(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】繊維分散機構および繊維補強コンクリートの製造装置
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20221006BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20221006BHJP
【FI】
B28C7/04
B01F35/71
(21)【出願番号】P 2018037954
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】亀田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】森 正樹
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-109211(JP,A)
【文献】実開平04-125234(JP,U)
【文献】国際公開第2017/149040(WO,A1)
【文献】実開平01-158113(JP,U)
【文献】特開2011-110904(JP,A)
【文献】特開昭63-097517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
B65G 65/46
B01F 35/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維含有コンクリートの組成材料となる繊維を分散する繊維分散機構であって、
重力方向に延伸する直線と交差する第1の軸心を中心として回転する回転式ドラムと、
上記回転式ドラムを回転駆動させる駆動部と、を備え、
上記回転式ドラムに設けられた、上記第1の軸心と交差する2枚の側板のうちの少なくとも一方には、分散前の上記繊維を上記回転式ドラムの内部の空間に取り込む挿入口が形成されており、
上記回転式ドラムの外周壁には、分散された上記繊維を排出する開口部が形成されており、
分散前の繊維を貯留する貯留部と、重力方向に延伸する直線と交差する第2の軸心の周囲を取り囲むように螺旋状に配設された搬送羽根と、を有する搬送機構をさらに備え
、
上記第1の軸心と上記第2の軸心とが、
上記挿入口を貫通する共通の軸心として構成されて
おり、
上記搬送羽根は、上記貯留部から上記回転式ドラムの、上記挿入口よりも内部にまで連なって形成されており、上記第2の軸心を中心として回転することにより上記繊維を上記空間に供給し、
上記繊維は、上記空間において上記回転式ドラムの回転により分散されることを特徴とする繊維分散機構。
【請求項2】
上記回転式ドラムの上記外周壁には、複数の棒状体が上記第1の軸心の周囲を取り囲むように互いに平行に配列されており、
互いに隣接する2つの上記棒状体の間には、上記開口部としての第1の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維分散機構。
【請求項3】
上記搬送羽根と上記第2の軸心との間には、第2の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維分散機構。
【請求項4】
コンクリートを補強するための繊維をコンクリートに配合した繊維補強コンクリートの製造装置であって、
上記繊維を貯留するホッパーと、
請求項1から
3の何れか1項に記載の繊維分散機構と、を備え、
上記繊維分散機構が、上記ホッパーの鉛直下側に設置されており、上記ホッパーから落下する上記繊維を上記貯留部にて受けることを特徴とする繊維補強コンクリートの製造装置。
【請求項5】
コンクリートを補強するための繊維をコンクリートに配合した繊維補強コンクリートの製造装置であって、
上記繊維を一定量ずつ計量する計量器と、
請求項1から
3の何れか1項に記載の繊維分散機構と、を備え、
上記繊維分散機構が、上記計量器の鉛直下側に設置されており、上記計量器から落下する上記繊維を上記貯留部にて受けることを特徴とする繊維補強コンクリートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維補強コンクリートの組成材料となる繊維を分散する繊維分散機構、および該繊維分散機構を備えた繊維補強コンクリートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すような従来の繊維補強コンクリートの製造装置100(以下、「製造装置100」と略記する)においては、事前に一定量計量した短繊維(不図示)を手作業で細かくほぐした上で、繊維投入部51の開口部から繊維ほぐし部52に短繊維を投入する。繊維ほぐし部52は、
