(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】試験施設
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20221006BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04H6/18 603
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2018151337
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】沢村 亮
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-325354(JP,A)
【文献】特開平09-209591(JP,A)
【文献】特開2016-065436(JP,A)
【文献】特開昭62-220667(JP,A)
【文献】特開2002-250146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物に対する試験を行う試験場所と、
前記被試験物を保管する被試験物保管設備を備えた待機室と、
前記被試験物保管設備に前記被試験物を搬入する被試験物搬入部と、
を備え、
前記被試験物搬入部と前記試験場所との間に前記待機室が備えられ、
前記被試験物保管設備は、前記被試験物を保管する
前記被試験物保管設備内のそれぞれの位置である少なくとも2列、2段の保管部を備え、前記保管部の1つは前記被試験物搬入部から前記試験場所
まで前記被試験物の通り抜けが可能な通路を形成する
前記被試験物保管設備内の所定の位置であって前記被試験物搬入部と前記試験場所との間に直線的に配置された入出庫部に構成されており、前記入出庫部と側方の前記保管部とは、前記被試験物を保管する保管パレットの横行が可能であり、上下方向の前記保管部は、前記保管パレットの昇降が可能なように構成されている、
ことを特徴とする試験施設。
【請求項2】
前記保管パレットは、上面が平坦に形成されたフラットパレットで構成されている、
請求項1に記載の試験施設。
【請求項3】
前記保管部は、下段の該保管部が前記入出庫部に構成され
ている、
請求項1又は2に記載の試験施設。
【請求項4】
前記入出庫部は、側方の前記保管部に前記保管パレットを横行させて空スペースとなった状態で該入出庫部に配置する車路パレットを有している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の試験施設。
【請求項5】
前記被試験物保管設備に前記被試験物を入庫させた時刻又は前記被試験物を入庫させた後の放置継続時間の少なくともいずれか一方を表示する表示部が備えられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の試験施設。
【請求項6】
前記試験場所と前記待機室とが1つの試験ユニットとして構成されており、
前記試験ユニットが前記被試験物搬入部に面して複数配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の試験施設。
【請求項7】
前記待機室は周囲及び天井面を壁で囲まれ、
前記被試験物を少なくとも所定の温度で保管するように構成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の試験施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの対象物の整備、検査、試験等を行う施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば輸入自動車の場合、陸揚げされた自動車の洗浄や各種検査、整備、型式指定完成検査などを行うPDI(Pre-Delivery Inspection:出荷前点検)センターと呼ばれる施設がある。機能検査や型式指定完成検査は専用の設備や装置が必要となるため、洗浄や外観検査を終えた自動車を専用の設備や装置の近くで待機させるために広いスペースを必要とする場合がある。
【0003】
また、自動車製造工場においても同様に、製品検査や、自動車の改造、整備、試験などを行う設備や装置の近くに自動車を待機させるための広いスペースを設ける場合がある。
【0004】
これは、自動車以外の製品の出荷前点検場や製造工場においても同様である。
【0005】
例えば、この種の先行技術として、複数の自動車を移動可能に保持する保持機構を備えた収容室(以下、「ソーク室」ともいう)を有する、シャシダイナモメータ上で自動車を走行させ、排気ガス成分測定等の各種測定を行うための自動車用測定補助システムがある(例えば、特許文献1参照)。このような試験を行うときは温度などの環境を一定にして試験を行う必要がある。排気ガス成分測定を行う場合、エンジンを停止した状態で温度を一定にした収容室において所定時間保管し、その後、各種機器によって性能試験が行われる。
【0006】
自動車の場合、機種、仕様などに応じて各種検査や試験(例えば、排気ガス計測試験、燃費計測試験、衝突試験等)がそれぞれ行われている。検査や試験の種類に応じて、異なる仕様の自動車を一定の環境下に一定時間放置することで、自動車の試験条件を統一し、場所、地域などが異なる環境における試験を模擬しなければならないことがある。そのような場合、試験を行う自動車は、試験を行う所定時間前からソーク室に入れられて放置され、自動車がその環境となった状態で試験が行われる。試験を行う自動車は、例えば、1日に数台~数十台が行われる場合がある。
【0007】
この自動車用測定補助システムでは、ソーク室内において一定温度で保った自動車を、ソーク室の出入口から測定室の出入口まで搬送機構で移動させた後、測定位置設定機構でシャシダイナモメータ上の所定位置に移動させるようにしている。
