(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】強制排気機構を備える飛翔体
(51)【国際特許分類】
B64B 1/62 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B64B1/62
(21)【出願番号】P 2022064653
(22)【出願日】2022-04-08
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0224639(US,A1)
【文献】特開平09-301293(JP,A)
【文献】特開2002-308189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に孔を有し、外部の空気より軽い気体が内部に充填される気嚢と、
前記気嚢に生じる浮力により引き上げられる物体であるロードと、
前記気嚢と前記ロードとに架け渡された複数の第1の索体と、
前記気嚢の頂部において前記気嚢の内側面に取り付けられた滑車と、
一方の端部が前記気嚢の底部に取り付けられ、前記滑車に掛けられ、他方の端部が前記孔を通って前記気嚢の内側から外側に出るように配置された索体
であって、飛翔中に前記気嚢の外側に出ている部分が下方に引かれることによって前記気嚢の底部を前記気嚢の頂部に引き寄せ、前記気嚢内の気体を前記孔から排出するための索体である第2の索体と
を備える飛翔体。
【請求項2】
前記気嚢の頂部に取り付けられた部材である頂部材を備え、
前記滑車は前記頂部材を介して前記気嚢に取り付けられている
請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記頂部材は、前記気嚢の外側に配置される外部材と、前記気嚢の内側に配置される内部材とを有し、当該外部材と当該内部材が前記気嚢を挟み込んだ状態で前記気嚢に取り付けられている
請求項2に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記第1の索体は、前記頂部材に一方の端部が取り付けられ、
一部が前記気嚢の頂部から経線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢に取り付けられ、飛翔時にロードの荷重が掛けられ
る索体である
請求項2に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記孔を底部孔とするとき、前記頂部材は前記気嚢の内外を通じさせる孔である頂部孔を有し、
前記頂部孔を開閉する開閉機構を備える
請求項2に記載の飛翔体。
【請求項6】
前記気嚢の底部に取り付けられた部材である底部材を備え、
前記
第2の索体の一方の端部は前記底部材を介して前記気嚢に取り付けられている
請求項1に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記底部材は、前記気嚢の外側に配置される外部材と、前記気嚢の内側に配置される内部材とを有し、当該外部材と当該内部材が前記気嚢を挟み込んだ状態で前記気嚢に取り付けられている
請求項6に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記気嚢の頂部に取り付けられた部材である頂部材と、
前記気嚢の底部に取り付けられた部材である底部材と
を備え、
前記滑車は前記頂部材を介して前記気嚢に取り付けられており、
前記
第2の索体の一方の端部は前記底部材を介して前記気嚢に取り付けられており、
前記
第2の索体の他方の端部が前記気嚢の内側から外側に向かう方向に引かれることにより前記気嚢内の気体が前記孔から排出された状態において、前記頂部材と前記底部材を連結する連結機構を備える
請求項1に記載の飛翔体。
【請求項9】
一方の端部が前記気嚢の底部に取り付けられ、前記滑車に掛けられることなく前記気嚢の外側に垂れ下がるように配置された第
3の索体を備える
請求項1に記載の飛翔体。
【請求項10】
前記孔の縁部から下方に延伸するように前記気嚢に取り付けられた筒状部材を備える
請求項1に記載の飛翔体。
【請求項11】
前記孔を開閉する開閉機構を備える
