(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】キー装置、錠装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 19/22 20060101AFI20221006BHJP
E05B 17/22 20060101ALI20221006BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E05B19/22
E05B17/22 A
E05B47/00 G
(21)【出願番号】P 2018104012
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 琢生
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101093(JP,A)
【文献】特開2016-186153(JP,A)
【文献】特開2009-108621(JP,A)
【文献】特開2006-200154(JP,A)
【文献】特開2004-116186(JP,A)
【文献】特開2008-261138(JP,A)
【文献】特開2011-174265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠を施解錠するキー部分と、
前記錠に対する操作を検知する検知部と、
前記錠との間で情報を送受信する送受信部と、
前記検知部が前記操作を検知したことを条件に、前記錠に対して通信の確立を試み、前記錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を要求する要求情報を、前記送受信部を介して前記錠に送信する情報要求部と、
前記送受信部を介して
前記錠から受信
する前記施解錠情報を格納する格納部と
を備え
、
前記検知部は、前記キー部分を前記錠の鍵穴に差し込むこと、および、前記キー部分を前記鍵穴から引き出すことをそれぞれ検知し、
前記情報要求部は、
前記検知部が前記差し込むことを検知したことを条件に、前記錠に対して通信を確立してReady状態とし、
前記検知部が前記引き出すことを検知したことを条件に、前記要求情報を前記送受信部を介して前記錠に送信する、
キー装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記操作によって移動する移動体を有し、
前記検知部は、前記移動体の移動を検知することによって、前記操作を検知する、
請求項1に記載のキー装置。
【請求項3】
前記格納部に格納されている前記施解錠情報を表示する表示部
を更に備える、請求項1または2に記載のキー装置。
【請求項4】
前記格納部は、複数の前記錠の前記施解錠情報を格納する、
請求項1から3の何れか一項に記載のキー装置。
【請求項5】
前記格納部は、前記送受信部が前記施解錠情報を受信する度に、格納してある前記施解錠情報を更新する、
請求項1から4の何れか一項に記載のキー装置。
【請求項6】
キー装置により施解錠される錠と、
前記錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、
前記キー装置による、前記錠に対する操作を検知する操作検知部と、
前記操作検知部が前記操作を検知したことを条件に、前記錠検知部により検知された、前記錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を前記キー装置に送信する送信部と
を備え
、
前記操作検知部は、前記錠の鍵穴に前記キー装置のキー部分が差し込まれたこと、および、前記鍵穴から前記キー部分が引き出されたことをそれぞれ検知し、
前記送信部は、
前記操作検知部が前記差し込まれたことを検知したことを条件に、前記キー装置に対して通信を確立してReady状態とし、
前記操作検知部が前記引き出されたことを検知したことを条件に、前記施解錠情報を前記キー装置に送信する、
錠装置。
【請求項7】
前記操作検知部は、前記操作によって移動する移動体を有し、
前記操作検知部は、前記移動体の移動を検知することによって、前記操作を検知する、
請求項6に記載の錠装置。
【請求項8】
前記移動体は、
前記キー装置のキー部分が前記錠
の鍵穴に挿入されるときに予め定められた方向へ動作する部材、および、前記
キー部分が前記
鍵穴に挿入されて回転するときに、前記
錠の回転に連動して、予め定められた方向に動作する部材の少なくとも一方を含む、
請求項7に記載の錠装置。
【請求項9】
錠装置と、前記錠装置を施解錠するためのキー装置とを備えるシステムであって、
前記キー装置は、
前記錠装置の錠を施解錠するキー部分と、
前記錠に対す
る操作を検知する検知部と、
前記錠装置との間で情報を送受信する送受信部と、
前記検知部が前記操作を検知したことを条件に、前記錠に対して通信の確立を試み、前記錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を要求する要求情報を、前記送受信部を介して前記錠に送信する情報要求部と、
前記送受信部を介して
前記錠から受信
する前記施解錠情報を格納する格納部と
を有し、
前記検知部は、前記キー部分を前記錠の鍵穴に差し込むこと、および、前記キー部分を前記鍵穴から引き出すことをそれぞれ検知し、
前記情報要求部は、
前記検知部が前記差し込むことを検知したことを条件に、前記錠に対して通信を確立してReady状態とし、
前記検知部が前記引き出すことを検知したことを条件に、前記要求情報を前記送受信部を介して前記錠に送信し、
前記錠装置は、
前記キー装置により施解錠される前記錠と、
前記錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、
前記キー装置から
前記要求情報を受信したことを条件に、前記錠検知部により検知された前記施解錠情報を前記キー装置に送信する送受信部と
を有する、システム。
【請求項10】
錠装置と、前記錠装置を施解錠するためのキー装置とを備えるシステムであって、
前記錠装置は、
前記キー装置により施解錠される錠と、
前記錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、
前記キー装置による、前記錠に対する操作を検知する操作検知部と、
前記操作検知部が前記操作を検知したことを条件に、前記錠検知部により検知された、前記錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を前記キー装置に送信する送信部と
を有し、
前記操作検知部は、前記錠の鍵穴に前記キー装置のキー部分が差し込まれたこと、および、前記鍵穴から前記キー部分が引き出されたことをそれぞれ検知し、
前記送信部は、
