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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】液滴吐出装置および液滴吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20221006BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221006BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20221006BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221006BHJP
   B05C 9/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 307
B41J2/01 123
B05D1/26 Z
B05D1/36 Z
B05C9/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019084568
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179354
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506159976
【氏名又は名称】株式会社SIJテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 和広
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-87457(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075147(WO,A1)
【文献】特開2007-152339(JP,A)
【文献】特開2007-136330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00ー 5/04
7/00-21/00
B41J2/01
B05D1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を保持するための第1液体保持部および当該第1液体保持部の第1液体を第1液滴として吐出するための第1先端部を含む第1液滴吐出部と、
第2液体を保持するための第2液体保持部および当該第2液体保持部の第2液体を第1液滴とは異なる第2液滴として吐出するための第2先端部を含む第2液滴吐出部と、
前記第1液体および前記第2液体が吐出される対象物を保持するための対象物保持部と、
前記対象物保持部に対して、前記第1先端部および前記第2先端部を相対的に第1方向に移動させるための駆動部と、を含み、
前記第1先端部は、前記第2先端部に対して前記第1方向に配置され、
前記第1液滴吐出部は、ピエゾ型ノズルヘッドを有し、
前記第2液滴吐出部は、静電吐出型ノズルヘッドを有する、
液滴吐出装置。
【請求項2】
前記第1液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に交差する方向に複数設けられる、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に交差する方向に延在する、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第2液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に対して交差する方向に複数設けられる、
請求項2または3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記第1液滴吐出部の前記第1先端部の内径は、前記第2液滴吐出部の前記第2先端部の内径よりも大きい、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
対象物の第1領域にピエゾ型ノズルヘッドを有する第1液滴吐出部から表面処理用の第1液滴を吐出し、
前記第1領域に第1液滴吐出部とは異なり静電吐出型ノズルヘッドを有する第2液滴吐出部から前記第1液滴よりも粘度が高くパターン形成用の第2液滴を吐出し、
第2液滴吐出部から前記第2液滴を吐出することと同期して前記第1領域とは異なる第2領域に前記第1液滴吐出部から前記第1液滴を吐出する、
液滴吐出方法。
【請求項7】
前記第2液滴は、所定の条件を満たしたときに吐出される、
請求項に記載の液滴吐出方法。
【請求項8】
前記所定の条件は、前記第1領域に前記第1液滴を吐出した後の経過時間または前記第1液滴の厚さの情報を含む、
請求項に記載の液滴吐出方法。
【請求項9】
前記第1液滴が吐出される領域は、前記第2液滴により形成されるパターンサイズよりも広い、
請求項乃至のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【請求項10】
前記第2液滴により形成されるパターンサイズは、100nm以上500μm以下である、
請求項に記載の液滴吐出方法。
【請求項11】
前記第1液滴は揮発性を有する、
請求項乃至10のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【請求項12】
前記第1液滴の表面抵抗値は、10Ω/sq以上1011Ω/sq以下である、
