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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】代掻き作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/04 20060101AFI20221006BHJP
   A01B 33/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A01B35/04 D
A01B33/12 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019187124
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021061761
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓未
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽拓
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-183851(JP,A)
【文献】特開2012-200180(JP,A)
【文献】特開2011-155943(JP,A)
【文献】特開2012-039981(JP,A)
【文献】特開2009-131173(JP,A)
【文献】特開2016-198073(JP,A)
【文献】実公昭44-026084(JP,Y1)
【文献】実公昭35-014019(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 27/00 - 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動可能な砕土部と、
前記砕土部の上部を覆うカバー体と、
前記カバー体の進行方向前方側の端部に接続され、下端部を下方に位置する泥土に接触することが可能で、進行方向に対する左右の幅方向に長い前部カバーと、を備え、
前記前部カバーは、左右の幅方向に対する中央部を進行方向に対して直交方向に設ける中央カバーと、
前記中央カバーの左右に対する端部に一端部を近接させて配置し、他端部を前記前部カバーの左右の幅方向に対する外側に向かうにしたがって前記砕土部側に傾斜させた端部カバーと、
を備えることを特徴とした代掻き作業機。
【請求項2】
前記中央カバー及び前記端部カバーは、上方から下方に向かうにしたがって砕土部側に向かうように傾斜させ、
前記端部カバーの前方には、土寄せ体を配置している、
ことを特徴とした請求項1に記載の代掻き作業機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて使用される農作業機であり、複数の耕耘爪を設けた耕耘ロータを回転させ耕耘する作業機に関する。詳細には、耕耘ロータの上部を覆う耕耘カバーの前方に設けた補助カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
走行車両に装着する代掻き作業機において、走行車両の走行部で形成される轍溝を埋め戻すことによって、土壌を均平にする代掻き作業機は、特許文献1によって開示されている。この代掻き作業機は、走行車両であるトラクタの車輪と砕土部との間に設けた均平補助手段である土寄せ板によって、轍溝に土壌を埋め戻す。その後、土寄せ板より後方に位置する砕土部及び整地部で、土壌を砕土すると共に均平にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-39981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1の土寄せ板によって、前方への進行と共に轍溝に土壌を埋め戻した直後を想定してみる。土寄せ板が通過後の土壌は、大きな轍はある程度均されて解消されるが、移動しきれない土塊や夾雑物等によって、依然として土壌面に凹凸が形成されている。このため、土寄せ板の後方に位置する砕土部で土壌を砕土しても、砕土後の土壌面に凹凸が残る。また、砕土部の後方に位置する整地部で均平にするとしても、整地部の直前に形成された土壌の凹凸の度合いに影響され、均平に仕上がらない課題を有する。また、轍が無い砕土前の土壌面にも、凹凸があるため、上記同様に均平に仕上がらないことがある。砕土部後方の整地部での均平度をさらに向上させるためには、砕土部の直前の土壌をある程度均すことが必要である。