前記操作検知部が前記差し込まれたことを検知したことを条件に、前記キー装置に対して通信を確立してReady状態とし、
前記操作検知部が前記引き出されたことを検知したことを条件に、前記施解錠情報を前記キー装置に送信し、
前記キー装置は、
前記錠を施解錠するキー部分と、
前記錠装置の前記送信部から前記施解錠情報を受信する受信部と、
前記受信部を介して前記錠装置から受信した前記施解錠情報を格納する格納部と
を有する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー装置、錠装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鍵に表示部を設けて、施解錠状態を表示させる施解錠確認装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該施解錠確認装置において、シリンダ錠には、鍵の回動範囲内の異なる位置に施錠エリアおよび解錠エリアが設けられている。シリンダ錠の鍵穴に差し込まれた鍵が回転したことをトリガとして、鍵を施錠エリア側に回動したか解錠エリア側に回動したかに応じて異なる電圧又はパルスの状態信号が電磁誘導により発生し、鍵に送信される。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2009-108621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記施解錠確認装置では、例えばシリンダ錠が解錠状態である場合において、
図1(a)に示される状態にある鍵穴に鍵が差し込まれた
後、図1(b)に示される状態のように解錠エリア側に回転された場合にも、上記の状態信号を発生させ
ていた(特許文献1の段落0017、0020、0022、0025など参照)。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様においては、錠を施解錠するキー部分と、錠に対する操作を検知する検知部と、錠との間で情報を送受信する送受信部と、検知部が操作を検知したことを条件に、錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を、送受信部を介して受信して格納する格納部とを備えるキー装置を提供する。
【0005】
本発明の一態様においては、キー装置により施解錠される錠と、錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、キー装置による、錠に対する操作を検知する操作検知部と、操作検知部が操作を検知したことを条件に、錠検知部により検知された、錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報をキー装置に送信する送信部とを備える錠装置を提供する。
【0006】
本発明の一態様においては、錠装置と、錠装置を施解錠するためのキー装置とを備えるシステムであって、キー装置は、錠装置の錠を施解錠するキー部分と、錠に対する操作を検知する検知部と、錠装置との間で情報を送受信する送受信部と、検知部が操作を検知したことを条件に、錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報を、送受信部を介して受信して格納する格納部とを有し、錠装置は、キー装置により施解錠される錠と、錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、錠検知部により検知された施解錠情報をキー装置に送信する送受信部とを有する、システムを提供する。
【0007】
本発明の一態様においては、錠装置と、錠装置を施解錠するためのキー装置とを備えるシステムであって、錠装置は、キー装置により施解錠される錠と、錠の施解錠の状態を検知する錠検知部と、キー装置による、錠に対する操作を検知する操作検知部と、操作検知部が操作を検知したことを条件に、錠検知部により検知された、錠が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報をキー装置に送信する送信部とを有し、キー装置は、錠を施解錠するキー部分と、錠装置の送信部から施解錠情報を受信する受信部と、受信部を介して錠装置から受信した施解錠情報を格納する格納部とを有する、システムを提供する。
【0008】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による、システム10の模式図である。
【
図2】第1実施形態による、住居15の扉20に設けられた上側電気錠110の模式図である。
【
図3】第1実施形態による、住居15の扉20に設けられた下側電気錠150の模式図である。
【
図4】第1実施形態による、キー装置30の模式図である。
【
図5】第1実施形態による、キー装置30のブロック図である。
【
図6】第1実施形態による、キー装置30が上側電気錠110から施解錠情報を取得するフロー図である。
【
図7】第2実施形態による、上側電気錠110のシリンダ118に配された操作検知部115の模式図である。
【
図8】第2実施形態による、上側電気錠110がキー装置30に施解錠情報を送信するフロー図である。
【
図9】第3実施形態による、上側電気錠110がキー装置30に施解錠情報を送信するフロー図である。
【
図10】第4実施形態による、錠装置100の格納部136およびキー装置30の格納部41のそれぞれに格納されているテーブルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、第1実施形態による、システム10の模式図である。システム10は、住居15の内側17と外側16とを仕切る玄関の扉20に設けられて扉20を電気的に施解錠する錠装置100と、住居15の内側17における例えばキッチンといった離れた部屋に設けられる操作盤50と、錠装置100を施解錠するためのキー装置30とを備える。システム10は、ユーザ12による扉20の錠装置100の閉め忘れを防止するためのシステムである。ここで、「施解錠」は、施錠のみ、解錠のみ、ならびに、施錠および解錠の両方、のいずれかであってよい。なお、システム10は、操作盤50を備えなくてもよい。
【0012】
ユーザ12は、例えば住居15の住人である。キー装置30は、ユーザ12が住居15から外出する場合に、ユーザ12によって携帯される。キー装置30は、近距離無線通信により、錠装置100とデータ通信する。近距離無線通信規格として、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near Field Communication)などを用いてもよい。NFCとして、電磁誘導式のFeliCa(登録商標)を用いてもよい。
【0013】
