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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】流体圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F15B11/08 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018220609
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020085134
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松阪 慶太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181934(WO,A1)
【文献】特開2018-123902(JP,A)
【文献】特開2002-130474(JP,A)
【文献】特開2008-101636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧ポンプから供給される作動流体によって駆動する流体圧モータと、
前記流体圧モータに接続され、前記流体圧ポンプから供給される作動流体がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路と、
前記一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路と、を備え、
前記フラッシング回路は、
前記一対のメイン通路間に設けられて当該一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、
前記低圧選択弁を通過する作動流体を前記タンクへ導くフラッシング通路と、を有し、
前記フラッシング通路は、
第1フラッシング穴と、
前記第1フラッシング穴に設けられフラッシング流量を調整するための第1オリフィスと、
一端が前記第1フラッシング穴における前記第1オリフィスの下流に連通し、他端に前記流体圧モータ及び前記低圧選択弁を収容するケースの外面に開口する開口部を有する第2フラッシング穴と、
前記第1フラッシング穴と前記第2フラッシング穴の連通部である屈曲部と、を有し、
前記低圧選択弁を通過する作動流体は、前記第1フラッシング穴、前記第1オリフィス、前記屈曲部、前記第2フラッシング穴、及び前記第2フラッシング穴の前記開口部に接続される配管を通じて前記タンクへ導かれることを特徴とする流体圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧駆動装置であって、
前記フラッシング通路には、前記第1オリフィスの下流側にチャンバが設けられることを特徴とする流体圧駆動装置。
【請求項3】
流体圧ポンプから供給される作動流体によって駆動する流体圧モータと、
前記流体圧モータに接続され、前記流体圧ポンプから供給される作動流体がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路と、
前記一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路と、を備え、
前記フラッシング回路は、
前記一対のメイン通路間に設けられて当該一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、
前記低圧選択弁を通過する作動流体を前記タンクへ導くフラッシング通路と、を有し、
前記フラッシング通路は、フラッシング流量を調整するための第1オリフィスと、前記第1オリフィスの下流側に形成された屈曲部と、前記屈曲部の下流側に設けられ、開口面積が一定の第2オリフィスと、を有することを特徴とする流体圧駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体圧駆動装置であって、
前記第1オリフィスの開口面積は、前記第2オリフィスの開口面積と比較して小さいことを特徴とする流体圧駆動装置。
【請求項5】
流体圧駆動装置であって、
流体圧ポンプから供給される作動流体によって駆動する流体圧モータと、
前記流体圧モータに接続され、前記流体圧ポンプから供給される作動流体がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路と、
前記一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路と、を備え、
前記フラッシング回路は、
前記一対のメイン通路間に設けられて当該一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、
前記低圧選択弁を通過する作動流体を前記タンクへ導くフラッシング通路と、を有し、
