(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A01M1/02 A
(21)【出願番号】P 2021178274
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2019151414の分割
【原出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓之
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184773(JP,A)
【文献】特許第4129673(JP,B2)
【文献】特開平08-322448(JP,A)
【文献】特許第4793984(JP,B2)
【文献】特表2003-501104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハチ誘引剤及び/又はハチ殺虫剤を収容するための容器であって、
前記容器の外側に向かって下方に傾斜されている傾斜面を有する、ハチが着地するためのポート部を備え
、
前記ポート部の前記傾斜面に、凹凸が形成されている、
容器。
【請求項2】
前記容器の上方に空間を隔てて設けられるように構成された屋根体を更に備える、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
少なくともハチ誘引剤を収容するための請求項2に記載の容器であって、
前記屋根体が、前記容器との間隙の空間に揮発した前記ハチ誘引剤の少なくとも一部が滞留するように構成されている、容器。
【請求項4】
蓋部を更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記蓋部と前記ポート部とが一体的に形成されている、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
少なくともハチ誘引剤を収容するための請求項4又は5に記載の容器であって、
前記蓋部が、前記容器内の前記ハチ誘引剤を揮発により外部に排出するための開口を有する、容器。
【請求項7】
前記ポート部の前記傾斜面に、表面から突出する複数の凸部であって、上面視において、前記容器の中心を中心とする同心円上に形成される複数の凸部が形成されている、請求項
6に記載の容器。
【請求項8】
前記容器を吊り下げるための吊部を更に備える、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
前記ポート部が全周に亘って形成されている、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハチ捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ススメバチなどのハチを捕獲するためのハチ捕獲器が考案されている。
【0003】
特許文献1には、忌避性の少ない殺虫剤を配合した液状の害虫誘引捕獲組成物を用いた害虫誘引捕獲器が開示されている。同文献の
図1に示されるように、害虫誘引捕獲組成物を収納する容器上部の開口部に係合する蓋体には、害虫が容器内部に侵入するための捕獲口が形成されている。
【0004】
特許文献2には、誘引捕獲液の誘引作用によって入り込んだハチが捕獲口より外に飛び出すのを極力なくすことを目的として、蓋と容器との可視光透過率を規定したハチ類誘引捕獲器が開示されている。同文献の
図3に示されるように、誘引捕獲液を収納する容器の開口部に係合する蓋体には、ハチ類が容器内部に侵入するための捕獲口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-73144号公報
【文献】特開2007-174964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らは、従来構造のハチ捕獲器に収納されるハチ誘引剤に誘引されて飛来したハチが、着地する場所を探すような挙動をとる場合があり、また、飛来したハチが着地を諦めて飛び去ってしまう場合があることを知見し、これがハチの捕獲に影響を及ぼすことがわかった。
【0007】
そこで本発明は、ハチが良く捕獲できるように、ハチが着地しやすい構造を備えるハチ捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、下記構造を備えるハチ捕獲器を発明した。
【0009】
具体的には、本発明の一の実施態様では、内部空間にハチを誘引又は殺虫するための薬剤を収容するための容器と、容器の内部空間に連通する捕獲口が形成される蓋部と、ハチが着地するためのポート部と、を備えるハチ捕獲器を提供する。
【0010】