請求項1に記載の飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気嚢に生じる浮力により飛翔する飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
気球、飛行船等の飛翔体は、外部の空気よりも軽い気体が内部に充填された気嚢に生じる浮力により飛翔する。以下、本願における飛翔体は、外部の空気よりも軽い気体が内部に充填された気嚢に生じる浮力により飛翔する飛翔体を意味するものとする。
【0003】
飛翔体の高度を下げる方法の1つとして、気嚢内の気体の一部を気嚢外へと排出し、気球全体(主に気球のロード)の重力よりも気嚢に生じる浮力を小さくする方法がある。
【0004】
気嚢内の気体を気嚢外へと排出する仕組みを開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、飛翔体の高度調整を行うために、アクチュエータにより弁を開閉することで気嚢内の気体を気嚢外へと排気する仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の仕組みのように、気嚢に弁を設け、弁を開いて気嚢内の気体を気嚢外へと排気する方法による場合、気嚢の内外気圧差により気体が自然に気嚢内から気嚢外へと移動するのを待つ他なく、速やかに飛翔体の高度を下げることができない。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、従来技術よりも速やかに飛翔体の高度を下げることを可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、底部に孔を有し、外部の空気より軽い気体が内部に充填される気嚢と、前記気嚢に生じる浮力により引き上げられる物体であるロードと、前記気嚢と前記ロードとに架け渡された複数の第1の索体と、前記気嚢の頂部において前記気嚢の内側面に取り付けられた滑車と、一方の端部が前記気嚢の底部に取り付けられ、前記滑車に掛けられ、他方の端部が前記孔を通って前記気嚢の内側から外側に出るように配置された索体であって、飛翔中に前記気嚢の外側に出ている部分が下方に引かれることによって前記気嚢の底部を前記気嚢の頂部に引き寄せ、前記気嚢内の気体を前記孔から排出するための索体である第2の索体とを備える飛翔体を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飛翔体によれば、気嚢内から底部の孔を通って気嚢外へと垂れ下がる索体が下方に引かれると、気嚢が上下方向につぶされ、気嚢内の気体が気嚢の底部の孔を通って強制的に気嚢外へと排気される。従って、索体を引く速度を調整することにより、希望する速度で気嚢に生じる浮力を低減させることができ、その結果、速やかに飛翔体の高度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る飛翔体の全体の外観を示した図。
【
図2】一実施形態に係る飛翔体が備える強制排気機構の仕組みを説明するための図。
【
図3】一実施形態に係る気嚢内の軽量ガスが強制排気される様子を示した図。
【
図5】一実施形態に係る頂部材の上面側の構造を説明するための図。
【
図7】一変形例に係る飛翔体が備える連結機構を例示した図。
【
図8】一変形例に係る飛翔体の全体の外観を示した図。
【
図9】一変形例に係る飛翔体の気嚢が膨らませられる様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る飛翔体1を説明する。飛翔体1はガス気球である。
図1は、飛翔体1の全体の外観を示した図である。なお、
図1においては後述する滑車17、索体18、ウィンチ19の図示が省略されている。
【0012】
飛翔体1は、底部に孔H1(底部孔の一例)を有し外部の空気よりも軽い気体(以下、「軽量ガス」という)が内部に充填される気嚢11と、気嚢11の頂部に取り付けられた頂部材12と、気嚢11に生じる浮力により引き上げられる物体(又は物体群)であるロード13と、気嚢11とロード13とに架け渡された索体である複数のロードテープ14(第1の索体)と、孔H1の一部を塞ぐように気嚢11の底部に取り付けられた1以上の孔を有する底部材15と、孔H1の縁部から下方に延伸するように気嚢11に取り付けられた筒状部材であるスカート16を備える。