請求項乃至10のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術の工業用プロセスへの応用が行われている。例えば、液晶ディスプレー用のカラーフィルター製造工程などはその一例である。インクジェット印刷技術として、従来は機械的圧力や振動により液滴を吐出する、いわゆるピエゾ型ヘッドが多く使用されてきていたが、より微細な液滴を吐出できる静電吐出型インクジェットヘッドが注目されている。特許文献1には、静電吐出型インクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-34967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、静電吐出型インクジェットヘッドでは、対象物の帯電によりインクの吐出が困難になる、または対象物上の凹凸による電界強度分布の影響を受け、所望の位置にインクが着弾しないケースがある。
【0005】
特に、対象物自体の帯電や対象物に施されたパターンが帯電に影響したり、あるいはパターン表面と対象物の表面エネルギーの差がある場合、インクのなじみが悪くなる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、対象物表面に容易に安定して液滴を吐出することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1液体を保持するための第1液体保持部および当該第1液体保持部の第1液体を第1液滴として吐出するための第1先端部を含む第1液滴吐出部と、第2液体を保持するための第2液体保持部および当該第2液体保持部の第2液体を第1液滴とは異なる第2液滴として吐出するための第2先端部を含む第2液滴吐出部と、前記第1液体および前記第2液体が吐出される対象物を保持するための対象物保持部と、前記対象物保持部に対して、前記第1先端部および前記第2先端部を相対的に第1方向に移動させるための駆動部と、を含み、前記第1先端部は、前記第2先端部に対して前記第1方向に配置されている、液滴吐出装置が提供される。
【0008】
上記液滴吐出装置において、前記第1液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に交差する方向に複数設けられてもよい。
【0009】
上記液滴吐出装置において、前記第1液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に交差する方向に延在してもよい。
【0010】
上記液滴吐出装置において、前記第2液滴吐出部は、前記第1液滴吐出部が移動する方向に対して交差する方向に複数設けられてもよい。
【0011】
上記液滴吐出装置において、前記第1液滴吐出部の前記第1先端部の内径は、前記第2液滴吐出部の前記第2先端部の内径よりも大きくてもよい。
【0012】
上記液滴吐出装置において、前記第1液滴吐出部は、ピエゾ型ノズルヘッドを有し、前記第2液滴吐出部は、静電吐出型ノズルヘッドを有してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、対象物の第1領域に第1液滴吐出部から表面処理用の第1液滴を吐出し、前記第1領域に前記第1液滴よりも粘度が高く、第1液滴吐出部とは異なる第2液滴吐出部からパターン形成用の第2液滴を吐出し、第2液滴吐出部から前記第2液滴を吐出することと同期して前記第1領域とは異なる第2領域に前記第1液滴吐出部から前記第1液滴を吐出する、液滴吐出方法が提供される。
【0014】
上記液滴吐出方法において、前記第2液滴は、所定の条件を満たしたときに吐出されてもよい。
【0015】
上記液滴吐出方法において、前記所定の条件は、前記第1領域に前記第1液滴を吐出した後の経過時間または前記第1液滴の厚さの情報を含んでもよい。
【0016】
上記液滴吐出方法において、前記第1液滴が吐出される領域は、前記第2液滴により形成されるパターンサイズよりも広くてもよい。
【0017】
上記液滴吐出方法において、前記第2液滴により形成されるパターンサイズは、100nm以上500μm以下であってもよい。
【0018】
上記液滴吐出方法において、前記第1液滴は揮発性を有してもよい。
【0019】
上記液滴吐出方法において、前記第1液滴の表面抵抗値は、10Ω/sq以上1011Ω/sq以下であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態を用いることにより、対象物表面に容易に安定して液滴を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法により形成されたパターンの上面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法の断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法により形成されたパターンの上面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図13】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図14】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法により形成されたパターンの上面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る第2液滴ノズルの上面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る第2液滴ノズルの一部を拡大した上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0024】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0025】
<第1実施形態>
(1-1.液滴吐出装置100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100の概略図である。
【0026】
液滴吐出装置100は、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、第1液滴吐出部140、第2液滴吐出部150、および対象物保持部160を含む。