錠装置100は、扉20のハンドル22よりも上側に位置する上側電気錠110と、ハンドル22よりも下側に位置する下側電気錠150とを備える。錠装置100は、ユーザ12が扉20の外側16から鍵穴にキー装置30を挿入して回転することにより、施解錠される。また、錠装置100は、ユーザ12が扉20の内側17からサムターンを把持して回転することにより、施解錠される。
【0014】
錠装置100は、Wi-Fi(登録商標)などを用いた無線LANにより、操作盤50とデータ通信する。操作盤50は、上側電気錠110を施解錠するための施解錠ボタンを有してもよく、ユーザ12は、当該施解錠ボタンを操作することによって、扉20を施解錠してもよい。なお、錠装置100は、有線通信により、操作盤50とデータ通信してもよい。
【0015】
図2は、第1実施形態による、住居15の扉20に設けられた上側電気錠110の模式図である。
図2は、
図1において破線で示された円Aの部分を拡大した図に対応する。
【0016】
上側電気錠110は、扉20の内側17の面上に設けられる構成として、中空の内筐体124と、内筐体124の外面に取り付けられたサムターン116と、内筐体124の内部に収容された制御部112、タイマ133、格納部136、電源132および残量計測部134とを備える。サムターン116、タイマ133、格納部136、電源132および残量計測部134は何れも、制御部112に有線接続されている。なお、上側電気錠110は、残量計測部134を備えなくてもよい。
【0017】
上側電気錠110は更に、扉20の内部に設けられる構成として、デッドボルト120と、デッドボルト120を一方向に進退させるように駆動するアクチュエータ128と、デッドボルト120の進退方向における位置を検出する位置検出部138と、扉20における開扉および閉扉を検出する開閉検出部140とを備える。アクチュエータ128、位置検出部138、および、開閉検出部140は何れも、制御部112に有線接続されている。アクチュエータ128は、例えば電気式モータやソレノイドである。なお、上側電気錠110は、開閉検出部140を備えなくてもよい。
【0018】
上側電気錠110は更に、扉20の外側16の面上に設けられる構成として、中空の外筐体126と、シリンダ118と、外筐体126の内部に収容された通信部113および音声出力部130とを備える。シリンダ118、通信部113および音声出力部130は、制御部112に有線接続されている。音声出力部130は、電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声などの音を生み出すスピーカを有する。なお、上側電気錠110は、音声出力部130を備えなくてもよい。なお、上側電気錠110は更に、予期せずに電源132の電池残量が無くなってしまった場合に外部から給電するための非常用電源端子部が設けられてもよい。
【0019】
電源132は、例えばリチウム電池であり、上側電気錠110の全体に電力を供給する。電源132によって、例えば約2年程度の期間にわたる上側電気錠110の継続使用が可能になる。例えば電源132の電源残量が予め定められた閾値よりも少なくなった場合に、電源132はユーザ12によって交換される。電源132は、外部電源から無線又は有線により給電されて充電可能な構成としてもよく、例えば操作盤50の電源から無線又は有線により給電されて充電してもよい。
【0020】
残量計測部134は、制御部112からの指示信号が入力されると、電源132の電源残量を計測して、計測した電源残量値を制御部112に出力する。
【0021】
サムターン116は、ユーザ12によって把持されて回転操作されることで、回転方向を示す電気信号を制御部112に出力する。
【0022】
シリンダ118は、キー装置30のキー部分32が差し込まれる鍵穴を有する。
図2には、キー装置30のキー部分32が、図中に白抜きの直線状矢印で示された方向に沿ったユーザ12による操作によって、シリンダ118の鍵穴に差し込まれた状態が示されている。また、
図2には、キー装置30のキー部分32に隣接して設けられている移動体33が、当該操作によって、図中に上記矢印よりも小さな白抜きの直線状矢印で示された方向に沿って、キー装置30の内部に押し込まれた状態が示されている。
【0023】
シリンダ118は、ユーザ12によって差し込まれたキー部分32の形状が鍵穴の内部形状と合致する場合に、ユーザ12によるキー装置30の回転操作に伴って、キー装置30と共に回転し、回転方向を示す電気信号を制御部112に出力する。なお、サムターン116およびシリンダ118は、それぞれに対する上記の操作以外の方法で上側電気錠110が施解錠されると、上側電気錠110の施解錠に連動して対応する方向に自動で回転する。
【0024】
デッドボルト120は、扉20が閉じられた状態で扉20の側面から突き出た場合に、扉20の周囲を囲うように住居15に設けられた枠に埋設されているストライクの開口と係合する。デッドボルト120には、デッドボルト120と共にストライクの開口と係合することにより扉20の施錠状態を強固に固定するための鎌や、デッドボルト120自体や鎌などを可動させるための複数のカムや軸受などの駆動機構が含まれてもよい。
【0025】
位置検出部138は、光学式、電気式、磁気式などの任意のセンサ、例えば光電センサ、静電容量センサ、ホール素子などであり、デッドボルト120の進退方向における位置を検出し、検出したデッドボルト120の位置情報を制御部112に出力する。位置情報には、デッドボルト120が施錠位置にあることを示す施錠情報、および、デッドボルト120が解錠位置にあることを示す解錠情報が含まれる。施錠位置とは、デッドボルト120が扉20の側面から予め定められた量以上出ている位置である。解錠位置とは、デッドボルト120が上記施錠位置にないときの位置であり、扉20の側面の内側に退避している位置を含む。
【0026】
上記の位置情報は、上側電気錠110が施錠されているか解錠されているかを示す情報である施解錠情報の一例である。また、位置検出部138は、上側電気錠110の施解錠の状態を検知する錠検知部の一例である。錠検知部は、例えばシリンダ118の回転から上側電気錠110の施解錠の状態を推定する場合のように、間接的に上側電気錠110の施解錠の状態を検知するのではなく、例えばデッドボルト120が解錠位置にあるか施錠位置にあるかを検出する場合のように、直接的に上側電気錠110の施解錠の状態を検知する。
【0027】
開閉検出部140は、位置検出部138と同様に、光学式、電気式、磁気式などの任意のセンサ、例えば光電センサ、静電容量センサ、ホール素子などであり、扉20の開閉状態を検出し、検出した扉20の開閉情報を制御部112に出力する。扉20の開閉情報には、扉20が開扉していることを示す開扉情報、および、扉20が閉扉していることを示す閉扉情報が含まれる。
【0028】
