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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】自己出力型検出器および核計装システム
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20221006BHJP
   G21C 17/12 20060101ALI20221006BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01T3/00 F
G01T3/00 D
G21C17/12 200
G21C17/12 100
G01T1/16 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018198849
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020067312
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】伏見 篤
(72)【発明者】
【氏名】田所 孝広
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-084581(JP,U)
【文献】特公昭42-001915(JP,B2)
【文献】特開昭54-157679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 -1/16
1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエミッタ、外側にコレクタを備え、前記エミッタと前記コレクタの間が絶縁されている自己出力型検出器において、
前記エミッタを封入するエミッタ容器を備え、前記エミッタ容器が気密であり、
前記エミッタが鉛ビスマスであることを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の自己出力型検出器において、
前記エミッタ容器に気体が封入されていることを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項3】
請求項2の自己出力型検出器において、
前記エミッタ容器内の気体の圧力が高温によってエミッタの体積が増加する前の時点で負圧であることを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項4】
請求項1に記載の自己出力型検出器において、
前記エミッタ容器内に真空の空間を備えたことを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項5】
請求項1に記載の自己出力型検出器において、
前記エミッタ容器が絶縁体で形成されていることを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項6】
内部にエミッタ、外側にコレクタを備え、前記エミッタと前記コレクタの間が絶縁されている自己出力型検出器において、
前記エミッタを封入するエミッタ容器を備え、前記エミッタ容器が気密であり、
前記エミッタが高温によって溶融した際に自己出力型検出器の向きに依らず、前記エミッタ容器内の局所的なエミッタ密度が一定となるようにエミッタ質量と前記エミッタ容器の容積が調整されていることを特徴とする自己出力型検出器。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の自己出力型検出器を原子炉の計装管内に配設されていることを特徴とする核計装システム。
【請求項8】
請求項の核計装システムにおいて、前記計装管ごとに複数の自己出力型検出器が設置されていることを特徴とする核計装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器の一種である自己出力型検出器および自己出力型検出器を利用した核計装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自己出力型検出器は、電圧の印加を必要とせず、エミッタ中の電子数の変化によって発生する電流値を計測するという単純な構造のため、比較的過酷な環境に設置することが可能な放射線検出器である。自己出力型検出器の一種である自己出力型ガンマ線検出器は、ガンマ線の照射によりエミッタ中の電子が弾き出されることによって生じるエミッタの電子の減少に伴って発生する電流値を計測する。同様に自己出力型中性子検出器は、エミッタ材と中性子の核反応によってエミッタ中の電子が放出されることで生じるエミッタの電子数の変化によって発生する電流値を計測する。エミッタ中の電子の増減には、ベータ崩壊などの崩壊現象も利用される。
【0003】