図6の(a)に示すように、複数の棒状体52aをスノコ状に配置した構造体であり、繊維投入部51の底部に配設されている。なお、「短繊維」とは、コンクリートに練り混ぜて使用するための繊維を、数ミリ~数センチの長さに切断したものである。
【0003】
そして、
図6の(b)に示すように、繊維ほぐし部52を通じて繊維投入部51と連通しているシュート53に落下してきた短繊維は、当該シュート53に設置された加振部54による振動によってさらにほぐされ、混練装置40に供給される。
【0004】
このように、短繊維を予め手作業でほぐしてから混練装置40に供給することにより、当該短繊維同士が絡み合って粗大塊状態になることを防止していた。さらには、繊維補強コンクリートにいわゆる「ファイバーボール(短繊維が塊状になったもの)」が形成されることを防止していた。
【0005】
なお、粗骨材としての砂は、第1供給部60によって混練装置40に供給される。また、セメントは、第2供給部70によって混練装置40に供給される。さらに、粗骨材としての砂利は、第3投入部80および第4投入部90によって混練装置40に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製造装置100を用いて繊維補強コンクリートを製造する場合、繊維ほぐし部52に投入する前に短繊維を手作業で予めほぐしておく必要があり、煩雑な準備作業等の発生による製造効率の低下を招いていた。
【0007】
また、手作業による短繊維のほぐしでは、繊維の供給量にバラツキが生じたり、あるいは短繊維を作業者が十分にほぐしきれなかったりする、といった問題もある。この場合、短繊維が他のコンクリート組成材料(粗骨材、セメントなど)内に均等に混合されず、その結果、繊維補強コンクリートにファイバーボールが形成されてしまい、硬化したコンクリートにおいて強度が不均一になる可能性もある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造効率を向上させるとともに、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる繊維分散機構などを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る繊維分散機構は、繊維含有コンクリートの組成材料となる繊維を分散する繊維分散機構であって、重力方向に延伸する直線と交差する第1の軸心を中心として回転する回転式ドラムと、上記回転式ドラムを回転駆動させる駆動部と、を備え、上記回転式ドラムに設けられた、上記第1の軸心と交差する2枚の側板のうちの少なくとも一方には、分散前の上記繊維を上記回転式ドラムの内部の空間に取り込む挿入口が形成されており、上記回転式ドラムの外周壁には、分散された上記繊維を排出する開口部が形成されている構成である。
【0010】
上記構成によれば、挿入口に分散前の繊維を取り込ませることにより、回転式ドラムの内部の空間に繊維が取り込まれる。また、駆動部にて回転式ドラムを回転駆動させることにより、回転式ドラムの内部の空間に取り込まれている繊維がほぐされる。また、ほぐされた繊維は、回転式ドラムの外周壁に形成された開口部から排出される。これにより、回転式ドラム内のほぐされた繊維が、分散して後段の設備に落下される。
【0011】
すなわち、本発明の一態様に係る繊維分散機構によれば、繊維分散機構の回転式ドラムの内部の空間に取り込まれた繊維が、手作業を介さず、自動的にほぐされ、分散して後段の設備に落下される。このため、繊維補強コンクリートの製造効率を向上させることができる。
【0012】
また、上記構成によれば、回転式ドラムの回転速度を適切に設定することで、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる。以上により、本発明の一態様に係る繊維分散機構によれば、製造効率を向上させるとともに、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る繊維分散機構は、上記回転式ドラムの上記外周壁には、複数の棒状体が上記第1の軸心の周囲を取り囲むように互いに平行に配列されており、互いに隣接する2つの上記棒状体の間には、上記開口部としての第1の隙間が形成されていても良い。