前記フラッシング通路は、第1オリフィスと、前記第1オリフィスの下流側に形成された屈曲部と、を有し、
前記流体圧駆動装置は、
前記流体圧モータ及び前記低圧選択弁を収容するケースと、
前記ケースに取り外し可能に固定され、前記第1オリフィスと前記屈曲部が組み込まれた流量調整用ブロックと、をさらに備えることを特徴とする流体圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧モータを駆動する油圧駆動装置において、作動油の温度上昇を抑制するためのフラッシング回路を備えるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、一対の主管路にフラッシングラインを介して接続されたフラッシング弁と、一次側がフラッシング弁の排出側に接続されたリリーフ弁と、を備えるフラッシング回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-227998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフラッシング回路では、低圧側の主管路からリリーフ弁を通じて作動油が排出されるため、フラッシング回路の冷却能力を調整する際には、リリーフ弁の設定を調整する必要がある。リリーフ弁は部品点数が多いため、フラッシング回路の冷却能力の調整には多大な労力を要する。また、作動油がリリーフ弁を通過する際に、リリーフ弁の下流側で負圧が発生することに起因して、フラッシング流量が脈動し配管に振動が発生することがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フラッシング回路の冷却能力の調整を容易に行うことができ、かつフラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる流体圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体圧駆動装置は、一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路を備え、フラッシング回路は、一対のメイン通路間に設けられて一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、低圧選択弁を通過する作動流体をタンクへ導くフラッシング通路と、を有し、フラッシング通路は、第1フラッシング穴と、第1フラッシング穴に設けられフラッシング流量を調整するための第1オリフィスと、一端が前記第1フラッシング穴における第1オリフィスの下流に連通し、他端に流体圧モータ及び低圧選択弁を収容するケースの外面に開口する開口部を有する第2フラッシング穴と、第1フラッシング穴と第2フラッシング穴の連通部である屈曲部と、を有し、低圧選択弁を通過する作動流体は、第1フラッシング穴、第1オリフィス、屈曲部、第2フラッシング穴、及び第2フラッシング穴の開口部に接続される配管を通じてタンクへ導かれることを特徴とする。
【0008】
この発明では、フラッシング回路の冷却能力は第1オリフィスによって調整される。また、第1オリフィスの下流側には屈曲部が形成されるため、第1オリフィスの下流側での負圧の発生が軽減される。
【0009】
また、本発明は、フラッシング通路には、第1オリフィスの下流側にチャンバが設けられることを特徴とする。
【0010】
この発明では、第1オリフィスを通過したフラッシング流体の流れがチャンバによって整流されるため、第1オリフィスの下流側での負圧の発生を軽減することができ、フラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る流体圧駆動装置は、流体圧ポンプから供給される作動流体によって駆動する流体圧モータと、流体圧モータに接続され、流体圧ポンプから供給される作動流体がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路と、一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路と、を備え、フラッシング回路は、一対のメイン通路間に設けられて一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、低圧選択弁を通過する作動流体をタンクへ導くフラッシング通路と、を有し、フラッシング通路は、フラッシング流量を調整するための第1オリフィスと、第1オリフィスの下流側に形成された屈曲部と、屈曲部の下流側に設けられ、開口面積が一定の第2オリフィスと、を有することを特徴とする。
【0012】
この発明では、第1オリフィスの下流側に第2オリフィスが設けられるため、第1オリフィスの下流側での負圧の発生をより効果的に軽減することができ、フラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0013】
