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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/06 20060101AFI20221006BHJP
   F23H 11/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F23J1/06
F23H11/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021190661
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2018085900の分割
【原出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2022020847
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進
(72)【発明者】
【氏名】土棟 志龍
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075721(JP,A)
【文献】特開2004-293828(JP,A)
【文献】実開昭59-103011(JP,U)
【文献】実開昭52-005071(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00- 1/08
F23H 1/00-17/12
F23B 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
該燃焼室下方部に設けられ、燃焼した灰を下方に落下させ且つ空気を供給するための複数のスリットを有し、固形燃料を載置して燃焼させる燃焼部と、
該燃焼部は、傾斜させて配置された第1火格子、及び、傾斜させて前記第1火格子に対向して配置されるとともに前記燃焼室の下部に設けた灰排出部によって上下動が可能な第2火格子と、を備え、
前記燃焼室は前記第2火格子に設けられた前記スリットを突き抜けるように前記第2火格子の下方に固定して配置させ、前記第2火格子上及び前記スリット間の灰を落下させる灰掻き部材と、を備え、
前記灰排出部は、前記燃焼部下方に設けられ、落下した灰を前記燃焼室外部に移送するために駆動装置によって回転駆動される回転軸の回転によって前記第2火格子を上下移動させ、
前記回転軸は定期的に駆動と停止を繰り返すように断続運転をする、
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記断続運転での前記回転軸の駆動時間は30分毎に5分間行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記回転軸の駆動は毎分2~5回転で回転駆動する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に係る。詳細には、木質チップや木質ペレット等の木質の固形物を燃料とする燃焼装置に係る。
【背景技術】
【0002】
木質の固形物を燃料として燃焼させる燃焼装置は、燃焼後の灰を燃焼部から排することが効率良い燃焼を持続させる条件として知られている。木質の固形燃料を燃焼させる燃焼装置において、燃焼部から灰を排除する方法として特許文献1及び特許文献2がそれぞれ開示されている。
特許文献1に記載の燃焼装置は、燃焼皿にスリット部を複数配置し、凹凸を有する回転部材の凹凸部を前記スリットに通過させ、燃焼皿下方の灰回収容器に堆積させることを要旨とする木質ペレット燃焼装置として開示されている。
特許文献2に記載の燃焼装置は、外周面に羽根を複数枚設け回転によりスリット板から露出させて火格子上の灰を掻き取る灰掻き部材と、前記羽に係合し従動回転し灰を移送する補助灰掻き部材と、排出口を設け灰回収容器に灰を排出する灰処理箱とを備えることを要旨とする木質ペレット燃焼装置として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-266546号公報
【文献】特開2006-200825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の木質ペレット燃焼装置は、「燃焼皿13には前面の垂直スリット27と底面の水平スリット26、後面の垂直スリット27が前後方向に同開口幅で繋がっていると共に、燃焼皿13の下方で燃焼箱37の内部に備えられた灰除去手段28の回転部材38の凹凸部39が水平スリット26と前後面のどちらか一方若しくは両方の垂直スリット27を通過する位置に回転軸40が備えられている。」(特許文献1の段落[0037]の欄参照)とされる。この木質ペレット燃焼装置は、スリット部の灰を除去することが可能であるが、スリット部以外の燃焼皿上の灰は除去できない問題がある。また、下方の灰回収容器上に堆積された灰を回収する場合は、燃焼部を解放させる必要がある。このため、燃焼装置を停止させる必要があり、燃焼装置を連続運転できない問題がある。