上記構成によれば、回転式ドラムを回転させることにより、複数の棒状体のそれぞれの第1の隙間から繊維が分散して後段の設備に落下される。これにより、均一に分散された繊維を安定的に供給することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る繊維分散機構は、分散前の繊維を貯留する貯留部と、重力方向に延伸する直線と交差する第2の軸心の周囲を取り囲むように螺旋状に配設された搬送羽根と、を有する搬送機構をさらに備え、上記搬送羽根は、上記貯留部から少なくとも上記回転式ドラムの上記挿入口まで連なって形成されており、上記第2の軸心を中心として回転することにより上記繊維を上記空間に供給しても良い。上記構成によれば、搬送機構は、第1の軸心の周囲を取り囲むように螺旋状に配設された搬送羽根を備えている。このため、第2の軸心を中心として搬送羽根を回転させることにより、繊維が、軸心方向に搬送される。よって、回転の向きを適切に設定することにより、繊維を回転式ドラムに向けて搬送することができる。また、搬送羽根を一定の速度で回転させることにより、一定量の繊維が回転式ドラムに向けて搬送される。
【0015】
本発明の一態様に係る繊維分散機構は、上記搬送羽根と上記第2の軸心との間には、第2の隙間が形成されていても良い。上記構成によれば、第2の軸心と搬送羽根との間には第2の隙間が形成されている。この第2の隙間を介して繊維が搬送されるので、搬送羽根に繊維が絡まる可能性を低減できる。このようにして、一定量の繊維を回転式ドラムに向けてスムーズに搬送することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る繊維補強コンクリートの製造装置は、コンクリートを補強するための繊維をコンクリートに配合した繊維補強コンクリートの製造装置であって、上記繊維を貯留するホッパーと、上記繊維分散機構と、を備え、上記繊維分散機構が、上記ホッパーの鉛直下側に設置されており、上記ホッパーから落下する上記繊維を上記貯留部にて受けても良い。上記構成によれば、ホッパーから落下する繊維を、繊維分散機構にて細かくほぐして分散させることで、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る繊維補強コンクリートの製造装置は、コンクリートを補強するための繊維をコンクリートに配合した繊維補強コンクリートの製造装置であって、上記繊維を一定量ずつ計量する計量器と、上記繊維分散機構と、を備え、上記繊維分散機構が、上記計量器の鉛直下側に設置されており、上記計量器から落下する上記繊維を上記貯留部にて受けても良い。上記構成によれば、計量器により一定量ずつ計量された繊維を、繊維分散機構にて細かくほぐして分散させることで、均一にほぐれた一定量の繊維を安定的に供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る繊維分散機構によれば、製造効率を向上させるとともに、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る繊維補強コンクリートの製造装置の外観構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る繊維分散機構の構造の詳細を示す図である。
【
図3】上記繊維分散機構に関し、貯留部内の構造を示す図である。
【
図4】上記繊維分散機構の外観を示す斜視図である。
【
図6】(a)は、従来の繊維補強コンクリートの製造装置の概略構成を示す上面図である。(b)は、従来の繊維補強コンクリートの製造装置の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔繊維補強コンクリート製造装置〕
まず、
図1に基づき、本発明の一実施形態に係る繊維補強コンクリート製造装置10の概要構成について説明する。繊維補強コンクリート製造装置10は、合成繊維や鋼繊維などのコンクリートを補強するための繊維をコンクリートに配合した繊維補強コンクリートを製造する装置である。
図1の(a)は、繊維補強コンクリート製造装置10の概要構成を示す図である。また、
図1の(b)は、
図1の(a)に示す繊維補強コンクリート製造装置10を左側から見たときの様子を示す図である。これらの図に示すように、繊維補強コンクリート製造装置10は、ホッパー1、繊維分散機構2a、コンベア3、計量器4、繊維分散機構2b、シュート5、および混練機構7を備える。
【0021】
