IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーガン テクノロジー エーエスの特許一覧

特許7153366エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール
<>
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図1
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図2
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図3
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図4
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図5
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図6
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図7
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図8
  • 特許-エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵のための大規模フライホイール
(51)【国際特許分類】
   F03G 3/08 20060101AFI20221006BHJP
   F16H 33/02 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F03G3/08 A
F03G3/08 D
F16H33/02 A
H02J15/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020566191
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 NO2018050040
(87)【国際公開番号】W WO2019160422
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】520308352
【氏名又は名称】バーガン テクノロジー エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バーガン,パル ジー.
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-076248(JP,A)
【文献】特開昭55-153242(JP,A)
【文献】特開昭57-020573(JP,A)
【文献】特開平11-201259(JP,A)
【文献】特開2000-346073(JP,A)
【文献】特開2003-274562(JP,A)
【文献】特開2004-340939(JP,A)
【文献】特開2005-048829(JP,A)
【文献】特開2011-239634(JP,A)
【文献】実開昭49-132354(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02492528(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013209299(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/08
F16C 32/05
F16H 33/02
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ、ハウジングエンクロージャ、電気エネルギーを前記回転ロータに貯蔵される運動エネルギーに移動させることによってエネルギーを蓄積するための手段、および前記回転ロータに貯蔵された運動エネルギーを電気エネルギーに移動させることによってエネルギーを放出するための手段を備えるエネルギー貯蔵のためのフライホイールであって、
前記ロータは垂直に配向され、
前記ロータは5000kg超の質量を有し、
前記ロータは中心垂直シャフトを備え、
半径方向軸受は、前記垂直シャフトの上端に配置され、
前記ロータの円筒部分の端部がその中に嵌合される液圧流体で充填された円筒チャンバからなる軸方向-半径方向軸受は、前記垂直シャフトの下端に配置され、
前記フライホイールは、
前記シャフトから放射状に伸びる前記ロータの中間部であって、前記中間部は、下側に下向きのロータ支持ブロックを備える、中間部と、
前記ロータ支持ブロックが下部支持ブロックによって支持される載置方式で、前記ロータを受け取るように適合された、前記ハウジングエンクロージャの内側の円錐下部構造セクションと、
をさらに備える
ことを特徴とする、フライホイール。
【請求項2】
前記ロータの下端に配置された液圧軸方向-半径方向軸受を備え、前記軸受は、前記ロータの下端がその中に嵌合するピストンシリンダを備えるか、または前記ロータの下端は、支持シャフト上へ嵌合する逆ピストンチャンバを備え、前記軸受は、液圧流体、および前記シャフトと軸受との間の密閉容積中の液圧流体を加圧する手段を備え、前記ロータの重量は、加圧された液圧流体によって支持される、請求項1に記載のフライホイール。
【請求項3】
前記ロータの中間部は、同軸シェル鋼シリンダおよび放射状鋼外装、およびその間に硬化コンクリートのフィラー材を備える複合構造を備え、前記フィラー材は、前記円筒ロータ構造中に流し込まれかつ硬化されている、請求項1または2に記載のフライホイール。
【請求項4】
前記ロータは、前記ロータの回転の釣り合いを取るための可能な質量調節の目的を果たす一連のチャネルを備える、請求項1、2または3に記載のフライホイール。
【請求項5】
前記液圧軸方向-半径方向軸受は、前記ロータを動作モード位置に持ち上げるか、または前記ロータを載置モードに下げるための、液圧リフト機能、液圧流体膨張タンク、および液圧ポンプを備える、請求項1または2に記載のフライホイール。
【請求項6】
前記ロータシャフト支持軸受の半球状下端、および下層支持構造中の一致する半球状凹面を備える、請求項1、2、または5に記載のフライホイール。
【請求項7】
目的に適した任意の種類の統合または結合されたモータ-発電機の組み合わせ、または別個のモータおよび別個の発電機を備える、請求項1に記載のフライホイール。
【請求項8】
前記ロータは、永久磁石または電磁デバイスを備える、請求項1に記載のフライホイール。
【請求項9】
前記ロータの構造上の主要荷重支持部分が、いくつかの予め作製された部品から現場で組み立てられ、その後、フィラー材が、前記構造上の主要荷重支持部分のボイド内に段階的に打設されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフライホイールを建造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵に関する。より具体的には、発明は、エネルギーが回転運動エネルギーの形態で貯蔵される貯蔵設備、エネルギーを貯蔵および抽出する方法のためのシステム、およびそれを建造するための方法、それを動作させ、摩耗部品を交換するための方法、および貯蔵設備の全体的な使用に関する。貯蔵設備の主要構成要素は、ロータ、ロータのための支持システム、電力の入出力のための電気モータおよび発電機、ならびに低摩擦支持を提供し、システムの構築、動作、および修理を可能とするための液圧系を備える。このすべては、圧力および全ガス条件が制御されるチャンバ中に収容される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景および先行技術
フライホイール型エネルギー貯蔵設備は、電力システムの周波数および電流を安定化し、そのようなシステムから来るエネルギーを貯蔵し、需要に応じて電力に戻して送達するたに使用され得る。
【0003】
フライホイールの機構は、数百年にわたって知られており、そのようなデバイスは、機械、ジャイロなどの機械的安定化システム、および運動エネルギー貯蔵に広く使用されている。エネルギー貯蔵に関して言えば、エネルギーを急速にためかつ送り出す能力自体は、望ましい性質である。加えて、フライホイールシステムは、貯蔵されるエネルギーを増加させる機械的入力に電気モータによって変換される、電力入力も含んでよい。同様に、システムは、所望の用途のために送達される電力出力用の発電機を含み得る。さらに、送電網と統合されると、貯蔵設備は、そのようなグリッドシステムにおける周波数および電圧を安定化するため、ならびに突然の電力ギャップを埋めるためにも使用されてよい。
【0004】
フライホイールエネルギー貯蔵に関連する一連の課題が存在する。まず第1に、ロータと支持システムとの間およびロータから周囲大気への摩擦のため、避けられないエネルギー損失が存在する。したがって、ロータの支持状態は、摩擦からのエネルギー損失に関する決定的な設計要素となる。別の一般的な問題は、質量分布の不完全性およびジオメトリのずれであり、それらは、振動および機械的摩耗をもたらし得る。そのような不要な動作は、しばしば「揺動」と呼ばれる。さらに別の問題は、ロータが爆発的な方法で故障し、それによる大量の回転運動エネルギーおよび静的弾性エネルギーの解放をもたらし得る、高遠心力に起因する安全性の問題である。ロータ故障のリスクの結果として、フライホイールは、典型的には、非常に強固な囲みシェル構造中に収容される。
