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特許7153560缶詰肉製品のリリースのためのシリコーンを配合したポリエステルフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】缶詰肉製品のリリースのためのシリコーンを配合したポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221006BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20221006BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B15/09 A
B32B27/36
C08L67/02
C08L83/04
C08K3/32
B65D65/40 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018545496
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2017051182
(87)【国際公開番号】W WO2017149464
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】15/057,100
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518303468
【氏名又は名称】トーレプラスチックス アメリカ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】モリツ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー パット
(72)【発明者】
【氏名】チャン ケウンスク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ノースネーグレ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サーケルラリデス ステファノス
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-220453(JP,A)
【文献】特開2008-087327(JP,A)
【文献】特開2012-201697(JP,A)
【文献】特開2002-187963(JP,A)
【文献】特開平05-269819(JP,A)
【文献】特開2000-129008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側リリース層(層A)とヒートシール可能なコア層(層B)とを含むポリエステルフィルム であって、 該外側リリース層(層A)は、 (a)ポリエチレンテレフタレート樹脂P1(ここで、ポリエチレンテレフタレート樹脂P1 は(i)アルカリ金属リン酸塩をポリエチレンテレフタレート樹脂Plの1.3mol/tonから3.0mol/tonと、(ii) アルカリ金属リン酸塩の0.4~1.5倍モルのリン酸とを含む)93~96.5重量%と、(b)ポリジメチルシロキサン樹脂を含むシリコーン樹脂0.1~2重量%と、(c)シリカ0.06~0.112重量%と、を含み、他方、前記ヒートシール可能なコア層(層B)は、ポリブチレンテレフタレート(PBT) 15 重量%~45重量%を含むポリエステル樹脂P2を含み そして、前記ポリエステルフィルムはビスフェノールAを含まず、前記外側リリース層全体中の前記(a)、前記(b)、前記(c)、および任意の1つまたは複数の追加成分の重量パーセントは100重量%であり、前記シリコーン樹脂は室温で、10-50×10 6 センチストークの範囲の動粘度を有することを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記コア層がポリブチレンテレフタレート30重量%~45重量%を含む、請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する、請求項1に記載のポリエステルフィルム
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムがさらにヒートシール可能なスキン層(層C)を含み、該ヒートシール可能なスキン層(層C)は(a)ポリエステル樹脂P2(該ポリエステル樹脂P2は結 晶化可能であり、ポリエステル樹脂P1とは異なる)49.4~79.4重量%と、(b)ポリエステル樹脂P2の融点より少なくとも20℃低い融点を有する非晶質コポリエステル樹脂またはポリエステル樹脂15~45重量%と、および(c) シリカ0.06~0.112重量%と、を含み、外側リリース層(層A)、コア層(層B)およびヒートシール可能な層(層C)がこの順序をなす請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記層Cが、前記層Bと同じ組成を有する、請求項に記載のポリエス テルフィルム。
【請求項6】
前記層Cが、前記層Bの組成とは異なる組成を有する、請求項記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂P2が芳香族ポリエステルを含む、請求項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂P2がポリエステル樹脂P2の構成成分として少なくとも50重量%のエチレンテレフタレートを含む請求項記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂P2の融点よりも少なくとも20℃低い融点を有するポリエステル樹脂 が、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含む、請求項記載のポリエステルフィルム 。
【請求項10】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する、請求項記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する、請求項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエステルフィルムを含むラミネート金属シート。
【請求項13】
請求項に記載のポリエステルフィルムを含むラミネート金属シート。
【請求項14】
請求項に記載のポリエステルフィルムを含むラミネート金属シート。
【請求項15】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する請求項12に記載のラミネート金属シート。
【請求項16】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する、請求項13に記載のラミネート金属シート。
