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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】呼吸訓練装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/18 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A63B23/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017233697
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019097981
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月8日に開催された第54回日本リハビリテーション医学会学術集会において頒布されたカタログ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500262898
【氏名又は名称】インターリハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】海老原 覚
【審査官】竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-515398(JP,A)
【文献】米国特許第05848589(US,A)
【文献】特開2012-187292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流通可能な気体流路形成部材と、
前記気体流路形成部材に形成された空気の流入口と、
前記気体流路形成部材に形成され、前記流入口から流入した空気を吸い込み、又は、呼気を吹き込むための口腔側開口と、
前記気体流路形成部材に形成され、前記口腔側開口から流入した呼気の排出口と、を有し、
前記流入口から流入し前記口腔側開口から流出する空気の流路には、吸気時に前記流路を流れる空気の抵抗を調整可能な空気抵抗調整機構が設けられ、
前記空気抵抗調整機構は、前記流路を遮るように配置される複数のメッシュ体と、前記メッシュ体を複数支持可能な被装着部と、を備え、配置される前記メッシュ体の個数を変えることにより、前記流路における空気抵抗を可変とし、
前記メッシュ体は、メッシュ部と、前記メッシュ部の周囲を取囲む円環状部材と、を有し、
前記被装着部は、上方に開口し前記メッシュ体を挿入可能な円弧形状の溝が複数形成された半筒状部材を有する呼吸訓練装置。
【請求項2】
前記複数のメッシュ体は、互いに当接し合う状態で前記被装着部に装着されて、前記流路の一部を形成する請求項1に記載の呼吸訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、呼吸の訓練を行うための呼吸器官鍛錬器が知られている(例えば、特許文献1参照)。呼吸器官鍛錬器は、訓練モードと、測定モードとの切換えを可能とする調節体を備えている。調節体を回転させて、小径の排出口のみが開口するようにすることにより気流抵抗が大となり、訓練モードとして使用可能である。また、全排出口が開口することにより、気流抵抗は小となり、測定モードとして使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2603913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
呼吸の訓練をする際には、呼吸の訓練をする呼吸器官鍛錬器の使用者の呼吸の能力の程度に応じて、使用者による吸気における空気抵抗を適切な値に調整して、呼吸の訓練をできることが理想的であると考えられる。しかし、前述した従来の呼吸器官鍛錬器では、このような調整をすることはできなかった。
【0005】
本発明は、使用者の呼吸の能力の程度に応じて、使用者の吸気の際の空気抵抗を適切な値に調整可能な呼吸訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気が流通可能な気体流路形成部材と、前記気体流路形成部材に形成された空気の流入口と、前記気体流路形成部材に形成され、前記流入口から流入した空気を吸い込み、又は、呼気を吹き込むための口腔側開口と、前記気体流路形成部材に形成され、前記口腔側開口から流入した呼気の排出口と、を有し、前記流入口から流入し前記口腔側開口から流出する空気の流路には、吸気時に前記流路を流れる空気の抵抗を調整可能な空気抵抗調整機構が設けられ、前記空気抵抗調整機構は、前記流路を遮るように配置される複数のメッシュ体と、前記メッシュ体を複数支持可能な被装着部と、を備え、配置される前記メッシュ体の個数を変えることにより、前記流路における空気抵抗を可変とする呼吸訓練装置に関する。