また、本発明は、第1オリフィスの開口面積は、第2オリフィスの開口面積と比較して小さいことを特徴とする。
【0014】
この発明では、第1オリフィスがフラッシング流量を調整する機能を有するのに対して、第2オリフィスはフラッシング流体の流れを整流する機能を有する。
【0015】
また、本発明に係る流体圧駆動装置は、流体圧ポンプから供給される作動流体によって駆動する流体圧モータと、流体圧モータに接続され、流体圧ポンプから供給される作動流体がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路と、一対のメイン通路の一方からタンクへ作動流体を排出するフラッシング回路と、を備え、フラッシング回路は、一対のメイン通路間に設けられて一対のメイン通路間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁と、低圧選択弁を通過する作動流体をタンクへ導くフラッシング通路と、を有し、フラッシング通路は、第1オリフィスと、前記第1オリフィスの下流側に形成された屈曲部と、を有し、流体圧駆動装置は、流体圧モータ及び低圧選択弁を収容するケースと、ケースに取り外し可能に固定され、第1オリフィスと屈曲部が組み込まれた流量調整用ブロックと、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
この発明では、第1オリフィスはケースに取り外し可能に固定された流量調整用ブロックに組み込まれているため、リリーフ弁によってフラッシング流量を調整するタイプから、第1オリフィスによってフラッシング流量を調整するタイプへの変更が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フラッシング回路の冷却能力の調整を容易に行うことができ、かつフラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る流体圧駆動装置の流体圧回路図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る流体圧駆動装置の一部断面図である。
図3図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】比較例の流体圧回路図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る流体圧駆動装置の流体圧回路図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る流体圧駆動装置の一部断面図である。
図7図6のB-B線に沿う断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る流体圧駆動装置の流体圧回路図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る流体圧駆動装置の一部断面図であり、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1~3を参照して、本発明の第1実施形態に係る流体圧駆動装置100について説明する。
【0021】
流体圧駆動装置100は、出力軸1aが作業機等の被駆動対象(図示せず)に連結された油圧モータ1(流体圧モータ)を駆動するための装置である。流体圧駆動装置100では、作動流体として作動油が用いられる。なお、作動油に代わり、作動水等の他の作動流体を用いてもよい。
【0022】
図1に示すように、流体圧駆動装置100は、油圧ポンプ4(流体圧ポンプ)から供給される作動油によって駆動する油圧モータ1と、油圧モータ1に接続された一対のメイン通路としての第1メイン通路2及び第2メイン通路3と、を備える。油圧モータ1は、第1及び第2メイン通路2,3の一方を通じて油圧ポンプ4から供給される作動油によって駆動する。
【0023】
油圧ポンプ4は、エンジンや電動モータ等の駆動源により駆動される。油圧ポンプ4は、レギュレータにより斜板角度が制御されることによって吐出方向と吐出流量が調整される可変容量型ポンプである。油圧ポンプ4から吐出される作動油が第1及び第2メイン通路2,3の一方を通じて油圧モータ1へ供給され、油圧モータ1から排出される作動油が第1及び第2メイン通路2,3の他方を通じて油圧ポンプ4の吸込側へと戻る。このように、流体圧駆動装置100の油圧回路は、閉回路にて構成される。油圧ポンプ4から吐出される作動油が第1メイン通路2を通じて油圧モータ1へ供給される場合には、第1メイン通路2が高圧、第2メイン通路3が低圧となる。一方、油圧ポンプ4から吐出される作動油が第2メイン通路3を通じて油圧モータ1へ供給される場合には、第2メイン通路3が高圧、第1メイン通路2が低圧となる。
【0024】
流体圧駆動装置100は、第1及び第2メイン通路2,3の一方からタンク5へ作動油を排出するフラッシング回路10と、第1及び第2メイン通路2,3への作動油の補給を行うチャージ回路20と、をさらに備える。
