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特許7153569健康な皮膚微生物叢の維持及び/又は回復に対する皮膚科調合剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】健康な皮膚微生物叢の維持及び/又は回復に対する皮膚科調合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20221006BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20221006BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20221006BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K35/747 ZNA
A61K8/99
A61P17/00
A61Q19/00
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C12N15/09 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018566402
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2017065006
(87)【国際公開番号】W WO2017220525
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】2016/5454
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
【微生物の受託番号】BCCM  LMG P-29455
【微生物の受託番号】BCCM  LMG P-29456
【微生物の受託番号】BCCM  LMG P-29611
(73)【特許権者】
【識別番号】510214573
【氏名又は名称】ユニフェルシテイト アントウェルペン
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Antwerpen
【住所又は居所原語表記】Prinsstraat 13,Antwerpen,BELGIUM
(73)【特許権者】
【識別番号】518338345
【氏名又は名称】ユン エンヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】レベール,サラ
(72)【発明者】
【氏名】クラエス,イングマール
(72)【発明者】
【氏名】ウルレマンス,エリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブルク,マリアンヌ
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0089530(KR,A)
【文献】国際公開第2016/023688(WO,A1)
【文献】特表2015-514127(JP,A)
【文献】特表2016-508712(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0075447(KR,A)
【文献】国際公開第2011/052996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きたラクトバチルス種であるL.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスを含む局所皮膚科組成物であって、前記L.プランタラムが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するL.プランタラム株であり、前記L.ペントーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ペントーサス株であり、かつ前記L.ラムノーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ラムノーサス株である、局所皮膚科組成物。
【請求項2】
健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持に対する局所皮膚科組成物の製造における、2以上の生きたラクトバチルス種の使用であって、前記ラクトバチルス種がL.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスであり、前記L.プランタラムが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するL.プランタラム株であり、前記L.ペントーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ペントーサス株であり、かつ前記L.ラムノーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ラムノーサス株である、使用。
【請求項3】
健康な皮膚微生物叢の回復剤及び/又は維持剤であって、個体に対して、有効量の少なくとも2つの生きたラクトバチルス種を局所経路によって投与され、前記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスであり、前記L.プランタラムが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するL.プランタラム株であり、前記L.ペントーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ペントーサス株であり、かつ前記L.ラムノーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ラムノーサス株である、剤
【請求項4】
局所経路による、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持における使用用の少なくとも2つの生きたラクトバチルス種を含む組成物であって、前記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスであり、前記L.プランタラムが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するL.プランタラム株であり、前記L.ペントーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ペントーサス株であり、前記L.ラムノーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ラムノーサス株である、組成物。
【請求項5】
前記組成物が、ゲル、クリーム、オビュール(ovule)、坐剤形態、フォーム、ローション又は軟膏の形態の局所皮膚組成物である、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、ゲル、クリーム、オビュール(ovule)、坐剤形態、フォーム、ローション又は軟膏の形態の局所皮膚組成物である、請求項1若しくは4に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚のプロバイオセラピーにおける生きたラクトバチルス種を含む局所治療剤であって、