【0005】
したがって、本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、均平精度を向上させることが可能な代掻き作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、回転駆動可能な砕土部と、砕土部の上部を覆うカバー体と、カバー体の進行方向前方側の端部に接続され、下端部を下方に位置する泥土に接触することが可能で、進行方向に対する左右の幅方向に長い前部カバーと、を備え、前部カバーは、左右の幅方向に対する中央部を進行方向に対して直交方向に設ける中央カバーと、中央カバーの左右に対する端部に一端部を近接させて配置し、他端部を進行方向に対する外側に向かうにしたがって前記砕土部側に傾斜させた端部カバーと、を備える代掻き作業機であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、均平精度を向上させることが可能な代掻き作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態を示す代掻き作業機の作業状態を進行方向の前方側からみた正面図である。
図2】実施形態を示す代掻き作業機の作業状態の側面図である。
図3】実施形態を示す代掻き作業機の作業状態の平面図である。
図4】実施形態を示す代掻き作業機の第2土寄せ体及び前部カバーを拡大して断面した側面断面図である。
図5】実施形態を示す代掻き作業機の第1土寄せ体及び前部カバーを拡大して断面した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。説明においては、図2に示す左側を進行方向に対する前方側、右側を進行方向に対する後方側、下側を機体下方側、上側を機体上方側として説明する。また、図3に示す上側を進行方向の右側、下側を進行方向の左側として説明する。また、図5に示す左側を進行方向に対する後方側、右側を進行方向に対する前方側として説明する。図面の記載において、同一または類似の部分には同一又は類似の符号を付して、その説明を省略することがある。加えて、説明に用いる図面は模式的なものであり、各部の寸法との関係等は現実のものとは異なることがある。また、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
代掻き作業機1の概要を説明する。代掻き作業機1は、走行機体であるトラクタ(図示せず)の後部に設けられた昇降リンクである3点リンク機構に装着して、砕土作業や代掻き作業に使用される。代掻き作業機耕1は、装着部20を有したフレーム2を備えていて、装着部20と3点リンク機構とを連結させることによって代掻き作業機1は昇降自在である。また、代掻き作業機1は、トラクタ側から出力される動力を獲得することによって、フレーム2下方に位置する砕土部3を回転駆動させる。この砕土部3は、進行方向と直交方向の水平軸で回転するロータ軸31に爪32を複数有している。トラクタの進行と共に爪32の回転駆動させることで、土壌を砕土することができる。
【0011】
砕土部3の上方には、砕土部3の上部を覆うカバー体4が設けられていて、砕土時の土壌が周囲へ飛散することを防止する。カバー体4の前方には前部カバーが取り付けられていて、砕土部3の直前の土壌を均すことができる。
【0012】
カバー体4の後方側の端部には、上下に回動自在に設けた整地体5が設けられていて、上下回動しながら整地体5の後部を接地させることで、耕耘体5で砕土後の土壌を均平に整地して代掻き作業をする。さらに整地体5は、カバー体4の後端部で上下に回動する第1整地体51と、この第1整地体51の後端部で上下に回動する第2整地体56とで構成されている。これら第1整地体51及び第2整地体56は、それぞれ共働することで、砕土部3による砕土後の土壌及び泥土を均平に整地することができる。