【0005】
特許文献2に記載の木質ペレット燃焼装置は、「灰回収容器14内に灰が一杯になると、燃焼装置1の枠体2の前面側に設けた開閉自在な扉(不図示)を開いて外に取出して、外部の回収容器(不図示)に廃棄する。この場合、灰処理箱24の周壁部24aと補助掻取部材25の羽根板25bとを小間隙にして、バーナー部12の気密を保持しているので、点火時の気化ガスがバーナー本体17の下部から外に流出することや、本燃焼中や灰処理中にバーナー本体17の下部から燃焼炎が下方へ吹き出すことを防止することができる。」(特許文献2の段落[0076]の欄参照)とされる。
しかしながら、燃焼部から発生した灰を燃焼部下方に位置させた灰回収容器に堆積させると、灰自体は高温であるため、灰回収容器内の灰を廃棄することは作業上の注意を要するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は上記問題点に着眼してなされたものであり、燃焼部上の灰を効率的に落として固形燃料の燃焼を安定させて、燃焼室から離れた位置に灰を移送することで効率的に灰を回収できると共に、連続的に運転が可能な燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、燃焼室と、燃焼室下方部に設けられ、燃焼した灰を下方に落下させ且つ空気を供給するための複数のスリットを有し、固形燃料を載置して燃焼させる燃焼部と、燃焼部は、傾斜させて配置された第1火格子、及び、傾斜させて第1火格子に対向して配置されるとともに燃焼室の下部に設けた灰排出部によって上下動が可能な第2火格子と、を備え、燃焼室は第2火格子に設けられたスリットを突き抜けるように第2火格子の下方に固定して配置させ、第2火格子上及びスリット間の灰を落下させる灰掻き部材と、を備え、灰排出部は、燃焼部下方に設けられ、落下した灰を燃焼室外部に移送するために駆動装置によって回転駆動される回転軸の回転によって第2火格子を上下移動させ、回転軸は定期的に駆動と停止を繰り返すように断続運転をする、燃焼装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃焼部上の灰を効率的に落として固形燃料の燃焼を安定させて、燃焼室から離れた位置に灰を移送することで効率的に灰を回収できると共に、連続的に運転が可能な燃焼装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る燃焼装置を断面した正面断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る燃焼装置の図1におけるA-Aで断面し、燃焼室及び灰排出部及び熱交換部を拡大した平面断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る燃焼装置の図1におけるB-Bで断面した側面断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る燃焼装置の図2における燃焼室を拡大した平面断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る燃焼装置の図1におけるC-Cで断面した側面断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る燃焼装置の第2火格子が上方に移動する直前の状態を示した説明図で、(a)は図1における燃焼部を拡大した断面図で、(b)は図1におけるC-Cで断面し、燃焼部及び灰排出部を拡大した断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る燃焼装置の第2火格子が最高位置に達した状態を示した説明図で、(a)は図1における燃焼部を拡大した断面図で、(b)は図1におけるC-Cで断面し、燃焼部及び灰排出部を拡大した断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る燃焼装置の第2火格子が最下点に達した直後の状態を示した説明図で、(a)は図1における燃焼部を拡大した断面図で、(b)は図1におけるC-Cで断面し、燃焼部及び灰排出部を拡大した断面図である。
図9】本発明の実施形態の第1変形例に係る燃焼装置の第2火格子が最高位置に達した状態を示した説明図で、図1における燃焼部を拡大した断面図である。