前記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスであり、前記L.プランタラムが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するL.プランタラム株であり、前記L.ペントーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ペントーサス株であり、かつ前記L.ラムノーサスが、その16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列同一性を有するL.ラムノーサス株である、局所治療剤。
【請求項8】
前記プロバイオセラピーが、健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することを必要とする被験体において健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することからなる、請求項7に記載の局所治療剤。
【請求項9】
前記ラクトバチルス種が、アクセッション番号LMG P-29456で寄託されるL.プランタラムYUN-V2.0、アクセッション番号LMG P-29455で寄託されるL.ペントーサスYUN-V1.0、及びアクセッション番号LMG P-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0からなる群から選択されるラクトバチルス株である、請求項7若しくは8に記載の剤、又は請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記ラクトバチルス種が、アクセッション番号LMG P-29456で寄託されるL.プランタラムYUN-V2.0、アクセッション番号LMGP-29455で寄託されるL.ペントーサスYUN-V1.0、及びアクセッション番号LMGP-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0からなる群から選択されるラクトバチルス株である、請求項2に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康な皮膚微生物叢の維持、及び不均衡な皮膚微生物叢の回復の支援に対する、皮膚への有益な細菌又はプロバイオティクス細菌の直接的な局所塗布に関する。この健康な微生物叢の回復は、微生物性ディスバイオシス(dysbiosis)が起こる部位で健康な微生物叢を回復するための有益な微生物又はプロバイオティクスの使用として定義される、プロバイオセラピー(probiotherapy:プロバイオティクス療法)の用語に包含される。上記適用は、一般的な皮膚病原体に対する抗病原因子として選択されたラクトバチルス株、特にL.プランタラム(L. plantarum)、L.ペントーサス(L. pentosus)及び/又はL.ラムノーサス(L. rhamnosus)の使用に基づき、それらによって産生される乳酸等の酸は重要な抗微生物因子である。
【背景技術】
【0002】
したがって、本発明の目的は、皮膚の異常な微生物バランスに起因する皮膚の状態に苦しむ被験体に解決策を提供することであった。そのうえ、L.プランタラム種、L.ペントーサス種及び/又はL.ラムノーサス種の皮膚に対する局所使用は、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持に非常に有効であるため、皮膚の状態を和らげる必要のある被験体の皮膚の状態を和らげるのに非常に好適であることがわかった。
【0003】
ラクトバチルス株を含む経口製剤は、以前はアトピー性皮膚炎のような皮膚の状態の治療に使用されていた。しかしながら、経口投与と直接局所投与は異なる投与経路であり、それぞれ完全に異なる根本的な機構を有する。経口投与では、特に免疫賦活による健康全般に対する有益な効果が意図されるのに対し、直接皮膚科学的(皮膚)投与によって、「望ましくない」微生物との競合が起こる。
【0004】
消化管のように、我々の皮膚は独自の微生物生態系を抱いている。皮膚に見られる微生物の種類は、宿主因子、環境要因のみならず地理的所在の組み合わせに依存する。皮膚障害におけるこの微生物叢の役割は、まだ完全には解明されていない。しかしながら、抗微生物治療が臨床症状を改善し得ることから、少なくとも幾つかの皮膚障害は微生物叢の乱れと結びつくようである(非特許文献1)。例えば、尋常性座瘡では、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacteriumacnes)の存在との相関が見出された(非特許文献2)。尋常性座瘡は多因子的な状態であり、とりわけホルモン因子によって影響を受けるが、これらのP.アクネス細菌は炎症を誘導して、丘疹又は膿胞(pustules)とも呼ばれる炎症を起こしたにきびを生じるようである。P.アクネスは、にきびを引き起こしていない健康な皮膚にも見られることから、他の因子が、この細菌の過剰増殖へと皮膚微生物叢の組成バランスを傾けるのに関与していることが示唆される。
【0005】
微生物叢が重要であるように見える皮膚障害の別の例は、ふけである(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献1)。ふけを持つ人々では、真菌であるマラセチア(Malassezia)が大きな比率を占めることが多い。上記の状態の考えられる原因がこの真菌であるという指摘は、抗真菌剤治療が症状を改善するという事実からきている。対照的に、抗菌療法はふけを改善しない。ここでも、他の因子が、この皮膚障害に関与すると予想されるが、マラセチアとの相関は興味深い。
【0006】
同様に、ふけに関して、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)又はトリコフィトン属菌(Trichophytonspp.)のような皮膚糸状菌による皮膚真菌感染症は、これらの種が健康な被験体にも存在することから、皮膚微生物叢におけるディスバイオシスと結びついた皮膚障害のようである。足白癬すなわち「水虫」の場合、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)又はT.メンタグロフィテス(T. mentagrophytes)の異常増殖がしばしば観察される。
【0007】
乳酸の産生は、おそらくはバクテリオシンのような他の抗微生物性化合物と組み合わせて、上述の感染症及びディスバイオシス状態に対する保護を与えるようであり、乳酸は、細菌性、真菌性、更にはウイルス性の病原体に対して活性であるように見える。これは、ラクトバチルスが、動的な皮膚科学的生態系のホメオスタシスにおいて重要であるとされる理由である。ラクトバチルスの考えられる健康増進機構は、i)主に乳酸の産生によって、健康な皮膚pH(+/-5.5)を保つこと、ii)抗微生物性化合物の産生及び病原体の競合的排除、iii)免疫応答の調節、並びにiv)上皮性関門の強化である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Grice, E.A. & Segre, J.A., 2011. The skin microbiome. Naturereviews. Microbiology, 9(4), pp.244-53.