【請求項17】
前記外側リリース層が、フードリリーステストに従って測定して10%又はそれ以下のフードエリア被覆率を有する、請求項14に記載のラミネート金属シート。
【請求項18】
前記追加の成分がワックスを含む、請求項1記載のポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願との相互参照」
本出願は、2016年7月29日に出願された非仮出願第15 /57,100号(2015年11月30日出願の米国特許出願第14 /954,390号の一部継続出願)に優先権を主張し、それを参照することによりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、食品容器に使用することができる金属シート上に積層するための二軸延伸ポリエステル(BOPET)フィルムなどのビスフェノールA(BPA)フリー多層フィルムに関する。より詳細には、多層フィルムは、外側リリース層を有し、これは、外側リリース層と直接接触して加熱又は殺菌されたときに、高タンパク質食品源のような食品の放出(リリース)を助けるものである。
【背景技術】
【0003】
「食品缶詰の原則」
耐熱性微生物の生存が認められる低温殺菌された「調理済み」肉製品とは異なり、肉製品の滅菌の目的は、胞子を含む全ての汚染細菌の破壊である。このような生成物の熱処理は、バチルス(Bacillus)およびクロストリジウム(Clostridium)の胞子である最も耐熱性のある細菌性微生物を不活性化/殺滅するのに十分なほど強力であり得る。実際には、密閉容器に充填された肉製品は、圧力調理器で100℃以上の温度にさらされる。 100℃を超える温度、通常は製品のタイプに応じて110~130℃の範囲の温度が製品内に届くことがある。製品は、製品のタイプおよび容器のサイズに応じて、滅菌に必要な温度レベルで一定の時間維持される。
【0004】
胞子が缶詰において完全に不活性化されない場合、栄養性微生物は、条件が再び良好になるとすぐに胞子から成長する。熱処理された加工肉の場合、熱処理が完了し、製品が周囲温度で貯蔵される場合に好ましい条件が存在する。生存している微生物は、保存された肉製品を腐敗させるか、消費者の食中毒を引き起こす毒素を産生する。
【0005】
胞子産生微生物の2つのグループの中で、クロストリジウムはバチルスより耐熱性が高い。 110℃の温度は短時間で大部分のバチルス胞子を殺すが、クロストリジウムの場合、比較的短い時間内に胞子を死滅させるには121℃までの温度が必要である。
【0006】
上記滅菌温度は、バチルスまたはクロストリジウムの胞子の短時間不活性化(数秒以内)に必要である。これらの胞子はわずかに低い温度で死滅させることもできるが、そのような場合にはより長い熱処理時間を適用して同じレベルの熱処理に到達させることができる。
【0007】
微生物の観点からは、生存する微生物のリスクを排除する非常に強力な熱処理を用いることが理想的であろう。しかし、大部分の缶詰製品は、非常に柔らかい質感、ゼリーおよび脂肪の分離、変色、望ましくない熱処理味および栄養価の損失(ビタミンおよびタンパク質成分の破壊など)のような、感覚的な質の低下を経験することなく、このような熱ストレスに付することはできない。
【0008】
上記観点に沿うように、製品の微生物学的安全性のために十分で、製品品質の理由からできるだけ穏やかに熱殺菌強度を保つために妥協する必要がある。
【0009】
「缶詰に適した肉製品」
実際には、消費のための調製中に熱処理を必要とする全ての加工肉製品は、加熱保存に適している。乾燥肉、生ハムまたは乾燥ソーセージのような消費前に熱処理を受けない肉製品は、低pHおよび/または低水分活性によって保存されるので、自然に缶詰には適していない。
【0010】
限定されるものではないが、以下の肉製品群は、缶詰製品として製造されることが多い:調理されたハムまたは豚の肩肉; フランクフルトタイプのブラインを含むソーセージ; ボローニャまたは肝臓ソーセージタイプのソーセージミックス; コンビーフ、チョップド豚肉などの肉調理品; 肉汁中の牛肉、米入り鶏肉、チキンスープやオクテールスープなどの肉材料を入れたスープなど、のような肉成分を伴うレディトウディシュ(即席食品)。
【0011】
「缶詰ライニング」
金属食品および飲料容器、例えば、缶は、内面にコーティングを施してある。このコーティングは、容器の腐食や溶存金属による食品や飲料の汚染を防ぐために不可欠である。加えて、コーティングは、缶詰食品が細菌汚染によって汚染又は腐敗するのを防ぐのに役立つ。食品容器用の主なタイプの内装コーティングは、靭性、接着性、成形性および耐化学薬品性の優れた組合せのために、保護コーティングとしての使用が広く受け入れられているエポキシ樹脂から製造される。そのようなコーティングは本質的に不活性であり、40年以上にわたって使用されてきた。内容物を腐敗から保護することに加えて、これらのコーティングは、食品の品質および味を維持しつつ貯蔵寿命を延ばすことを可能にする。
【0012】
しかしながら、これらのエポキシポリマーは、消費者擁護団体からの多くの精査に直面しているBPAと呼ばれる化学的ビルディングブロックの残量を含んでいる場合がある。プロポジション65の下で、カリフォルニア州は、BPAを生殖毒性の原因として2番目に挙げることを提案している。従って、保護コーティングとしてBPAベースのエポキシ樹脂を除去することが望まれている。
【0013】
過去10年において、消費者および健康専門家は、食品包装におけるBPAの使用に関し、懸念を提起してきた。この分子はエストロゲンと同様の形状を有し、したがって内分泌攪乱物質(endocrine disrupter)として作用し得る。
【0014】
したがって、食品会社は、BPAに基づく食品包装から離脱することを熱望し、コーティングメーカー及びそのサプライヤーは、BPAをエピクロロヒドリンと反応させることによって作られたユビキタスエポキシの代替品を探し出すことに鋭意努力した。要するに、食品容器用のBPAフリーコーティングが緊急に必要とされていた。そこで、本発明はBPAを含まないBOPETフィルムを提供し、この要求を満足させることを課題とする。
【0015】
容器部品を形成する前にポリエステルフィルムを金属にラミネートすることは、エポキシコーティングで裏打ちされた容器に置き換えるための1つの解決策である。二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)フィルムは、食品包装、装飾、ラベルなどの複数の用途に使用される。
【0016】
食品パッケージング産業では、多くのヒートシール可能なトレイ用途においてBOPETフィルムを使用するが、そこでは、食品がBOPETに直接接触する可能性があり、BOPETフィルム表面からの食品のリリース(放出)が不十分である。
【0017】
「フードリリース」