【0008】
この技術によれば、自動車を待機させるスペースを一定程度削減することができるとともに、待機させていた自動車を整備、検査、試験等を行う場所に移動させる際の作業性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記先行技術では、測定する自動車をソーク室から測定室の出入口まで搬送装置で搬送するとともに、測定位置設定機構でシャシダイナモメータ上の所定位置まで移動させる。このため、多くの機構と、その機構を配置するための床面積が必要となる。しかも、試験を行う自動車の数量に応じて複数のシャシダイナモメータを備えさせる場合、非常に大きな床面積が必要となり、建設費用が建築床面積の大きさに比例して増大する。
【0011】
また、上記先行技術のように自動車を一定温度に保つ必要がある試験の設備に適用する場合は、自動車をソーク室から測定室まで搬送する間も一定温度で保つ必要があるため、搬送装置を設けている広い面積を一定温度で保つためには、多くの空調光熱費が必要となる。例えば、被試験物を-20度の環境で試験を行う場合や、+30度の環境で試験を行う場合には、多くの空調光熱費が必要となる。維持費としての空調光熱費は、空調の必要な容積に比例して増大する。
【0012】
さらに、自動車以外の被試験物であっても、前工程の作業を完了した製品を整備、検査、試験等を行う場所の近くに待機させる場合や、一定の温度など(例えば湿度であってもよい)を一定に保った収容室に一定時間放置した後に試験を行う場合には、同様の課題を生じる。
【0013】
そこで、本発明は、機械装置などの設置面積を削減して建設費を低減できる試験施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る試験施設は、被試験物に対する試験を行う試験場所と、前記被試験物を保管する被試験物保管設備を備えた待機室と、前記被試験物保管設備に前記被試験物を搬入する被試験物搬入部と、を備え、前記被試験物搬入部と前記試験場所との間に前記待機室が備えられ、前記被試験物保管設備は、前記被試験物を保管する少なくとも2列、2段の保管部を備え、前記保管部の1つは前記被試験物搬入部から前記試験場所に向けて前記被試験物の通り抜けが可能な通路を形成する入出庫部に構成されており、前記入出庫部と側方の前記保管部とは、前記被試験物を保管する保管パレットの横行が可能であり、上下方向の前記保管部は、前記保管パレットの昇降が可能なように構成されている。
【0015】
この構成により、被試験物を保管する被試験物保管設備を備えた待機室を被試験物搬入部と試験場所との間に備えさせて試験施設の機械装置と設置面積を削減することができる。よって、試験施設の建設費の低減を図ることができる。この明細書における「待機室」には、上記「収容室」、「ソーク室」を含む。「試験」には、各種試験、検査、改造、整備を含む。「試験場所」には、排気ガス成分測定に用いるシャシダイナモメータなどの試験装置、機能検査や改造、整備を行う地下整備ピット、衝突試験の開始(発進)位置などを含む。
【0016】
また、前記保管パレットは、上面が平坦に形成されたフラットパレットで構成されていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、保管パレット上の被試験物を試験場所に向けて移動させるときに作業性良く移動させることができる。
【0018】
また、前記保管部は、下段の該保管部が前記入出庫部に構成されており、前記入出庫部と前記試験場所とが直線的に配置されていてもよい。
【0019】
このように構成すれば、保管部に保管した被試験物を下段の入出庫部に移動させた後、試験場所に向けて直線的に移動させることで被試験物を試験場所に配置することができる。よって、被試験物の移動距離を短くでき、被試験物に対する試験を効率良く行うことができる。
【0020】
また、前記入出庫部は、側方の前記保管部に前記保管パレットを横行させて空スペースとなった状態で該入出庫部に配置する車路パレットを有していてもよい。
【0021】
このように構成すれば、入出庫部からパレットに入庫させた被試験物を各保管部に保管した後、空スペースとなった入出庫部に車路パレットを配置して入出庫部にも被試験物を保管することができる。
【0022】
また、前記被試験物保管設備に前記被試験物を入庫させた時刻又は前記被試験物を入庫させた後の放置継続時間の少なくともいずれか一方を表示する表示部が備えられていてもよい。
【0023】
このように構成すれば、被試験物を被試験物保管設備に保管した放置開始時間、被試験物を被試験物保管設備に保管した後の放置継続時間を表示部で容易に確認することができる。
【0024】
また、前記試験場所と前記待機室とが1つの試験ユニットとして構成されており、前記試験ユニットが前記被試験物搬入部に面して複数配置されていてもよい。
【0025】
このように構成すれば、より多くの被試験物を保管できる被試験物保管設備を備えた試験施設を構成し、各試験ユニットにおいて複数の被試験物に対する試験を同時に行うことができる。よって、作業効率良く複数の被試験物に対する試験を行うことができる。
【0026】
また、前記待機室は周囲及び天井面を壁で囲まれ、前記被試験物を少なくとも所定の温度で保管するように構成されていてもよい。
【0027】