【0013】
なお、本願において、気嚢11の頂部とは、内部に軽量ガスが充填され、浮力が生じ、ロードテープ14を介してロード13を吊り上げる状態の気嚢11の最上部を含み、その状態の気嚢11を水平方向に切断した場合の断面の面積が最も大きい高さ方向の位置(水平方向に最も張り出している部分の位置)より上に位置する領域を意味する。また、本願において、気嚢11の底部とは、内部に軽量ガスが充填され、浮力が生じ、ロードテープ14を介してロード13を吊り上げる状態の気嚢11の最下部を含み、その状態の気嚢11を水平方向に切断した場合の断面の面積が最も大きい高さ方向の位置(水平方向に最も張り出している部分の位置)より下に位置する領域を意味する。
【0014】
気嚢11に充填される軽量ガスは、例えばヘリウムガスであるが、それに限られない。
【0015】
頂部材12と底部材15は、例えば硬質プラスチック、アルミ等の素材で作られた、気嚢11よりも強度の高い部材である。これらの部材の詳細は後述する。
【0016】
スカート16は、例えば筒状に形成された可撓性のシートであり、上側の開口部が気嚢11の孔H1と連通している。以下、
図1に示すように、スカート16の下側の開口部を開口部O1という。スカート16は、気嚢11内に充填された軽量ガスが孔H1から意図せず気嚢11外へ漏れ出すことを抑制する役割を果たす。気嚢11内の軽量ガスは気嚢11外の空気よりも軽いため、その多くが気嚢11の底部に位置する孔H1から下方に漏れ出すことはないが、気嚢11の姿勢が傾いたり、風などの外部から押しつぶす力が気嚢11に加わったりすると、気嚢11内の軽量ガスの一部が気嚢11外へと漏れ出す。スカート16は、そのように気嚢11から漏れ出した軽量ガスを保持する。なお、スカート16の素材は気嚢11の素材と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0017】
飛翔体1は、底部材15を頂部材12に引き寄せるように力を加えることで気嚢11を縦方向に潰し、気嚢11内の軽量ガスを孔H1から強制的に外部に排出する機構(以下、「強制排気機構」という)を備えている。
【0018】
図2は、飛翔体1が備える強制排気機構の仕組みを説明するための図である。飛翔体1は、
図1を参照して上述した構成部に加え、滑車17、索体18、及び、ウィンチ19を備える。
【0019】
滑車17は、気嚢11の頂部において気嚢11の内側面に取り付けられている。本実施形態において、飛翔体1は4個の滑車17を備えるものとするが、その数は1以上のいずれであってもよい。なお、
図2においては、便宜的に2個の滑車17のみが示されている。
【0020】
また、本実施形態において、滑車17は頂部材12を介して気嚢11に取り付けられている。
【0021】
索体18
(第2の索体)は、
図2に示されるように、一方の端部が気嚢11の底部に取り付けられ、滑車17に掛けられ、他方の端部が孔H1を通って気嚢11の内側から外側に出るように配置されている。1つの滑車17には1本の索体18が掛けられるので、この場合、索体18の本数は滑車17の個数と同じ4本である。
【0022】
本実施形態において、索体18の一方の端部は底部材15を介して気嚢11に取り付けられている。
【0023】
ウィンチ19は、索体18を巻き取る装置である。ウィンチ19は4本の索体18をまとめて1束として巻き取ってもよいし、それらを個別に巻き取ってもよい。
【0024】
図3は、ウィンチ19が索体18を巻き取ることによって、気嚢11内の軽量ガスが強制排気される様子を示した図である。
図3(A)は、気嚢11内に最大量の軽量ガスが充填されている状態を示している。
【0025】
図3(B)は、飛翔中の飛翔体1において、ウィンチ19が索体18を巻き取った状態を示している。ウィンチ19が索体18を巻き取ると、気嚢11の底部が気嚢11の頂部に引き寄せられ、気嚢11が縦方向に潰される。それに伴い、気嚢11内の軽量ガスが孔H1から気嚢11外に押し出され、さらにはスカート16内を下方に移動し、開口部O1からスカート16の外部へと排出される。