【0025】
フラッシング回路10は回路内の作動油を一定流量排出し、チャージ回路20はフラッシング回路10によって排出された分の作動油を回路内に補給する。フラッシング回路10を通じてタンク5へ排出される作動油はクーラ13によって冷却され、チャージ回路20はその冷却された作動油を回路内に補給する。閉回路では、回路内を循環する作動油の量が少ないため、回路内の作動油の温度が上昇し易い傾向にある。しかし、フラッシング回路10及びチャージ回路20の作用により、回路内の作動油の温度上昇が抑制される。
【0026】
フラッシング回路10は、第1メイン通路2と第2メイン通路3の間に設けられて両メイン通路2,3の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁11と、低圧選択弁11を通過する作動油をタンク5へ導くフラッシング通路12と、フラッシング通路12に設けられ、通過する作動油を冷却するクーラ13と、を有する。
【0027】
低圧選択弁11は、分岐通路16aを介して第1メイン通路2と連通する第1入口ポート14a、分岐通路16bを介して第2メイン通路3と連通する第2入口ポート14b、及びフラッシング通路12に連通する出口ポート15の3ポートを有する。
【0028】
分岐通路16aにはパイロット通路17aが接続され、分岐通路16bにはパイロット通路17bが接続される。パイロット通路17a,17bには、それぞれオリフィス18a、18bが設けられる。低圧選択弁11のスプール61(図2及び3参照)の両端には、それぞれパイロット通路17a、17bを通じて第1及び第2メイン通路2,3からの作動油が作用する。したがって、第1メイン通路2と第2メイン通路3の圧力差によってスプール61が移動し、低圧選択弁11のポジションが切り換わる。
【0029】
具体的には、第1メイン通路2が高圧、第2メイン通路3が低圧で、かつ第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差が所定値以上の場合には、スプール61はスプリング64bの付勢力に抗して図中右側へ移動する。これにより、低圧選択弁11はポジションA(図中左側)に設定され、第2入口ポート14bと出口ポート15が連通し、低圧側の第2メイン通路3の作動油がフラッシング通路12に導かれる。
【0030】
一方、第1メイン通路2が低圧、第2メイン通路3が高圧で、かつ第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差が所定値以上の場合には、スプール61はスプリング64aの付勢力に抗して図中左側へ移動し、低圧選択弁11はポジションB(図中右側)に設定され、第1入口ポート14aと出口ポート15とが連通し、低圧側の第1メイン通路2の作動油がフラッシング通路12に導かれる。
【0031】
また、第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差が所定値未満の場合には、スプリング64a及び64bの付勢力によって低圧選択弁11はポジションC(図中中央)に設定され、第1入口ポート14a、第2入口ポート14bと出口ポート15との連通が遮断される。
【0032】
このように、低圧選択弁11は3ポジションを有し、第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差によって切り換わる。
【0033】
チャージ回路20は、タンク5の作動油を吸い込んで吐出するチャージポンプ21と、チャージポンプ21から吐出された作動油を第1及び第2メイン通路2,3に導くチャージ通路22と、を有する。チャージポンプ21は、油圧ポンプ4と同軸回転する固定容量型油圧ポンプである。
【0034】
チャージ通路22は、途中で第1チャージ通路22aと第2チャージ通路22bに分かれ、それぞれ第1及び第2メイン通路2,3に接続される。第1チャージ通路22aには、チャージポンプ21から第1メイン通路2への作動油の流れのみを許容する逆止弁23が設けられ、第2チャージ通路22bには、チャージポンプ21から第2メイン通路3への作動油の流れのみを許容する逆止弁24が設けられる。チャージポンプ21から吐出された作動油は、チャージ通路22を通じて第1及び第2メイン通路2,3のうち低圧側のメイン通路へ補給される。
【0035】
チャージ通路22における逆止弁23,24の上流側にはリリーフ通路25が接続され、リリーフ通路25にはリリーフ弁26が設けられる。このように、チャージポンプ21からチャージ通路22に吐出される余剰の作動油はタンク5へと排出される。これにより、チャージポンプ21の駆動時には、第1及び第2メイン通路2,3の圧力は、リリーフ弁26の開弁圧以上に保たれることになる。
【0036】
