(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】圧縮物品、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 D
(21)【出願番号】P 2019546082
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(86)【国際出願番号】 FI2017050769
(87)【国際公開番号】W WO2018087428
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-01
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519163599
【氏名又は名称】ウーディオ オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】WOODIO OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】アンティ パーシネン
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-39410(JP,A)
【文献】ソ連国特許発明第923808(SU,A)
【文献】国際公開第2005/115705(WO,A1)
【文献】特開昭61-130004(JP,A)
【文献】特開平5-331250(JP,A)
【文献】特開平6-23894(JP,A)
【文献】米国特許第3206201(US,A)
【文献】米国特許第6103377(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 - 9/00
B29C 41/00 - 41/36
B29C 41/46 - 41/52
B29C 70/00 - 70/88
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化ポリマーと木材材料とを含む複合材料によって形成される圧縮物品であって、
前記複合材料は、硬化した熱硬化ポリマーの連続マトリックスと、前記マトリックス内に分布し前記熱硬化ポリマーによって少なくとも部分的に包まれた木材チップを有し、
室温で少なくとも168時間にわたって水中に浸漬したときに1重量%未満の吸水性を有し、
前記木材チップは、平面を有する板状粒子によって形成され、前記木材チップは、外面に平行な平面において少なくとも部分的に重なり合っており、
ここで、前記複合材料は、少なくとも1つの熱硬化ポリマー、木材チップからなるか、または、少なくとも1つの熱硬化ポリマー、木材チップおよび硬化剤および/またはフィラーからな
り、
0.5から100%の範囲で変化する相対湿度において、寸法的に安定である、圧縮物品。
【請求項2】
前記チップがそれぞれ1から7.5mmまたは0.5から3mmの篩い分けサイズを有する、請求項
1に記載の物品。
【請求項3】
前記熱硬化ポリマーのマトリックスが、実質的に透明または半透明である熱硬化樹脂を含む、請求項1
または2に記載の物品。
【請求項4】
前記3次元構造が、少なくとも0.1mmの深さまで外表面上で視覚的に識別可能である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記熱硬化ポリマーのマトリックスが、ポリエステル樹脂、特に芳香族ポリエステル樹脂、またはエポキシ樹脂または尿素ホルムアルデヒド樹脂またはメラミンホルムアルデヒド樹脂またはメラミンウレアホルムアルデヒド樹脂を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記木材チップが、前記複合材料のポリマーマトリックス全体にわたって分布している、請求項1から
5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記複合材料のマトリックス中の個々の前記木材チップの大部分が前記熱硬化ポリマーで覆われている、請求項1から
6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
硬化した前記熱硬化ポリマー100重量部当たり、1から60重量部の前記木材チップを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記熱硬化ポリマーのマトリックス中で、体積分率において前記木材チップの少なくとも50%が前記熱硬化ポリマーによって囲まれている、請求項1から