なお、本発明における「ハチの捕獲」とは、広義に、ハチを一時的に容器の内部に捕らえる場合を含む。例えば、ハチを一時的に容器の内部に捕らえ、毒餌剤をハチに摂食させて、帰巣させる場合を含む。
【0011】
ポート部は、捕獲口から離れる方向に延設されることが好ましい。捕獲口は、上方(斜め上方を向く場合も含む)、又は、側方に開口するように設けられてもよい。ポート部は、捕獲口から離れるほど、下方に傾斜する傾斜部を備えていてもよい。ポート部が傾斜部を備えることにより、傾斜部に着地したハチが捕獲口に向かって歩行することを促すことができる。
【0012】
ポート部と蓋部は一体的に設けられてもよい。ポート部と蓋部は、別体として設けられてもよい。両者を一体的に設けることにより、蓋部の表面とポート部の表面を連続的に形成することが可能になる。したがって、ポート部に着地したハチは、容易に、捕獲口に向かって歩行することが可能になる。
【0013】
なお、本明細書で用いる、上方、下方、側方及び離れる方向等の方向を示す用語は、ハチ捕獲器を使用する際の方向を示している。
【0014】
容器は、ハチ誘引剤又はハチ殺虫剤を収容する。使用前に、容器とは別の袋等にハチ誘引剤又はハチ殺虫剤が収容されていてもよい。
【0015】
また、捕獲口とポート部は、それぞれ複数設けられていてもよい。蓋部には、容器の内部空間に連通する第2捕獲口が形成されていてもよい。ハチ捕獲器は、ハチが着地するための第2ポート部を更に備えてもよい。捕獲口と第2捕獲口は、上面視において、蓋部の中心を通過する軸に対し回転中心に設けられてもよい。ポート部と第2ポート部は、上面視において、蓋部の中心を通過する軸に対し回転中心に設けられてもよい。
【0016】
また、複数の捕獲口とポート部を設ける場合、上面視において、2つのポート部の各先端を結ぶ直線は、2つの捕獲口を横断するように構成してもよい。本明細書で用いる「ポート部の先端」とは、上面視において、ポート部のうち、開口縁から最も遠い点として定義される。開口縁から最も遠い点が複数存在する場合、ポート部の先端は、そのような点のうち、捕獲口から最も近い点として定義される。
【0017】
ポート部が傾斜部を有する場合、その表面の傾斜面には、凹凸が形成されていてもよい。たとえば、シボが形成されていてもよい。シボを形成することによって、ハチの肢に引っ掛かりやすい凹凸を設けることが可能になる。また、シボに替えて、ポート部の表面から突出する1又は複数の凸部を設けてもよい。
【0018】
ハチ捕獲器は、更に、捕獲口の上方に空間を隔てて設けられる屋根体を備えてもよい。屋根体を備えることにより、雨等が捕獲口から容器内部に入り込み、ハチ誘引剤等の濃度その他の特性が変化することを抑制することが可能になる。なお、蓋部は、屋根体を支持するために、一部において屋根体と接触し、又は、屋根体と一体的に形成されていてもよい。
【0019】
また、上面視において、ポート部は、屋根体から突出する部分を備えてもよい。このような構成とすることにより、上方から飛来したハチは、ポート部を容易に視認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】屋根体12を取り外したハチ捕獲器10の側面図
【
図5】屋根体12を取り外したハチ捕獲器10の平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
[第1実施形態]
【0022】
図1は、第1実施形態に係るハチ捕獲器10の斜視図である。
図2は、ハチ捕獲器10の正面図、
図3は、ハチ捕獲器10の側面図、
図4及び
図5は、ハチ捕獲器10の平面図(上面図)である。ただし、
図3及び
図5におけるハチ捕獲器10は、屋根体16を取り外している。
【0023】
これら図面に示されるように、ハチ捕獲器10は、容器12、蓋体14及び屋根体16を備えている。
【0024】
容器12は、
図2に示されるように、底面から離れるほど径大となる逆テーパ状の側面を備える筒状の容器である。容器12の上部には、円形の開口が形成されている。たとえば、容器12の底面から上端までの高さは、50mm乃至150mmである。また、容器12の外周面は平滑に形成されている。
【0025】
この容器12の内部空間には、たとえば、ハチ目スズメバチ科のハチであるスズメバチ又はアシナガバチを誘引するためのハチ誘引剤(「薬剤」の一例)を収容することが可能になる。ハチ誘引剤は、たとえば、果汁成分又は樹液成分など、ハチを誘引する効果があると知られている成分を含む液状の誘引剤を用いることができる。ハチ誘引剤は、ハチを殺虫するための殺虫成分と混合されてもよい。
【0026】