【0026】
そのように気嚢11内の軽量ガスの量が減少し、気嚢11に生じる浮力が飛翔体1全体の重量より小さくなると、飛翔体1は下降し始める。飛翔体1が下降する間、気嚢11は
図3(B)に矢印で示すように下側から上方向に空気の力を受ける。従って、気嚢11内の軽量ガスが十分に排気されると、気嚢11がロードテープ14を下から上方に押し上げる状態で、全体として傘形状になる。その結果、潰れた気嚢11がパラシュートの傘の役割を果たし、飛翔体1が着地又は着水する際の衝撃が緩和される。
【0027】
本実施形態において、頂部材12は、気嚢11を内側と外側から挟み込んだ状態で気嚢11に取り付けられている。
図4は頂部材12の外観を示した図である。頂部材12は、
図4(A)に示す外部材121と、
図4(B)に示す内部材122を有している。
【0028】
外部材121は気嚢11の外側に配置される部材である。
図4(A)は、外部材121を気嚢11に接する側(下側)から見た図である。以下、
図4(A)に示される外部材121の面を下面といい、下面の反対側の面を上面という。
【0029】
外部材121は平面視した形状が円形である板状部材である。外部材121は、気嚢11の形状に沿うように、緩やかに湾曲していてもよい。
【0030】
外部材121の下面には、4個の滑車17が配置されている。各々の滑車17は、水平方向の軸周りに回転する部材である回転部材171と、回転部材171を側方から挟み込むように配置され回転部材171を回転可能に保持する2個1対の基部172を有する。なお、外部材121と基部172が一体に成形されていてもよい。
【0031】
外部材121の外縁よりやや内側には、複数のネジ孔S1が開けられている。
【0032】
内部材122は気嚢11の内側に配置される部材である。
図4(B)は、内部材122を気嚢11に接しない側(下側)から見た図である。以下、
図4(B)に示される内部材122の面を下面といい、下面の反対側の面を上面という。
【0033】
内部材122は平面視した形状がドーナツ形状である板状部材である。内部材122は、気嚢11の形状に沿うように、緩やかに湾曲していてもよい。
【0034】
内部材122には、複数のネジ孔S2が開けられている。外部材121のネジ孔S1と内部材122のネジ孔S2は、外部材121と内部材122が積層配置された場合に連通する。
【0035】
図4(C)は、外部材121と内部材122が積層配置された状態を示している。頂部材12は、外部材121と内部材122が気嚢11の最上部付近の部分を挟み込んだ状態で、連通したネジ孔S1とネジ孔S2の各々がネジで締め付けられることで、気嚢11に取り付けられる。
【0036】
本実施形態において、頂部材12は、複数のロードテープ14を気嚢11の最上部付近で互いに連結する役割も果たす。
図5は、頂部材12の上面側の構造を説明するための図である。
図5(A)は外部材121を平面視した図であり、
図5(B)は外部材121の断面を
図5(A)に示す矢印Aの方向に見た図である。
【0037】
外部材121は、気嚢11に沿うように湾曲した円盤状の部材である本体1211と、本体1211から上方向に突起する環状の突起部1212及び突起部1213を有する。突起部1213の直径は突起部1212の直径より小さい。外側の突起部1212には、ロードテープ14が通過するように、ロードテープ14の本数と同じ数の溝G1が設けられている。
【0038】
外部材121は、さらに、突起部1212と突起部1213の間にはめ込まれた環状の部材である環状部材1214を有する。
図5(C)に示されるように、ロードテープ14の各々が結び付けられた状態の環状部材1214が突起部1212と突起部1213の間にはめ込まれることで、複数のロードテープ14が環状部材1214を介して互いに連結される。
【0039】
本実施形態において、底部材15もまた、気嚢11を内側と外側から挟み込んだ状態で気嚢11に取り付けられている。
図6は底部材15の外観を示した図である。底部材15は、
図6(A)に示す内部材151と、
図6(B)に示す外部材152を有している。
【0040】
内部材151は気嚢11の内側に配置される部材である。
図6(A)は、内部材151を気嚢11に接しない側(上側)から見た図である。以下、