【0005】
フライホイールのロータは、典型的には、強固なロータ軸の周りに建造された軸対称ジオメトリの質量を有する。そのような物体に貯蔵される運動エネルギーは、以下によって定義される。
【数1】
式中、eは単位体積当たりの運動エネルギーであり、ωは角速度であり、ρは質量密度であり、Vは回転体の全体積を示す。もっとも単純な場合では、これは、中心軸の周りに回転する一様円筒であってよい。外半径Rおよび高さHを有するそのような円筒に貯蔵されるエネルギーは以下によって表される:
【数2】
この方程式から学ぶことは、物体半径および角周波数が、貯蔵されるエネルギーに関する決定因子であるということである。さらに、エネルギーを全質量で割ると、単位質量当たりの平均エネルギー含有量(Nm/kg=Ws/kg)が得られる:
【数3】
エネルギー含量を考慮する場合、回転体が受ける応力付与の量を考慮に入れることも極めて重要である。回転質量に作用する遠心力は以下によって得られる。
【数4】
式中、tは時間を示し、θは回転角である。最も強い物体力は、最大半径Rで生じる。機械的に、遠心物体力は、半径方向応力σおよびフープ(環)応力σθの組み合わせによって対抗されなければならない。特定の材料および設計に依存して、解析解または数値解法によって解かれてよい、微分方程式を成立させることが可能である。ここでは、半径方向応力境界条件はσ=0であり、物体力は、以下
【数5】
によって得られるフープ応力のみで得られなければならないため、回転体の外繊維が、応力に関して最も決定的であることを指摘すれば十分である。
この方程式を、方程式(3)と組み合わせると、エネルギー密度は、質量密度ρで割った、外繊応力σθに対する許容応力σによって支配されることがわかる。
【数6】
この特定の方程式が、現在までのところ、最も高い可能なエネルギー密度を実現するために、重量に対して最も高い可能な強度σを有する材料強度の探索によって支配されてきたフライホイール開発の基礎を形成すると考えられてよい。kは、回転体の形状に関連する補正係数である。方程式(3)および(5)からわかるように、kは、緻密円筒では1/4である。
【0006】
フライホイールの原理はよく知られているため、フライホイールを扱うたいていの特許は、上述のようなフライホイール技術の特に問題となる部分の解決に集中している。これは、例えば、摩擦の量を低減する新規の種類の支持システムに関するものであってよい。このカテゴリに属する、ロータが強い磁場中で「浮上」することを可能とする技術が、近年、開発されてきた。さらに、極めて高い引張強度を有する材料の開発に、多くの研究および努力が費やされており、この代表的な開発は、高強度炭素繊維、グラフェン、およびナノチューブの使用である。言うまでもなく、フライホイールに貯蔵される全エネルギーは、方程式(3)からわかるように、角周波数の2乗の関数でもあり、したがって、暗黙のゴールは、極めて高い角速度(周波数)での回転を可能とすることである。残念ながら、極めて高い強度特性を有する材料で作られた高速度のフライホイールは、それに応じて、並外れて高価になる傾向がある。
【0007】
送電網環境に実装されているフライホイール貯蔵設備の少数の例が存在する。世界最大のフライホイール設備は、Beacon Energyによって製造された200のフライホイールの「電池」が、急な需要に応じて20MWの電力を送達することができる、米国、ステファンズタウンにある。このまたは他のフライホイール設備の主目的は、周波数および電力調整を提供することであり、したがって、それらの性能は、貯蔵されるエネルギーの観点からではなく、有効値(W)で主に評価される。各ユニットは、真空チャンバ中に密閉され、毎分8,000~16,000回転(rpm)で回転する高性能ロータアセンブリを有する。そのような速度では、真空は、摩擦を低減するために不可欠である。損失をさらに低減するためには、ロータを、永久磁石および電磁軸受の組み合わせで浮上させる。16,000rpm(ω=毎秒1700ラジアン)では、各フライホイールは、原理上、25kWhの抽出可能エネルギーを貯蔵および提供することができる。これは、そのようなシステムの全貯蔵エネルギー容量は、グリッドスケールのエネルギー環境から見れば、むしろ限られることを意味する。
【0008】
近年、いくつかの、電池および機械フライホイールを組み合わせた「ハイブリッド」設備が開発されている。
【0009】
現在の技術水準を見ると、フライホイール技術が、完全に大規模エネルギー貯蔵の役割を果たし得る段階まで開発されていないことは明らかと思われる。これまでの商用設備への道のりは、単一の大きいフライホイールではなく、高エネルギー密度および高性能材料の概念に基づいた、一連の、むしろ小さいフライホイールを動作させることであった。この1つの例外は、カナダ、オンタリオで稼働中の比較的大きいグリッド接続フライホイールである。この事例では、ロータは、水平に据え付けられ、緻密な高強度鋼からなる。電力定格は2MWであるが、主な機能は、この事例でも、貯蔵設備からの予備エネルギーの提供ではなく、周波数調整である。電力は、ロータに、放出中は発電機としても使用される電気モータを介して伝達される。
【0010】
フライホイールに関する特許および特許出願の例は、EP 1446860 “Flywheel energy storage systems”であり、フライホイールおよびモータ/発電機システムの組み合わせが、軸受け荷重を最小限にし、したがってシステムの寿命、信頼性、および安全性を増加させるために設計されている。特許US 20110298293 “Flywheel energy system”は、ロータの重量の一部を支え、それによりフライホイールの重量の著しく多くの部分を支持する磁気軸受アセンブリに注目している。US 8134264 “Large capacity hollow-type flywheel energy storage device”では、目的は、フライホイールとともに回転可能であるように真空チャンバ中に配置された中空シャフトによって摩擦を低減することである。特許CN 201543648 “Energy storage large flywheel device”は、継目無鋼管の製造の安定化に使用されるフライホイールの特定の使用に関し、したがって、具体的には、エネルギー貯蔵のためのフライホイールの使用に関したものではない。特許CN 103066741 “Hundred-megawatt level heavy type flywheel energy storage system based on gas magnetic fluid float cylinder suspension”は、エアクッション、磁気懸架、および流体浮遊円筒の組み合わせで懸架される流体フロータ円筒を有するフライホイールについて記載している。特許は、貯蔵されたエネルギーではなく有効値の尺度である100MWの性能、および毎分100000回転(rpm)までのロータ回転速度の可能性を有すると主張する。言うまでもなく、そのような回転速度は、あらゆる種類の材料で作られたあらゆる大きいロータが耐えられるものを、はるかに超えている。言及すべき別の事例は、特許US 20120096984 A1であり、これは、具体的には、ロータの揺動の安定化および軽減の問題に取り組む。
【0011】
先行技術に記載されたどの解決策も、非常に大規模のエネルギー貯蔵に対する現実的な解決策を提供することができないことは明らかであり、「大規模」とは、貯蔵されるエネルギーがMW時以上のオーダーであることを意味する。特定の特徴は、明らかに、すべてのフライホイール貯蔵設備に共通しており、それらは、ロータシャフトに接続されたロータ質量からなり、電気モータによって蓄積し、逆に、発電機によって電気の形態のエネルギーを放出するためのデバイスを有する。後者は、事実上、エネルギーに関して逆のモードで動作するモータと同じ構成要素であってよい。明らかに、主な問題は、支持システム内および周囲ガスまたは大気への摩擦を通じたエネルギー損失を低減することである。一般に広く使用される手法は、ロータの周りに真空条件を提供することによって表面摩擦を低減することである。さらに、磁気浮上の使用は、軸受の摩擦を低減するのに一般に使用される。残念ながら、磁気浮上は、非常に重いロータ質量を浮上させるようにスケールアップしない。大きさの規模の問題はまた、現在の開発の多くが、非常に高い回転周波数の間、単位質量当たり高いエネルギーを送達し得る、高強度材料を使用した比較的小さいフライホイールに集中していることに反映されている。これらの理由から、従来のフライホイール技術は主に、必要な時に使用するために長時間にわたってタイムシフトされ得る著しい量のエネルギーを貯蔵するよりも、むしろ周波数および電圧調整のためのエネルギーの噴出(大きい有効値)を送達するのに向いている。
【0012】
