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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】流体制御用ガスボックス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20221006BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/31 A
C23C16/448
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018236186
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020098854
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】中川 一
(72)【発明者】
【氏名】栗城 春彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 湖介
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173498(JP,A)
【文献】特開平8-312900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の手動弁と前記手動弁の下流側の1以上の自動弁とを含むガスラインを1以上収容するガスボックスであって、
内部空間は、仕切りにより、操作室と非操作室部分とに隔離され、
前記操作室を前記非操作室部分から独立して外部に対して開閉する蓋又は扉を有し、
前記自動弁は、前記非操作室部分に収容され、
前記手動弁は、本体部分が前記非操作室部分に収容されるとともに操作部が前記仕切りに設けられた貫通孔を挿通して前記操作室に収容され、
前記操作室は、前記貫通孔と、該貫通孔を挿通する前記手動弁の操作部分との間の隙間を通って前記非操作室部分と連通し、
前記非操作室部分に外気を取り入れるとともに内部の雰囲気を排出する排出機能を設けた、ガスボックス。
【請求項2】
前記ガスラインは、半導体製造プロセスのプロセスガスのガスラインと、パージガスのガスラインの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のガスボックス。
【請求項3】
前記ガスラインは、半導体製造プロセスのプロセスガスのガスラインと、パージガスのガスラインの両方を含み、
前記操作室は、前記プロセスガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第1の操作室と、前記パージガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第2の操作室と、を含む、請求項2に記載のガスボックス。
【請求項4】
半導体製造プロセスのプロセスガス及びパージガスのうち少なくとも一方を供給するために、請求項1に記載のガスボックスを用いた、半導体製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載のガスボックスから供給されたプロセスガス及びパージガスのうち少なくとも一方を用いた半導体プロセスを含む、半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボックス及びそれを用いた半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスに用いるプロセスガスの供給を制御するシステムとして、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載のシステムが知られている。
このような流体制御システムは、万一のガスのリークが発生した際の安全性等を担保するため、全体が筐体に収納されたガスボックスとして形成されるのが一般的である。このガスボックスには、排気機構を有し、常時外部から空気を取り入れつつ内部を排気して、リークの際にも有害なプロセスガスが、環境雰囲気中に流出せず、適切に工場内の除害設備で処理されるようになっている。
【0003】
一方、各プロセスガスのラインや各パージガスのラインは、手動弁が配置された上流部分(手動弁部)と自動弁が配置された下流部分(自動弁部)とからなるが、全体を1つの箱に収納すると内容積が大きくなって、排気に時間がかかってしまう。そこで、手動弁部と自動弁部とを別々のボックスに収容し、よりバルブの使用頻度が高く故障リスクの高い自動弁部のボックスにのみ排気機能を設けたガスボックスが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-257870号公報
【文献】特開2009-259989号公報
【文献】特開平10-99633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手動弁は使用頻度が低いため、リークが発生する確率は極めて低いが、万一手動弁部でリークが発生した場合、上記ガスボックスのように排気機能がないと手動弁の操作の安全性が確保できないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、ガスボックス内の除害のための排気速度を維持しつつ、手動弁部の操作の安全性をより高めたガスボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスボックスは、1以上の手動弁と前記手動弁の下流側の1以上の自動弁とを含むガスラインを1以上収容するガスボックスであって、