図6(A)に示される内部材151の面を上面といい、上面の反対側の面を下面という。
【0041】
内部材151は平面視した形状が大小2つの円形の帯を半径方向に延びる複数の帯で連結したような形状の板状部材である。すなわち、内部材151は、中央に1つの円形の孔H2と、孔H2の外側に複数の扇形の孔H3を有する。内部材151は、気嚢11の形状に沿うように、緩やかに湾曲していてもよい。
【0042】
内部材151の外縁よりやや内側には、複数のネジ孔S3が開けられている。
【0043】
図6(C)は、内部材151の断面を
図6(A)に示す矢印Bの方向に見た図である。
【0044】
内部材151は、気嚢11に沿うように湾曲した孔H2及び孔H3を有する板状部材である本体1511と、本体1511から上方向に突起する4つの突起部1512を有する。突起部1512は、水平方向に開けられた孔を有する。突起部1512には、索体18の一方の端部が、結び付け等により取り付けられる。
【0045】
外部材152は気嚢11の外側に配置される部材である。
図6(B)は、外部材152を気嚢11に接する側(上側)から見た図である。以下、
図6(B)に示される外部材152の面を上面といい、上面の反対側の面を下面という。
【0046】
外部材152は平面視した形状がドーナツ形状である板状部材である。外部材152は、気嚢11の形状に沿うように、緩やかに湾曲していてもよい。
【0047】
外部材152には、複数のネジ孔S4が開けられている。内部材151のネジ孔S3と外部材152のネジ孔S4は、内部材151と外部材152が積層配置された場合に連通する。
【0048】
図6(D)は、内部材151と外部材152が積層配置された状態を下から見た図である。底部材15は、内部材151と外部材152が気嚢11の最下部付近の部分、すなわち、孔H1の縁部付近の部分と、スカート16の上側の開口部の縁部付近の部分とを挟み込んだ状態で、連通したネジ孔S3とネジ孔S4の各々がネジで締め付けられることで、気嚢11に取り付けられるとともに、スカート16を気嚢11に連結する。
【0049】
上記のように気嚢11に取り付けられた状態の底部材15は、気嚢11の孔H1の一部を塞ぐが、孔H2と孔H3を有しているので、孔H1の全部を塞ぐことはない。気嚢11が潰される際に気嚢11内の軽量ガスは孔H2又は孔H3を通過し、スカート16の開口部O1へと向かう。
【0050】
索体18の各々は、一方の端部が底部材15の突起部1512に取り付けられた状態で、他方の端部が頂部材12の下面側に配置された滑車17に掛けられた後、例えば、底部材15の孔H2を通された後、スカート16を通ってウィンチ19に達し、ウィンチ19に取り付けられる。
【0051】
以上が飛翔体1の構成の説明である。上述した構成の飛翔体1においては、飛翔中にロード13側に垂れ下がっている索体18を引き下げることで、気嚢11内の軽量ガスを強制的に排気することができる。その結果、気嚢11から軽量ガスを自然排気する従来技術に係る飛翔体1よりも速やかに飛翔体1の高度を下げることができる。
【0052】
[変形例]
上述した飛翔体1は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下に変形の例を示す。なお、以下に示す変形例の2以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0053】
(1)上述した実施形態において、索体18はウィンチ19に巻き取られることで下方に引かれる。索体18を下方に引く方法はウィンチ19を用いる方法に限られない。例えば、ロード13内の人が索体18を下方に引いてもよい。
【0054】
(2)索体18の端部のうち、底部材15の突起部1512に取り付けられていない側の端部が下方向、すなわち、気嚢11の内側から外側に向かう方向に引かれることにより気嚢11内の気体(軽量ガス)が気嚢11の孔H1から気嚢11外へと排出された状態において、頂部材12と底部材15を連結する連結機構を飛翔体1が備えてもよい。
【0055】
図7は、この変形例に係る飛翔体1が備える連結機構20を例示した図である。