図10】本発明の実施形態の第2変形例に係る燃焼装置の第2火格子が最高位置に達した状態を示した説明図で、図1における燃焼部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付すことがある。但し、図面は模式的なものであり、各部の寸法との関係等は現実のものとは異なることがある。
又、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1乃至8に示す本発明の燃焼装置1は、燃料貯留部2と、燃料供給部3と、燃焼室4と、灰排出部5と、燃焼空気供給部6と、熱交換部7を有する。燃料貯留部2に貯留した木質のチップ及びペレット等の固形燃料Fを、燃料貯留部2下方に位置した燃料供給部3を介して、燃料供給部3側方の燃焼室4に送り燃焼させる。燃焼は、燃焼空気供給部6から供給される空気を得て行われる。燃焼室4で固形燃料Fを燃焼させて高温に加熱した気体は、燃焼室4に隣接した熱交換部7に送られ熱交換を行った後に燃焼装置1の外部に排気される。燃焼室4で固形燃料Fを燃焼させると灰が発生する。焼却後の灰は、燃焼室4下部に位置した灰排出部5で燃焼室4の外部に排出されその後、作業者によって回収される。図1乃至8の燃焼室4、燃焼空気供給部6、熱交換部7に描かれた矢印は、燃焼用の空気と、燃焼後の燃焼ガスの流れを示したものである。
【0012】
図1に示す燃料貯留部2は、燃料タンク21を有する。燃料タンク21の内部には、固形燃料Fが収納される。燃料タンク21の下部には燃料落下口22が位置している。固形燃料Fは燃料落下口22から下方へ落下させられ、後述する燃料供給部3へ供給される。燃料タンク21の下部には掻き出し羽根23が設けられている。掻き出し羽根23は、鉛直方向に回転する回転軸を中心として回転駆動することで、燃料タンク21内の固形燃料Fを掻き出すと共に、燃料落下口22に送られる。燃料タンク21の周囲には温風吹き出し口24が設けられていて、温風を燃料タンク21内に吐き出すことが可能になっている。温風吹き出し口24より温風が出ることで、燃料タンク21内の固形燃料Fは乾燥状態を保つことができる。
【0013】
燃料落下口22の下方には、燃料供給部3が位置している。燃料供給部3は、第1搬送部311、パドル部321、第2搬送部331、を有する。
燃料落下口22から送られた固形燃料Fは、燃料落下口22の下方に位置する円筒状からなる第1搬送部311に送られる。第1搬送部311の一端には第1搬入口312が設けられ、燃料タンク21の燃料落下口22の下部に接続されている。第1搬送部311の他端には、排出口313が開口部を下方に向けて設けられている。第1搬送部311の長手方向の内部には、第1スクリュー314が設けられる。第1スクリュー314は螺旋状部材を有した回転軸で、回転駆動することにより、第1搬入口312に投入された固形燃料Fを排出口313に送り出す。燃料落下口22から落下した固形燃料Fは第1スクリュー314によって排出口313に搬送された後、排出口313の下方に位置するパドル部321に送られる。
【0014】
パドル部321は、羽根板322を回転軸に対し放射状に配置された部材で、前記排出口313の経路の途中に設けてある。パドル部321は回転駆動させられて、排出口313の経路を羽根板322で断続的に塞ぐ。パドル部321によって固形燃料Fは間欠的に排出口313下方の第2搬送部331に定量供給すると共に、後述する燃焼室4からの煙や熱気を、燃料供給部3の上流側や燃料貯留部2に流れることを防止する。
【0015】
第2搬送部331は円筒状からなる部材である。第2搬送部331の一端にはパドル部321に向けて開口したように設けた第2搬入口332が位置している。第2搬入口332は固形燃料Fを第2搬送部331内に導く。第2搬送部331の他端には、後述する燃焼室4に設けた燃焼部42に、固形燃料Fを供給する部分となる燃料供給口333が設けられる。第2搬送部331の長手方向の内部には、第2スクリュー334が設けられる。第2スクリュー334は螺旋状部材を有した回転軸で、回転駆動することにより固形燃料Fを第2搬入口332から燃料供給口333に供給する。
【0016】
ここで、第1スクリュー314、パドル部321、第2スクリュー334の駆動について説明する。
第1スクリュー314、パドル部321、第2スクリュー334は、モーター341によって回転駆動される。モーター341は、第2スクリュー334の第2搬入口332側の端部に固着されて、第2スクリュー334を回転駆動させる。第2スクリュー334のモーター側の端部には第1スプロケット342が固着されている。さらにパドル部321の軸上には第2スプロケット343が設けられ、第1スプロケット342の上部に位置させている。第1スプロケット342と第2スプロケット343には第1チェーン344が巻きかけられ、パドル部321が回転駆動される。
