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特許7153460リポタンパク質の取り込み能を測定する方法及び試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】リポタンパク質の取り込み能を測定する方法及び試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20221006BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221006BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20221006BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20221006BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N33/92 A
G01N33/53 W
G01N33/531 B
G01N33/543 501F
G01N21/76
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2018067824
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178932
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】原田 周
(72)【発明者】
【氏名】飯野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓也
(72)【発明者】
【氏名】村上 克洋
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 直哉
(72)【発明者】
【氏名】彭 小玲
(72)【発明者】
【氏名】桐山 真利亜
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/011554(WO,A1)
【文献】特開平08-313518(JP,A)
【文献】特表2012-530900(JP,A)
【文献】特表2004-533236(JP,A)
【文献】特開2016-080685(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合することにより、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程と、
前記リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールの標識に基づいて、前記標識ステロールの取り込み能を測定する工程と
を含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化1】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
リポタンパク質の取り込み能を測定する方法。
【請求項2】
前記リポタンパク質が、高比重リポタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標識ステロールが、標識コレステロールである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記標識コレステロールが、下記の式(III):
【化2】

(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3~8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0~6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0~12の整数であり、
fは、0~24の整数である。)
で表されるタグ付加コレステロールである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タグ付加コレステロールが、タグとして、下記の式(IV):
【化3】

で表される構造、又は、
下記の式(V):
【化4】

で表される構造、又は、
2, 4-ジニトロフェニル基
が付加された構造を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タグ付加コレステロールが、下記の式(VI):
【化5】

又は、下記の式(VII):
【化6】

(式中、nは、0~24の整数である。)
又は、下記の式(VIII):
【化7】

で表される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定工程が、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と、前記リポタンパク質に結合する第1の捕捉体とを混合し、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と前記第1の捕捉体を含む複合体を形成する工程を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の捕捉体が、前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の捕捉体が、固相に固定化されており、前記リポタンパク質が固相上に固定される請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記固相に固定化されたリポタンパク質が、前記標識ステロールを取り込んだ前記リポタンパク質である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定工程が、前記リポタンパク質に取り込まれた前記標識ステロールに由来するシグナルを検出することにより行われる請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定工程が、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と、前記リポタンパク質に結合する第1の捕捉体と、前記標識ステロールに結合する第2の捕捉体とを混合し、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と前記第1の捕捉体と第2の捕捉体とを含む複合体を形成する工程を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記測定工程が、前記第2の捕捉体を検出することにより行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の捕捉体が第2の標識で標識され、前記測定工程が、前記第2の標識に由来するシグナルを検出する工程である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の標識が酵素であり、前記シグナルが、前記酵素と基質との反応産物から生じる化学発光シグナルである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記調製工程を、前記標識ステロールの非特異的吸着を抑制するブロッキング剤の存在下で行う請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ブロッキング剤が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、前記調製工程の前に環状構造を有さない界面活性剤を含む水性媒体である試料希釈用試薬により希釈された試料である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記希釈を、環状オリゴ糖及び/又は測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分の存在下で行う請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記環状オリゴ糖が、シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピルシクロデキストリンであり、前記測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分が、カリクサレンである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記調製工程と前記測定工程の間に、洗浄用試薬により未反応の遊離成分を除去する洗浄工程をさらに含む請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記洗浄工程を、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で行う請求項21に記載の方法。
【請求項23】
試料中のリポタンパク質と、標識ステロールと、環状構造を有さない界面活性剤とを混合することにより、前記標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程と、
前記リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールの標識に基づいて、前記標識ステロールの取り込み能を測定する工程と
を含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化8】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
リポタンパク質の取り込み能を測定する方法。
【請求項24】
標識ステロールと、環状構造を有さない界面活性剤とを含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化9】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法に用いられる、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬。
【請求項25】
環状構造を有さない界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化10】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
請求項1820のいずれか1項に記載の方法に用いられる試料希釈用試薬。
【請求項26】
環状構造を有さない界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化11】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
請求項21又は22に記載の方法に用いられる洗浄用試薬。
【請求項27】
試料中のリポタンパク質と、標識ステロールと、前記リポタンパク質に結合する第1の捕捉体とを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合することにより、前記標識ステロールを含むリポタンパク質と前記第1の捕捉体との複合体を調製する工程と、
前記複合体中の標識ステロールの標識に基づいて、前記リポタンパク質に含まれる標識ステロールを測定する工程と
を含み、前記界面活性剤が、C12H25O-(C2H4O)30-Hで表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び、下記の式(I):
【化12】

(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分(PPO)の分子量が950であり、且つエチレンオキシド(EO)含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が10%であるか、
PPOの分子量が1750であり、且つEO含有量が80%であるか、又は
PPOの分子量が2250であり、且つEO含有量が40%である)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1である、
リポタンパク質に含まれるステロールの測定方法。
【請求項28】
前記第1の捕捉体が、前記リポタンパク質に特異的に結合する抗体である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の捕捉体が、固相に固定化されており、前記リポタンパク質が固相上に固定される請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記リポタンパク質が、高比重リポタンパク質である請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記標識ステロールが、標識コレステロールである請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポタンパク質の取り込み能を測定する方法に関する。また、本発明は、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬に関する。さらに、本発明は、リポタンパク質の取り込み能の測定に用いられる試料希釈用試薬及び洗浄用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質の代謝異常は種々の疾患に関与し、血中の脂質濃度が疾患の指標となることが知られている。しかし、脂質濃度は疾患の存在や疾患リスク等を反映していない場合がある。そこで、脂質濃度などの量的指標だけでなく、リポタンパク質の機能に着目した質的指標が注目されている。
【0003】
例えば、血中の高比重リポタンパク質コレステロール(HDL-C)濃度が高くても心血管疾患(CVD)リスクが低減されない場合があり、HDL-C濃度はCVDリスクを完全に反映していない可能性が指摘されている。高比重リポタンパク質(HDL)の機能が着目されており、HDLによる末梢組織からのコレステロールの排出機能がCVDリスクに対する負の予後因子であることが報告されている。
【0004】
HDLの機能を調べる方法として、例えば、特許文献1には、試料中のリポタンパク質と、タグ付加コレステロールと、リポタンパク質に特異的に結合する抗体とを混合することにより、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と上記の抗体とを含む複合体を形成する工程と、この複合体と、上記のタグに特異的に結合する捕捉体と、標識物質とを結合することにより、複合体を標識する工程と、複合体に結合した標識物質より生じるシグナルを検出する工程とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0315112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