8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記木材チップが針葉樹および落葉性の木材チップの群から選択される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記木材チップが、予め選択された色に染色されている、請求項1から
10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記木材チップが少なくとも部分的に前記熱硬化ポリマーで含浸されている、請求項1から
11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記物品が、硬化した前記熱硬化ポリマーそれ自体の密度よりも少なくとも1%、特に2から20%小さい密度を有する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
前記物品がある体積を有し、前記物品の前記体積の少なくとも1%に達する各体積部分の密度は、硬化した熱硬化ポリマーの密度より少なくとも5%小さい、請求項1から
13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
0.5から3mmのサイズに篩い分けした木材チップを使用した場合に、室温で少なくとも168時間以上にわたる水中への含浸に対し、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満の吸水性を有する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
イソフタル酸/ネオペンチルグリコールポリエステル樹脂によって形成されたゲルコートコーティングなどのゲルコートコーティングを有する、請求項1から
15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
請求項1から
16のいずれかに記載の物品の製造方法であって、
-木材チップと未硬化の熱硬化性樹脂で形成される液体とを1:100から60:100の重量比でブレンドして均一な混合物を得る工程と、
-圧縮物品の外表面に対応する受け面を有する圧縮金型に前記混合物を移す工程と、
-前記受け面に対して少なくとも1つの表面を有する圧縮物品を形成するために前記金型内で前記混合物を成形する工程と、を含み、
前記木材チップは、平面を有する板状粒子によって形成され、前記木材チップは、外面に平行な平面において少なくとも部分的に重なり合っており、
ここで、前記複合材料は、少なくとも1つの熱硬化ポリマー、木材チップからなるか、または、少なくとも1つの熱硬化ポリマー、木材チップおよび硬化剤および/またはフィラーからな
り、
前記物品は0.5から100%の範囲で変化する相対湿度において、寸法的に安定である、
製造方法。
【請求項18】
-木材チップと未硬化の熱硬化性樹脂から形成される液体とを1:100から40:100の重量比でブレンドして均一な混合物を得る工程と、
-前記混合物を圧縮金型に移す工程と、
-水の沸点未満の温度で、かつ、圧縮中に前記木材チップが前記熱硬化性樹脂内に相互に連結したチップの三次元構造を形成することを可能にする条件下で、前記金型内で前記混合物を成形する工程と、を含む、請求項
17に記載の製造方法。
【請求項19】
未硬化の前記熱硬化性樹脂とブレンドする前記木材チップが、未硬化の前記熱硬化性樹脂を含浸させることが可能である、請求項
17または
18に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物が、室温で触媒活性化によって前記金型内で硬化される、請求項
17から
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記チップが予め選択された色に染色される、請求項
17から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記樹脂が半透明であり、前記物品に予め選択された色を付与するために前記チップを染色する、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
木質材料が樹脂と混合される前に、加熱によって前処理される、請求項
17から
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記物品が、前記物品の水および無害の化学薬品に対する耐性を改善することができる材料で被覆されている、請求項
17から
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記物品が、イソフタル酸/ネオペンチルグリコールポリエステル樹脂によって形成され得るゲルコートの層で被覆される、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