【文献】Beylot, C. et al., 2014. Propionibacterium acnes: an update on itsrole in the pathogenesis of acne. Journal of the European Academy ofDermatology and Venereology : JEADV, 28(3), pp.271-8.
【文献】Wang, L. et al., 2015. Characterization of the majorbacterial-fungal populations colonizing dandruff scalps in Shanghai, China,shows microbial disequilibrium. Experimental dermatology, 24(5), pp.398-400.
【文献】Sugita, T. et al., 2015. Temporal changes in the skin Malasseziamicrobiota of members of the Japanese Antarctic Research Expedition (JARE): Acase study in Antarctica as a pseudo-space environment. Medical mycology, 53(7),pp.717-24.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、皮膚の異常な微生物バランスに起因する皮膚科学的状態に苦しむ被験体に解決策を提供することであった。そのうえ、L.プランタラム種、L.ペントーサス種及び/又はL.ラムノーサス種の局所の皮膚科学的使用は、皮膚の健康な微生物叢の回復及び/又は維持に非常に有効であるため、皮膚科学的状態を和らげる必要のある被験体の皮膚科学的状態を和らげるのに非常に好適であることがわかった。
【0010】
ラクトバチルス株を含む経口製剤は、以前は皮膚科学的障害の治療に使用されていた。しかしながら、経口投与と直接局所投与は、異なる投与経路であり、それぞれ完全に異なる根本的な機構を有する。経口投与では、特に免疫賦活による健康全般に対する有益な効果が意図されるのに対し、皮膚に対する直接投与によって、「望ましくない」微生物との競合が起こる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、1以上の生きたラクトバチルス種を含む局所皮膚組成物であって、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16SrRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、局所皮膚組成物を提供する。
【0012】
更なる態様では、本発明は、局所経路による、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持における使用に対する生きたラクトバチルス種であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、特にその16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、生きたラクトバチルス種を提供する。
【0013】
また更なる態様では、本発明は、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持に対する局所皮膚組成物の作製における、1以上の生きたラクトバチルス種の使用であって、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、使用を提供する。
【0014】
本発明はまた、健康な皮膚微生物叢を回復する及び/又は維持する方法であって、個体に対して、有効量の1以上の生きたラクトバチルス種を局所経路によって投与する少なくとも1つの工程を含み、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16SrRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、方法を提供する。
【0015】
更に別の態様では、本発明は、局所経路による、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持における使用に対する1以上の生きたラクトバチルス種を含む組成物であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスを含む一覧、特にその16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ペントーサス株、及びその16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ラムノーサス株を含む一覧から選択される、組成物を提供する。
【0016】
本発明は、アクセッション番号LMG P-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0(2016年5月12日付でBCCMに寄託)であるラクトバチルス株を更に提供する。
【0017】
特定の態様では、本発明は、本明細書において上に定義される1以上のラクトバチルス株を含む組成物を提供する。
【0018】