このように構成すれば、試験施設の空調光熱費の低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、試験施設の機械装置と設置面積を削減して建設費を低減することが可能となる。しかも、被試験物を少なくとも所定の温度で保管する必要がある施設に適用した場合は、空調光熱費を低減することが可能となる。さらに、被試験物保管設備を備えた待機室から試験場所へ被試験物を効率良く移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る試験施設を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す待機室における構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す被試験物保管設備におけるパレットの循環動作を示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す被試験物保管設備の平面視におけるセンサ配置例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す被試験物保管設備の保管パレットを示す図面であり、(A)は全体斜視図、(B)は車止めの部分の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す被試験物保管設備における操作機器の図面であり、(A)は操作盤を示す正面図であり、(B)は無人確認器を示す正面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示す被試験物保管設備における操作機器の操作例を説明する図面であり、(A)は無人確認入力器の操作時における平面図、(B)は非常停止ボタンの操作時における平面図である。
【
図9】
図9は、被試験物保管設備における操作と動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図3に示す被試験物保管設備に自動車を入出庫させるときのパレット動作を示す正面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す被試験物保管設備に備えさせる車路パレットの異なる例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、3列、2段の被試験物保管設備20を備えた試験施設1を例に説明する。また、被試験物として自動車V(
図2)を例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、
図1に示すように被試験物保管設備20に自動車Vを入庫させる方向から見た前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0031】
(試験施設の全体構成)
図1は、一実施形態に係る試験施設1を模式的に示す平面図である。この実施形態の試験施設1は、自動車Vに対する試験を行う試験場所3を備えた試験領域2と、自動車Vを保管する被試験物保管設備20を備えた待機室6と、被試験物保管設備20に自動車Vを搬入出する被試験物搬入部11と、を備えている。この実施形態において、試験場所3が例えば、シャシダイナモメータのような試験装置である場合や、この実施形態のように待機室6の空調を行う場合は、試験領域2の一部または試験領域2に隣接して図示しない制御室4を設け、制御室4には図示しない制御部5(制御機器等)が設けられていてもよい。制御部5は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御部5は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。制御部5は、後述する物体検知センサ80による物体の検知によって被試験物保管設備20を停止させる制御、後述する操作盤33,34の操作に基づく被試験物保管設備20の制御、操作盤33,34の操作に基づく情報の表示なども行う。
【0032】
そして、待機室6が試験領域2と被試験物搬入部11との間に備えられている。待機室6に備えられた被試験物保管設備20は、左右方向に3列の保管部21を備え、下段中央列の地上部分が自動車Vの入出庫部22(
図3)となっている。待機室6には、入出庫部22の後方に被試験物搬入部11との間の第1出入口7が設けられ、入出庫部22の前方に試験領域2との間の第2出入口8が設けられている。すなわち、待機室6には、入出庫部22の後方と前方にそれぞれ1箇所の第1出入口7、第2出入口8が設けられている。待機室6の出入口を、入出庫部22の前後方向における第1出入口7と第2出入口8の2箇所として直線的に設けることで、被試験物搬入部11から被試験物保管設備20の入出庫部22に自動車Vを搬入する経路と、被試験物保管設備20の入出庫部22から試験領域2に自動車Vを移動させる経路を直線的にして短くしている。しかも、被試験物搬入部11から被試験物保管設備20を通って試験場所3まで自動車Vを直線的に移動させることができる。すなわち、被試験物搬入部11から入出庫部22に搬入した自動車Vを、入出庫部22から試験領域2の試験場所3に向けて直線的に移動させることができる。
【0033】
また、試験場所3において試験を行った自動車Vは、待機室6の試験領域2側における第2出入口8から被試験物保管設備20の入出庫部22に向けて直線的に移動させることができる。これにより、試験を行った自動車Vを試験領域2から待機室6に移動させ、待機室6の入出庫部22を通って第1出入口7から被試験物搬入部11に通り抜けさせることができる。よって、試験を行った自動車Vを効率良く被試験物搬入部11に移動させることができる。
【0034】
第1出入口7及び第2出入口8には、外部との間を塞ぐ開閉扉10が設けられている。そして、待機室6は周囲及び天井面を壁で囲まれ、一定の温度または湿度またはその両方を保つための空調器9が備えられている。待機室6は、空調器9によって、24時間、365日、一定の環境に保たれている。空調器9は、制御部5によって制御(所定の温度、湿度を含む場合がある)されている。
【0035】