水との連続的または時折の接触にさらされる構造物における、請求項1から
16のいずれか一項に記載の物品の使用。
【請求項27】
屋内または屋外用の家具製品の製造における、台所および浴室用の備え付け備品における、または、ボートおよび同様の船舶上における、請求項
26に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー樹脂および木質材料によって形成された製品に関する。特に、本発明は、請求項1のプリアンブルに係る圧縮物品に関する。本発明はまた、請求項20のプリアンブルに係るそのような物品の製造方法、および請求項30のプリアンブルに係るその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーと木材の圧縮複合材料は当業界で知られている。このような複合材料は木材パネルによって代表され、ここで材料の構造部分は張り板のような薄いシートまたは粒子の形態の木材によって形成される。例としては、ベニヤ板やパーティクルボード、さまざまなファイバーボードがある。
【0003】
従来のパーティクルボードは、木材チップ、製材用削りくず、おがくずと、合成樹脂、または任意の適切な結合剤から製造された人工木材製品である。パーティクルボードは、従来の木材や合板材料よりも安く、緻密で、より均一な代替品として使える。パーティクルボードは、製造される物品の強度および外観のような物理的属性よりもむしろコスト削減が主な考慮事項である場合に代用材料として使うことができる。
【0004】
ポリマーと木材の既知の複合材料の一つの大きな欠点は、木材への水分の吸着の結果として、体積膨張と変色を生じやすいことである。湿気と水分の影響下で寸法安定性が欠如すると、パーティクルボードのような木製パネルは、高レベルで湿気が存在する場所での使用には適さないものになる。それ故、例えば、従来の木製パネルは、水および湿気に対してラミネーション、塗料またはシーラーで保護しなければならなかった。
【0005】
従来のパーティクルボードの製造方法は、支持面上に木材粒子の複数の層を形成し、その上に接着剤樹脂を塗布し、圧縮・硬化パネルを成形するために熱を使用してプレス機で処理された層を圧縮する。
パーティクルボードの分野における様々な改良が、特許第3055974号公報、特開2014―8617号公報、特開2002―36213号公報、および欧州特許出願公開第2777238号明細書に記載されている。さらなる複合材料は、米国特許出願公開第2013000248号明細書および米国特許出願公開第2003046772号明細書で開示されている。
【0006】
上記の層状構造は、剥離強度が不十分で、これは材料が応力下で裂けることを意味する。割れが生じると、接触表面積が増大し、さらに水を吸収しやすくなり、それにより物品の膨らみを悪化させる。
【0007】
上記から明らかなように、従来の圧縮木材製品は、水と接触する物品に使用するのには適していない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、水にさらされる可能性がある用途における構造部品または建築材料としての使用に適した新規な圧縮材料を提供することを目的とする。
【0009】
また、樹脂および木材粒子によって形成された圧縮物品を製造する方法を提供することも他の目的とする。
【0010】
本発明は、硬化した熱硬化ポリマーの連続マトリックスと、当該マトリックス中に分散した木材粒子とを有する複合材料によって形成される圧縮物品を提供するという概念に基づいている。木材粒子は少なくとも部分的に熱硬化ポリマーによって包まれている。
【0011】
本種類の物品は、室温で少なくとも168時間(1週間)にわたって水に浸漬したときの吸水性が1重量%未満であることが分かった。
【0012】
本種類の圧縮物品は、木材チップと未硬化の熱硬化性樹脂によって形成された液体とを混合して混合物を形成し、これを圧縮物品の外表面に対応する受け面を有する圧縮金型に移すことによって得ることができる。混合物は、樹脂を硬化させ、かつ、金型の受け面に対して形成された少なくとも1つの表面を有する圧縮物品を形成させながら、金型内で成形される。
【0013】
新規な圧縮物品は、湿気または水と接触する可能性がある構造物および物体に使用することができる。
【0014】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に記載された事項により特徴付けられる。
【0015】
本発明によりかなりの利点が得られる。したがって、驚くべきことに、物品の表面が壊れて物品の内部が露出しても、物品の吸水性が小さいことがわかった。結果として、本発明の物品は、材料の著しい膨潤を引き起こすことなく、開口部または穴を備えることができる。この圧縮成形物品を構成する材料の吸水性は、室温で1週間の水接触の後でさえも、概して1重量%未満である。
