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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】二軸延伸シートおよびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20221006BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20221006BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20221006BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20221006BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CET
C08L25/04
C08L1/00
C08L21/00
B29C55/12
B29K25:00
B29K105:12
B29L7:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018142833
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020019847
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕卓
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048320(JP,A)
【文献】特開2017-082202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B29C55/00-55/30、61/00-61/10、C08J5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が20万~45万であるスチレン系樹脂(A)、
セルロースナノファイバー(B)および
ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)
を含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、
前記スチレン系樹脂(A)と前記セルロースナノファイバー(B)の質量比(A)/(B)が90/10~97/3であり、
前記二軸延伸シートのゴム成分の含有量が0.05~0.3質量%であり、
前記二軸延伸シートのゴム成分が形成するゴム粒子の平均粒子径が1.2μm~12μmである二軸延伸シート。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバー(B)の平均直径が4nm~500nmであり、前記セルロースナノファイバー(B)の平均繊維長が1μm~10μmである請求項1に記載の二軸延伸シート。
【請求項3】
MD方向とTD方向の配向緩和応力がいずれも0.8~2.0MPaの範囲であり、かつMD方向とTD方向の引張弾性率がいずれも2800~3400MPaである請求項1または請求項2に記載の二軸延伸シート。
【請求項4】
MD向とTD方向の延伸倍率がいずれも2.0~4.5倍である請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
【請求項5】
厚みが0.01mm~0.7mmである請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
【請求項6】
ゲル含有量が1.0質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
【請求項7】
スチレン単量体の含有量が1000ppm以下であり、かつスチレンオリゴマーの総含有量が10000ppm以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の二軸延伸シートからなる成形品。
【請求項9】
食品包装容器である請求項8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装容器の用途に好適に用いることができるスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シート、およびその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンの延伸シート、特に二軸延伸シートは、透明性、剛性に優れることから、二次成形されて、主に食品用軽量容器等の成形品に大量に使用されている。また、沸騰水に直接接触する用途や、電子レンジで加熱する用途への使用を目的として、原料であるポリスチレンに耐熱性を付与する試みがなされている。例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体などのスチレン系共重合体は、透明性、剛性を損なわずに耐熱性を向上させている。
【0003】
これらの食品容器に使用されるシートは、環境性やリサイクル性、容器の低コスト化を考慮して、ほとんどがリサイクルされて使用されている。また、特に食品容器や蓋はシート状物を容器状に成形した後は、打ち抜いて容器単独として使用する。そのため、不要な部分は打ち抜き屑(スケルトン)となり、容器の形状によっては30%以上の打ち抜き屑が発生する場合もある。
【0004】
このため、ほとんどの成形加工場では、この打ち抜き屑は単独で、または耐衝撃性スチレン系樹脂(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)シートの打ち抜き屑と混合してリサイクルして使用され、原料の無駄を低減し、製造コストの低減化が図られている。
【0005】
しかしながら、上記で挙げたスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のコポリマーからなるスチレン系耐熱性樹脂シートは、スチレン単量体単位からなるスチレン系樹脂(以後、汎用ポリスチレンと記載することもある。)との相溶性が悪く、実質的に両者を混合して再利用することができない。そのため、これらのスチレン系耐熱性樹脂シートの屑は、廃棄されるか、若しくは同じ材料に戻すことしか出来ず、製造コストが増大し、廃棄物量も多くなるため、汎用ポリスチレンと比較してリサイクル性に劣るという問題があった。