流体圧駆動装置100は、第1メイン通路2と第2メイン通路3の間に、互いに逆向きに設けられた一対のリリーフ弁6,7を備える。リリーフ弁6,7は、リリーフ動作した際には、第1及び第2メイン通路2,3のうち高圧側のメイン通路から低圧側のメイン通路へチャージ通路22を通じて作動油を逃がす。
【0037】
ここで、図4を参照して比較例について説明する。比較例では、フラッシング通路12にリリーフ弁40が設けられる。フラッシング回路10による冷却能力を調整する際には、リリーフ弁40を交換することによってフラッシング流量が調整される。リリーフ弁40は部品点数が多いため、フラッシング流量の調整には時間がかかる。また、リリーフ弁40は部品加工が複雑であるため、コストが嵩む。また、リリーフ弁40は、フラッシング通路12の圧力が予め設定された所定の開弁圧力に達した場合に開弁するものであるため、第1及び第2メイン通路2,3の低圧側のメイン通路の圧力によっては開弁しないこともあり、フラッシング流量が安定しないという問題もある。特に、第1及び第2メイン通路2,3の低圧側のメイン通路の作動油を抜き出して他の油圧機器の駆動に利用する場合には、フラッシング流量が不安定となり、フラッシング回路10による冷却能力も不安定となる。さらに、作動油がリリーフ弁40を通過する際に、リリーフ弁40の下流側で負圧が発生することに起因して、フラッシング流量が脈動しフラッシング通路12の一部を構成する配管に振動が発生することがある。
【0038】
比較例における上記問題点の対応策として、本実施形態では、図1に示すように、フラッシング通路12は、フラッシング通路12を流れる作動油に抵抗を付与してフラッシング流量を調整するためのオリフィス50(第1オリフィス)と、オリフィス50の下流側に形成された屈曲部51と、を有する。
【0039】
オリフィス50は、フラッシング通路12に交換可能に設けられる。フラッシング回路10による作動油の冷却能力を調整する際には、オリフィス50を交換するだけでフラッシング流量が調整される。具体的には、必要なフラッシング流量に対応する内径を有するオリフィス50に交換するだけで、フラッシング流量が調整される。このように、オリフィス50は部品点数が少なくかつ加工も容易であるため、容易に低コストでフラッシング流量を調整することができる。また、オリフィス50は、入口圧力によって流量が決まるため、第1及び第2メイン通路2,3の低圧側のメイン通路の圧力に応じて、一定のフラッシング流量を確保することができる。よって、フラッシング回路10による冷却能力を安定させることができる。さらに、オリフィス50の下流側には屈曲部51があるため、屈曲部51での圧力損失によって、オリフィス50と屈曲部51の間の圧力低下が抑制され、オリフィス50の下流側での負圧の発生を軽減することができる。よって、フラッシング通路12を流れるフラッシング流量の脈動の発生を抑制することができるため、フラッシング通路12の一部を構成する配管75(図3参照)の振動の発生を防止することができる。
【0040】
次に、図2及び3を参照して、流体圧駆動装置100の構造について説明する。図2は流体圧駆動装置100の一部断面図であり、図3図2のA-A線に沿う断面図である。
【0041】
油圧モータ1及び低圧選択弁11は、ケース30に収容される。ケース30は、本体部31と、本体部31の開口部を封止するカバー部32と、を有する。本体部31の内部空間には、油圧モータ1を構成する出力軸1a、シリンダブロック35、ピストン36、シュー37、斜板38、及びブレーキ機構39等が収容される。カバー部32には、低圧選択弁11が収容される。
【0042】
以下では、低圧選択弁11について説明する。
【0043】
カバー部32には、スプール61が摺動自在に挿入された収容孔33と、フラッシング通路12の一部を構成する第1フラッシング穴12a及び第2フラッシング穴12bと、が形成される。
【0044】
収容孔33の内周には、第1メイン通路2と連通する第1入口ポート14aと、第2メイン通路3と連通する第2入口ポート14bと、第1フラッシング穴12aに連通する出口ポート15と、が形成される。第1入口ポート14a、第2入口ポート14bと出口ポート15との連通と遮断は、スプール61の中央部に形成された第1ランド部61aによって切り換えられる。
【0045】
収容孔33の両端の開口部は、それぞれプラグ62a,62bにて封止される。プラグ62aとスプール61の一端側に形成された第2ランド部61bとによってパイロット室63aが区画され、プラグ62bとスプール61の他端側に形成された第3ランド部61cとによってパイロット室63bが区画される。
【0046】
パイロット室63aには、パイロット通路17a(図1参照)を通じて第1メイン通路2の作動油が常時導かれ、パイロット室63bには、パイロット通路17bを通じて第2メイン通路3の作動油が常時導かれる。パイロット室63a,63b内には、それぞれスプール61をパイロット室63a,63bの容積が拡大する方向に付勢するスプリング64a、64bが収容される。