このように自己出力型ガンマ線検出器と自己出力型中性子検出器は、類似の原理によって動作するものであり、ほぼ同様の構造である。これらの差異は主にエミッタの物質の差異によってもたらされる。しかしながら、ガンマ線との相互作用のみ、あるいは中性子との核反応のみが起こる物質は存在しない。このため、ガンマ線との相互作用で電子を放出しやすい物質をエミッタとして採用した場合は自己出力型ガンマ線検出器、中性子との核反応で電子を放出しやすい物質をエミッタとして採用した場合は自己出力型中性子検出器として動作する。ここで言う電子の放出し易さは環境に依存し、中性子の少ない環境に適用する自己出力型ガンマ線検出器のエミッタの選択の幅は広く、ガンマ線の少ない環境に適用する自己出力型中性子検出器のエミッタの選択の幅は広い。
【0004】
原子炉内への適用を考えた場合、原子炉内はガンマ線の線量率が高く、中性子束も多い。さらに原子炉内は高温である。このような環境に適用可能な自己出力型ガンマ線検出器として特許文献1がある。特許文献1には600℃以上の耐熱性を持ち、ガンマ線に感度の高いタングステンをエミッタに適用した自己出力型ガンマ線検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6095099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子炉内で使用する自己出力型ガンマ線検出器のエミッタは、ガンマ線との相互作用の確率が高く、中性子との反応断面積の小さいほどガンマ線強度の監視に適している。ガンマ線との相互作用確率は、ガンマ線のエネルギによって異なるが、線減弱係数の大きい元素としては原子番号72から83のHf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Biが挙げられる。これらの元素は幅広いエネルギ帯において、多くの元素に対し、数倍から一桁以上線減弱係数が大きい。
【0007】
一方、中性子感度として、これら原子番号が72から83の元素の熱中性子吸収断面積を比較すると、PbとBiの断面積が小さく、その他はPbに対して約50倍から約2500倍である。BiはPbよりも熱中性子断面積が小さく、Pbの熱中性子断面積に対して約0.2倍である。これらのことから線量率が高く、中性子束が多い環境に適用する自己出力型ガンマ線検出器としてはBiあるいはPbが適している。
【0008】
原子炉内は約280℃の高温環境である。これに対し、Pbの融点は330℃、Biの融点は約270℃であり、原子炉内にPbやBiを設置した場合、Pbは破断や変形、Biは溶融が起こる。しかしながら、PbやBiはガンマ線感度、中性子感度の観点からは原子炉内に適用する自己出力型ガンマ線検出器のエミッタとしては最適であり、これらをエミッタに採用した自己出力型ガンマ線検出器を構築できれば、ガンマ線を監視する核計装システムとして有望である。
【0009】
これは自己出力型中性子検出器に対しても同様である。中性子に対する断面積が大きく、ガンマ線との相互作用確率が低く、融点の低い物質をエミッタに採用できれば、炉内のような高温環境に設置する自己出力型中性子検出器として有望である。
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するための発明であって、高温においてエミッタが溶融しても動作することができる自己出力型検出器および核計装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の自己出力型検出器は、内部にエミッタ、外側にコレクタを備え、前記エミッタと前記コレクタの間が絶縁されている自己出力型検出器において、前記エミッタを封入するエミッタ容器を備え、前記エミッタ容器が気密(液密)であり、前記エミッタが鉛ビスマスであることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温においてエミッタが溶融しても動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る自己出力型検出器の基本概念を示す図である。
図2】第1実施形態に係る格納容器内の計装管の配置位置を示す図である。
図3】第1実施形態に係る炉心内の計装管近傍の横断面を示す図である。
図4】第1実施形態に係る自己出力型検出器によって原子炉内出力を監視する核計装システムの一例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る自己出力型検出器のエミッタ容器が絶縁材を兼ねる構造を示す図である。