【0006】
近年は特に、環境に対する配慮が進み、環境負荷低減のために、よりリサイクル性に優れ、かつ従来品よりも薄肉化することによって、製造や運搬に必要なエネルギー量を低減させて、二酸化炭素排出量を低減できるシートが望まれている。
【0007】
従来品よりも薄肉化することを達成するためには、シートを高強度化する必要がある。そのため、シートの加工条件やゴム成分に様々な工夫を加えてシートを高強度化する試みがいくつかなされている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-51680号公報
【文献】特開2007-237732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、シートを高強度化することによって容器の成形性が低下し、特に絞り比の大きい容器の成形時には賦型性が悪くなるなどの問題が生じていた。
【0010】
本発明の課題は、薄肉であっても、製膜性、透明性、シート強度および成形性が良好であり、リサイクル性も良好なスチレン系樹脂組成物からなる延伸シートおよびその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、スチレン系樹脂組成物と、それを用いた延伸シートやフィルムについて鋭意検討を重ねた結果、スチレン系樹脂にセルロースナノファイバーとゴム成分を含有するスチレン系樹脂を含有させた樹脂組成物を用いることよって、その目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下のような構成を有している。
(1)重量平均分子量が20万~45万であるスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)およびゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)を含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、前記スチレン系樹脂(A)と前記セルロースナノファイバー(B)の質量比(A)/(B)が90/10~97/3であり、前記二軸延伸シートのゴム成分の含有量が0.05~0.3質量%であり、前記二軸延伸シートのゴム成分が形成するゴム粒子の平均粒子径が1.2μm~12μmである二軸延伸シート。
(2)前記セルロースナノファイバー(B)の平均直径が4nm~500nmであり、前記セルロースナノファイバー(B)の平均繊維長が1μm~10μmである前記(1)に記載の二軸延伸シート。
(3)MD方向とTD方向の配向緩和応力がいずれも0.8~2.0MPaの範囲であり、かつMD方向とTD方向の引張弾性率がいずれも2800~3400MPaである前記(1)または前記(2)に記載の二軸延伸シート。
(4)MD向とTD方向の延伸倍率がいずれも2.0~4.5倍である前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(5)厚みが0.01mm~0.7mmである前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(6)ゲル含有量が1.0質量%以下である前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(7)スチレン単量体の含有量が1000ppm以下であり、かつスチレンオリゴマーの総含有量が10000ppm以下である前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(8)前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の二軸延伸シートからなる成形品。
(9)食品包装容器である前記(8)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二軸延伸シートおよびその成形品は、薄肉であっても、製膜性、透明性、シート強度および成形性が良好であり、リサイクル性も良好である。そのため、食品包装容器等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について以下に説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態の二軸延伸シートは、スチレン系樹脂(A)と、セルロースナノファイバー(B)と、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)とを含むスチレン系樹脂組成物からなる。また、二軸延伸シートは、前記スチレン系樹脂組成物を押出成形し、得られた未延伸のシートを二軸延伸することによって得ることができる。
【0016】
本実施形態の二軸延伸シートにおいて、MD方向(Machine Direction方向)とは、シート製膜時の流れ方向であり、縦方向ともいう。また、TD方向(Transverse Direction方向)とは、シート製膜時の流れ方向と直角の方法であり、横方向ともいう。
【0017】
以下、スチレン系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(スチレン系樹脂(A))
スチレン系樹脂(A)は、スチレン単量体単位を主たる単量体単位とする重合体であり、いわゆる汎用ポリスチレンである。
【0018】
スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、20万~45万であり、22万~40万であることが好ましい。スチレン系樹脂の重量平均分子量が20万未満であると、製膜時にシートのドローダウンやネックインなどが発生して製膜性が低下するおそれがある。また、重量平均分子量が45万を超えると、製膜時の厚みムラ、ダイラインなどが発生し易くなり、シート外観が低下するおそれがある。
【0019】
ここで、スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下のGPCによる測定方法によって測定することができる。
(GPCによる測定方法)
