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特許7153419刈刃片保護構造、ブレードガード及び芝刈機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】刈刃片保護構造、ブレードガード及び芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/90 20060101AFI20221006BHJP
   A01D 34/73 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A01D34/90 C
A01D34/73 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018204804
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020068709
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】中野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】山田 涼太
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0360695(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015113295(DE,A1)
【文献】国際公開第00/074466(WO,A1)
【文献】実開昭52-058238(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/01
A01D 34/412- 34/90
A01D 42/00 - 42/08
A01D 43/06 - 43/077
A01D 75/00 - 75/30
A01F 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるブレードディスクと、該ブレードディスクの外周部に取り付けられる少なくとも一つの刈刃片と、を備える芝刈機において、該芝刈機による芝刈作業中に前記刈刃片の刃部に障害物が接触することを防止するブレードガードが前記刈刃片に着脱可能に設けられる、刈刃片保護構造。
【請求項2】
回転駆動されるブレードディスクと、該ブレードディスクの外周部に取り付けられる少なくとも一つの刈刃片と、を備える芝刈機において、前記刈刃片に着脱可能に設けられることにより前記芝刈機による芝刈作業中における前記刈刃片の刃部への障害物の接触を防止する、ブレードガード。
【請求項3】
前記ブレードガードは、前記刃部の先端に対応する位置に前記刃部よりも前記ブレードディスクの回転方向の前方へと突出する凸部を備えている、請求項1に記載の刈刃片保護構造又は請求項2に記載のブレードガード。
【請求項4】
前記ブレードガードは前記凸部よりも前記刃部の基端部側に少なくとも一つの凸部をさらに備え、該各凸部は、前記刃部よりも前記ブレードディスクの回転方向の前方へと突出しており、隣り合う凸部同士の間に前記刃部が延在する、請求項3に記載の刈刃片保護構造又はブレードガード。
【請求項5】
前記隣り合う凸部同士の間の間隔は、前記障害物としてのゴルフボールが前記刃部に接触することを防止し得る間隔である、請求項4に記載の刈刃片保護構造又はブレードガード。
【請求項6】
前記ブレードディスクが正逆両方向に回転駆動可能であり、前記刃部と前記ブレードガードとが前記刈刃片における前記ブレードディスクの回転方向の前後の双方に配設される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の刈刃片保護構造又はブレードガード。
【請求項7】
前記ブレードガードが、刈刃片受入部と刈刃片係止部とを備え、該刈刃片係止部は、前記刈刃片受入部に前記刈刃片が受け入れられた状態で該刈刃片を抜け出し不能に係止し、且つ、前記刈刃片の係止を解除可能であり、前記刈刃片係止部による前記刈刃片の係止及び係止解除が、前記ブレードガードの少なくとも一部の弾性変形により可能とされる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の刈刃片保護構造又はブレードガード。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の刈刃片保護構造又はブレードガードを備える芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈機における刈刃片保護構造に関するものであり、特に、芝刈作業中に障害物から刈刃片を保護するための刈刃片保護構造に関するものである。