また、この実施形態では、被試験物搬入部11に自動車Vの向きを変更するターンテーブル12が設けられている。自動車Vは、ターンテーブル12に載せられて被試験物保管設備20の方向に向けられた後、被試験物保管設備20に入庫させられる。この実施形態では、自動車は作業者による手押しによって移動させられる。また、被試験物保管設備20から手押しによってターンテーブル12まで移動させられた自動車Vは、ターンテーブル12の旋回によって所定の方向に向けられ、作業者の手押しによって移動させられる。この例では、自動車Vを被試験物保管設備20からターンテーブル12に移動させた後、自動車Vの向きを90度変更して移動させる列を矢印で示している。
【0036】
(被試験物保管設備の構成)
図2は、
図1に示す待機室6における構成を示す平面図である。
図3は、
図2に示す被試験物保管設備20の正面図である。
図4は、
図2に示す被試験物保管設備20におけるパレットの循環動作を示す正面図である。
図5は、
図3に示す被試験物保管設備20の平面視におけるセンサ配置例を示す平面図である。
【0037】
図2,3に示すように、この実施形態の被試験物保管設備20は、3列、2段で構成された保管装置となっている。被試験物保管設備20は、左右方向に3列、上下方向に2段で合計6箇所の保管部21を有しており、6箇所の保管部21に対し保管パレット50が5箇所に設けられ、1箇所の保管部21は空スペース23となっている。地上段の1段目F1における中央列の2列目L2が入出庫部22となっている。入出庫部22である2列目L2は、1列目L1と3列目L3に比べて支柱間ピッチが広くなっている。すなわち、3列を形成する支柱24の間隔を不等ピッチとし、入出庫部22となる2列目L2の支柱間ピッチを広くしている。これは、入出庫部22に自動車Vを移動させる作業が作業者による手押し作業となるため、入出庫部22において作業者が自動車Vの側方に立つ通路幅を確保するためである。これにより、入出庫部22における自動車Vの手押し作業をしやすくしている。入出庫部22の前方と後方には、保管パレット50の上面と同一面に車路デッキ29が設けられている。
【0038】
図4に示すように、被試験物保管設備20は、1段目F1と2段目F2では、各保管パレット50を1列目L1と2列目L2、及び2列目L2と3列目L3との間で個別に矢印Wで示すように横行させることができる。
図3に示すように、この横行は横行装置25によって各保管パレット50を1列毎に横行させるようになっている。各保管パレット50の横行動作は、1列毎の順次動作でも、複数列の同時動作でもよい。横行装置25は、各保管パレット50の下面に設けられたレール部材(図示略)を複数の支持ローラ26で支持し、支持ローラ26を横行モータ(図示略)で回転させることで各保管パレット50を横行させるものを利用できる。この例では、1列目L1と2列目L2との間、及び2列目L2と3列目L3との間にアイドルローラ26aが設けられている。横行装置25は、例えば、特開2016-65436号公報に記載された横行駆動部を用いることができる。
【0039】
また、
図4に示すように、被試験物保管設備20は、1列目L1と3列目L3とでは、各保管パレット50を1段目F1と2段目F2との間で、矢印Hで示すように昇降させることができる。
図3に示すように、この昇降は一部を図示する昇降装置27によって行われる。昇降装置27は、各保管パレット50に設けられた係止部材(図示略)を、昇降モータ28で回転駆動する昇降チェーンの係合フック(図示略)で引っ掛けて昇降させるものを利用できる。昇降装置27の昇降チェーンは、支柱24に沿って昇降するように設ければよい。昇降装置27は、例えば、特開2016-65436号公報に記載された昇降駆動部を用いることができる。昇降装置27によって保管パレット50を1段目F1と2段目F2で昇降させるときに、横行装置25が退避位置と支持位置とに変位する機構も、特開2016-65436号公報に記載された機構を用いることができる。横行装置25及び昇降装置27としては、他の構成を用いることができる。これらの横行装置25及び昇降装置27により、全ての保管パレット50が入出庫部22に移動可能となっている。なお、2列目L2の昇降装置27は後述の車路パレット60を昇降させるために設けられている。
【0040】
このような被試験物保管設備20によれば、保管パレット50を入出庫部22に配置することで自動車Vの入出庫ができる。入出庫部22で自動車Vを載置した保管パレット50は、他の保管パレット50とともに空スペース23に向けて順次移動させることで、保管パレット50を各保管部21に移動させることができる。各保管パレット50の移動は、制御部5によって横行装置25と昇降装置27とを駆動制御することで行われる。また、入出庫部22に配置した保管パレット50の左右方向の中心は、試験領域2に備えられた試験場所3の左右方向の中心と機械的にほぼ合わせることができる(
図1)。
【0041】
さらに、上記被試験物保管設備20では、保管パレット50を3列、2段の保管部21において移動させるために1箇所の空スペース23が必要となるが、入出庫部22以外の保管部21に保管パレット50を保管した後、空スペース23となった入出庫部22に配置する車路パレット60が備えられている。
【0042】
図2,3にも示すように、入出庫部22の上部に備えられている車路パレット60は、後述する保管パレット50と同じ形態であり、上面が平坦なフラットパレットとなっている。車路パレット60は、2列目L2の昇降装置27によって、入出庫部22の上部に退避させた状態と入出庫部22の横行装置25上に配置した状態とにできる。2列目の昇降装置27は、車路パレット60を入出庫部22で単純昇降させる構成にできる。車路パレット60は、上昇させた位置が退避位置となっている。
【0043】
