(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】飛行体の飛行方法
(51)【国際特許分類】
B64C 29/00 20060101AFI20221006BHJP
B64C 3/40 20060101ALI20221006BHJP
B64C 3/56 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B64C29/00 A
B64C3/40
B64C3/56
(21)【出願番号】P 2019171061
(22)【出願日】2019-09-20
(62)【分割の表示】P 2019547529の分割
【原出願日】2019-08-02
【審査請求日】2019-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0206921(US,A1)
【文献】特表2007-508998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 29/00
B64C 3/40
B64C 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力を発生させるための複数の回転翼を備えた推力部と、尾翼と、当該推力部及び当該尾翼を連結する胴体と、当該胴体の略中央に設けられた主翼と、少なくとも当該主翼を制御する制御部とを備える飛行体であって、
前記飛行体が着陸する際に、前記制御部は、前記主翼の一部が下端となるように前記主翼を制御する、飛行体の飛行方法であって、
初期状態において、前記推力部が上端となるように前記胴体を垂直方向に立てるステップと、
前記推力部を駆動させ、前記回転翼が進行方向前端となるように上昇させるステップと、
所定の高さにおいて、前記主翼を略90度水平方向にむけて変位させ、前記胴体が水平方向に延びるように飛行させるステップと、
目的地上空において前記尾翼が下端となるように前記飛行体の姿勢を保ちつつ、前記主翼を進行方向後方に変位させるステップと、
前記主翼の一部が下端となるように下降するステップとを含む、
飛行体の飛行方法。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体の飛行方法であって、
前記主翼は、二枚の固定翼の対で構成されており、
前記飛行体が着陸する際に、前記二枚の固定翼は、前記胴体の両側方に略逆V字状をなす対称な状態で且つ後方に行くに従ってほぼ直線状に下方に傾斜している、
飛行体の飛行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の飛行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの回転翼機(以下、単に「飛行体」と総称する)を利用した様々なサービスが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このよう飛行体のうち、荷物を搭載するための搭載部を備えたものが特許文献2に開示されている飛行体が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-15697号公報
【文献】特開2017-159751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した荷物を運ぶ場合、特許文献2に記載の技術では、構造が複雑なことに加えて、下降時の横風対策等がなされておらず、安全性に問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、より基本的な構造でかつ安全対策のとられた飛行体を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
推力を発生させるための複数の回転翼を備えた推力部と、尾翼と、当該推力部及び当該尾翼を連結する胴体と、当該胴体の略中央に設けられた主翼と、少なくとも当該主翼を制御する制御部とを備える飛行体であって、
前記飛行体が着陸する際に、前記制御部は、前記主翼の一部が下端となるように前記主翼を制御する、
飛行体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より基本的な構造でかつ安全対策のとられた飛行体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の飛行体の初期状態を示す模式図である。
【
図3】
図1の飛行体の上昇時の状態を示す模式図である。
【
図4】
図1の飛行体の飛行時の状態を示す模式図である。
【
図5】
図1の飛行体の下降時の状態を示す模式図である。
【
図6】
図1の飛行体の下降時の状態を示す他の模式図である。
【
図7】
図1の飛行体の着陸時の状態を示す模式図である。
【
図8】
図1の飛行体の飛行部の機能ブロックを示す図である。
【
図9】本発明による飛行体の変形例を示す説明図である。
【
図10】本発明による飛行体の別の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行体の飛行方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
推力を発生させるための複数の回転翼を備えた推力部と、尾翼と、当該推力部及び当該尾翼を連結する胴体と、当該胴体の略中央に設けられた主翼と、少なくとも当該主翼を制御する制御部とを備える飛行体であって、
前記飛行体が着陸する際に、前記制御部は、前記主翼の一部が下端となるように前記主翼を制御する、
飛行体。
[項目2]
項目1に記載の飛行体であって、
前記主翼は、二枚の固定翼の対で構成されており、
前記飛行体が着陸する際に、前記二枚の固定翼は、前記胴体の両側方に略逆V字状をなす対称な状態で且つ後方に行くに従ってほぼ直線状に下方に傾斜している、
飛行体。
[項目3]
請求項1又は請求項2に記載の飛行体の飛行方法であって、
初期状態において、前記推力部が上端となるように前記胴体を垂直方向に立てるステップと、
前記推力部を駆動させ、前記回転翼が進行方向前端となるように上昇させるステップと、
所定の高さにおいて、前記主翼を略90度水平方向にむけて変位させ、前記胴体が水平方向に延びるように飛行させるステップと、
目的地上空において前記尾翼が下端となるように前記飛行体の姿勢を保ちつつ、前記主翼を進行方向後方に変位させるステップと、
前記主翼の一部が下端となるように下降するステップとを含む、
飛行体の飛行方法。
【0011】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態による飛行体の飛行方法について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<本発明による実施の形態の詳細>
図1に示されるように、本発明の実施の形態による飛行体1は、推力を発生させるための複数のプロペラ16を備えた推力部10と、尾翼20と、推力部10及び尾翼20を連結する胴体30と、胴体30の略中央に設けられた主翼(上側固定翼40、下側固定翼42)とを備えている。
【0013】
なお、図示されている飛行体1は、本発明の構造の説明を容易にするため簡略化されて描かれており、例えば、制御部等の詳しい構成は図示していない。
【0014】
また、図中の軸は、絶対軸を表している。Z軸(Z方向)は垂直方向であり、X軸及びY軸は共に水平方向である。
【0015】
<構造の詳細>
本実施の形態による推力部10は、プロペラ16と、当該プロペラ16を回転させるモータ14と、モータ14を支持するモータアーム12とを備えている。本実施の形態による推力部10は、プロペラ16、モータ14、モータアーム12のセットは十字状に4つ有している。