【0007】
ここで、メッシュ体は、メッシュ部と、前記メッシュ部の周囲を取囲む円環状部材と、を有し、前記被装着部は、上方に開口し前記メッシュ体を挿入可能な円弧形状の溝が複数形成された半筒状部材を有することが好ましい。
【0008】
また、前記複数のメッシュ体は、互いに当接し合う状態で前記被装着部に装着されて、前記流路の一部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用者の呼吸の能力の程度に応じて、使用者の吸気における空気抵抗を適切な値に調整可能な呼吸訓練装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による呼吸訓練装置を示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態による呼吸訓練装置を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態による呼吸訓練装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図2においては、説明の便宜上出口部40の図示を省略している。
呼吸訓練装置1は、呼吸における吸気の機能が低下した患者等が呼吸の機能を回復させるために使用されるものであり、図1図2等に示すように、空気が流通する気体流路形成部材10と、それぞれ気体流路形成部材10に形成された、流入口21と、口腔側開口421と、排出口52とを有している。
【0012】
具体的には気体流路形成部材10は、入口部20と、活栓30と、出口部50とを有しており、これらにより空気の流路が形成されている。入口部20は、空気の流入口21を構成する一端部側の部分と、活栓30に接続された他端部側の部分とを有している。入口部20の一端部側の部分には、吸気時に流路を流れる空気の抵抗を調整可能な空気抵抗調整機構22が設けられている。入口部20の他端部側の部分には、蛇腹状の管部材261の一端部が接続されている。
【0013】
空気抵抗調整機構22は、気体流路形成部材10により形成される空気が流通可能な流路であって、流入口21から流入し前記口腔側開口421から流出する空気の流路を遮るように配置される複数のメッシュ体24と、メッシュ体24を複数支持可能な被装着部25と、を備えている。
【0014】
メッシュ体24は、複数(例えば12個)用意されており、各メッシュ体24は、メッシュ部241が2種類用意されていることを除いて同一の構成を有している。即ち、メッシュ体24は、ステンレス製のメッシュ部241と、メッシュ部241の周囲を取囲むステンレス製の円環状部材242とを有している。メッシュ部241は、ステンレス製のメッシュにより構成されており、所定の開口率の目の開きを有している。具体的には、メッシュは、5cmHO/LPSのものが1つと、10cmHO/LPSのものが10個予め用意されており、5cmHO/LPS、10cmHO/LPS、15cmHO/LPS、・・・と、5cmHO/LPSずつ空気抵抗を調整可能とされている。円環状部材242は、それぞれ全体にグリースが塗布された円筒状部243とフランジ部付き円筒状部244とを有している。
【0015】
円筒状部243は、軸方向における長さが短く構成されており、円筒状部243の軸方向における一端部は、内径が小さく構成されている。この内径が小さく構成された部分の端面、即ち、円環状部材242の軸方向における端面には、円筒状部243と同軸的に形成された環状の凹部が形成されており、環状の凹部には、Oリング246が嵌合して設けられている。
【0016】
フランジ部付き円筒状部244は、円筒状部243の外径に等しい内径を有する円筒状の部分を有している。円筒状の部分は円筒状部243の内部に同軸的に挿入され、円筒状の部分の一端部と、円筒状部243の一端部の径が小さい部分とによりメッシュ部241の周縁部が挟まれて、メッシュ部241は円環状部材242に固定されている。フランジ部付き円筒状部244の円筒状の部分の他端部は、フランジ部を有している。
【0017】