【0016】
一般的に、木材粒子は板状であり、そして例えば木材チップによって形成される。そのような粒子は、本発明の実施形態では、それらの形状および形態のため、成形中に金型の少なくとも外表面上で、相互に連結した3次元構造に自己組織化することができる。
【0017】
本発明に係る物品は、屋内または屋外用の家具製品および構造部品の製造において、台所および浴室用の備え付け備品において、ならびに、ボートおよび同様の船舶上(例えば船体の製造)において用途を見つけることができる圧縮物品の製造に用いられる。圧縮物品は良好な寸法安定性を有するので、壁や床のような表面を覆うためのタイルに成形することができる。
本発明の特定の実施形態に関するさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本文脈において、「木材チップ」という語は、より大きな木材片の切断または削り取りによって得られた木材の粒子を表す。「木材チップ」は、大きさや品質がさまざまであり、さまざまな供給元から入手できる。一般的には、丸太が原材料として使用されるが、他の供給源も使用することができ、未使用材料および再生材料の両方が使用できる。概して、本発明の粒子、例えばチップは、0.2から20mm、特に、0.3から10mmの範囲の篩い分けサイズを有する。したがって、例えば、使用される粒子、特に、チップは、製造される物品の寸法、特に、厚さに応じて、1から7.5mmの篩い分けサイズを有することができる。
【0019】
本文脈において、用語「圧縮物品」は、圧力によって平坦化、すなわち押しつぶされたり、またはプレス加工された物品を表す。
【0020】
「熱硬化性樹脂」は、「硬化」と呼ばれるプロセス中で、一般的には架橋することによって、不可逆的に不溶性ポリマーネットワークに変化して「熱硬化ポリマー」を形成するポリマー物質である。本文脈では、それ自体では室温で液体である、あるいは例えば溶媒の作用によって、室温で液相を形成することができる熱硬化性樹脂を提供することが好ましい。通常、熱硬化性樹脂はプレポリマーとして特徴付けることができ、プレポリマーはそれを硬化することによって得られる材料よりも低い分子量を有する。
【0021】
「室温」とは、10から30℃、特に、15から25℃の範囲の温度を表す。
【0022】
「硬化」は、しばしば加圧下での熱または適切な放射線の影響下、あるいは硬化剤の使用により、熱硬化性樹脂を、当該樹脂のポリマー物質の個々の鎖を架橋することによって、硬化した熱硬化材料(「熱硬化ポリマー」)に変換するプロセスである。
【0023】
硬化剤は一般的にはポリマー物質の鎖の架橋を達成する物質である。硬化剤の例としては、エポキシ基、アミン基、ビニル基およびアリル基、ならびにそれらの組み合わせの群から選択される反応基を含有する化合物が挙げられる。分子の主鎖に1つまたはいくつかの不飽和結合を有する不飽和化合物も硬化剤として使用することができる。そのような化合物は前述の種類の反応基を任意に有することができる。架橋プロセスとは無関係に、それは化学的に活性な部位で触媒によって促進することができる。
【0024】
「相対湿度」は、与えられた温度において、純水の平らな表面上の水の平衡蒸気圧に対する、空気と水の混合物中の水蒸気の分圧の比として定義される。相対湿度は通常、飽和蒸気圧に対する実際の水蒸気圧の比を表す百分率として表されるので、より高い百分率は空気-水の混合物がより湿っていることを意味する。
【0025】
上記から明らかなように、本技術による圧縮物品は、特に、少なくとも2つの成分、すなわち、熱硬化ポリマーおよび木材粒子の形態で提供される木材材料を含む複合材料によって形成される。圧縮物品では、熱硬化性樹脂は、熱硬化ポリマーに硬化した後、連続マトリックスを形成する。そのマトリックス内に分布しているのは、木材粒子、特に、木材チップまたは他の板状粒子の形態の木材粒子であり、それらは少なくとも部分的に熱硬化ポリマーによって包まれている。一般的には、圧縮物品のポリマー部分は、体積分率において、物品の30%以上、特に40から95%を形成する。特に圧縮物品のポリマー部分は、体積分率において物品の50%超、最大90%を形成する。
【0026】
本発明の一態様において、複合材料中に含まれる木材チップの量は、硬化した熱硬化ポリマーの100重量部当たり、1から60重量部、特に10から40重量部、例えば約25から35重量部であることである。
【0027】
熱硬化ポリマーマトリックス内の熱硬化ポリマーによって包まれている木材チップの体積は、体積分率にして少なくとも20%、特に30から100%である。
【0028】