以下の方法にてGPCによる測定を行い、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出する。
機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製PLgel GUARD 10μm φ7.5×50mmを1本と、PLgel MIXED-B 10μm φ7.5×300mmを3本使用。
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0020】
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、ポリスチレン等で工業化されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類が使用できる。
【0021】
スチレン系樹脂(A)の重合時には、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができる。
【0022】
(セルロースナノファイバー(B))
セルロースナノファイバー(B)とは、セルロースミクロフィブリルまたはセルロースミクロフィブリル集合体のことであり、繊維直径が数nm~数百nmオーダーのセルロース繊維のことを指す。セルロースナノファイバー(B)は、主に木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートパルプ、ポテトパルプ、農産物残廃物、布、紙等に含まれる植物由来の繊維を原料にして作られる。木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられ、紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物繊維は、1種類を単独で用いてもよく、これらから選ばれた2種類以上を用いてもよい。
【0023】
セルロースナノファイバー(B)の製造方法としては、前記原料に化学処理を施した後に解繊処理を行うことによって得る方法と、前記原料に解繊処理のみを行って得る方法とがある。前者の化学処理を施した後に解繊処理を行うことによって得られるセルロースナノファイバー(B)は、化学処理の方法によって繊維直径を数nmオーダーまで均一に微細化することが可能であり、繊維長も含めて調整することが可能である。
【0024】
一方、後者の解繊処理のみを行って得られるセルロースナノファイバー(B)では、繊維直径を調整する方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダーなどで繰り返し処理することにより、同様の数nmオーダーでのサイズの調整が可能になる。
【0025】
セルロースナノファイバー(B)の平均直径は4nm~500nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。また、セルロースナノファイバー(B)の平均繊維長は1μm~10μmが好ましく、3μm~6μmがより好ましい。平均直径が4nm未満または平均繊維長が1μm未満の場合、スチレン系樹脂(A)と配合させてシート化した際にセルロースナノファイバー(B)同士の絡み合いが弱くなり、シートの剛性や耐折性が低下する恐れがある。平均直径が500nmを超える場合または平均繊維長が10μmを超える場合は、スチレン系樹脂と配合してシート化した際に不透明となり外観が低下する恐れがある。
【0026】
(ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C))
ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)には、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、MBS樹脂等が含まれる。ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)としては、ゴム成分が含まれるスチレン系樹脂であれば良く、スチレンの単独重合体中にゴム成分が含まれているもの、ゴム成分にスチレン系樹脂がグラフト重合しているもの等、いずれも好適に用いることができる。ゴム成分は、マトリックス樹脂となるスチレン系樹脂中に、独立して粒子状になって分散していてもよいし、ゴム成分にスチレン系樹脂がグラフト重合して粒子状に分散しているものであってもよい。ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)中のゴム成分の含有量は、5~30質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましい。
【0027】
ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン-イソプレン共重合体などが挙げられる。特に、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体として含まれていることが好ましい。
【0028】
二軸延伸シート中のゴム成分は、主として、スチレン系樹脂組成物中のゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)が含有するゴム成分に由来する。二軸延伸シート中のゴム成分の含有量は、0.05~0.3質量%である。ゴム成分の含有量が0.05質量%未満であると、シートの剛性や耐折性の改善効果が十分発揮できないおそれがある。一方、ゴム成分の含有量が0.3質量%を超えると、シートの透明性が低下するおそれがある。二軸延伸シート中のゴム成分の含有量は、0.1~0.2質量%であることがより好ましい。
【0029】
ここで、二軸延伸シート中のゴム成分の含有量は、以下の一塩化ヨウ素法によって定量することができる。二軸延伸シートをクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合と反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定する。
【0030】