被装着部25は、入口部20と一体成形されて構成されており、あたかも管部材の側面の一部が管部材の軸方向に沿って切除された形状を有している。即ち、被装着部25は、上方に向けて開口し複数、例えば、本実施形態では12個のメッシュ体24を挿入可能な円弧形状の溝251が複数形成された半筒状部材250を有している。円弧形状の溝251は、図2に示すように、深さの浅い浅溝部253と、浅溝部253よりも深さの深い深溝部252とが、半筒状部材250の軸方向に沿って交互に12組形成されている。深溝部252には、メッシュ体24のフランジ部付き円筒状部244のフランジ部が係合し、浅溝部253には、メッシュ体24の円筒状部243が係合するように構成されている。
【0018】
このように、深溝部252にメッシュ体24のフランジ部付き円筒状部244のフランジ部が係合し、浅溝部253にメッシュ体24の円筒状部243が係合した状態で、複数のメッシュ体24は、図2に示すように同軸的な位置関係で、被装着部25においてフランジ部付き円筒状部244と円筒状部243とが互いに当接し合う状態で被装着部25に装着されて、複数のメッシュ体24により仕切られた空気の流路の一部を形成する。即ち、図2に示すように、流入口21に最も近い位置に装着されたメッシュ体24から、流入口21から最も遠い位置に装着されたメッシュ体24までは、円環状部材242同士がグリース及びOリング246を介して互いに気密に密着しており、図2に示されるように10個装着されたメッシュ体24の途中から空気が漏れない空気の流路が構成されている。なお、被装着部25には、メッシュ体24を最大で12個挿入可能である。
【0019】
被装着部25に装着するメッシュ体24の個数を変えることにより、空気の流路における空気抵抗が変えられる。具体的には、各メッシュ体24は、メッシュ部241の枚数に対応した空気抵抗を得ることが可能である。
メッシュ体24の個数を変えて適切な個数として、呼吸訓練装置1を使用する使用者の呼吸における吸気の能力の程度に適した空気抵抗として、使用者が呼吸訓練装置1を使用して吸気の訓練を行うことが可能である。
【0020】
活栓30は、22口径の二方弁により構成されており、第1ポート部31と、第2ポート部32と、第3ポート部33と、二方弁の内部の圧力を測定可能な圧力測定用ポート34と、を有している。第1ポート部31には、管部材261の他端部が接続されている。第1ポート部31から活栓30に流入した空気は、図2において矢印Aで示すように、第2ポート部32から流出する。第2ポート部32には、図1に示すように、フィルタ41が接続されており、フィルタ41には、マウスピース42が接続されている。フィルタ41及びマウスピース42は、出口部40を構成する。マウスピース42の開口は、流入口21から流入した空気を吸い込み、又は、呼気を吹き込むための口腔側開口421を構成する。
【0021】
第3ポート部33は、図1図2に示すように出口部50を構成し、口腔側開口421から流入した呼気の排出口52を有している。活栓30には把手311が設けられており、呼吸訓練装置1の使用者は把手311を把持して呼吸における吸気の訓練を行う。
【0022】
圧力測定用ポート34は、第2ポート部32の上部に2つ設けられている。2つの圧力測定用ポート34には、それぞれ管部材341を介して圧力測定器70の入力ポート701が接続されている。第2ポート部32の内部空間は、空気が流通可能な図示しないメッシュによって仕切られている。メッシュは、2つの圧力測定用ポート34の中間の位置に設けられている。
【0023】
圧力測定器70は、中央処理装置71(CPU)と、電源部72と、電源入力端子部73と、圧力表示部74と、圧力センサ75とを有しており、呼吸訓練装置1の使用者の呼吸により変化する活栓30の内部の圧力を計測可能なニューモタコグラフを構成する。計測された圧力は、呼吸訓練装置1の正面パネルに配置された横ぶれ電流計により構成された圧力表示部74おいて表示される。また、活栓30の内部の空気の流量が、アナログ出力として、背面のBNCコネクタ76から出力されるように構成されている。BNCコネクタ76から出力されたアナログ出力は適宜変換され、パーソナルコンピュータ(PC)等において、グラフ等で図示される。圧力測定器70は、電源入力端子部73に電源コードが接続され、交流100V、又は、AC-DCアダプタからの直流12Vの電力が供給されることにより駆動する。
【0024】