通信部113は、例えばBLEを用いて、キー装置30と無線通信する。通信部113は追加的に、操作盤50や、ユーザ12によって携帯される認証端末などと無線通信してもよい。なお、通信部113は、追加的に又は代替的に、扉20の内側17の面上に設けられた内筐体124の内部に配置されてもよい。
【0029】
格納部136は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。格納部136には予め、制御部112によって使用される制御プログラムと、上側電気錠110のIDが格納されている。格納部136には、上記の位置情報が格納される。格納部136には更に、上記の開閉情報などが格納されてもよい。格納部136には予め、複数の認証端末に対応する登録IDや、残量計測部134によって計測される電源残量との比較に用いられる予め定められた閾値などが格納されていてもよい。
【0030】
制御部112は、CPU等から構成され、格納部136に予め格納された制御プログラムを読み込むことによって、上側電気錠110の各構成を制御するための複数の処理を実行する。また、制御プログラムは、可搬メディアを介してインストールされてもよく、インターネット等からダウンロードされてインストールされてもよい。
【0031】
制御部112は、サムターン116およびシリンダ118の何れかから回転方向を示す電気信号を入力されると、アクチュエータ128を駆動して、デッドボルト120を一方向に進退させることで、扉20を施解錠する。
【0032】
制御部112は、位置検出部138からデッドボルト120の位置情報が入力されると、タイマ133を参照し、位置情報と、当該位置情報が入力された時刻の時間情報とを格納部136に格納する。格納部136に格納されている位置情報および時間情報は、制御部112によって新たな位置情報および時間情報が格納される度に更新される。
【0033】
制御部112は、通信部113を介してキー装置30から上記の施解錠情報を要求する要求信号を受信すると、格納部136を参照し、施解錠情報に含まれるデッドボルト120の位置情報を、時間情報および上側電気錠110のIDと共に、通信部113からキー装置30に送信する。なお、通信部113は、送受信部の一例である。制御部112は追加的に、当該位置情報および時間情報を上側電気錠110のIDと共に、通信部113から操作盤50に送信してもよい。
【0034】
制御部112は、開閉検出部140から扉20の開閉情報が入力されると、開閉情報を格納部136に格納してもよく、通信部113から操作盤50や認証端末などに送信してもよい。
【0035】
制御部112は、残量計測部134から電源132における電源残量値が入力されると、格納部136に格納してもよく、通信部113から操作盤50や認証端末などに送信してもよい。制御部112は、残量計測部134から入力された電源残量値が、格納部136に格納されている予め定められた閾値を下回っているか否かを判断してもよく、更に、閾値を下回っている場合に、特定の音声信号を音声出力部130に出力して、音声信号に基づく特定の音声を発声させてもよい。これにより、例えば電源132の交換、又は、電源132への給電の必要性をユーザ12に知らせることができる。
【0036】
図3は、住居15の扉20に設けられた下側電気錠150の模式図である。
図2は、
図1において破線で示された円Bの部分を拡大した図に対応する。
【0037】
下側電気錠150は、上側電気錠110の各構成と同じ構成を有し、
図3に示される通り、各構成の配置も上側電気錠110の各構成の配置と同じである。下側電気錠150は、制御部152、通信部153、サムターン156、シリンダ158、デッドボルト160、内筐体164、外筐体166およびアクチュエータ168を備える。下側電気錠150は更に、音声出力部170、電源172、タイマ173、残量計測部174、格納部176、位置検出部178および開閉検出部180を備える。下側電気錠150の各構成の機能は、上側電気錠110の対応する構成の機能と同じなので、重複する説明を省略する。
【0038】
図4は、キー装置30の模式図である。キー装置30は、本体部分31と、本体部分31の内部にキーヘッド側の一部が収容された鍵のうち、本体部分31から露出している残りの部分である、上記のキー部分32とを備える。キー装置30は更に、本体部分31の内部に設けられた、例えばバネなどの付勢部材によって、一部が本体部分31から外部に突き出るように付勢されている移動体33を備える。移動体33の残りの部分は、本体部分31の内部に収容され、上記の付勢部材の付勢力により移動体33が本体部分31から完全に出てしまわないように構成される。また、当該残りの部分は、移動体33の上記一部が、図中に白抜きの矢印で示された方向に沿う外力によって本体部分31の内部に完全に押し込まれても、当該外力が無くなると再び当該方向に沿って本体部分31の外部に突き出るように構成される。
【0039】
キー装置30は更に、本体部分31の外表面に設けられる表示部35と、当該外表面に設けられるボタン34とを備える。表示部35は、上側電気錠110の施解錠情報を表示する上側表示部36と、下側電気錠150の施解錠情報を表示する下側表示部37とを含む。ボタン34は、ユーザ12によって押下されることで、表示部35による表示のON/OFFを切り替える。表示のON/OFFの切り替えは、上側表示部36と下側表示部37とで同時に行われてもよく、ボタン34の押下回数に応じて、上側表示部36と下側表示部37とが順に行われてもよい。ボタン34は、ユーザ12によって押下されることで、表示部35による表示コンテンツを切り替えてもよい。
【0040】
図5は、キー装置30のブロック図である。キー装置30は、無線通信によって上側電気錠110および下側電気錠150との間で情報を送受信する送受信部39と、キー装置30による上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作を検知する検知部38とを備える。
【0041】
本実施形態における当該操作は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことである。検知部38は、
図2に示されるように、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴に差し込むこと、および、各鍵穴から引き出すことにより、図中の矢印の方向に沿って移動する、前述の移動体33を有する。検知部38は、移動体33の当該移動を検知することによって、上記の操作を検知する。
【0042】