標的物質を検出する測定系において、種々の非特異的な反応や粒子の凝集が生じ得る。本発明は、測定系における非特異反応や粒子凝集を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合することにより、該標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程と、該リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールの標識に基づいて、標識ステロールの取り込み能を測定する工程とを含む、リポタンパク質の取り込み能を測定する方法を提供する。
【0008】
本発明は、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールと、環状構造を有さない界面活性剤とを混合することにより、該標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程と、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールの標識に基づいて、標識ステロールの取り込み能を測定する工程とを含む、リポタンパク質の取り込み能を測定する方法を提供する。
【0009】
本発明は、標識ステロールと、環状構造を有さない界面活性剤とを含む、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬を提供する。
【0010】
本発明は、環状構造を有さない界面活性剤を含む、リポタンパク質の取り込み能の測定に用いられる試料希釈用試薬を提供する。
【0011】
本発明は、環状構造を有さない界面活性剤を含む、リポタンパク質の取り込み能の測定に用いられる洗浄用試薬を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リポタンパク質の取り込み能の測定において、非特異反応や粒子凝集が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図1B】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図1C】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図1D】本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
図2】磁性粒子の回収効率を示すグラフである。
図3】種々の界面活性剤を含む反応バッファーを用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図4】種々の界面活性剤を含む反応バッファーを用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図5】環状構造を有さない界面活性剤を含む反応バッファーを用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図6】環状構造を有さない界面活性剤を含む反応バッファーを用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図7】種々の界面活性剤を含む試料希釈用試薬を用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図8】環状構造を有さない界面活性剤を含む試料希釈用試薬を用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
図9】環状構造を有さない界面活性剤及びシクロデキストリンを含む試料希釈用試薬を用いてHDLのコレステロール取り込み能を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.リポタンパク質の取り込み能を測定する方法1]
本実施形態のリポタンパク質の取り込み能を測定する方法(以下、「測定方法」ともいう)では、まず、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合する。この混合により、環状構造を有さない界面活性剤の存在下にリポタンパク質と標識ステロールとが接触し、該標識ステロールがリポタンパク質に取り込まれる。
【0015】
本実施形態では、後述の実施例に示されるように、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で上記の混合を行うことにより、環状構造を有する界面活性剤を用いた場合に比べて、リポタンパク質による取り込み反応が促進する。それゆえ、本実施形態の測定方法は、リポタンパク質の取り込み能をより高い精度で測定することを可能にする。また、環状構造を有さない界面活性剤は、ブロッキング剤の役割も果たす。そのため、本実施形態では、ウシ血清アルブミン(BSA)などの、免疫学的測定でブロッキング剤として一般的に用いられる動物由来タンパク質を用いなくともよい。動物由来タンパク質は、ロット間の品質が安定しない場合がある。また、動物由来タンパク質は、界面活性剤に比べて、試料中の成分や測定系に添加される抗体や標識ステロールと非特異的に結合する傾向がある。環状構造を有さない界面活性剤は合成品であるので、品質がほぼ一定であり、測定への影響が動物由来タンパク質に比べて軽微である。
【0016】
(環状構造を有さない界面活性剤)
環状構造を有さない界面活性剤とは、非環式化合物である界面活性剤をいう。環状構造を有さない界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から適宜選択できるが、好ましくは非イオン性界面活性剤である。
【0017】
環状構造を有さない非イオン性界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレントリイソステアリン酸、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。環状構造を有さない非イオン性界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記の非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられる。本実施形態では、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが特に好ましい。ポリオキシエチレンラウリルエーテルは市販されており、例えば、日油株式会社のノニオンK-230及びノニオンK-220、花王株式会社のエマルゲン123P及びエマルゲン130Kなどが挙げられる。
【0019】
本実施形態では、ポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物としては、ブロック共重合体が好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのトリブロック共重合体がより好ましい。そのようなブロック共重合体の非イオン性界面活性剤としては、下記の式(I)で表される化合物が特に好ましい。
【0020】
【化1】
(式中、x、y及びzが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分の分子量が、2750以下である)
【0021】
式(I)で表される化合物は、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、又はプルロニック(商標)型非イオン界面活性剤とも呼ばれる。
【0022】
式(I)において、ポリプロピレンオキシド部分(以下、「PPO」ともいう)の分子量とは、-(O-CH(CH3)-CH2)y-で表される部分の分子量であって、分子構造式から算出される分子量をいう。本実施形態では、PPOの分子量は、好ましくは900以上2750以下であり、より好ましくは950以上2750以下であり、特により好ましくは950以上2250以下である。プルロニック型非イオン界面活性剤におけるPPOは、比較的高疎水性であるため、PPOの分子量が大きいほど、界面活性剤の疎水性も大きくなる。そのため、PPOの分子量が2750より高いプルロニック型非イオン界面活性剤は、リポタンパク質に作用して、標識ステロールの取り込みを阻害するおそれがある。
【0023】
式(I)で表される化合物の平均分子量は、1000~13000であることが好ましい。式(I)において、x及びzの和は2~240であることが好ましい。また、式(I)において、yは15~47であることが好ましく、16~47であることがより好ましく、16~39であることが特により好ましい。本明細書において「平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定される重量平均分子量ある。
【0024】
プルロニック型非イオン界面活性剤は市販されており、例えば、BASF社のプルロニックのシリーズ、日油株式会社のプロノンのシリーズ、旭電化工業株式会社のアデカプルロニックのシリーズなどが挙げられる。プルロニックのシリーズは、PPOの分子量を縦軸にとり、エチレンオキシド(EO)含有量(%)を横軸にとったプルロニックグリッド(例えばPitto-Barry A.及びBarry N.P.E., Poly. Chem., 2014, vol.5, p.3291-3297参照)により分類される。プルロニックグリッドは、学術文献だけでなく、種々の製造業者からも提供される。本実施形態では、プルロニックグリッドに基づいて、式(I)で表される化合物を選択してもよい。
【0025】
式(I)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤としては、例えば、プルロニックL31(PPOの分子量:950、EO含有率:10%)、プルロニックL35(PPOの分子量:950、EO含有率:50%)、プルロニックF38(PPOの分子量:950、EO含有率:80%)、プルロニックL42(PPOの分子量:1200、EO含有率:20%)、プルロニックL43(PPOの分子量:1200、EO含有率:30%)、プルロニックL44(PPOの分子量:1200、EO含有率:40%)、プルロニックL61(PPOの分子量:1750、EO含有率:10%)、プルロニックL62(PPOの分子量:1750、EO含有率:20%)、プルロニックL63(PPOの分子量:1750、EO含有率:30%)、プルロニックL64(PPOの分子量:1750、EO含有率:40%)、プルロニックP65(PPOの分子量:1750、EO含有率:50%)、プルロニックF68(PPOの分子量:1750、EO含有率:80%)、プルロニックL72(PPOの分子量:2050、EO含有率:20%)、プルロニックP75(PPOの分子量:2050、EO含有率:50%)、プルロニックF77(PPOの分子量:2050、EO含有率:70%)、プルロニックL81(PPOの分子量:2250、EO含有率:10%)、プルロニックP84(PPOの分子量:2250、EO含有率:40%)、プルロニックP85(PPOの分子量:2250、EO含有率:50%)、プルロニックF87(PPOの分子量:2250、EO含有率:70%)、プルロニックF88(PPOの分子量:2250、EO含有率:80%)、プルロニックL92(PPOの分子量:2750、EO含有率:20%)、プルロニックP94(PPOの分子量:2750、EO含有率:40%)、プルロニックF98(PPOの分子量:2750、EO含有率:80%)などが挙げられる。
【0026】
あるいは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのトリブロック共重合体は、下記の式(II)で表される化合物であってもよい。この化合物は、リバースプルロニック型非イオン界面活性剤とも呼ばれる。
【0027】
【化2】
(式中、p、q及びrが、同一又は異なって、1以上の整数であり、
ポリプロピレンオキシド部分の分子量が、2750以下である)
【0028】
式(II)において、ポリプロピレンオキシド部分の分子量とは、-(O-CH(CH3)-CH2)p-及び-(O-CH(CH3)-CH2)r-で表される部分の分子量の合計であって、分子構造式から算出される分子量をいう。本実施形態では、PPOの分子量は、好ましくは900以上2750以下であり、より好ましくは950以上2250以下である。式(II)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤は市販されており、例えば、BASF社のプルロニック10R5(PPOの分子量:950、EO含有率:50%)などが挙げられる。
【0029】
式(II)で表される化合物の平均分子量は、1000~13000であることが好ましい。式(II)において、qは2~240であることが好ましい。また、式(II)において、p及びrの和は15~47であることが好ましく、16~47であることがより好ましく、16~39であることが特により好ましい。本明細書において「平均分子量」は、GPCによって測定される重量平均分子量ある。
【0030】
(リポタンパク質を含む試料)
本実施形態において、試料は、哺乳動物のリポタンパク質、好ましくはヒトのリポタンパク質を含む限り、特に限定されない。そのような試料としては、例えば、血液、血清、血漿などの血液試料、これらを希釈した試料が挙げられる。
【0031】
本実施形態において、リポタンパク質は、HDL、低比重リポタンパク質(LDL)、中間比重リポタンパク質(IDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、又はカイロミクロン(CM)であり得る。HDLは、1.063 g/mL以上の密度を有するリポタンパク質である。LDLは、1.019 g/mL以上1.063 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。IDLは、1.006 g/mL以上1.019 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。VLDLは、0.95 g/mL以上1.006 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。CMは、0.95 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。それらの中でも、本実施形態の測定方法は、HDLの取り込み能の測定に適している。
【0032】
本実施形態では、超遠心分離法やポリエチレングリコール(PEG)沈殿法などの公知の方法によって血液試料を分離して、所定のリポタンパク質を含む画分を取得してもよい。このようにして得られた所定のリポタンパク質を含む画分を、試料として用いてもよい。
【0033】
リポタンパク質は、コレステロールをエステル化して取り込むことが知られている。標識ステロールとして、後述の標識コレステロールを用いる場合、リポタンパク質によるコレステロールのエステル化反応に必要となる脂肪酸又はそれを含む組成物(例えばリポソーム)を試料に添加してもよい。
【0034】
本実施形態では、リポタンパク質を含む試料を希釈してもよい。例えば、リポタンパク質濃度を調整するために、上記の血液試料又は所定のリポタンパク質を含む画分を水性媒体で希釈して得た液を、試料として用いることができる。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。