二軸延伸シート中のゴム成分が形成するゴム粒子の平均粒子径は、1.2~12μmであり、2.0~8.0μmであることが好ましい。平均粒子径が1.2μm未満ではシートの剛性や耐折性の改善効果が十分発揮できないおそれがある。一方、平均粒子径が12μmを超えるとシートの透明性が低下するおそれがある。
【0031】
二軸延伸シート中のゴム成分の平均粒子径は、超薄切片法にて観察面がシート平面と平行方向となるよう切削し、四酸化オスミウム(OsO)にてゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて粒子100個の粒子径を測定し、以下の式により算出した値である。
平均粒子径=Σni(Di)/Σni(Di)
ここで、niは測定個数、Diは測定した粒子径を示す。
【0032】
(スチレン系樹脂組成物)
スチレン系樹脂組成物において、前記スチレン系樹脂(A)と前記セルロースナノファイバー(B)の質量比(A)/(B)は90/10~97/3であり、93/7~95/5であることが好ましい。前記セルロースナノファイバー(B)が10質量%を超えると、製膜時の厚みムラやダイラインなどの発生による製膜性の低下、シート外観の低下およびシートの透明性の低下を引き起こす恐れがある。一方、前記セルロースナノファイバー(B)が3質量%を下回ると、シートの容器成形時の賦型性が低下し、容器強度が低下する恐れがある。また、スチレン系樹脂組成物におけるゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の含有量は、前記したゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)に由来するゴム成分の含有量が二軸延伸シート中のゴム成分の含有量として0.05~0.3質量%となるように、適宜調整して設定される。ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の含有量は、通常は、スチレン系樹脂組成物に対して0.5~3.0質量%である。
【0033】
スチレン系樹脂組成物には、用途に応じて各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、鉱油等の添加剤、ガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維等の補強繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウムなどの充填剤が挙げられる。また、上記スチレン系樹脂組成物をシート化したときの外観の観点から、酸化防止剤およびゲル化防止剤を単独または2種類以上を併用して配合することが好ましい。これらの添加剤は、スチレン系樹脂(A)およびゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の重合工程または脱揮工程、造粒工程にて添加しても良いし、スチレン系樹脂組成物を製造するときに添加しても良い。
上記添加剤の添加量に制限はないが、スチレン系樹脂組成物のシートの透明性を損なわない範囲で添加することが好ましい。
【0034】
(二軸延伸シート)
本実施形態の二軸延伸シートは、前記のスチレン系樹脂組成物を二軸延伸加工して得られるものである。二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれであってもよい。
【0035】
二軸延伸シートは、例えば、次のような方法で製造することができる。まず、前記スチレン系樹脂組成物を押出機により溶融混練して、ダイ(特にTダイ)から押し出して未延伸シートを製造する。次に、未延伸シートをMD方向およびTD方向の二軸方向に逐次又は同時に延伸することによって、二軸延伸シートが製造される。
【0036】
二軸延伸シートの厚みは、シートおよび容器の強度、特に剛性を確保するために、0.01mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.10mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。一方、賦型性および経済性の観点から、二軸延伸シートの厚みは、0.7mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0037】
二軸延伸シートの縦方向および横方向の延伸倍率はいずれも、2.0~4.5倍の範囲にあることが好ましい。延伸倍率が2.0倍未満では、シートの剛性や耐折性が低下するおそれがある。一方、延伸倍率が4.5倍を超えると、熱成形時の収縮率が大き過ぎることにより賦形性が損なわれるおそれがある。二軸延伸シートの縦方向および横方向の延伸倍率はいずれも、2.1~3.0倍の範囲にあることがより好ましい。
【0038】
なお、延伸倍率の測定方法は、以下のとおりである。二軸延伸シートの試験片に対して、MD方向およびTD方向に100mm長の直線を引く。JIS K7206:2016に従って測定したシートのビカット軟化温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の、上記直線の長さL[mm]を測定する。MD方向およびTD方向の延伸倍率(倍)はそれぞれ、次式によって算出した数値である。
延伸倍率(倍)=100/L
【0039】
二軸延伸シートのMD方向およびTD方向の配向緩和応力はいずれも、0.8~2.0MPaの範囲にあることが好ましく、1.0~1.5MPaであることがより好ましい。配向緩和応力が0.8MPa未満では従来品よりもシートを薄肉化した際に、シートの剛性や耐折性が低下し、実用的に使用できなくなるおそれがある。一方、配向緩和応力が2.0MPaを超えると熱成形時の収縮応力が大き過ぎることにより賦形性が損なわれるおそれがある。また、シートの耐折性および賦形性のバランスの観点から、MD向およびTD方向の配向緩和応力の差は0.2MPa以下であると好ましい。二軸延伸シートの配向緩和応力は、ASTM D1504に従って、シートを構成する樹脂組成物のビカット軟化温度より30℃高い温度のシリコーンオイル中でのピーク応力値として測定した値である。
【0040】
二軸延伸シートのMD向とTD方向の引張弾性率がいずれも2800~3400MPaであることが好ましく、2900~3100MPaであることがより好ましい。引張弾性率は、JIS K 7161に従って測定することができる。MD向とTD方向の引張弾性率がいずれも上記の範囲内にあると、良好な容器強度や賦型性を発揮することができる。