蓋体14は、蓋部14Lと、蓋部14Lに接続される2つの第1ポート部14P1及び第2ポート部14P2とを備える。本実施形態において、蓋部14L、第1ポート部14P1及び第2ポート部14P2は、樹脂成形により一体的に形成されている。しかしながら、それぞれ分離可能な別部品から構成してもよい。
【0027】
蓋部14Lは、蓋体14のうち、容器12に係合し、容器12の開口を覆う機能を有する部分である。また、蓋部14Lには、容器12内にハチを侵入させるための2つの捕獲口H1及び捕獲口H2が形成される。
【0028】
具体的には、蓋部14Lは、容器12と係合する係合部14A(
図1)と、
図5に示されるとおり、捕獲口H1が形成される第1平坦部14B1と、捕獲口H2が形成される第2平坦部14B2と、第1平坦部14B1から立設する第1壁部14C1と、第2平坦部14B2から立設する第2壁部14C2と、第1壁部14C1の傾斜する上辺と第2壁部14C2の傾斜する上辺とを接続する傾斜面部14Dを備える。
【0029】
係合部14Aは、容器12の開口を形成する開口縁と係合する部分である。蓋部14Lと容器12を係合するための手段として、様々な手段を用いることができる。たとえば、いずれかにノッチを形成し、他方にこのノッチが係合する切欠きを設け、蓋部14Lを容器12に対して相対的に回転させると、ノッチが切欠きに係合し、蓋部14Lが容器12に装着され反対方向への回転を抑制するようにしてもよい。また、蓋部14Lに雌ねじを形成し、容器12の上縁部にこの雌ねじに螺合する雄ねじを形成してもよい。また、容器12の内部空間にハチ誘引剤を収納させた状態で、接着剤等で両者を接着させてもよい。
【0030】
第1平坦部14B1は、上方を向いた平坦面を備える。また第1平坦部14B1には、上方を向いて開口する捕獲口H1が形成される。
図5に示されるように、第1平坦部14B1は、上面視において扇形状に形成されており、容器12の開口中心側から径方向外側に伸びて容器12の開口縁上に到達する2つの辺を有する。また、捕獲口H1は、上面視において、開口縁から離間し、開口中心に近い位置に形成される。捕獲口H1の直径は、捕獲したいハチの大きさを考慮して、たとえば、15~25mmに形成される。なお、第1平坦部14B1は、容器12の開口縁に到達しないように設けてもよい。例えば、第1平坦部14B1と容器12の開口縁との間に傾斜する面を設け、この傾斜する面によって、第1平坦部14B1と容器12を接続するようにしてもよい。
【0031】
第1壁部14C1は、第1平坦部14B1から立設して形成される。第1壁部14C1と第1平坦部1B1の接続部は、上面視において、開口縁上の離間する2点を接続し、開口中心に向かって凸となる曲線を有する。したがって、第1壁部14C1は水平方向を向き、開口中心方向に窪む湾曲した曲面を有する。
図3に示されるように、第1壁部14C1は、捕獲口H1近傍において最大の高さを有し、捕獲口から離れ開口縁に近づくほど高さが小さくなり、開口縁上で高さがほぼゼロになるように傾斜する2つの上辺を有する。
【0032】
第1ポート部14P1は、第1平坦部14B1と開口縁上で接続し、開口から離れるように外径方向に突出して形成される。
図2に示されるように、第1ポート部14P1は、開口から離れるほど、下方に傾斜する傾斜部を備えている。また
図3に示されるように、中央部において捕獲口及び開口縁からの突出量が最大になり、中央部から離れ、端部に近づくほど開口縁からの突出量が小さくなる。
【0033】
ただし第1ポート部14P1として、様々な形状のものを適用することができる。たとえば、開口縁からの距離が一定となるように第1ポート部14P1を設けてもよい。
【0034】
上面視において、第1ポート部14P1の開口縁からの最大突出量は、たとえば、捕獲口の直径の半分以上であることが好ましい。このように構成することによって、捕獲対象のハチは、少なくとも前肢を第1ポート部に引っ掛けることが可能になる。本実施形態では、捕獲口の直径は、15~25mmであり、上面視における第1ポート部の開口縁からの最大突出量は、10~20mmである。
【0035】
また、第1ポート部14P1の傾斜部表面には、シボ加工により、シボが形成されていてもよい。シボ加工されていれば、捕獲対象のハチは、前肢等を容易に引っ掛けることが可能になる。なお、シボに替えて、又は、シボと共に、第1ポート部14P1の傾斜部表面には、表面から突出する凸部を設けてもよい。凸部は、上面視において、容器12の開口中心を中心とする同心円上に形成してもよい。更に凸部は、複数設けてもよい。たとえば、上面視において、容器12の開口中心を中心とする二つの同心円上にそれぞれ凸部を形成してもよい。更に、上面視において、開口縁、開口縁側に形成される一つ目の凸部、この凸部から離間して外径側に形成される二つの凸部を等間隔に形成してもよい。
【0036】