【0027】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Flexibe Programable Gate Array)、またはその他の演算処理回路を含む。制御部110は、あらかじめ設定された液滴吐出用プログラムを用いて、第1液滴吐出部140よび第2液滴吐出部150の吐出処理を制御する。
【0028】
制御部110は、第1液滴吐出部140の第1液滴147(図3参照)の吐出のタイミングおよび第2液滴吐出部150の第2液滴157(図5参照)の吐出のタイミングを制御する。詳細は後述するが、第1液滴吐出部140による第1液滴147の吐出と、第2液滴吐出部150の第2液滴157の吐出は、同期している。本実施形態における「同期する」とは第1液滴147および第2液滴157が一定の周期で吐出されることを意味する。この例では、第1液滴147および第2液滴157が同時に吐出される。また、制御部110は、第1液滴吐出部140が第1液滴147を吐出した対象物200の第1領域から離れた第2領域に移動したときに、第2液滴吐出部150に第1領域に第2液滴157を吐出させるように制御する。
【0029】
記憶部115は、液滴吐出用プログラム、および液滴吐出用プログラムで用いられる各種情報を記憶するデータベースとしての機能を有する。記憶部115には、メモリ、SSD、または記憶可能な素子が用いられる。
【0030】
電源部120は、制御部110、駆動部130、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150と接続される。電源部120は、制御部110から入力される信号をもとに、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150に電圧を印加する。この例では、電源部120は、第2液滴吐出部150に対してパルス状の電圧を印加する。なお、パルス電圧に限定されず、一定の電圧が常時印加されてもよい。
【0031】
駆動部130は、モータ、ベルト、ギアなどの駆動部材により構成される。駆動部130は、制御部110からの指示に基づき、対象物保持部160に対して第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150(より具体的には、後述する第1液滴ノズル141のノズル先端部141aおよび第2液滴ノズル151のノズル先端部151a)を相対的に一つの方向(この例では、第1方向D1)に移動させる。
【0032】
第1液滴吐出部140は、第1液滴ノズル141および第1インクタンク143(第1液体保持部ともいう)を含む。この例では、第1液滴ノズル141には、ピエゾ型インクジェットノズルが用いられる。第1液滴ノズル141の上部には圧電素子145が設けられる。圧電素子145は、電源部120と電気的に接続される。圧電素子145は、電源部120から印加された電圧により、第1液滴147を押圧することにより、第1インクタンク143に保持された第1液体を第1液滴ノズル141のノズル先端部141a(第1先端部ともいう)から第1液滴147を吐出する。
【0033】
第1液滴吐出部140の第1液滴ノズル141は、対象物200の表面に対して垂直に設けられる。
【0034】
第1液滴ノズル141のノズル先端部141aの内径は、第2液滴ノズル151のノズル先端部151aの内径よりも広いことが望ましい。これにより、ノズルのつまりを抑えつつ、広い領域に第1液滴147を吐出することができる。
【0035】
第2液滴吐出部150は、第2液滴ノズル151および第2インクタンク153(第2液体保持部ともいう)を含む。第2液滴ノズル151には、静電吐出型のインクジェットノズルが用いられる。第2液滴ノズル151のノズル先端部151aの内径は、数百nm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは5μm以上12μm以下である。
【0036】
第2液滴ノズル151は、ガラス管を有し、ガラス管の内部に電極155が設けられる。この例では、電極155には、タングステンの細線が用いられる。なお、電極155は、タングステンに限定されず、ニッケル、モリブデン、チタン、金、銀、銅、白金などが設けられてもよい。
【0037】
第2液滴ノズル151の電極155は、電源部120と電気的に接続されている。第2液滴ノズル151の内部および電極155に対して電源部120から印加された電圧(この例では、1000V)により第2インクタンク153に保持された第2液体が第2液滴ノズル151のノズル先端部151a(第2先端部ともいう)から第2液滴157(図5参照)として吐出される。電源部120から印加される電圧を制御することにより、第2液滴157により形成される液滴(パターン)の形状を制御することができる。
【0038】
第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150が対象物保持部160に対して移動する方向(この例ではD1方向)に沿って配置される。具体的には、第1液滴吐出部140(具体的には第1液滴ノズル141のノズル先端部141a)は、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150が移動する方向に対して第2液滴吐出部150(具体的には第2液滴ノズル151のノズル先端部151a)の前方に配置される。なお、第1液滴吐出部140と、第2液滴吐出部150との距離Lは、適宜調整することができる。
【0039】
対象物保持部160は、対象物200を保持する機能を有する。対象物保持部160は、この例ではステージが用いられる。対象物保持部160が対象物200を保持する機構は特に制限されず、一般的な保持機構が用いられる。この例では、対象物200は、対象物保持部160に真空吸着している。なお、これに限定されず、対象物保持部160は固定具を用いて対象物200を保持してもよい。
【0040】
(1-2.液滴吐出方法)
次に、液滴吐出方法について図面を用いて説明する。
【0041】