本革新は、単一のフライホイールに可能な限り多くの全運動エネルギーEを貯蔵することを可能とする狙いを有する正反対の手法を取り、一方、エネルギー密度自体は特に高くない場合がある。したがって、大規模または「グリッドスケール」のエネルギー貯蔵を、単一または限られた数のフライホイールで得ることができる。非常に高価な高強度材料の使用を狙うのではなく、本発明は、安価な材料で非常に大きいロータ質量を使用することを提唱する。明らかに、そのような手法は、解決されなければならない一連の新たな問題をもたらす。1つのそのような問題は、ロータの重量が非常に大いため、予め作製、輸送、および現場での据え付けができないことである。これは、ロータが、周囲のフライホイール構造内で、現場で組み立てられて完成しなければならないことを意味する。別の課題は、支持および非常に重いロータの回転に関連する摩擦を最小限にする、新規の発明のステップを提供することである。第3に、ロータを制御された方法で停止し、摩耗を受ける支持部品を交換する必要があることを想定しなければならない。最後に、不安定性および揺動を回避するための、ロータの質量釣り合わせを可能とすべきである。ロータが重すぎて持ち上げられない場合に、このすべてを行う方法を見出すことを探求する。その結果、発明は、これらの問題の組み合わせのすべてに対する完全な解決策についても記載する。
【0013】
エネルギー貯蔵技術の他の部分は、電力を機械エネルギーに移動させ(電気モータ)、エネルギー放出中は電気に再び戻すことに関する。これらの問題は、現在の技術水準から容易に入手可能な方法および手段によって実装され得る。2つの主な手法が実行可能であり、一方は、フライホイールロータ全体を、電磁モータおよび発電機のロータとして直接使用することによる。別の手法は、フライホイールロータと機械的に接続され得る1つまたはいくつかの別個のモータ-発電機ユニットを有することである。
【0014】
本発明のいくつかの特徴および考察
本発明は、非常に大きいエネルギー貯蔵フライホイールに関する問題に対する、現実的かつ実用的な、新規解決策を提供する。さらに、本革新は、周波数および電圧調整を超える、フライホイール貯蔵設備の完全に新規な役割を提供する。本発明の目的は、配電網から、または直接発電デバイスから、非常に大規模の電気エネルギーを貯蔵し、このエネルギーを、非常に高い効率で電気として戻すことができることである。回転円筒について、貯蔵されるエネルギーは半径の4乗の関数であり、重量に関連する支持摩擦は半径の2乗の関数であるため、ホイールの大きさは、相対摩擦損失に対して有益な効果を有する。外壁表面摩擦は、半径、したがって表面積に対して直線的にのみ増加する。さらに、表面摩擦は、高性能材料および極めて高い回転速度RPMを有するより小さいフライホイールと比較して、本発明では比較的低い、表面速度に依存する。このすべては、大きいロータシステムが、非常に高速の小さい軽量ロータのものより、貯蔵モードではるかに低い相対摩擦エネルギー損失を有するであろうことを示した。
【0015】
本発明は、容易に入手可能な、環境に優しい材料のみを使用して実現され得る。この点において、電気エネルギーを貯蔵する最も一般的な方法、すなわち、限られた資源である希土類材料、ならびに安全性および環境の観点から問題があり、リサイクルが難しい、リチウムおよび電解質などの材料の両方を一般に使用する電池に比べて、大きな利点を提供する。発明はまた、他のエネルギー貯蔵解決策と比較して、費用に関して実用上の大きな利点を有し、許容される地盤条件であれば、ほとんどどこにでも建造することができる。最適な方法で主要な配電網と接続され得、これは、大きな中央貯蔵設備、または供給源もしくはユーザに近い分散貯蔵設備であってよい。明らかに、発明は、集合型風力発電所および主要太陽光発電設備などの再生可能エネルギー源の、より良好な利用およびより信頼性の高い使用を可能とする。
【0016】
本発明の重要な部分は、ロータの重量が、液圧流体の上に載置されているピストンによって完全に支えられることである。そのような流体は、たいていの場合、非圧縮性ニュートン流体の油型のものである。ニュートン流体とは、粘度が圧力に影響されない流体を意味し、粘性せん断応力τは、ニュートン方程式
【数7】
によって定義され、せん断応力τは、粘性係数μおよびy方向の速度vの勾配に比例する。明らかに、せん断応力は、y方向に垂直な平面内で生じる。
ニュートン方程式は、いわゆる表面摩擦抗力を決定するための基礎を形成し、表面摩擦抗力は、慣例上、
【数8】
によって得られ、式中、Cは、レイノルズ数Rの平方根に逆に依存する表面摩擦係数である。Rは、流体の表面速度、ジオメトリ、および動粘性係数に依存する。動粘性係数は、粘性係数に似ているが、質量密度で割ったものである。ここの物理学は、ロータピストンとそれが載置される流体との間の摩擦損失を決定するため、本発明の重要な基礎である。ロータは大きく、比較的遅い角速度ωを有するため、ピストンの接触面での回転速度は、非常に低いであろう。流体接触面での回転速度は、ロータ軸からの半径方向距離rに正比例することにも留意されたい。ピストンは、ロータよりはるかに小さい直径を有するため、これは、軸付近では摩擦がないも同然であり、ピストンの外リムでも摩擦は非常に低いであろうことを意味する。とりわけ、表面摩擦では、圧力による摩擦への影響はない。特にこれは、摩擦力が接触圧力に正比例する、いわゆる乾燥摩擦(クーロン摩擦)と非常に異なる。
【0017】
さらなるコメントは、液圧流体は、最適な粘度および耐摩耗性に基づいて選ばれるべきであるというものである。最適な粘度とは、一方では、低粘度を有することによって摩擦を低減し、他方では、高粘度を有することによってピストンチャンバからの漏出を低減することの間に釣り合いが存在することを意味する。
【0018】
非常に大きいフライホイールについて言及すべき、1つのさらなる問題が存在し、これは、回転ロータの非常に大きい回転運動量(ベクトル量)の方向変化に関連する力の検討である。ある程度まで、大きいフライホイールは、配置される局所表面の動きに合わせてその回転軸の方向が強制的に変化する、大きいジャイロスコープであると見なされてよい。この地球の24時間の回転サイクルは、上下の機械的支持を通して回転軸上に加えられるモーメントを生じさせる。この強制モーメントは、いわゆる「コリオリの力」に関連し、地表上の位置、ならびにロータの慣性モーメントおよび角速度に基づいて計算され得る。この計算から、関連する、横方向に作用する軸上の接触力、および可能な摩耗条件が、設計され得る。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、ロータ、ハウジングエンクロージャ、電気エネルギーを回転ロータに貯蔵される運動エネルギーに移動させることによってエネルギーを蓄積するための手段、および回転ロータに貯蔵された運動エネルギーを電気エネルギーに移動させることによってエネルギーを放出するための手段を備える、エネルギー貯蔵のためのフライホイールを提供する。
【0020】
フライホイールは、
ロータは垂直に配向され、
ロータは5000kg超の質量を有し、
ロータは中心垂直シャフトを備え、
半径方向軸受は、垂直シャフトの上端に配置され、
円筒シャフトの端部がその中に嵌合される液圧流体で充填された円筒チャンバからなる軸方向-半径方向軸受、または別個の軸方向軸受および半径方向軸受は、垂直シャフトの下端に配置される
という点で区別される。
【0021】
好ましい実施形態は、従属項および説明に記載および定義され、図に示されるような特徴を備え、その特徴は、任意の実施用の組み合わせ(operative combination)で組み合わされ得、各々のそのような実施用の組み合わせは、本発明のフライホイールの実施形態である。
【0022】
フライホイールは、好ましくは、ロータの下端に配置された液圧軸方向-半径方向軸受を備え、軸受は、ロータの下端がその中に嵌合するピストンシリンダを備えるか、またはロータの下端は、支持シャフト上へ嵌合する逆ピストンチャンバを備え、軸受は、液圧流体、およびシャフトと軸受との間の密閉容積中の液圧流体を加圧する手段を備え、ロータの重量は、加圧された液圧流体によって支持される。
【0023】
好ましくは、ロータの中間部は、複合構造を備え、同軸シェルシリンダおよび放射状鋼外装を備え、シリンダおよび外装は好ましくは鋼製であり、その間にフィラー材があり、フィラーは、好ましくは、円筒ロータ構造中に流し込まれかつ硬化された硬化コンクリートである。
【0024】
好ましくは、ロータは、ロータの回転の釣り合いを取るための可能な質量調節の目的を果たす一連のチャネルを備える。
【0025】
フライホイールは、好ましくは、
シャフトから放射状に伸びるロータの中間部であって、下側に下向きのショルダーを備える、中間部と、
ロータのショルダーが台座によって支持される載置方式で、ロータを受け取るように適合されたハウジングエンクロージャの内側の台座と
を備える。
【0026】
好ましくは、液圧軸方向-半径方向軸受は、ロータを動作モード位置に持ち上げるか、またはロータを載置モードに下げるための、液圧リフト機能、液圧流体膨張タンク、および液圧ポンプを備える。
【0027】
フライホイールは、好ましくは、ロータシャフト支持軸受の半球状下端、および下層支持構造中の一致する半球状凹面を備える。
【0028】
フライホイールは、好ましくは、目的に適した任意の種類の統合または結合されたモータ-発電機の組み合わせ、または別個のモータおよび別個の発電機を備える。
【0029】
好ましくは、ロータは、永久磁石または電磁デバイスを備える。
【0030】
本発明のフライホイールは、以下の特徴:
大型ロータは、5000kg超の質量を有し、予め組み立てられてよいか、または現場で組み立てられて完成してよいこと、