【0047】
第1メイン通路2が高圧、第2メイン通路3が低圧で、かつ第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差が所定値以上の場合には、スプール61は、スプリング64bの付勢力に抗してパイロット室63bを縮小する方向(図3中右側)へ移動する。これにより、第2入口ポート14bと出口ポート15が連通し、低圧側である第2メイン通路3の作動油がフラッシング通路12に導かれる。
【0048】
一方、第1メイン通路2が低圧、第2メイン通路3が高圧で、かつ第1メイン通路2と第2メイン通路3との圧力差が所定値以上の場合には、スプール61は、スプリング64aの付勢力に抗してパイロット室63aを縮小する方向(図3中左側)へ移動する。これにより、第1入口ポート14aと出口ポート15が連通し、低圧側である第1メイン通路2の作動油がフラッシング通路12に導かれる。
【0049】
第1フラッシング穴12aは、カバー部32の外面に開口部81を有し、直線状に形成される。第1フラッシング穴12aの開口部81は、カバー部32に取り付けられるプラグ85によって閉塞される。第2フラッシング穴12bは、カバー部32の外面に開口部82を有し、直線状に形成される。開口部82には、タンク5に連通する配管75が接続される。第1フラッシング穴12a、第2フラッシング穴12b、及び配管75によって、フラッシング通路12が構成される。
【0050】
第1フラッシング穴12aと第2フラッシング穴12bは、互いに直交して連通する。第1フラッシング穴12aと第2フラッシング穴12bの連通部が、屈曲部51となる。第1フラッシング穴12aと第2フラッシング穴12bの交差角度、つまり屈曲部51の屈曲角度は90度に限られず、90度未満であってもよいし、90度よりも大きくてもよい。
【0051】
第1フラッシング穴12aには、オリフィス50が設けられる。具体的には、オリフィス50は、第1フラッシング穴12aの内周に螺合して固定されるオリフィスプラグ52に形成される。
【0052】
オリフィス50の下流側には屈曲部51が形成されるため、第1フラッシング穴12aにおけるオリフィス50と屈曲部51の間での負圧の発生が軽減される。よって、フラッシング通路12におけるオリフィス50の下流を流れるフラッシング流量の脈動の発生が抑制され、配管75の振動の発生を防止することができる。
【0053】
フラッシング流量を調整する際には、カバー部32からプラグ85を取り外し、開口部81を通じて第1フラッシング穴12aからオリフィスプラグ52を取り外し、内径の異なるオリフィス50を有するオリフィスプラグ52を開口部81を通じて第1フラッシング穴12aに装着することによって行う。このように、フラッシング流量の調整は、カバー部32に組み込まれたオリフィス50を交換することによって行うことができる。したがって、容易にフラッシング流量を調整することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、オリフィス50が交換可能にケース30に設けられる形態について説明した。これに代えて、オリフィス50をケース30に直接形成するようにしてもよい、つまり、オリフィス50は、交換不能にケース30に設けられる構成であってもよい。
【0055】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0056】
フラッシング回路10の冷却能力はオリフィス50によって調整される。また、オリフィス50の下流側には屈曲部51が形成されるため、オリフィス50の下流側での負圧の発生が軽減される。よって、フラッシング回路10の冷却能力の調整を容易に行うことができ、かつフラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る200について説明する。図5は流体圧駆動装置200の流体圧回路図である。以下では、上記第1実施形態に係る流体圧駆動装置100と異なる点について説明し、流体圧駆動装置100と同様の構成には、図面中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
流体圧駆動装置200は、フラッシング通路12におけるオリフィス50の下流側にチャンバ54が設けられる点で、上記第1実施形態に係る流体圧駆動装置100と異なる。
【0059】
チャンバ54は、一定の容積を有する空間であって、オリフィス50を通過したフラッシング油が流入する。オリフィス50の下流側に一定の容積を有するチャンバ54が設けられることによって、オリフィス50を通過したフラッシング油の流れが整流される。これにより、オリフィス50の下流側での負圧の発生を軽減することができる。よって、フラッシング通路12におけるオリフィス50の下流を流れるフラッシング流量の脈動の発生が抑制され、配管75の振動の発生を防止することができる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、図6及び7を参照して、本発明の第3実施形態に係る300について説明する。図6は流体圧駆動装置300の一部断面図であり、図7図6のB-B線に沿う断面図である。以下では、上記第1実施形態に係る流体圧駆動装置100と異なる点について説明し、流体圧駆動装置100と同様の構成には、図面中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