この物品は吸水性が低い。特に、吸水性は、室温で少なくとも72時間以上、特に1週間(168時間)にわたる、例えば水中への浸漬などの、水との接触に対して、2重量%未満、1%重量未満でさえある。
【0029】
ある実施形態では、複合材料は、木材粒子、特に木材チップとマトリックスを形成している少なくとも一つの熱硬化ポリマーから実質的になり、該木材粒子は好ましくは完全にまたは部分的にポリマーマトリックス内に埋め込まれている。したがって、材料のうち95重量%超が上記の2つの成分によって形成される。
【0030】
別の実施形態では、複合材料はさらに他の成分を含有する。したがって、強度特性を増すフィラーが存在し得る。架橋により熱硬化樹脂の弾性を強化することが出来る硬化剤などの添加剤と共に、材料の機械的特性を改善するために、成形前に添加剤を混合物に添加することができる。
【0031】
圧縮物品を製造するためには、木材粒子と熱硬化性樹脂とを混合して混合物を得て、次いで混合物の圧縮中に樹脂を硬化させながら所定の形状にする。一般的に、混合物は成形面によって決まる形状を得る。混合物を成形するための1つの適切な方法は圧縮成形として知られている。
【0032】
したがって、一実施形態では、木材チップを熱硬化性樹脂と混合してポリマーチップ混合物を形成し、これを加圧下で成形し、任意により加熱して圧縮物品を形成する。混合物を形成するとき、木材チップを液相中に均一に分散するために、液体樹脂と木材チップとを十分に混合する。
【0033】
一実施形態では、木材チップは複合材料のポリマーマトリックス全体に分布している。一般的には、複合材料マトリックス内の個々の木材チップの大部分は、次いで熱硬化ポリマーで覆われ、そして好ましくは少なくとも部分的に含浸される。
【0034】
一実施形態では、上記実施形態のいずれかに係る物品を製造する方法は、木材チップと未硬化の熱硬化性樹脂によって形成される液体とを、1:100から60:100、例えば5:100から50:100の重量比でブレンドして均一な混合物を得る工程と、混合物を圧縮物品の外表面に対応する受け面を有する圧縮金型に移す工程と、前記金型内で混合物を成形し、受け面に対して形成された少なくとも1つの表面を有する圧縮物品を形成する工程とを含む。
【0035】
別の実施形態では、この方法は、木材チップと未硬化の熱硬化性樹脂によって形成される液体とを、10:100から40:100の重量比でブレンドして均一な混合物を得る工程と、混合物を圧縮金型に移す工程と、水の沸点より低い温度で、かつ、圧縮中にチップが熱硬化性樹脂内に相互に連結したチップの3次元構造を形成することを可能にする条件下で、混合物を前記金型中で成形する工程とを含む。
【0036】
圧縮材料の製造に使用される木材チップの選択は任意の種類のものから可能であるが、一般的には木材チップはそれぞれ1から7.5mmまたは0.5から5mmの範囲の篩い分けサイズを有する。木材チップの篩い分けサイズは、吸収される水の量および対応する木材チップの膨潤度に影響を及ぼし得る。
【0037】
一実施形態では、木材チップは、20重量%未満、特に18重量%未満、一般的には15重量%未満、例えば10重量%未満の含水量を有する。一実施形態では、木材チップは、8重量%未満、約0.1から5重量%といった、例えば約6重量%未満の含水量を有する。後述するように、木材チップは使用前に熱処理することができる。達成可能な他の効果に加えて、そのような処理もまたチップの湿度も低下させるだろう。
【0038】
本発明で使用することができる木材チップは任意の種類のものとすることができるが、好ましくは、針葉樹および落葉性木材チップ、ならびにそれらの組み合わせの群から選択される。特に、チップは多孔質である。一実施形態では、チップはアスペン、アルダーまたはマツまたはそれらの組み合わせのチップである。
【0039】
一般的に、チップは少なくとも部分的に樹脂によって包まれている。樹脂は液相で使用され、また、木質材料は通常、アスペン、ポプラまたはトウヒのチッピングによって得られるチップの場合のように多孔質であるので、チップの液体樹脂による少なくとも部分的な含浸は樹脂の最終硬化前に達成できる。
【0040】
木材チップを包む熱硬化ポリマーマトリックスは、硬化した熱硬化性樹脂を実質的に含む。樹脂は、ポリエステル樹脂など、任意の種類のものをとることができ、特に芳香族ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂または尿素ホルムアルデヒド樹脂またはメラミンホルムアルデヒド樹脂またはメラミン尿素ホルムアルデヒド樹脂などである。熱硬化性樹脂の組み合わせも同様に使用することができる。
【0041】