【0013】
また、説明する代掻き作業機1は、中央作業体11と、この中央作業体11の両端部に連結された延長作業体11L,11Rを備えている。延長作業体11L,11Rは、中央作業体11に備えたフレーム2の両端部に設けた支点部25を支点に回動することで、作業状態と格納状態とにそれぞれの作業形態を変形可能である。作業状態は、中央作業体11の作業幅を延長するように展開して作業幅を拡大して代掻き作業を行う状態で、格納状態は、延長作業体11L,11Rを中央作業体11の上方に位置させるように回動させて、機体幅を短縮した状態である。
【0014】
代掻き作業機1の詳細を説明する。前記フレーム2は代掻き作業機1の中央作業体11の骨格をなす部位であり、装着部20、入力ケース21、パイプフレーム22、伝動ケース23、サポートフレーム24、を備える。
【0015】
装着部20は、代掻き作業機1の前方中央部に設けてあり、上部中央のトップリンクピン201とその下方左右に位置する一対のロアリンクピン202により構成されている。これらトップリンクピン201、ロアリンクピン202をトラクタ側の3点リンク機構等(図示せず)に連結することで、代掻き作業機1はトラクタ対し昇降自在に装着される。装着部20の中央には、入力ケース21が設けられ、前方に向け入力軸211が突設されている。入力軸211は、トラクタの出力軸(図示せず)とユニバーサルジョイント等で連結されて、トラクタから出力された回転動力を獲得する。入力ケース21上部には、トップマスト212が前方及び上方に向け突設され、この上端部には前記トップリンクピン201が備えられる。入力ケース21の側部から下方に向けてロワプレート213が配置され、このロワプレートにロアリンクピン202を取り付けている。
【0016】
入力ケース21には、一端を入力ケース21に接続して左右側方にそれぞれに突出させたパイプフレーム22が設けられている。左右側方にそれぞれに配置したパイプフレーム22は丸パイプで構成し、それぞれ同軸に配置している。パイプフレーム22の左右いずれか一方側の他端には、下方に向かって延設された上下方向に長い伝動ケース23と、他方側のパイプフレーム22の他端部から下方に向かって延設された上下方向に長いサポートフレーム24が位置している。フレーム2の下方で伝動ケース23とサポートフレーム24のそれぞれ下端部をかけ渡すように、砕土部3を設ける。
【0017】
砕土部3は、ロータ軸31と爪32を有した部材で、パイプフレーム22の下方で、伝動ケース23下端部とサポートフレーム24の下端部との間に架設支持されている。ロータ軸31は、伝動ケース23とサポートフレーム24の下部に架設すると共に回転自在な軸体である。ロータ軸31には、放射状に円周方向及び軸方向に一定間隔を設けて爪32が多数取り付ける。ロータ軸31と爪32が一体になって、砕土部3を構成する。砕土部3は、トラクタから出力された回転動力を入力軸211で獲得し、入力ケース21及び伝動ケース23を介して、ロータ軸31に伝達されることで回転駆動をする。この回転駆動によって土壌を砕土する。
【0018】
砕土部3は、入力軸211から入力された動力を得て回転駆動をする。入力軸211から入力された動力は、入力ケース211に内装されるギヤによって減速され、左右一方側の側方に突設したパイプフレーム22(図1及び図3においては進行方向左側)内を通る出力軸(図示せず)により伝動ケース23内に伝達される。伝動ケース23内にはチェーン及びスプロケット等の伝動部材(図示せず)を配置することで、トラクタの動力は砕土部3に伝達され、砕土部3が回転駆動する。図2に示す実施形態においては、砕土部3は未耕地である前方側がダウンカットされるように紙面上の左回転として図示しているが、アップカットである右回転となるように構成しても良い。
【0019】
砕土部3の上部には、爪32の回転外周と沿うように、また、離間してカバー体4が設けられている。カバー体4は、左右の側方端部を伝動ケース23とサポートフレーム24に取り付けている。このようにして砕土部3の上方部をカバー体4で覆うことで、砕土部3側から飛散される耕耘土の上方側への飛散を防止している。
