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  • 特許-除電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20221006BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20221006BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H05F3/04 J
H01T19/04
H01T23/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018241335
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020102417
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】廣田 友樹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04339782(US,A)
【文献】特開2002-170752(JP,A)
【文献】特開2015-201277(JP,A)
【文献】特開2009-104972(JP,A)
【文献】特開平11-354252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 1/00 - 7/00
H01T 19/00
H01T 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングと、
上記ケーシングの一端側に設けられ、上記ケーシング内に圧縮エアを導くエア導入部と、
アース電極との間で放電する放電電極部材と、
この放電電極部材を上記ケーシング内で支持する支持部材と、
上記放電電極部材の外周に沿って設けられた絞り通路と
を備え、
上記放電電極部材の少なくとも放電部を上記絞り通路より下流側に突出させ、
上記ケーシングの他端側の開口に向かって上記絞り通路から流出する圧縮エアの作用で上記絞り通路の上流側への液体の侵入を防止するとともに、上記絞り通路の下流側の液体をケーシング外に流出させながら上記放電部を洗浄する構成にした除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電電極で生成された正・負のイオンを利用する除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生成したイオンを処理対象に吹き付けて除電する除電装置が知られている。
このような除電装置は処理対象を除電することで、例えば塵の静電付着や、スパーク発生などの静電気による障害を防止するために用いられる。
この種の除電装置にはイオンを生成するための放電電極を備えているが、放電電極には高電圧が印加されるため異物が静電付着しやすくなっている。特に、粉塵が発生するような環境下では放電部への異物の付着が激しい。放電部に異物が堆積すれば、放電が不安定になって必要なイオンが生成されなくなってしまうことがある。
【0003】
そこで、放電部を水洗いして付着した異物を取り除くことができる除電装置が知られている(特許文献1参照)。
この従来の除電装置では電極針を絶縁性樹脂材の電極支持体で支持しているが、この電極支持体に円錐状の凹部を備え、この凹部内に電極針の先端側である放電部のみを突出させている。つまり、電極支持体からは放電部のみが露出し、電極針の他の部分を完全に覆っている。
このように、放電電極の放電部を除く部分が絶縁材で覆われているため、放電部を水などで洗浄することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-104972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような除電装置の放電部を洗浄する際には、放電部をこすりながら水シャワーを当てて異物を洗い流すことができる。しかし、放電部の周囲に形成された円錐状の凹部の開口はそれほど大きくないため、ブラシなどの洗浄部を挿入して異物を完全に取り除くことは難しい。また、上記凹部に水滴が残っていると漏電の原因になってしまうため、凹部に溜まった洗浄水を完全に取り除く必要があるが、その手間もかかってしまう。
この発明の目的は、放電部を簡単に水洗いできる除電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、内部に放電電極部材を設けたケーシング内に導いた圧縮エアを、放電電極部材の外周に沿った絞り通路を通過させ、その作用で絞り通路より上流側へ液体が侵入することを防止するようにしている。また、絞り通路の下流側の液体をケーシング外へ放出させながら放電部を洗浄する。