適切なポリエステル樹脂の例には、Basonat(登録商標)、Novolac(登録商標)、Polylite(登録商標)およびWaterpoxy(登録商標)の商標で市販されている製品が含まれる。
【0042】
熱硬化性樹脂はその性質を変える成分を含むことができる。その耐火性を改良するために、トリフェニルホスフェートおよび三酸化アンチモンのような無機物質を難燃添加剤として添加することができる。ハロゲン化二塩基酸および無水テトラクロロフタル酸、無水テトラブロモフタル酸といった酸無水物、ジブロモネオペンチルグリコールおよびテトラブロモビスフェノールAから選択されるモノマーをポリマーに組み込むことも可能である。そのようなモノマーは、無水フタル酸またはプロピレングリコールの代わりのモノマーとして任意に使用することができる。
【0043】
上述したように、硬化剤を樹脂と混合して硬化させることができる。したがって、樹脂100重量部を基準として、エポキシ基、アミン基、ビニル基およびアリル基とそれらの組み合わせの群から選択される硬化剤0.1から10重量部を、例えば添加することができる。
【0044】
さらに、硬化を開始または促進するために、触媒を添加することもできる。一実施形態は、例えば有機または無機過酸化物などのペルオキソ基を含有する促進剤の使用を提供する。特に、好ましい過酸化物化合物は、例えば有機溶媒中で樹脂または樹脂と任意の硬化剤との混合物に、場合により木材粒子の混合物の存在下で添加することができる溶液の形態で提供されるメチル(エチル)ケトンペルオキシドである。商業的に入手可能なMEKP製品の例は、Butanox、Chaloxyd、Di-Point、Kaymek、Ketonox、Lucidol、Luperox、Norox、PeroximonおよびSuperoxの商品名で市販されている製品を含む。
【0045】
前記触媒の添加により、室温で硬化を開始させることができ、または早くも達成することさえできる。一般的には、触媒は、任意の硬化剤と共に樹脂100重量部当たり0.1から5重量部で添加される。不飽和ポリエステル樹脂の場合、一般的には別個の硬化剤は必要とされず、過酸化物触媒の添加で硬化が達成される。
【0046】
一実施形態では、熱硬化性樹脂と木材粒子との混合物を室温での触媒活性化によって金型内で硬化させる方法が提供される。特に、一実施形態において、木材チップを、液体形態の不飽和ポリエステル樹脂および過酸化物硬化剤と室温で混合して混合物を形成する。
【0047】
別の実施形態では、熱硬化性樹脂と木材粒子との混合物を金型内で30から75℃の温度で硬化させる方法が提供される。
【0048】
上記実施形態は、混合物を圧縮金型に移し、そこで温度20から50℃および圧力約10から1000kN、一般的には50から750kNで圧縮して圧縮物品を形成することによって実施することができる。
【0049】
一実施形態によれば、圧縮材料は板状の木材チップを含み、成形が平坦な金型表面に対して行われるとき、板状チップは少なくとも部分的に重なり合って実質的に平坦な層を形成し、重なり合ったチップが相互に連結して材料内に三次元構造を与えるように材料内で組織化する。
【0050】
木質材料は、樹脂と混合する前に前処理することができる。従って、例えば、材料は熱変性を受けることができる。このような熱改質処理は、無垢材を、低酸素含有量の雰囲気中で数時間、200℃に近いか又はそれ以上、例えば150から250℃、特に170から240℃の温度にさらす点で共通している。この熱改質により、いくつかの機械的性質は低下するが、木材に外部の化学物質または殺生物剤を添加することなく、木材の寸法安定性および生物学的安定性は増加する。
【0051】
また、一般に、耐久性や、昆虫または真菌によって破壊されることに対する耐性を高める他の木材防腐剤も使用することができる。
【0052】
一実施形態では、樹脂は透明または半透明である。マトリックス中、又はマトリックスと共に埋め込まれた木材チップは、その後、外表面上において少なくとも0.25mm、特に少なくとも0.5mm、例えば少なくとも1mmの深さまで視覚的に識別可能である。これにより、圧縮物品の表面に三次元的外観が与えられる。
【0053】
本発明の一実施形態では、圧縮物品は1つまたは複数の予め選択された色で提供される。この色の選択は、木材チップと樹脂との溶液混合物を製造するプロセス中に行うことができる。木材チップは、熱硬化性樹脂とともに混合物に添加される前に、他の適切な方法で染色または着色されている。この実施形態では、木材チップの色が圧縮物品に予め選択された色の外観を与えるように、ひとたび硬化されたときに透明または半透明である熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0054】