次に、上述した呼吸訓練装置1を用いた、呼吸における吸気の訓練について説明する。呼吸訓練装置1の使用者は、マウスピース42の開口(口腔側開口421)が口に入った状態とし、マウスピース42の開口から空気を吸気する。これにより、呼吸訓練装置1の外部の空気は、図2において矢印Aで示すように、流入口21から流路に入り、被装着部25に装着されている複数のメッシュ体24のメッシュ部241を通して入口部20の内部に流入し、活栓30を通り、フィルタ41を通り、マウスピース42の開口(口腔側開口421)から使用者の体内に流入する。このとき、メッシュ体24の個数に応じた空気抵抗が発生し、使用者は、空気抵抗に抗して空気を吸気する。これにより、使用者においては、適度な空気抵抗により、呼吸における吸気の訓練が行われる。
【0025】
その後、使用者が吸気した空気は、使用者の体内からマウスピース42の開口を通してマウスピース42、フィルタ41を流通し、図2において矢印Bで示すように、活栓30を介して出口部50を構成する排出口52を通り、呼吸訓練装置1の外部へ流出する。
【0026】
上述の構成による呼吸訓練装置1は、以下のような効果を発揮することができる。
【0027】
前述のように呼吸訓練装置1は、空気が流通可能な気体流路形成部材10と、気体流路形成部材10に形成された空気の流入口21と、気体流路形成部材10に形成され、流入口21から流入した空気を吸い込み、又は、呼気を吹き込むための口腔側開口421と、気体流路形成部材10に形成され、口腔側開口421から流入した呼気の排出口52と、を有する。
流入口21から流入し口腔側開口421から流出する空気の流路には、吸気時に流路を流れる空気の抵抗を調整可能な空気抵抗調整機構22が設けられている。空気抵抗調整機構22は、流路を遮るように配置される複数のメッシュ体24と、メッシュ体24を複数支持可能な被装着部25と、を備えている。配置されるメッシュ体24の個数が変えられることにより、流路における空気抵抗を可変とする。
【0028】
このため、被装着部25に装着するメッシュ体24の個数を変えることにより、空気の流路における空気抵抗を変えることができる。このため、メッシュ体24の個数を適切な個数として、呼吸訓練装置1を使用する使用者の呼吸の能力の程度に適した空気抵抗として、使用者が呼吸訓練装置1を使用して呼吸の訓練を行うことが可能である。更に、各メッシュ体24は所定の開口率の目の開きを有しているため、被装着部25に装着されるメッシュ体24の個数に応じた空気抵抗を得ることが可能である。
【0029】
また、メッシュ体24は、メッシュ部241と、メッシュ部241の周囲を取囲む円環状部材242と、を有する。被装着部25は、上方に開口しメッシュ体24を挿入可能な円弧形状の溝251が複数形成された半筒状部材250を有する。
【0030】
このため、メッシュ体24の円環状部材242のフランジ部付き円筒状部244のフランジ部を深溝部252に挿入し、円筒状部243を浅溝部253に挿入することにより、容易にメッシュ体24を被装着部25に装着することが可能であり、また、メッシュ体24の円環状部材242のフランジ部付き円筒状部244のフランジ部を深溝部252から取外し、円筒状部243を浅溝部253から取り外すことにより、容易にメッシュ体24を被装着部25から容易に取り外すことができる。
【0031】
また、複数のメッシュ体24は、互いに当接し合う状態で被装着部25に装着されて、流路の一部を形成する。このため、流入口21に最も近い位置に装着されたメッシュ体24から、流入口21から最も遠い位置に装着されたメッシュ体24までは、互いに気密に密着することにより、複数のメッシュ体24の途中、即ち、隣接するメッシュ体24間から空気が漏れない空気の流路を構成することができる。このため、被装着部25の構成を簡単な構成とすることが可能である。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、請求の範囲に記載した範囲において、様々な形態で実施することができる。例えば、気体流路形成部材、流入口、口腔側開口、排出口、空気抵抗調整機構等の構成は、本実施形態における入口部20、出口部50、活栓30、フィルタ41、マウスピース42、弁51、被装着部25、メッシュ体24等の構成に限定されない。従って、例えば、被装着部25に装着可能なメッシュ体24の個数は、5個であったが、この個数に限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1・・・呼吸訓練装置
10・・・気体流路形成部材
21・・・流入口
22・・・空気抵抗調整機構
24・・・メッシュ体
25・・・被装着部
52・・・排出口
241・・・メッシュ部
242・・・円環状部材
251・・・溝
250・・・半筒状部材
421・・・口腔側開口
図1
図2
図3