これにより、保管パレット50を5箇所の保管部21に配置して入出庫部22が1つの空スペース23となった状態で、上方に退避させていた車路パレット60を入出庫部22に配置して、6個のパレットを備えさせた状態にできる。このように、車路パレット60を入出庫部22に配置することで、本来、空スペース23となる空間にも自動車Vを保管することが可能となり、全ての保管部21に自動車Vを保管した状態にできる。すなわち、6台の自動車Vを保管することが可能となる。車路パレット60は、最初に試験を行う自動車Vを保管しておき、その自動車Vは試験終了後に被試験物搬入部11へ出庫させる。そして、車路パレット60を入出庫部22の上部に退避させることで、入出庫部22を空スペース23にできる。その後は、他の保管部21の保管パレット50を横行、昇降動作させることで、任意の保管パレット50を入出庫部22に呼び出すことができる。
【0044】
また、被試験物保管設備20には、入出庫部22の被試験物搬入部11側に第1ゲート30が設けられ、試験領域2側に第2ゲート31が設けられている。第1ゲート30及び第2ゲート31は、内部を目視して確認できる網体で形成されている。第1ゲート30及び第2ゲート31は、図示しない駆動機によって、下降させて入出庫部22の前後を閉鎖した状態と、上昇させて入出庫部22の前後を開放した状態とにできる。また、被試験物保管設備20の入出庫部22以外の周囲部分は、固定フェンス32によって塞がれている。固定フェンス32は、内部を目視で確認できるように網体で形成されている。これにより、被試験物保管設備20の内部には、第1ゲート30又は第2ゲート31からしか出入りができない。被試験物保管設備20は、第1ゲート30又は第2ゲート31が開放している状態では、全ての機械動作がインターロックされる。機械動作がインターロックされると、全ての機械動作の開始が禁止され、機械動作中であればその動作が停止される。
【0045】
被試験物保管設備20には、被試験物搬入部11側に第1操作盤33が設けられ、試験領域2側に第2操作盤34が設けられている。第2操作盤34には、被試験物保管設備20の電源キーを挿入するキー挿入部35(
図7(A))が設けられており、被試験物保管設備20は試験領域2側からでなければ電源を入れることができない。
【0046】
また、この実施形態では、各列に無人確認入力器40が備えられている。被試験物保管設備20は、所定の無人確認入力器40全てにおいて無人確認ボタン41(
図7(B))が押されるまで全操作がインターロックされている。例えば、後述のように反射鏡を用いて無人確認を行う場合は、前方または後方のいずれかに設けられた全ての無人確認ボタン41押すことでインターロックを解除することができる。無人確認入力器40は、被試験物保管設備20の前部及び後部の両方にそれぞれ設けられている。
【0047】
図5に示すように、被試験物保管設備20の内部と、第1ゲート30及び第2ゲート31の部分には、物体検知センサ80が設けられている。
図5では、物体検知センサ80の検知ラインを示している。被試験物保管設備20の内部には、1列目L1の保管パレット50の左方向に第1センサ81が設けられ、1列目L1と2列目L2との間に第2センサ82が設けられ、2列目L2と3列目L3との間に第3センサ83が設けられ、3列目L3の保管パレット50の右方向に第4センサ84が設けられている。また、被試験物保管設備20の前部における1列目L1から3列目L3までの全幅方向に第7センサ87が設けられ、後部における1列目L1から3列目L3までの全幅方向に第8センサ88が設けられている。これら第1センサ81~第4センサ84及び第7センサ87、第8センサ88は、入出庫部22の床面(保管パレット50の上面)から所定高さ(例えば、30cm程度)において物体を検知する単光軸の光電管センサを用いることができる。
【0048】
そして、入出庫部22の後方の第1ゲート30の部分と前方の第2ゲート31の部分とには、第5センサ85と第6センサ86とが設けられている。第5センサ85及び第6センサ86は、床面から所定高さ(例えば、5cm程度)の位置から上方の所定高さ(例えば、200cm程度)の範囲において物体を検知する面センサにできる。面センサとしては、例えば、単光軸のセンサを上下方向に複数並設することで構成することができる。第5センサ85及び第6センサ86は、第1ゲート30及び第2ゲート31の閉鎖後も有効となっている。これにより、第1ゲート30又は第2ゲート31が開放されることによる被試験物保管設備20のインターロックに加え、第1ゲート30及び第2ゲート31の閉鎖後であっても、第1ゲート30及び第2ゲート31の部分で何らかの物体を検知することで被試験物保管設備20がインターロックされる。これらのセンサ80の検知状況に応じて、インターロックを解除するために押す必要がある無人確認ボタン41を選択するようにしてもよい。
【0049】
(保管パレットの構成)
図6は、被試験物保管設備20の保管パレット50を示す図面であり、(A)は全体斜視図、(B)は車止めの部分の斜視図である。
図6(A)に示すように、保管パレット50は、前後方向に延びる長方形状に形成されている。中央部51から幅方向に離間した位置には車路部52が設けられている。車路部52は、上面が中央部51とほぼ一致するように板材53が設けられている。車路部52の左右方向外側には、デッキ部55が設けられている。デッキ部55は、作業者が自動車Vを手押しで移動させるため、ノンスリップテープ等を設けてもよい。保管パレット50は、車路部52と中央部51及びデッキ部55の上面が平坦に形成されたフラットパレットとなっている。保管パレット50の上面をフラットにすることで、保管パレット50に自動車Vを手押しで入庫させ、保管パレット50から自動車Vを手押しで出庫させることが容易にできる。保管パレット50には、車路部52の対角位置の2箇所に車止め56が設けられている。車路部52と中央部51及びデッキ部55はいずれかの部分または全てを一体的に構成してもよい。フラットにされた車路部52とデッキ部55の上面に対し、歩行に影響がない中央部51の上面を高くまたは低くなるように構成してもよい。