まず、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、制御部110および駆動部130により液滴吐出装置100に準備された対象物200上に移動する。このとき、図2に示すように、第1液滴吐出部140が、対象物200の第1領域R1上に表面から一定の距離離れて配置される。
【0042】
対象物200は、第1液滴147および第2液滴157が吐出される部材をいう。この例では、対象物200には平坦なガラス板が用いられる。なお、対象物200は平坦なガラス板に限定されない。例えば、金属板であってもよいし、有機樹脂部材でもよい。なお、対象物200には、液滴吐出用の対向電極が設けられてもよい。
【0043】
次に、図3に示すように、第1液滴吐出部140は、第1領域R1に第1液滴147を吐出する。
【0044】
第1液滴147には、表面処理液が用いられる。表面処理液は、対象物200に対する濡れ性が高いことが望ましい。また、表面処理液は、吐出されてから一定の期間において対象物200上に残存することが望ましい。具体的には、表面処理液は、高沸点、低蒸気圧性を有することが望ましい。また、表面処理液は、静電気を除去できる程度に導電性(10Ω/sq以上1011Ω/sq以下)を有することが望ましい。これにより、対象物200の表面に対する帯電除去効果を有することができる。さらに、表面処理液は、揮発後に固形物などが残らないことが望ましい。
【0045】
第1液滴147には、この例では、揮発性を有する材料が用いられる。具体的には、第1液滴147には、エタノールおよび水の混合液が用いられる。第1液滴147を用いることにより、対象物200の表面を適度に除電することができるとともに、対象物200の表面の濡れ性を向上させることができる。
【0046】
なお、第1液滴147には、揮発性を有する材料として、水、エタノール、エタノールおよび水の混合液のほかに、各種のアルコール類およびそれらと水の混合溶液、アルコール以外の揮発性を有する、ケトン、エテール系の有機溶剤が用いられてもよい。
【0047】
第1液滴147の吐出量は、特段限定されないが、対象物200の濡れ性を向上させ、対象物200の表面の帯電を除去できる程度が好ましい。具体的には、エタノールと水を1:1の混合液の場合、1平方センチメートルあたりの塗布量として、0.01μl以上1μl以下であることが好ましい。このとき、形成された第1液滴147の厚みは0.1μm以上10μm以下となる。
【0048】
第1液滴147が吐出される領域は、第2液滴157により形成されるパターンサイズよりも広いことが望ましい。これにより、より安定して第2液滴157を対象物200と密着させることができる。
【0049】
次に、図4に示すように、第1液滴吐出部140は、対象物200の第1領域R1上から第2領域R2上に移動する。第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140の移動に合わせて第1液滴147が吐出された第1領域R1上に移動する。第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150の移動速度は、第1液滴147を吐出した後の経過時間、第1液滴147の乾燥速度、第1液滴吐出部140と第2液滴吐出部150との間の距離などを考慮して濡れ性が保持できる程度にあらかじめ設定することが望ましい。また、この場合、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、D1方向に移動するということができる。
【0050】
次に、図5に示すように、第1液滴吐出部140は、第1領域R1と同様に、対象物200の第2領域R2に第1液滴147を吐出する。第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140と同期して第1領域R1に第2液滴157を吐出する。この例では、第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140が第1液滴147を吐出するのと同時に第2液滴157を吐出する。
【0051】
第2液滴157には、第1液滴147よりも粘度が高い材料が用いられる。具体的には、第2液滴157には、顔料を含むパターン形成用のインク(第2液体ともいう)が用いられる。第2液滴157には導電粒子が含まれてもよい。第2液滴吐出部150には、静電吐出型インクジェットが設けられており、電源部120から与えられた電圧により吐出量が制御される。第2液滴157の吐出量は、0.1fl以上100pl以下であることが望ましい。このときのパターンサイズは100nm以上500μm以下である。
【0052】
第2液滴157が吐出される第1領域R1は、第1液滴147が揮発して表面には残存していないかわずかに残った状態となる。このとき、第1領域R1の表面は、除電され、かつ良好な濡れ性を(親液性)を有している。これにより、第2液滴157が第1領域R1に吐出されたときには対象物200の表面と良好な密着性を有することができる。したがって、第2液滴157が所定の位置に配置されることとなる。
【0053】
第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、上記処理を繰り返すことにより、所望の液滴吐出を行う。図6は、液滴吐出後の対象物200上面図である。図6に示すように、対象物200の所望の位置にパターン(第2液滴157)が配置されている。このとき、第1液滴147は、揮発してもよいし、または一部残存してもよい。
【0054】
ここで、従来技術と本発明とを比較すると、従来技術では、対象物200の表面の帯電を除去するために、プラズマ処理またはUVオゾン処理が用いられていた。しかしながら、本実施形態を用いることにより、対象物200の表面に第2液滴157を安定して対象物200の表面の所定の位置に着弾させることができる。つまり、対象物200の表面に液滴を容易に安定して吐出することができる。また、本実施形態を用いることにより、プラズマ処理を行わなくてもよいため、対象物に対するダメージを軽減することができる。