【0035】
本実施形態では、リポタンパク質を含む試料を、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で希釈してもよい。例えば、環状構造を有さない界面活性剤を上記の水性媒体に溶解した溶液で、リポタンパク質を含む試料を希釈してもよい。このようにして希釈した試料と、標識ステロールとを混合することにより、リポタンパク質と標識ステロールとが、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で接触する。
【0036】
リポタンパク質の主要な構成成分であるApoAIの濃度は、試料中のリポタンパク質濃度の指標となる。本実施形態では、試料の一部を取り、これに含まれるApoAIの濃度を公知の免疫学的測定法(例えば免疫比濁法)により測定してもよい。得られたApoAIの濃度に基づいて試料を希釈することにより、試料中のリポタンパク質濃度を調整できる。
【0037】
本実施形態では、リポタンパク質を含む試料を、環状オリゴ糖の存在下で希釈してもよい。例えば、環状オリゴ糖を上記の水性媒体に溶解した溶液で、リポタンパク質を含む試料を希釈してもよい。環状オリゴ糖としては、例えば、シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンなどが挙げられる。本実施形態の測定方法では、環状オリゴ糖は、試料に由来するコレステロールを包接して、ブロッキング剤として機能する。
【0038】
本実施形態では、リポタンパク質を含む試料を、測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分の存在下で希釈してもよい。例えば、該成分を上記の水性媒体に溶解した溶液で、リポタンパク質を含む試料を希釈してもよい。測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分としては、例えば、カリクサレンなどが挙げられる。カリクサレンはLDL、VLDL及びCMに結合するが、HDLには結合しない。HDLによる取り込み能を測定する場合、カリクサレンを試料に添加することで、試料に由来するLDL、VLDL及びCMをマスキングできる。
【0039】
本実施形態では、リポタンパク質を含む試料を、標識ステロールの非特異的吸着を防止するためのブロッキング剤の存在下で希釈してもよい。例えば、該ブロッキング剤を上記の水性媒体に溶解した溶液で、リポタンパク質を含む試料を希釈してもよい。ブロッキング剤の添加により、例えば、後述の固相や捕捉体への標識ステロールの非特異的吸着が抑制される。ブロッキング剤は、標識ステロールが、標識コレステロール以外の物質に吸着することを抑制できる成分であればよい。好ましいブロッキング剤としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体が挙げられる。この重合体は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体であってもよいし、他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、疎水性基として炭素数1~20のアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体は市販されている。例えば、日油株式会社のリピジュア(商標)のシリーズが挙げられ、それらの中でもリピジュア-BL203が特に好ましい。
【0040】
(標識ステロール)
標識ステロールは、標識物質を有するステロールである。以下、標識ステロールが有する標識物質を「第1の標識」ともいう。標識ステロールに用いられるステロールは、リポタンパク質に取り込まれる限り、特に限定されない。そのようなステロールとしては、例えば、コレステロール及びその誘導体が挙げられる。コレステロール誘導体としては、例えば、胆汁酸の前駆体、ステロイドの前駆体などが挙げられる。具体的には、3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸、24-アミノ-5-コレン-3β-オルなどが好ましい。
【0041】
本実施形態では、標識ステロールは、標識物質を有するコレステロール(以下、「標識コレステロール」ともいう)が好ましい。標識コレステロールにおけるコレステロール部分は、天然に存在するコレステロールの構造を有してもよいし、又は、天然に存在するコレステロールのC17位に結合しているアルキル鎖から1つ以上のメチレン基及び/又はメチル基が除かれたコレステロール(ノルコレステロールとも呼ばれる)の構造を有してもよい。
【0042】
リポタンパク質はコレステロールをエステル化して取り込むので、リポタンパク質によりエステル化される標識コレステロールを用いることが好ましい。本実施形態では、標識コレステロールは、試料と接触した際に、該試料に含まれる生体由来のレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)によりエステル化される。リポタンパク質による標識コレステロールのエステル化を確認する方法自体は当該技術において公知であり、当業者にとってルーチンに行うことができる。
【0043】
第1の標識は、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールを検出可能にする標識物質であれば、特に限定されない。第1の標識は、例えば、それ自体が検出対象となるタグであってもよいし、検出可能なシグナルを発生する物質(以下、「シグナル発生物質」ともいう)であってもよい。
【0044】
第1の標識としてのタグは、リポタンパク質によるステロールの取り込みを阻害せず、且つ、該タグと特異的に結合できる物質が存在するか又は得られる限り、特に限定されない。以下では、第1の標識としてタグを付加されたステロールを「タグ付加ステロール」ともいう。同様に、第1の標識としてタグを付加されたコレステロールを「タグ付加コレステロール」ともいう。タグ付加コレステロール自体は当該技術分野において公知であり、例えばUS 2017/0315112 A1に記載されている(US 2017/0315112 A1は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0045】
タグ付加コレステロールとしては、例えば、下記の式(III)で表されるタグ付加コレステロールが挙げられる。
【0046】
【化3】
(式中、R1は、メチル基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基であり、
X及びYは、同一又は異なって、-R2-NH-、-NH-R2-、-R2-(C=O)-NH-、-(C=O)-NH-R2-、-R2-NH-(C=O)-、-NH-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-、-(C=O)-R2-、-R2-(C=O)-O-、-(C=O)-O-R2-、-R2-O-(C=O)-、-O-(C=O)-R2-、-R2-(C=S)-NH-、-(C=S)-NH-R2-、-R2-NH-(C=S)-、-NH-(C=S)-R2-、-R2-O-、-O-R2-、-R2-S-、又は-S-R2-で表され、ここで、R2は、それぞれ独立して、結合手、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3~8のシクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であり、
Lは、-(CH2)d-[R3-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-R3]f-(CH2)d-で表わされ、ここで、R3は、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-NH-(C=O)-又は-(C=O)-NH-であり、
TAGは、タグであり、
a及びcは、同一又は異なって、0~6の整数であり、
bは、0又は1であり、
d及びeは、同一又は異なって、0~12の整数であり、
fは、0~24の整数である。)
【0047】
式(III)においてa、b及びcがいずれも0であるとき、この式で表されるタグ付加コレステロールはリンカーを有さず、タグとコレステロール部分とが直接結合している。式(III)においてa、b及びcのいずれかが0でないとき、この式で表されるタグ付加コレステロールは、タグとコレステロール部分との間にリンカー(-[X]a-[L]b-[Y]c-)を有する。リンカーにより、リポタンパク質の外表面に露出したタグと捕捉体とがより結合しやすくなると考えられる。以下に、式(III)の各置換基について説明する。
【0048】
R1は、炭素数1~6のアルキレン基を主鎖とし、いずれかの位置にメチル基を有しいてもよい。R1は、天然に存在するコレステロールのC17位に結合したアルキル鎖に相当する。本実施形態では、R1は、炭素数が1~5の場合、天然に存在するコレステロールにおけるC20の位置にメチル基を有することが好ましい。R1は、炭素数が6の場合、天然に存在するコレステロールのC20位~C27位のアルキル鎖と同じ構造であることが好ましい。
【0049】
[X]aは、R1と、L、[Y]c又はタグとの連結部分に相当する。[Y]cは、R1、[X]a又はLと、タグとの連結部分に相当する。X及びYは、コレステロール部分とリンカーとを結合する反応及びリンカーとタグとを結合する反応の種類に応じて決定される。
【0050】
R2に関して、結合手とは、間に他の原子を介さずに直接結合することをいう。R2が、炭素数1~10のアルキレン基であるとき、そのようなアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、2-エチルヘキシレン、ノニレン及びデシレンなどの基が挙げられる。それらの中でも、炭素数1~4のアルキレン基が好ましい。R2が、置換基を有するアルキレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0051】
R2が、アリーレン基若しくはヘテロアリーレン基であるとき、そのような基は、N、S、O及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数6~12の芳香環であればよい。例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、フラニレン、ピローレン、チオフェニレン、トリアゾーレン、オキサジアゾーレン、ピリジレン、ピリミジレンなどの基が挙げられる。R2が、置換基を有するアリーレン基又はヘテロアリーレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0052】
R2が、シクロアルキレン基若しくはヘテロシクロアルキレン基であるとき、そのような基は、N、S、O及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3~8の非芳香環であればよい。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、ピロリジニレン、ピペリジニレン、モルホリニレンなどの基が挙げられる。R2が、置換基を有するシクロアルキレン基又はヘテロシクロアルキレン基であるとき、上記の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0053】
R2における置換基としては、例えば、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、-NO2、-SH、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、カルボキシアルキル、アミン、アミド、及びチオエーテルなどの基挙げられる。R2は、置換基を複数有していてもよい。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。アルコキシは、-O-アルキル基を示し、このアルキル基は、炭素数1~5、好ましくは炭素数1又は2の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基である。
【0054】
好ましくは、a及びcが共に1であり、X及びYが、同一又は異なって、-(C=O)-NH-、又は-NH-(C=O)-である。
【0055】
Lは、スペーサーに相当し、リンカーに所定の長さを付与するポリマー構造を有する。このポリマー構造部分は、リポタンパク質によるコレステロールの取り込みを阻害せず、且つ、リンカー部分がリポタンパク質に取り込まれにくい性質であることが好ましい。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーが挙げられる。好ましい実施形態において、Lは、-(CH2)d-[O-(CH2)e]f-、又は-[(CH2)e-O]f-(CH2)d-で表わされる構造である。ここで、d及びeは、同一又は異なって、0~12の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは共に2である。fは、0~24の整数、好ましくは2~11の整数、より好ましくは4~11の整数である。
【0056】
タグは、天然由来の物質及び合成された物質のいずれであってもよく、例えば、化合物、ペプチド、タンパク質、核酸及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。化合物は、これと特異的に結合できる物質が存在するか又は得られるかぎり、当該技術において公知の標識化合物であってもよく、例えば、色素化合物などが挙げられる。
【0057】
当該技術分野において、コレステロールはエステル化されることで脂溶性が増大して、リポタンパク質による取り込みが促進することが知られている。コレステロールに付加されるタグは、脂溶性又は疎水性の物質であってもよい。
【0058】
タグと該タグに特異的に結合できる物質との組み合わせとしては、例えば、抗原と該抗原を認識する抗体、ハプテンと抗ハプテン抗体、ペプチド又はタンパク質とそれらを認識するアプタマー、リガンドとその受容体、オリゴヌクレオチドとその相補鎖を有するオリゴヌクレオチド、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、ヒスチジンタグ(6~10残基のヒスチジンを含むペプチド)とニッケル、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)とグルタチオンなどが挙げられる。タグとしての抗原は、当該技術において公知のペプチドタグ及びプロテインタグであってもよく、例えば、FLAG(登録商標)、ヘマグルチニン(HA)、Mycタンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)などが挙げられる。タグとしてのハプテンは、例えば、2, 4-ジニトロフェノールなどが挙げられる。
【0059】
タグ付加ステロールは、タグとして、例えば、下記の式(IV):
【0060】
【化4】
で表される構造、又は、下記の式(V):