流体圧駆動装置300は、オリフィス50と屈曲部51が、ケース30とは別体の流量調整用ブロック70に組み込まれている点で、上記第1実施形態に係る流体圧駆動装置100と異なる。以下に詳しく説明する。
【0062】
流量調整用ブロック70は、ケース30におけるカバー部32の側面32aに、複数のボルト76によって固定される。このように、流量調整用ブロック70はケース30に対して取り外し可能に固定される。
【0063】
流量調整用ブロック70には、カバー部32の側面32aに接触する面70aに開口部72aを有し、カバー部32に形成された第1フラッシング穴12aに連通する第2フラッシング穴72と、面70aとは異なる面70bに開口部73aを有する第3フラッシング穴73と、が形成される。第1フラッシング穴12aと第2フラッシング穴72は、直線状に連通する。第3フラッシング穴73の開口部73aには、タンク5に連通する配管75が接続される。第1フラッシング穴12a、第2フラッシング穴72、第3フラッシング穴73、及び配管75によって、フラッシング通路12が構成される。
【0064】
第2フラッシング穴72と第3フラッシング穴73は、直線状に形成され、それぞれの端部が互いに直交して連通する。第2フラッシング穴72と第3フラッシング穴73の連通部が、屈曲部51となる。
【0065】
オリフィス50は、第2フラッシング穴72に設けられる。具体的には、オリフィス50は、第2フラッシング穴72の内周に螺合して固定されるオリフィスプラグ52に形成される。このように、オリフィス50と屈曲部51は、油圧モータ1及び低圧選択弁11が収容されたケース30とは別体の流量調整用ブロック70に組み込まれている。
【0066】
フラッシング流量を調整する際には、カバー部32から流量調整用ブロック70を取り外し、開口部72aを通じて第2フラッシング穴72からオリフィスプラグ52を取り外し、内径の異なるオリフィス50を有するオリフィスプラグ52を開口部72aを通じて第2フラッシング穴72に装着することによって行う。このように、フラッシング流量の調整は、カバー部32から流量調整用ブロック70を取り外し、流量調整用ブロック70に組み込まれたオリフィス50を交換することによって行うことができる。したがって、容易にフラッシング流量を調整することができる。
【0067】
また、オリフィス50はケース30に取り外し可能に固定された流量調整用ブロック70に組み込まれているため、図4に示す比較例で示したようなリリーフ弁40によってフラッシング流量を調整するタイプから、オリフィス50によってフラッシング流量を調整するタイプへの変更が容易となる。つまり、オリフィス50が組み込まれた流量調整用ブロック70と、リリーフ弁40が組み込まれた流量調整用ブロックとの選択が容易となる。
【0068】
<第4実施形態>
次に、図8及び9を参照して、本発明の第4実施形態に係る400について説明する。図8は流体圧駆動装置400の流体圧回路図であり、図9は流体圧駆動装置400の一部断面図である。以下では、上記第1,3実施形態に係る流体圧駆動装置100,300と異なる点について説明し、流体圧駆動装置100,300と同様の構成には、図面中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
流体圧駆動装置400は、フラッシング通路12は、交換可能に設けられた第1オリフィス50と、第1オリフィス50の下流側に形成された屈曲部51とに加えて、屈曲部51の下流側に交換可能に設けられた第2オリフィス55も備える。
【0070】
図9に示すように、第2オリフィス55は、第3フラッシング穴73に設けられる。具体的には、第2オリフィス55は、第3フラッシング穴73の内周に螺合して固定されるオリフィスプラグ56に形成される。オリフィスプラグ56は、開口部73aを通じて第3フラッシング穴73に対して着脱される。
【0071】
第1オリフィス50の下流側に第2オリフィス55が設けられるため、第2オリフィス55での圧力損失によって、第1オリフィス50と第2オリフィス55の間の圧力低下が抑制される。また、第2オリフィス55は、上記第2実施形態に係る流体圧駆動装置200のチャンバ54と同様に、第1オリフィス50を通過したフラッシング油の流れを整流する作用も有する。これにより、第1オリフィス50の下流側での負圧の発生をより効果的に軽減することができる。よって、フラッシング通路12におけるオリフィス50の下流を流れるフラッシング流量の脈動の発生が抑制され、配管75の振動の発生を防止することができる。
