(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ワイドトレッドスペーサー
(51)【国際特許分類】
B60B 23/12 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60B23/12
(21)【出願番号】P 2019013819
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502398816
【氏名又は名称】有限会社 マーテル
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 稔
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-034003(JP,U)
【文献】特開2002-264607(JP,A)
【文献】登録実用新案第3078509(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 21/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側のハブとホイールの間に装着してトレッド量を増加させるワイドトレッドスペーサーであって、
前記ハブに取り付けられるブレーキローターの手前に重ねて配置され、
外径を当該ブレーキローターのハウジングと同径とし、
トレッド量を調整するための厚みとして機能する本体外周面に、
溝を備え、
当該溝
は、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら
同一幅に形成され
る
ことを特徴とするワイドトレッドスペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の技術分野に関し、特に詳しくは、車両側のハブとホイールの間に装着してトレッド量を増加させるワイドトレッドスペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両側のハブとホイール(アルミホイール等)の間に、所望の厚さのスペーサーを装着することによって、トレッド量を増加させるスペーサーは公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来からのワイドトレッドスペーサーは、単にトレッド量を変化させるという機能しか有していないものであった。
【0005】
また、制動装置(ブレーキパッドやブレーキキャリパー等)の周辺は、ブレーキダスト等により汚れ易いという問題点もあった。
【0006】
そこで本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、ワイドトレッドスペーサーに更なる機能を与えると共に、意匠的(視覚的)にも魅力のあるワイドトレッドスペーサーを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく、本願発明は、車両側のハブとホイールの間に装着してトレッド量を増加させるワイドトレッドスペーサーであって、トレッド量を調整するための厚みとして機能する本体外周面に、凹形状及び/又は凸形状を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成したことによって、ワイドトレッドスペーサーに更なる機能を与えると共に、意匠的(視覚的)にも魅力のあるワイドトレッドスペーサーを提供する事が可能になった。
【0009】
発明者は、そのワイドトレッドスペーサーが装着される「位置」と「動き」に着目したのである。即ち、ワイドトレッドスペーサーは、制動装置(ブレーキパッドやブレーキキャリパー等)に非常に近い位置に配置されると共に、運転時は高速回転する点に着目し、トレッド量を調整するための「厚み」として機能する本体外周面に凹凸を設けることによって意図的に気流の乱れを発生させる機能を持たせたのである。その気流の乱れによって、発生するブレーキダストを撹拌乃至は吹き飛ばすような作用が発揮され、ブレーキダストの付着量低減を図っているのである。また同時に、この発生する気流によって、制動装置(ブレーキパッドやブレーキキャリパー等)を積極的に冷却するという効果も発揮するのである。
【0010】
更に、ワイドトレッドスペーサーは、高熱となるブレーキローターに重ねるように配置される部品でもあるため、本体外周面に設けた凹凸により表面積が増加し、放熱性能の向上にも寄与するものである。同時に、仮にブレーキローターからの高熱により取り付けたワイドトレッドスペーサーが固着してしまったような場合でも、本体外周面に設けた凹凸に何らかの部材を引っ掛けて取り外すことも可能となっている。凹凸を付けた本体外周面は、軸心から最も遠い距離となるため、テコの原理により効率的に取り外すための力を作用させることが可能となっている。
【0011】
加えて、近年のホイール(アルミホイール等)の大口径化に伴い、ワイドトレッドスペーサーは外部から視覚的にも注目されやすい部分となっているが、その部分に凹凸を設けた事によって、意匠的にも優れ、使用者の満足感を向上させるという機能も発揮できるものである。
【0012】
また、前記凹形状は、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された溝として構成することも可能である。
【0013】
また、前記凸形状は、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された凸条で構成することも可能である。
【0014】