特定の実施の形態では、本発明の組成物は、局所皮膚組成物、特にゲル、クリーム、フォーム、ローション又は軟膏の形態の局所皮膚組成物である。
【0019】
別の特定の実施の形態では、本発明は、局所経路による健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持における使用に対する、本明細書において上に定義されるラクトバチルス株又は本明細書において上に定義される組成物を提供する。
【0020】
特定の態様では、本発明は、皮膚のプロバイオセラピーにおける1以上の生きたラクトバチルス種の局所使用であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス、及びL.ラムノーサスを含む一覧から選択される、局所使用を提供する。特に、上記プロバイオセラピーは、健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することを必要とする被験体において健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することからなる。
【0021】
別の特定の実施の形態では、本明細書に開示される局所使用、方法及び組成物における上記ラクトバチルス種は、アクセッション番号LMG P-29456で寄託されるL.プランタラムYUN-V2.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、アクセッション番号LMG P-29455で寄託されるL.ペントーサスYUN-V1.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、及びアクセッション番号LMG P-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0(2016年5月12日付でBCCMに寄託)を含む一覧から選択されるラクトバチルス株である。
【0022】
ここで特に図に関連して、詳細は例として示され、また本発明の種々の実施形態の実例を検討する目的にすぎないことを強調する。それらの図は、本発明の原理及び概念的側面の最も有用で簡単な説明と考えられるものを提供する際に提示される。この点で、本発明の根本的な理解に必要とされるよりも詳しい本発明の構造細部を示す試みは行われない。図面と併せて明細書の記載は、当業者に対して、本発明の幾つかの形態がどのようにして実際に具体化され得るのかを明らかにする(makes)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】増殖、D-及びL-乳酸(LA)の産生、並びに培地のpHの降下に関するラクトバチルスの特性の図である。
図2】プロピオニバクテリウム・アクネスに対するラクトバチルスの使用済み培養上清の抗病原性効果の分析に関する時間経過実験の図である。細菌の増殖(600 nmでの光学密度;Y軸)を時間に合わせて(X軸)測定する。グラフはそれぞれ、P.アクネスの増殖の再現を示す。抗生物質又はSCSの添加が全くなければ、P.アクネスは急速に増殖し始める(NC1)ことが明らかにわかる。50 μg/mlエリスロマイシンを添加した場合と同様に、ラクトバチルスのSCSはいずれもP.アクネスの増殖を妨げるのに対し、ストレプトコッカス又はスタフィロコッカスのSCSは増殖を阻害しない。*エリスロマイシン(50 μg/ml);#エリスロマイシン(5 μg/ml);§ミノサイクリン(20 μg/ml);NC1=培地対照;NC2=pH 4.3のMRS;番号1~22=ラクトバチルス株(詳細は表1を参照されたい);St=ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus);Ss=ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius);Se=スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis);T0.5=0.5%Tween 80;T1=1%Tween80。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、プロピオニバクテリウム・アクネス、カンジダ・アルビカンス、マラセチア属菌(Malassezia spp.)、トリコフィトン属菌、及び尋常性座瘡、ふけ、足白癬又は他の皮膚真菌感染症のような皮膚の状態と結びつく細菌又は真菌の増殖と競合し得る、特定のラクトバチルス株の発見に基づく。これらの選択された株は、本明細書では概して「YUN」株と称され、皮膚病原体と競合することができることから健康な皮膚微生物叢を回復し得る。この健康な微生物叢の回復は、微生物性ディスバイオシスが起こる部位で健康な微生物叢を回復するのに有益な微生物又はプロバイオティクスの使用として定義される、プロバイオセラピーの用語に包含される。
【0025】
したがって、第1の態様では、本発明は、1以上の生きたラクトバチルス種を含む局所皮膚組成物であって、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16SrRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、局所皮膚組成物を提供する。
【0026】