検知部38は、移動体33が本体部分31の外部からの外力を受けて本体部分31の内部に押し込まれたことを検知する。検知部38はまた、移動体33が当該外力を受けなくなり、本体部分31から露出して、当該外力を受ける前の位置に戻ったことも検知する。検知部38は、これらを順に検知することにより、キー装置30による上側電気錠110に対する上記の操作を検知する。換言すると、検知部38は、移動体33が本体部分31の外部からの外力を受けて本体部分31の内部に押し込まれている状態から当該外力を受けていない状態となり、キー装置30の本体部分31の内部に設けられている付勢部材による付勢力によって、本体部分31から露出している元の位置に戻ったことを検知することによって、上記の操作を検知する。検知部38は、移動体33の各方向の移動を検知すると、各方向に移動したことを示す信号を情報要求部40に出力する。
【0043】
キー装置30は更に、情報要求部40を備える。情報要求部40は、検知部38が上記の操作を検知したことを条件に、すなわち、検知部38から上記の操作を検知したことを示す信号を入力されると、上側電気錠110および下側電気錠150のそれぞれに対して、上記の施解錠情報を要求する要求情報を、送受信部39を介して送信する。
【0044】
本実施形態においては、キー装置30は、上側電気錠110および下側電気錠150とBLE通信する。この場合、キー装置30と、上側電気錠110および下側電気錠150のそれぞれとは、互いにBLE通信を確立できるよう、例えばユーザ12が住居15に入居したときにペアリングされる。本実施形態における情報要求部40は、検知部38が上記の操作を検知したことを条件に、上側電気錠110および下側電気錠150に対してBLE通信の確立を試み、BLE通信の電波強度が大きい方、すなわち、距離がより近い方に対して、上記の要求情報を送信する。
図2に示す状態においては、キー装置30は下側電気錠150よりも上側電気錠110に近いので、上側電気錠110とのBLE通信の電波強度が大きい。
【0045】
キー装置30は更に、時間を計時するタイマ43を備える。情報要求部40は、タイマ43を参照し、BLE通信の通信強度が大きい方に対して、上記の要求情報を送信してから、予め定められた時間、例えば1ミリ秒が経過するまでに施解錠情報を受信してない場合に、再び要求情報を送信する。
【0046】
キー装置30は更に、送受信部39を介して上側電気錠110および下側電気錠150から受信した施解錠情報を格納する格納部41を備える。格納部41は、予めテーブル42を格納しており、上側電気錠110の施解錠情報を入力されると、テーブル42の上側電気錠110用のスペースに当該施解錠情報を格納する。格納部41はまた、下側電気錠150の施解錠情報を入力されると、テーブル42の下側電気錠150用のスペースに当該施解錠情報を格納する。
【0047】
情報要求部40は、送受信部39を介して上側電気錠110および下側電気錠150から施解錠情報を受信すると、格納部41のテーブル42に格納する。情報要求部40は、送受信部39を介して新たな施解錠情報を受信すると、格納部41のテーブル42に格納されている施解錠情報を更新する。換言すると、格納部41は、送受信部39が施解錠情報を受信する度に、格納してある施解錠情報を更新する。
【0048】
情報要求部40は、ユーザ12がボタン34を押下したことを示す信号をボタン34から入力されると、格納部41のテーブル42を参照し、上側電気錠110の施解錠情報を上側表示部36に表示させ、下側電気錠150の施解錠情報を下側表示部37に表示させる。
【0049】
図6は、キー装置30が上側電気錠110から施解錠情報を取得するフロー図である。当該フローの動作の主体は情報要求部40であるので、主体の説明を省略する。各実施形態における以降のフロー図の説明においては、特に断わらない限りにおいて、上側電気錠110および下側電気錠150のそれぞれと施解錠情報を取得するフローは同じであるので、下側電気錠150の施解錠情報を取得するフローの説明を省略する。
【0050】
当該フローが開始すると、検知部38から、移動体33が本体部分31の内部に押し込まれたことを示す信号を入力されたか否かを判断し(ステップS101)、当該信号が入力されていない場合(ステップS101:NO)、ステップS101を繰り返す。
【0051】
検知部38から当該信号を入力されている場合(ステップS101:YES)、上側電気錠110との間でBLE通信を確立し(ステップS103)、Ready状態になる。
【0052】
ステップS103に続けて、検知部38から、移動体33が本体部分31から露出している元の位置に戻ったことを示す信号を入力されたか否かを判断し(ステップS105)、当該信号が入力されていない場合(ステップS105:NO)、ステップS105を繰り返す。
【0053】
検知部38から当該信号を入力されている場合(ステップS105:YES)、上側電気錠110に要求情報を送信する(ステップS107)。ステップS107に続けて、送受信部39を介して上側電気錠110から施解錠情報を受信したか否かを判断し(ステップS109)、施解錠情報を受信していない場合(ステップS109:NO)、タイマ43を参照して1ミリ秒待った後に(ステップS111)、ステップS107に戻る。
【0054】
ステップS109において、施解錠情報としてのデッドボルト120の位置情報を、時間情報および上側電気錠110のIDと共に受信した場合(ステップS109:YES)、施解錠情報を格納部41のテーブル42の上側電気錠110用のスペースに格納して(ステップS113)、当該フローが終了する。なお、当該フローは、錠装置100およびキー装置30の電源がONである限りにおいて繰り返す。なお、キー装置30は、
図5に示される通り、電源44を備え、電源44は、電源132と同様にリチウム電池などの交換式の電源であってもよく、外部から給電可能な電源であってもよい。
【0055】
以上、
図1から
図6に示す第1実施形態のシステム10によれば、錠装置100の施解錠状態を検知する錠検知部として位置検出部138を備える。位置検出部138は、上述の通り、例えばシリンダ118の回転から上側電気錠110の施解錠の状態を推定する場合のように、間接的に上側電気錠110の施解錠の状態を検知するのではなく、デッドボルト120が解錠位置にあるか施錠位置にあるかを検出する。すなわち、位置検出部138などの錠検知部は、直接的に上側電気錠110の施解錠の状態を検知する。そして、キー装置30は、そのような錠検知部による直接的な施解錠情報を取得し、格納部41のテーブル42に格納し、ユーザ12によるボタン34の操作によって、表示部35に表示する。よって、キー装置30の表示部35における錠装置100の施解錠状態の表示が誤ったものとなる虞を排除できる。
【0056】
また、防犯上の理由等により、上側電気錠110の施解錠の回転方向と、下側電気錠150の施解錠の回転方向とが異なる場合がある。この場合であっても、本実施形態によれば、施解錠の回転方向によらず施解錠の状態を直接的に検出するので、キー装置30の表示部35における錠装置100の施解錠状態の表示が誤ったものとなる虞を排除できる。