図6】第3実施形態に係る自己出力型検出器のエミッタ容器内にエミッタの体積増加の影響を緩和する構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態に係る自己出力型検出器の基本概念を示す図である。図1では、核計装システムに適用する円筒状の自己出力型ガンマ線検出器を示す。自己出力型検出器1は、中心にBi製のエミッタ11、外側にSUS製のコレクタ14が存在し、エミッタ11は石英ガラス製のエミッタ容器12に覆われている。エミッタ容器12は気密(液密)であり、エミッタ11が溶融してもエミッタ容器12の外に漏れることはない。
【0015】
エミッタ容器12を気密容器とする方法は、電球などのガラス管の封し方法を応用できる。例えば、適切な寸法で成型したガラス管内にエミッタ11を溶かしながら入れ、エミッタ11に金属製の芯線を挿入する。ガラス管の開口部から外へは芯線のみが出ているため、開口部を加熱しながら挟んだり、徐々に径を小さくするなどすることで、封止することができる。エミッタ容器12の容積は、加熱する位置によって制御する。また、ガラス容器に入れるエミッタ11の量は容器内の質量を測ることで管理する。これにより常温時および想定される高温時のエミッタの体積を任意に決定できる。
【0016】
エミッタ容器12とコレクタ14の間にはAl製の絶縁材13が存在する。エミッタ11はNi製の芯線15に接続され、エミッタ11と芯線15の間は導通している。この時、エミッタ11が溶融した場合でも芯線15とエミッタが電気的に接続されるように、エミッタ11の体積および芯線のエミッタ容器12内に挿入されている深さ(挿入長さ)は調整されている。エミッタ容器12は、自己出力型ガンマ線検出器内で移動することを避けるためAl製の保持具16によって固定されている。芯線15は同軸ケーブル17の芯線である。同軸ケーブル17は電流計測装置に接続される。自己出力型ガンマ線検出器の外周のうち、同軸ケーブル17が存在する場所以外あるいはコレクタ部を除いてSUS製のハウジング18で覆われている。
【0017】
原子炉核計装管内(図2の符号41参照)に図1の自己出力型ガンマ線検出器を設置すると、約280℃の高温にさらされ、エミッタ11のBiは融点が約270℃であることから、エミッタ11は溶融する。この時、エミッタ容器12は、石英ガラス製であり1000℃以上でも形状を保つことができる。エミッタ容器12が気密であり、エミッタ11の体積、エミッタ容器12の容積、芯線15のエミッタ容器12内での深さを適切に調整しているため、エミッタ11溶融時でもエミッタ11と芯線15が接触し、電気的に接続されている。
【0018】
エミッタ11が溶融している状態であっても、ガンマ線がエミッタと相互作用を起こした際に電子はエミッタ11から放出される。この時、一般的な自己出力型ガンマ線検出器の動作と同様に、エミッタ11中の電子数の変化のために電気的に接続されている芯線15を通じて電流が流れる。ガンマ線がエミッタ11と相互作用を起こし、エミッタ11から放出される電子が多いほど発生する電流値は大きくなる。このため、同軸ケーブル17の先に接続されている電流計測装置によって電流値を計測することによって自己出力型ガンマ線検出器に照射されたガンマ線量あるいは線量率が監視できる。
【0019】
原子炉において少なくとも定格運転時は炉内の線量率は、原子炉出力に比例している。したがって、原子炉計装管内に設置した図1の自己出力型ガンマ線検出器によって得られる電流値の監視によって原子炉出力が監視できる。
【0020】
ここではエミッタ11をBiとしたが、Pbなど他の物質でも同様の機能を満たすことができる。さらに自己出力型中性子検出器として運用する場合も中性子感度が高く、融点の低い物質をエミッタ11として採用して同様の機能を満たすことができる。
【0021】
また、エミッタ容器12として、石英ガラスを採用したが、気密容器として整形可能で、高温環境において溶融したエミッタ11を保持可能であれば、必ずしも石英ガラスである必要はない。
【0022】
核計装システムへの自己出力型検出器の適用方法の一例として、局所領域モニタ用検出器の校正や出力の詳細な軸方向分布の監視が考えられる。この時、計装管あたりに複数の自己出力型検出器の設置が必要となる。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る格納容器内の計装管の配置位置を示す図である。図3は、第1実施形態に係る炉心内の計装管近傍の横断面を示す図である。図2に自己出力型検出器1を設置する計装管41の位置を示す。計装管41は原子力圧力容器42を貫通するように設置され、自己出力型検出器1は計装管41内の炉心44の範囲に設置される。
【0024】
図3に炉心44内の計装管41近傍の横断面図を示す。チャンネルボックス45は、燃料棒48およびウォーターロッド47を内部に納めている。4つのチャンネルボックス45の中心に、断面十字状の制御棒46が配置されており、制御棒46の配置場所の周辺に計装管41が設置される。
【0025】