容器内の食品、特に肉製品のようなかなりの量の固形物を含む食品の調理と滅菌に起因する1つの問題は、固形食品粒子の内部容器表面への付着であり、それにより、全ての缶内容物を排出することに問題がある。ワックスを取り込むことを含むこの現象について特許文献(米国特許第6,652,979号、米国特許第6,905,774号、米国特許第7,198,856号、米国特許第7,435,465号)が言及し、またはシリコーン化合物については次の(米国特許第6,905,774号)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第6,652,979号明細書
【文献】米国特許第6,905,774号明細書
【文献】米国特許第7,198,856号明細書
【文献】米国特許第7,435,465号明細書
【発明の概要】
【0019】
本発明の態様は、ポリエステルフィルムが次の成分を含む少なくとも1層からなる。(a)アルカリ金属リン酸塩をポリエステル樹脂P1のトン当たり、1.3モルから3.0モルとリン酸アルカリ金属塩0.4~1.5倍モルのリン酸とを含有するポリエステル樹脂P1 0.1~99.9重量%と、(b)ポリジメチルシロキサン樹脂を含むシリコーン樹脂0.1 -2重量%とからなり、このポリエステルフィルムはビスフェノールAを含まない。また、一実施形態において、ポリエステル樹脂P1は、芳香族ポリエステルを含む。他の実施形態では、芳香族ポリエステルは、芳香族ポリエステルの構成成分として少なくとも50重量%のエチレンテレフタレートを含む。そして、その他の実施形態では、上記少なくとも1つの層は、フードリリース試験に従って測定した場合、約10%以下のフードエリア被覆率を有する外側リリース層を含む。 一つの実施形態では、少なくとも外側リリース層Aを含むフィルム構造体は、ヒートシール可能層Bをさらに含み、以下の成分を含む。(a)0.1-100重量%のポリエステル樹脂P2を含み、該ポリエステル樹脂P2は結晶化可能で、ポリエステル樹脂P1とは異なる。(b)0.1-100重量%の、ポリエステル樹脂P2の融点より、少なくとも20℃低い融点を有する非晶質コポリエステル樹脂またポリエステル樹脂。(c)0.1-15重量%の有機または無機粒子を含むアンチブロッキング剤。ある実施形態では、ポリエステルフィルムは、ヒートシール可能層Bの組成と同じまたは実質的に同じ組成を有するヒートシール可能層Cをさらに含む。また、他の実施形態では、ポリエステルフィルムは、ヒー
トシール可能層Bの組成と異なる組成を有するヒートシール可能層Cをさらに含む。また、ある実施形態では、ポリエステル樹脂P2は、芳香族ポリエステルを含む。また、ある実施形態では、ポリエステル樹脂P2は、ポリエステル樹脂P2の構成成分として少なくとも50重量%のエチレンテレフタレートを含む。さらに、ある実施形態では、ポリエステル樹脂P2の融点より少なくとも20℃低い融点を有するポリエステル樹脂の成分(b)は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を含み、好ましくは本質的にポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂である。

【0020】
別の実施形態は、本明細書の実施形態のポリエステルフィルムを含むラミネートされた金属シートに関する。実施形態では、シリコーン樹脂は、室温で10~50×10 6センチストークスの範囲の動粘度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
特許または出願ファイルは、カラーで実行される少なくとも1つの図面を含む。この特許または特許出願の刊行物のカラー図面によるコピーは、要求に応じて必要な手数料を支払うことにより特許庁が供給する。
【0022】
図1】フードリリース試験のためのフードミックスを調製する際に使用される異なる成分の写真を示す。
【0023】
図2】BOPETラミネート金属ディスク及び非積層BOPETフィルムの写真を示す。
【0024】
図3】BOPETフィルムがフードミックスに接触するBOPETラミネート金属ディスクを有するキャップで密封されたジャーにフードミックスを挿入した写真を示す。
【0025】
図4】圧力調理器にフードミックスを入れた複数の密閉されたジャーの写真を示し、加熱されたコンロ上に圧力調理器がある。
【0026】
図5】加熱されたフードミックスからBOPETラミネート金属ディスクの取り出しを示す写真を示す。
【0027】
図6】BOPETラミネート金属ディスクのBOPETフィルム表面から調理されたフードミックスの良好なリリースおよび悪いリリースを示すBOPETラミネート金属ディスクの写真を示す。
【0028】
図7】BOPETラミネート金属ディスク上に重ねられたグリッドを用いたフードリリース試験後のBOPETラミネート金属ディスク(「試験サンプル」)の写真を示し、調理されたフードミックスがBOPETフィルムに固着したままのフードエリア被覆率(パーセンテージ)を計算する。
【0029】
図8】フードエリアの被覆率のプロットを示し、そこでは超高分子量シリコーンの重量パーセントの関数として調理されたフードミックスがBOPETフィルムに付着したままで残る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書の実施形態は、ポリエステルフィルム、すなわちBOPETフィルムに関し、レトルト殺菌温度に関連する温度に耐えることができるように優れた耐熱性を有し、食品によって金属容器に耐腐食性を提供するバリア特性を有する。BOPETフィルムは、容器形
成プロセスのために金属板に積層形成することができる。さらに、BOPETフィルムは、高熱滅菌後に高タンパク質食品(肉製品)を容器から容易に取り出すのに十分な剥離(リリース)面を提供することができる。驚くべきことに、本発明者らは、重合中にアルカリ金属リン酸塩およびリン酸を配合したポリエステル樹脂キャリアを使用すると、超高分子量シロキサンを含むシリコーンを組み込むことによって付与されるリリース(放出)作用が大幅に向上することを見出した。アルカリ金属リン酸/リン酸パッケージの本来の目的は、加水分解耐性を改善することであるが、シリコーンのリリース作用の増強の利点が追加されるのは、驚くべき発見であった。
【0031】
BOPETフィルムは、1つ以上の層、好ましくは少なくとも2つの層を含むことができる。多層BOPETフィルムは、容器側または内層(すなわちヒートシールまたは金属結合層)、食品(フード)または外側層、フードリリース層の1つまたは複数を含むことができる。さらに、金属表面に結合された層と、容器内部に貯蔵された食品と直接接触する食品側面層との間に、1つ以上のコア層があってもよい。
「BOPETフィルム」
【0032】
このフィルムは錫フリー鋼(TFS)、電気錫めっき鋼(ETP)、またはアルミニウムで典型的に作られる缶詰め用金属板に積層することができるフィルムであって、連続積層プロセスの一部として 210℃の熱処理後に、2.0%を超えない寸法変化を特徴とする。