【0057】
更に、キー装置30の格納部41のテーブル42は、上側電気錠110および下側電気錠150のそれぞれに対応して各電気錠の施解錠状態を個別に格納するスペースを有し、これに対応して、キー装置30の表示部35は、上側電気錠110の施解錠状態を表示する上側表示部36と、下側電気錠150の施解錠状態を表示する下側表示部37とを有する。これにより、キー装置30は、錠装置100のような2ロックタイプの電気錠にも対応でき、例えばユーザ12が住居15から外出した後にキー装置30のボタン34を操作することにより、両方の電気錠を施錠し忘れたこと、何れか一方の電気錠を施錠し忘れたこと、および、両方の電気錠を施錠したことを、上側表示部36および下側表示部37のそれぞれで確認することができる。
【0058】
なお、本実施形態において、検知部38が検知する対象である、上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作を、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すこととして説明した。これに代えて、当該操作を、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴に差し込むこととしてもよい。
【0059】
この場合において、キー装置30の情報要求部40は、検知部38から、移動体33が本体部分31の内部に押し込まれたことを示す信号を入力されると、上側電気錠110との間でBLE通信を確立させて直ぐに、送受信部39から上側電気錠110に要求情報を送信する。情報要求部40は、要求情報を送信することによって上側電気錠110から最初に施解錠情報を受信したら、要求情報の送信を終了し、予め定められた時間、例えば30秒が経過するまで施解錠情報を受信し続けてもよい。換言すると、上側電気錠110は、キー装置30から要求情報を受信したら、予め定められた時間が経過するまで、予め定められた時間間隔、例えば1秒間隔で施解錠情報をキー装置30に繰り返し送信し続けてもよい。
【0060】
この場合において、検知部38は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことを検知しなくてもよい。これに代えて、検知部38は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことを検知してもよい。引き出すことを検知する場合には、この引き出しの検知をトリガとして、直ちに、または、そこから一定時間後に、施解錠情報の送信を終了してもよい。
【0061】
なお、本実施形態において、表示部35は、上側電気錠110の施解錠情報を表示する上側表示部36と、下側電気錠150の施解錠情報を表示する下側表示部37とを含むものとして説明した。これに代えて、表示部35は、単一の表示画面のみを有し、単一の表示画面上で、上側電気錠110および下側電気錠150の各施解錠情報の表示を、ボタン34の押下によって切り替えられるようにしてもよい。また、単一の表示画面上で、各施解錠情報を並列して表示してもよい。
【0062】
図7および
図8は、第2実施形態によるシステム10を示す。第2実施形態によるシステム10は、第1実施形態によるシステム10の各構成と比較すると、キー装置30が検知部38、移動体33および情報要求部40を備えることに代えて、上側電気錠110が、シリンダ118に配された操作検知部115を備え、下側電気錠150が同様に、シリンダ158に配された操作検知部155を備える点を除いては同じであるので、重複する説明を省略する。
【0063】
図7は、上側電気錠110のシリンダ118に配された操作検知部115の模式図である。操作検知部115は、キー装置30による、上側電気錠110に対する操作を検知する。本実施形態における当該操作も、第1実施形態と同様、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことである。操作検知部115は、
図7に示されるように、シリンダ118の鍵穴内で上下方向に移動自在に配された移動体119を有する。
【0064】
移動体119は、鍵が錠装置に挿入されるときに予め定められた方向へ動作する。より具体的には、移動体119は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118の鍵穴に差し込むこと、および、当該鍵穴から引き出すことにより、図中の白抜きの直線状矢印の方向に沿って移動する。移動体119は、キー装置30のキー部分32がシリンダ118の鍵穴に差し込まれていない状態、すなわち、外力を受けていない状態では、自重により、当該鍵穴の内面から突出している。移動体119は、キー装置30のキー部分32がシリンダ118の鍵穴に差し込まれると、キー部分32によって、当該鍵穴の内面から突出しないように、当該内面に押し込まれる。なお、移動体119は、キー部分32によって直接的に押し込まれてもよく、任意の部材を介して間接的に押し込まれてもよい。
【0065】
操作検知部115は更に、移動体119の当該移動、すなわち、図中の矢印の上下方向に沿う昇降を検知する昇降検知部117を有する。操作検知部115は、昇降検知部117の検知結果から、キー装置30のキー部分32がシリンダ118の鍵穴に差し込まれて、移動体119が当該鍵穴の内面に押し込まれたことを検知する。さらに、操作検知部115は、昇降検知部117の検知結果から、キー部分32をシリンダ118の鍵穴から引き出すことによる降下を検知する。操作検知部115は、これらを順に検知することにより、キー装置30による上側電気錠110に対する上記の操作を検知する。操作検知部115は、移動体119の各方向の移動を検知すると、各方向に移動したことを示す信号を制御部112に出力する。
【0066】
下側電気錠150のシリンダ158に配される操作検知部155は、上側電気錠110の操作検知部115と同じ構成を有し、
図7に示される通り、各構成の配置も操作検知部115の各構成の配置と同じである。操作検知部155は、移動体159と、昇降検知部157とを有する。操作検知部155の各構成の機能は、操作検知部115の対応する構成の機能と同じなので、重複する説明を省略する。
【0067】
図8は、第2実施形態による、錠装置100がキー装置30に施解錠情報を送信するフロー図である。当該フローの動作の主体は制御部112であるので、主体の説明を省略する。
【0068】
当該フローが開始すると、操作検知部115から、移動体119がシリンダ118の鍵穴の内面に押し込まれたことを示す信号を入力されたか否かを判断し(ステップS201)、当該信号が入力されていない場合(ステップS201:NO)、ステップS201を繰り返す。