本発明はまた、刈刃片保護構造の構成要素としてのブレードガードに関するものである。さらに、本発明は、刈刃片保護構造又はブレードガードを有する芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芝刈機の一種として、特許文献1,2等に記載されているように、次の構成を有するものが知られている。この芝刈機は、回転駆動されるブレードディスクを備え、このブレードディスクの外周部には、薄板状の刈刃片が遊びのある状態で複数軸支される。そして、ブレードディスクを回転させたときの遠心力により、各刈刃片がブレードディスクの外周から放射状に突出し、刈刃片によって芝草が刈り払われる。このような構成は、無人自走式で作業を行う、いわゆるロボット芝刈機に多く採用されている。
【0003】
他の形式の芝刈機や草刈機と同様に、前記構成の芝刈機においても、作業時に刈刃片が石などの障害物に接触すると刈刃片が破損するので、刈刃片の破損を防止するための対策が必要となる。前記構成の芝刈機は、刈刃片が剃刀の刃のような薄板状であるので、刈刃片の保護が特に重要である。
【0004】
また、ゴルフ練習場等、ゴルフボールが落ちているフィールドで芝刈作業を行う場合には、ゴルフボールも芝刈作業の障害物となる。ゴルフボールに刈刃片が接触すると、刈刃片の破損だけでなく、ゴルフボールの表面に損傷が生じ、ゴルフボールが使用に適さなくなってしまう。
【0005】
そこで従来、特許文献2のFig.2に記載されているように、刈刃片を石やゴルフボール等の障害物から保護するための保護板が、ブレードディスクの下方に配設されている。保護板は、芝刈機の重量とコストとを抑制する観点から、全体が薄板状に形成されている。保護板はブレードディスクの回転から自由である。特許文献2のFig.1に記載されているように、保護板は、ブレードディスクと同心に配設される円板と、この円板の外周に形成される櫛刃状の延び出し部と、を備えている。円板は、ブレードディスクと同径又はブレードディスクよりも小径であり、櫛刃状の延び出し部は、ブレードディスクから突出する刈刃片よりも外方まで延びている。この櫛刃状の延び出し部が、刈刃片による芝草の切断を許容しつつ、刈刃片に対する障害物の接触を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-185099号公報
【文献】欧州特許第1211924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の刈刃片保護構造には次のような多くの問題がある。保護板は薄板形状なので、延び出し部に障害物が衝突すると、延び出し部が変形したり折れたりし易い。延び出し部の強度を高めるには、延び出し部を肉厚にしたり剛性材料で延び出し部を形成したりすれば良いが、これらの対処法では保護板が重くなってしまい、芝刈機の重量化につながる。また、保護板の一部のみが破損した場合でも保護板の全体を交換する必要があるので、コスト上不利である。さらに、保護板がブレードディスクと共回りし易いため、刈刃片による芝刈り性能が阻害され易い。
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、回転駆動されるブレードディスクと、該ブレードディスクの外周部に取り付けられる少なくとも一つの刈刃片と、を備える芝刈機において、刈刃片の刃部に障害物が直接接触することを防止する刈刃片保護構造であって、軽量で破損し難く、破損時の交換コストも節約でき、刈刃片による芝刈り性能も阻害され難い、刈刃片保護構造を提供しようとするものである。
【0009】
本発明はまた、前記刈刃片保護構造の構成要素として用いて好適なブレードガード提供しようとするものである。
【0010】
さらに、本発明は、前記刈刃片保護構造又は前記ブレードガードを有する芝刈機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明に係る刈刃片保護構造は、回転駆動されるブレードディスクと、該ブレードディスクの外周部に取り付けられる少なくとも一つの刈刃片と、を備える芝刈機において、該芝刈機による芝刈作業中に前記刈刃片の刃部に障害物が接触することを防止するブレードガードが前記刈刃片に着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の本発明に係るブレードガードは、回転駆動されるブレードディスクと、該ブレードディスクの外周部に取り付けられる少なくとも一つの刈刃片と、を備える芝刈機において、前記刈刃片に着脱可能に設けられることにより前記芝刈機による芝刈作業中における前記刈刃片の刃部への障害物の接触を防止することを特徴とする。
