物との接触を検知することができるため、アームの動作を停止又は移動方向とは逆の方向(対象物から遠ざかる方向)に移動して接触状態を脱することも可能である。
【0056】
ここで、本実施形態に係るロボットセンサはマイコンで制御してもよい。図11は、ToFセンサ10と近接・接触センサを用いた概略図である。図11に示すように、ToFセンサ10と近接・接触センサ及びマイコン60を有しており、各センサはマイコン60により制御される。なお、図11のおいては、単一のToFセンサ10及び近接・接触センサをとで構成しているが、複数のToFセンサ10及び近接・接触センサを備えるようにしてもよい。
【0057】
なお、上述したように、近接状態はToFセンサ10及び静電容量近接センサ20で正確に検知することが可能であるが、これらのセンシングを厳密に機能させた場合には多関節ロボットに接触することができなくなる。つまり、多関節ロボットを手動で移動させたり方向転換させたいような場合に、ToFセンサ10及び静電容量近接センサ20が対象物(ここでは多関節ロボットを手動で操作するための人の手を対象物)として検知してしまうため、多関節ロボットに接触することは困難となる。
【0058】
そこで、静電容量近接センサの代わりに近接・接触センサを用い、操作者の接触状態を許容するモードを有するようにしてもよい。つまり、多関節ロボットと協働している人の特定の操作や音声をトリガとし、ロボットセンサ1を接触状態を許容するモード(以下、接触許容モードという)に切り替え、接触許容モードにおいてはToFセンサ10及び近接・接触センサが近接状態の対象物を検知しないようにする。そうすることで、協働している人が多関節ロボットに接触することが可能となる。その状態で、例えば、操作者が指で多関節ロボットの表面を押圧すると、その押圧方向と押圧力の大きさに応じて、多関節ロボットのアームが移動するようにしてもよい。
【0059】
すなわち、例えば、アームの右から左に向かって強く押圧した場合には、そのアームが右から左に長い距離で移動し、弱く押圧した場合には、短い距離で押圧方向に移動する。また、アームの右から左に向かって強く押圧した場合には、そのアームが右から左に高速で移動し、弱く押圧した場合には、低速で押圧方向に移動する。そして、接触状態を脱した瞬間に接触許容モードを解除し、通常通りToFセンサ10及び近接・接触センサが近接状態の対象物を検知するようにしてもよい。
【0060】
なお、上記以外にも、例えば接触許容モードにおいて、複数方向からアームを挟む動作をした場合にはその挟む強さに応じてアームの速度調節や一時停止を行ったり、周辺機器(ロボットハンド等)の制御を行うようにしてもよい。また、予め決まった操作に応じた多関節ロボットの動作を登録しておき、その操作に応じてロボットを制御するようにしてもよい。例えば、接触許容モードにおいて、アーム表面を2回叩いた場合にはアームを最大限進展し、3回叩いた場合にはアームを最小限に収縮するというように、予め決めった操作に応じて任意の動作を対応させることも可能である。
【0061】
以上のように、本実施形態に係るロボットセンサにおいては、ToFセンサで生じてしまう死角をX-Y軸方向に広く検出することができる静電容量に基づいた近接センサで補うことができ、死角をなくして安全な多関節ロボットの動作を実現することが可能になる。特に、ToFセンサ及び近接・接触センサの検出結果に基づいて、ToFセンサが検知する対象物までの距離と、近接・接触センサで検知する静電容量とから、対象物の種別を判別し、判別した対象物の種別に応じて多関節ロボットの駆動を制御することが可能となるため、対象物の種別に応じた適正な駆動を実現することができる。
【0062】
なお、静電容量接触センサの代わりに、多関節ロボットの関節に取り付けたトルクセンサにより接触測定を行ってもよい。また、多関節ロボットのみならず、人型ロボットや無人搬送機等の自動機表面に取り付け、近接・接触測定を行うことができる。
【実施例
【0063】