【0033】
ここに示されるフィルムは、2層または3層共押出および二軸延伸構造を含む。外側リリース層および任意の下方の「スキン」層は、一般に、コア「主」層よりも薄い。外側リリース層(以後「スキンA」と称する)は、典型的には超高分子量シリコーン(シロキサンベース)樹脂を含有し、コポリエステルエラストマー樹脂と予めブレンドされて「マスターバッチ」を形成する。これはその後共押出し中に外側リリース層に低レベルで添加される。
【0034】
用語「超高分子量シリコーン」または「UHMW PDMS」(ここで、PDMSはポリジメチルシロキサンを表す)は、PDMS樹脂を指し、そこではUHMW PDMSは室温で10-50 ×10 6センチストークスの範囲の動粘度を有する(G.Shearer著:Silicones in the Plastic Industry、第15号第2章:無機ポリマーの「工業用途のシリコーン」、Nova Science Publishers社発行、2007年版、Roger de Jaeger編)。上記引用文献によれば、UHMW PDMSの利点は、処理中に添加剤を熱可塑性物質に容易に添加することができるように、ペレット状の種々の熱可塑性キャリア中に安定な液滴ドメインを形成することである。 UHMW PDMSのもう1つの利点は、BOPETフィルムの表面に移動すると同時に、BOPETからブリードアウトすることがなく、それによって望ましいリリース特性を提供することである。
【0035】
マスターバッチ中の典型的なUHMWシリコーン濃度は50重量%である。外側リリース層におけるマスターバッチ添加レベルは、0.2~4重量%の範囲であり、結果として0.1~2%の範囲の正味シロキサン含有量となる。外層リリース層のその他の成分は、リン化合物としてリン酸アルカリ金属塩を1.3mol /トンから3.0mol /トンを含有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂組成物であり、他のリン化合物としてはアルカリ金属燐酸塩(主要成分)の0.4~1.5倍(モル)のリン酸である。場合によっては、アンチブロッキング目的のための無機粒子を含む。この場合の典型的な無機粒子組成物は、サブミクロンから数ミクロンまでの範囲のサイズのシリカ(二酸化ケイ素、SiO)である。シリカ粒子は、典型的には、重合中にシリカを添加することによって製造される濃縮PETチップ(シリカマスターチップ)の形態で、共押出し中に添加される。シリカマスターチップ中の典型的なシリカ含量は1~3重量%であり; 外側リース層中のシリカマスターチップの典型的な添加レベルは1~15重量%であり、その結果、ネットシリカ含有量は約0.1~3重量%となる。
【0036】
残りの2つの層は、以後、コア層については層「B」と称され、Aのスキン層に対して反対側にあるスキン層についてはスキン層「C」と呼ばれる。厚さの分布は、フィルムの全厚に基づいて、層A、B、およびCについて、それぞれ5~30%、40~95%および0~30%の範囲にある。2軸延伸後の典型的な総フィルム厚さは、10~25ミクロン、好ましくは 12~23ミクロンである。
【0037】
この2層または3層のフィルム構造体は、金属シート(鋼またはアルミニウム)上に積層され、次にそれが容器に形成される。金属シートの両面をプラスチックフィルムでラミネートすることができるが、本発明のフィルムは、容器の内面となるように意図された金属シート側にラミネートすることを意図しており、シリコーンを含む外側リリース層は食品接触層(すなわち、缶の金属基板から離れた層)である。
【0038】
コア層Bは、100重量%のPET樹脂(「ベース樹脂」)を含むことができる。 C層が存在しない場合、層Bはまた、アンチブロック含有マスターバッチまたは低融点温度コポリエステルを含有してもよい。任意の層Cについて以下でより詳細に説明する。
【0039】
任意のスキン層Cは、低温溶融(結晶性PETに対して)または非晶質ポリエステルコポリマー、或いはPETベース樹脂と低融点(または非晶質)ポリエステルコポリマーとのブレンドとすることができる。より低融点のポリエステルの一例は、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)樹脂のようなブチレンテレフタレート反復単位を含む樹脂および、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1-2プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキシルジメタノールなどの他のジカボキン酸又はジオール類とのコポリマーが挙げられる。ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂の適切な例の非網羅的なリストは:デュポン(Dupont社)のCrastin(登録商標)FG6129、Crastin(登録商標)FG6130、 Ticona社のCelanese 1600、Celanex(登録商標)1700、Toray Industries(商標)のToraycon(商標)1100M、Toraycon(商標)1200Mなどが挙げられる。低融点ポリエステルの別の例は、トリメチレンテレフタレート繰返し単位からなる樹脂、例えば、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)樹脂、及び他のジカルボン酸またはジオール類とのコポリマー、例えば、イソフタ―ル酸、ナフタレンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキシルジメタノールなどとのコポリマーが挙げられる。ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂の適切な例の非網羅的リストは、DuPont社のSorona(登録商標)、Shell社のCorterra(登録商標)、SK Chemicals社のEcoriex(登録商標)であり得る。その層中に低融点または非晶質ポリエステルコポリマーを添加する目的は、熱ラミネーションの間に金属へのより容易な接着を促進することである。しかし、このようなコポリマーの添加は、ラミネーションの温度およびその後のオーブン処理が、金属に接触するのに十分な粘着性を有する値に調整されるので、金属接触層をヒートシール可能にするためには必要ではない。PETポリエステルは約250℃の融点ピークを有するが、約205℃(400°F)で溶融開始が生じるので、ラミネート温度条件に一致し、それによって、ラミネーションニップロールの圧力により初期結合を容易にし、その後およそ460°Fの温度でのラミネート構造のオーブン処理により、さらに強化される。
【0040】
「ポリエステル樹脂組成物」
A層中の樹脂は、ポリエステル樹脂「P1」で、エチレングリコールに可溶な緩衝