【0069】
操作検知部115から当該信号を入力されている場合(ステップS201:YES)、キー装置30との間でBLE通信を確立し(ステップS203)、Ready状態になる。
【0070】
ステップS203に続けて、操作検知部115から、移動体119がシリンダ118の鍵穴の内面から突出している元の位置に戻ったことを示す信号を入力されたか否かを判断し(ステップS205)、当該信号が入力されていない場合(ステップS205:NO)、ステップS205を繰り返す。
【0071】
操作検知部115から当該信号を入力されている場合(ステップS205:YES)、通信部113を介して、キー装置30に対し、時刻情報および上側電気錠110のIDと共に、施解錠情報を予め定められた時間間隔で、例えば1ミリ秒間隔で繰り返し送信し始める(ステップS207)。ステップS207に続けて、タイマ133を参照して予め定められた時間、例えば30秒が経過したか否かを判断し(ステップS209)、30秒が経過していない場合(ステップS209:NO)、タイマ133を参照して1ミリ秒待った後に(ステップS211)、ステップS207に戻る。
【0072】
ステップS209において、30秒が経過した場合(ステップS209:YES)、キー装置30に施解錠情報を送信することを終了して(ステップS213)、当該フローが終了する。なお、当該フローは、錠装置100およびキー装置30の電源がONである限りにおいて繰り返す。
【0073】
なお、本実施形態において、操作検知部115が検知する対象である、キー装置30による上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作の例として、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことを説明した。これに代えて、当該操作を、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴に差し込むこととしてもよい。
【0074】
この場合において、キー装置30が上側電気錠110から施解錠情報を取得するときは、制御部112は、操作検知部115から、移動体119がシリンダ118の鍵穴の内面に押し込まれたことを示す信号を入力されると、キー装置30との間でBLE通信を確立させて直ぐに、上側電気錠110の施解錠情報などをキー装置30に送信することを開始する。なお、この場合において、操作検知部115は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことを検知しなくてもよいし、これを検知して施解錠情報の送信を終了するトリガに用いてもよいことは第1実施形態と同様である。
【0075】
なお、本実施形態における通信部113は、操作検知部115が上記の操作を検知したことを条件に、錠検知部の一例である位置検出部138により検出された、施解錠情報に含まれるデッドボルト120の位置情報をキー装置30に送信する送信部の一例である。
【0076】
なお、本実施形態において、移動体119は、代替的に又は追加的に、鍵が錠装置に挿入され回転するときに錠装置の回転に連動して予め定められた方向に動作する部材を含んでもよい。より具体的には、移動体119は、シリンダ118に設けられず、キー装置30のキー部分32がシリンダ118の鍵穴に差し込まれて回転すると、シリンダ118の回転に連動して、予め定められた方向に動作する部材を含んでもよい。
【0077】
上記第1および第2実施形態において、上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴から引き出すことであった。さらに、その変形例として当該操作は、各鍵穴にキー部分32が差し込まれたことでよいことを説明した。
【0078】
しかしながら、上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作の例はこれに限られず、ユーザ12が上側電気錠110および下側電気錠150に対して施解錠動作をしようとする意図を反映させたものであれば、他の操作であってもよい。その観点から、ユーザ12が施解錠動作をするのに伴って、または、当該動作の前もしくは後に行う蓋然性が高い操作であることが好ましい。
【0079】
例えば、上記第1および第2実施例およびその変形例はいずれも、当該操作は、施解錠そのものすなわちデッドボルト120の位置の変化とは別個の操作である。これに対し、当該操作を施解錠そのものとしてもよい。
【0080】
図9は、第3実施形態によるシステム10において、上側電気錠110がキー装置30に施解錠情報を送信するフロー図である。当該フローのステップS207以降のステップは、
図8に示したフローと同一であるので、重複する説明は省略する。
【0081】
第3実施形態によるシステム10は、上側電気錠110および下側電気錠150に対する操作を、施解錠そのものとした例である。第3実施形態によるシステム10は、第2実施形態によるシステム10の各構成と比較すると、上側電気錠110が、シリンダ118に配された操作検知部115を備えることに代えて、当該操作検知部115の機能を、デッドボルト120の位置を検出する位置検出部138が有する点、および、下側電気錠150においても同様に操作検知部155の機能を位置検出部178が有する点を除いては同じであるので、重複する説明を省略する。また、当該フローの動作の主体は制御部112であるので、主体の説明を省略する。
【0082】
本実施形態における位置検出部138は、キー装置30による、上側電気錠110に対する操作を検知する。本実施形態における当該操作は、キー装置30のキー部分32をシリンダ118およびシリンダ158の各鍵穴に挿入した状態で回転した結果として、デッドボルト120が施錠位置から解錠位置に又は解錠位置から施錠位置に移動したことである。
【0083】
当該フローが開始すると、位置検出部138から、施解錠情報に含まれるデッドボルト120の位置情報を入力されたか否かを判断し(ステップS301)、位置情報が入力されていない場合(ステップS301:NO)、ステップS301を繰り返す。
【0084】
位置検出部138から位置情報を入力されている場合(ステップS301:YES)、キー装置30との間でBLE通信を確立し(ステップS303)、ステップS207に進む、すなわち、キー装置30に対し、時刻情報および上側電気錠110のIDと共に、施解錠情報を予め定められた時間間隔で、例えば1ミリ秒間隔で繰り返し送信し始める。
【0085】