ホッパー1は、繊維補強コンクリートの組成材料となる短繊維(繊維:不図示)を一次的に貯留し、貯留した短繊維を後段の設備に落下させるものである。ホッパー1の形状は、ブリッジ防止のため、円筒ストレート形状とすることが好ましい。ここで、「ブリッジ」とは、ホッパー1の下部の出口付近で、短繊維が壁面に付着したり圧縮されたりして、上部の流出が妨げられる現象のことである。また、「短繊維」とは、コンクリートに練り混ぜて使用するための繊維を、数ミリ~数センチの長さに切断したものである。短繊維は、コンクリートに対して補強の効果を発揮し得るものであればよく、例えば、金属繊維、ガラス繊維、有機繊維あるいは炭素繊維が挙げられる。また、短繊維として、金属繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭素繊維のうちの2種類以上を併用してもよい。
【0022】
金属繊維としては、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維あるいはアモルファス繊維が挙げられる。また、有機繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維あるいはポリエチレン繊維が挙げられる。また、炭素繊維としては、例えば、PAN(Polyacrylonitrile)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。コンクリートの硬化体の曲げ強度等を高める観点からは、短繊維として金属繊維を用いるのが好ましい。一方、上記硬化体の破壊エネルギー等を高める観点からは、短繊維として有機繊維または炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0023】
ホッパー1の下部にはホッパー下部機構1aが設けられており(
図5参照)、ホッパー下部機構1aには、短繊維を安定して一定量取出すことが可能な、回転式出し羽根1cが複数設けられている。本実施形態では、回転軸1bの周りに4枚の回転式掻き出し羽根1cが設けられている。回転式掻き出し羽根1cの回転速度は、取出し能力に応じて可変させることが可能である。ホッパー1によれば、貯蔵された短繊維をブリッジによる閉塞なしに、回転式掻き出し羽根1cによって取り出すことができる。
【0024】
繊維分散機構2a,2bは、それぞれ、繊維補強コンクリートの組成材料となる短繊維をほぐし、分散させて後段の設備に落下させるものである。
図2は、繊維分散機構2a,2bの構造の詳細を示す図である。
図2に示すように、繊維分散機構2a,2bは、搬送機構21と回転式ドラム25とを備えている。搬送機構21は、短繊維を貯留する貯留部20を備えており、当該貯留部20に貯留された短繊維を回転式ドラム25に搬送する。回転式ドラム25は、搬送機構21によって搬送された短繊維を回転させて分散し、後段の設備に落下させる。
図3は、貯留部20内の構造を示す図である。
【0025】
また、繊維分散機構2a,2bには、回転式ドラム25が設けられている。回転式ドラム25は、後述するように第1の軸心23aの位置を中心とした円の円周方向に一定のピッチLで設けた複数の棒状体25aを有している構造を為している(
図4参照)。すなわち、回転式ドラム25の外周壁25dには、複数の棒状体25aが第1の軸心23aの周囲を取り囲むように互いに平行に配列されている。また、互いに隣接する2つの棒状体25aの間には第1の隙間が形成されており、開口部h3となっている。これにより、回転式ドラム25を、第1の軸心23aを中心として回転させることで短繊維を微細に分散させて、後段の設備(不図示)に供給することが可能である。
【0026】
なお、
図2に示すように、短繊維は、貯留部20の上部に形成された穴h1を介して、貯留部20の内部に投入される(矢印a参照)。これにより、貯留部20の内部に短繊維が貯留される。次に、回転式ドラム25に設けられた第1の軸心23aと交差する2枚の側板25b,25cのうちの一方の側板25bには、分散前の繊維を回転式ドラム25の内部の空間に取り込む穴(挿入口)h2が形成されている。貯留部20に貯留された短繊維は、搬送機構21により穴h2を介して回転式ドラム25の内部の空間に搬送されて取り込まれる(矢印b参照)。
【0027】
なお、本実施形態では、第1の軸心23aの延伸方向が、概ね水平方向に設定されている場合を例にとって説明するが、第1の軸心23aの延伸方向はこれに限定されない。第1の軸心23aは、重力方向に延伸する直線と交差していれば良い。