【0072】
第1オリフィス50の開口面積は、第2オリフィス55の開口面積と比較して小さいのが好ましい。これは、第1オリフィス50がフラッシング流量を調整する機能を有するのに対して、第2オリフィス55はフラッシング油の流れを整流する機能を有するため、第2オリフィス55の開口面積は小さい必要がないためである。したがって、フラッシング流量を調整する際には、主に第1オリフィス50を交換することによって行われる。
【0073】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0074】
流体圧駆動装置100,200,300,400は、油圧ポンプ(流体圧ポンプ)4から供給される作動流体によって駆動する油圧モータ(流体圧モータ)1と、油圧モータ1に接続され、油圧ポンプ4から供給される作動油(作動流体)がいずれか一方に導かれる一対のメイン通路2,3と、一対のメイン通路2,3の一方からタンク5へ作動油を排出するフラッシング回路10と、を備え、フラッシング回路10は、一対のメイン通路2,3間に設けられて一対のメイン通路2,3間の圧力差によって切り換わり、低圧側のメイン通路を選択する低圧選択弁11と、低圧選択弁11を通過する作動油をタンク5へ導くフラッシング通路12と、を有し、フラッシング通路12は、第1オリフィス50と、第1オリフィス50の下流側に形成された屈曲部51と、を有する。
【0075】
この構成では、フラッシング回路10の冷却能力は第1オリフィス50によって調整される。また、第1オリフィス50の下流側には屈曲部51が形成されるため、第1オリフィス50の下流側での負圧の発生が軽減される。よって、フラッシング回路10の冷却能力の調整を容易に行うことができ、かつフラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0076】
また、フラッシング通路12には、第1オリフィス50の下流側にチャンバ54が設けられる。
【0077】
この構成では、第1オリフィス50を通過したフラッシング油の流れがチャンバ54によって整流されるため、第1オリフィスの下流側での負圧の発生を軽減することができ、フラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0078】
また、フラッシング通路12は、屈曲部51の下流側に設けられた第2オリフィス55をさらに有する。
【0079】
この構成では、第1オリフィス50の下流側に第2オリフィス55が設けられるため、第1オリフィス50の下流側での負圧の発生をより効果的に軽減することができ、フラッシング流量の脈動の発生を抑制することができる。
【0080】
また、第1オリフィス50の開口面積は、第2オリフィス55の開口面積と比較して小さい。
【0081】
この構成では、第1オリフィス50がフラッシング流量を調整する機能を有するのに対して、第2オリフィス55はフラッシング流体の流れを整流する機能を有する。
【0082】
また、流体圧駆動装置100,200,300は、油圧モータ1及び低圧選択弁11を収容するケース30と、ケース30に取り外し可能に固定され、第1オリフィス50と屈曲部51が組み込まれた流量調整用ブロック70と、をさらに備える。
【0083】
この構成では、第1オリフィス50はケース30に取り外し可能に固定された流量調整用ブロック70に組み込まれているため、リリーフ弁40によってフラッシング流量を調整するタイプから、第1オリフィス50によってフラッシング流量を調整するタイプへの変更が容易となる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0085】
例えば、上記各実施形態では、フラッシング回路10の作動油がタンク5へ排出される形態について説明した。これに代わり、フラッシング回路10の作動油を油圧モータ1のケース30内に導いた後、タンク5へ排出するようにしてもよい。つまり、フラッシング回路10の作動油を油圧モータ1のケース30を経由してタンク5へ排出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100,200,300・・・流体圧駆動装置、1・・・油圧モータ(流体圧モータ)、2・・・第1メイン通路、3・・・第2メイン通路、4・・・油圧ポンプ(流体圧ポンプ)、5・・・タンク、10・・・フラッシング回路、11・・・低圧選択弁、12・・・フラッシング通路、13・・・クーラ、30・・・ケース、50・・・オリフィス(第1オリフィス)、51・・・屈曲部、52・・・オリフィスプラグ、54・・・チャンバ、55・・・第2オリフィス、56・・・オリフィスプラグ、70・・・流量調整用ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9