本発明に係るロボットセンサ1(ToFセンサ10及び静電容量近接センサ20のうちToFセンサ10のみを備える構成)を試作し、以下の実験を行った。試作したロボットセンサ1は、6×6の36素子とし、ToFセンサ10としてVL6180X(STMicroelectronics社)を用いた。VL6180Xの赤外線の照射角は25degであり、各ToFセンサ10の間隔は40mmとした。センサ間隔を維持するために、試作センサは、シリコーンシートに配置した。本発明におけるToFセンサ10及び静電容量近接センサ20の配列は、正方形及びシリコーンシートに配置する必要はなく、ある程度自由に配置することができる。更にセンサ素子を増やすことも容易にできる。本実施例においては、ToFセンサ10における測定の干渉を低減するために、センサ素子をA~Dの4パートに分け、A~Dを時間で分割して測定を行った。
【0064】
測定したデータは、USB経由でマイコン60からPC(パソコン)に送信した。各ToFセンサ10は、実験により一次の最小二乗法を用い、測定距離のキャリブレーションを行っている。今回試作したセンサの36個のデータを取得する時間は約32msである。
【0065】
まず、平面における測定を行った。図12に示すように試作したロボットセンサ1を平面に設置し、対象物の近接測定を行った。図13に実験の様子を示す。図13に示すように、対象物をロボットアームに取り付け、対象物とセンサとの間隔を150mmから0mmまで調整した。なお、接触はフォースゲージにより検出した。今回の対象物は、直径150mmの茶色いガラスエポキシ平板を用いた。
【0066】
図14及び図15に測定結果を示す。図14にセンサ中心のToFセンサ10の測定結果(距離:d)を示す。なお、理論値を点線で示す。図14よりToFセンサ10により対象物までの距離検出ができることがわかる。しかしながら、VL6180Xにおいて10mm以下の距離を正確に測定することは難しい。本実験における150mmから10mmまでの平均誤差は3.9mmであり、標準偏差は2.5mmであった。
【0067】
次に本実験における各ToFセンサ10の測定値(d)を図15に示す。図15(a)は対象物が十分に遠い場合、図15(b)は対象物までの距離が150mm、図15(c)は対象物までの距離が100mm、図15(d)は対象物までの距離が50mm、図15(e)は対象物までの距離が30mm、図15(f)は対象物までの距離が10mm、図15(g)は対象物までの距離が0mm(接触)の場合の結果をそれぞれ示す。図15より、対象物が離れているほどToFセンサ10の照射角によりToFセンサの真上以外の情報が取得でき、近づくにつれてToFセンサ10の真上の情報のみの取得になることがわかる。
【0068】
これらのことから、本実施例に係るロボットセンサにより、対象物までの距離と複数のToFセンサ10の値とにより、対象物のおおよその形状が検出できることがわかる。また、今回用いたToFセンサ10では10mm以下の精度が低いため、接触を正確に測定することは難しいが、対象物が非常に近いもしくは接触していることの判別が可能である。
【0069】
次に、曲面における測定を行った。図16に示すように、本実施例に係る試作したロボットセンサ1を円柱に取り付け、対象物の近接測定を行った。図17に実験の様子及び測定結果を示す。図17の左側は実験の様子を示す図であり、図17の右側は各実験における測定結果を示す図である。図17(A)は対象物がない場合、図17(B)及び(C)は手をセンサに近づけた場合、図17(D)は手をセンサに接触した場合、図17(E)は近接状態における手の位置を変更した場合、図17(F)はセンサの両サイドに手を近づけた場合をそれぞれ示す。
【0070】
図17からわかるように、対象物が近づいた場合、センサが平面状態と同様に対象物までの距離と形状とを検出できることがわかる。一方で、今回用いたToFセンサ10の照射角が25degであり、円柱に取り付けたことから各ToFセンサ10の測定間隔が広がり、X-Y平面の分解能が低下している。これは、上記に示したように、近接・接触センサ20を配設したり、ToFセンサ10の間隔を変更することにより改善できるものである。
【符号の説明】
【0071】
1 ロボットセンサ
10 ToFセンサ
11 センサ部
20 静電容量近接センサ
30 センサ部
60 マイコン
70 制御回路
100 制御システム
101 上部電極
102 下部電極
103 弾性体
104 シールド電極
105 グランド電極
110 多関節ロボット
120 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17