【0041】
二軸延伸シート中のゲル含有量は、二次成形時の加工性、外観の透明性の観点から、少ないことが好ましい。二軸延伸シート中のゲル含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。二軸延伸シート中のゲル含有量は、二軸延伸シートをMEK(2-ブタノン)溶剤に溶かし、遠心分離を行い、溶剤不溶分を沈降させ、上澄みを除去した後に乾燥させ、秤量することによって求めることができる。
【0042】
二軸延伸シートは、スチレン単量体の含有量が1000ppm以下であることが好ましい。スチレン単量体の含有量が1000ppmよりも多いと、シートを成形加工する際に成形加工機の金型等に付着し、成形品の外観を損ねたり、金型汚れを引き起こしてその後の成形容器の外観を損なう懸念がある。なお、スチレン単量体の定量は、下記記載のガスクロマトグラフィーを用い、内部標準法にて測定することができる。
装置名:GC-12A(島津製作所社製)
カラム:ガラスカラム φ3[mm]×3[m]
定量法:内部標準法(シクロペンタノール)
【0043】
また、二軸延伸シート中のスチレンオリゴマーの総含有量は、10000ppm以下であり、5000ppm以下であることが好ましい。スチレンオリゴマーが10000ppmよりも多いと、シートを成形加工する際に成形品の外観を損ねたり、金型汚れを引き起こす懸念がある。スチレンオリゴマーとは、スチレン単量体のダイマーやトリマーのことを指し、それらの構造異性体も含まれる。
【0044】
スチレンオリゴマーの定量は、試料200mgを2mLの1,2-ジクロロメタン(内部標準物質含有)に溶解させた後、メタノールを2mL添加して樹脂を析出させ、静置後の上澄み液を用いてガスクロマトグラフにて以下の条件で測定することができる。
ガスクロマトグラフ:HP-5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:DB-1(ht) 0.25mm×30m 膜厚0.1μm
インジェクション温度:250℃
カラム温度:100-300℃
検出器温度:300℃
スプリット比:50/1
内部標準物質:n-エイコサン
キャリアーガス:窒素
【0045】
二軸延伸シートには、必要に応じて、公知の離型剤・剥離剤(例えばシリコーンオイル)、防曇剤(例えばショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、二酸化珪素等)、帯電防止剤(例えば各種ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等)の内の1種または2種以上を混合して、延伸シートの片面または両面に塗布してもよい。
【0046】
上記の化合物を延伸シートの表面に塗工する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアロールコーター等を用いて塗工する方法が挙げられる。また、噴霧、浸漬等の方法を採用することもできる。
【0047】
二軸延伸シートから成形品を得る方法としては、特に制限はなく、従来の延伸シートの二次成形方法において慣用されている方法を用いることができる。例えば、真空成形法や圧空成形法等の熱成形方法によって二次成形を行うことができる。これらの方法は例えば高分子学会編「プラスチック加工技術ハンドブック」日刊工業新聞社(1995)に記載されている。
【0048】
本発明の二軸延伸シートの成形品の用途としては、食品包装容器等が本発明の特徴が十分に発揮されるため、特に好ましい。
【実施例
【0049】
以下に、実施例を用いて、本発明の二軸延伸シートをより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
二軸延伸シートの製造に用いる原料となる樹脂は、以下に記載する方法で調製した。
【0050】
[スチレン系樹脂(A)]
一般に市販されている汎用ポリスチレンを用いた。重量平均分子量Mw=35万のものを中心に、表1、2に記載の重量平均分子量が異なる5種類のスチレン系樹脂を準備した。
【0051】
[セルロースナノファイバー(B)の製造]
針葉樹クラフトパルプ30gを水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーに、あらかじめ水200gに溶解させたTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル)を0.3g、臭化ナトリウムを3g添加し、更に水で希釈し全体を1400mLとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるように次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり、滴下した。滴下開始からpHは低下を始めたが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下し、系のpHを10に保った。3時間後、エタノールを30g添加し、反応を停止させた。反応系に0.5N塩酸を添加し、pH2まで低下させた。酸化パルプをろ過し、0.01N塩酸または水で繰返し洗浄し、酸化セルロースの粉体を得た。得られた酸化セルロースの粉体0.2gを水に分散させ、0.001質量%濃度まで希釈して、マイカ上に塗布した。その後、マイカ上で加熱乾燥させた試料について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて繊維の形態を観察した。1本ずつ存在している任意の繊維10点の繊維直径および繊維長さの平均を求め、それぞれを平均直径、平均繊維長とした。その結果、平均直径は50nm、平均繊維長は5μmであった。
【0052】
上記と同様の方法で各種原料仕込み量を調整し、表1、2に記載の平均直径、平均繊維長の異なる計5種類のセルロースナノファイバー(B)を準備した。
【0053】
[ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の製造]