図4は、第1実施形態に係る自己出力型検出器によって原子炉内出力を監視する核計装システムの一例を示す図である。図4は、複数の自己出力型ガンマ線検出器を同一の計装管内に設置した時の軸方向断面図を示す。自己出力型ガンマ線検出器は、計装管41内に複数台設置され、最も高い位置にある自己出力型ガンマ線検出器1aと最も低い位置にある自己出力型ガンマ線検出器1bは、それぞれ原子炉の出力監視範囲の上端と下端位置に設置されている。各自己出力型ガンマ線検出器は同軸ケーブル17に接続され、原子力圧力容器42よりも外側に電流が伝送される。このような構成とすることで、自己出力型ガンマ線検出器の計装管あたりの数だけ異なる高さの原子炉出力を監視することができる。
【0026】
図4では計装管41内に自己出力型ガンマ線検出器を複数設置しているが、自己出力型ガンマ線検出器を複数保持する管を計装管41内に設けてもよい。
【0027】
<<第2実施形態>>
図5は、第2実施形態に係る自己出力型検出器のエミッタ容器が絶縁材を兼ねる構造を示す図である。第1実施形態では、エミッタ容器12とはコレクタ14との間に絶縁材13が存在していた。ここでは、エミッタ容器12が絶縁材を兼ねた例を示す。図5において、自己出力型検出器1Aのエミッタ容器12として、Alを採用した場合の構造を示す。
【0028】
Al製のエミッタ容器12は、気密であり、Bi製のエミッタ11が溶融してもエミッタ容器12の外に漏れることはなく、エミッタ11とコレクタ14が直接接触しないための絶縁材としても機能している。ここでは保持具16もAlを用いるが、エミッタ11とコレクタ14が電気的に接触していなければ絶縁材でなくてもよい。Alの融点は約2000℃であることから、原子炉の定格運転時の温度である約280℃においても、形状を保つことが可能である。
【0029】
このような構成とすることでエミッタ容器12と絶縁材13が別の物質であったときと同様に動作することが可能であり、同軸ケーブル17の先に接続されている電流計測装置によって電流値を計測することによって自己出力型ガンマ線検出器に照射されたガンマ線量あるいは線量率を監視できる。したがって、原子炉計装管内に設置した図4の自己出力型ガンマ線検出器によって得られる電流値の監視によって原子炉出力が監視できる。
【0030】
ここではエミッタ容器12をAlとしたが、石英ガラスやMgOなどであっても絶縁機能を有するため同様の効果を得ることができる。
【0031】
<<第3実施形態>>
エミッタ11の物質の選択次第では高温環境において膨張する可能性がある。その対策として図6のようにエミッタ容器12内に空間を設ける構造を示す。
【0032】
図6は、第3実施形態に係る自己出力型検出器のエミッタ容器内にエミッタの体積増加の影響を緩和する構造を示す図である。図6に示す自己出力型検出器1Bにおいて、エミッタ容器12は、内部にエミッタ11の他に気体31(例えば、空気)が封入された気密な容器である。気密容器の成型を低圧環境で実施するなどして、気体31の圧力は常温あるいはエミッタ11の膨張前の時点で負圧であることが望ましい。気体31以外は図1と同様の物質で構成されている。
【0033】
温度上昇に伴い、融点の低いエミッタ11は膨張あるいは溶融して体積が増加する。このとき、エミッタ容器12内に負圧の気体31を設けることで、エミッタ容器12に内側から大きな圧力がかかることが無く、変形や破壊などにより、気密が破れることを回避することができる。
【0034】
気体31が存在する分、エミッタ容器12内に空間が発生する可能性はあるが、エミッタ11が溶融あるいは膨張したときにエミッタ11と芯線15が接触し、電気的に接続できるようにエミッタ11の体積、エミッタ容器12の容積、芯線15のエミッタ容器12内での深さを適切に調整している。
【0035】
このような構成とすることで、エミッタが高温において体積が増加した場合で、気密が破れること無く、自己出力型ガンマ線検出器として動作することが可能である。このため、同軸ケーブル17の先に接続されている電流計測装置によって電流値を計測することによって自己出力型ガンマ線検出器に照射されたガンマ線量あるいは線量率が監視できる。したがって、原子炉計装管内に設置した図4の自己出力型ガンマ線検出器によって得られる電流値の監視によって原子炉出力が監視できる。
【0036】
ここではエミッタ容器12内の気体31を負圧の空気としているが、HeやArなどの希ガスやCOなどの気体でも良く、あるいは負圧の気体31の代わりに真空としても同様の動作が可能である。
【0037】
<<第4実施形態>>
原子炉の運転では臨界になった後に段階的に臨界の出力を上げて定格出力に至る。この過程で核分裂の頻度が増加し、温度が上昇する。エミッタ11は、溶融前と溶融後で、体積や密度が変化する。このため、エミッタ11の溶融前に得られた電流値とエミッタ11の溶融後得られた電流値の出力との相関に連続性がない場合がある。このため、原子炉運転時にエミッタ11が溶融した状態で出力を監視する自己出力型ガンマ線検出器の場合、より融点の低い物質をエミッタ11として採用することで、より低温時から定格運転時まで線形性を持って出力を監視できる可能性がある。また、このような状態であれば原子炉出力上昇中に自己出力型ガンマ線検出器が正常に動作していることを確認できる。