【0055】
<第2実施形態>
本実施形態では、対象物200の表面に段差170を有する例について図面を用いて説明する。
【0056】
まず、図7に示すように、段差170を有する対象物200上に第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150を移動させ、配置させる。対象物200の表面に設けられた段差170(パターン、凸部ともいう)は、有機絶縁層として設けられる。段差170に用いられる有機絶縁層は、特に限定されないが、この例では、段差170にポリイミド樹脂が用いられる。なお、有機絶縁層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などのほかの有機樹脂でもよいし、無機材料が用いられてもよい。また、この例では、段差170は、対象物200の一部の表面を露出するように井桁状に設けられる(井桁構造ともいう)。第1領域R1および第2領域R2の各々は、段差170によって囲まれる。
【0057】
このとき、第1液滴吐出部140は第1領域R1上に配置される。第1液滴吐出部140は第1領域R1(より具体的には第1領域R1内の所定位置)に第1液滴147を吐出する。第1液滴147は、図8に示すように、段差170および対象物200の表面に吐出される。
【0058】
次に、第1液滴吐出部140は、対象物200の第1領域R1上から第2領域R2上に移動する。第2液滴吐出部150は、第1液滴147が吐出された第1領域R1上に移動する。このとき、第1液滴147は、表面張力により表面積を最小化しようする。井桁構造のように囲まれた領域があると、第1液滴147は当該領域に引っ込むことにより、空気との界面の面積を最小化しようとする。さらに、第1液滴147の蒸発速度は第1液滴147の厚みが薄い方が速い。そのため、段差に囲まれた領域(井桁構造内部)の第1液滴147は蒸発が遅く、段差170上の液体は早く乾燥することとなる。したがって、図9に示すように、一定時間経過後には段差170に囲まれた領域(井桁構造内部)にのみ第1液滴147が存在することとなる。第1液滴147は第1領域R1において段差170上からはじかれて、対象物200の表面にのみ残存した状態となる。
【0059】
第1液滴吐出部140は、第1領域R1と同様に、対象物200の第2領域R2に第1液滴147を吐出する。第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140と同期して第1領域R1に第2液滴157を吐出する。この例では、第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140が第1液滴を吐出するのと同時に第2液滴を吐出する。このとき、第1領域R1の対象物200の表面に対して第1液滴147が残存した状態で第2液滴157が吐出されてもよい。
【0060】
第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、上記処理を繰り返して、図10に示すように、段差170上ではなく対象物200の表面にのみ第2液滴157が吐出される。
【0061】
本実施形態において、第2液滴157を吐出する際に、第1液滴147は対象物200の表面(具体的には、井桁構造内部)にのみ残存する。これにより、対象物200の帯電が抑えられるとともに、対象物200の表面の濡れ性が向上する。したがって、対象物200の表面に第2液滴157を優先して着弾しやすくなり、段差170の影響を受けずに第2液滴157を安定して吐出することができる。
【0062】
また井桁構造内部に、導電性を有する第1液滴147が存在すると、当該部分に電気力線が集中することとなる。これにより、井桁構造内部へ第2液滴157(インク)が着弾しやすくなる。つまり、所望の位置に第2液滴157を吐出することができる。
【0063】
以上より、本実施形態を用いることにより、対象物自体の帯電が除去され、対象物に施された段差170による影響が緩和される。これにより、図11に示すように、対象物200の表面に段差170が設けられている場合において、第2液滴157を安定して吐出することができ、所望のパターンを形成することができる。なお、第1液滴147は、第2液滴157によるパターン形成後も対象物200上に残存してもよい。
【0064】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、第1液滴ノズル141および第2液滴ノズル151が複数設けられている例について説明する。なお、説明の関係上、適宜部材を省略して説明する。
【0065】
(3-1.液滴吐出装置100の構成)
図12は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100Aの概略図である。液滴吐出装置100Aは、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、第1液滴吐出部140A、および第2液滴吐出部150Aを含む。
【0066】
本実施形態では、第1液滴吐出部140Aは、第1液滴吐出部140Aが移動する方向(この場合にはD1方向)に交差する方向(具体的にはD1方向に直交するD3方向)に複数設けられている(具体的には、第1液滴吐出部140Aは、それぞれ独立して設けられた第1液滴ノズル141A-1,141A-2,141A-3,および141A-4を有している。)。同様に、第2液滴吐出部150Aは、第1液滴吐出部140Aおよび第2液滴吐出部150Aが移動する方向に交差する方向に複数設けられている(より具体的には、第2液滴吐出部150Aは、それぞれ独立して設けられた第2液滴ノズル151A-1,151A-2,151A-3,151A-4を有している。)。本実施形態では、第1液滴吐出部140Aおよび第2液滴吐出部150Aを有することにより、液滴吐出の処理時間を短縮することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1液滴吐出部140Aが複数設けられる例を示したが、これに限定されない。第1液滴吐出部140は、精細な位置精度を有する必要がないため、異なる形状を有してもよい。