【0061】
【化5】
で表される構造が付加されたステロールが挙げられる。式(IV)で表される構造は、ボロンジピロメテン(BODIPY(登録商標))骨格であり、式(V)で表される構造は、ビオチンの一部分を示す。式(IV)又は(V)で表される構造がタグとして付加されたステロールは、これらのタグに対する捕捉体が一般に入手可能であるので、好ましい。また、タグとして2, 4-ジニトロフェニル(DNP)基が付加されたステロールも、抗DNP抗体が市販されているので、好ましい。
【0062】
リンカーを有さないタグ付加コレステロールとしては、例えば、下記の式(VI)で表される蛍光標識コレステロール(23-(ジピロメテンボロンジフルオリド)-24-ノルコレステロール、CAS No: 878557-19-8)が挙げられる。
【0063】
【化6】
【0064】
この蛍光標識コレステロールは、Avanti Polar Lipids社よりTopFluor Cholesterolとの商品名で販売されている。式(VI)で表される蛍光標識コレステロールは、タグ(BODIPY骨格構造を有する蛍光部分)がコレステロールのC23位に直接結合している。上記のBODIPY骨格構造を有する蛍光部分に特異的に結合する捕捉体として、抗BODIPY抗体(BODIPY FL Rabbit IgG Fraction、A-5770、Lifetechnologies社)が市販されている。
【0065】
タグがリンカーを介して結合しているタグ付加コレステロールとしては、下記の式(VII)で表されるビオチン付加コレステロールが挙げられる。
【0066】
【化7】
(式中、nは、0~24の整数、好ましくは2~11の整数、より好ましくは4~11の整数である。)
【0067】
このタグ付加コレステロールにおいては、タグ(式(IV)で表されるビオチン部分)がリンカー(ポリエチレングリコール)を介してコレステロール部分と結合している。ビオチン部分に特異的に結合する捕捉体としては、アビジン又はストレプトアビジンが適している。また、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALP)などの標識物質が結合したアビジン又はストレプトアビジンも市販されている。
【0068】
また、タグがリンカーを介して結合しているタグ付加コレステロールとして、下記の式(VIII)で表されるDNP付加コレステロールが挙げられる。
【0069】
【化8】
【0070】
このタグ付加コレステロールにおいては、DNPがリンカー(-(C=O)-NH-CH2-CH2-NH-)を介してコレステロール部分と結合している。DNPに特異的に結合する捕捉体としては、抗DNP抗体が適している。また、HRP、ALPなどの標識物質が結合した抗DNP抗体も市販されている。
【0071】
ステロール部分とタグとの結合様式は特に限定されないが、ステロール部分とタグとを結合させてもよいし、ステロール部分とタグとをリンカーを介して結合させてもよい。結合手段は特に限定されないが、例えば、官能基を利用したクロスリンクが簡便で好ましい。官能基は特に限定されないが、アミノ基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基は、市販のクロスリンカーを利用できるので好ましい。
【0072】
コレステロールは、C17位に結合しているアルキル鎖に官能基がないので、タグの付加においては、該アルキル鎖に官能基を有するコレステロール誘導体を用いることが好ましい。そのようなコレステロール誘導体としては、例えば、胆汁酸の前駆体、ステロイドの前駆体などが挙げられる。具体的には、3β-ヒドロキシ-Δ5-コレン酸、24-アミノ-5-コレン-3β-オルなどが好ましい。タグの官能基はタグの種類に応じて異なる。例えば、ペプチド又はタンパク質をタグに用いる場合は、アミノ基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基(SH基)が利用でき、ビオチンをタグに用いる場合は、側鎖のカルボキシル基が利用できる。リンカーは、両端に官能基を有するポリマー化合物が好ましい。なお、ビオチンをタグとして付加する場合、市販のビオチン標識試薬を用いてもよい。この試薬は、末端にアミノ基などの官能基を有する様々な長さのスペーサーアーム(PEGなど)を結合させたビオチンが含まれている。
【0073】
第1の標識としてのシグナル発生物質としては、例えば、蛍光物質、発色物質、発光物質、放射性同位元素などが挙げられる。これらのうち、蛍光物質が特に好ましい。蛍光物質は、有極性構造を有する蛍光団を含むことが好ましい。当該技術分野において、有極性構造を有する蛍光団を含む蛍光物質自体は公知である。
【0074】
シグナル発生物質で標識されたステロールは、該物質を公知の方法でステロールに付加することにより製造できる。なお、ステロールにおいて、シグナル発生物質が付加される位置は特に限定されず、用いるシグナル発生物質の種類に応じて適宜決定できる。ステロールとシグナル発生物質との結合様式は特に限定されないが、両者が共有結合を介して直接結合していることが好ましい。
【0075】
蛍光物質を含むステロールとしては、例えば、上記の式(IV)で表されるBODIPY骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識ステロールなどが挙げられる。本実施形態では、市販の蛍光標識ステロールを用いてもよい。例えば、BODIPY骨格構造を有する蛍光団を含むステロールとして、上記の式(VI)で表される蛍光標識コレステロールが挙げられる。式(VI)で表される蛍光標識コレステロールは、470~490 nmの励起波長により、525~550 nmの波長の蛍光シグナルを発生する。
【0076】
(標識ステロールを取り込んだリポタンパク質の調製)
本実施形態において、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとの混合は、例えば、リポタンパク質を含む試料と、標識ステロールを含む溶液と、環状構造を有さない界面活性剤を含む溶液とを混合することにより行うことができる。混合の順序は特に限定されない。これらを混合した後、リポタンパク質が標識ステロールを取りこみ始める。これにより、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製できる。あるいは、環状構造を有さない界面活性剤及び標識ステロールを含む溶液(以下、「反応バッファー」ともいう)をあらかじめ調製し、この反応バッファーと、リポタンパク質を含む試料とを混合してもよい。試料が、環状構造を有さない界面活性剤を含む水性媒体で希釈されている場合は、希釈された試料と、標識ステロールを含む溶液又は反応バッファーとを混合してもよい。試料が、環状構造を有さない界面活性剤を含む水性媒体で希釈されている場合であっても、リポタンパク質と標識ステロールとの接触において、環状構造を有さない界面活性剤を含む溶液や、上記反応バッファーを用いてよい。
【0077】
本実施形態では、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとの混合は、上記の環状オリゴ糖及び環状構造を有さない界面活性剤の存在下で行ってもよい。また、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとの接触は、上記の測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分及び環状構造を有さない界面活性剤の存在下で行ってもよい。例えば、標識ステロールを含む溶液又は反応バッファーに、環状オリゴ糖及び/又は測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分を添加してもよい。
【0078】
本実施形態では、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとの混合は、標識ステロールの非特異的吸着を防止するためのブロッキング剤の存在下で行ってもよい。例えば、標識ステロールを含む溶液又は反応バッファーに該ブロッキング剤を添加してもよい。ブロッキング剤としては、上記の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体が好ましい。
【0079】
標識ステロールの添加量は特に限定されないが、標識ステロールが枯渇しないよう、やや過剰に添加してもよい。例えば、標識ステロールを終濃度0.1μM以上30μM以下、好ましくは1μM以上10μM以下となるように添加できる。
【0080】
環状構造を有さない界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類に応じて適宜設定できる。式(I)で表される化合物を用いる場合は、例えば、終濃度0.001%(v/v)以上0.5%(v/v)以下、好ましくは0.01%(v/v)以上0.1%(v/v)以下となるように添加できる。ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いる場合は、例えば、終濃度0.001%(v/v)以上0.5%(v/v)以下、好ましくは0.01%(v/v)以上0.1%(v/v)以下となるように添加できる。
【0081】
混合における温度及び時間の条件は、特に限定されない。例えば、試料と標識ステロールとの混合液を20~48℃、好ましくは25~42℃にて、1分間~24時間、好ましくは10分間~2時間インキュベーションしてもよい。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0082】
(リポタンパク質と第1の捕捉体との複合体の形成)
本実施形態の測定方法は、リポタンパク質と、該リポタンパク質に結合する第1の捕捉体とを混合する工程をさらに含むことが好ましい。この混合により、リポタンパク質と第1の捕捉体とが接触し、リポタンパク質と第1の捕捉体との複合体が形成される。第1の捕捉体は、リポタンパク質の表面の一部と特異的に結合できる物質であれば特に限定されない。第1の捕捉体としては、リポタンパク質に特異的に結合する抗体が好ましく、リポタンパク質の構成成分であるアポリポプロテインと特異的に結合できる抗体がより好ましい。そのような抗体としては、例えば、抗ApoAI抗体、抗ApoAII抗体などが挙げられる。それらの中でも、抗ApoAI抗体が特に好ましい。市販の抗リポタンパク質抗体及び抗ApoAI抗体を用いてもよい。
【0083】
抗リポタンパク質抗体及び抗ApoAI抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体の由来は特に限定されず、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマ、ラクダなどのいずれの哺乳動物に由来する抗体であってもよい。また、抗体のアイソタイプはIgG、IgM、IgE、IgAなどのいずれであってもよいが、好ましくはIgGである。本実施形態では、第1の捕捉体として、抗体のフラグメント及びその誘導体を用いてもよく、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントなどが挙げられる。
【0084】
リポタンパク質と第1の捕捉体との接触は、リポタンパク質と標識ステロールとの接触の前、リポタンパク質と標識ステロールとの接触と同時、又はリポタンパク質と標識ステロールとの接触の後に行うことができる。リポタンパク質と第1の捕捉体との接触は、例えば、リポタンパク質を含む試料と、標識ステロールを含む溶液と、第1の捕捉体を含む溶液とを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合することにより行うことができる。リポタンパク質を含む試料と、標識ステロールと、第1の捕捉体とを混合する順序は特に限定されない。これらを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。第1の捕捉体の添加量は特に限定されず、第1の捕捉体の種類などに応じて当業者が適宜設定できる。
【0085】
好ましい実施形態では、リポタンパク質と標識ステロールとの接触の後に、該リポタンパク質と第1の捕捉体との接触を行う。これにより、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と第1の捕捉体との複合体が形成される。例えば、まず、リポタンパク質を含む試料と、標識ステロールを含む溶液とを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で混合して、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する。そして、第1の捕捉体を含む溶液を混合する。この場合、リポタンパク質が標識ステロールを取り込んだ後、該リポタンパク質と第1の捕捉体との複合体が形成される。
【0086】
第1の捕捉体として抗ApoAI抗体を用いる場合、抗ApoAI抗体と、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質とが接触する前に、該リポタンパク質を酸化剤で処理してもよい。酸化剤の作用により、抗ApoAI抗体とリポタンパク質との反応性が改善されうる。そのような酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化亜硝酸、二酸化塩素、次亜塩素酸などが挙げられる。
【0087】
リポタンパク質と第1の捕捉体との接触における温度及び時間の条件は、特に限定されない。例えば、上記の混合液を20~48℃、好ましくは25~42℃にて、1分間~24時間、好ましくは10分間~2時間インキュベーションしてもよい。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0088】
本実施形態では、リポタンパク質と第1の捕捉体との複合体を、固相上に形成させてもよい。例えば、リポタンパク質を含む試料と、標識ステロール溶液と、第1の捕捉体を含む溶液と、固相とを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下に混合してもよい。また、リポタンパク質を含む試料と、標識ステロール溶液と、第1の捕捉体を含む溶液とを、環状構造を有さない界面活性剤の存在下に混合した後に、得られた混合液と固相とを混合してもよい。あるいは、第1の捕捉体をあらかじめ固相上に固定化して用いてもよい。例えば、抗リポタンパク質抗体を固定化した固相を、リポタンパク質を含む試料と標識ステロール溶液との混合液に添加することで、固相上に複合体が形成される。固相を用いる場合の温度及び時間の条件は、特に限定されない。例えば、上記のリポタンパク質と第1の捕捉体との接触と同様の条件であってもよい。
【0089】