【0028】
また、回転式ドラム25によってほぐされた繊維は、回転式ドラム25の外周壁25dに形成された開口部h3から排出され、回転式ドラム25の直下に配置されている箱体の内部に落下(供給)される。このように、回転式ドラム25は、搬送機構21によって搬送された短繊維を回転させて分散させつつ、回転式ドラム25の直下に配置されている箱体の内部に短繊維を供給し、最終的には、箱体の下側の壁に形成された穴h4を介して後段の設備に落下させる(矢印c参照)。
【0029】
ここで、回転式ドラム25の直下に配置された箱体は、回転式ドラム25の開口部h3から排出され、下方に落下する繊維が、予期せぬ方向に飛散してしまうことを防止する役割を果たす。
【0030】
回転式ドラム25に搬送された短繊維は、回転式ドラム25の回転によりほぐされ、分散されて、後段の設備に落下される。すなわち、繊維分散機構2a,2bによれば、貯留部20に貯留される短繊維が、手作業を介さず、自動的にほぐされ、分散して後段の設備に落下される。このため、繊維補強コンクリートの製造効率を向上させることができる。また、回転式ドラム25の回転速度を適切に設定することで、均一にほぐれた短繊維を安定的に供給することができる。以上により、繊維分散機構2a,2bによれば、製造効率を向上させるとともに、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる。なお、回転式ドラム25の回転速度は、使用する短繊維に応じて可変させることが可能である。
【0031】
次に、
図4は、繊維分散機構の外観を示す斜視図である。同図に示すように、回転式ドラム25は、回転式ドラム25の回転中心を規定する第1の軸心23aの方向から見た場合に、第1の軸心23aの周りを取り囲むように配列された複数の棒状体25aを有している。別の観点で表現すれば、回転式ドラム25は、第1の軸心23aの位置を中心とした円の円周方向に一定のピッチLで設けた複数の棒状体25aからなる回転籠である。上記構成によれば、第1の軸心23aを回転させることにより、複数の棒状体25aのそれぞれの隙間から繊維が分散して後段の設備に落下される。これにより、均一に分散された繊維を安定的に供給することができる。
【0032】
棒状体25aの断面形状は、丸・三角・四角・長方形等で望ましくは丸形状で、円周方向の取付けピッチLは、使用する繊維の形状により最適なものとする。具体的には、複数の棒状体25aのそれぞれの間のピッチLは、10mm以上、50mm以下であることが好ましい。
【0033】
ピッチLが10mm以上であると、複数の棒状体25aのそれぞれの隙間から短繊維が落下し易くなり、繊維補強コンクリートの製造効率が向上する。一方、ピッチLが50mm以下であると、ファイバーボールが形成されることを抑制することができる。
【0034】
なお、回転式ドラム25の形態は、当該回転式ドラム25が複数の棒状体25aで構成される形態に限定されない。例えば、ドラム缶状の回転式ドラム25の側面に短繊維を通過させる複数のスリット(開口部)が設けられた形態を採用しても良い。
【0035】
次に、
図2に示すように、搬送機構21は、上述した貯留部20の他、第2の軸心23bと、搬送羽根24と、駆動部26とを備えている。なお、上述した第1の軸心23aと第2の軸心23bとは本実施形態のように同一直線上にあっても良いし、同一直線上になくても良い。
【0036】
また、本実施形態では、第2の軸心23bの延伸方向が、概ね水平方向に設定されている場合を例にとって説明するが、第2の軸心23bの延伸方向はこれに限定されない。第2の軸心23bは、重力方向に延伸する直線と交差していれば良い。
【0037】
第2の軸心23bは搬送機構21の回転中心を規定し、駆動部26は第2の軸心23bを回転させる。搬送羽根24は、第2の軸心23bの周囲を取り囲むように螺旋状に配設されており、短繊維を貯留部20から回転式ドラム25に向けて搬送する。駆動部26は、空気、油圧または電気を利用して第2の軸心23bを回転させるものである。
【0038】
上記構成によれば、第2の軸心23bを回転させることにより、短繊維が、第2の軸心23bに沿う方向に搬送される。また、搬送羽根24は、貯留部20から少なくとも回転式ドラム25の穴h2まで連なって形成されている。よって、第2の軸心23bの回転の向きを適切に設定することにより、短繊維を貯留部20から回転式ドラム25に向けて搬送することができる(回転式ドラム25の内部の空間に短繊維を取り込ませることができる)。