ロータ設計は、すべてが溶接または他の接続方法によって相互接続された、完成した円筒エンクロージャ、平面垂直放射状パネル、および水平パネルを提供する、軸対称かつ多層のパネルで主耐荷材が配置される、フィラー材と組み合わされた鋼または他の好適な高強度材料製の高強度耐荷重構造からなり、フィラー材は耐荷重構造のボイドを充填すること、
ロータは、その中心位置の強固な円筒金属シャフトとともに配置され、下部および上部支持システムとの接続を提供すること、
シャフトの下部は、下部支持システムのピストンチャンバ内に緊密に嵌合するピストンとして成形されること、
回転中、ロータ全体の重量とともにピストンがその上に載置される液圧耐荷重および潤滑流体が、ピストンチャンバ中に存在すること、
圧力がロータの重量と一致し、漏出した液圧流体が再循環され、圧力が圧力ポンプシステムによって維持される、加圧液圧システムが存在すること、
ロータ全体は、液圧ピストンチャンバ中の流体の量を低減し、膨張タンク中に移動させることによって載置位置に下げられ得、それにより、下部および上部支持体中の摩耗を受ける部品の除去および交換を容易にすること、
ピストン、ピストンブロック、中間ブロック、および基部ブロックの間のパラメトリック幾何学的関係は、そのような交換が行われてよいようなものであること、
外部電源を介して、電気を、増加した運動エネルギーの形態でロータに貯蔵される機械的動力に変換し、逆に、ロータからの運動エネルギーを、必要な時に外部での使用に利用可能となる電力に再変換し得る、1つまたはいくつかの電磁モータ-発電機デバイスが存在すること、
ロータは、ロータ釣り合いシステムの一部として、質量調節構成要素で充填され得る直径方向に対向したボイドを有すること、
ピストンおよびピストンブロックは、交換され得る部品を有すること、
ピストンは、シールリングを有する1つまたはいくつかの溝を有してよいこと、
ピストンは、ピストンチャンバの内側に追加の縁部シールリングを有してよいこと、
貯蔵設備に運動エネルギーを蓄積および放出するための別個の電磁-機械デバイスが存在してよいこと、
回転デバイスの停止状態からの追加の始動装置、
ロータおよび支持システム全体は、着脱可能な上部蓋を有する気密チャンバ中に囲まれること、
圧力を非常に低いレベルに低減する能力を含む、湿度、ガス圧、およびガス組成に関して、密閉チャンバ中の空気またはガス環境を制御するシステム、
検査および修理のために、フライホイールチャンバへのアクセスを可能とする密閉入口、
上部横方向支持システムの軸受部品は交換されてよいこと、
載置台座に緊急接地した場合に支持部品を冷却するための、リムの外側の支持システム用冷却システム、
様々な種類のセンサを用いて貯蔵設備の全体的な動作および状態を監視し、エネルギー蓄積および放出の様々な段階を作動させるのに使用される、電子制御システム、
全エネルギー貯蔵システムは、2つ以上のフライホイールからなり、このフライホイールのバッテリは、排気システム、電気の変圧および周波数調整、作動制御システム、監視および安全システムなどの、1つまたはいくつかの動作機能を共有してよいこと、
発明は、ロータの構造上の主要荷重支持部分が、いくつかの予め作製された部品から現場で組み立てられ、その後、フィラー材が、この耐荷重構造のボイド内に段階的に打設される建造方法も含むこと
の1つ以上を、任意の実施用の組み合わせで含む。
【0031】
好ましい実施形態では、例えば重量100メートルトン超の非常に重いロータとともに、フライホイールは、ロータの垂直シャフトを支持する液圧軸方向軸受または液圧軸方向-半径方向軸受を備える。代替実施形態では、例えば重量100メートルトン未満のより低重量のロータとともに、発明は、機械軸受、または磁気軸受、または全体的な性能を向上させ得る他の特徴を有することと組み合わされ得る。
【0032】
発明のフライホイールのロータは重く、少なくとも5000kgの重量であり、7メートルトン、10、20、50、100、500、100、2000、6000、10000もしくは20000メートルトンなどの任意の他の質量、またはこの範囲の任意の重量で例示され得る。
【0033】
フライホイールのロータの回転速度は、蓄積および放出中、エネルギーの動的貯蔵によって変動する。ロータが耐え得る最高回転速度は、ロータの材料、質量、大きさ、およびジオメトリに依存し、その例は、最高6000rpm、または5000、3000、2000、1000、500、100、50、もしくは30rpm、またはこの範囲の任意の数である。
【0034】
本発明の核となる概念を理解するために、上記特徴は技術水準による教示と比較されなければならない。上述のように、方程式(1)から、全エネルギーは、角周波数の2乗の関数ならびに質量分布およびジオメトリの関数である。さらに、フライホイール「効率」の尺度は、方程式(6)で定義される最大エネルギー密度であり、これは、材料の最大許容応力をその密度で割った関数である。これらの特徴を組み合わせることによって、現在の技術水準のフライホイールの目的は、フライホイールが、その材料密度に対して非常に高い応力に耐え得る材料で可能な限り速く回転する解決策を提供することであった。そのような手法による、考慮されるべき関連する欠点が存在する。第1に、摩擦の問題が、高速度で非常に大きくなる。したがって、磁気浮上および真空チャンバのような低摩擦懸架が、大いに注目されている。さらに、高エネルギー密度は、材料の故障を「爆発的な」ものにする。さらに、高い強度対質量比を有する高性能材料は、極めて高価である。全体的な結果として、現在の技術水準のフライホイールは、大きさが比較的小さく、大規模エネルギー貯蔵デバイスのような経済的な競争力がなく、むしろ送電網の周波数および電流調整に使用される。したがって、経済的な競争力のある価格水準の大規模エネルギー貯蔵を提供し得る新規フライホイール技術の開発において、主要な課題が残っている。これが、完全に新規かつ異なったフライホイール設計方法を導入する本発明の全体的な目的である。
【0035】
本発明は、非常に大きいフライホイールに関連する上述の問題のすべてに対して有益である。
【0036】
発明は、電源から来る大量のエネルギーを運動エネルギーの形態で移動および貯蔵し、その後、これを必要な時に電気エネルギーに戻して送達する方法を提供する。システムは、大規模エネルギー貯蔵設備、ならびに送電網環境において周波数および電圧を安定化する電力を提供する手段の両方の役割を果たし得る。
【0037】
本発明は、電力の受け取りおよび送達に基づく運動エネルギーフライホイール型エネルギー貯蔵システムを提供し、主要構成要素は以下の通りである:
1.フライホイールシステム全体によって加えられる静的および動的力を長期にわたって受け、耐えるのに十分に強固な基礎および基礎構造
2.原理上、システムの全体的なエネルギー貯蔵目的を果たす大きさに拡張可能な回転ロータ
3.耐荷重構造自体およびその間の任意の塊状またはフィラー型材料に関連する静的および動的遠心力を支えるために必要な強度を提供するロータ内の構造システム
4.ロータを下部および上部支持構造と接続する、ロータを通る垂直シャフト。シャフトの下部は、下部支持軸受内の回転ピストンとして形成される。
5.ピストンのための下部支持軸受は、ロータの重量を支えるための非常に低摩擦の耐荷重能力を提供する。ピストンは、ロータの重量で、ピストンの周りおよび下の流体充填チャンバ内に収容される液圧流体を加圧する。さらに、ピストンおよび液圧流体を含むチャンバは、流体をチャンバに圧送するか、またはチャンバから抜き出すことによってロータのピストンを昇降する液圧システムの役割を果たす。
6.ロータを所望の高さレベルに保ち、液圧チャンバから漏出した液圧流体を再循環し得るポンプシステムを有する高圧液圧システム
7.整備手順の一部として、上述の支持体の交換または修理を可能とするように除去され得る下層ディスク構造
8.回転シャフトを所定の位置に保ち、ロータ全体の昇降を可能とする上部支持システム。また、このシステムは、摩耗のため交換されてよい。
9.回転モード時はロータと接触していないが、動作または整備のブレーキ状態中である載置状態時は、リムに沿って支持を提供し、ロータ全体の重量に耐え得る載置支持システム
10.作製の不完全性のため初期状態でロータ内に存在する場合があり、質量不均衡による振動または揺動をもたらし得る任意の質量分布不均等の補償を可能とする質量分布修正能力
11.電力をロータの運動エネルギーに移動させ得る電気モータシステム
12.回転ロータからの運動エネルギーを電気に逆移動させ得る発電機システム。モータおよび発電機システムは、同じであってよい。
13.フライホイールチャンバを周囲大気から完全に分離および密閉し、フライホイールチャンバ中の空気/ガスと外部大気と間の圧力差に耐えるため、ならびにロータの部品が故障および離脱した場合の安全障壁を提供するのに必要な強度を提供するために十分に強固な、エンクロージャ
14.フライホイールチャンバ中の空気またはガスを、回転表面摩擦を低減するために真空に近い条件の可能性を含む組成および圧力に関する所望の条件に保つ、空気またはガス制御システム
15.フライホイールシステムの動作および性能を監視および制御するためのシステム。このシステムは、様々な種類の制御デバイスおよび監視デバイスを含んでよい。
16.検査および修理作業中に使用されるフライホイールチャンバへのアクセスまたは侵入システム。そのようなアクセス路は、密閉ドアおよびトンネルの形態、ならびにロータの上の上部蓋構造を除去する可能性を含むものであってよく、フライホイールチャンバのエンクロージャシステム全体の一部である。