図7(A)は連結機構20により頂部材12と底部材15が連結される前の状態を示し、
図7(B)は連結機構20により頂部材12と底部材15が連結された後の状態を示している。
【0056】
連結機構20は、頂部材12の下面に取り付けられた連結部材201と、底部材15の上面に取り付けられた連結部材202を有する。
【0057】
連結部材201と連結部材202は互いに近接又は接触すると連結する部材である。連結部材201と連結部材202は、例えば、異なる極性の2つの磁石、面ファスナーの雄面と雌面、互いに係合するラッチとラッチ受け等のいずれであってもよい。
【0058】
この変形例によれば、気嚢11から軽量ガスが排気された後に、索体18を引く力を維持しなくても、気嚢11に孔H1から空気が流れ込んで気嚢11が再度、膨らんでしまうことがない。その結果、気嚢11の形状(パラシュートの傘の形状)が確実に維持される。
【0059】
(3)一度、潰した気嚢11を再度、膨らませることを可能とするために、一方の端部が気嚢11の底部に取り付けられ、滑車17に掛けられることなく気嚢11の外側に垂れ下がるように配置された、索体18(第2の索体)とは異なる索体(第3の索体)を飛翔体1が備えてもよい。
【0060】
図8は、この変形例に係る飛翔体1の全体の外観を示した図である。なお、
図8において、スカート16の図示は省略されている。
図8に示される飛翔体1は、底部材15の下面に一方の端部が取り付けられた複数の索体21
(第3の索体)と、索体21を巻き取るウィンチ22を備える。索体21の各々は、例えば、スカート16(
図8において図示略)を通ってロード13に向かい垂れ下がり、下側の端部がウィンチ22に取り付けられている。
【0061】
飛翔体1は、ウィンチ19により索体18を巻き出しながら、ウィンチ22により索体21を巻き取ることで、潰れている気嚢11を再度、膨らませる。
図9は、気嚢11が膨らませられる様子を示した図である。なお、
図9において、スカート16の図示は省略されている。
図9(A)は気嚢11が半分程、潰されている状態の飛翔体1を示し、
図9(B)は、
図9(A)の状態から索体21の巻き取りにより再度、気嚢11が膨らんだ状態の飛翔体1を示している。
【0062】
気嚢11を膨らませる際に、例えば、ロード13内に含まれる軽量ガスが充填されたガスボンベから気嚢11内へと軽量ガスを充填することで、いったん下降した飛翔体1を再上昇させることができる。
【0063】
なお、索体21を下方に引く方法はウィンチ22を用いる方法に限られない。例えば、ロード13内の人が索体21を下方に引いてもよい。
【0064】
(4)気嚢11の底部に設けられた孔を開閉する開閉機構を飛翔体1が備えてもよい。
【0065】
図10は、この変形例に係る飛翔体1が備える底部材15の外観を示した図である。この変形例に係る底部材15は、内部材151の外側に、外部材152と同じ層内に並んで配置される蓋部材153を有する。
図10(A)は内部材151を下から見た図であり、
図10(B)は蓋部材153を下から見た図である。また、
図10(C)は内部材151の断面を
図10(A)に示す矢印Cの方向に見た図であり、
図10(D)は蓋部材153の断面を
図10(B)に示す矢印Dの方向に見た図である。また、
図10(E)は、積層された状態の内部材151、外部材152、蓋部材153の断面図である。
図10(E)に示されるように、外部材152と蓋部材153は内部材151の外側の同じ層内に並んで配置される。また、
図10(F)は、積層された状態の内部材151、外部材152、蓋部材153を下から見た図である。
【0066】
内部材151は、孔H2の縁部から下側に延伸する筒状部1513と、筒状部1513の内側面に配置された筒状の弾性部材1514を有する。
【0067】
蓋部材153は、平面視した形状が4枚羽のプロペラのような形状の板状部材である。蓋部材153が有する4枚羽のような形状の部分は、内部材151の孔H3を塞ぐ形状及び大きさである。蓋部材153は、中央に孔H4の開けられた板状の本体1531と、本体1531の1枚の羽部分の外縁部付近に円弧状に設けられたラック1532を有する。
【0068】
蓋部材153の孔H4の直径は、内部材151の筒状部1513の外径より遊び分だけ大きく、