なお、上記絞り通路の流路断面積は、圧縮空気の流速を十分に大きくして水などの液体の侵入を防止できる大きさにする必要がある。ただし、絞り通路を通過するエアの流速は供給圧力にも依存するので、液体の侵入を防止可能な絞り通路の流路断面積は、圧縮エアの供給圧力によって相対的に決まるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、圧縮エアが通過する絞り通路より上流側に洗浄水などの液体が侵入することがないので、液体によって電気的な不具合が発生することがない。そのため、放電部を液体に浸したり、放電部に液体をかけたりして洗浄することができる。
また、圧縮エアをケーシング内に供給することで、エアの勢いによって放電部の周囲の液体を流動させて放電部の表面を洗い流すことができ、ブラシなどの洗浄具を用いる必要がない。
さらに、洗浄後には、圧縮エアの噴出力によって水などの液体を吹き飛ばすことができるので、放電部の乾燥を短時間でできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の第1実施形態の断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】第2実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1,2に示す第1実施形態は、例えば、粉塵が発生するような工程に設けられ、放電部に付着した粉塵を水などで洗い落とすことができる除電装置である。
第1実施形態の除電装置は、図1に示すように円筒状のケーシング1内に支持筒2を介して電極部ホルダー3を支持している。
上記ケーシング1はステンレスなどの金属製の部材で、図示しないアース線で接地され、この発明の接地電極を兼ねる。
【0010】
上記電極ホルダー3は、例えばPBT(ポリブチルテレフタレート)などの絶縁性樹脂材で形成された部材で、その軸方向先端側に電極針4を固定するとともに基端側には上記電極針4と電気的導通を保った接続端子5を設けている。この接続端子5には、図示しない交流高電圧源に接続された高圧ケーブル6が接続されている。なお、上記接続端子5の外周は熱収縮した絶縁性樹脂材の被覆チューブ7で覆われている。
そして、上記電極ホルダー3、電極針4、接続端子5及び被覆チューブ7がこの発明の放電電極部材を構成している。
【0011】
また、上記支持筒2はPBTなどの絶縁性樹脂材で形成され、内部に上記電極ホルダー3を設けている。電極ホルダー3は図2に示すように、その外周に支持筒2の内壁に一致する曲面部3aと支持筒2から間隔を保った平面部3bとを備え、平面部3bに支持筒2の側壁を貫通する止めビス8,8を押し付けて、支持筒2に対して電極ホルダー3が回転しないようにしている。なお、電極ホルダー3内には電極針4と接続端子5とを接続するための導体が設けられているが、図2ではそれを省略している。
【0012】
そして、支持筒2の外周をケーシング1の内周に一致させるとともに、外壁に設けた位置決め凹部2aにケーシング1の外周から止めビス9を挿入し、ケーシング1に支持筒2を固定している。これによりケーシング1内に支持筒2及び電極ホルダー3を介して電極針4が固定されることになる。
さらに、支持筒2には、内壁を内側に向かって突出させた小径部2bが設けられ、この小径部2bと上記被覆チューブ7との隙間を、後で説明する圧縮エアが通過する絞り通路10にしている。
【0013】
また、支持筒2において電極針4と反対側の内壁にはネジ部2cを形成し、このネジ部2cにエア継手11をネジ結合している。エア継手11にはエアチューブ12が連結され、このエアチューブ12は図示しない圧縮エア供給源に接続されている。したがって、エア継手11が、ケーシング1の一端側に設けられ、ケーシング1内に圧縮エアを導入するこの発明のエア導入部である。
なお、この第1実施形態では、上記ケーシング1と図示しない接続部材との間で、上記エアチューブ12内に上記高圧ケーブル6を通過させている。
【0014】
このようにした除電装置では、エアチューブ12に圧縮エアを供給すると、圧縮エアがケーシング1内のエア継手11を介して支持筒2内に供給され、支持筒2と上記被覆チューブ7との間に形成される絞り通路10を通過し、電極ホルダー3及び電極針4に沿ってケーシング1の他端側の開口1aから外部へ流出する。
このようにケーシング1内に圧縮エアを導いた状態で電極針4に高電圧を印加すると、電極針4の先端と接地電極を構成するケーシング1との間の放電によってイオンが生成され、生成されたイオンはエア流に乗って上記開口1aから外部へ放出され、処理対象の表面を除電することができる。
【0015】
また、粉塵などが付着した電極針4を洗浄する場合には、電源をオフにして圧縮エアを供給した状態で放電針4の先端に向かって水をかければよい。上記絞り通路10から圧縮エアが噴出し、この圧縮エアが水とともに放電針4に付着した粉塵をケーシング1の外部へ放出させる。上記圧縮エアは絞り通路10を通過することで流速が高まり、この絞り通路10の下流側から上流側へ水が侵入することを防止できる。したがって、ケーシング1内に水分が溜まってしまうことがない。