17.全フライホイールシステムの様々な部品を構築、配置、および調節するための手順
18.電力を受け取り/送達する全体的な能力を高め、全エネルギー貯蔵の目標を達成するために、いくつかのフライホイールを組み合わせてクラスタにする可能性
【0038】
上に記載された特性の組み合わせは、発明の幅広い能力を提供するが、これらの特性の特定の部分が必要でない場合があり得、発明は単純化された形態で表される。
【0039】
次に、上に列挙された項目のさらなる説明を続ける:
【0040】
項目1
これは、目的の大質量フライホイールが、5~50.000トン超のオーダーであり得る非常に大きい質量の運動エネルギーを含有するであろうことを指す。基礎は、静的および動的力を支持し、それにより動的振動に続く構造損傷を防止することができるように、非常に強固で硬くなければならない。発明の典型的な実施形態では、フライホイールシステム全体は、地盤の掘削穴中、好ましくは、硬い岩盤に掘削された空間中に建造されることになる。砂利または砂型地盤中に建造される場合もあり得る。そのような場合、基礎杭打ちと組み合わせて、鉄筋コンクリート製のさらに強固な基礎板が必要になる場合がある。貯蔵設備を地上に建造することが可能な場合もあり、そのような場合、囲み構造全体を、安全上の理由から、さらに強固にしなければならないおそれがある。
【0041】
項目2
これは、システムに運動エネルギーを貯蔵する活性部分であるシステムのロータ部を指す。ロータは、上述のオーダーの質量の大きさを有し、本質的に、その垂直シャフトの周りに回転する垂直に配向された円筒体である。ロータに使用される材料は、通常、複合材料として相互作用する高強度鋼および高強度コンクリートであろう。フライホイール用の穴の掘削からの岩石および砂利型材料は、この材料が好適な品質のものであるならば、コンクリートを作るのに使用されてよい場合もある。代替の種類のコンクリート用またはフィラー材用骨材が、高密度および/または高強度に基づいて選択されてよい。コンクリートモルタルと組み合わされてよい骨材またはフィラー材の例は、スクラップ鋼、鉄鉱石もしくは鉄ペレット、または任意の他の好適な種類の岩石もしくは重鉱物である。ロータ中のコンクリートの強度の向上は、応力付与されていない鉄筋もしくはプレストレスト鉄筋の使用によって、または繊維、典型的には鋼もしくは炭素繊維の使用によって得られてよく、それらはコンクリート自体に混合され、硬化コンクリートの張力の増加を提供する。
【0042】
項目3
ロータは、動作中に加えられる静的および動的力に耐えるのに十分に強固でなければならない。ロータ内に強固な耐荷重構造システムがなければならず、これは、典型的には、ともに溶接または接合された高強度鋼のまっすぐな板および湾曲した板で作られる。ロータシステムの鋼部分は、構造ブロックとして予め作製され、現場でともに溶接されてよい。フィラーまたはコンクリート材は、述べられた鋼製のロータの耐荷重部分の区画内に配置される。したがって、鋼は2つの機能を有し、すなわち、荷重支持構造システムを提供し、第2に、フィラーまたはコンクリートの型枠および閉じ込めの役割を果たす。コンクリートフィラーは、特に、ロータ自体の重量からの力を支えることに関して、それ自体が力および荷重支持材料の役割を果たす機能も有する。
【0043】
項目4
ロータの中心に、ロータを下部および上部軸受と接続する、正確に作られた強固なロータシャフトが存在する。ロータシャフトは、たいていの場合、高強度炭素鋼または好適な合金鋼製であり、上に記載された耐荷重構造とともに一体に溶接される。シャフトの下部は、下部支持システム内に回転接続部を提供するように、ロータの主要部分より下に伸びる。シャフトのこの部分は、事実上、液圧流体上に載置される回転ピストンであり、したがってピストン流体チャンバへの低漏出接続を提供するべきであるため、極めて高い精度で作られなければならない。回転シャフトのピストン部と相互接続する溝およびシールリングなどの、特別な対策およびアタッチメントが存在してよい。回転シャフトの上部も、ロータの主要部分の外側に伸び、上部横方向支持システム内でよどみなく回転しているものとするため、高い精度で作られなければならない。
【0044】
項目5
ロータからの重量および動的力を支える、構造上の耐荷重性が存在する。簡単に言えば、これは、ロータシャフトのピストン部のジオメトリと一致する内部円筒中空空間を有する、強固な、かなりどっしりとした構造である。液圧流体用のこの中空支持および閉じ込めシステムは、典型的には鋳造または鍛造された高強度鋼から作られる。内部の円筒形に開いた円筒空間は、高い精度の機械加工で作られる。液圧流体が液圧チャンバ中に充填されて支持体と回転ピストンとの間の相互接続部で漏出している流体を補うための、ドリルで開けられた開口が存在するであろう。この部分は摩耗を受ける部分であるため、システムは、この部分が除去され、必要に応じて交換され得るように作られる。
【0045】
項目6
1つまたはいくつかのポンプを含む液圧システム、バルブ、液圧流体膨張タンク、漏出した液圧流体の再循環、ロータシャフトのピストン部の下の液圧流体チャンバとの接続、およびピストンチャンバ中の流体の量を監視および制御するための自動システムが存在する。システムまたは、ロータ全体を、載置支持システム(項目9)の載置位置から、ロータの回転中に使用されるより高い位置に上昇させるために、液圧流体が使用されるようなものである。逆に、液圧流体は、フライホイールがなんらかの理由で動作回転モードから外される場合、動作レベルから載置位置に下げられ得る。
【0046】
項目7
発明の実際の実装の一部として、整備または摩耗した部品の起こり得る交換のために、下部支持軸受を除去することが必要な場合がある。これは、ロータが載置位置にある間に、支持軸受がシャフトピストンから下げられかつ取り除かれなければならないことを意味する。これは、支持ブロックを横に除去した後、続いてピストンブロックもピストンから取り除かれ、摩耗した部品が検査、修理、または交換のために露出されるように、支持軸受を、十分な厚さを有する下層「ディスク」または金属ブロック上に載置させることによって行われてよい。液圧流体は、この作業中、流体チャンバから排出することができる。特に、下部軸受がその上に載置されるブロックは、ボルト、サイドアタッチメント、または単純に基礎デッキ中に浅い穴を有することによって、基礎デッキに取り付けられ得る。ロータシャフトの方向に対して精密な調節を行うことを可能とし得るように、ピストンチャンバと支持ブロックとの間の接触面を球面として作ることも可能であろう。
【0047】
項目8
ロータシャフトは、安定して、振動なく回転するために、頂部で横方向に支持される必要がある。これは、シャフトを外部フライホイール構造の壁と接続する横方向支持構造によって達成され得る。支持構造とロータシャフトとの間の接続部品は、摩耗を受けることになり、全体的な整備の一部として除去および交換され得る着脱可能な軸受部品であってよい。
【0048】
項目9
ロータは、構築中、ならびに整備および修理のために回転が停止される時、載置位置に安定化されかつ保たれなければならない。ロータの下部外縁領域は、重量をフライホイールの外部耐荷重および支持構造全体に伝達するレッジまたは支持体上に載置され得るように作られる。そのような載置荷重伝達のための代替位置が存在してよく、好ましくは、支持体は、ロータの下側の縁部にあるべきである。ロータは、好ましくは、ロータが載置支持システムと接続する前に完全に停止されるものとする。接地が行われた時、ロータがある程度回転し続けている場合の、ロータの緊急停止のための設備が存在してよい。設計は、接触面の過熱を防止するために、接触摩擦が低いようなものであるべきである。接触加熱を制御下に保つために、例えば水を使用した、冷却システムも設けられてよい。
【0049】
項目10
非常に厳密な製造公差であっても、ロータの質量分布に、回転中に不要な振動または揺動を示すいくらかの不均衡が存在する場合が生じ得る。建造時のそのようなロータの不正確さを補うために、これは、自動車のホイールの釣り合いを取るプロセスによく似た手法によって調節されてよい。そのような調節を実装する1つの方法は、ロータ内に垂直の開いたチャネルを提供することである。そのようなチャネルは、単純に、ロータ中に打設される空の管であり得る。調節は、最終結果が、垂直位置決めおよび回転質量釣り合いに関して完全に釣り合いの取れたロータになるように、試験回転および計器の読み取り後、チャネル中に適切な量の塊または詰め物を充填することによって実行されるべきである。
【0050】
項目11
フライホイールロータがエネルギー蓄積中にエネルギーを受け取ってよい、主に2つの方法がある。1つの手法は、ロータまたはロータシャフトを電気モータの回転部品として使用することである。対応して、リムに沿って対向するステータが存在することになる。交番磁場によって、動力がロータに伝達されてよい。あるいは、ロータの好適な場所と接続する、機械シャフトを介した1つまたはいくつかの電気モータからの機械力伝達による動的エネルギー蓄積が存在するであろう。電気モータと回転ロータとの間に、はめば歯車または他の種類の機械的接続デバイスが存在してよい。摩擦および磁場によるエネルギー損失を除去するために、フライホイールロータとモータとの間の接続部を完全に取り外すことが可能な場合もある。異なる種類の電気モータ原理が採用されてよく、これは発明自体の一部ではない。