【0068】
図13は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100Bの概略図である。液滴吐出装置100Bにおいて、第1液滴吐出部140Bの第1液滴ノズル141Bは、第1液滴吐出部140Bが移動する方向(この場合にはD1方向)に交差する方向(具体的にはD3方向)に延在してもよい。具体的には、図13に示すように、第1液滴ノズル141は、スリット形状を有してもよい。この場合、第1液滴ノズル141から列状に第1液滴147が吐出される。このとき、形成されるパターンの上面図は、図14のように、第1液滴147が列状に設けられ、第2液滴157が所定の位置に離隔して設けられてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、第2液滴吐出部150Aにおいて複数の第2液滴ノズル151Aがそれぞれ独立して設けられる例を示したが、これに限定されない。図15は、第2液滴ノズル151Cの上面図である。図16は、第2液滴ノズル151Cの一部を拡大した上面図及び断面図である。図15および図16に示すように、第2液滴ノズル151Cは、複数のノズル部151Cbおよびプレート部151Ccを有する。この例では、複数のノズル部151Cbが1列に並んで配置されるが、複数列に並んで配置されてもよい。
【0070】
ノズル部151Cbには、ニッケルなどの金属材料が用いられる。ノズル部151Cbは、例えば、電鋳法により先細る形状を有して形成される。プレート部151Ccには、ステンレスなどの金属材料が用いられる。プレート部151Ccは、ノズル部151Cbと重畳する部分にノズル部151Cbの吐出口(ノズル先端部151Ca)の内径r151Caよりも大きい内径r151Ccを有する穴を有する。ノズル部151Cbは、プレート部151Ccに対して溶接してもよいし、接着剤により固定してもよい。第2液滴ノズル151Cを用いた場合、ノズル部151Cbに電圧を印加してもよいし、プレート部151Cc(または第2インクタンク153)に電圧を印加してもよい。
【0071】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
(変形例)
なお、本発明の第1実施形態では、駆動部130により、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150が対象物200上を移動する例を示したが、これに限定されない。例えば、液滴吐出装置において、駆動部130は、対象物200を移動させてもよい。この場合、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150は、同じ位置に固定されてもよい。
【0073】
また、本発明の第1実施形態では、第1液滴吐出部140の第1液滴ノズル141にピエゾ型インクジェットノズルが用いられる例を示したが、これに限定されない。第1液滴吐出部140には、スプレーノズルが用いられてもよい。スプレーノズルが用いられた場合、対象物200の広範囲に第1液滴147を吐出または噴霧することができる。
【0074】
また、本発明の第1実施形態では、第1液滴ノズル141は、対象物200の表面に対して垂直に設けられる例を示したが、これ限定されない。第1液滴ノズル141は、対象物200の表面の垂直方向に対して傾きを有してもよい。第2液滴吐出部150の第2液滴ノズル151も同様である。
【0075】
また、本発明の第1実施形態では、第1液滴147には、揮発性を有する材料が用いられる例を示したが、これに限定されない。例えば、第1液滴147には、帯電防止剤が用いられてもよい。このとき、第1液滴147の表面抵抗値は、10Ω/sq以上1011Ω/sq以下とすることが望ましい。帯電防止剤は、揮発性を有しなくてもよく、対象物200の表面に一部残存してもよい。
【0076】
また、本発明の第1実施形態では、段差に有機絶縁層が用いられた例を示したが、これに限定されない。例えば、段差は、配線パターンでもよいし、無機材料が用いられてもよい。また、対象物200自身を加工して段差を設けてもよい。また、対象物200は、配線が積層された配線基板でもよい。
【0077】
また、本発明の第1実施形態で第2液滴157を吐出したときに、撮像装置を用いて、撮像してもよい。この場合、撮像結果を制御部110にて判断してもよい。制御部110は、吐出不良があると判断した場合には、不良発生領域に対して再び第1液滴147および第2液滴157を吐出してもよい。これにより、液滴吐出不良を抑制することができる。
【0078】
また、本発明の第1実施形態では、第1液滴および第2液滴が、同期して吐出される際に、同時に吐出される例を示したがこれに限定されない。例えば、第1液滴および第2液滴が同時に吐出されずに、第1液滴が吐出された後、一定時間経過後に第2液滴が吐出されてもよい。また、第1液滴と第2液滴とが連動して吐出されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100・・・液滴吐出装置,110・・・制御部,115・・・記憶部,120・・・電源部,130・・・駆動部,140・・・第1液滴吐出部,141・・・第1液滴ノズル,141a・・・ノズル先端部,143・・・第1インクタンク,145・・・圧電素子,147・・・第1液滴,150・・・第2液滴吐出部,151・・・第2液滴ノズル,151a・・・ノズル先端部,153・・・第2インクタンク,155・・・電極,157・・・第2液滴,160・・・対象物保持部,170・・・段差,200・・・対象物
図1
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