剤を含み、イオン解離を示す物質を含有する。このような緩衝剤は、好ましくはアル
カリ金属塩で、例えばフタル酸、クエン酸、炭酸、乳酸、酒石酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の塩である;また、ポリアクリル酸化合物のアルカリ金属塩等が挙げら
れる。より具体的には、アルカリ金属はカリウムまたはナトリウムであり、したがっ
て、特定のアルカリ金属塩、例えば、ヒドロキシクエン酸二水素ナトリウム、クエン酸カリウム、ヒドロキシクエン酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
好ましい実施態様においては、P1はポリエステル樹脂組成物であって、第1のリン化合物としてポリエステル樹脂のトン当たり1.3mol-3.0molのアルカリ金属リン酸塩と、第2のリン化合物としてのリン酸をアルカリ金属燐酸塩のモルで0.4~1.5倍を含む。このポリエステル樹脂組成物は酸成分がジカルボン酸成分を95%モル以上を含むのが好ましい。特に、テレフタル酸成分が機械的特性の観点から好ましい。グリコール成分は、機械的特性および熱的特性の観点から、炭素数2~4の直鎖アルキレングリコールを95モル%以上含むことが好ましい。
【0042】
特に、ポリエステル樹脂の成形性および結晶化の観点から、炭素数2のエチレングリコールが好ましい。テレフタル酸およびエチレングリコールに加えて、追加のポリエステル原料、例えば、ジアシッド類、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはジオール、例えば1,4-シクロヘキシルジメタノール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコールは、共重合成分としてポリエステル組成物の重合混合物中に、 5モル%以下のトータルでジアシッドまたはジオール類を含む。共重合成分の含有量が5モル%を超えると、融点の低下による耐熱性の低下や、ポリエステルの結晶化度の低下による耐加水分解性の低下を招く。耐加水分解性の観点から、ポリエステル樹脂組成物は、アルカリ金属リン酸塩をポリエステル樹脂トン当たり1.3mol~3.0mol含有することが好ましく、ポリエステル樹脂トン当たり1.5mol-2.0 mol がより好ましい。アルカリ金属リン酸塩の含有量がポリエステル樹脂トン当たり1.3モル未満であると、長期耐加水分解性が不十分となる場合がある。一方、アルカリ金属燐酸塩がポリエステル樹脂トン当たり3.0モルを超えると、アルカリ金属燐酸塩の相分離(析出)が起こりやすくなる。
【0043】
アルカリ金属リン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸トリカリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸トリリチウムを含む。
アルカリ金属燐酸塩の好ましい例は、アルカリ金属二水素リン酸塩およびアルカリ金属リン酸塩である。アルカリ金属がNaまたはKであるアルカリ金属リン酸塩は、長期耐加水分解性の観点から好ましい。
【0044】
アルカリ金属リン酸塩の特に好ましい例は、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムである。長期耐加水分解性の観点から、リン酸はアルカリ金属リン酸塩のモル比で0.4~1.5倍であるのが好ましく、より好ましくは0.8~1.4倍である。 0.4倍未満では、長期耐加水分解性が低下することがある。 1.5倍を超えると過剰のリン酸により重合触媒が失活し、重合の遅延をもたらすとともに、末端基COOHの量の増加を伴い、ポリエステル樹脂の耐加水分解性の低下の原因となる。
【0045】
アルカリ金属リン酸塩とリン酸の含有量に基づく計算によれば、ポリエステル樹脂組成物は、アルカリ金属元素をポリエステル樹脂トン当たり1.3モル~9.0モルと、リンをポリエステル樹脂トン当たり1.8モルから7.5モルを含むのが好ましい。ポリエステル樹脂組成物は、好ましいアルカリ金属リン酸塩の種類の観点から、アルカリ金属元素をポリエステル樹脂トン当たり1.3モル~6.0モル、リンをポリエステル樹脂トン当たり1.8モルから7.5モル含むのが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含まれるリン化合物の含有量は、末端基COOH量を低減し、異物の発生を抑制する観点から、ポリエステル樹脂組成物重量で30PPM以上150PPM以下であることが好ましい。リン元素の量では、この含有量は60PPM~150PPMであることがより好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂P1の組成は、金属含有化合物(金属化合物)を含み、その金属化合物の金属元素はNa、LiおよびKからなる群から選択される少なくとも1種であり、また、金属化合物の金属元素はMg、Ca、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種であり、そして金属化合物の金属元素はSb、TiおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種であり、これらの金属元素の合計量は、ポリエステル樹脂組成物全体に対して30PPM以上500PPM以下に調整されるのが好ましい。この範囲内で金属元素の総量を調整することにより、ポリエステル樹脂中の末端基COOH量を低減し、耐熱性を向上させることができる。この含有量は40PPM~300PPMであることがより好ましい。元素Na、LiおよびKaはアルカリ金属元素である。 2価の金属元素であるMg、Ca、Mn、Coの元素は、エステル交換触媒であり、ポリエステル樹脂の抵抗率等の静電特性を付与する。 Sb、TiおよびGeは、ポリエステル樹脂の重合を触媒する能力を有する金属元素であり、重合触媒として作用する。
【0048】
「BOPETフィルムプロセス」
好ましくは、多層PETフィルムは、それを金属基材に積層する前に二軸延伸される。典型的には、原料PET樹脂は、固体形態で溶融加工装置、好ましくは連続スクリュー押出機に供給される。溶融加工機の加熱は、PET樹脂をその融点以上でポリマー分解温度未満に維持するように制御される。 PET溶融樹脂は、適切に成形されたダイから押し出されて、ポリマー溶融物の薄くて平らなリボンを形成する。ポリマーリボンは、空気中および/または冷却ロール上で急冷されて、固体の自己支持性フィルムを形成する。フィルムは、機械方向(MD)と呼ばれる連続的な前進方向にフィルムを伸張させる。延伸は、MDの結晶配向を確立するために異なる回転速度で回転するローラーのセットによってフィルムを加熱することを伴うことができる。単方向延伸フィルムは、テンターオーブン中でそのMDの横方向に直交する横方向機械方向(TD)にその反対側の端部でクランプされ、延伸される。テンターオーブンはTDに結晶配向を確立するように作用する温度に加熱され、二軸延伸PETフィルムを形成する。好ましくは、二軸延伸PETフィルムは、MDにおいて約100%~400%、TDにおいて約100%~600%延伸される。二軸延伸フィルムは、好ましくは約300°F~約490°F、より好ましくは約350°F~約460°Fの温度でヒートセットすることができる。