【0051】
項目12
動力をフライホイールに送達する電気モータについて記載されたものとまったく同じ手法が、運動エネルギーを逆に電流に変える発電機に採用されてよい。実際、上に記載されたモータは、発電機とまったく同じであってよい。あるいは、それらは、エネルギー蓄積と電気の形態でのエネルギー再捕捉とで異なるユニットであってよい
【0052】
項目13
フライホイールは、十分に強固な上部横方向支持、下部垂直および横方向基礎支持を提供し、ロータのスポーリングまたは故障の場合に外部への損傷を防止することになる全シェル型安全障壁の役割を果たすための、強固なハウジング構造内に囲まれなければならない。加えて、ハウジング構造は、フライホイールチャンバと外部との間の気密障壁を提供してよく、このようにして、ロータチャンバ中の全空気またはガス条件は、周囲から密閉されてよく、ガス圧の低減または真空に近い条件も容易にする。
【0053】
項目14
すべてのフライホイールにとっての主な関心事は、摩擦によるエネルギー損失を可能な限り低減することである。ロータは大きい外面を有し、特に、円筒外壁は非常に高速で動いてよい。摩擦損失は、表面速度、表面粗さおよび正確度、ならびにフライホイールチャンバ中の空気またはガスの密度の直接の関数である。これらすべての因子の影響を低減することが可能である。具体的には、フライホイールチャンバが、十分に強固で気密な障壁によって完全に周囲から分離されるのであれば、ロータチャンバの内側の湿度を制御し、気圧を低減することが可能である。空気は、別のガスに交換されてもよい。しかしながら、最大の効果は、内側の圧力を低減することによって得られ、これは、空気をフライホイールチャンバから圧送することによって得られてよく、圧力が低くなればなるほど、表面摩擦損失は低くなるであろう。この原理は、現在使用されている、より小さいフライホイールでもよく知られている。
【0054】
項目15
フライホイール監視および制御システムの2つの主な機能が存在し、第1に、フライホイールにエネルギーを蓄積および放出する機能を制御し、第2に、回転しているフライホイールの状態が完全に安全なことを確認し、そうでない場合、故障のリスクを低減する手段を作動させる。監視される典型的なパラメータは、回転数、材料の疲労および故障を含むフライホイール構造中の応力および変形、ロータの不要な振動、ロータ支持システムの状態、モータおよび発電機システム、ならびに設備全体の他の関連部分である。状態監視および動作制御は、典型的には、操作室から、および/または遠隔システムによって行われてよい。
【0055】
項目16
安全上および他の理由から、フライホイールの動作時、フライホイールチャンバから人は退避することになる。チャンバは、排気可能とするために完全に密閉される必要もあり、項目14を参照されたい。しかしながら、検査、整備、および修理時に動作を停止する必要があるであろう。1つのアクセス路は、フライホイールチャンバの頂部カバー(屋根)を除去するものである。加えて、人および機器がフライホイールチャンバに入るための別個のアクセスがあると便利であろう。そのようなアクセスは、強固な気密ドアおよびエアロック室を必要とし得る。最も便利なアクセスは、フライホイールチャンバの床面高さへ下るであろう。
【0056】
項目17
システム全体の構築プロセスは、フライホイールの大きさ、現地の地盤条件、地上または地下のどちらに配置するか、ならびにどの部品が設置および組み立てのための構築現場に運ばれる前に予め作製されてよいかに依存する。予め作製される構築ブロックの許容される大きさはまた、水上、鉄道、および陸路輸送ルートの利用可能性および条件に依存し得る。典型的には、構築順序は、現場掘削、基礎の建造、続いてフライホイールシステムのためのハウジングの構築となる。フライホイールロータのための下部支持システムの据え付け後、フライホイールロータのための鋼構造が、縁部支持システム上に載置されながら組み立てられてよい。この鋼構築プロセスを終えた後、塊状充填材料、典型的にはある種のコンクリートが、ロータのボイド中に打設されてよい。さらなる補強材およびセンサが、打設プロセスの前にロータ中に配置されてよい。コンクリートが硬化した後、補強材のポストテンションが行われてよい。さらなる作業は、典型的には、モータ/発電機、液圧システム、計装、および他の種類の補助システムの据え付けとなる。最後に、試運転の一部として、試験回転、および質量釣り合いチャネルでの質量釣り合わせが行われてよい。
【0057】
項目18
単一のフライホイールをどれほど大きく作ることができるかには、明らかに実際の限界があり、これは、自重による応力付与、増加した液圧および液圧流体の漏出、遠心力の大きさ等に対処しなければならない。しかしながら、全エネルギー貯蔵容量のそのような限界は、いくつかのフライホイールユニットを互いに隣接して建造することによって克服されてよい。明らかに、複数のフライホイールのそのようなバッテリまたは構成は、共通インフラの多くを共有してよい。複数のフライホイールが蓄積および放出する方法の柔軟性に関する利点も、存在してよい。
【0058】
本発明によって規定された種類の単一のフライホイールにどれだけのエネルギーが貯蔵され得るかのいくつかの例で発明を説明するために、以下を示す:
【表1】
【0059】
本発明は、9つの図によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】貯蔵設備の主要部分の概観および定義。
図2】ロータの略図。
図3】ロータ断面レイアウト。
図4】ピストン、下部耐荷重および支持ブロックを有するシャフト。
図5】ロータブロックの除去および交換の原理。
図6】モータ/発電機の代替配置。
図7】ピストンシールの種類。
図8】交換可能部品。
図9】いくつかの貯蔵ユニットのクラスタ化の例。
【発明を実施するための形態】
【0061】
番号付けおよび専門語
【表2】
【0062】
発明の詳細な説明
図1は、本発明による大規模フライホイールシステムの主要部分および原理を示す。このシステムは、原理上、地上に建造されてよいが、たいていの場合、地盤206中の掘削穴中に貯蔵設備を配置することが、安全上および他の理由から、より良好な実施形態である。貯蔵設備は、好ましくは鉄筋コンクリート製の、強固な構造的内包体つまりハウジング201中に収容される。この内包体は、保護、および下げられるべきロータチャンバ200中の内圧の低減を可能とするシールの役割を果たす、除去可能な屋根または蓋202を有する。屋根構造は、外気がロータチャンバ中に漏入することを防止するリムに沿った気密シール203を有する。屋根202の除去時は、フライホイールシステム全体への自由なアクセスが存在する。加えて、図9に例示される、外部からロータチャンバへの密閉アクセス503が存在する。
【0063】
フライホイールのロータ100は、主に高強度鋼およびフィラー材108の高強度コンクリートなどの、容易に入手可能でありかつ費用効果の高い材料でつくられた複合構造である。フィラー材またはコンクリートは、補強筋で主に環方向に、かつ/またはプレストレスト補強ケーブルで補強されてよい。材料は、必要に応じて、補強繊維と混合されてよい。複合構造のレイアウトおよび組成は、静的および動的応力に耐え得るようなものである。
【0064】
ロータのコアに、円筒シャフトまたはロータシャフト101が存在する。これは、典型的には、耐荷重システムの重要な部分を形成する高い精度の厚肉の鋼円筒または管であり、ロータ100と支持構造301、302、310、205との間の接続も形成する。シャフトの下部は、主ロータ本体より下に伸び、ピストン102として形成され、これは、下部支持システム301、302、310との接続を形成する。同様に、シャフトの上部は、主ロータ本体より上に伸び、上部支持システム205および交換可能摩耗部品317との接続を形成する。シャフト中の中空空間は、コンクリートまたは他の好適な強化材料110で充填されてよい。
【0065】
フライホイールは、外部供給源からの電力を、ロータのより速い回転と関連する増加した運動エネルギーに変換するために使用される電気モータ/発電機システムを設ける。逆に、同じシステムは、運動エネルギーを、外部に供給される電力に逆変換するための発電機として使用されてよい。交流と直流との間の変換、ならびに電圧および周波数調整に関するシステムは、発明の範囲外である。図1に示す特定の場合では、電磁ステータシステム401は、周囲の構造の内側に沿って配置され、電磁ロータ400は、フライホイールロータ100の外側に沿って反対側に配置される。図6に示すような、電気モータ/発電機システムを構成する他の方法が存在してよい。電気モータシステムは、フライホイールロータの運動を開始するために使用されてよい。あるいは、補助的な電気始動エンジ、またはゼロ回転からの始動段階のためのプレストレスト緊張ワイヤなどの機械的システムが存在してよい。
【0066】
構築中、ならびに整備および修理のためのシャットダウンに使用されるロータ用支持システムが存在する。ロータの下部リムは、ロータとハウジングおよび支持構造201との間でロータ重量に対応する支持力を伝達する載置コネクタ104で補強される。同様に、下層支持構造も、強化された接触部204を設ける。接触領域に好適な材料の例は、鋼または鋳鉄であるが、他の金属も使用されてよい。下部支持構造は、高速シャットダウン中に動く表面接触が形成された場合に過熱を防止する、水ベースの冷却システムを設けてよい。