【0050】
図6(B)に示すように、車止め56には、棒材の両端部をU字状に折り曲げた折り曲げ部57が設けられている。車路部52の板材53には、車止め56の両端部の折り曲げ部57を挿入する挿入穴54が幅方向に2つ設けられている。挿入穴54は、保管パレット50の長手方向(自動車Vの長手方向)に所定間隔で複数箇所に設けられている。挿入穴54を設ける所定間隔は、試験場所3において試験をする自動車Vの全長に応じて決定することができる。
【0051】
これにより、車止め56は、上方に持ち上げて挿入穴54に挿入されている折り曲げ部57を抜くことで容易に取り外すことができる。車止め56を取り外すことで、保管パレット50の一方から保管した自動車Vを、保管パレット50の他方に向けて押し出すことが容易にできる。また、車止め56を挿入する挿入穴54を選択することで、車止め56を保管パレット50の長手方向に対して設ける位置を変更できる。車止め56の位置変更は、自動車Vの全長などに応じて容易にできる。なお、上記車路パレット60にも同様の車止め56が設けられている。
【0052】
車止め56は、上記した例の他、車路部52の一部が上方に突出又は車路部52と同一面になるように倒伏するフラップ式としてもよい。フラップ式の場合、一度踏み込むと突出し、もう一度踏み込むと倒伏状体となるような機構を採用できる。
【0053】
さらに、保管パレット50及び車路パレット60に、自動車Vの入庫位置を規制する入庫位置規制ペイント58(一例を二点鎖線で示す)を塗布してもよい。入庫位置規制ペイント58は、自動車Vの前後方向の入庫位置を規制するための印となる。入庫位置規制ペイント58を塗布することで、自動車Vの入庫中に有効としている車長規制センサ(図示略)を作業者が遮光したとしても自動車Vの停止位置を目視で確認できる。
【0054】
(操作機器の構成)
図7は、被試験物保管設備20における操作機器の図面であり、(A)は第2操作盤34を示す正面図であり、(B)は無人確認入力器40を示す正面図である。
【0055】
図7(A)は第2操作盤34の一例であり、第2操作盤34には、被試験物保管設備20を操作する電源キーを挿入するキー挿入部35と、各種の操作、情報表示などが行われるタッチパネル36とが設けられている。図示するタッチパネル36は、呼出すパレットの番号と「通り抜け」ボタンが表示された状態を示している。この状態でいずれかの番号にタッチすると、該当する保管パレット50または車路パレット60が入出庫部22に呼び出される(配置される)。この実施形態では、5つの保管パレット50に「1」~「5」の番号が割り当てられ、車路パレットに「6」の番号が割り当てられている。タッチパネル36の「情報表示」ボタンにタッチすると、自動車Vを被試験物保管設備20に入庫させた時刻など種々の情報を表示させることができるようにしてもよい。これにより、自動車Vを入庫させた時刻を容易に確認することができる。また、被試験物を少なくとも所定の温度で保管する必要がある施設に適用した場合は、タッチパネル36に、自動車Vを被試験物保管設備20に入庫させてからの継続時間を表示させることができるようにしてもよい。これにより、被試験物保管設備20に入庫させた自動車Vが所定時間を経過しているか否かを確認することができる。自動車Vを入庫させた時刻、自動車Vを入庫させてからの継続時間などは、例えば、操作盤33,34にそれぞれを表示させるボタンを設け、作業者が押すことで表示部に表示するようにできる。例えば、電源キーが挿入されていない状態の時や電源キーが「停止」の位置である時に、タッチパネル36に表示情報を選択するボタンが表示されるようにすることができる。タッチパネル36には、被試験物保管設備20の操作に関する案内や警告などを、被試験物保管設備20の状況に応じて表示することができる。なお、操作盤33,34のタッチパネル36(表示部)に表示させる情報は、これらの情報に限定されない。また、操作盤33,34の上部には、警告などのためのブザー37が設けられている。
【0056】
図7(B)は無人確認入力器40の一例である。無人確認入力器40には、内部の無人を確認して押す無人確認ボタン41と、無人確認ボタン41を押すまで点滅するランプ42とが設けられている。
【0057】
(操作機器の操作例)
図8は、被試験物保管設備20における操作機器の操作例を説明する図面であり、(A)は無人確認入力器40の操作時における平面図、(B)は非常停止ボタン45の操作時における平面図である。
【0058】
図8(A)に示すように、被試験物保管設備20の内部には、自動車Vが保管された状態で内部の無人確認を目視で行う反射鏡43(誇張して示す)が設けられている。反射鏡43は、被試験物保管設備20の4箇所の角部に設けられている。被試験物保管設備20の後方から前方の反射鏡43を見ることで、被試験物保管設備20の前部における左右方向を確認することができる。反対に、被試験物保管設備20の前方から後方の反射鏡43を見ることで、被試験物保管設備20の後部における左右方向を確認することができる。
【0059】
反射鏡43を用いた無人確認入力器40の操作は、図示する被試験物保管設備20の後部からの確認であれば、後方から前方に設けられた反射鏡43を目視することで被試験物保管設備20の前部における無人確認をして無人確認ボタン41を押す操作となる。また、被試験物保管設備20の前部からの確認であれば、前方から後方に設けられた反射鏡43を目視することで被試験物保管設備20の後部における無人確認をして無人確認ボタン41を押す操作となる。
【0060】