内部空間は、仕切りにより、操作室と非操作室とに隔離され、
前記操作室を前記非操作室部分から独立して外部に対して開閉する蓋又は扉を有し、
前記自動弁は、前記非操作室部分に収容され、
前記手動弁は、本体部分が前記非操作室部分に収容されるとともに操作部が前記仕切りに設けられた貫通孔を挿通して前記操作室に収容され、
前記操作室は、前記貫通孔と、該貫通孔を挿通する前記手動弁の操作部分との間の隙間を通って前記非操作室部分と連通し、
前記非操作室部分に外気を取り入れるとともに内部の雰囲気を排出する排出機能を設けた、ことを特徴とする。
【0008】
前記ガスラインは、半導体製造プロセスのプロセスガスのガスラインと、パージガスのガスラインの少なくとも一方を含む、構成を好ましく採用できる。
【0009】
前記ガスラインは、半導体製造プロセスのプロセスガスのガスラインと、パージガスのガスラインの両方を含み、
前記操作室は、前記プロセスガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第1の操作室と、前記パージガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第2の操作室と、を含む、構成を好ましく採用できる。
【0010】
本発明の半導体製造装置は、半導体製造プロセスのプロセスガス及びパージガスのうち少なくとも一方を供給するために、上記いずれかのガスボックスを用いたことを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体製造方法は、上記いずれかのガスボックスから供給されたプロセスガス及びパージガスのうち少なくとも一方を用いた半導体プロセスを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動弁と共に各手動弁の本体部分を、排気機能を有する非操作室部分(以下、「通常排気空間」という)に収容したので、万一の手動弁からのリークの際にも、リークしたガスを適切に排気できる。
また、各手動弁の操作部分を、通常排気空間から仕切りで隔離されつつ、隙間を介して連通する操作室に収容したので、リークしたガスが手動弁の操作部分に回り込むことが殆どなく、また、通常排気空間の排気機能が隙間を通して操作室にも一部及ぶので、手動操作の安全性を高めることができる。
また、排気機能が直接は及ばない操作室を設けることにより、排気の対象となる通常排気空間の内容積が実質的に低減できるので、除害のための排気速度を維持でき、リークしたガスの確実な排気が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るガスボックスを示す平面図。
図2図1のガスボックスを示す左側面図。
図3図1のガスボックスを示す背面図。
図4図1のガスボックスを示す概略斜視図。
図5図1のガスボックスの概略配管図。
図6図1のガスボックスの第1の操作室を示す拡大平面図。
図7図1のガスボックスの第2の操作室を示す拡大平面図。
図8】ガスボックス内の空気の流れを示す模式図で、(a)は、操作室が蓋で閉じられているとき、(b)操作室が外部に開放されているとき。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体製造装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のガスボックスについて図面を参照して説明する。本実施形態は、半導体プロセスのALD工程に用いられるガスボックスの例で、プロセスガスの手動弁の操作部を収容する操作室と、パージガスの手動弁の操作部の操作室と別々に設けたものである。
尚、本明細書において、用語「プロセスガス」には、それ自体反応に関与しないキャリアガスをも含むものとする。
【0015】
図1~5に示すように、本実施形態のガスボックス1は、メインボックス10と、プロセスガスライン部30と、パージガスライン部50と、電磁弁ボックス70とを含む。
【0016】
メインボックス10は、プロセスガスライン部30と、パージガスライン部50とを収容するもので、底板11と、その各辺から立設された前後左右の各側板12~15と、その上に固定された天板16からなる、略直方体の箱型を有する。
メインボックス10の右側の側板15の前側のコーナー近傍には、除害塔17が設けられている。この除害塔17は、メインボックス10内部を排気する排気ダクトを取り付ける筒状の継手として機能するとともに、内部にガスセンサを有し、万一プロセスガスのリークが発生すると、それを検知できるようになっている。
メインボックス10の左側の側板14の、前記除害塔17の略対角位置には、吸気口18が設けられ、排気されることでメインボックス内が負圧となり、上記排気された空気を補う新たな空気を外部からメインボックス10内部に取り入れている。このため、外部から吸入された空気は、後述する操作室80,90内を除くメインボックス10内部を略均等に通過して、除害塔17から排出される。