ゴム状重合体として3.4質量%のローシスポリブタジエンゴム(旭化成製、商品名ジエン55AS)を使用し、91.6質量%のスチレンと、溶剤として5.0質量%のエチルベンゼンに溶解して重合原料とした。また、ゴムの酸化防止剤(チバガイギー製、商品名イルガノックス1076)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径0.285mの錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R-01)に12.5kg/hrで供給した。反応温度は140℃、回転数は2.17sec-1で反応させた。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R-02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120~140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R-03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130~160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5torrの脱揮槽に送られ、未反応単量体、溶剤を分離・回収した。その後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽を通してペレット化し、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)を得た。得られた樹脂の樹脂率は70%であった。ここで、樹脂率とは、下記式によって算出される。
樹脂率(%)=100×(ポリマー量)/{(仕込んだモノマー量)+(溶剤量)}
また、得られた樹脂中のゴム成分含有量は10.0質量%、ゴム粒子の平均粒子径は5μmであった。
【0054】
上記と同様の方法で、各種原料仕込み量を調整して、表1、2に記載のゴム成分含有量が10.0質量%であって、ゴム粒子の平均粒子径が異なる計5種類のゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)を製造した。
【0055】
以下に、二軸延伸シートの作成例を記す。
(実施例1)
スチレン系樹脂(A)(Mw=35万)94質量部、セルロースナノファイバー(B)(平均断面径50nm、繊維長5μm)6質量部、また、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)(ゴム成分含有量10.0質量%、ゴム粒子の平均粒子径5μm)1質量部の各原料をハンドブレンドした。ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 TEM35B (東芝機械製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、ベント脱揮圧力-760mmHgにてダイプレートを通してストランドとした。その後、水槽にて冷却したのち、ペレタイザーを通してペレット化し、スチレン系樹脂組成物を得た。なお、ベント脱揮圧力は、常圧に対する差圧値として示した。上記スチレン系樹脂組成物をシート押出機(Tダイ幅500mm、リップ開度1.5mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチック機械社製))を用い、押出温度230℃、吐出量20kg/hrにて未延伸シートを得た。このシートをバッチ式二軸延伸機(東洋精機社製)を用いて予熱し、延伸温度128℃、歪み速度0.1/secで、MD3.5倍、TD3.5倍に延伸し、厚み0.25mmの二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)は1.00MPa/1.00MPa、引張弾性率(MD/TD)は3100MPa/3100MPaであった。また、二軸延伸シート中のゴム成分含有量は0.1質量%、ゴム粒子の平均粒子径は5μm、ゲル含有量は0.8質量%であり、スチレン単量体の含有量は500ppm、スチレンオリゴマーの総含有量は5000ppmであった。
【0056】
(実施例2~17、比較例1~8)
表1~3に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とした以外は、実施例1と同様の方法で厚み0.25mmの二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン系単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表1~3に示した。
【0057】
(実施例18~21)
表2に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とし、実施例18は延伸温度を124℃・延伸倍率(MD/TD)を1.8倍、実施例19は延伸温度を126℃・延伸倍率(MD/TD)を2.5倍、実施例20は延伸温度を130℃・延伸倍率(MD/TD)を4.0倍、実施例21は延伸温度を132℃・延伸倍率(MD/TD)を4.7倍、とした以外は、実施例1と同様の方法で厚み0.25mmの二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表2に示した。
【0058】
(実施例22~25)
表2に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とし、実施例22は厚みを0.008mm、実施例23は厚みを0.02mm、実施例24は厚みを0.60mm、実施例25は厚みを0.80mm、とした以外は、実施例1と同様の方法で二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン系単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表2に示した。
【0059】
(実施例26)
表2に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とし、実施例26は、実施例1と同条件下で二度押出機を通してペレット化した以外は、実施例1と同様の方法で二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン系単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表2に示した。