【0049】
「実施例」
本発明は、以下の実施例を参照することにより、本発明の全範囲内の特定の実施態様を例示することを意図してよりよく理解されるであろうが、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【0050】
「樹脂材料」
実施例に挙げたフィルムの樹脂材料は以下の通りである。
【0051】
PET樹脂P1(リン酸アルカリ金属およびリン酸を含むPET樹脂):Toray
Films Europeから供給されるToray F1CCS64(IV = 0.65; Tm = 255℃)。
【0052】
PET樹脂P2(通常のフィルムグレードのPET樹脂、アルカリ金属リン酸塩を含まない):東レプラスチックスアメリカ社製のTorayF21MP(IV = 0.65; Tm = 255℃)。
【0053】
PET樹脂P3:インビスタ社のボトルグレードのPET樹脂8712A(IVが0.75)。
【0054】
PET樹脂P4:東レプラスチックスアメリカ社製の平均粒径2μmのシリカ粒子2%(富士シリシア310P)を含有するPET樹脂耐ブロックマスターバッチタイプF18M(IV = 0.62、Tm = 255℃)。
【0055】
アモルファスコポリエステル樹脂CoP1:イーストマンケミカル(Eastman Chemical)社から供給されるEastar(登録商標)6763 PETG(CHDM(1,4-シクロヘキシルジメタノール)/エチルグリコールの33:67モル比と反応したテレフタル酸に基づく)。 IV = 0.76。
【0056】
低結晶性コポリエステル樹脂CoP2:東レ・プラスチック・アメリカ製のIPET F55M樹脂(IV = 0.69; Tm = 205℃)。エチレングリコールと反応させたイソフタル酸/テレフタル酸の19:81モル(この場合、重量)部の組合せに基づく。
【0057】
シリコーン樹脂マスターバッチ:ダウコーニングMB50-010。50%の超高分子量重合シロキサン(シリコーン樹脂)および50%のポリエステルエラストマーキャリアを含有する。
【0058】
低融点ポリエステル樹脂P5:E.I. DuPont De Nemours社からのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂Crastin(登録商標)FG6130。融点223℃。
【0059】
「試験方法」
上記実施例における各種特性は、以下の方法により測定した。
【0060】
このフィルムおよび樹脂の固有粘度(IV)をASTM D 4603に従って試験した。この試験方法は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を 60/40の比率のフェノール/ 1,1,2,2-テトラクロロエタンの0.50%濃度溶液に溶解させ、固有粘度(IV)をガラス毛細管粘度計により測定した。
【0061】
コポリエステル樹脂の融点は、TA Instruments社製示差走査熱量計モデル2920を使用して測定する。0.007gの樹脂試料を、実質的にASTM D3418-03に従って試験する。 予備熱サイクルは使用されず、ASTM標準の Note6に一致する。 その後、試料を10℃/分の速度で300℃の温度まで加熱し、熱流および温度データを記録する。 融点は、吸熱ピークにおける温度として報告される。
【0062】
一般的なフィルム製造手順」
多層同時押出BOPETフィルムは、1.5m幅のパイロットライン逐次配向プロセスを用いて製造された。共押出フィルムを静電ピンナーを用いて冷却ドラム上に鋳造し、機械方向に一連の加熱された、差動速度ロールを通して延伸し、次にテンターオーブン中で横方向に延伸することによって製造される。
【0063】
多層共押出ラミネートシートは、コアブレンドをダイに溶融して搬送するための主押出機と、ダイへのスキンブレンドの溶融および搬送のための1つまたは2つのサブ押出機によって同時押出される。主押出機による押出は、約270~285℃の加工温度で行われる。サブ押出機を通した押出は、約270℃~280℃の加工温度で行われる。主ポリマー溶融ポリマー流れおよび副ポリマー溶融物流れの両方がダイを通して流れてラミネート同時押出構造を形成し、その表面温度が約21℃に制御された冷却ドラム上にキャストされて、約9mpmのキャスト速度で方向性のない積層シートを凝固させる。この未方向性積層シートは約75℃ー85 ℃で、元の長さの約3倍の延伸比で縦方向に延伸し、得られた延伸シートを約70℃でアニールして、一軸延伸ラミネートシートを得る。
【0064】
一軸延伸ラミネートシートを、テンター内にライン速度約27mpmで、導入する。 80℃で予備加熱した後、約90℃で横方向に約4倍の延伸倍率で延伸した後、約210℃でヒートセットまたはアニールして配向により初期ストレスを減少させ、収縮を最小にし、比較的熱的に安定な二軸延伸シートを与える。
【0065】
金属シートへのフィルム熱ラミネーション法
0.0075 "の厚さを有する錫フリースチール(TFS)を400°Fに予熱した(他に指示がない限り)。スチールとフィルムを最初のフィルムボンドを形成するニップロールのセットに通した。フィルムおよびスチールラミネート構造体を、460°Fで20秒間の二次加熱操作(「ポストベーク」)に通し、次いで室温に冷却した。
【0066】
スチールにラミネートされたフィルム側は、シリコーン含有側(実施例では食品接触面; A面)の反対側、すなわちラミネーション側は実施例では側面BまたはCであった。
【0067】
フードリリーステスト」:
スチールにラミネートされたポリエステルフィルムの食品接触面上のフードエリアの被覆率は、本明細書では「フードリリーステスト」と呼ばれるフードリリーステストに従って測定される。以下、フードリリーステストの手順を説明する。
【0068】
鶏卵/粉砕牛肉/穀粉の3/2/1の割合のフードミックスを以下のように調製した:
A.フードリリースミックスの準備工程を図1に示す。
・8-10ジャーテスト:1ポンドの粉砕ビーフをプラスチック製ジャーなどのミックス容器に入れた。
・5つのグレードAの大きな鶏卵の内容物を混合容器に加え、パドルまたは金属棒で手動で混合した
・8オンスの汎用小麦粉(all-purpose white flour)を混合しながらゆっくり加え、混合が完全になるまで行う。
B.図2および図3に示すように、ガラス試験用ジャーに試料を配置する。