【0016】
プロペラ16は、モータ14からの出力を受けて回転する。プロペラ16が回転することによって、飛行体1を出発地から離陸させ、水平移動させ、目的地に着陸させるための推進力が発生する(飛行の詳細は後述する)。なお、プロペラは、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0017】
プロペラ16は、任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。
【0018】
なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。
【0019】
羽根はエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0020】
モータ14は、プロペラ16の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。羽根は、モータによって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0021】
羽根は、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)や制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0022】
モータアーム12は、それぞれ対応するモータ14及びプロペラ16を支持している部材である。モータアーム12には、回転翼機の飛行状態、飛行方向等を示すためにLED等の発色体を設けることとしてもよい。本実施の形態によるモータアーム12は、カーボン、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム等またはこれらの合金又は組合わせ等から適宜選択される素材で形成することが可能である。
【0023】
本実施の形態において、推力部10(
図1参照)と胴体30とは、ジンバル60を介して連結されている。これにより、推力部10と胴体30とは、独立して変位可能となる。
【0024】
即ち、推力部10の向きを胴体30の向きとは別個独立に制御することが可能となることから、胴体30の向きは飛行部30の向きの影響を受けないジンバル60は、少なくとも二軸(X軸及びZ軸)方向に変位可能なジンバル60である。
【0025】
胴体30は、2本の直線形状を有しており、夫々、一端は推力部10に接続され他端は尾翼20に接続されている。
【0026】
主翼(上側固定翼40及び下側固定翼42)は、胴体30に夫々連結されている。本実施の形態による飛行体は、ジンバルを介して回転翼機に複葉機を接続した概念のものであるが、複葉機でなくてもよい。
【0027】
続いて、
図2乃至
図7を参照して本実施の形態による飛行体の飛行方法を説明する。
【0028】
図2は、飛行体の初期状態を示す図である。初期状態において、飛行体1は尾翼20が地面に接した状態で直立している。換言すると、初期状態において、飛行体1は、胴体30を垂直方向に立てるようにしてセットされる。
【0029】
なお、初期状態において、飛行体1が倒れないようにするために、補助アームや補助脚等を使用することとしてもよい。
【0030】
飛行体1は、
図2に示される状態から、推力部10のプロペラ16を回転させることによって上向きの推力を得て、
図3に示されるように、浮上し上昇する(上昇姿勢)。
【0031】
飛行体1は、所定の高さまで上昇すると、
図4に示されるように、推力部10を略90度水平方向にむけて変位させ、機体の向きを変える(水平姿勢)。
【0032】
この状態においてはあたかもプロペラ飛行機と同様の原理で水平方向に推進することが可能となる。かかる構成によれば、目的地上空まで高速に移動することが可能となる。水平飛行の際、飛行体1は、前進翼からゆるやかな後退翼まで、実機に存在するあらゆる形態を取り、速度による揚力を積極的に取得する。
【0033】
目的地上空に到着すると、プロペラ16の回転速度を低下させつつ機体が垂直になるようにして(下降姿勢)、ホバリング状態に移行する。即ち、機体の向きを水平方向から垂直方向に戻す。この際、制御部は、
図5及び
図6に示されるように、主翼の一部が下端となるように主翼を制御する。この状態で、
図5に示されるように、二枚の固定翼は、胴体30の両側方に略逆V字状をなす対称な状態で且つ後方に行くに従ってほぼ直線状に下方に傾斜している。そして、
図7に示されるように、主翼の一部は着陸形態時に後退翼となる。これにより、重心Gも脚部側にずれることとなる。
【0034】
本実施の形態においては、主翼の一部が着陸形態時に後退翼となるので、プロペラ後流の影響を下げつつ重心Gを下げることにより良好な着陸性能を得ることが可能になる。
【0035】
上述した回転翼機は、
図8に示される機能ブロックを有している。なお、
図8の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0036】
処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0037】
メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0038】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0039】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0040】
例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0041】
送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0042】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0043】
本発明の飛行体は、中長距離における宅配業務専用の飛行体としての利用、及び広域の監視業務、山岳領域の偵察・救助業務における産業用の飛行体としての利用が期待できる。また、本発明の飛行体は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業において利用することができ、さらに、本発明に、カメラ等を搭載し空撮任務も遂行可能な飛行体としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、農業、インフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【0044】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0045】
上述した実施形態では、飛行体1が着陸する際に、二枚の固定翼は、胴体30の両側方に略逆V字状をなす例を示した。しかし、これに限られない。例えば、
図9に示すように、二枚の固定翼は、機体下方へ折り畳み可能に胴体30に設けられていてもよい。折畳翼の使用により、地上での保管、運搬、メンテナンスが容易で安価な利点がある。
【0046】
また、推力部10と胴体30とが接続部50を介して独立して変位可能であってもよい。接続部50には、一軸、二軸、三軸回りに揺動自在なジンバル等を採用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 飛行体
10 推力部
16 プロペラ(回転翼)
20 尾翼
30 胴体
40 上側固定翼
42 下側固定翼