図5に示されるように、第2平坦部14B2、捕獲口H2、第2壁部14C2、第2ポート部14P2は、第1平坦部14B1、捕獲口H1、第1壁部14C1、第1ポート部14P1と、上面視における開口中心を軸として180度回転対称に形成される。このため詳細な説明を省略する。また、上面視において、第1ポート部14P1の開口縁から最も離れた先端と、第2ポート部14P2の開口縁から最も離れた先端を結ぶ直線(開口中心を通過し、紙面左右方向に進む直線)は、捕獲口H1及び捕獲口H2を通過する。
【0037】
上面視において、開口中心を通過する軸上には、上方に向かって突出する吊部14Eが形成される(
図1)。吊部14Eには、ハチ捕獲器10を吊り下げるための穴が形成されている。
【0038】
また、第1壁部14C1の傾斜する上辺と、第2壁部14C2の傾斜する上辺を接続するように傾斜面部14D(
図3、
図5)は設けられている。傾斜面部14Dは、略円錐面状の傾斜面を備えている。
【0039】
更にハチ捕獲器10は、屋根体16を備えている。屋根体16は、捕獲口H1及び捕獲口H2の上方を覆うように設けられている。本実施形態においては、
図4の上面視に示されるように、捕獲口H1及び捕獲口H2を含む蓋部14L全体は、屋根体16によって覆われている。一方で、第1ポート部14P1及び第2ポート部14P2の先端は、屋根体16から突出する。なお屋根体16の中心部には、吊部14Eと係合するための係合孔が形成される。
【0040】
以上のようなハチ捕獲器10の使用方法の一例について以下に説明する。
【0041】
使用者は、別の袋等に入っているハチ誘引剤を開封して容器12内に入れ、水で薄めることにより、ハチを誘引するために適切な濃度を有する液状のハチ誘引剤を容器12内に収容させることができる。
【0042】
次いで使用者は、蓋体14を容器12と係合させた後、蓋体14に屋根体16を係合させる。なお、蓋体14と容器12を係合するための手段として、様々な手段を用いることができる。たとえば、いずれかに凸部を形成し、他方にこの凸部が係合するノッチを設け、蓋体14を容器12に対して相対的に回転させるか、蓋体14が容器12に近づくように相対的に移動させると、凸部がノッチに係合し、蓋体14が容器12に装着され、容器12が蓋体14に対して相対的に移動することを抑制するようにしてもよい。また、蓋体14に雌ねじを形成し、容器12の上縁部にこの雌ねじに螺合する雄ねじを形成してもよい。また、容器12の内部空間にハチ誘引剤を収納させた状態で、接着剤等で両者を接着させてもよい。回転することにより蓋体14と容器12を係合する場合、容器12の開口は円形であることが好ましい。回転せずに蓋体14と容器12を係合する場合、容器12の開口は円形に限られず、たとえば、矩形、六角形等の多角形であってもよい。また、容器12(又は蓋体14)の一方に、蓋体14方向(又は容器12方向)に突出する係合爪を設け、蓋体14(又は容器12)に、係合爪と嵌合する係合穴を設け両者を嵌合することにより係合させてもよい。次いで使用者は、ハチが飛来しそうな場所において、吊部14Eの穴に紐等を通してハチ捕獲器10を吊り下げることにより、ハチ捕獲器10を設置する。
【0043】
その後、容器12内のハチ誘引剤は、揮発して捕獲口H1及び捕獲口H2から容器12の外部に排出される。捕獲口H1及び捕獲口H2の上方には屋根体16が設けられているため、揮発したハチ誘引剤の一部は、屋根体16と蓋体14との間隙の空間に滞留する。また、傾斜面部14Dと屋根体16との間隙(傾斜面部14Dの屋根体16に対向する傾斜面と、屋根体16の傾斜面部14Dに対向する内面との高さ方向の距離)は、捕獲口H1又は捕獲口H2と屋根体16との間隙(捕獲口H1(又は捕獲口H2)と、屋根体16の捕獲口H1(又は捕獲口H2)に対向する内面との高さ方向の距離)より小さい。このため、傾斜面部14Dと屋根体16との狭い空間を傾斜面に沿って流れる気流は、第1平坦部14B1と屋根体16で囲まれる空間に流れ込み、又は、第2平坦部14B2と屋根体16で囲まれる空間に流れ込むことを促進すると推察される。このため、もともとこの空間に滞留していた誘引剤を第1ポート部14P1等に向かって排出されることが可能になると推察される。
【0044】
ハチ捕獲器10の周囲を飛んでいるハチは、第1平坦部14B1又は第2平坦部14B2と屋根体16との間隙から排出されるハチ誘引剤に誘引されて、第1平坦部14B1又は第2平坦部14B2に近づく。このとき、第1ポート部14P1及び第2ポート部14P2の先端は、屋根体16から突出するため、ハチは、第1ポート部14P1又は2ポート部14P2を視認しやすくなる。また、第1平坦部14B1には第1ポート部14P1が接続され、第2平坦部14B2には第2ポート部14P2が接続される。このため、第1ポート部14P1等が無い場合と比較して、ハチは、蓋体14に着地しやすくなる。したがって、着地することなくハチが飛び去ってしまう場合を抑制することが可能になる。