【0039】
また、第2の軸心23bを一定の速度で回転させることにより、一定量の短繊維が貯留部20から回転式ドラム25に向けて搬送される。そして、
図3に示すように第2の軸心23bと搬送羽根24との間には隙間CR(第2の隙間)が形成されていることが好ましく、この隙間CRを介して短繊維が搬送されるので、搬送羽根24に短繊維が絡まる可能性を低減できる。このようにして、一定量の短繊維を貯留部20から回転式ドラム25に向けてスムーズに搬送することができる。なお、上述した形態では、回転式ドラム25の第1の軸心23aと搬送機構21の第2の軸心23bとが共通の軸心として構成されている形態について説明したが、これらの軸心をそれぞれ別個独立に構成しても良い。
【0040】
次に、
図1の(a)に示すように、繊維分散機構2aを、上述したホッパー1の鉛直下側に設置し、ホッパー1から落下する短繊維を繊維分散機構2aの貯留部20にて受けるようにしても良い。これにより、ホッパー1から落下する短繊維を、繊維分散機構2aにて細かくほぐして分散させることで、均一にほぐれた繊維を安定的に供給することができる。コンベア3は、繊維分散機構2aによって微細に分散された一定量の短繊維を計量器4に移送するものである。
【0041】
計量器4は、短繊維を予め設定された一定の重量ずつ、自動計量(計量差±1%)するものである。計量器4は、コンベア3の上端の鉛直下側、かつ繊維分散機構2bの貯留部20の鉛直上側に配置されている。繊維分散機構2bにより微細に分散供給された繊維は、計量器4により一定の値に設定された重量に自動計量される。
【0042】
次に、
図1に示すように、繊維分散機構2bを計量器4の鉛直下側に設置し、計量器4から落下する短繊維を繊維分散機構2aの貯留部20にて受けても良い。これにより、計量器4により一定量ずつ計量された短繊維を、繊維分散機構2bにて細かくほぐして分散させることで、均一にほぐれた一定量の繊維を安定的に供給することができる。
【0043】
繊維分散機構2bと、混練機構7との間には、シュート5が設けられている。シュート5には、微細に分散させた短繊維が自重により落下できる角度47°以上の傾斜を設け、短繊維を混練機構7に落下投入させる。シュート5の下部には、混練機構7の内部全域にわたって、短繊維を効率よく浮遊分散させるための空気噴射装置6が設けられている〔
図1の(b)参照〕。空気噴射装置6の空気噴射圧は0.2~0.6Mpaとし、望ましくは0.4Mpaである。なお、上述したシュート5の角度は、シュート5の下部に設けた空気噴射装置6の手前で短繊維を一定の距離で放射できる角度に設定する。
【0044】
混練機構7において短繊維と混練される他の組成材料としては、セメント、粗骨材、減水剤、水等が挙げられる。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントをはじめとする各種ポルトランドセメント等が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、あるいはこれらの混合物が挙げられる。減水剤としては、例えば、リグニン系の減水剤、AE(Air Entraining Agent)減水剤あるいは高性能減水剤が挙げられる。
【0045】
加振機8は、振動により傾斜したシュート5に沿って短繊維を滑らかに落下させるためのものである。自重により短繊維の落下が不可能な場合は、このように加振機8を設け振動により強制的に短繊維を落下させる。
【0046】
上述した繊維補強コンクリート製造装置10によれば、種類(線径、長さ)の異なった短繊維によりできる粗大塊状を、繊維分散機構2a,2bにより自動で細かくほぐすことができる。また、計量器4により短繊維の重量を一定の値に設定された重量に自動計量(計量差±1%)し、空気噴射装置6により短繊維を混練機構7内全域に均一に分散して供給することができる。よって、繊維ダマ(ファイバーボール)の生じない高品質の繊維補強コンクリートを、効率的に製造することができる。
【0047】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 ホッパー 2a,2b 繊維分散機構 4 計量器
10 繊維補強コンクリート製造装置 20 貯留部
21 搬送機構 23a 第1の軸心 23b 第2の軸心
24 搬送羽根 25 回転式ドラム 25a 棒状体
25b,25c 側板 26 駆動部 CR 隙間(第2の隙間)
h2 穴(挿入口) h3 開口部(第1の隙間)