また、第2スプロケット343の同軸上には第3スプロケット345が固着されている。さらに、第1スクリュー314の第1搬入口312側の軸端で第3スプロケット345の上部には、第4スプロケット346が固着されている。第3スプロケット345と第4スプロケット346には、第2チェーン347が巻きかけられていて、パドル部321の回転と共に第1スクリュー314が回転駆動可能になっている。回転駆動された第1スクリュー314とパドル部321及び第2スクリュー334によって、固形燃料Fを燃焼室4内に供給する。
【0017】
燃焼室4は、燃料貯留部2及び燃料供給部3の側方に位置していて、長辺を鉛直方向に立てた直方体状で箱状に設けられている。燃焼室4の下方部の内側を覆うように、耐火煉瓦41が配置されている。燃焼室4下方部で耐火煉瓦41の下方には、木質チップ、あるいはペレット等の固形燃料Fを載置して燃焼させる燃焼部42が設けられている。固形燃料Fは、図5に示す断面V字に配置された燃焼部42の一端側に設置された燃料供給口333から供給され、燃焼部42上に押し出される。燃焼部42は、板状部材をV字状に傾斜させて対向させ、谷筋を燃料供給口333と平行に向けられている。V字状に傾斜させた板状部材は火格子と呼ばれ、該火格子は、位置を固定して配置された第1火格子421と、上下方向に移動可能に設けられた第2火格子422がある。
【0018】
第1火格子421は、固形燃料Fが第2スクリュー334によって搬送される方向に沿って左右両側に配置され、複数の円形の孔423及び複数の第1スリット424を設けている。この実施形態において、孔423は燃料供給口333側に設けられている。孔423は、固形燃料Fより小さく設けられていて、固形燃料Fが落下することを防止する。さらに孔423は、下方から空気が通りやすくしているため、燃焼に必要な空気を第1火格子421上に通すことができる。孔423に隣接して、第1スリット424が第1火格子421の傾斜に沿って複数設けられている。第1スリット424は、固形燃料Fの燃焼後の灰が下方に落下しやすくすると共に、燃焼に必要な空気を下方から第1火格子421上に通すことができる。
【0019】
また、固形燃料Fの搬送方向に沿って右側の第1火格子421は、リンク425を介して燃焼室4の外部にある操作レバー(図示せず)を操作することで旋回動作ができる。旋回は、第1火格子421の上部の旋回支点軸426を支点にして下方に旋回し、第1火格子421の面が垂れ下がった状態にすることが可能である。第1火格子421の下方への旋回動作は、灰や未燃焼固形燃料Fを下方に容易に排出できて、燃焼室4内、及び燃焼部42のメインテナンスが容易となる。また、搬送方向に沿って左側の第1火格子421は、固定された斜面となっている。一方の第1火格子421を旋回させ、面が垂れ下がった状態すると、斜面下部が開放されて灰が下方に容易に滑り落ちる。
【0020】
第1火格子421に隣接させて、第1火格子421の面を延長するように第2火格子422が備えられている。図1乃至10に示す実施形態では、固形燃料Fの供給方向左側の第1火格子421を短縮させていて、短縮させた面を延長するように第2火格子422を配置させている。第2火格子422の板面には、第2スリット427が傾斜に沿って複数設けられている。第2スリット427は、灰が下方に落下しやすくすると共に、燃焼に必要な空気を第1火格子421上に通すことができる。
【0021】
第1火格子421及び第2火格子422によってV字状に形成された燃焼部42上に搬送供給された固形燃料Fは、孔423、第1スリット424、第2スリット427から空気を供給され燃焼する。孔423の上で燃焼中の固形燃料Fは、随時燃料供給口333から供給される固形燃料Fに押し出されるようにして、第1スリット424上に徐々に移動する。移動と共に燃焼した固形燃料Fは灰になると共に、燃料供給口333から搬送された未燃焼の固形燃料Fに押されて、第1スリット424及び第2スリット427から落下する。
【0022】
第2火格子422の下部に位置した下面から、下方に向けて接触部材429が固着されている。接触部材429は矩形状の板状部材で、板面を第2スクリューの回転軸と平行に向けて配置されている。接触部材429の燃料供給口333側の下端部は大きく面取りをされて端縁429を形成している。接触部材429は、後述する灰排出部5に設けられた排出スクリュー52の回転を端縁429に沿わせることによって、第2火格子422を上下方向に移動させる。上下動の作動方法は後述する。第2火格子422の上方への移動により第1火格子421と第2火格子422のV字状の谷部に空間が生まれ、該空間から灰がなだれ落ちる。また、第2火格子422の上下動は、落下せずに第2火格子422上に残留した灰を強制的に揺さ振って前記空間や第2スリット427から落下させる。