メインボックス10の後面の側板13には、各プロセスガスの入力配管が通る孔19とパージガスの入力配管が通る孔20が設けられており、各孔には、配管を保護するとともに孔と配管との隙間をシールするグロメット21が装着されている。
メインボックス10の前面の側板12にも、同様にプロセスガスの出力配管が通る孔22とパージガスの出力配管が通る孔23が設けられ、グロメット21が装着されている。
メインボックス10の天板16には、内部の圧力計35,55をモニターするための透明の窓24,25が設けられている。
【0017】
プロセスガスライン部30は、図1に示すようにメインボックス10内の底板11の上に配置された基板31と、その上に固定された、プロセスガスを供給する5本のプロセスガスライン32を有している。各プロセスガスライン32は、上流側から、プロセスガスの入力配管が接続される入力継手(図示省略)、手動開閉弁33、レギュレータ34、圧力計35、逆止弁36、エアオペレートバルブ37、マスフローコントローラ38、エアオペレートバルブ39が配置されている。これらのプロセスガスライン32の下流側には、これらを合流するマニホルド40、合流後の配管41、ガスフィルタGF2、及び出力継手42が配置され、該出力継手42に出力側配管が接続できるようになっている。
【0018】
パージガスライン部50も、前記メインボックス10内の底板11の上に配置された基板51と、その上に固定された1本のガスライン52を有し、上流側から、バージガスの入力配管が接続される入力継手(図示省略)、手動開閉弁53、レギュレータ54、圧力計55、エアオペレートバルブ56、手動開閉弁57、ガスフィルタGF1、及び出力継手58が配置され、該出力継手58に出力側配管が接続できるようになっている。
【0019】
電磁弁ボックス70は、各エアオペレートバルブ37、39、56を駆動する電磁弁71を収容するボックスで、メインボックス10の右側の側板15(図4参照)に取り付けられている。ニップル継手72へ導入された圧縮エアが、内部の分岐配管(図示省略)によって分岐され、各電磁弁71を介して各エアオペレートバルブ37、39、56に供給される。尚、図5では、電磁弁71は1つのみ示したが、実際には、エアオペレートバルブ37、39、56と同数設けてある。
これにより、各電磁弁71をON/OFFすることにより、各エアオペレートバルブ37、39、56を開閉して、各プロセスガス及びパージガスの処理チャンバなどへの供給・停止を制御できるようになっている。
電磁弁ボックス70の上面には、ドアスイッチ73が配置されている。このドアスイッチ73は、メインボックス10の天板16を外すと作動するもので、作動すると、安全を確保するために、各電磁弁71をOFFにして、各プロセスガス及びパージガスの、処理チャンバなどへの供給を停止できるようになっている。
各電磁弁71の出力配管(図示省略)は、電磁弁ボックス70とメインボックス10との間の連絡孔(図示省略)を通って各エアオペレートバルブ37、39、56へ接続されているが、連絡孔と出力配管との間はシールされ、メインボックス10内部の雰囲気が電磁弁ボックス70に侵入しないようになっている。
【0020】
ここで、本発明では、メインボックス10内部に、各プロセスガスライン32の手動開閉弁33及びレギュレータ34(以下「手動弁(33,34)」ともいう)のレバー部及びノブ(以下「操作部分」ともいう)を収容する第1の操作室80と、パージガスライン部50の手動開閉弁53、レギュレータ54、圧力計55及び手動開閉弁57(以下「手動弁等(53,54,55,57)」ともいう)の各々レバー部、ノブ、表示部及びレバー部(以下「操作部分等」ともいう)を収容する第2の操作室90とを設けている。
【0021】
図6、7は、第1及び第2の操作室を示す拡大平面図である。
第1の操作室80は、床板81と、該床板81から立設された各側板82~85と、その上部を覆う蓋86からなる、略直方体の箱型を有し、第2の操作室90は、床板91と、該床板91から立設された各側板92~95と、その上部を覆う蓋96からなる、略直方体の箱型を有する。
第1の操作室80は、プロセスガスライン部30の基板31に設けられた支柱(図示省略)を介して取り付けられ、床板81の下側には、前記各手動弁(33,34)の本体部分(ボンネットより下側)が配置されるスペースが確保されている。また、第2の操作室90は、パージガスライン部50の基板51に設けられた支柱(図示省略)を介して取り付けられ、床板81の下側には、前記各手動弁等(53,54,55,57)の本体部分(ボンネットより下側)が配置されるスペースが確保されている。
【0022】
第1の操作室80の床板81には、貫通孔87が設けられ、前記各手動弁(33,34)のレバー部やノブ(操作部分)がこれらの貫通孔87を通って、下側から第1の操作室80内部に突設されている。また、第2の操作室90の床板91には、貫通孔97が設けられ、各手動弁等(53,54,55,57)のレバー部やノブや表示部(操作部分等)がこれらの貫通孔97を通して、下側から第2の操作室90内部に突設されている。尚、貫通孔87,97と突設する操作部分等との間には、所定の隙間gが設けられている。
【0023】