【0020】
ここで、代掻き作業機1の機体幅を作業状態と格納状態と変形させる機構について説明する。前記カバー体4及び砕土部3の両端側には、延長作業体11L,11Rとして、カバー体4及び砕土部3と同様の部材を進行方向と直交する幅方向に延長して設ける。進行方向左側に位置して作業をする延長作業体11Lである左カバー体4L及び左砕土部3L、進行方向右側に位置して作業をする延長作業体11Rである右カバー体4R及び右砕土部3Rがそれぞれ配置されている。左側延長作業体11Lと右側延長作業体11Rは共に対称構造であるので、説明を共通させている。
【0021】
機体幅を展開した作業状態での延長砕土部3L,3Rは、作業状態時の中央に位置する砕土部3の進行方向左側の同一直線状に位置している。延長砕土部3L,3Rは、中央作業体の砕土部3と同様、延長側ロータ軸31L,31Rと爪32を有している。ロータ軸31L,31Rには爪32が放射状に、且つ、軸方向に一定間隔に配置されていて、回転動力を得ることで砕土作業ができる。動力の獲得は、中央作業体11の砕土部3の端部に配置したドグクラッチを介して得る、あるいは、中央作業体11の入力ケース21から伝動される伝動軸から延長作業体11L,11Rに設けた側部伝動ケース(図示せず)に伝動して得る。
【0022】
実施形態である、中央作業体11の砕土部3を介して動力を得る場合、砕土部3のロータ軸31の左端部は、伝動ケース23あるいはサポートフレーム24を貫通させていて、この端部にドグクラッチ33をロータ軸31と一体に設ける。このドグクラッチ33は、延長側ロータ軸31L,31Rの延長側ロータ軸31L,31Rの中央作業体11側に配置した延長側ドグクラッチ33L,33Rと係合し、回転動力を延長側砕土部3L,3Rに伝動する。このようにして回転動力を得た延長側砕土部3L,3Rは、砕土作業が可能になる。
【0023】
図示はしないが、中央作業体11の入力ケース21から得る場合は、伝動ケース23あるいはサポートフレーム24の側方に入力ケース21から出力される伝動軸を貫通させる。この伝動軸の端部にドグクラッチを設ける。延長作業体11L,11Rには側部伝動ケース23L,23Rを設け、この上部に中央作業体11側の前記伝動軸にドグクラッチを係合させて、延長作業体11L,11R側の砕土部3L,3Rを駆動する。
【0024】
延長砕土部3L,3Rの上方及び側方を覆うように延長部カバー体4L,4Rが設けられている。延長砕土部3L,3Rの両端は、延長カバー体4L,4Rの進行方向に対する左右側方に設けられた側板に設置された軸受で支持されていて、回転自在に設けられている。また、延長カバー体4L,4Rによって、延長砕土部3L,3Rによる砕土時に発生する泥や土の上方及び側方側への飛散を防ぐ。
【0025】
延長カバー体4Lの中央作業体側の端部には、上方に向けて支点フレーム41L、41Rが設けられている。支点フレーム41L,41Rは、延長砕土部3L,3R及び延長カバー体4L,4Rと一体になって上方側に回動することで、延長作業体11L、11Rの延長砕土部3L,3R及び延長カバー体4L,4Rを作業状態と格納状態とに切り換えることができる。
【0026】
支点フレーム41L,41Rの上端部は、入力ケース21の左右それぞれに配置したパイプフレーム22の側方先端部の上部に設けた支点部25と連結されている。支点部25は軸線を進行方向と平行で、前方側をやや上方斜めに向けている。延長作業体11L,11Rである延長砕土部3L,3R及び延長カバー体4L,4Rは、それぞれを側方に展開させ作業幅を拡大させた作業状態から、180度上方側に反転させ、中央作業体11の砕土部3及びカバー体4の上方に位置させた格納状態に変形が可能である。格納状態での代掻き作業機1は、全体幅を短縮することができる。また、格納状態での延長砕土部3L,3Rの延長側ドグクラッチ33L,33Rは、中央側のドグクラッチ33との係合が解除されているので、延長砕土部3L,33Rは回転駆動ができない。上記した構成により、代掻き作業機1は、機体幅を展開した作業状態と折り畳んだ格納状態とに変更が可能である。
【0027】