【0067】
下部支持システムは、垂直および水平横方向の両方の支持をロータに提供する。下部支持システムは、図4に関連してさらに詳細に説明される。
【0068】
図2は、ロータの実施形態の垂直断面を示す。同心鋼円筒106は、かなりの程度まで遠心慣性力に抵抗する、円周方向の強度を提供する。加えて、水平鋼板107は、同じ力と釣り合いを取るためのさらなる強度を提供する。鋼構造間の空間は、好適なフィラー材108で充填される。この例は、高強度コンクリートである。2つの材料が複合材料として相互作用すると最大の強度が得られるため、鋼とコンクリートとの間の良好な結合は、利点である。結合の向上は、鋼表面のサンドブラスト、ならびにボルトおよびダボなどの機械的コネクタによって、達成されてよい。コンクリートでは、引張強度は、圧縮強度より著しく低い。引張強度は、コンクリート中に追加の補強筋を使用することによって増加されてよい。耐引張荷重能力を強化する別の手段は、コンクリート中に鋼繊維を混合することである。図は、フライホイール100の円錐下部構造セクション109が存在してよいことも示す。この目的は、ロータの耐荷重能力を改善すること、およびロータの下に空間を提供することである。
【0069】
図は、最初は空であるが、ロータの全体的な完成、ならびに初期釣り合いおよび回転試験が行われた後、材料で部分的に充填されてよい垂直質量調節チャネル105も示す。このプロセスは、車のホイールの質量釣り合わせに似ており、ロータシステムの不要な振動を回避する目的を果たす。
【0070】
図3は、図2に対応するが、ロータ100の水平断面を示す。図は、中心シャフト101と接続する垂直放射状鋼壁111も示す。これらの鋼壁は、回転慣性力を中心シャフトに伝達し得るという点で、構造上の目的を果たす。同様に重要なことに、これらの垂直壁は、ロータ全体からの重力(重量)を中心荷重支持シャフト101上へ伝達し、中心荷重支持シャフト101は、動作中、下部支持システム上に載置される。同様に、これらの壁は、載置状態中、下部リム支持体への重量を支えるのに役立つ。図2および図3に示す鋼部品全体は、鋼耐荷重構造103を作り上げる。さらに、コンクリートなどのロータフィラー材108も、鋼とともに、記載された荷重条件の応力を支えるのに加わるであろうことは明らかである。
【0071】
図4は、ロータの下部支持システムを示す。ロータの中心シャフト101は、下にある支持システムとの接続を提供する円筒の形態であり、シャフトのこの部分は、ピストン102で示される。それは、ピストンの直径と同等の直径の中空円筒空間300を有し、ピストンの可能な限り最低の位置の下にある底部床を有する支持ピストンブロック301中に、高い正確度で嵌合する。したがって、ピストンの下の空間は、典型的にはこれは油であり、粘度および潤滑性に関して好適な粘稠性を有する液圧流体303で充填される閉じたチャンバを形成する。特に、流体は、ロータの全重量に対抗する圧力下にあることになる。すでに説明したように、この圧力は、ロータからの全重力をピストンの断面積で割ることによって与えられる。ロータブロックは、液圧油からの内圧を支えるのに十分な寸法および強度を有する。ロータブロックはまた、ロータシャフトとともに回転を開始しないような方法で、下にある除去可能中間ブロック302中に固定されなければならない。
【0072】
通常は油である液圧流体が、ロータの重量からの非常に高い圧力下にあることを考慮すれば、ピストンとロータブロックとの間の接触領域を下から通って漏れる液圧流体の連続的な少量の漏出があり得ることは避けられないと思われる。この流体は、回収チャネル304および排出パイプ306などの単純な手段で容易に回収され、その後ポンプ307および圧力パイプ305によって油チャンバ300中に再び送られ得る。流体回収、高圧ポンプ、膨張タンク、および流体チャンバ中への流体再循環のこのシステムは、図1に示されている。ポンプシステムは、チャンバ300中の流体圧力より大きい流体圧力を加えるための能力を有さなければならない。流体は、ロータが載置位置から上昇する時、膨張タンク308から取られる。逆に、ロータは、これが望まれる場合、液圧流体を放出して膨張タンク308中に戻すベント制御システムによって、その載置位置に下げられ得る。
【0073】
漏れた液圧流体の再注入を提供する代替方法が存在してよく、典型的には、これは、一段または多段ポンプシステムによるものであってよい。
【0074】
図5は、下部支持システムの特定の実施形態の論理的根拠をさらに詳細に説明する。このシステムの要点は、(a)ロータが、側部支持システム104、204上で構築および載置位置に載置されること、(b)回転状態中、この支持システムから上昇すること、ならびに最後に(c)典型的には部品の整備、修理、および交換に関連して、ロータが載置位置にある時、下部支持システム301、302、310を除去および交換することが可能であるべきであるというものである。これらの部品の除去はまた、検査および可能な修理または交換のために、ピストン102を露出させことになる。
【0075】
下部支持体の除去手順は以下の通りである:ロータが支持ブロック204に載置されることになる距離dだけロータが下げられるように、流体を制御された方法で流体チャンバから膨張タンク中に排出する。ロータブロックがピストンの下端と同じレベルまでの距離dだけ上昇することができるように、油を流体チャンバからさらに排出する。次に、以下の要件:
+d>d+d+dならばd>d+d (9)
に基づいて、中間ブロックの全高(d+d+d)を、(上昇位置にある)ロータブロックの下端と基礎ブロックの上端との間で横に外すことができるように、ロータブロックの下端を持ち上げることができる。
【0076】
次の要件は、ロータブロックを除去および交換することが可能であるべきであるというものである。それは、ロータブロックの全高が、載置位置にあるピストンの下側と基礎ブロックの上側との間で外れることができるべきであることを意味する(中間ブロックはすでに除去されている)。これは、追加の要件:
+d+d+d>d+d+d+d+dならばd>d+d (10)
を与える。
【0077】
明らかに、除去可能ブロックへのボルトの固定は、手順を開始する前に取り外されなければならない。
【0078】
部品の交換時は逆の手順が続くものとし、すなわち、中間ブロックの前にロータブロックが設置される。
【0079】
支持システムのさらなる補強は、上部横方向支持体205の中心を通るロータ軸に対するピストンブロック301の軸の完全な位置合わせの可能性である。これは、図4を参照すると、ピストンブロック301の下側面311および対応する中間ブロック302の上部接触側を、表面から上部横方向支持の中心までの距離に等しい半径を有する球状セクションとして形成することによって行われてよい。ピストンブロック301と中間ブロック302との間の球状接触面の実際の形状は、図に示されていない。
【0080】
下部支持構造について記載された特定の設計は、発明の実施形態が、実際の構築、整備、および修理の要件を満たすことができるようになる方法の例としての役割を果たす。支持構造を設計する代替方法も実行可能である。
【0081】
図6とともに図1は、電気モータおよび発電機の両方の性質を有する電気デバイスが、どのようにフライホイールロータと容易に接続され得るかを示す。図1に関連して説明したように、電磁ステータ401および電磁ロータ400部品が、円筒ロータ外壁に沿って配置されてよい。この解決策による欠点は、システムが蓄積も放出もしていない時の自由回転貯蔵モード中、いくらかの磁気抵抗が存在し得ることである。この代替は、図6を参照すると、回転シャフト403およびはめば歯車404を介してラチェット405を有するフライホイールロータに接続された1つまたはいくつかのモータ/発電機ユニット402を有することである。そのようなユニットの異なる位置が存在してよく、1つのそのような実施形態が、図6に示されている。別個のモータ/発電機ユニットをフライホイールロータと接続するこの方法による利点は、それらが、404と405との間の接続部を引っ込めることによって容易に完全に取り外され得ることである。そのような接続部はまた、ユニットがフル運動中のロータと係合されている時の突然の衝撃が、接続部に過大応力を加えないように、クラッチと組み合わされてよい。
【0082】
フライホイールロータを完全停止位置からフル運動にしなければならない時、特別な課題が生じる。流体支持システムは、克服されなければならない小さい摩擦のみが存在するように設計されるが、ロータの回転慣性は膨大であり得る。モータによる停止からの回転の開始は、かなりの動力を必要とすることになり、これは、別個の始動モータによって、またはモータ/発電機ユニットからの超低速伝動を促進することによって得られる。あるいは、他の種類の始動装置に頼ってもよく、その例は、通常の電気モータ/発電機が係合される前に回転運動を開始することになる、加圧空気装置またはケーブル接続重錘である。
【0083】
ピストンチャンバ中の圧力は、単純に以下
【数9】