【0038】
前記実施形態までは、エミッタ11として融点が約270℃のBiを例とした場合を中心に述べた。より融点が低く、ガンマ線との相互作用確率が高く、中性子吸収断面積の低い物質としてPb-Bi(鉛ビスマス)がある。Pb-Biの融点は、PbやBiよりも低い約125℃である。したがって、エミッタ11にPb-Biを採用すれば、より低い出力の段階から原子炉出力が監視できる。
【0039】
原子炉が約80℃で臨界状態に達し、出力を段階的に上昇し、やがてエミッタ11にPb-Biを採用した自己出力型ガンマ線検出器の設置位置における温度が125℃となる。このとき、エミッタ11は溶融し、線量率と自己出力型ガンマ線検出器から得られる電流値が線形の関係となる。線量率と原子炉出力が比例している場合には、この時点からエミッタ11にPb-Biを採用した自己出力型ガンマ線検出器により出力監視が可能となる。
【0040】
原子炉出力が低いときは、原子炉内の核分裂が少なく、炉内の構造物の放射化や、燃料を構成する原子核の崩壊によって放出されるガンマ線に線量率が依存し、自己出力型ガンマ線検出器の電流値が原子炉出力と相関を持たない。しかしながら定格運転に近づくにつれて核分裂反応に起因したガンマ線の割合が増加し、やがて原子炉出力と線量率が比例関係に至る。
【0041】
定格運転時の原子炉出力を監視する検出器と、定格運転までの出力を監視する起動領域モニタあるいは中間領域モニタは、連続した出力監視のため、監視出力がオーバーラップする必要がある。原子炉定格運転時の線量率に比べ低い線量率から、線量率と電流値に線形性のあるエミッタ11にPb-Biを採用した自己出力型ガンマ線検出器を採用することで、起動領域モニタや中間領域モニタの監視出力と自己出力型ガンマ線検出器による監視出力がオーバーラップする出力範囲を広くすることができる。
【0042】
以上をまとめると、従来、原子炉出力をガンマ線によって監視するための検出器の一つとして自己出力型ガンマ線検出器がある。自己出力型ガンマ線検出器は中性子とガンマ線を分けて計測できないため、ガンマ線量を監視する場合に、ガンマ線に対する感度が高く、中性子に対する感度の低い元素をエミッタに採用する必要があった。この条件に最適な元素としてPbとBiが挙げられるが、これらは原子炉の定格運転時の炉内温度近傍に融点があるため、PbやBiをエミッタとして採用した自己出力型ガンマ線検出器(自己出力型検出器)は、定格運転時の原子炉内に設置することができなかった。
【0043】
本実施形態の自己検出型検出器は、導体として内部にエミッタ、外側にコレクタを備え、エミッタとコレクタ間が絶縁されている自己出力型検出器において、エミッタを気密容器に封入した。
【0044】
エミッタを覆う容器を、エミッタよりも高い融点の材料で構成することで、エミッタが溶融や変形した場合でもエミッタの形状を保つことができる。自己出力型検出器の動作原理から、ガンマ線または中性子によって電子がエミッタから外部に放出され、且つエミッタが電気的に電流計測装置と接続されていれば、放射線検出器として動作する。このため、エミッタが溶融していたとしてもコレクタと電気的に絶縁されており、電流計測装置と導通していれば放射線計測装置として動作することができる。
【0045】
また、高温時にエミッタが膨張したり溶融することを想定して、エミッタの質量とエミッタ容器の容積および電流を取り出す芯線のエミッタ容器内での長さを調整することで、融点の低いエミッタを適応した自己出力型検出器でも、定格運転時の原子炉内のガンマ線量に対応した電流を発生させ、これを計測することで原子炉出力が監視することができる。
【0046】
以上の説明では、主に自己出力型ガンマ線検出器について説明したが、自己出力型中性子検出器に対しても同様である。中性子に対する断面積が大きく、ガンマ線との相互作用確率が低く、融点の低い物質をエミッタに採用できれば、炉内のような高温環境に設置する自己出力型中性子検出器として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B 自己出力型検出器
1a 自己出力型ガンマ線検出器(上端)
1b 自己出力型ガンマ線検出器(下端)
11 エミッタ
12 エミッタ容器
13 絶縁材
14 コレクタ
15 芯線
16 保持具
17 同軸ケーブル
18 ハウジング
31 空気
41 計装管
42 原子炉圧力容器
43 格納容器
44 炉心
45 チャンネルボックス
46 制御棒
47 ウォーターロッド
48 燃料棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6