【0013】
請求項3の本発明に係る刈刃片保護構造及びブレードガードは、請求項1又は2のものにおいて、前記ブレードガードは、前記刃部の先端に対応する位置に前記刃部よりも前記ブレードディスクの回転方向の前方へと突出する凸部を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の本発明に係る刈刃片保護構造及びブレードガードは、請求項3のものにおいて、前記ブレードガードは前記凸部よりも前記刃部の基端部側に少なくとも一つの凸部をさらに備え、該各凸部は、前記刃部よりも前記ブレードディスクの回転方向の前方へと突出しており、隣り合う凸部同士の間に前記刃部が延在することを特徴とする。
【0015】
請求項5の本発明に係る刈刃片保護構造及びブレードガードは、請求項4のものにおいて、前記隣り合う凸部同士の間の間隔は、前記障害物としてのゴルフボールが前記刃部に接触することを防止し得る間隔であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の本発明に係る刈刃片保護構造及びブレードガードは、請求項1乃至5のいずれかのものにおいて、前記ブレードディスクが正逆両方向に回転駆動可能であり、前記刃部と前記ブレードガードとが前記刈刃片における前記ブレードディスクの回転方向の前後の双方に配設されることを特徴とする。
【0018】
請求項の本発明に係る刈刃片保護構造及びブレードガードは、請求項1乃至6のいずれかのものにおいて、前記ブレードガードが、刈刃片受入部と刈刃片係止部とを備え、該刈刃片係止部は、前記刈刃片受入部に前記刈刃片が受け入れられた状態で該刈刃片を抜け出し不能に係止し、且つ、前記刈刃片の係止を解除可能であり、前記刈刃片係止部による前記刈刃片の係止及び係止解除が、前記ブレードガードの少なくとも一部の弾性変形により可能とされることを特徴とする。
【0019】
請求項の本発明に係る芝刈機は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の刈刃片保護構造又はブレードガードを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1,2の本発明によれば、ブレードディスクの回転により、刈刃片が芝を刈る。刈刃片の刃部に障害物が接触することを防止するブレードガードが刈刃片に設けられているので、刈刃片の刃部に障害物が直接接触することが防止され、刈刃片の刃部が保護される。ブレードガードは刈刃片ごとに設けられるので、ブレードガードの強度を高めるための措置を講じても、芝刈機の重量化にはつながりにくい。また、ブレードガードが刈刃片ごとに設けられることから、ブレードガードが破損した場合のブレードガードの交換は刈刃片ごとに行えば良く、交換コストが節約できる。さらに、前記従来の構成とは異なるので、刈刃片による芝刈り性能も阻害され難い。
【0021】
請求項3の本発明によれば、凸部に障害物が接触することで、刈刃片の刃部に障害物が直接接触することが防止される。
【0022】
請求項4の本発明によれば、隣り合う凸部同士の間の間隔を狭くすれば、より小さい障害物が刃部に接触することを防止することができる。
【0023】
請求項5の本発明によれば、ゴルフボールが刃部に接触することを防止できるので、ゴルフ練習場等、ゴルフボールが落ちているフィールドで芝刈作業を行う場合に、刈刃片によるゴルフボールの損傷も防止できる。
【0024】
請求項6の本発明によれば、ブレードディスクが正逆いずれの方向に回転駆動される場合にも、刈刃片によって芝刈作業が行え、且つ、ブレードガードによる刈刃片の保護作用が奏される。よって、刈刃片が片刃の場合に比べて刈刃片の寿命が倍加する。
【0025】
請求項7の本発明によれば、交換用のブレードガードを準備しておくことで、損耗したブレードガードを新たなものへと交換できるので、刈刃片の長期間の使用に対応できて好適である。また、作業現場の状況に応じた複数形態のブレードガードを準備しておくことで、作業現場の状況に合わせて最適なブレードガードを選択して使用できる利点もある。
【0026】
請求項8の本発明によれば、刈刃片係止部による刈刃片の係止及び係止解除が、ブレードガードの少なくとも一部の弾性変形により可能とされるので、刈刃片に対してブレードガードを簡単な作業で迅速に着脱することができる。よって、ブレードガードの交換が簡易迅速に行える。
【0027】
請求項9の本発明によれば、請求項1乃至8の本発明による前記作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の一形態に係る刈刃片保護構造及びブレードガードの適用対象の一例としての芝刈機の全体斜視図である。