【0016】
また、粉塵などが付着した電極針4を水に浸けて洗浄することもできる。このときにも、ケーシング1に圧縮エアを供給すれば、絞り通路10を通過する圧縮エアによってその上流側へ水が侵入することを防止できる。
さらに、絞り通路10を通過した圧縮エアによって絞り通路10の下流側の水が攪拌され、気泡や水流によって電極針4の表面を洗浄することができる。
そして、洗浄後には、圧縮エアの供給を一定時間継続することで、絞り通路10の下流側に付着した水滴を吹き飛ばし、乾燥時間を短縮することができる。
【0017】
このように、この第1実施形態の除電装置は、ケーシング1内において絞り通路10の下流側部分の水を、圧縮エアが開口1aから押し出すように機能するので、絞り通路10の上流側への水の侵入を防止できるだけでなく、下流側の電極針4の表面を水流で洗い流すことができる。
なお、この第1実施形態では、放電電極部材を構成する要素のうち、エア流に沿って最上流側となる接続端子5に対応する位置に絞り通路10を形成している。そのため、電極ホルダー3及び電極針4が絞り通路10の下流側に突出し、これらを水で洗浄することができる。
【0018】
図3に示す第2実施形態は、エア継手11の取り付け位置と圧縮エアの絞り通路17の位置が、図1の第1実施形態と異なる除電装置である。その他の構成は、第1実施形態とほぼ同じで、この第2実施形態において第1実施形態と同じ構成要素には図1,2と同じ符号を用いている。
第2実施形態では、ケーシング1の一方の端面ではなく、一端側の側面にエア継手11を取り付け、ケーシング1の側面からケーシング1内に圧縮エアを導入するようにしている。そして、ケーシング1の一方の端部には圧縮エアが漏れ出ることがないように、キャップ13を設けるとともに、その中央にシール部材14を介して高圧ケーブル6を通している。
【0019】
また、ケーシング1内には絶縁性樹脂材からなる支持筒15が設けられている。この支持筒15の外周をケーシング1の内周に一致させ、止めビス9で固定するとともに、止めビス8,8によって上記支持筒15内に電極ホルダー3を支持している。
なお、この第2実施形態でも、電極針4、電極ホルダー3、接続端子5及び被覆チューブ7が放電電極部材でありその構成は第1実施形態と同じである。
【0020】
ただし、第2実施形態の支持筒15の内壁には小径部は形成されず、支持筒15と放電電極部材との間には十分な流路断面積を有するエア通路が形成される。
そして、上記電極針4の先端近くでは、ドーナツ板状の絞り部材16が支持筒15に固定されている。この絞り部材16の中央孔16aから、放電部である電極針4の先端を突出させ、中央孔16aと電極針4との間に絞り通路17を形成している。
したがって、上記エア継手11を介してケーシング1の側面から供給された圧縮エアは、支持筒15と放電電極部材との間を通過し、絞り通路17を通過して開口1aからケーシング1の外部へ流出する。
【0021】
このような第2実施形態においても、電極針4に印加する電源をオフにした状態でケーシング1内に圧縮エアを導きながら、電極針4に洗浄用の水をかけたり、ケーシング1を水に浸けたりして、放電部である電極針4を洗浄することができる。放電部の洗浄時には絞り通路17を通過する圧縮エアの流れによって絞り通路17の上流側への水の侵入を防止でき、圧縮エアの噴出によって洗浄後の除水もできる。
なお、この第2実施形態でも、上記絞り通路17から噴出する圧縮エアによって、処理対象にイオンを照射して除電することができることは当然である。
【0022】
上記第1,2実施形態では、圧縮エアの絞り通路10,17を設けることによって、洗浄時に洗浄水などが絞り通路の上流側に侵入して、除電装置の使用時に漏電などの問題を起こさないようにしている。
そのため、絞り通路10,17から下流側に突出した部分を水などの液体で自由に洗浄でき、清浄な状態を保つことができる。
【0023】
なお、上記絞り通路をどこに設けるかによって、洗浄される範囲を設定することができる。ただし、電極針4の先端などの放電部を清浄に保つことが必要なので、少なくとも放電部は絞り通路より下流側に突出させる必要がある。
さらに、上記第1,2実施形態では、ケーシング1が接地電極を兼ねているが、ケーシング1を絶縁性材料で構成し、ケーシング1とは別に電極針4と対向する接地電極を設けてもよい。放電電極部材の構成も、上記実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
粉塵が発生する現場で使用する除電装置として有用である。
【符号の説明】
【0025】
1 (接地電極を兼ねる)ケーシング
2,15 (支持部材)支持筒
3 (放電電極部材)電極ホルダー
4 (放電電極部材)電極針
5 (放電電極部材)接続端子
7 (放電電極部材)被覆チューブ
10,17 絞り通路
11 (エア導入部)エア継手
図1
図2
図3