・上記のフィルム/金属ラミネートからの剪断を用いて、瓶の底に適合する程度に小さいディスクを切り出した(図2):実施例では、直径47mmのディスクを使用して、ハーフピントの広口のボールに適合させた。
・BOPETフィルムは、ジャーに収まるように十分な大きさのシートサイズに切断され、以下のステップに記載されているように混合物を保持する。
・1枚のフィルムを瓶の上に置いて(食肉リリース面を上にして)、上に金属ディスク
を置き、食品接触面を上に向ける。
・2種類のスープスプーンサイズの食物散布剤をサンプルディスクの上に置いた。
・フィルムがフードリリースミックスの周りに巻き付けられ、ディスクがフードリリースミックスの下に置いた。
・ラップされたフードミックス(底部のサンプルディスクを含む)をジャーに挿入し、ジャー閉鎖を適用した。
C.レトルト処理および試験(図4および5)
・「レトルト」(図4に示す圧力調理器)には、有孔スチームプレートの下側から0.5インチまで水を満たした。
・テストジャーをプレートの上に置き、レトルト(圧力調理器)カバーをしっかりと取り付けた。
・レトルトを、中圧に設定されたホットプレートに置き、圧力バルブが振動し始めてから90分間レトルト処理した(内部圧力14.7psig、温度約260°F)。
・圧力調理器から熱を取り出し、バルブが下がるまで冷却して、開けるのが安全であることを示す。
・圧力調理器を開き、トングで瓶を取り出し、一晩中休ませた。
・フードミックスからフィルムを巻き戻す(フードミックスがまだメタルディスクに取り付けられていた)。
・ディスクを食物ミックスから直角に剥がし、リリース性能を評価した。フードリリースの良い例と悪い例については、図6を参照する。
【0069】
「レトルト処理」とは、基材の内側、外側または両面にポリマーフィルムをラミネートした金属基材の複合体からなる壁付き金属容器の内外をライブスチームまたは過熱した水で一定時間処理する行程を意味する。
【0070】
「ライブスチーム」は、蒸気が容器の表面に直接接触することを意味する。蒸気は、通常、過熱され、すなわち水の沸点より上である。公称レトルトプロセスでは、260°Fの温度で90分間蒸気に曝らす。レトルトプロセスの暴露の温度および持続時間は、ほぼ同等の滅菌および食塩殺菌の有効性を提供するように変更することができる。例えば 、温度は、より短い持続時間ではより高く、より長い持続時間では低くなろう。
【0071】
リリース性能は、リリース後のテストラミネーションディスクの写真画像を作成し、Microsoft Paint(商標)ソフトウェアを使用して長方形のグリッド画像を重ね合わせることによって評価した。付着したままのフードが占めるグリッドの正方形の数を計数し、グリッドの正方形の総数に対するパーセンテージとして表した。パーセンテージが低いほど、食物リリース性能が良好である(図7)。
【0072】
「フード移動(migration)テスト」
試験は、連邦規則コード第21CFR177.1630号の条件(f)、(g)、(h)に従って規定された条件下で、認定された実験室(試験時の名:元National Food Lab, Livermore, CAの Covance Laboratories、Madison、WI)で行われた。試験は、使用条件のそれぞれについて以下の仕様の下で食品接触面(この場合は層A)を曝露し、次いで曝露媒体中に存在するクロロホルム可溶性抽出物のレベルを決定する:
【0073】
条件(f):250°Fを排除しない温度でアルコール飲料を除く食品に許容。抽出限界:0.5mg / in2:150°Fのn-ヘプタンおよび250°の蒸留水で2時間暴露した後
【0074】
条件(g):50%アルコールを超えないアルコール飲料に許容される -抽出限界:0.5mg / in2:120°Fで50%エタノール中で24時間暴露した後。
【0075】
条件(h):250°Fを超える温度でのベーキングまたはオーブン調理中の食品に許容される。抽出限界:150°Fでn-ヘプタン中で2時間暴露した後、0.02mg / in2
【0076】
「実施例1および1a」
3層BOPETフィルム構造は、それぞれ表1、2および3に示すように、層A、BおよびCに対応する樹脂ブレンドを供給する3つの押出機からの溶融押出によって製造された。層A中のシリコーンマスターバッチ含量は0.5%であり、シリコーン含量0.25重量%に相当する。組成物1と1aとの間の相違は、層Aのアンチブロッキングマスターバッチ(P4)含有量および層Cのアモルファスコポリエステル(CoP1)含有量である。(層Aと層C中の主要樹脂バランスP1およびP2の含有量の違いとなる)。このキャストフィルムを、延伸ゾーンで、82℃の温度で縦方向に3倍に延伸し、引き続いて横方向に、85~93℃の温度に保持されたオーブンを通して4倍に延伸し、アニールゾーンで204℃に加熱して、二軸延伸フィルムを形成し、32m /分の線速度で回転ワインダーを用いてロール状に集めた。
【0077】
続いてフィルムを、錫を含まない金属シートのシート上にラミネートし、金属シート表面に付着したC面を有するフィルムA面を、上述した手順に従ってフードリリースについて試験した。食品残量が占める総面積のパーセンテージとして表したスコアを表4に示す。
【0078】
「実施例2および2a」
実施例1および1aを繰り返した。ただ、主要な相違は層A中のシリコーンマスターバッチ含量が1.0%であり、シリコーン含量0.5重量%に相当する。それぞれ表1、2、3に示すようなA / B / C三層構造を使用した。フードリリース試験の結果を表4に示す。
「実施例3」
【0079】
実施例1を繰り返したが、層A中のシリコーンマスターバッチ含量はシリコーン含量1.0重量%に相当する2.0%であった。表1、2、3に示すように、A / B / C三層構造とした。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0080】
「実施例4」
表1、2に示すように、層AおよびBに対応する樹脂ブレンドを供給する2つの押出機からの溶融押出しにより、2層BOPETフィルム構造を製造した。層Bは15%のPBTを含有する。2層BOPETフィルム構造は、A層およびB層に対応する樹脂ブレンドを供給する2つの押出機を通る溶融押出によって製造され、次に21℃に保持された冷却ドラム上でキャスティングし、延伸ゾーンで82℃の温度で機械方向に沿って3倍延伸し、続いて85~93℃に保持されたオーブンを通し横方向に4倍延伸し、アニールゾーンで204℃の温度で処理し、32m /分の線速度で回転ワインダーを用いてロール状に巻回した。最終的なA / B二軸配向二層構造をそれぞれ表1および表2に示す。層A中のシリコーンマスターバッチ含量は0.5%であり、シリコーン含量0.25重量%に相当する。
【0081】
「実施例5」
実施例4を繰り返したが、唯一の相違点は、層B中のPBTの重量比が30%に増加したことである。
【0082】
「実施例6」
実施例5を繰り返したが、唯一の相違点は、B層中のPBTの重量比が45%に増加したことである。