本発明による上記組成物は、例えば、L.ペントーサス(L. pentosus)、L.ガセリ(L. gasseri)、L.クリスパタス(L. crispatus)、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.ジェンセニイ(L. jensenii)、L.ファーメンタム(L. fermentum)、L.ラムノーサス(L. rhamnosus)を含む非限定的な一覧等から選択される更なるラクトバチルス種を含んでもよい。
【0027】
本発明にて、「局所(の)」の用語は、身体の指定の場所での局部送達、特に身体の特定の場所に対する塗布であることを意味する。特に、上記用語は、クリーム、フォーム、ゲル、ローション又は軟膏等の非固形製剤による塗布を含む。「局所(の)」の用語は、カプセル剤、錠剤等の固形調合剤の形態での送達を含むことを意味するものではない。
【0028】
したがって、「局所皮膚」の用語は、身体の皮膚に非固形製剤を直接使用することによる局部送達を含むことを意味する。本発明による組成物を、最も有効とするために皮膚の広い面積一帯に塗布することが好ましい。
【0029】
本発明にて、「生きたラクトバチルス種」の用語は、生存可能なラクトバチルス種であることを意味し、フラグメント、培養上清又はその死菌形態(killed form)であることを意味するものではない。
【0030】
更なる態様では、本発明は、局所経路による、皮膚のプロバイオセラピーにおける使用に対する生きたラクトバチルス種であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、特にその16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、生きたラクトバチルス種を提供する。既に本明細書で上に定義した通り、上記プロバイオセラピーは、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持(maintenance)を必要とする被験体における健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持であることを意味する。
【0031】
かかるプロバイオセラピーから利益を得る可能性がある被験体は、例えば、尋常性座瘡、足白癬、ふけ、酒渣(rosacea:ロザケア)、膿痂疹のような、おそらくは細菌若しくは酵母の感染及び/又は特定の病原性微生物の異常増殖によって引き起こされた任意のディスバイオシスに起因する、皮膚微生物叢の乱れと結びつく皮膚の状態を有するヒトである。
【0032】
したがって、更なる態様では、本発明は、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持に対する局所皮膚組成物の作製における、1以上の生きたラクトバチルス種の使用であって、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、使用を提供する。
【0033】
本発明はまた、健康な皮膚微生物叢を回復する及び/又は維持する方法であって、個体に対して、有効量の1以上の生きたラクトバチルス種を局所経路によって投与する少なくとも1つの工程を含み、上記ラクトバチルス種の少なくとも1つが、L.プランタラム、特にその16SrRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株である、方法を提供する。
【0034】
更に別の態様では、本発明は、局所経路による、健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持における使用に対する1以上の生きたラクトバチルス種を含む組成物であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス及びL.ラムノーサスを含む一覧、特に、その16S rRNA遺伝子中において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタラム株、その16S rRNA遺伝子中において配列番号1と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ペントーサス株、及びその16S rRNA遺伝子中において配列番号5と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ラムノーサス株を含む一覧から選択される、組成物を提供する。
【0035】
本発明は、アクセッション番号LMG P-29455で寄託されるL.ペントーサスYUN-V1.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、アクセッション番号LMG P-29456で寄託されるL.プランタラムYUN-V2.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、及びアクセッション番号LMG P-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0(2016年5月12日付でBCCMに寄託)を含む一覧から選択されるラクトバチルス株を更に提供する。
【0036】
本明細書で言及される微生物寄託は、BCCM/LMG細菌コレクション(ベルギー微生物保存機関:Belgianco-ordinated collections of micro-organism)によって行われ、対応する住所はベルギー、-9000ヘント、K. L. Ledeganckstraat 35のヘント大学微生物学研究室である。