中央作業体11のカバー体4の前方に、板状体からなる土寄せ体42を設ける。土寄せ体42は、カバー体4の中央部に位置させ、カバー体4の中央側から進行方向の外側の側方に至るにしたがって砕土部3側に傾斜させた第1土寄せ体42aと、第1土寄せ体42aより進行方向外側に位置させ、進行方向の外側の側方からカバー体4の中央側に至るにしたがって砕土部3側に傾斜させた第2土寄せ体42bと、で構成される。また、土寄せ体42は、カバー体4の前方に2組設けていて、中央作業体11の前方に位置する走行機体で形成された轍の窪みに向かって、機体の進行と共に土寄せ体42の傾斜させた板面によって土壌を案内させる。
【0028】
第1土寄せ体42aは、ロワプレート213から下方に向けた上下方向に長い支持部材43aの下端部に設ける。また、第2土寄せ体42bは、カバー体4の前方側の下端部から下方に向けた上下方向に長い支持部材43bの下端部に設ける。第1土寄せ体42a及び第2土寄せ体42bは、カバー体4の前方側の下端部より下方に位置する。
【0029】
土寄せ体42は、平面視で前方側に向かって裾が広がるハの字状に設け、これを一筋の轍の側部に位置させことで、走行機体によって形成された轍を埋め戻す。また、土寄せ体42はカバー体4下端部より下方に位置しているので、板面の大部分が土中に位置する。したがって、走行機体の進行と共に、より多くの土壌を轍に向かって移動させ、轍を埋め戻すことができる。
【0030】
中央作業体11のカバー体4の前方且つ土寄せ体42の後方には、前部カバー45を配置する。前部カバー45は、カバー体4の前方側の下端部から下方に向けて垂れ下げられていて、中央カバー45aと端部カバー45bを有している。中央カバー45a及び端部カバー45bは、進行方向に対する左右方向に長い矩形状の板である。また、中央カバー45a及び端部カバー45bの素材は、弾性体からなり、可堯性を有する。作業状態において、中央カバー45a及び端部カバー45bの下端部は、土壌と接することができるように、それぞれの矩形状の板の高さを設定している。
【0031】
中央カバー45aは、カバー体4の前方の中央部に2つ設けられた第1土寄せ体42aの間に位置するように配置する。中央カバー45aの板面は進行方向に向けると共に、下方に至るにつれて下端側が砕土部3側に傾斜するように取り付ける。また、中央カバー45aは、板状部材を折り曲げて形成した取付部材46aを介してカバー体4に取り付けているので、中央カバー45aを取付部材46aと一体に構成でき、カバー体4に対して着脱が容易にできる。
【0032】
端部カバー45bは、中央カバー45aの両側の端部をそれぞれ進行方向外側に向けて延長するように設ける。端部カバー45bは、第1土寄せ体42aの後部から第2土寄せ体42bの後部にかけて設ける。端部カバー45aの板面は、進行方向に対する外側に向けると共に、下方に至るにつれて下端側が砕土部3側に傾斜するように取り付ける。すなわち、端部カバー45bは、カバー体4の前方に2つ備えるとともに、平面視で後方側に裾が広がるハの字状に設けている。また、端部カバー45bは、板状部材を折り曲げて形成した取付部材46bを介してカバー体4に取り付けているので、端部カバー45bを取付部材46bと一体に構成でき、カバー体4に対して着脱が容易にできる。
【0033】
中央カバー45aは、カバー体4の前方側の下端より前方に位置するように取り付けている。可堯性を有する中央カバー45aの下端部が後方斜め上方に撓んでも、砕土部3の回転駆動によって耕耘爪32が接触しない位置に設定されている。
【0034】
端部カバー45bの中央カバー45a側の端部は、カバー体4の前方側の下端より前方に位置するように取り付けている。端部カバー45bの進行方向に対する外側に位置する端部はカバー体4の前方側の下端の下方に位置させている。可堯性を有する端部カバー45bの下端部が、後方斜め上方に撓んでも、砕土部3の回転駆動によって、耕耘爪32が接触しない位置に設定されている。
【0035】
ここで、前部カバー45の作用と効果を説明する。まず、走行機体が通過後の土壌に、走行部によって轍が2本形成される。この2本の轍を埋め戻すために、それぞれの轍を進行方向の左右側からハの字状に挟むように第1土寄せ体42aと第2土寄せ体42bを位置させる。走行機体を前進させることで、第1土寄せ体42aと第2土寄せ体42bの後方側に傾斜させた板面に沿って、轍の脇にある土壌を轍側に寄せる。