本技術の実施形態は、水にさらされたときのポリマー木材複合材料の膨潤に関する従来の問題を解決する。本発明の圧縮材料の材料は水の吸収を著しく減少させ、それ故に材料の膨潤も減少させる。上記で指摘したように、本技術による物体を少なくとも室温で168時間以上の期間にわたって水中に浸漬したときの吸水性は、一般的には2重量%未満、特に1重量%未満、例えば0.8重量%未満である。この吸水性および木材チップの膨潤の減少は、この材料を通常は水と接触して置かれている建築材料として魅力的なものにし、それによってより広い工業的用途を与える。
【0055】
一実施形態では、圧縮物品は、0.5から100%の範囲内で変動する湿度において寸法安定性を有する。物品の寸法安定性は、物品が湿気にさらされたときの物品の構造健全性に関連する。構造健全性は、木材チップの膨張もしくは材料の割れ、または材料に対する他の構造的変化が参照され得る。
【0056】
一実施形態では、木材チップと混合される熱硬化性樹脂は、混合中既に、そして遅くとも成形プロセス中で木材チップがポリマーと接触するときに、少なくとも部分的に木材チップに浸透することができる。
【0057】
木材チップの密度はポリマー樹脂の密度よりも著しく小さい。これは、圧縮物品の全体の密度はポリマーマトリックスに添加される木材チップの量に応じて調整することができることを意味する。
【0058】
一実施形態では、圧縮物品は、純粋に硬化した熱硬化ポリマーのみでできている物品の密度よりも少なくとも1%、特に2から10%密度が小さい。この場合、上記物品はある体積を有し、各部分体積は、純粋に硬化した熱硬化ポリマーの密度よりも少なくとも5%、特に10から40%小さい上記物品の体積の少なくとも1%に達する。
この場合、上記物品はある体積を有し、上記物品の前記体積の少なくとも1%に達する各体積部分の密度は、純粋に硬化した熱硬化ポリマーの密度より少なくとも5%、特に10から40%小さい。
【0059】
本発明の実施形態では、物品の密度は通常約800から995kg/dm3の範囲内である。
【0060】
オープンモールド成形技術を使用することによって、3D(三次元)表面を作り出すことができる。表面の質感は、使われる木材チップのサイズに依存する。
【0061】
複合材料のための様々なコーティングを、上記に開示された実施形態の全てに対して使用することができる。コーティング材料は用途に応じて選択される。従って、例えば、衛生用品のように、様々な温度で水および攻撃性の低い化学物質にさらされる製品は、ゲルコートで被覆することができる。そのようなゲルコートは、イソフタル酸/ネオペンチルグリコールポリエステル樹脂をベースとすることができる。そのようなゲルコートは、良好な耐薬品性を有する透明な表面を与えるだろう。一般的には、例えばゲルコートなどのコーティングは、約0.1から10mm、特に約0.2から5mm、例えば0.25から3mmの厚さを有するだろう。
【0062】
以下の実施例は説明のために提示されたものであり、本出願の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0063】
実施例1
【0064】
30重量部の木材チップ(篩い分けサイズ1から3mm)および過酸化物硬化剤で活性化された70重量部の未硬化不飽和ポリエステル樹脂を混合して均一な混合物を形成した。樹脂溶液に木材チップを添加する前に、ポリエステル樹脂と硬化剤を混合した。混合物をミキサーで完全に混合して成分の均一な分布を得た。次に混合物を圧縮三次元金型に移した。次いで、混合物を40℃の温度で少なくとも500kNの圧力で圧縮し、それにより樹脂が硬化し、そして滑らかな表面を有する圧縮物品が形成された。製品の密度は約950kg/m3だった。
【0065】
圧縮成形品を秤量し、25℃の温度の水浴中に浸漬した。168時間後、物品を水浴から取り出し、この試料の表面を乾燥させ、次いで秤量した。重さの増加は0.2重量%未満だった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本物品は広範囲の用途を有する。特に、水との連続的または時折の接触にさらされる構造物において使用することができる。したがって、この物品は屋外用途だけでなく、屋内用の家具製品にも使用することができる。台所および浴室用の据え付け備品で使用することができる。例としては、流し台、タイル、浴槽、小便器および他の類似の配管器具が挙げられる。本発明の物品はまた、海洋構造物において、ボートおよび同様の船舶上で、船体または甲板の一部として、使用することができる。
先行技術文献
特許文献
特許第3055974号公報
特開2014―8617号公報
特開2002―36213号公報
欧州特許出願公開第2777238号明細書
米国特許出願公開第2013000248号明細書
米国特許出願公開第2003046772号明細書