また、前記凹形状は、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された溝として構成し、前記凸形状は、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された凸条として構成し、当該凹形状と凸形状が、本体外周面に相互に配置してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用することで、ワイドトレッドスペーサーに更なる機能を与えると共に、意匠的(視覚的)にも魅力のあるワイドトレッドスペーサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の一例であるワイドトレッドスペーサーを装着した状態の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態の一例であるワイドトレッドスペーサーの第1実施例をしめした斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の一例であるワイドトレッドスペーサーの第2実施例をしめした斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態の一例であるワイドトレッドスペーサーの第3実施例をしめした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例であるワイドトレッドスペーサー100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また、各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0018】
〈ワイドトレッドスペーサーの構成〉
本発明の実施形態の一例として示すワイドトレッドスペーサー100は、
図1に示しているように、車両のハブ14と、ホイール12の間に挟まれるように配置して使用する。より具体的には、ハブ14にブレーキローター16が取り付けられ、そのブレーキローター16の手前側(ホイール側)に重ねるように配置される。
【0019】
図2に示しているように、ワイドトレッドスペーサー100は、略扁平ドーナツ形状を呈しており、表面から裏面にかけて貫通するボルト穴104が、複数設けられている。また、中央の貫通孔の周囲には、ホイールを位置決めするためのホイール係止部106が形成されている。
【0020】
また、トレッド量を調整するための厚みとして機能する本体外周面には、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された溝(凹形状)102が複数形成されている。
【0021】
なお、溝の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された溝を2つ組み合わせて「X」のように構成することも可能である(
図3参照)。
【0022】
更に、溝だけでなく、軸方向一方側から他方側に向かって且つ周方向に位置を変化させながら形成された凸条として構成することも可能である(
図4参照)。
【0023】
更に、図示はしていないが、溝と凸条を組み合わせて構成することも可能である。
【0024】
〈ワイドトレッドスペーサーの作用・機能〉
ワイドトレッドスペーサー100は、一旦装着してしまうと、それ以降はタイヤ10やホイール12の回転に連動して回転する。一般的なワイドトレッドスペーサーの場合は、単に一緒に回転しているに過ぎないが、本発明にかかるワイドトレッドスペーサー100、200、300には、トレッド量を調整するための厚みとして機能する本体外周面に、
溝102、202や凸条302が形成されている。
【0025】
これら溝102、202や凸条302が形成されている事によって、ワイドトレッドスペーサーが回転すると、本体外周面の周辺にある空気をかき乱し、乱気流が発生する。その気流の乱れによって、発生するブレーキダストを撹拌乃至は吹き飛ばす結果、ブレーキダストの付着量低減を図ることが可能となっている。また同時に、この発生する気流によって、制動装置(ブレーキパッドやブレーキキャリパー等)を積極的に冷却することも可能となっている。
【0026】
また、ワイドトレッドスペーサー100、200、300は、高熱となるブレーキローター16に重ねるように配置される部品でもあるため、本体外周面に設けた溝102、202や凸条302により表面積が増加し、ブレーキローター16側から伝導される熱の放熱性向上にも寄与する。同時に、仮にブレーキローター16からの高熱により取り付けたワイドトレッドスペーサー100、200、300が固着してしまったような場合でも、本体外周面に設けた溝102、202や凸条302に何らかの部材を引っ掛けて取り外すことも可能となっている。溝102、202や凸条302を付けた本体外周面は、軸心から最も遠い距離となるため、テコの原理により効率的に取り外すための力を作用させることが可能となっている。
【0027】
加えて、近年のホイール(アルミホイール等)12の大口径化に伴い、ワイドトレッドスペーサー100、200、300は外部から視覚的にも注目されやすい部分となっているが、その部分に溝102、202や凸条302を設けた事によって、意匠的にも優れ、使用者の満足感が向上する。
【符号の説明】
【0028】
10・・・タイヤ
12・・・ホイール
14・・・ハブ
16・・・ブレーキローター
18・・・ブレーキキャリパー
100、200、300・・・ワイドトレッドスペーサー
102、202・・・溝(スリット)
104、204、304・・・ボルト穴
106、206、306・・・ホイール係止部
302・・・凸条