固相としては、複合体中の第1の捕捉体を捕捉可能な固相が好ましい。固相の種類は特に限定されず、例えば、抗体を物理的に吸着する材質の固相、抗体と特異的に結合する分子が固定化されている固相などが挙げられる。抗体と特異的に結合する分子としては、プロテインA又はG、抗体を特異的に認識する抗体(すなわち二次抗体)などが挙げられる。また、抗体と固相との間を介在する物質の組み合わせを用いて、両者を結合することもできる。そのような物質の組み合わせとしては、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、ハプテンと抗ハプテン抗体などの組み合わせが挙げられる。例えば、第1の捕捉体をあらかじめビオチン修飾している場合、アビジン又はストレプトアビジンが固定化された固相によって第1の捕捉体を捕捉できる。
【0090】
固相の素材は、有機高分子化合物、無機化合物、生体高分子などから選択できる。有機高分子化合物としては、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。無機化合物としては、磁性体(酸化鉄、酸化クロム、コバルト及びフェライトなど)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。生体高分子としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、ゼラチン、セルロースなどが挙げられる。これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。固相の形状は特に限定されず、例えば、粒子、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管などが挙げられる。それらの中でも、マイクロプレート及び粒子が好ましく、96ウェルマイクロプレート及び磁性粒子が特に好ましい。
【0091】
(洗浄工程)
本実施形態では、上記の接触工程と後述の測定工程との間に、未反応の遊離成分を除去する洗浄工程を行ってもよい。この洗浄工程は、B/F分離及び複合体の洗浄を含む。未反応の遊離成分とは、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を含む複合体を構成しない成分である。例えば、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識ステロール、リポタンパク質と結合しなかった遊離の第1の捕捉体などが挙げられる。B/F分離の手段は特に限定されないが、例えば、超遠心分離法などにより複合体だけを回収することで、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。複合体を固相上に形成させている場合、固相が粒子であれば、遠心分離や磁気分離により粒子を回収し、上清を除去することにより、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。固相がマイクロプレートやマイクロチューブなどの容器であれば、未反応の遊離成分を含む液を除去することにより、複合体と、未反応の遊離成分とを分離できる。
【0092】
未反応の遊離成分を除去した後、回収した複合体を適切な水性媒体で洗浄できる。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、PBS及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。本実施形態では、上記の洗浄工程を、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、環状構造を有さない界面活性剤を上記の水性媒体に溶解して洗浄液を調製し、回収した複合体を該洗浄液で洗浄してもよい。固相を用いた場合は、複合体を捕捉した固相を洗浄液で洗浄してもよい。具体的には、回収した複合体又は複合体を捕捉した固相に洗浄液を添加して、B/F分離を再度行う。
【0093】
(取り込み能の測定)
本実施形態の測定方法では、上記の調製工程の後、リポタンパク質による標識ステロールの取り込み能を測定する。取り込み能の測定は、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールに由来するシグナルを検出することにより行われる。このシグナルは、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールの量を反映するので、該シグナルの検出結果はリポタンパク質の取り込み能の指標となる。したがって、本実施形態の測定方法は、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールに由来するシグナルに基づいて、リポタンパク質の取り込み能を評価する方法ともいうことができる。
【0094】
本明細書において、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、及び、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「強」などのように複数の段階に半定量的に検出することを含む。
【0095】
リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールに由来するシグナルは、標識ステロールから直接発生するシグナルであってもよい。そのようなシグナルは、例えば、第1の標識としてシグナル発生物質を有する標識ステロールを用いた場合に検出できる。すなわち、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロール中の第1の標識から発生するシグナルを検出することにより、取り込み能を測定できる。例えば、蛍光標識ステロールを用いた場合は、蛍光強度を測定すればよい。蛍光強度を測定する方法自体は当該技術分野において公知である。例えば、分光蛍光光度計及び蛍光プレートリーダーなどの公知の測定装置を用いて、複合体から生じる蛍光強度を測定できる。励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光標識コレステロールの種類に応じて適宜決定できる。例えば、上記の式(VI)の蛍光標識コレステロールを用いた場合は、励起波長は470~490 nm、蛍光波長は525~550 nmの範囲から決定すればよい。
【0096】
(標識ステロールと第2の捕捉体との複合体の形成)
リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールに由来するシグナルは、リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールを検出するときに発生するシグナルであってもよい。リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールを検出するために、本実施形態では、標識ステロールと、該標識ステロールに結合する第2の捕捉体とを接触させて、複合体を形成させてもよい。この場合、標識ステロールは、タグ付加ステロールが好ましく、タグ付加コレステロールがより好ましい。また、第2の捕捉体は、タグに特異的に結合する物質が好ましい。
【0097】
リポタンパク質に取り込まれたタグ付加コレステロールの検出原理は、次のとおりである。通常、コレステロールは、リポタンパク質に取り込まれると、該リポタンパク質粒子の表層から中心部へと移動する。タグ付加コレステロールにおいて、リポタンパク質に取り込まれるのはコレステロール部分であり、タグは、リポタンパク質の外表面に露出していると考えられる。ここで、「リポタンパク質の外表面」とは、リポタンパク質粒子の外側の面をいう。「外表面に露出している」とは、リポタンパク質の外表面上に存在すること、及び、リポタンパク質の外表面から突出していることの両方を意味する。本実施形態では、この外表面に露出しているタグと、該タグに特異的に結合する第2の捕捉体とを接触させ、複合体を形成する。そして、この複合体中の第2の捕捉体を検出することにより、リポタンパク質に取り込まれたコレステロールを検出する。
【0098】
タグに特異的に結合する物質は、タグの種類に応じて適宜決定できる。例えば、上述したタグと該タグに特異的に結合できる物質との組み合わせを参照して、抗体、リガンド受容体、オリゴヌクレオチド、ビオチン、アビジン(又はストレプトアビジン)、ヒスチジンタグ又はニッケル、GST又はグルタチオンなどから選択できる。それらの中でも、タグに特異的に結合する抗体が好ましい。そのような抗体は、市販の抗体であってもよいし、当該技術において公知の方法により作製した抗体であってもよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体の由来及びアイソタイプは特に限定されず、抗HDL抗体について述べたことと同様である。また、抗体のフラグメント及びその誘導体を用いてもよく、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントなどが挙げられる。
【0099】
本実施形態では、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と第1の捕捉体との複合体を形成した後に、該標識ステロールと第2の捕捉体との接触を行うことが好ましい。特に、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と第1の捕捉体との複合体を固相上に形成した後に、該標識ステロールと第2の捕捉体との接触を行うことが好ましい。これにより、第1の捕捉体と、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と、第2の捕捉体との複合体が形成される。この複合体において、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質は、第1の捕捉体及び第2の捕捉体で挟まれた状態にある。本実施形態では、第1の捕捉体と、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質と、第2の捕捉体との複合体を「サンドイッチ複合体」ともいう。
【0100】
標識ステロールと第2の捕捉体との接触における温度及び時間の条件は、特に限定されない。例えば、リポタンパク質と第1の捕捉体との複合体を含む溶液と、第2の捕捉体を含む溶液との混合物を4~60℃、好ましくは25~42℃にて、1秒間~24時間、好ましくは10分間~2時間インキュベーションしてもよい。インキュベーションの間、混合物は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
【0101】
(第2の標識)
第2の捕捉体は、第2の標識で標識されることが好ましい。第2の捕捉体が第2の標識で標識されている場合、標識ステロールと第2の捕捉体との複合体中の第2の標識に由来するシグナルを検出することにより、取り込み能を測定できる。
【0102】
第2の標識は、シグナル発生物質であってもよいし、他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質を用いることができる。シグナル発生物質としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素などが挙げられる。他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質としては、例えば酵素が挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)、シアニン系色素などの蛍光色素、GFPなどの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。それらの中でも酵素が好ましく、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが特に好ましい。
【0103】
本実施形態では、第2の標識による第2の捕捉体の標識は、第2の捕捉体に第2の標識を直接又は間接的に結合することにより行うことができる。例えば、市販のラベリングキットなどを用いて、第2の標識を第2の捕捉体に直接結合することができる。また、第2の捕捉体に特異的に結合できる抗体を第2の標識で標識して得た二次抗体を用いることで、第2の標識を第2の捕捉体に間接的に結合させてもよい。本実施形態では、第2の標識が結合した第2の捕捉体を用いてもよいし、第2の捕捉体と第2の標識を有する二次抗体とを用いてもよい。
【0104】
本実施形態では、シグナルの検出を行う前に、未反応の遊離成分を除去する洗浄工程を行ってもよい。未反応の遊離成分としては、例えば、タグに結合しなかった遊離の第2の捕捉体、第2の捕捉体と結合しなかった遊離の第2の標識などが挙げられる。洗浄の具体的な手法及び洗浄液については、上述の洗浄工程と同様である。
【0105】
(第2の標識に由来するシグナルの検出)
第2の標識に由来するシグナルを検出する方法自体は、当該技術分野において公知である。本実施形態では、第2の標識に由来するシグナルの種類に応じて、適切な測定方法を選択できる。例えば、第2の標識が酵素である場合、酵素と該酵素に対する基質とが反応することによって発生する光、色などのシグナルを、公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。そのような測定装置としては、分光光度計、ルミノメータなどが挙げられる。
【0106】
酵素の基質は、該酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択することができる。例えば、酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合、基質としては、ルミノール及びその誘導体などの化学発光基質、2, 2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸アンモニウム)(ABTS)、1, 2-フェニレンジアミン(OPD)、3, 3', 5, 5'-テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色基質が挙げられる。また、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質としては、CDP-Star(登録商標)(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2'-(5'-クロロ)トリクシロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3-(4-メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2-(5'-クロロ)トリシクロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ-インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリン酸などの発色基質が挙げられる。
【0107】
第2の標識が放射性同位体である場合は、シグナルとしての放射線を、シンチレーションカウンターなどの公知の装置を用いて測定できる。また、第2の標識が蛍光物質である場合は、シグナルとしての蛍光を、蛍光マイクロプレートリーダーなどの公知の装置を用いて測定できる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
【0108】