【0037】
ラクトバチルス・ペントーサスYUN-V1.0は、元々は健康な女性の膣分離株であった株の継代培養後に本発明者らの研究室で得られた単コロニー分離株である。L.ペントーサスYUN-V1.0株に対する16S rRNA遺伝子配列(配列番号1)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'-配列番号2)及び1525R(5'-AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3'-配列番号3)を使用するPCRによって特定した。
【0038】
YUN-V2.0及びYUN-V3.0は、元々はヒト唾液及びトウモロコシのサイレージからそれぞれ単離された、ラクトバチルス・プランタラム株の継代培養後に本発明者らの研究室で得られた単コロニー分離株である。L.プランタラムYUN-V2.0株に対する16S rRNA遺伝子配列(配列番号4)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'-配列番号2)及び1525R(5'-AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3'-配列番号3)を使用するPCRによって特定した。
【0039】
YUN-S1.0は、元々は健康な人から単離されたラクトバチルス・ラムノーサス株の継代培養後に本発明者らの研究室で得られた単コロニー分離株である。L.ラムノーサスYUN-S1.0株に対する16S rRNA遺伝子配列(配列番号5)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'-配列番号2)及び1525R(5'-AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3'-配列番号3)を使用するPCRによって特定した。
【0040】
これらの特定の「YUN」株は、それら自体を使用してもよいが、かかる株を含む組成物に製剤化するのが好ましい。上記組成物は、局所皮膚組成物、特に、クリーム、フォーム、ゲル、ローション又は軟膏等の非固形製剤の形態の局所皮膚組成物である。
【0041】
特に、本発明は皮膚のプロバイオセラピーにおける使用に対する、すなわち健康な皮膚微生物叢の回復及び/又は維持に対する、上で定義される「YUN」株を提供する。
【0042】
また更なる態様では、本発明は、皮膚のプロバイオセラピーにおける1以上の生きたラクトバチルス種の局所使用であって、上記ラクトバチルス種が、L.プランタラム、L.ペントーサス、及びL.ラムノーサスを含む一覧から選択される、局所使用を提供する。特に、上記プロバイオセラピーは、健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することを必要とする被験体において健康な皮膚微生物叢を回復及び/又は維持することからなる。
【0043】
特定の実施の形態では、本明細書に開示される局所使用、方法及び組成物における上記ラクトバチルス種は、アクセッション番号LMG P-29456で寄託されるL.プランタラムYUN-V2.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、アクセッション番号LMG P-29455で寄託されるL.ペントーサスYUN-V1.0(2016年3月9日付でBCCMに寄託)、及びアクセッション番号LMG P-29611で寄託されるL.ラムノーサスYUN-S1.0(2016年5月12日付でBCCMに寄託)を含む一覧から選択されるラクトバチルス株である。
【実施例
【0044】
材料及び方法
細菌株及び増殖条件
ラクトバチルス株(表1)を、de Man、Rogosa及び Sharpe(MRS)の培地(CarlRoth)において37℃で増殖させた。全ての細菌を非振盪条件で増殖させ、グリセロールストック(-80℃)から接種した。固体培地は1.5%(重量/体積)の寒天を含んだ。
【0045】
表A:この調査で使用した細菌株
【表A】
【0046】
選択された株の使用済み培養上清(SCS)の作製
分泌された活性な抗微生物性生成物を含む使用済みの培養上清(SCS)を得るため、各種に特異的な増殖培地を前培養物から接種して、24時間インキュベートした。4℃にて6797 g(8000 rpm)で30分間の遠心分離によってSCSを得た。その後、SCSを濾過滅菌した(0.20 μmの酢酸セルロース、VWR)。
【0047】
マラセチア・フルフル、トリコフィトン・ルブルム、プロピオニバクテリウム・アクネス及びカンジダ・アルビカンス(albicans)に対する生きたラクトバチルスの共培養物に関する抗微生物活性アッセイ
選択された細菌の抗微生物活性を、幾つかの小さな改変を伴う標準的な抗微生物試験により調査した。選択された細菌の抗微生物活性をスポットアッセイによって調査した(Schillinger and Lucke1989)。簡潔には、1 μL~3 μLの各培養物を寒天プレートにスポットした。これらのプレートを株に応じて24時間~最長72時間インキュベートした。次に病原体の終夜培養物を軟寒天の病原体培地7 mLに希釈し、選択された株のスポットを有するプレートに注いだ。プレートを30℃~37℃で一晩インキュベートし、その後、阻止帯を測定した。軟寒天を注ぐ前に陽性対照として、ミコナゾール(真菌に対する)及び/又は、0.1%ヘキセチジン及び/又はテトラサイクリン(プロピオニバクテリウム・アクネスに対する)のスポットをスポットプレートに追加した。