図2図1の芝刈機の内部構造を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
図3図2の芝刈機における作業部の斜視図(a)、平面図(b)、側面図(c)、正面図(d)である。
図4図3中の防御刈刃片の拡大斜視図(a)、平面図(b)、この平面図(b)におけるA-A矢視断面図(c)、裏面図(d)である。
図5図4の防御刈刃片を構成する刈刃片の斜視図である。
図6図4の防御刈刃片を構成するブレードガードの拡大斜視図(a)、平面図(b)、この平面図(b)におけるB-B矢視断面図(c)、裏面図(d)である。
図7図4とは別の構成の防御刈刃片の斜視図(a)、平面図(b)、側面図(c)と、該防御刈刃片を構成するブレードガードの斜視図(d)、平面図(e)、側面図(f)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1の芝刈機1は無人自走式のものであり、フィールドを自走しながら、フィールドの芝生を所定の高さに刈り揃えるものである。芝刈機1は下向きに開口した機体カバー1Aを備えており、この機体カバー1Aの内部に、後述する走行機体2と作業部3とが配設されている。
【0031】
図2は、図1における機体カバー1Aを取り外した平面図であり、芝刈機1の内部構造を示している。芝刈機1は、走行部を構成する走行機体2と、走行機体2に搭載される作業部3とを備える。走行機体2は、フレーム24と、左右一対の駆動車輪20,20と、駆動車輪20,20を駆動する駆動部21と、左右一対の舵取り車輪22,22と、舵取り車輪22,22を制御する舵取り調整部23等を備えている。
【0032】
作業部3は、フレーム24に対して上下高さを調整自在に取り付けられている。図示例では、五個の作業部3が走行機体2に搭載されているが、その数は適宜に設定することができる。図示例では、各作業部3がフレーム24に対して平行リンク25を介して昇降自在に配設されている。全ての作業部3は、連結フレーム26によって連結されており、一体となって上下高さが調整自在である。作業部3の上下高さは、芝生の刈り高さに応じて適宜調整し設定される。
【0033】
作業部3は芝刈作業を行うものであり、図3に示すように、モータ30と、モータ30によって回転駆動されるブレードディスク31とを備える。モータ30は、下向き鉛直に配置される駆動軸を備えており、この駆動軸がブレードディスク31の中心に取り付けられている。ブレードディスク31は、駆動軸に直交する回転面内で回転し、ブレードディスク31の回転面をフィールドに対向させた状態で回転駆動される。
【0034】
ブレードディスク31の外周部の下面には、少なくとも一つの防御刈刃片32が揺動自在に取り付けられている。この防御刈刃片32は、後で詳細に述べるように、石などの障害物からの保護機能が付与されている刈刃片である。防御刈刃片32は、例えば段付きボルト等のボルト33とナット34とを含む適宜の取付具によって、ブレードディスク31に対して揺動自在且つ着脱自在に取り付けられる。防御刈刃片32には、取付用のボルト33が挿通される取付孔35(図4参照)が形成される。
【0035】
図3の例では、ブレードディスク31に対して等角度間隔で三つの防御刈刃片32が設けられているが、防御刈刃片32の数はこれより多くても少なくても良い。図3(c)及び(d)に示すように、ブレードディスク31の下方には、防御刈刃片32を地面への衝突等から保護する薄板状の保護板36が設けられている。この保護板36は、ブレードディスク31と同心に配設され、ブレードディスク31から回転自由である。保護板36の直径は、ブレードディスク31の回転による防御刈刃片32の回転領域の直径よりも小さい。防御刈刃片32の内、保護板36よりも径方向外方に位置する刃部39によって実質的な芝刈作業が行われる。
【0036】
防御刈刃片32は、ブレードディスク31の回転による遠心力でブレードディスク31の放射方向に向き、ブレードディスク31の外側に突出する。図3(b)に示すこの姿勢が防護刈刃片32の芝刈姿勢である。芝刈作業中、防御刈刃片32は、芝の抵抗とブレードディスク31の回転による遠心力とを受けて、微小角度範囲内を常に動く。また、作業中に防御刈刃片32が大きな抵抗を受けると、抵抗から逃げるように、防御刈刃片32はブレードディスク31の回転方向とは反対側に退避する。抵抗がなくなると、ブレードディスク31の回転による遠心力で、防御刈刃片32は再び元の芝刈姿勢に復帰する。
【0037】