図8(B)に示すように、被試験物保管設備20の内部には、作業者が被試験物保管設備20の内部で押す非常停止ボタン45が設けられている。非常停止ボタン45は、第1ゲート30と第2ゲート31の近傍であって、入出庫部22を形成する支柱24に設けられている。非常停止ボタン45は、合計4箇所に設けられている。非常停止ボタン45は、被試験物保管設備20の内部から操作するようになっている。非常停止ボタン45が押されると、被試験物保管設備20の全操作がインターロックされる。
【0061】
(被試験物保管設備の動作例)
図9は、被試験物保管設備20における操作と動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに基づいて、被試験物保管設備20に保管していた自動車Vを出庫させる操作例を説明する。
【0062】
作業者は、電源キーを第2操作盤34のキー挿入部35に挿入し、「操作」まで回す(S1)。これにより、タッチパネル36に保管パレット50の選択画面が表示される(
図7(A)のタッチパネル36)。そして、作業者は保管パレット50をパレット番号で選択する(S2)。この実施形態では、それぞれの保管パレット50に1~5及び車路パレット60に6の固有のパレット番号が付与されている。これにより、被試験物保管設備20が起動し(S3)、選択した保管パレット50が入出庫部22まで移動させられる。そして、保管パレット50が入出庫部22に到着すると(S4)、第2ゲート31が開放されて(S5)被試験物保管設備20の全ての動作が停止する。なお、車路パレット60に自動車Vが保管されている場合、空スペース23が車路パレット60で埋められているため、他の保管パレット50を選択して移動させることはできない。同様に、入庫の場合も原則として保管パレット50に優先して入庫させ、最後に車路パレット60に入庫させることが望ましい。
【0063】
その後、作業者は入出庫部22に進入し、自動車Vを手押しで出庫させる(S6)。このとき、車止め56が挿入されている場合は、必要に応じて予め取り外し(フラップ式の場合は倒伏状態に)してもよい。入庫の場合も、必要に応じて予め車止め56を挿入(フラップ式の場合は起立状態に)してもよい。なお、作業者が、電源キーを一旦「停止」まで回して抜き取り、自身で携帯して進入するようにすれば、電源キーを持たない第三者が不用意に保管設備20を動作させることが無いので、監視員などを置く必要が無い。作業者は、入庫した後に退出し(S7)、ランプ42が点滅している無人確認入力器40の位置で内部の無人を確認して無人確認ボタン41を押す。ランプ42の点滅は、インターロックを解除するために押す必要がある無人確認ボタン41の位置を示している。そして、最後に第2操作盤34の位置でタッチパネル36に表示されている「無人確認」を押す(S8)。これにより、タッチパネル36に「安全確認」が表示されて、作業者は「安全確認」を押す(S9)。その後、タッチパネル36に「ゲート閉」が表示されて、作業者は「ゲート閉」を押す(S10)。これにより、被試験物保管設備20の第1ゲート30が閉鎖される(S11)。その後、作業者は、第2操作盤34の電源キーを「停止」まで回し、キーを抜き取る(S12)。これにより、1台の自動車Vを出庫させる操作が終了する。
【0064】
図9では、被試験物保管設備20から1台の自動車Vを出庫させる操作を説明したが、空の保管パレット50を保管部21から入出庫部22に呼び出して入庫させることができる。また、入庫させた自動車Vを保管した保管パレット50が入出庫部22から保管部21に移動させられた後、次の保管パレット50を入出庫部22に呼び出して次の自動車Vを入庫させることができる。そして、5個の保管パレット50に自動車Vを入庫させて入出庫部22以外の保管部21に保管された後、保管パレット50をパレット番号で選択して呼び出したときと同様に「6」の番号ボタンにタッチして車路パレット60を入出庫部22に配置することで6台目の自動車Vを入庫させて保管することができる。
【0065】
また、保管設備20の後部から入出庫させる場合は、電源キーを第2操作盤34のキー挿入部35に挿入し、「操作」まで回した後、第1操作盤33の位置に移動して(第1操作盤33にもキー挿入部35を備える場合は、電源キーを第1操作盤33のキー挿入部35に挿入し、「操作」まで回した後、)、第1操作盤33において上記と同様の操作を行い、第1ゲート30の側から入庫または出庫を行う。
【0066】
また、タッチパネル36に表示している「通り抜け」ボタンを押すと、空の保管パレット50または空の車路パレット60を入出庫部22に呼び出して、前後のゲート30、31の両方が開くようになっている。自動車Vを通り抜けさせた後、タッチパネル36の操作により、保管設備20内の各センサ81~84、87、88が検知していないことと入出庫部22に自動車Vが無いことを条件に、前後のゲート30、31の両方が閉じられるようになっている。なお、この「通り抜け」ボタンを省略し、空の保管パレット50または空の車路パレット60を目視にて確認し、「1」~「6」のいずれかにタッチして呼び出すことにより、通り抜けできるようにしてもよい。
【0067】
(被試験物保管設備の動作例)