【0060】
(実施例27)
表2に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とし、実施例27は、ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 TEM35B (東芝機械製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、ベント脱揮圧力-250mmHgにてダイプレートを通してストランドとした以外は、実施例1と同様の方法で二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン系単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表2に示した。
【0061】
(実施例28)
表2に記載のスチレン系樹脂(A)、セルロースナノファイバー(B)、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂(C)の種類および配合量とし、実施例28は、ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 TEM35B (東芝機械製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、またベント脱揮をせずに、ダイプレートを通してストランドとした以外は、実施例1と同様の方法で二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)、引張り弾性率、及び二軸延伸シート中のゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径、ゲル含有量、スチレン系単量体の含有量、スチレンオリゴマーの総含有量を表2に示した。
【0062】
得られた二軸延伸シートについて、以下に記載した方法にて各種性能を測定し、評価を行った。◎、○、△、×の相対評価においては、◎、○、△のときを合格、×を不合格と判定した。結果を表1~3に記載した。
【0063】
(1)製膜性
未延伸シートにMD方向およびTD方向に20mm間隔で直線を5本ずつ格子状に引いた時の交点25点についてマイクロゲージを用いて厚みを測定し、その標準偏差σを下記基準で評価した。
◎:σが0.03mm未満
○:σが0.03mm以上、0.05mm未満
△:σが0.05mm以上、0.07mm未満
×:σが0.07mm以上
【0064】
(2)シート外観
二軸延伸シート350mm×350mmの範囲について、1)面積100mm以上のロール付着跡、2)面積10mm以上の気泡、3)透明および不透明異物、4)付着欠陥、5)幅3mm以上のダイライン(製膜時にTダイ出口で発生するシート流れ方向に走る欠陥)を欠点とし、欠点の個数を下記基準で評価した。
◎:0個
○:0個(但し、面積10mm未満の気泡、幅3mm未満のダイラインは有り)
△:1~2個
×:3個以上
【0065】
(3)透明性(ヘーズ)
JIS K-7361-1に従って、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)を用いて、二軸延伸シートのヘーズを測定した。
◎:ヘーズ2.0%未満
○:ヘーズ2.0%以上、3.0%未満
△:ヘーズ3.0%以上、5.0%未満
×:ヘーズ5.0%以上
【0066】
(4)剛性
弁当容器の本体(寸法:縦163×横223×深さ30mm)に500gの錘を入れ、後記する弁当蓋を嵌合させた弁当容器を5段重ね、24時間静置後の蓋材の変形状態を確認した。
◎:形状変化なし。
○:撓むが、荷重を外すと元に戻る。
△:変形有り。
×:割れ有り。
【0067】
(5)耐折性
ASTM D2176に従って、シート押出方向(MD方向)とそれに垂直な方向(TD方向)の耐折曲げ強さを測定し、最小値を求め、以下のように評価した。
◎:7回以上
○:5回以上、7回未満
△:2回以上、5回未満
×:2回未満
【0068】
(6)賦型性
熱板成形機HPT?400A(脇坂エンジニアリング社製)にて、熱板温度150℃、加熱時間2.0秒の条件で、弁当蓋(寸法 蓋:縦165×横225×高さ26mm)を成形し、賦型性を下記基準にて評価した。
◎:良好
○:コーナー部に僅かな形状不良、但し、目視では目立たないレベル
△:コーナー部にやや形状不良
×:寸法と異なる形状またはコーナー部に著しい形状不良
【0069】
(7)金型汚れ性
上記弁当蓋の成形時、金型等の汚れの転写を下記基準にて評価した。
◎:転写なし(透明、白濁なし)
○:僅かに転写あり(不透明、表面が若干白濁)
△:一部に転写あり(不透明、表面が白濁)
×:全体に転写あり(不透明、表面が白濁)
【0070】
(8)容器強度
上記成形条件で得られた弁当蓋を、本体容器に嵌合させ、上部より均等に面荷重をかけて10mm押し込んだ後、荷重を外した後の蓋の状態について評価した。
◎:変形無し。
○:僅かな変形。
△:外寸の変化率が5%未満の変形。
×:大変形、外寸の変化率が5%以上。
【0071】
(9)リサイクル性
上記弁当蓋を粉砕し、汎用ポリスチレンペレット70質量%に対して30質量%含有させて再度シート押出、延伸を行い、二軸延伸シートを作成した。JIS K-7361-1に従って、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)を用いて、得られた二軸延伸シートのヘーズを測定し、リサイクル性を評価した。
◎:ヘーズ3.0%未満
○:ヘーズ3.0%以上、5.0%未満
×:ヘーズ5.0%以上
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1~3の結果から、実施例1~28で得られた本発明の規定を満たす二軸延伸シートは、いずれも製膜性、透明性、剛性、シート強度、成形性、容器強度、リサイクル性のいずれにおいても、優れた性能を有するものであった。
【0076】
一方、比較例1~8で得られた本発明の規定を満たさない二軸延伸シートについてはいずれも、製膜性、透明性、シート強度、成形性、容器強度、リサイクル性のいずれかの性能において望ましくない結果であった。