この隙間gは、1mmから数mm程度である。操作室80,90では、この隙間gを通して通常排気空間の排気機能が一部及ぶだけであるため、排気機能は小さい。しかし、操作室80,90にガスのリークが及ぶのは、直下に配置された手動弁等(53,54,55,57)に不備が発生した場合が主であり、施工不良による締結部からの微小リークが主であるため、操作室80,90での排気能力は低くてよい。
一方、エアオペレートバルブ37,39,56等の自動弁は、開閉の回数が多く、相対的に故障の可能性が高いため、これを収容する通常排気空間の排気能力は高く設定している。
【0024】
第1及び第2の操作室80,90の各側板82~85、92~95の上端部は、外側へ折り曲げられたフランジ部88,98を有し、このフランジ部88,98にパッキン(図示省略)が配置され、該パッキンを介してメインボックス10の天板16と密着している。この天板16の、操作室80,90内部に対応する部分には、開口が設けられ、該開口を密封する着脱可能な蓋86,96が、つまみ付ねじ89,99で取り付けられている。
これにより、第1及び第2の操作室80,90内部を、非操作室部分から独立して、外部に対して開口することができる。メンテナンス作業者は、必要なときに蓋86,96を取り外して、各手動弁等(33,34,53,54,55,57)の操作部等を操作することができる。この蓋86,96を取り外しても、前記ドアスイッチ73が作動することはない。
尚、蓋86,96の代わりに開閉可能な扉を設けてもよい。
【0025】
次に、このように構成された本実施形態のガスボックス1の動作について、図1~5を参照して説明する。
(ガス制御動作)
稼動の準備として、ガスボックス1内部の各出力継手42,58に各ガスの出力配管(図示省略)を接続し、各入力継手(図示省略)に各ガスの入力配管(図示省略)を接続して、各ガスを供給する。各プロセスガスの手動開閉弁33を開き、レギュレータ34のノブを調節して、圧力計35で示される各プロセスガスの圧力を所定値に調整する。パージガスの手動開閉弁53、57も開き、圧力計55で示されるパージガスの圧力が所定の値になるように、レギュレータ54を調整する。さらに、電磁弁71へ供給する圧縮空気の配管も接続する。
ガスボックス1への非通電時には、電磁弁ボックス70の各電磁弁71はOFFであるため、各エアオペレートバルブ37,39,56へ駆動用圧縮空気は供給されず、これらのエアオペレートバルブ37,39,56は閉じられて、各ガスは流れない。
【0026】
電源をON状態にし、外部の制御装置(半導体製造装置の制御装置)からガスボックスの入力インターフェース(図示省略)を介して所定の電磁弁71にONすべき信号が入力されると、その電磁弁71はONになり、対応するエアオペレートバルブ37,39,56に駆動用圧縮空気が供給されて、そのエアオペレートバルブ37,39,56が開き、ガスが流れる。プロセスガスの場合、マスフローコントローラ38により、流量が所定の質量流量に制御される。その電磁弁71にOFFすべき信号が入力されると、その電磁弁71はOFFになり、対応するエアオペレートバルブ37,39,56への駆動用圧縮空気の供給は停止して、そのエアオペレートバルブ37,39,56が閉じ、ガスの流れは停止する。
このようにして、ガスボックス1を使用する装置(半導体製造装置)の動作シーケンスにしたがって、所定のタイミングで所定のガスを流すことができる。
【0027】
(除害のための排気動作)
図6は、ガスボックス内の空気の流れを示す模式図で、図8(a)は、操作室80,90の蓋86,96が閉じられているとき、図8(b)は、操作室80,90が外部に開放されているときの状態を示す。
メインボックス10内の通常排気空間(操作室80,90以外の部分)においては、上記いずれの場合も、吸気口18から外気が取り入れられる一方、内部雰囲気が除害塔17から排気されている。
万一、自動弁(エアオペレートバルブ37,39,56等)や手動弁等(33,34,53,54,55,57)が故障してガスがリークした場合、これらの機器は、通常排気空間に配置されているため、リークしたガスも、除害塔17により排気されて、工場の除害設備で処理される。また、この排気のため、通常排気空間は負圧になっているので、リークしたガスが外部に拡散することはない。
また、除害塔17にはガスセンサ(図示省略)が備えられ、このガスセンサがガスのリークを検知すると、外部の制御装置は、安全確保のため、ガスラインの上流側のエアオペレートバルブ37,39,56を閉じ、ガスの流れを緊急停止することができる。
【0028】
操作室80,90内部については、リーク源となりうる手動弁の本体部や自動弁がある通常排気空間とは、仕切り(81~85、91~95)により隔てられているので、リークが発生しても、ガスが操作室80,90内部に侵入する確率は低い。
操作室80,90が、蓋86,96により外部に対して閉じられているときは、操作室80,90には、外部から空気の流入がないが、図8(a)の小さい両方向矢印で示すように、排気されている通常排気空間と前記隙間gを通って空気が出入りする(実際には、小さい両方向矢印は、紙面に垂直方向の流れを示す)ことにより、弱い排気(除害)が行われていると考えられる。