好ましい実施形態では、以下の工程を含む、リポタンパク質の取り込み能を測定する方法が提供される:
環状構造を有さない界面活性剤の存在下で、試料中のリポタンパク質と、タグ付加ステロールとを混合することにより、該タグ付加ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程;
環状構造を有さない界面活性剤の存在下で、該タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質に特異的に結合する第1の捕捉体との複合体を固相上に形成する工程;
環状構造を有さない界面活性剤を含む水性媒体で該固相を洗浄することにより、未反応成分を除去する工程;
洗浄後、固相上の複合体と、タグに特異的に結合する第2の捕捉体とを混合することにより、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と第1の捕捉体と第2の捕捉体とを含むサンドイッチ複合体を固相上に形成する工程;及び
該サンドイッチ複合体を測定することにより、標識ステロールの取り込み能を測定する工程。
【0109】
好ましい実施形態では、以下の工程を含む、リポタンパク質の取り込み能を測定する方法が提供される:
環状構造を有さない界面活性剤(第1の界面活性剤)と、試料中のリポタンパク質と、タグ付加ステロールとを混合することにより、該タグ付加ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程;
該タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、環状構造を有さない界面活性剤(第2の界面活性剤)と、リポタンパク質に特異的に結合する第1の捕捉体とを混合することにより、複合体を固相上に形成する工程;
環状構造を有さない界面活性剤(第3の界面活性剤)を含む水性媒体で該固相を洗浄することにより、未反応成分を除去する工程;
洗浄後、固相上の複合体と、タグに特異的に結合する第2の捕捉体とを混合することにより、タグ付加コレステロールを取り込んだリポタンパク質と第1の捕捉体と第2の捕捉体とを含むサンドイッチ複合体を固相上に形成する工程;及び
該サンドイッチ複合体を測定することにより、標識ステロールの取り込み能を測定する工程。
この実施形態において、第1~第3の界面活性剤のうち、少なくとも2つの界面活性剤が同種であってもよいし、第1~第3の界面活性剤がそれぞれ別種の界面活性剤であってもよい。
【0110】
好ましい実施形態では、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質の調製工程において、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まない。また、リポタンパク質を含む試料の希釈工程において、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まない。また、未反応の遊離成分を除去する洗浄工程において、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まない。すなわち、本実施形態の測定方法では、いずれの工程においても、環状構造を有する界面活性剤を用いないことが望ましい。本実施形態では、用いた試料又は試薬に由来する、環状構造を有する界面活性剤が微量に混入する場合であっても、取り込み能の測定結果に影響がないときは、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まないものとみなす。
【0111】
(脂質異常症の判定方法)
さらなる実施形態においては、上記の測定方法で得られたリポタンパク質の取り込み能の結果を、被検者が脂質異常症であるか否かの判定に利用してもよい。すなわち、以下の工程を含む、脂質異常症の判定を補助する方法が提供される:
被検者から得た試料中のリポタンパク質と、標識ステロールとを、環状構造を有しない界面活性剤の存在下で混合することにより、標識ステロールを取り込んだリポタンパク質を調製する工程と、
前記リポタンパク質に取り込まれた標識ステロールに基づいて、前記リポタンパク質の標識ステロールの取り込み能を測定する工程と、
測定結果に基づいて、上記の被検者の脂質異常に関する情報を取得する工程。
【0112】
本実施形態の測定方法により健常者及び脂質異常症患者の試料から得たシグナル測定値のデータを蓄積することで、リポタンパク質の取り込み能に関する閾値又は基準範囲を定めることができる。そして、その閾値又は基準範囲と、被検者の試料を用いた際のシグナル測定値とを比較することで、該被検者の脂質異常に関する情報、すなわち、被検者のリポタンパク質の取り込み能が正常又は基準の範囲内であるか否かの情報を取得することができる。この情報に基づいて、被検者が脂質異常症であるか否かの判定を補助することができる。
【0113】
[2.リポタンパク質の取り込み能を測定する方法2]
本実施形態の測定方法では、試料中のリポタンパク質と、標識ステロールと、環状構造を有さない界面活性剤とが混合される。この混合により、該標識ステロールが取り込まれたリポタンパク質が調製される。
【0114】
リポタンパク質、標識ステロール、及び環状構造を有さない界面活性剤の混合順序は特に限定されない。一実施形態では、混合工程において、リポタンパク質と環状構造を有さない界面活性剤とをまず混合し、その後標識ステロールを添加する。リポタンパク質を含む試料を希釈する場合は、環状構造を有さない界面活性剤を含む試料希釈用試薬を用いてもよいし、希釈の前及び/又は後に環状構造を有さない界面活性剤を試料に添加してもよい。
【0115】
別の実施形態では、混合工程において、リポタンパク質と、標識ステロール及び環状構造を有さない界面活性剤を含む試薬とを混合する。別の実施形態では、混合工程において、リポタンパク質と標識ステロールとをまず混合し、その後界面活性剤を添加する。
【0116】
別の実施形態では、混合工程は、リポタンパク質と環状構造を有さない界面活性剤とを混合する第1程と、この混合液に標識ステロール及び環状構造を有さない界面活性剤を含む試薬をさらに混合する第2工程を含む。第1工程で用いられる環状構造を有さない界面活性剤と、第2工程で用いられる環状構造を有さない界面活性剤とは、同種であってもよいし、別種であってもよい。
【0117】
本実施形態の測定方法のその他の事項は、[1.リポタンパク質の取り込み能を測定する方法1]において述べたことと同様である。
【0118】
[3.リポタンパク質の取り込み能測定用試薬]
本発明の範囲には、上記の測定方法に用いられる試薬も含まれる。すなわち、標識ステロールと、環状構造を有しない界面活性剤とを含むリポタンパク質の取り込み能測定用試薬(以下、「測定用試薬」ともいう)が提供される。標識ステロール及び環状構造を有しない界面活性剤の詳細は、上述のとおりである。本実施形態の測定用試薬は、上記の反応バッファーとして用いることができる。
【0119】
環状構造を有しない界面活性剤は、非イオン性界面活性剤から選択することが好ましい。そのような非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物が好ましい。ポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物としては、ブロック共重合体が好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのトリブロック共重合体がより好ましい。そのようなブロック共重合体の非イオン性界面活性剤としては、上記の式(I)で表される化合物が特に好ましい。
【0120】
標識ステロールは、上記のタグ付加ステロール、又は上記のシグナル発生物質を有するステロールが好ましい。タグ付加ステロールとしては、上記の式(III)で表されるタグ付加コレステロールが挙げられる。それらの中でも、上記の式(VI)、(VII)及び(VIII)で表されるタグ付加コレステロールが好ましい。シグナル発生物質を有するステロールとしては、蛍光標識ステロールが挙げられる。蛍光標識ステロールとしては、例えば、上記の式(VI)で表される蛍光標識コレステロールが挙げられる。
【0121】
本実施形態の測定用試薬は、標識ステロール及び環状構造を有しない界面活性剤が適切な水性媒体に溶解した溶液の形態にあることが好ましい。そのような水性媒体は、リポタンパク質による取り込み反応を阻害しない限り特に限定されない。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、PBS及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。
【0122】
測定用試薬における環状構造を有しない界面活性剤の濃度は、測定用試薬と、リポタンパク質を含む試料とを混合したときに、該界面活性剤の終濃度を0.001%(v/v)以上0.5%(v/v)以下、好ましくは0.01%(v/v)以上0.1%(v/v)以下にできる濃度であればよい。したがって、測定用試薬における環状構造を有しない界面活性剤の濃度は、測定用試薬と試料との混合比から決定できる。本実施形態では、測定用試薬における環状構造を有しない界面活性剤の濃度は、例えば0.002%(v/v)以上10%(v/v)以下、好ましくは0.005%(v/v)以上5%(v/v)以下である。
【0123】
測定用試薬における標識ステロールの濃度は、測定用試薬と、リポタンパク質を含む試料とを混合したときに、該標識ステロールの終濃度を0.1μM以上30μM以下、好ましくは1μM以上10μM以下にできる濃度であればよい。したがって、測定用試薬における標識ステロールの濃度は、測定用試薬と試料との混合比から決定できる。本実施形態では、測定用試薬における標識ステロールの濃度は、例えば0.2μM以上600μM以下、好ましくは2μM以上200μM以下である。
【0124】
本実施形態の測定用試薬は、環状オリゴ糖を含んでもよい。環状オリゴ糖としては、例えば、シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンなどが挙げられる。測定用試薬における環状オリゴ糖の濃度は特に限定されないが、例えば0.2 mM以上20 mM以下、好ましくは1mM以上10 mM以下である。
【0125】
本実施形態の測定用試薬は、測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、カリクサレンなどが挙げられる。測定用試薬における該成分の濃度は特に限定されないが、カリクサレンを用いる場合は、例えば0.1μM以上0.1 mM以下、好ましくは1μM以上5μM以下である。
【0126】
本実施形態の測定用試薬は、標識ステロールの非特異的吸着を防止するためのブロッキング剤を含んでもよい。そのようなブロッキング剤としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体が挙げられる。この重合体の詳細は、上述のとおりである。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体としては、日油株式会社のリピジュア(商標)のシリーズが好ましく、リピジュアBL-203が特に好ましい。測定用試薬における該ブロッキング剤の濃度は特に限定されないが、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体を用いる場合は、例えば0.01%(w/w)以上5%(w/w)以下、好ましくは0.05%(w/w)以上2%(w/w)以下である。
【0127】
好ましい実施形態では、測定用試薬は、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まない。本実施形態では、測定用試薬の調製に用いた原料などに由来する、環状構造を有する界面活性剤が微量に混入する場合であっても、取り込み能の測定結果に影響がないときは、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まないものとみなす。
【0128】
本発明の範囲には、標識ステロールと、環状構造を有しない界面活性剤とを、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬の製造のために使用することも含まれる。すなわち、本発明は、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬の製造のための、標識ステロール、及び環状構造を有しない界面活性剤の使用にも関する。
【0129】
[4.試料希釈用試薬及び洗浄用試薬]
本発明の範囲には、リポタンパク質の取り込み能を測定に用いられる試料希釈用試薬及び洗浄用試薬も含まれる。すなわち、環状構造を有しない界面活性剤を含む試料希釈用試薬及び洗浄用試薬が提供される。環状構造を有しない界面活性剤の詳細は、上述のとおりである。
【0130】
試料希釈用試薬は、本実施形態の測定方法において、リポタンパク質を含む試料を希釈する場合に用いることができる。試料希釈用試薬は、環状構造を有さない界面活性剤を含むので、この試薬で希釈した試料と、標識ステロールとを混合することにより、リポタンパク質と標識ステロールとが、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で接触できる。
【0131】
洗浄用試薬は、本実施形態の測定方法において、未反応の遊離成分を除去する洗浄工程に用いることができる。環状構造を有さない界面活性剤を含む洗浄用試薬を用いることにより、後述の実施例に示されるように、固相としての磁性粒子の回収効率を改善できる。
【0132】
試料希釈用試薬及び洗浄用試薬は、環状構造を有しない界面活性剤が適切な水性媒体に溶解した溶液の形態にあることが好ましい。そのような水性媒体は、リポタンパク質による取り込み反応を阻害しない限り特に限定されない。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、PBS及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。
【0133】
環状構造を有しない界面活性剤は、非イオン性界面活性剤から選択することが好ましい。そのような非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物が好ましい。ポリアルキレングリコールエチレンオキシド付加物としては、ブロック共重合体が好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのトリブロック共重合体がより好ましい。そのようなブロック共重合体の非イオン性界面活性剤としては、上記の式(I)で表される化合物が特に好ましい。試料希釈用試薬及び洗浄用試薬における環状構造を有しない界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、例えば0.002%(v/v)以上10%(v/v)以下、好ましくは0.005%(v/v)以上5%(v/v)以下である。
【0134】