図10は、第4実施形態によるシステム10における、錠装置100の格納部136およびキー装置30の格納部41のそれぞれに格納されているテーブルを説明する図である。第4実施形態によるシステム10は、第1実施形態から第3実施形態によるシステム10の各構成と比較すると、上側電気錠110と下側電気錠150とが互いに電気的に接続されておらず、互いに通信しない構成に代えて、上側電気錠110と下側電気錠150とが互いに電気的に接続されて互いに有線通信する点、および、上側電気錠110および下側電気錠150が共通する格納部、通信部、および制御部を備える点を除いては同じであるので、重複する説明を省略する。
【0086】
本実施形態において、共通する制御部は、各電気錠の施解錠状態が変化したと判断したら、変化した施解錠状態の情報を共通の格納部に格納し、例えばキー装置30から要求情報を受信したら、各電気錠のIDおよび時間情報と共に、各電気錠の施解錠情報をキー装置30に送信する。この場合、
図10に示されるように、共通する格納部に格納する各電気錠の施解錠状態を示す信号は、両電気錠の施解錠状態をまとめて表現する、A~Dで表される。
【0087】
図10を参照すると、テーブルには、各列の項目名の行を除いて、3列×4行のマスが設けられている。各列の項目名は、列の左側から順に、「信号」、「上側電気錠110 施解錠状態」および「下側電気錠150 施解錠状態」である。「信号」として、テーブルの1行目から順に、A、B、CおよびDが格納されている。信号がAの行には、「上側電気錠110 施解錠状態」および「下側電気錠150 施解錠状態」の両方に「施錠」が設定されている。また、信号がBの行には、「上側電気錠110 施解錠状態」に「施錠」が設定され、「下側電気錠150 施解錠状態」に「解錠」が設定されている。また、信号がCの行には、「上側電気錠110 施解錠状態」に「解錠」が設定され、「下側電気錠150 施解錠状態」に「施錠」が設定されている。また、信号がDの行には、「上側電気錠110 施解錠状態」および「下側電気錠150 施解錠状態」の両方に「解錠」が設定されている。
【0088】
なお、本実施形態において、キー装置30の格納部41においても、
図10のテーブルに対応するテーブルが格納されており、例えば情報要求部40は、送受信部39を介して錠装置100から信号A~Dを受信すると、格納部41を参照して、表示部35に各電気錠の施解錠状態を表示させる。
【0089】
上記いずれの実施形態においても、電気錠は、シリンダおよびサムターンの回転運動を電気的に伝達するものとして説明したが、これに代えて、電気錠は、シリンダおよびサムターンの回転運動を機械的に伝達してもよい。より具体的には、電気錠の内部に例えばラック・アンド・ピニオンが設けられ、シリンダおよびサムターンの回転運動が、デッドボルトを一方向に進退させるための直線運動に変換されて、デッドボルトへと伝達されてもよい。この場合、シリンダおよびサムターンは、制御部に電気的に有線接続されなくてもよい。なお、シリンダおよびサムターンは、回転運動が電気的に伝達されるか機械的に伝達されるかに拘わらず、他の方法で電気錠が施解錠されると、電気錠の施解錠に連動して対応する方向に自動で回転する。
【0090】
上記いずれの実施形態においても、操作検知部は、シリンダに設けられ、シリンダの内筒の回転を検知することで錠装置に対するキー装置の操作を検知してもよい。また、操作検知部は、シリンダに設けられ、鍵を挿入したら鍵の表面に形成された電極と内筒内面に形成された電極とが通電したことを検知することで錠装置に対するキー装置の操作を検知してもよい。これに代えて、操作検知部としてキー装置のヘッド部分に接触センサを設け、ヘッド部分がユーザ12に接触されたことをもって、錠装置に対する操作を検知してもよい。
【0091】
上記いずれの実施形態においても、錠検知部は、扉の枠に埋設されるストライク内に設けられ、デッドボルトのストライク内への進退を検知することにより、または、デッドボルトのストライク内面への接触を検知することにより、施解錠を検知してもよい。
【0092】
以上の複数の実施形態において、錠検知部は、サムターンの回転を検知することで施解錠を検知してもよい。サムターンは、シリンダと違って回転方向を外部から視認可能なので、扉への錠装置の組み込み段階において、回転方向がデッドボルトの進退と同じになるように設定可能である。錠検知部は、サムターンの主面方向を検出可能な光センサであって、各電気錠の内筐体の表面において、サムターンに隣接して設けられてもよい。この場合、錠検知部を既存の電気錠に対して外付けできるので、汎用性が向上する。
【0093】
以上の複数の実施形態において、キー装置は、扉のシリンダからキー部分を引き抜く操作を行ったのを検知部が検知したことを条件として、閉開扉情報を取得してもよい。回転操作を行ったときに扉と枠との間に何かが挟まっていて、扉が閉まっていると思っても開いている可能性がある。例えば、住居から外出したユーザは、外出するときに扉のシリンダの鍵穴に鍵を挿入して回転操作を行ったことを覚えているが、回転操作を行ったときに扉がちゃんと閉まっていたかどうかを覚えていない場合がある。当該キー装置によれば、住居から外出したユーザは、上記の回転操作を行ったときに扉がちゃんと閉まっていたかどうかを覚えていなくても、回転操作を行ったときに扉がちゃんと閉まっていて適切に施錠できたか否かを、開閉扉情報をキー装置の表示部に表示させることによって知ることができる。
【0094】
以上の複数の実施形態において、キー装置の検知部は、代替的に、キー装置の本体部分からキー部分の側に向かってレーザや赤外線などを射出し、キー装置と錠装置との間の距離を測距することで、錠装置からキー装置を引き出す操作や、錠装置にキー装置を差し込む操作を検知してもよく、また、錠装置に対する操作を検知可能な任意のセンサを用いてもよい。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0096】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0097】
10 システム、12 ユーザ、15 住居、16 外側、17 内側、20 扉、22 ハンドル、30 キー装置、31 本体部分、32 キー部分、33 移動体、34 ボタン、35 表示部、36 上側表示部、37 下側表示部、38 検知部、39 送受信部、40 情報要求部、41 格納部、42 テーブル、43 タイマ、50 操作盤、100 錠装置、110 電気錠、112、152 制御部、113、153 通信部、115、155 操作検知部、116、156 サムターン、117、157 昇降検知部、118、158 シリンダ、119、159 移動体、120、160 デッドボルト、124、164 内筐体、126、166 外筐体、128、168 アクチュエータ、130、170 音声出力部、132、172 電源、133、173 タイマ、134、174 残量計測部、136、176 格納部、138、178 位置検出部、140、180 開閉検出部、150 下側電気錠