【0023】
第2スリット427を突き通すように、複数の灰掻き部材430が設けられている。灰掻き部材430は、棒状部材で第2火格子422の下方に位置させて、燃焼室4内に固定されている。実施形態において灰掻き部材430は水平に向けて、鉛直方向に2乃至3本配列している。また、鉛直方向に配置した灰掻き部材430のそれぞれの先端を結んだ線分は、傾斜させた第2火格子422の面と平行に設定されている。灰掻き部材430は、上下動する第2火格子422の第2スリット427内に詰まった灰や、固まった灰を強制的に掻き落とす。第2火格子422上、及び、第2スリット427内の灰を取り除くことにより、第2スリット427を通って燃焼部42上に供給される空気を十分に確保でき、固形燃料Fは安定した燃焼を維持できる。燃焼部42から落ちた灰は、灰排出部5に落とされる。
【0024】
灰排出部5は燃焼部42の下方に位置していて、燃焼部41から落下した灰を受けた後に燃焼室4の外部に排出する。灰は燃焼部42の下方に位置する灰受け皿51に堆積する。灰受け皿51の中央部には曲げ部511が設けられている。灰受け皿51の燃料排出口333から離れた側の面を起こすように折り曲げている。折り曲げ部511の曲げの谷線は、第2スクリュー334の回転軸と直交する向きである。折り曲げ部511の上方で、谷線に沿うように、排出スクリュー52が設けられている。
【0025】
排出スクリュー52は、第1スリット424、及び、第2スリット427、及び、接触部材428の下方に位置し、第2スクリュー334の回転軸と直交する向きにされている。排出スクリュー52は回転軸521に螺旋羽根522を巻付けた部材で、回転させることによって、灰受け皿51上の灰を燃焼室4の外部に搬送する。排出スクリュー52の回転は、燃焼室4外部に設置された駆動装置である排出モーター53によってなされる。排出モーター53の出力軸は排出スクリュー52に固着され、毎分2~5回転で排出スクリュー52を回転駆動する。この実施形態においては、毎分3回転に設定させている。
【0026】
排出スクリュー52は断続運転するように制御されていて、定期的に駆動と停止を繰り返す。実施形態において、排出スクリュー52は30分毎に5分間駆動する。この定期駆動によって、常時回転する方式より使用する電力が小となり、省エネルギーに貢献できる。
【0027】
排出スクリュー52によって、灰受け皿51上の灰は、燃焼室4外部に通じる排出パイプ54を通り回収容器55に移送することができる。燃焼室4の外部に設置された回収容器55に回収された灰は、排出スクリュー52で長く設定された排出パイプ54を移送中に十分に冷やされる。冷やされた灰は、排出スクリュー52の灰搬送方向終端部の下方に位置した回収容器55内に排出される。灰が入った回収容器55は、作業者によって容易に取り出すことが可能で、灰の回収及び廃棄がなされる。
【0028】
排出スクリュー52の螺旋羽根522には、前述した第2火格子422の上下動を可能にする押出し部材56が設けられている。押出し部材56は、丸棒であり、回転軸521と平行に、燃焼部42の下方に位置する螺旋羽根522を架け渡すように固着されている。螺旋羽根522間に設けられた押出し部材56の外径は、螺旋羽根522の回転外径に内接するように設定されている。この実施形態において、押出し部材56は螺旋羽根522の巻き付けピッチの2ピッチに渡って固着されている。押出し部材56は、排出スクリュー52の回転と共に回転軸521を中心に回転する。実施形態において、排出スクリュー52の回転方向は、燃焼部42から排出モーター53の出力軸に向かって左回転である。
【0029】
回転軸521の上方に位置する接触部材428は、押出し部材56の回転によって回転軸521に対して相対的に位置が上がると、端縁429に当接して上方に押し上げられる。接触部材428が上昇すると共に、接触部材428を固着している第2火格子422も上昇する。さらに、排出スクリュー52が回転し続けると、押出し部材56は回転軸521に対して相対的に位置が下がる。同時に押出し部材56に当接した接触部材428も降下して元の位置に復帰する。
【0030】
第2火格子422の上下動を図6乃至8に基づいて詳細に説明する。
図6は、第2火格子422が上昇する直前の状態を示したものである。排出スクリュー52の回転と共に、排出モーター53側の押出し部材56が接触部材428下方の端縁429と当接する。さらに排出スクリュー52が回転をすることで、第2火格子422を最高位置まで押し上げていく。