試料希釈用試薬は、環状オリゴ糖を含んでもよい。環状オリゴ糖としては、例えば、シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンなどが挙げられる。各試薬における環状オリゴ糖の濃度は特に限定されないが、例えば0.2 mM以上20 mM以下、好ましくは1mM以上10 mM以下である。
【0135】
試料希釈用試薬は、測定対象のリポタンパク質とは異なるリポタンパク質に結合する成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、カリクサレンなどが挙げられる。各試薬における該成分の濃度は特に限定されないが、カリクサレンを用いる場合は、例えば1μM以上1mM以下、好ましくは10μM以上50μM以下である。
【0136】
試料希釈用試薬及び洗浄用試薬は、標識ステロールの非特異的吸着を防止するためのブロッキング剤を含んでもよい。そのようなブロッキング剤としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体が挙げられる。この重合体の詳細は、上述のとおりである。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体としては、日油株式会社のリピジュア(商標)のシリーズが好ましく、リピジュアBL-203が特に好ましい。各試薬における該ブロッキング剤の濃度は特に限定されないが、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン系重合体を用いる場合は、例えば0.01%(w/w)以上5%(w/w)以下、好ましくは0.05%(w/w)以上2%(w/w)以下である。
【0137】
好ましい実施形態では、試料希釈用試薬及び洗浄用試薬は、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まない。本実施形態では、試料希釈用試薬及び洗浄用試薬の調製に用いた原料などに由来する、環状構造を有する界面活性剤が微量に混入する場合であっても、取り込み能の測定結果に影響がないときは、環状構造を有する界面活性剤を実質的に含まないものとみなす。
【0138】
本発明の範囲には、環状構造を有しない界面活性剤を、試料希釈用試薬又は洗浄用試薬の製造のために使用することも含まれる。すなわち、本発明は、リポタンパク質の取り込み能を測定に用いられる試料希釈用試薬又は洗浄用試薬の製造のための、環状構造を有しない界面活性剤の使用にも関する。
【0139】
[5.リポタンパク質の取り込み能測定用試薬キット]
本発明の範囲には、上記の測定方法に用いられる試薬キットも含まれる。この試薬キットは、上記の測定用試薬、試料希釈用試薬及び洗浄用試薬を含む。すなわち、標識ステロールと、環状構造を有しない界面活性剤とを含むリポタンパク質の取り込み能測定用試薬、環状構造を有しない界面活性剤を含む試料希釈用試薬、及び環状構造を有しない界面活性剤を含む洗浄用試薬とを備える、リポタンパク質の取り込み能測定用試薬キット(以下、「試薬キット」ともいう)が提供される。各試薬及びこれらに含まれる各成分の詳細は、上述のとおりである。リポタンパク質の取り込み能測定用試薬に含まれる環状構造を有しない界面活性剤、試料希釈用試薬に含まれる環状構造を有しない界面活性剤、及び洗浄用試薬に含まれる環状構造を有しない界面活性剤のうち、少なくとも2つの界面活性剤が同種であってもよいし、上記3つの界面活性剤がそれぞれ別種の界面活性剤であってもよい。
【0140】
上記の試薬を収容した容器は、箱に収容されてユーザに提供されてもよい。この箱は、上記の試薬を全て同梱してもよいし、一部の試薬を収容してもよい。この箱には、各試薬の使用方法等を記載した添付文書が同梱されてもよい。
【0141】
図1Aに、本実施形態の試薬キットの一例を示す。図中、10は、試薬キットを示し、11は、測定用試薬を収容した第1容器を示し、12は、試料希釈用試薬を収容した第2容器を示し、13は、洗浄用試薬を収容した第3容器を示し、14は、梱包箱を示し、15は、添付文書を示す。
【0142】
本実施形態の試薬キットは、第1の捕捉体を含む試薬と、第2の捕捉体を含む試薬とをさらに備えてもよい。第2の捕捉体は、第2の標識で標識されていてもよい。図1Bに、さらなる実施形態の試薬キットの一例を示す。図中、20は、試薬キットを示し、21は、測定用試薬を収容した第1容器を示し、22は、試料希釈用試薬を収容した第2容器を示し、23は、洗浄用試薬を収容した第3容器を示し、24は、第1の捕捉体を含む試薬を収容した第4容器を示し、25は、第2の捕捉体を含む試薬を収容した第5容器を示し、26は、梱包箱を示し、27は、添付文書を示す。
【0143】
本実施形態の試薬キットは、第1の捕捉体を固定化するための固相をさらに備えてもよい。固相は、箱に収容されてもよいし、試薬を収容した箱とは別に包装されてもよい。図1Cに、固相をさらに備える試薬キットの一例を示した。なお、固相の詳細は、上述のとおりである。図中、30は、試薬キットを示し、31は、測定用試薬を収容した第1容器を示し、32は、試料希釈用試薬を収容した第2容器を示し、33は、洗浄用試薬を収容した第3容器を示し、34は、第1の捕捉体を含む試薬を収容した第4容器を示し、35は、第2の捕捉体を含む試薬を収容した第5容器を示し、36は、固相としての96ウェルマイクロプレートを示し、37は、梱包箱を示し、38は、添付文書を示す。固相は、磁性粒子であってもよい。その場合、図中の36は、磁性粒子を収容した第6容器であってもよい。
【0144】
第2の捕捉体が、第2の標識としての酵素で標識されている場合、本実施形態の試薬キットは、該酵素の基質をさらに備えてもよい。図1Dに、酵素の基質をさらに備える試薬キットの一例を示した。なお、基質の詳細は、上述のとおりである。図中、40は、試薬キットを示し、41は、測定用試薬を収容した第1容器を示し、42は、試料希釈用試薬を収容した第2容器を示し、43は、洗浄用試薬を収容した第3容器を示し、44は、第1の捕捉体を含む試薬を収容した第4容器を示し、45は、酵素で標識された第2の捕捉体を含む試薬を収容した第5容器を示し、36は、酵素の基質を収容した第6容器を示し、47は、梱包箱を示し、48は、添付文書を示す。
【0145】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0146】
実施例1: 磁性粒子の回収効率の検討
固相として磁性粒子を用いるELISA法では、B/F分離の後、界面活性剤を含む洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄することが一般的である。しかし、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定では、界面活性剤がリポタンパク質に作用して、測定結果に影響するおそれがある。そこで、界面活性剤を含まない洗浄液、又はプルロニック型非イオン性界面活性剤を含む洗浄液を用いて、磁性粒子の洗浄を行った。
【0147】
マイクロチューブに1% HISCL磁性粒子(シスメックス株式会社)を30μL入れ、PBS又は0.1%(v/v)プルロニックF68/PBSで洗浄した。洗浄後、磁性粒子を集磁して上清を除き、回収できた磁性粒子の重量を測定した。図2に、各洗浄液で洗浄した後の磁性粒子の回収効率を示す。
【0148】
図2に示されるように、界面活性剤を含まない洗浄液としてのPBSで磁性粒子を洗浄すると、回収効率が低下した。よって、界面活性剤を含まない洗浄液を用いると、磁性粒子が反応容器に吸着して、磁性粒子の回収効率が低下するという別の問題が生じることがわかった。これに対して、0.1%(v/v)プルロニックF68を含む洗浄液で磁性粒子を洗浄することにより、回収効率が大幅に改善された。
【0149】
実施例2: 界面活性剤のコレステロール取り込み反応への影響の検討
界面活性剤がリポタンパク質のコレステロール取り込み能に及ぼす影響を検討するため、種々の界面活性剤を含む反応バッファーを用いてコレステロール取り込み能を測定した。界面活性剤として、プルロニックF68(Thermo社)、プルロニックL31(BASF社)、プルロニックL35(BASF社)、プルロニック10R5(BASF社)、Triton X-100(Sigma-Aldrich社)、デオキシコール酸(和光純薬工業株式会社)、NP-40(Calbiochem社)、Tween20(Sigma-Aldrich社)及びCHAPS(同仁化学研究所)を用いた。
【0150】
(1) 生体試料
健常者の血清(0.1 mL)に等量の22%ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業株式会社)を混合して、懸濁液を得た。得られた懸濁液を室温にて20分間静置した後、3000 rpmで15分間室温にて遠心分離した。得られた上清をHDL画分として回収した。
【0151】
(2) 界面活性剤の存在下でのHDLとタグ付加コレステロールとの混合
(2.1) 反応バッファーの調製
表1に示す成分を混合して、反応バッファーを調製した。表1において、各成分の量の単位は全て「μL」である。表中、界面活性剤とは、プルロニックF68、プルロニックL31、プルロニックL35、プルロニック10R5、Triton X-100、デオキシコール酸、NP-40、Tween20及びCHAPSのいずれか1つである。実施例2では、反応バッファーと試料とを混合したときの各成分の終濃度は次のとおりであった。各界面活性剤が0.1%(v/v)、グリセロールが2%(v/v)、リピジュア(商標)BL203が0.1%(v/v)、メチル-β-シクロデキストリンが1mM、リポソームが0.5%(v/v)、DNP付加コレステロールが7.5μM。一部の界面活性剤については、終濃度が0.001%(v/v)、0.003%(v/v)、0.01%(v/v)又は0.03%(v/v)となるように反応バッファーを調製した。表1のリポソームの組成は、2mM ジミリストイルホスファチジルグリセロール、2mM コレステロール及び4mM 水素添加大豆ホスファチジルコリンである。PBSは、Phosphate buffered saline tablet (Sigma-Aldrich社)を水に溶解して調製した。DNP付加コレステロールは、US 2017/0315112 A1を参照して調製した。
【0152】
【表1】
【0153】
(2.2) 測定用試料の調製
(i) 生体試料の希釈
HDL-C試薬・KL「コクサイ」(シスメックス株式会社)に添付の分画液をPBSで1.85%に希釈して、試料希釈用試薬を調製した。この試料希釈用試薬には、HDL-C試薬・KL「コクサイ」に添付の分画液に由来するノニオンK-230、カリクサレン及びシクロデキストリンが含まれる。上記のHDL画分から一部を取り、ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)を用いてApoAI濃度を測定した。濃度測定の具体的な操作は、該キットに添付のマニュアルに従って行った。測定後、HDL画分を試料希釈用試薬で希釈して、ApoAI濃度が1,000 ng/mLのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照検体(ApoAI濃度0ng/mL)として、試料希釈用試薬を用いた。
【0154】
(ii) HDLとタグ付加コレステロールとの混合
界面活性剤を含む反応バッファー(1080μL)及び界面活性剤を含まない反応バッファー(1080μL)のそれぞれに、HDL画分含有希釈液(120μL)を添加して混合し、氷上に1時間静置した。得られた混合物から500μLずつ取って1.5 mL low-bindingチューブに移し、42℃にて1,000 rpmで20分間振とうした。これにより、HDLとDNP付加コレステロールとを界面活性剤の存在下で接触させて、HDLによるDNP付加コレステロールの取り込み反応を促した。その後、チューブを室温にて5分間静置して、測定用試料を得た。対照検体についても同様に処理した。
【0155】
(3) HDLによるコレステロール取り込み能の測定
(3.1) 測定用プレートの準備(抗ApoAI抗体の固相への固定化)
固相としての96ウェルマイクロプレート(蛍光測定用黒色プレートH、住友ベークライト株式会社製)の各ウェルに50 mM Tris-HCl(pH 7.5)を200μLずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計2回行った。各ウェルに、50 mM Tris-HCl(pH 7.5)で10μg/mLの濃度に希釈した抗ApoAI抗体(clone 8E10)の溶液を100μLずつ添加し、4℃にて一晩静置した。抗体溶液を除去し、各ウェルに138 mM NaCl水溶液を200μLずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各ウェルに2%BSA/PBSを200μLずつ添加し、25℃にて600 rpmで1時間振とうした。
【0156】
(3.2) 固相上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
抗ApoAI抗体を固定化したプレートからBSA溶液を除去し、各測定用試料を100μLずつウェルに添加した。プレートを42℃にて1,000 rpmで20分間振とうして、HDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。各ウェルから測定用試料を除き、138 mM NaCl及び0.1%プルロニックF68を含むライン洗浄液を200μLずつ添加してウェルを洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。実施例1では、このようにして複合体を捕捉したプレートを2枚調製した。
【0157】
(3.3) HDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの検出
抗DNP抗体(北山ラベス株式会社に作製委託した)を、ALP Labeling Kit-SH (Dojindo)を用いてALP標識して、ALP標識抗DNP抗体を調製した。得られたALP標識抗DNP抗体をHISCL R3バッファー(シスメックス株式会社)で1:500に希釈した。上記の2枚のプレートのうちの1枚において、ALP標識抗DNP抗体の希釈液を100μLずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした。各ウェルから抗体溶液を除き、138 mM NaCl及び0.1%プルロニックF68を含むライン洗浄液を200μLずつ添加してウェルを洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各ウェルに、ALPの基質溶液を100μLずつ添加した。該基質溶液は、HISCL発光基質(シスメックス株式会社)であるR4試薬とR5試薬とを1:2の割合で混合して調製した。プレートを25℃にて600 rpmで30分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。測定結果を図3~6に示す。なお、図3及び図4中の「PF68」は、プルロニックF68を意味する。
【0158】
(3.4) 捕捉された複合体の量の測定