【0045】
たとえば、第1ポート部14P1に着地したハチは、捕獲口H1に向かって歩行する。このとき、第1ポート部14P1は、捕獲口H1から離れるほど、下方に傾斜する傾斜部を備えている。このため、習性として負の走地性を有するハチの場合、ハチが捕獲口H1に向かって歩行することを促進させることができる。その後ハチは、捕獲口H1から容器12内に侵入する。容器12内には、液状のハチ誘引剤が満たされている。また、容器12の内壁には、水滴等が付着している。このためハチは、容器12の内壁を上って外に出ることができず、やがて、溺死する。
【0046】
以上のとおり、本実施形態に係るハチ捕獲器10によれば、第1ポート部14P1又は第2ポート部14P2が設けられているため、これらポート部が設けられていないハチ捕獲器と比較して、ハチを蓋体14に着地しやすくすることが可能になる。
【0047】
なお、ポート部の位置、形、数は、通常の創作能力の発揮内で適宜変更可能である。たとえば、ポート部は、水平方向に延設してもよい。また、ポート部は、1個でもよいし、3個でもよい。更に、ポート部を全周に亘って形成してもよい。また、捕獲対象のハチが体長30乃至45mm程度のオオスズメバチの場合、ポート部の開口縁から離れる方向の大きさは、3乃至50mm程度とすることが好ましい。また、上面視におけるポート部の開口縁からの突出量は、3乃至50mm程度とすることが好ましい。さらに、屋根体16を設置する場合に、上面視における屋根体16からの突出量は3~50mmであることが好ましい。また、捕獲口の数は、1又は複数であってもよい。ただし、回転対称に2つの捕獲口を設けたことによって、反対方向から飛来したハチであっても、捕獲しやすくなる。また、屋根体16を設け、傾斜面部14Dと屋根体16の間隔を狭くする一方、捕獲口H1等及び第1平坦部14B1等と屋根体16との間隔を大きくした。このため、傾斜面部14Dと屋根体16の間隙を傾斜面部14Dの傾斜面に沿って進行する気流が生じやすくなると推察される。この気流に乗せることによって、揮発して捕獲口H1又は捕獲口H2から排出され滞留していた薬剤を第1平坦部14B1又は第2平坦部14B2から外方へ向かう方向に排出しやすくなると推察される。
【0048】
また、本願の発明者らは、ハチが着地後に入口を探し回る挙動を見せる場合がある点に着目した。本実施形態に係るハチ捕獲器10は、第1平坦部14B1又は第2平坦部14B2に直接接続される第1ポート部14P1又は第2ポート部14P2を備える。このため、第1ポート部14P1等に着地したハチは、捕獲口H1(又は捕獲口H2)が形成される第1平坦部14B1(又は第2平坦部14B2)に向かって容易に進行することが可能になる。特に、第1平坦部14B1と第1ポート部14P1が一体的に形成され、滑らかに接続される曲面又は平面によって接続されている部分が存在する場合、ハチは容易に歩行することが可能になる。
【0049】
屋根体16は、捕獲口H1及び捕獲口H2から容器12内部に雨水等が入り込んでハチ誘引剤等の薬剤の濃度が低下することを抑制することが可能になる。ただし、屋内などにハチ捕獲器10を設置する場合、必ずしも屋根体16を設けなくてもよい。
【0050】
屋根体16を設ける場合、屋根体16は、蓋体14と一体的に形成されてもよい。また、屋根体16は、捕獲口H1等から容器12内部に雨水等が入り込むことを防げばよいので、例えば、円板状に形成してもよい。
【0051】
本願の発明者らは、ハチ捕獲器10の比較例として、ポート部14P1及びポート部14P2を備えない点を除いてハチ捕獲器10と同一構造を備える比較用ハチ捕獲器を用いて、ハチの捕獲頭数を比較する実験を行った。
【0052】
ハチ捕獲器10と比較用ハチ捕獲器に同一のハチ誘引剤を入れて、複数のハチ捕獲器10と比較用ハチ捕獲器を数メートル間隔で配置し、2週間後のハチの捕獲頭数をカウントした。その結果、ハチ捕獲器10の方がより多くのハチを捕獲することができた。したがって、ハチ捕獲器10において、ポート部14P1及びポート部14P2を備えたことにより、ハチをより容易に着地させ、捕獲することが可能になる。
【0053】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 ハチ捕獲器
12 容器
14 蓋体
14A 係合部
14B1 第1平坦部
14B2 第2平坦部
14C1 第1壁部
14C2 第2壁部
14D 傾斜面部
14E 吊部
14L 蓋部
14P1 第1ポート部
14P2 第2ポート部
16 屋根体
H1 捕獲口
H2 捕獲口