によって得られ、式中、Mはロータの質量であり、gは重力加速度であり、Rはピストンの半径である。ロータの重量が数千トンであり得ることを考慮すれば、要求されるピストンの直径は、ロータ質量、およびピストンチャンバ中の液圧が他の種類の液圧システムにおける液圧と同程度の許容レベルに保たれなければならないという事実に直接関係することは明らかである。液圧自体は既定の設計パラメータであってよいことを考慮すれば、方程式(12)が、適切なピストンの半径Rを計算するのに使用されてよい。
【0084】
図7に示すピストンは、ロータの運動とともに回転している。燃焼機関または液圧アクチュエータのピストンと異なり、連続的な上下運動はなく、この場合、運動は、動作中、純粋に回転性である。液圧システムでは、液圧は50バールのレベルまでであることが一般的であり、同じオーダーのピストンチャンバ中の圧力が、本発明でも許容されてよい。そのような圧力レベルを考慮すれば、ピストンチャンバからの液圧流体の過度の漏出を回避することが重要である。高い精度の作製を確実に行うことに加えて、液圧流体303の漏出を低減するために、いくつかの手段が取られ得る。内燃機関の従来のピストンのように、ロータピストンは複数のリングシールを設けてよい。図7は、例として、本発明のピストンのための3つのそのようなシールリング312を示す。そのようなシールは、上下運動がなく、シールリングが、それが配置される溝313の上部リムに対して一様に押圧されるため、現状で脈動ピストンのシールよりさらに良好に機能してよい。いくつかのリング型密閉障壁を有することで、ピストンチャンバと外部ガス圧との間の圧力差がいくつかの圧力段階で対処されるため、1つを有するより良好に機能することになる。ピストンチャンバ300中、ピストン102の内側に、追加の縁部シールリング314も存在してよい。ピストンチャンバ中の圧力は、シールを、ピストンチャンバとピストンの下面との間の角に対して押圧することになり、それにより、有効な密閉作用を提供する。ピストンの回転運動は、摩耗が存在するであろうことを暗示するため、すべてのシールが、耐摩耗金属、セラミック、または複合材料などの耐久性のある材料で十分に強固に作られることが重要である。加えて、本発明は、ピストンブロック301が整備のために除去され得ること、およびシールリングが修理または交換されてよいことも暗示する。
【0085】
除去可能な部品を有する本発明は、摩耗を受けやすい広範な部品の修理を可能とする。最も決定的なそのような部品は、下端のピストン102およびピストンブロック301ならびにロータシャフトの上部支持体205の軸受317である。そのような下端の修理にアクセスするための手順は、図5に関連して記載された。図7に関連して記載されたシールリングの交換に加えて、ピストン自体またはピストンブロックの内側の摩耗を修理する必要があり得る。図8に示すように、ピストンブロックは、摩擦による材料摩耗を是正するために、その円筒面上に融着、溶接、または焼き嵌めされた追加の材料316を有してよい。相当な摩耗を受ける層の除去および交換は、全体的な整備手順の一部であってよい。同様に、ピストンの外層は、交換可能摩耗層315からなってよい。この交換可能層は、溝およびシールリングも含んでよい。これは、図7にすでに示されているため、図8には示されていない。
【0086】
図1に示す横方向支持システム205は、シャフトの接触面および横方向支持構造の接触軸受の両方の摩耗のため交換され得る部品317を同様に設けてよい。これは図8と同等であるが、別個の図に詳細に示されていない。
【0087】
図9は、単一のフライホイールがより低い貯蔵容量を有する場合であっても、貯蔵容量に対するほぼすべての総需要を満たすために、複数のフライホイール貯蔵ユニットがどのようにともにクラスタ化され得るかを示す。示された例では、3つのフライホイール貯蔵ユニット500が組み合わされてクラスタになっている。他の数のフライホイールユニット500はまた、これらをともにクラスタ化する様々な方法を使用して、フライホイール貯蔵パーク全体を作り上げてよい。図9では、3つのフライホイール貯蔵ユニットが地中に建造され、別個のユニット500への別個のアクセストンネル503に分岐する、下部作業レベルへ下る共通アクセス道またはアクセス路501を有する。図は、フライホイールチャンバの内側へのアクセス路503が、二重エアロックドア504(気密シール)およびエアロックチャンバ502からなるエアロックシステムをどのように設けてよいかも示す。いくつかのフライホイールは、同じ排気システム505を共有してよい。監視および動作制御室507、ならびに変圧器、周波数および電圧制御等の電気システム506などの補助機能が一般に共有されてよいことも示されている。
【0088】
構築方法は、フライホイールの大きさおよび現地の条件に依存する。原則として、重量約50トン以下の部品は、陸路および鉄道で輸送されてよい。これは、適切な重量のフライホイールロータおよびハウジング構成要素が、原則として、完全に予め作製され、設置のための現場に輸送されてよいことも意味する。したがって、輸送可能なロータ重量を有する貯蔵設備では、フライホイールロータを完全に予め作製することが可能な場合がある。たいていの場合、フライホイールハウジング構造201は、現場で建造されなければならないであろう。
【0089】
大きいフライホイールシステムは、完成ロータ重量が輸送を可能としない場合、段階的に構築されなければならないであろう。図1を参照すると、基礎およびハウジング構造は、典型的には、たいていの場合、鉄筋コンクリートを使用して、現場に直接建造されるようになることがわかる。たいていの場合、そのようなハウジング構造を地下に建造することが好ましい。あるいは、システム全体を地上に建造することが可能な場合もあるが、これは、動作中、不具合が生じた場合に備えて、追加の安全手段を必要とし得る。
【0090】
ハウジング構造の構築およびロータの組み立て-構築は、時間的に並行して行われてよい。ハウジング構造は、通常、掘削、打設用型枠の作製、補強材の設置、およびコンクリートの打設の連続プロセスで構築されることになる。ロータの下部支持システムは、ロータの設置プロセスが始まり得る前に、完成されなければならない。ロータの鋼構造は、ピストンが、異なる、予め作製された部分鋼モジュールであるロータシャフトなどの、ロータ鋼構造全体を作り上げる異なるブロックモジュールから組み立てられてよい。これらのモジュールは、ロータの鋼骨格全体を提供するために、組み立てられかつともに溶接されてよい。明らかに、鋼構造中に、作業者のアクセス、ならびに打設プロセス中、コンクリートを圧送しかつ流し込む通路を可能とする、図2および図3に示されていない開口が存在することになる。ロータは、組み立ておよび打設プロセス中、ロータ支持ブロック104、204上に載置されているであろうことに留意されたい。コンクリートの打設は、ロータの鋼構造部が完成し、コンクリート補強材が設置された後にのみ、開始するべきである。コンクリート打設は、ロータ構造の下部区画の充填から開始し、ロータ全体がコンクリートで充填されるまで徐々に上へ移る。セメントおよび水の化学結合プロセスは、過熱した場合コンクリートを損傷し得る熱を発生させるため、このプロセスは、進行および温度に関して注意深く監視されるべきである。
【0091】
通常の鋼補強筋の使用に加えて、コンクリートが打設され、十分に硬化された後、プレまたはポストテンション方式で緊張させる高強度鋼ケーブルを使用することが望ましい場合がある。そのようなポストテンション補強材は、垂直方向(上から緊張する)および環方向(ロータの円筒外面付近に緊張アンカーを有する)の両方に採用されてよい。コンクリートは、打設前にコンクリートと混合される補強繊維も含有してよい。ロータ鋼構造の内面は、ダボなどの機械デバイスを設けてよく、かつ/または鋼とコンクリートとの間の結合を向上させるために特殊処理されてよい。鋼-コンクリート構造を、重力および慣性力を有効な方法で支える、相互作用する複合材料として機能させることが、明確な目的であり、したがって、コンクリートは、単なる塊状フィラー材であるべきではない。
【0092】
材料強度および運動エネルギーを支える質量の配置の点で、ロータ構造の性能を最適化する多くの方法が存在する。高密度コンクリートは、玄武岩、斑糲岩、橄欖石、橄欖岩等の、特に重い岩石型骨材を使用することによって得られてよい。赤鉄鋼および磁鉄鉱(鉄鉱石)などの金属鉱石も、コンクリートの質量密度を増加させるために加えられてよい。スクラップ鉄部品または鉄ペレットも、ロータ質量を増加させるために使用されてよい。方程式(1)からわかるように、回転中のエネルギー密度および遠心力は、回転軸から最も遠く離れた層で最高となり、一方、軸付近の領域は、より少なく応力付与される、構造上の耐荷重部分と見なされる。したがって、強度および質量密度の点で異なる種類のコンクリートを、ロータ構造内の異なる領域に使用することが望ましい場合がある。
【0093】
陸上でない他の種類の用途も想定されてよい。例えば、この種類のエネルギー貯蔵設備は、風力および波力などの断続的再生可能エネルギーの使用を促進する洋上設備として、興味深いものであり得ることが予想されてよい。さらに、発明を、例えば、フェリー、内航船、水路船のような船舶の船体に設置することが可能な場合があり、その結果、それらは電気エネルギーで動くことができる。そのような場合、フライホイール貯蔵設備の充電は、船舶の入港中、いつでも実行され得る。船舶用途では、主にまたは完全に鋼製のフライホイールを使用することが、最も有利であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9