【0036】
土壌の同一点を基準にすると、代掻き作業機1の前進によって、第1土寄せ体42aと第2土寄せ体42bが通過後、すぐに前部カバー45が通過する。轍の筋は、第1土寄せ体42aと第2土寄せ体42bによって再度、埋め直されるものの、轍を埋めた後の土壌面及び元々の土壌面は、凹凸があり、荒れている状態である。この土壌面の凹凸を、土寄せ体42の後方に位置する前部カバー45によって、砕土部3が通過する前に均していく。
【0037】
カバー体4の前方に設けた前部カバー45のうち、中央部に位置する中央カバー45aは、第1土寄せ体42aの前方部から内側に溢れ出た土壌によって形成された凹凸部や、元々あった土壌の凹凸部を均すことができる。中央カバー45aは、進行方向から直交する方向から見た場合、下方に向かうにしたがって、下部が後方に傾斜して取り付けられていて、作業時において、下部が土壌面に接触する。中央カバー45aの下部が土壌面に接触することで、土壌面から上部に突出した部分を押さえつけて、土壌の下方に押し付けることができる。
【0038】
また、中央カバー45aは可堯性のある弾性部材で構成しているので、中央カバー45aで均平に処理しきれない土塊などの大きすぎる土壌面の凸部は、後方斜め上方にしなりながら乗り越えることができる。また、土壌のうち少なくとも泥水状のものは、中央カバー45aの前面に沿って左右いずれかの側方に移動する。したがって、大きな土塊等を中央カバー45aの前方で常時押し続けることが無く、砕土部3に土壌を導入できると共に、余分な泥土を側方に排することができる。
【0039】
中央カバー45aの左右両端部に一端部を近接させた端部カバー45bは、中央カバー45aの前面に沿って側方に移動してきた土壌や、第1土寄せ体42aと第2土寄せ体42bで埋め戻した轍の上面の凹凸部を均すことができる。端部カバー45bは、進行方向から直交する方向から見た場合、下方に向かうにしたがって、下部が後方に傾斜して取り付けられていて、作業時において、下部が土壌面に接触する。端部カバー45bの下部が土壌面に接触することで、土壌面から上部に突出した部分を押さえつけて、土壌の下方に押し付けることができる。
【0040】
また、端部カバー45bは可堯性のある素材で構成しているので、端部カバー45bで均平に処理しきれない土塊などの大きすぎる土壌面の凸部は、後方斜め上方にしなりながら避けることができる。
【0041】
さらに、端部カバー45bは進行方向に対する外側側方に向かうにつれて、外側の端部である他端部が砕土部3に近づくように後方に傾斜しているので、中央カバー45aから移動してきた土壌と共に、端部カバー45bで均平に処理しきれない土壌は、端部カバー45b前面に沿って外側の端部に向けて移動させることができる。したがって、大きな土塊等を中央カバー45aの前方で常時押し続けることが無く、代掻き作業機1の前方に位置する土壌は砕土部3によって砕土ができる。
【0042】
端部カバー45bの他端部は、第2土寄せ体42bの後方で、伝動ケース23またはサポートフレーム24の内側に位置している。伝動ケース23及びサポートフレーム24の下端部は土中に沈み込む部材であり、これら単体では耕耘及び砕土能力あるいは均平整地を持たない。したがって、伝動ケース23及びサポートフレーム24が通過した直後の土壌は、僅かに轍が形成されることがある。このため、伝動ケース23及びサポートフレーム24の進行方向に対する直前の部分に、予め、端部カバー45aの他端部から土壌を供給することで、轍の形成を最小限に抑えることができる。
【0043】
このように構成した前部カバー45によって、砕土部3が通過する直前の土壌は、事前に均平にすることが可能である。事前均平した後に砕土部3で砕土することによって、事前均平が無い状態と比較して、砕土後に形成される土壌の凹凸が低減させることができる。また、前部カバーの下端部は接地した状態であるので、砕土部3によって前方側に飛散する土壌を、カバー体4と共に防止することができる。代掻き作業機1の前方に位置する走行機体に土壌が飛散しないので、洗浄等のメンテナンスも容易にできる。