一方、作業者が修理やメンテナンスのために蓋を開けた場合、図8(b)の小さい矢印で示すように、操作室80,90内には外部から空気が流入する一方、操作室80,90内の空気は、隙間gを通して通常排気空間に吸引される(実際には小さい矢印は紙面に垂直方向の流れを示す)。これにより、操作室80,90の内部がやや強く排気されるので、作業者はより安全に手動バルブの手動操作等を行うことができる。
【0029】
尚、本実施形態のガスボックスでは、操作室80,90を設けたので、通常排気空間の容積が減少し、排気時間(内部の空気が1回入れ替わるのに要する時間)を短くすることができる。これにより、リークしたガスを、より確実に排気することができる。
【0030】
尚、本実施形態では、プロセスガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第1の操作室80と、パージガスのガスラインの手動弁の操作部分を収容する第2の操作室90とを設けたが、これらの2つの操作室を1つにまとめ、プロセスガスのガスラインの手動弁の操作部分と、パージガスのガスラインの手動弁の操作部分とを、1つの操作室に収容してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、操作室80,90を、それぞれプロセスガスライン部30の基板31及びパージガスライン部50の基板51に取り付ける構造としたが、メインボックス10の底板11に直接取り付けてもよい。
【0032】
次に、本発明の半導体製造装置について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る半導体製造装置のブロック図である。
図9に示す半導体製造装置980は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、981はガス供給源、982は本発明のガスボックス、985は制御部、986は処理チャンバ、987は排気ポンプを示している。例えば、ALD法等においては、基板に膜を堆積させる処理プロセスに使用する処理ガスをより大きな流量で安定的に供給することが求められている。
【0033】
ガスボックス982は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ986に供給する装置で、本発明のガスボックス1に相当する。ガスボックス982は、手動開閉弁33、53、レギュレータ34、54、マスフローコントローラ38(図1参照)、エアオペレートバルブ37,39、56(図1参照)等の各種の流体機器を集積化してメインボックス10に収容している。
電磁弁ボックス70は、各エアオペレートバルブ37,39、56を駆動エアで駆動する各電磁弁71を収容するとともに、マスフローコントローラ38(図1参照)との通信インターフェースも有している。
【0034】
制御部985は、電磁弁ボックス70に収容された各電磁弁71を制御することにより、各エアオペレートバルブ37,39、56をON/OFFさせ、また、マスフローコントローラ38(図1参照)を制御することにより、処理ガスの流量制御を実行する。
処理チャンバ986は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ987は、処理チャンバ986内を真空引きする。
【0035】
上記のようなシステム構成によれば、制御部985から電磁弁ボックス70の電磁弁71等に制御指令を送れば、処理ガスの流量制御が可能になる。
ここで、本発実施形態の半導体製造装置980では、ガスボックス982のメインボックス10のうち、自動弁と共に各手動弁の本体部分を、通常排気空間に収容し、各手動弁の操作部分を操作室80,90に収容したので、万一の手動弁からのリークの際にも、リークしたガスを適切に排気できるとともに、手動操作の安全性を高めることができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ガスボックス
10 メインボックス
11 底板
12 前面の側板
13 後面の側板
14 左側の側板
15 右側の側板
16 天板
17 除害塔
18 吸気口
19 孔
20 孔
21 グロメット
22 孔
23 孔
24,25 透明の窓
30 プロセスガスライン部
31 基板
32 プロセスガスライン
33 手動開閉弁
34 レギュレータ
35 圧力計
36 逆止弁
37 エアオペレートバルブ
38 マスフローコントローラ
39 エアオペレートバルブ
40 マニホルド
41 合流後の配管
42 出力継手
50 パージガスライン部
51 基板
52 ガスライン
53 手動開閉弁
54 レギュレータ
55 圧力計
56 エアオペレートバルブ
57 手動開閉弁
58 出力継手
70 電磁弁ボックス
71 電磁弁
72 ニップル継手
73 ドアスイッチ
80 第1の操作室
81 床板
82~85 側板
86 蓋
87 貫通孔
88 フランジ部
89 つまみ付ねじ
90 第2の操作室
91 床板
92~95 側板
96 蓋
97 貫通孔
98 フランジ部
96 蓋
99 つまみ付ねじ
980 半導体製造装置
981 ガス供給源
982 ガスボックス
985 制御部
986 処理チャンバ
987 排気ポンプ
g 隙間
GF1 ガスフィルタ
GF2 ガスフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9