図10は、被試験物保管設備20に自動車Vを入出庫させるときのパレット動作を示す正面図である。図示する状態は、5個の保管パレット50に自動車Vを保管して入出庫部22を空スペース23とした後、入出庫部22に車路パレット60を配置して自動車Vを保管する状態を示している。被試験物保管設備20の入出庫部22に配置された車路パレット60(保管パレット50に入出庫させるときも同様)に自動車Vを入出庫させる場合、作業者が自動車Vを手押しで入庫又は出庫させる。このため、自動車Vを手押しで入出庫させる際に、入出庫部22の車路パレット60(保管パレット50)の側部に作業者の通路を確保する動作が行われるようにしている。この動作は、入出庫部22に着床させた車路パレット60(保管パレット50)に対し、左右位置に隣接する保管パレット50を近接させる動作となっている。詳しくは、各保管パレット50を1列毎に横行させる場合と同様に、各保管パレット50の下面に設けられたレール部材(図示略)を複数の支持ローラ26で支持した状態のまま高さを変えずに、横行装置25によって左右位置に隣接する保管パレット50をそれぞれ入出庫部22に着床させた車路パレット60(保管パレット50)に近接する位置まで横行させる。入出庫部22の車路パレット60(保管パレット50)に両側部の保管パレット50を横行させて近接させることで、入出庫部22の車路パレット60(保管パレット50)のデッキ部65(デッキ部55)と、左右位置に隣接する保管パレット50のデッキ部55とによって広い歩行路を形成することができる。
【0068】
これにより、入出庫部22に歩行路としての通路デッキを設ける必要が無く、また歩行路を車路パレット60(保管パレット50)の上面と同一面に形成して段差のない歩行路とすることができる。また、歩行路となるデッキ部65,55にノンスリップテープ等で滑り止め処置を施すこともでき、作業者は広い歩行路で適切に自動車Vを手押しすることができる。なお、用途や設置状態に応じて、自動車Vの自走により保管設備20に入出庫させるようにしてもよい。
【0069】
(車路パレットの異なる例)
図11は、
図10に示す被試験物保管設備20に備えさせる車路パレット60の異なる例を示す正面図である。この例の第2車路パレット70は、デッキ部75の幅寸法が広くなっており、2列目L2の支柱間ピッチに応じた広い幅寸法となっている。この第2車路パレット70によれば、入出庫部22に配置することで広いデッキ部75を形成することができる。このため、自動車Vを入出庫させるときに入出庫部22の左右位置に配置されている保管パレット50を入出庫部22の方向に寄せる必要がない。
【0070】
(その他の変形例)
上記試験施設1における試験領域2と待機室6との構成を1つの試験ユニット90として構成し、この試験ユニット90を複数並設することで、より多くの自動車V(被試験物)を同時に試験できる大規模な試験施設1を構成することができる。例えば、被試験物搬入部11に対して複数の試験ユニット90が並設されるように複数配置することができる。また、被試験物搬入部11に対して試験ユニット90が対面するように複数配置することができる。このようにすれば、被試験物搬入部11の面積を抑えて大規模な試験施設1を構成することができる。
【0071】
また、複数の試験ユニット90を設ければ、待機室6の環境を異ならせた複数台の自動車V(被試験物)に対する試験を並行して行うことができる試験施設1を構成できる。すなわち、試験ユニット90の待機室6ごとに複数の被試験物を待機でき、待機室6の出入口7,8も独立しているため、他の試験ユニット90の作業状況の影響を受けることなく多くの試験を並行して行うことが可能となる。したがって、作業効率良く複数の被試験物に対する試験を行うことが可能となる。
【0072】
さらに、被試験物保管設備20は、自動車V(被試験物)を少なくとも2列、2段で保管する構成であればよいが、上記した実施形態の3列、2段のように、中央列が入出庫部22となった構成とすることで、左右方向に保管する自動車Vを同等の時間で格納又は呼出しできるので好ましい。また、4列以上や3段以上で構成してもよい。
【0073】
さらに、第1出入口7、第2出入口8を、被試験物保管設備20中央の入出庫部22に対して設けた例を示したが、第2出入口8の位置は、試験場所3に正対する位置であれば、被試験物保管設備20の左右寄りや端部であってもよく、入出庫部22を2カ所設けて第1出入口7が第2出入口8に対してオフセットされた位置に設けられてもよい。
【0074】
また、上記した実施形態は一例を示しており、被試験物も自動車Vに限られるものではなく、複数の対象物を1つずつ整備、検査、試験等を行う場所の近くに待機させる必要がある被試験物であれば適用でき、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0075】
(総括)
以上のように、上記試験施設1によれば、自動車V(被試験物)を保管する被試験物保管設備20を備えた待機室6を被試験物搬入部11と試験領域2との間に備えさせることで、試験施設1における機械装置の低減と必要床面積の低減とによって施設建築費用を低減することが可能となる。しかも、被試験物を少なくとも所定の温度で保管する必要がある施設に適用した場合は、空調光熱費の低減を図ることが可能となる。
【0076】
また、被試験物保管設備20を備えた待機室6から試験領域2の試験場所3まで自動車V(被試験物)を直接的に搬送できるため、自動車Vを試験場所3に搬送する経路を短縮し、自動車Vに対して効率良く試験を行うことが可能となる。
【0077】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
1 試験施設
2 試験領域
3 試験場所(シャシダイナモメータ)
4 制御室
5 制御部
6 待機室
7 第1出入口
8 第2出入口
9 空調器
10 開閉扉
11 被試験物搬入部
20 被試験物保管設備
21 保管部
22 入出庫部
23 空スペース
24 支柱
25 横行装置
27 昇降装置
30 第1ゲート
31 第2ゲート
32 固定フェンス
33 第1操作盤
34 第2操作盤
35 キー挿入部
36 タッチパネル
40 無人確認入力器
43 反射鏡
50 保管パレット
54 挿入穴
55 デッキ部
56 車止め
57 曲げ部
58 入庫位置規制ペイント
60 車路パレット
65 デッキ部
70 第2車路パレット
80 物体検知センサ
85 第5センサ(面センサ)
86 第6センサ(面センサ)
90 試験ユニット
V 自動車(被試験物)