図4に示すように、各防御刈刃片32は、刈刃片37と、この刈刃片37に設けられるブレードガード38とを備える。刈刃片37は、図5に示すように、長方形の薄板状のものであり、剃刀の刃のような極薄形の鋭利な刃物である。このため、ゴルフ場、サッカー場、陸上競技場、公園、自宅の庭等の、柔らかい芝生を有するフィールドでの芝刈作業に適している。刈刃片37の一端にはブレードディスク31への取付孔35が形成され、刈刃片37の二つの長辺が刃部39とされている。
【0038】
本実施の形態では、刈刃片37が両刃のものとされ、これに対応して、モータ30が正逆回転自在なものとされている。このため、モータ30を正逆いずれの方向に回転させても刈刃片37による芝刈作業が可能となる。よって、刈刃片37が片刃の場合に比べて刈刃片37の寿命が倍加する。
【0039】
図4に示すように、刈刃片37には、刈刃片37の刃部39に石等の障害物が接触することを防止するブレードガード38が設けられている。ブレードガード38は、例えば、金属や合成樹脂など、耐衝撃性や耐摩耗性を有する材料で成形される。ブレードガード38により、刈刃片37の刃部39が保護される。ブレードガード38は刈刃片37ごとに設けられる。このため、ブレードガード38の強度を高めるために、ブレードガード38を肉厚化したり剛性材料でブレードガード38を形成したりしても、芝刈機1の重量化にはつながりにくい。また、ブレードガード38が刈刃片37ごとに設けられることから、ブレードガード38が破損した場合の交換は刈刃片37ごとに行えば良く、交換コストが節約できる。さらに、ブレードガード38が刈刃片37と一体となって回転するので、刈刃片37による芝刈り性能が阻害されることもない。
【0040】
本実施の形態では、ブレードガード38が刈刃片37に対して着脱自在とされている。このため、交換用のブレードガードを準備しておくことにより、障害物に衝突することで損耗したブレードガードを新たなものへと交換できる。よって、刈刃片の長期間の使用に対応できて好適である。また、作業現場の状況に応じた複数形態のブレードガードを準備しておくことで、作業現場の状況に合わせて最適なブレードガードを選択して使用できる利点もある。
【0041】
図4に示すように、ブレードガード38は、刈刃片37の刃部39の先端に対応する位置に第一の凸部40aを備えている。この第一の凸部40aは、刃部39よりもブレードディスク31の回転方向の前方へと突出している。この構成により、第一の凸部40aに障害物が接触することで、刈刃片37の刃部39に障害物が直接接触することが防止される。
【0042】
図4に示すように、ブレードガード38は、第一の凸部40aよりも刃部39の基端部側に少なくとも一つの第二の凸部40bをさらに備える。各第二の凸部40bは、第一の凸部40aと同様に刈刃片37の刃部39よりもブレードディスク31の回転方向の前方へと突出しており、隣り合う凸部同士の間(第一の凸部40aと第二の凸部40bとの間、及び、第二の凸部40bが複数の場合には隣り合う第二の凸部40b同士の間)に刈刃片37の刃部39が延在している。前述の通り、本実施の形態では刈刃片37が両刃のものとされているので、ブレードガード38の第一の凸部40aと第二の凸部40bは、刈刃片37の両方の刃部39,39に対応させて刈刃片37の両側に配設される。
【0043】
ブレードガード38の第一の凸部40aや第二の凸部40bに障害物が接触することで、刈刃片37の刃部39に障害物が直接接触することが防止される。図4の比較例として図7に示すように、隣り合う凸部同士の間の間隔を狭くすれば、より小さい障害物への刃部39の接触を防止することができる。図7のブレードガード41は、刈刃片37を収納し得る鞘体に鋸刃状の切欠きを形成することで、刈刃片37の刃部39に対応する位置に第二の凸部40bを多数形成した例である。
【0044】
なお、隣り合う凸部同士の間の間隔を、障害物としてのゴルフボールが刈刃片37の刃部39に接触することを防止し得る間隔とすれば、ゴルフボールが刃部39に接触することを防止できる。このため、ゴルフ練習場など、ゴルフボールが落ちているフィールドで芝刈作業を行う場合に、刈刃片37によるゴルフボールの損傷も防止できる。隣り合う凸部同士の間の間隔が狭くなればなるほど、芝刈り性能が低下する可能性がある。このため、ゴルフボールの保護と芝刈り性能の維持とを共に達成するには、隣り合う凸部同士の間の間隔を、ゴルフボールが刃部39に接触することを防止できる範囲で最大の間隔にするとよい。
【0045】
次に、図4のブレードガード38の、刈刃片37に対する着脱自在な構成について説明する。ブレードガード38は、図6(c)に示すように、刈刃片受入部42と刈刃片係止部43とを備えている。刈刃片係止部43は、図4(c)に示すように、刈刃片受入部42に刈刃片37が受け入れられた状態で刈刃片37を抜け出し不能に係止し、且つ、刈刃片37の係止を解除可能である。そして、刈刃片係止部43による刈刃片37の係止及び係止解除が、ブレードガード38の少なくとも一部の弾性変形により可能とされる。