【0044】
さて、カバー体4の後端部には、後方及び下方に向けて垂れ下げるように整地体5を設けている。同様に、左右作業体のカバー体4L、4Rの後端部から後方及び下方に向けて垂れ下げるように整地体5L、5Rを設けている。また、整地体5L、5Rは、カバー体4L、4Rにそれぞれ取り付けているので、代掻き作業機1が作業状態及び格納状態に変更する場合、延長側のカバー体4L,4R及び延長側の砕土部3L,3Rと共に一体となって回動する。
【0045】
整地体5は、第1整地体51と、第2整地体56を備えている。左右の整地体5L及び5Rも同様に第1整地体51L、51Rと、第2整地体56L、56Rを備えている。第1整地体51は、左右の幅をカバー体4とほぼ同じ程度に設定した板511を有し、図2に示すように、S字状に湾曲及び折り曲げている。第1整地体51は、前方端部あるいは上方端部に配置した複数のヒンジ52によって、上下回動自在である。ヒンジ52の回動支点軸は進行方向左右に向けていて、ロータ軸31の軸と平行である。このため、第1整地体51の下方側は爪32の回転径から遠ざかる、又は、近づくように、回動動作をすることができる。
【0046】
第1整地体51は、砕土部3の後方を覆うように配置しているため、砕土部3で砕土された土壌が後方へ飛散することを防ぐ。また、砕土作業時の第1整地体51は、上方に回動して、第1整地体51の砕土部3側の面を接地させることによって、砕土部3で砕土後の土壌を均平に整地する。
【0047】
第1整地体51の後端部には、第2整地体56が上下回動自在に取付けられている。同様に、左右の第1整地体51L及び51Rの後端部にも、第2整地体56L、56Rを上下回動自在に取付けられている。これら第2整地体56は進行方向に対する幅方向に長い部材で、上下回動自在にするための回動支点562を第1整地体51の後端部の支点軸512に取付ける。代掻き作業時において、ほぼ水平状態となった第2整地体56が、第1整地体51を通過後の砕土面に接触し、自重によって押圧することで、第1整地体51では十分に整地及び均平にしきれなかった砕土面を、より一層高い精度で整地を行い、整地後の面を均平に仕上げる。
【0048】
最終的な土壌の均平及び整地は、第1整地体51及び第2整地体56によってされる。これに加え、前部カバー45で事前に砕土部3で砕土前の土壌を均すことによって、砕土後の土壌面に発生しうる凹凸部を低減させる。すると、第1整地体51及び第2整地体56は、凹凸部が少ない砕土後の土壌を整地するので、より高精度な均平性能を発揮することができる。さらに、前部カバー45の直前にある土寄せ体42で轍を埋めることによって、最終的な均平精度を向上させることができる。
【0049】
以上のように構成した代掻き作業機1は、前部カバー45を砕土部3の前方に位置するカバー体4の前方側下端部に備えることで、土壌及び泥土を適正に処理し、均平精度を向上させる代掻き作業機を提供できる。また、実施の形態は、中央作業体11に土寄せ体42及び前部カバー45を設けたものとして説明したが、延長作業体11L,11Rに土寄せ体42及び前部カバー45を設けたとしても、前述した作用と効果を有することは言及するまでもない。
【0050】
本発明は、上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示に基づく実施形態、実施例及び運用技術の改変は、特許請求の範囲に記載された範囲内で可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、砕土部あるいは耕耘部を有し、この後方に上下方向に回動可能な整地体を備えて均平及び整地作業を行うことができる作業機に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 代掻き作業機
2 フレーム
3 砕土部
4 カバー体
42 土寄せ体
42a 第1土寄せ体
42b 第2土寄せ体
45 前部カバー
45a 中央カバー
45b 端部カバー
5 整地体
51 第1整地体
56 第2整地体

図1
図2
図3
図4
図5