調製した2枚のプレートのうちの残りの1枚において、1:8000に希釈したALP標識抗ApoAI抗体(clone PIA5)の溶液を100μLずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした。各ウェルから抗体溶液を除き、138 mM NaCl及び0.1%プルロニックF68を含むライン洗浄液を200μLずつ添加してウェルを洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各ウェルに、ALPの基質溶液を100μLずつ添加した。プレートを25℃にて600 rpmで30分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。測定結果は図示しないが、検体間で、捕捉された複合体の量に大きな差異は認められなかった。
【0159】
(4) 結果
図3及び4に示されるように、Triton X-100、デオキシコール酸、NP-40、Tween20又はCHAPSを含む反応バッファーを用いた場合、コレステロール取り込み能を示すシグナル(黒色バー)が大きく減少した。これらの界面活性剤は、イムノアッセイにおいて一般的に用いられる環状構造を有する界面活性剤であるが、ほとんどの界面活性剤においてバックグラウンド(灰色バー)と同レベルまで低下した。これは、界面活性剤がリポタンパク質及び標識コレステロールに作用して、取り込み反応が阻害されているか、あるいは、取り込まれたコレステロールが漏出したことが考えられる。
【0160】
一方、図3~5に示されるように、環状構造を有さない界面活性剤であるプルロニックF68、プルロニックL31、プルロニックL35、プルロニック10R5を含む反応バッファーを用いた場合、界面活性剤を含まない反応バッファーを用いた場合と同等の取り込み能を示すシグナルが得られた。また、図6より、プルロニックF68を含む反応バッファーを用いた場合、界面活性剤を含まない反応バッファーを用いた場合と比較して、取り込み能を示すシグナルが増強されることが示された。なお、図3~6における「界面活性剤なし」は、界面活性剤を含まない反応バッファーを用いたことを示す。この反応バッファーに界面活性剤は含まれないが、希釈された試料には、環状構造を有さない界面活性剤であるノニオンK-230が含まれていた。このノニオンK-230は試料希釈用試薬に由来する。したがって、「界面活性剤なし」では、HDLとタグ付加コレステロールとの混合は、環状構造を有さない界面活性剤の存在下で行われた。
【0161】
以上より、環状構造を有さない界面活性剤の存在下でリポタンパク質と標識コレステロールとを混合することにより、リポタンパク質によるコレステロール取り込み能を示すシグナルを良好に検出できることが示された。
【0162】
実施例3: 試料希釈用試薬への界面活性剤の適用
実施例2では、界面活性剤を含まない反応バッファーを用いた場合でも、HDLによるコレステロール取り込み能を示すシグナルを良好に検出できた。ここで、実施例2では、リポタンパク質を含む試料を希釈するための試薬に、環状構造を有さない非イオン性界面活性剤のノニオンK-230が含まれていた。そこで、試料の希釈における界面活性剤の影響を検討するため、種々の界面活性剤を含む試料希釈用試薬を用いてコレステロール取り込み能を測定した。環状構造を有さない界面活性剤として、ノニオンK-230(日油株式会社製)、プルロニックL31、プルロニックL61及びプルロニックP84(いずれもBASF社製)を用いた。環状構造を有する界面活性剤として、Triton X-100(Sigma-Aldrich製)及びTween20(Sigma-Aldrich社製)を用いた。取り込み能の測定は、固相として磁性粒子を用いるELISA法により行った。
【0163】
(1) 生体試料
HDL-コレステロール値の高い5つの臨床検体(血清)の混合物から、実施例2と同様にしてHDL画分を調製した。
【0164】
(2) 界面活性剤の存在下でのHDLとタグ付加コレステロールとの混合
(2.1) 試料希釈用試薬の調製
試料希釈用試薬として、0.01%(v/v)又は0.1%(v/v)ノニオンK-230、0.1%(v/v)プルロニックL31、0.01%(v/v)又は0.1%(v/v)プルロニックL61、0.01%(v/v)プルロニックP84、0.1%(v/v)Tween20、又は0.1%(v/v)Triton X-100を含むPBSを調製した。
【0165】
(2.2) 測定用試料の調製
(i) 生体試料の希釈
上記のHDL画分から一部を取り、実施例2と同様にして、ApoAI濃度を測定した。測定後、HDL画分を各試料希釈用試薬で希釈して、ApoAI濃度が450 ng/mLのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照試料(ApoAI濃度0ng/mL)として、試料希釈用試薬を用いた。
【0166】
(ii) HDLとタグ付加コレステロールとの混合
実施例2と同様にして、0.1%(v/v)プルロニックF68及び7.5μM DNP付加コレステロールを含む反応バッファーを調製した。キュベットに反応バッファー(60μL)及びHDL画分含有希釈液(10μL)を添加して混合し、氷上に30分間静置した。キュベットを42℃にて1分間静置して、測定用試料を得た。対照試料についても同様に処理した。
【0167】
(3) HDLによるコレステロール取り込み能の測定
(3.1) 磁性粒子上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
抗ApoA1抗体(clone 8E10)を2-メルカプトエチルアミン塩酸塩(ナカライテスク)で還元し、Biotin-PEAC5-maleimide(Dojindo)で標識して、ビオチン化ApoAI抗体を調製した。反応バッファー及びHDL画分含有希釈液を含むキュベットに、2.5 ng/μLビオチン化ApoAI抗体を30μL添加して、42℃で12分間反応させた。反応後、キュベットにHISCL磁性粒子(シスメックス株式会社)を30μL添加して、42℃で10分間反応させた。HISCL磁性粒子の表面にはアビジンが固定されているので、複合体中のビオチン化抗ApoAI抗体は磁性粒子の表面に結合する。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、0.1%(v/v)プルロニックF68/PBSを添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。そして、磁性粒子を集磁して上清を除去した。
【0168】
(3.2) HDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの検出
DNP付加コレステロールを取り込んだHDLを有する磁性粒子に、実施例2と同じALP標識抗DNP抗体の希釈液を100μL添加して、42℃で10分間反応させた。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、0.1%(v/v)プルロニックF68/PBSを添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。磁性粒子を別のキュベットに移し、磁性粒子を集磁して上清を除去した。磁性粒子を含むキュベットにHISCL R4試薬(50μL)及びR5試薬(100μL)を添加し、42℃で5分間反応させた。反応後、発光量を測定した。HDL画分を含む試料から得られた測定値(シグナル)と、対照試料から得られた測定値(ノイズ)との比(S/N)を算出した。結果を図7に示す。
【0169】
(4) 結果
図7に示されるように、Tween20又はTriton X-100を含む試料希釈用試薬を用いた場合、シグナルとノイズとの間に差がほとんどなく、S/Nは約1であった。そのため、HDLのコレステロール取り込み能を評価することができなかった。一方、ノニオンK-230、プルロニックL31、プルロニックL61又はプルロニックP84を含む試料希釈用試薬を用いた場合、Tween20又はTriton X-100を含む試料希釈用試薬を用いた場合に比べて、S/Nが大きくなった。よって、環状構造を有さない界面活性剤を試料希釈用試薬に添加することで、取り込み能測定のS/Nを改善できることが示された。
【0170】
実施例4: 用手法との比較
試料希釈用試薬としてBSA溶液を用いるマイクロプレートによる取り込み能の測定法(以下、「用手法」と呼ぶ)と、界面活性剤を含む試料希釈用試薬を用いる磁性粒子による測定法との相関性を検討した。
【0171】
(1) 生体試料
生体試料として、あらかじめ用手法によってコレステロール取り込み能を測定された2種のHDL画分を用いた。一つは、用手法において高いシグナルを示したHDL画分(以下、「高値検体」という)であり、もう一つは、用手法において低いシグナルを示したHDL画分(以下、「低値検体」という)である。
【0172】
(2) 磁性粒子を用いるELISA法によるコレステロール取り込み能の測定
(2.1) 試料希釈用試薬の調製
表2に示す成分をPBSに溶解して、試料希釈用試薬A~Gを調製した。表中、「HP-γ-CD」とは、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(日本食品加工株式会社)である。
【0173】
【表2】
【0174】
(2.2) 測定用試料の調製
(i) 生体試料の希釈
上記の高値検体及び低値検体のそれぞれから一部を取り、実施例2と同様にして、ApoAI濃度を測定した。測定後、高値検体及び低値検体を各試料希釈用試薬で希釈して、ApoAI濃度が450 ng/mLのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照試料(ApoAI濃度0ng/mL)として、試料希釈用試薬を用いた。
【0175】
(ii) HDLとタグ付加コレステロールとの混合
実施例2と同様にして、0.1%(v/v)プルロニックF68及び7.5μM DNP付加コレステロールを含む反応バッファーを調製した。実施例3と同様に、反応バッファー及びHDL画分含有希釈液を混合して、測定用試料を得た。対照試料についても同様に処理した。
【0176】
(2.3) HDLによるコレステロール取り込み能の測定
(i) 磁性粒子上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
実施例3と同様に、反応バッファー及びHDL画分含有希釈液を含むキュベットに、ビオチン化ApoAI抗体を添加して、42℃で12分間反応させた。反応後、キュベットにHISCL磁性粒子(シスメックス株式会社)を30μL添加して、42℃で10分間反応させた。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、0.1%(v/v)プルロニックF68/PBSを添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。そして、磁性粒子を集磁して上清を除去した。
【0177】
(ii) HDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの検出
実施例3と同様に、DNP付加コレステロールを取り込んだHDLを有する磁性粒子に、ALP標識抗DNP抗体の希釈液を添加して、42℃で10分間反応させた。反応液中の磁性粒子を集磁して上清を除去し、0.1%(v/v)プルロニックF68/PBSを添加して、磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。磁性粒子を別のキュベットに移し、磁性粒子を集磁して上清を除去した。実施例3と同様に、磁性粒子を含むキュベットにHISCL R4試薬及びR5試薬を添加して反応させた。反応後、発光量を測定した。高値検体の測定値を100%としたときの低値検体の測定値の割合(相対シグナル強度)を算出した。結果を図8及び9に示す。
【0178】
(3) 用手法によるコレステロール取り込み能の測定
(3.1) 測定用試料の調製
(i) 生体試料の希釈
用手法では、試料希釈用試薬として2%BSA/PBSを用いた。上記の高値検体及び低値検体のそれぞれを2%BSA/PBSで希釈して、ApoAI濃度が450 ng/mLのHDL画分含有希釈液を調製した。また、HDL画分を含まない対照検体(ApoAI濃度0ng/mL)として2%BSA/PBSを用いた。
【0179】
(ii) HDLとタグ付加コレステロールとの混合
反応バッファーとして、DNP付加コレステロールに代えてBODIPY付加コレステロール(TopFluor Cholesterol、AvantiPolar Lipids社)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、0.1%(v/v)プルロニックF68及び7.5μM BODIPY付加コレステロールを含む反応バッファーを調製した。実施例2と同様に、反応バッファーとHDL画分含有希釈液とを混合して、測定用試料を得た。対照検体についても同様に処理した。
【0180】
(3.2) HDLによるコレステロール取り込み能の測定
(i) プレート上でのHDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
実施例2と同様にして、抗ApoAI抗体を固定化した96ウェルマイクロプレートを準備した。実施例2と同様に、各測定用試料をウェルに添加して、プレート上にHDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。なお、ウェルの洗浄は、138 mM NaCl及び0.1%プルロニックF68を含むライン洗浄液を用いて、実施例2と同様に行った。
【0181】
(3.3) HDLに取り込まれたタグ付加コレステロールの検出
洗浄した各ウェルに10 mM シクロデキストリン/PBSを100μLずつ添加し、プレートを25℃にて600 rpmで15分間振とうした。プレートを蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)にセットし、蛍光強度を測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。高値検体及び低値検体の測定値から相対シグナル強度を算出した。結果を図8及び9に示す。
【0182】
(4) 結果
図8に示されるように、用手法では、高値検体のコレステロール取り込み能に比べて、低値検体コレステロール取り込み能は低いことが示された。ノニオンK-230及びプルロニックP84を含む試料希釈用試薬を用いる磁性粒子による測定法においても、用手法と同様の結果が得られた。また、図9に示されるように、シクロデキストリンをさらに含む試料希釈用試薬を用いることにより、用手法との相関性がより改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0183】
10、20、30、40: 試薬キット
11、21、31、41: 第1容器
12、22、32、42: 第2容器
13、23、33、43: 第3容器
24、34、44: 第4容器
25、35、45: 第5容器
36: 固相
46: 第6容器
14、26、37、47: 梱包箱
15、27、38、48: 添付文書
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9