図10(E)に示されるように、内部材151と蓋部材153が積層配置された状態で、内部材151の筒状部1513が蓋部材153の孔H4にはまり込む。その状態で、内部材151は蓋部材153を回転可能に保持する。
【0069】
この変形例に係る飛翔体1は、
図10(E)に示されるように、外部材152の下面の外縁周辺に取り付けられ、内部材151と積層配置された蓋部材153のラック1532と噛み合うピニオン231を有するモータ23を備える。モータ23のシャフトの回転に伴い、蓋部材153が外部材152及び内部材151に対し回転し、内部材151の孔H3を開閉する。
【0070】
なお、この場合、内部材151、蓋部材153、モータ23が開閉機構を構成する。
【0071】
弾性部材1514は、孔H2を通る索体18と内部材151との隙間を塞ぐ役割を果たす。すなわち、索体18は、弾性部材1514の内側で移動可能だが、弾性部材1514が索体18の形状に応じて変形し、孔H2のうち索体18で塞がれていない部分を塞ぐ。
【0072】
この変形例によれば、蓋部材153が孔H2を塞いだ状態において、気嚢11内の軽量ガスが気嚢11外へと漏れ出すことが防止される。
【0073】
例えば、索体18の巻き取りにより気嚢11が潰されて、気嚢11内の軽量ガスの一部が排気され、飛翔体1が下降を開始した場合、気嚢11には周りの空気により下から上へと押し上げる力が加わる。そのため、緩やかに飛翔体1を下降させたい場合であっても、孔H2と孔H3が塞がれていなければ、周りの空気による力で気嚢11が押し潰され、気嚢11内に残っていた軽量ガスが気嚢11外へと排気されて、意図する速度より速い速度で飛翔体1が下降してしまう場合がある。上述した変形例に係る飛翔体1によれば、そのような不都合が生じない。
【0074】
なお、この変形例に係る飛翔体1が備える開閉機構の構成は上述したものに限られない。例えば、開閉機構がモータ23に代えて、アクチュエータ等の他の種類の構成部により蓋部材153を回転してもよい。また、開閉機構がモータ23等を有さずに、ロード13内の人が手動で蓋部材153を回転してもよい。また、開閉機構が開閉弁を有し、開閉弁の開閉により気嚢11の底部の孔を開閉してもよい。
【0075】
(5)頂部材12が気嚢11の内外を通じさせる孔(頂部孔の一例)を有し、飛翔体1が、当該孔を開閉する開閉機構を備えてもよい。
【0076】
頂部材12の孔を開閉する開閉機構としては、例えば、上述した変形例(4)において底部材15が有するものとした開閉機構と同様の構成の開閉機構が採用され得る。ただし、頂部材12の孔を開閉する開閉機構の構成はそれに限られず、例えば、アクチュエータにより蓋を開閉する構成、ロード13内の人が制御索等を介して手動で蓋を開閉する構成、孔を塞ぐように配置された開閉弁を開閉する構成等のいずれが採用されてもよい。
【0077】
頂部材12が開閉機構を備えると、気嚢11内の軽量ガスを排気する際に頂部材12が有する孔を開放することで、軽量ガスの排気の速度を速めることができるとともに、気嚢11内に残存する軽量ガスを減らすことができる。
【0078】
また、飛翔体1が落下する際に、頂部材12の開閉機構により気嚢11の頂部の孔を開放することで、パラシュートの傘の役割を果たす潰れた気嚢11(
図3(B)参照)の中央部分に下から上へと空気が抜ける孔が生じる。その結果、そのような孔が生じない場合と比較し、落下中の飛翔体1の姿勢が安定する。
【0079】
(6)上述した実施形態において、頂部材12は気嚢11を挟み込むことで気嚢11に取り付けられる。頂部材12が気嚢11に取り付けられる構成はこれに限られない。例えば、頂部材12が内部材122を有さず外部材121のみで構成され、気嚢11に対し頂部材12が接着等により取り付けられてもよい。
【0080】
(7)上述した実施形態において、底部材15は気嚢11を挟み込むことで気嚢11に取り付けられる。底部材15が気嚢11に取り付けられる構成はこれに限られない。例えば、底部材15が外部材152を有さず内部材151のみで構成され、気嚢11に対し底部材15が接着等により取り付けられてもよい。
【0081】