【0083】
「比較例1」
シリコーンマスターバッチを層Aに添加しないことのみの重要な相違点を除いて実施例1aを繰り返し、表1、表2および表3にそれぞれ示すようにA / B / C三層構造を作製した。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0084】
「比較例2」
この比較例では、2層(層AおよびBは、層Bが内部リサイクルを含むという以外は同一である)の市販の二軸フィルムがToray Plastics Americaグレードの「Lumirror TM 48G PA66」を利用した。このフィルム製品はベース樹脂としてP2を、アンチブロッキングマスターバッチとしてP4をそれぞれベースにしている。 A / B構造を表1および2に示し、フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0085】
「比較例3」
主要なポリエステル樹脂(ベース樹脂)がP2(標準フィルムグレードPET)であり、リン酸アルカリ金属およびリン酸を含むPET樹脂(P1など)が使用せず、実施例1aを繰り返し表1、2、3に示すA / B / Cの3層構造を形成した。実施例1と同様に、この比較例は0.5重量%のシリコーンマスターバッチを含んでいた。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0086】
「比較例4」
主なポリエステル樹脂(ベース樹脂)がP2(スタンダードフィルムグレードPET)であり、アルカリ金属リン酸塩およびリン酸を含むPET樹脂(P1など)が使用されていないことを除いて、実施例2aを繰り返し表1、2、3に示すA / B / Cの3層構造を形成した。実施例2と同様に、この比較例は層Aに1.0重量%のシリコーンマスターバッチを含んでいた。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0087】
「比較例5」
延伸条件は実施例4と同様である。最終的なA / B二軸配向二層構造をそれぞれ表1および表2に示す。この比較例は実施例3と同様に、シリコーン含有量1重量%に相当する層A中に2.0重量%のシリコーンマスターバッチを含んでいた。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0088】
「比較例6」
層A中のシリコーンマスターバッチ含量はシリコーン含量2.0重量%に相当する4.0重量%であり、表1および表2に示すようなA / B二層構造を形成した点を相違点とし、比較例5を繰り返した。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0089】
「比較例7」
唯一の相違点は、層A中の主要な樹脂がP3であり、比較例3を繰り返し表1および表2にそれぞれ示すように、A / B / Cを3にした。(0.5重量%のシリコーンマスターバッチ、A層は0.25重量%のシリコーンに相当する)。フードリリース試験の結果を表4に示す。
【0090】
「参考例」
参考例は、フードリリース特性を有する内部容器ライナーに適していると現在考えられている市販のフィルム、Toray Industries社のLumirror(商標)グレードFN8ポリエステルフィルムによって行われる。このフィルムには、米国特許第6,652,979号(0.1-2重量%)または米国特許第6,905,774号(0.1-5重量%)で規定された範囲のレベルで配合されたカルナバワックスが含浸される。
表1:層Aのブレンド組成(重量%)
【表1】
表2:層Bのブレンド組成(重量%)
【表2】
表3:層Cのブレンド組成(重量%)但し、層A及びBだけの実施例は示されない。
【表3】
表2:スチールラミネート温度及びフードリリース結果
【表2】
【0091】
これらの結果は、フードリリース層中にポリエステルP1(アルカリ金属リン酸塩/リン酸含有ポリエステルを含むポリエステル)が、フードリリース層中に同じシリコーンレベルであるが標準の(すなわち、アルカリ金属リン酸塩/リン酸塩を含まない)ポリエステルを含む比較例の組成よりも著しく良好であることを示す。
【0092】
より詳細な分析のために、図2は、A層中のシリコーン含有量に対するこれらの結果を次のようにプロットする:1つのデータ系列は(比較例1および実施例1、1a、2、2a、 3)のグループで、層A中に主要なPET樹脂として樹脂P1を含むフィルムに対応する。別のデータは、データ(比較例2、4、5及び6)で、層A中に樹脂P2を主要な樹脂として含む。単一データ点は、比較例7のフィルム(樹脂P3を含み、0.25%シリコーン)で、以下の事実を明らかにする。:
(1)シリーズP1樹脂のトレンドラインはシリーズP2樹脂のトレンドラインよりもはるかに低く、標準樹脂から本発明の樹脂に移行することにより加水分解安定性が改善され、これはアルカリ金属リン酸塩/リン酸を触媒/添加剤パッケージ中に含むことにより達成される。
(2)実施例7に対応する単一のデータ点、すなわち加水分解安定性(より高いIVに固相化により達成される)を有する異なる主要樹脂、すなわち樹脂P3は、一般にシリーズ樹脂P2のトレンドラインに入るが、標準樹脂に対して改善を示さない。
(3)シロキサンベースの超高分子量シリコーンを配合することにより、両方のシリーズでフードリリース性能のさらなる改善が見られる点が注目される。しかし、約1重量%のシリコーン組み込み後にプラトーに到達する。
(4)シリーズP1の場合、シリコーン含有量が約0.1重量%を超えると、このプラトーは、参考例の市販のBOPETフィルム(フィルムタイプFN8)によって設定されたベンチマークより下にある。
(5)一方、シリーズP2は、FN8によって設定されたベンチマークラインを大幅に上回り、任意のシリコーン添加レベルでベンチマーク値に達することができないことを示している。
【0093】
実用的な観点から、フード接触層中の上側シリコーンレベルを設定する別の要因は、食品へのシリコーンの移動が、FDA規則21 CFR 177.1630の特定のセクションを通過することを許容するレベルを上回ることである。表3はこれを示す。
表3:移動試験の結果
【表3】
【0094】
表結果は、フード接触層中の2重量%以上のシリコーンレベルは、このフィルムが条件(h)を通過するのを防止することを示しており、これは典型的に250°Fを超える食品滅菌プロセスを受ける容器の容器ライナーとしての使用の最大臨界値である。
【0095】
ラミネーション中に金属と接触する層(これらの場合、層B)にPBTを含む実施例の場合、ラミネーションおよび後処理を成功させるために必要なより低い温度は、PBTをブレンド成分として使用する有効性を示す(ポリエステル樹脂P2の融点より少なくとも20℃低い融点を有するポリエステル樹脂の範疇を表す)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8