【0046】
具体的には、図4及び図6に示すように、刈刃片受入部42は、刈刃片37の外形寸法(幅、長さ、厚さ)に対応する刈刃片収容スペースを画成している。刈刃片受入部42の中間位置には、刈刃片挿入口44が形成され、刈刃片受入部42の一端側(図4図6の左側)には刈刃片ストッパ45が形成され、刈刃片受入部42の他端側(図4図6の右側)には、爪状の刈刃片係止部43が形成されている。そして、刈刃片挿入口44から刈刃片37の一端部37aを挿し入れ、刈刃片受入部42の一端側へと刈刃片37を長さ方向にスライドさせ、刈刃片ストッパ45に当接するまで刈刃片37を挿入することで、刈刃片37を刈刃片受入部42内に収容することができる。図4(c)に示すように、刈刃片受入部42内への刈刃片37の収容状態において、刈刃片係止部43は刈刃片37の他端部37bに係止して、刈刃片37の抜け出しを抑止する。ブレードガード38から刈刃片37を抜き取るには、ブレードガード38の少なくとも一部の弾性変形性を利用して、刈刃片係止部43の刈刃片37に対する係止を解除させる。この係止解除状態で、刈刃片受入部42から刈刃片37を他端部37b側へと抜き取ることができる。
【0047】
前記のような、ブレードガード38の着脱構造によれば、刈刃片係止部43による刈刃片37の係止及び係止解除が、ブレードガード38の少なくとも一部の弾性変形により可能とされるので、刈刃片37に対してブレードガード38を簡単な作業で迅速に着脱することができる。よって、ブレードガード38の交換が簡易迅速に行える。
【0048】
図4(c)(d)及び図6に示すように、ブレードガード38には、刈刃片37の取付孔35と対応する位置に取付孔46が設けられている。刈刃片37にブレードガード38を装着すると刈刃片37の取付孔35とブレードガード38の取付孔46とが同心に位置する。これらの取付孔35,46を利用して、取付用のボルト33(図3参照)によって防御刈刃片32がブレードディスク31に着脱自在に取り付けられる。刈刃片37に対するブレードガード38の着脱作業は、防御刈刃片32をブレードディスク31から取り外した状態で行われる。
【0049】
本発明の他の実施の形態として、次のような変形例も採用可能である。
【0050】
(a)ブレードディスク31の回転方向を一方向のみとし、これに対応させて、刈刃片37を片刃とし、ブレードガード38を片刃に対応する形状とすることができる。
【0051】
(b)本発明が適用される芝刈機の他の例として、作業者によって運転又は操作される芝刈機も挙げられる。例えば、作業者が搭乗して運転しながら芝刈りを行う乗用式のもの、作業者による手押し式のもの、携帯式のもの等である。携帯式の芝刈機としては、例えば、作業者の前後方向に延びる操作桿の前端部にブレードディスク31を備え、操作桿の後端部に設けた原動機でブレードディスク31を回転駆動させ、作業者が操作桿を左右に揺動させながら芝刈りを行う形式のものが挙げられる。
【0052】
(c)ブレードディスク31の回転時に防御刈刃片32の全体が上から見てブレードディスク31の輪郭の範囲内でのみ芝刈作業を行う形式の芝刈機にも適用できる。
【0054】
)ブレードディスク31の外周部に防御刈刃片32を揺動自在に配設する構成に代えて、ブレードディスクの外周部に防御刈刃片を不動状態で固定した態様も採用可能である。
【0055】
)図示例では、刈刃片37の長辺の全体を刃部39とし(図5参照)、この刃部39を部分的に覆うようにブレードガード38を設けている(図4参照)が、別の例として、ブレードガード38で覆われる部分には刃部39を有しない刈刃片を採用することもできる。
【0056】
)第二の凸部40bを省略し、第一の凸部40aのみを有するブレードガードとすることもできる。この場合、第一の凸部40aが障害物に衝突することで、刈刃片37の刃部39が保護される。この実施例では、第一の凸部40aと保護板36の周縁との間に刈刃片37の刃部39が延在するので、第一の凸部40aと保護板36の周縁との間の間隔を、障害物としてのゴルフボールが刃部39に接触することを防止し得る間隔とすれば、刃部39によってゴルフボールが損傷することを防止できる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 芝刈機
31 ブレードディスク
37 刈刃片
38 ブレードガード
39 刃部
40a 凸部(第一の凸部)
40b 凸部(第二の凸部)
41 ブレードガード
42 刈刃片受入部
43 刈刃片係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7