(8)上述した実施形態において、滑車17は頂部材12を介して気嚢11に取り付けられる。これに代えて、飛翔体1が頂部材12を備えず、滑車17が気嚢11に直接、取り付けられてもよい。
【0082】
(9)上述した実施形態において、索体18は底部材15を介して気嚢11に取り付けられる。これに代えて、飛翔体1が底部材15を備えず、索体18が気嚢11に直接、取り付けられてもよい。
【0083】
(10)上述した実施形態において、頂部材12及び底部材15は気嚢11と異なる材料(例えば、硬質プラスチック、軽金属等)で作られた部材であるものとしたが、頂部材12の少なくとも一部、又は、底部材15の少なくとも一部が、気嚢11と同じ材料で作られた部材であってもよい。その場合、頂部材12の少なくとも一部、又は、底部材15の少なくとも一部が、気嚢11と一体に成形されてもよい。
【0084】
(11)上述した実施形態において、飛翔体1はスカート16を備えるものとしたが、飛翔体1がスカート16を備えなくてもよい。気嚢11内の軽量ガスが多少、孔H1から気嚢11外へと漏れ出て気嚢11内の下側に空気が入っても、気嚢11内で上側に位置する軽量ガスの大半は気嚢11内に留まるため、飛翔体1の飛翔に差し支えない場合がある。そのような場合、スカート16は不要である。
【0085】
(12)上述した実施形態において、図を用いて示した頂部材12、底部材15等の構成、形状、大きさ、配置等は例示であって、様々に変更されてよい。例えば、頂部材12を構成する外部材121と内部材122の内外の位置関係が反対であってもよい。同様に、底部材15を構成する内部材151と外部材152の内外の位置関係が反対であってもよい。また、上述した実施形態においては、索体18は底部材15から上に延び、滑車17の外側から内側へと掛けられた後、下に延び、ウィンチ19へと向かうものとしたが、索体18が底部材15から上に延び、滑車17の内側から外側へと掛けられた後、下に延び、ウィンチ19へと向かうように構成されてもよい。また、滑車17、索体18、孔H3の数は4つに限られず、1以上のいずれの数であってもよい。また、頂部材12が環状部材1214に代えてフックを有し、ロードテープ14がそれらのフックに取り付けられてもよい。また、ロードテープ14が、頂部材12に対し接着等により取り付けられてもよい。
【0086】
(13)上述した実施形態において、飛翔体1はガス気球であるものとしたが、気嚢11を備える飛翔体である限り、熱気球等の他の種類の気球であってもよいし、飛行船等の気球以外の飛翔体であってもよい。
【0087】
(14)上述した実施形態において、ロードテープ14はその呼称が示すように、帯状の部材が想定されているが、ロードテープ14の形状は帯状に限られず、例えば紐状であってもよい。すなわち、ロードテープ14は、その形状にかかわらず、気嚢11の頂部から経線方向に延伸するように気嚢11に沿って配置された状態で気嚢11に取り付けられ、飛翔体1の飛翔時に飛翔体1のロードの荷重が掛けられる索体であればよい。
【符号の説明】
【0088】
1…飛翔体、11…気嚢、12…頂部材、13…ロード、14…ロードテープ、15…底部材、16…スカート、17…滑車、18…索体、19…ウィンチ、20…連結機構、21…索体、22…ウィンチ、23…モータ、121…外部材、122…内部材、151…内部材、152…外部材、153…蓋部材、171…回転部材、172…基部、201…連結部材、202…連結部材、231…ピニオン、1211…本体、1212…突起部、1213…突起部、1214…環状部材、1511…本体、1512…突起部、1513…筒状部、1514…弾性部材、1531…本体、1532…ラック。
【要約】
【課題】従来技術よりも速やかに飛翔体の高度を下げることを可能とする。
【解決手段】飛翔体1は、気嚢11内に充填された軽量ガスの浮力で飛翔するガス気球である。気嚢11の内側には滑車17が取り付けられており、滑車17には索体18が掛けられている。索体18の一方の端部は気嚢11の底部に取り付けられており、他方の端部は気嚢11の底部に開けられた孔H1を通ってウィンチ19に取り付けられている。ウィンチ19が索体18を巻き取ると、気嚢11が上下方向に潰されて、気嚢11内の軽量ガスが強制排気される。その結果、飛翔体1は速やかに高度を下げることができる。
【選択図】
図2