図7は、押出し部材56が最高位置付近に達した状態を図示したもので、接触部材428下端の端縁429は、螺旋羽根522の回転外径の上端と同じ高さになる。さらに排出スクリュー52の回転が進むと、接触部材428下方の端縁429は、押出し部材56から、螺旋羽根522の外周端面に乗り移る。端縁429は、排出モーター53側の押出し部材56から、螺旋羽根522の外周端面との当接状態になる。さらに排出スクリュー52を回転させると、螺旋羽根522の端面から次の燃焼部42側の押出し部材56に乗り移る。
【0031】
さらに排出スクリュー52を回転させると、図8に示すように、押出し部材56は端縁429に設けられた面取り部と当接しながら、下降していく。押出し部材56の下降と共に接触部材428及び第2火格子422も下降する。押出し部材56によって、見かけ上の接触部材428は、螺旋羽根522を乗り越える。図6乃至8の状態を繰り返すことで、第2火格子422は上下方向に往復移動ができ、第2火格子422は揺さ振られて上面に堆積した灰が落下する。
また、第2火格子422の上下動は、灰排出部5の排出スクリュー52の回転を直接利用するので、専用の動力及び伝動装置を必要としない。
【0032】
第2火格子422は、第2スリット427に通された灰掻き部材430によって倒れることなく上下方向に滑らかに移動が可能である。第2火格子422に設けられた第2スリット427も上下動するため、灰掻き部材430によって、第2スリット427の内側にこびり付いた灰を掻き落とす。また、灰掻き部材430の棒の径は、第2スリット427の幅よりやや小さく設定され、第2火格子422の上下動を阻害しないと共に、第2スリット427内側の灰を掻き落とすことに好適である。また、上下動によって第2火格子422上に堆積した灰は、揺さ振られて第2スリット427から落ちたり、第2火格子422の傾斜面を滑り落ちていき、燃焼部42の谷部に堆積する。燃焼部42の谷部に堆積した灰は、次に第2火格子422が上昇した際に第1火格子421下部と生じた空間から落下する。第2火格子422の上下動と灰掻き部材430によって、第2火格子422に付着した灰は、定期的に落とされる状態が続く。また、第2スリット427に灰が詰まることなく、固形燃料Fが燃焼に必要な空気を十分に通すことができ、燃焼部42上での固形燃料Fの燃焼を安定化させる。
【0033】
前記燃焼室4内には、固形燃料Fが燃焼するために必要な空気を送るための燃焼空気供給部6が備えられている。燃焼空気供給部6は、第1燃焼空気供給部61と、第2燃焼空気供給部62と、搬送部空気供給部63と、ヒーター送風用空気供給部64を有していて、それぞれパイプ状からなる。燃焼空気供給部6は、吸気ファン65により空気を取り込み送風し、分岐66で分岐されて、第1燃焼空気供給部61、第2燃焼空気供給部62、搬送部空気供給部63、ヒーター送風用空気供給部64に空気を吹き込む。
【0034】
第1燃焼空気供給部61は、燃焼部42の下方まで延ばされていて、吹き出し口611を燃焼部42に向けて複数開けられている。吹き出し口611から吸気ファン44から供給される空気を、燃焼部42の孔423及び第1スリット424及び第2スリット427を通って、固形燃料F側に向けて吹き込む。燃焼部42上の固形燃料Fは、第1燃焼空気供給部61から供給される空気を得て1次燃焼をする。1次燃焼後の固形燃料Fは、第2燃焼空気を得て2次燃焼をする。
【0035】
2次燃焼用の空気を供給する第2燃焼空気供給部62は、燃焼部42の上面よりも上方位置の側面から燃焼室4内に、吸気ファン44から供給される空気を吹き込む。実施形態において、燃焼室内の第2燃焼空気供給部62はコの字に配置された管路で、管路の上部及び側面に設けられた孔621から空気を吹き込む。1次燃焼をした固形燃料Fに、さらに第2燃焼空気供給部62からの空気を送ることで、2次燃焼を促して効率良く固形燃料Fを燃焼させる。
【0036】
燃焼部42上の固形燃料Fは、ヒーター送風用空気供給部63から供給される熱風で着火する。ヒーター送風用空気供給部63は、管路出口付近に着火用ヒーター631を備えている。着火用ヒーター631は吸気ファン65から送られた空気を高温に加熱し、加熱した空気を固形燃料Fに吹き付けることで固形燃料Fは着火する。
搬送部空気供給部64は、燃料供給部3のパドル部321の固形燃料Fの搬送方向に噴出することで、燃焼室4で発生した燃焼空気の逆流を防ぐ。
【0037】
燃焼室4内で固形燃料Fが燃焼して高温となった燃焼ガスは、燃焼室4に隣接する熱交換部7に移動する。熱交換部7は、燃焼室4の側方に設けられる円筒状の煙管71と、燃焼室4および煙管71の周囲に位置する液体室74と、燃焼ガスを排気する煙突72を有している。
【0038】
煙管71はパイプからなり、液体室74中を貫通して鉛直方向に複数設置され、煙管71内を燃焼ガスが通過する。煙管71は、燃焼室4上部から下方に燃焼ガスが通過する入力側煙管711と、前記下方に通過した燃焼ガスが排出側の上方に向かって通過する排出側煙管712からなる。
【0039】
入力側煙管711と排出側煙管712はそれぞれ複数設けられる。入力側煙管711、排出側煙管712とは、それぞれ集められてグループを形成している。そのため、燃焼ガスの通気が乱れにくい。高温となった燃焼ガスは煙管71を通過することで、液体室53と熱交換をする。液体室53内は液体Lで満たされている。実施形態では水が溜められているが、それ以外の液体を用いてもよい。燃焼室4から発生した高温の燃焼ガスは、入力側煙管711と排出側煙管712を経て液体室53内の液体Lと熱交換をする。熱交換後の液体Lは加熱された状態になり、燃焼部4にて固形燃料Fの燃焼を続けると、液体室53内の液体Lは高温になる。液体室53内の液体Lは、液体室53に管を接続して外部に取り出すことが可能で、有効に熱を利用できる。熱交換後の燃焼ガスは、熱を奪われて冷やされた状態になり、煙突72から排気される。
【0040】
熱交換をより効率化するために、煙管71内には螺旋材75が挿入される。螺旋材75は、金属製の帯状板又は棒状材を螺旋状に成形してなる。燃焼ガスは、螺旋材75に沿って旋回しながら煙管71内を移動し、燃焼ガスの移動距離が延びる。螺旋材75によって、燃焼ガスが、煙管71内を直線状に通過しないため、燃焼ガスの熱を煙管71から有効に液体室53内の液体Lに伝達できる。
【0041】
燃焼ガスは、高温であるほど熱交換の効率が良く、高温の燃焼ガスを得るためには効率的な燃焼を行うことが重要である。本発明の燃焼部42及び灰排出部5によって、1次燃焼するための第1燃焼空気供給部からの空気を、固形燃料Fに送り続けることが可能である。第2火格子422上の灰、及び第2スリット427内の灰を落とすことで、1次燃焼空気供給部から吹き付ける空気が、灰で遮られることなく第2スリット427を通って固形燃料Fに送られる。断続的に第2火格子422を上下動させることで、固形燃料Fへの空気の供給は、効率的な燃焼と、連続して安定した燃焼を継続させることを促している。
また、灰排出部5によって燃焼室4外に燃焼後の灰を搬送することで、搬送中に冷やされると共に、燃焼室4外部の回収容器に集められる。これは、燃焼装置1、とりわけ燃焼室4が稼働中でも灰を容易に取り出せることになり、連続運転を停止させることなく効率的な灰の回収作業ができる。
【0042】
燃焼部42上の灰を取り除くことが燃焼効率を高めることは上述したが、より効率的に燃焼部42上の灰を取り除くことができる変形例を説明する。
図9に示す実施形態の第1変形例は、接触部材428aの下端部の燃料供給口333側を、大きな段差状に抉ったように形成した端縁429aを設けている。第2火格子422が最高位置に達した後、排出スクリュー52の回転がさらに進むことで、押出し部材56に当接していた接触部材428aが、段差状の端縁429aによって急激に落下する。落下は自由落下であり、元の位置に落ちたところで第2火格子422上の灰が衝撃により下方に落下する。また、第2スリット427内のこびり付いた灰は、第2火格子422の落下衝撃により落とすことができる。
【0043】
図10に示す実施形態の第2変形例は、接触部材428bの下端部の燃料供給口333側を、階段状に形成した端縁429bを設けている。第2火格子422が最高位置に達した後、排出スクリュー52の回転がさらに進むことで、押出し部材56に当接していた接触部材428bが、階段状の端縁429bによって段階的に落下する。段階的な落下は自由落下であり、落下の衝撃と共に第2火格子422上の灰は下方に落下する。また、第2スリット427内のこびり付いた灰は、第2火格子422の段階的な落下衝撃により落とすことができる。
【0044】
以上のように構成した燃焼装置1によって、燃焼部42上の灰を効率的に落として固形燃料の燃焼を安定させて、燃焼室4から離れた位置に燃焼後の灰を移送することで効率的に灰を回収できると共に、連続的に運転が可能な燃焼装置1を提供できる。
【0045】
本発明は、上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示に基づく実施形態、実施例及び運用技術の改変は、当業者とって自明のことである。
【符号の説明】
【0046】
1 燃焼装置
2 燃料貯留部
3 燃料供給部
333 燃料供給口
4 燃焼室
42 燃焼部
421 第1火格子
422 第2火格子
424 第1スリット
426 旋回支点軸
427 第2スリット
428 接触部材
430 灰掻き部材
5 灰排出部
52 排出スクリュー
521 回転軸
522 螺旋羽根
56 押出し部材
6 燃焼空気供給部
7 熱交換部
F 固形燃料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10