【0048】
ラクトバチルスのSCSの放射拡散試験
さらに、使用済みの培養上清(SCS)の抗微生物活性を、ラクトバチルスと胃腸管病原体との間の競合アッセイについて以前に記載されるプロトコル(Coconnier et al. 1997)により調査した。ミコナゾール(Miconazole)(真菌に対する)及びテトラサイクリン(プロピオニバクテリウム・アクネスに対する)を陽性対照として使用した。無菌の増殖培地を陰性対照として使用した。
【0049】
カンジダ、プロピオニバクテリウム・アクネス、マラセチア・フルフル及びトリコフィトン属菌(以下「病原体」と称する)に対する選択された株のSCSの抗微生物活性の時間経過分析
時間経過分析を、わずかな改変を伴って以前に記載される(De Keersmaecker et al. 2006)のと同様に行った。簡潔には、50%~5%のラクトバチルスのSCSで補足した適切な培地50%~80%で満たしたマイクロプレートのウェルに病原体の終夜培養物を添加した。pH 4.3のMRS、及び適切な濃度の抗生物質又は抗真菌剤を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。細菌又は真菌を増殖させ、Synergy HTXマルチモードリーダー(Biotek)を使用して、3日間に亘って30分間ごとに、590nmで光学密度(OD)を測定した。試験をそれぞれ少なくとも3回行って測定し、平均ODを計算した。陰性対照と比較した、24時間後(定常相)に到達した相対光学密度として、抗微生物活性を表した。
【0050】
抗生物質感受性
抗生物質感受性をKirby-Bauerディスク拡散試験を使用して評価した。つまり、抗生物質をペーパーディスクにスポットし、寒天プレート上で細菌の阻止帯を測定した。試験した抗生物質は、適切な濃度のエリスロマイシン、ノルモシン(normocin)、テトラサイクリン、アンピシリン及びクリンダマイシンであった。
【0051】
尋常性座瘡を持つ患者における概念実証ヒト臨床試験
尋常性座瘡を持つ20名の患者に概念実証臨床試験を行った。患者は軽度の炎症性座瘡を有する12歳~25歳の男性であった。この概念実証試験の目的は、局所のプロバイオティクスクリーム(1 gの局所クリームACNの塗布当たり、+-10-8コロニー形成単位(CFU)のL.ペントーサスYUN-V1.0、+-10-8 CFUのL.プランタラムYUN-V2.0、及び+-10-8 CFUのL.ラムノーサスYUN-S1.0を含む)の皮膚微生物叢及び座瘡の重症度に対する影響を評価することであった。患者に、56日(8週)間に亘って毎日2回クリームを塗るよう求めた。患者は、最初(治療前)、4週目、8週目及び10週目に皮膚科医の診察を受けた。通院毎に皮膚スワブを採取した。市販のMoBio Powersoilキット(Human Microbiome Projectを参照されたい)によって、これらの試料から細菌DNAを単離した。単離したDNAを、MiSeqIlluminaによる16S rRNAアンプリコン配列決定によって分析し、バイオインフォマティクス分析を行った。さらに、臨床スコアリングを行い、通院毎に写真撮影を行った。
【0052】
足白癬(水虫)を持つ患者における概念実証ヒト臨床試験
足白癬を持つ20名の患者に概念実証臨床試験を行った。患者は足白癬を有する18歳~65歳であった。この概念実証試験の目的は、局所プロバイオティクスクリーム(1 gの局所クリームFNGの塗布当たり、+-10-8コロニー形成単位(CFU)のL.ペントーサスYUN-V1.0、+-10-8 CFUのL.プランタラムYUN-V2.0、及び+-10-8 CFUのL.ラムノーサスYUN-S1.0を含む)の皮膚微生物叢及びトリコフィトン感染症に対する影響を評価することであった。患者に、56日(8週)間に亘って毎日2回クリームを塗るよう求めた。患者は、最初(治療前)、4週目、8週目及び10週目に皮膚科医の診察を受けた。通院毎に皮膚スワブを採取した。市販のMoBio Powersoilキット(Human Microbiome Projectを参照されたい)によって、これらの試料から細菌DNAを単離した。単離したDNAを、MiSeqIlluminaによる16S rRNAアンプリコン配列決定によって分析し、バイオインフォマティクス分析を行った。真菌の存在の分析のため、スワブをトリコフィトン特異的培地(BCCMによって推奨される培地)に蒔いた(plated out)。ユニバーサルITS(「内部転写領域」)プライマーITS1(配列番号6)(5'-TCCGTAGGTGAACCTGCGG-3')及びITS4(配列番号7)(5'-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3')を使用するコロニーPCRに続いて、配列決定を行い、真菌を同定した。さらに、臨床スコアリングを行い、通院毎に写真撮影を行った。
【0053】
結果
増殖特性及び乳酸塩の産生
可能性のある有益な株又はプロバイオティクス株を、増殖特性、乳酸塩産生、及び培地のpHを降下させる能力の点で特性評価した。これらの特性が、抗病原性活性にとって重要であると予想される。これらのデータは、ラクトバチルス・ペントーサスYUN-V1.0及びL.プランタラムYUN-V2.0及びL.ラムノーサスYUN-S1.0が最も多量の乳酸を産生することを示す(図1)。
【0054】
プロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗病原性活性
プロピオニバクテリウム・アクネスに対する選択された株の使用済み培養上清(SCS)の抗微生物活性を分析して、時間経過実験を行った。試験株のSCSはいずれもプロピオニバクテリウム・アクネスの増殖を阻害したが、いずれも乳酸菌であるストレプトコッカス・サーモフィラス及びS.サリバリウス、並びにスタフィロコッカス・エピデルミディスのような他の細菌種のSCSは、P.アクネスの増殖を阻害しなかった。これは、選択されたラクトバチルスの種、またおそらくは株に特異的な特性がP.アクネスに対する抗病原性活性に重要であることを示唆する(図2)。
【0055】
マラセチア、トリコフィトン及びカンジダに対する抗病原性活性
次の段階では、有益な細菌又はプロバイオティクス細菌を、特定の皮膚病原体に対する抗病原性効果についてスクリーニングした。マラセチア・フルフル、トリコフィトン・ルブルム及びカンジダ・アルビカンスに対するスポットアッセイの結果を表1、表2及び表3にそれぞれ示す。
【0056】
表1:マラセチア・フルフルに対する選択されたラクトバチルスのスポットアッセイ
マラセチア・フルフル
*独立した3回の繰り返しを示す
【0057】
表2:トリコフィトン・ルブルムに対する選択されたラクトバチルスのスポットアッセイ
トリコフィトン・ルブルム
【表2】
*独立した3回の繰り返しを示す
【0058】
表3:カンジダ・アルビカンスに対する選択されたラクトバチルスの放射拡散アッセイ
カンジダ・アルビカンス
【表3】
*独立した3回の繰り返しを示す
【0059】
また、L.ペントーサスYUN-V1.0及びL.プランタラムYUN-V2.0による使用済み培養上清を放射拡散アッセイで試験し、マラセチア、トリコフィトン及びカンジダの増殖の阻害に効果があると実証した。L.ラムノーサスYUN-S1.0は、マラセチアの増殖阻害にはそれほど効果はなかったが、トリコフィトン及びカンジダの増殖を阻害することができた。
【0060】
抗生物質感受性
また、抗生物質耐性遺伝子の拡散の防止に関し、選択された細菌を抗生物質感受性について試験した。ラクトバチルスは、テトラサイクリンに感受性があったL.プランタラム5057を除いて、いずれもエリスロマイシン、ノルモシン、テトラサイクリン、アンピシリン及びクリンダマイシンに感受性があった。この理由で、L.プランタラム5057株は、プロバイオセラピー用の株として使用するのに好適ではないとわかった。
【0061】
参照文献
Beylot,C. et al., 2014. Propionibacterium acnes: an update on its role in thepathogenesis of acne. Journal of the European Academy of Dermatology andVenereology&#8239;:JEADV, 28(3), pp.271&#8211;8.
Chan, R.C. etal., 1985. Competitive exclusion of uropathogens from human uroepithelial cellsby Lactobacillus whole cells and cell wall fragments. Infection and immunity,47(1), pp.84&#8211;9.
Chan, R.C.,Bruce, A.W. & Reid, G., 1984. Adherence of cervical, vaginal and distalurethral normal microbial flora to human uroepithelial cells and the inhibitionof adherence of gram-negative uropathogens by competitive exclusion. TheJournal of urology, 131(3), pp.596&#8211;601.
Grice, E.A.& Segre, J.A., 2011. The skin microbiome. Nature reviews. Microbiology,9(4), pp.244&#8211;53.
Reid, G., 1999.The Scientific Basis for Probiotic Strains of Lactobacillus. Appl. Envir.Microbiol., 65(9), pp.3763&#8211;3766.
Reid, G.& Bruce, A.W., 2001. Selection of lactobacillus strains for urogenitalprobiotic applications. The Journal of infectious diseases, 183 Suppl , pp.S77&#8211;80.
Sugita, T. etal., 2015. Temporal changes in the skin Malassezia microbiota of members of theJapanese Antarctic Research Expedition (JARE): A case study in Antarctica as apseudo-space environment. Medical mycology, 53(7), pp.717&#8211;24.
Wang, L. etal., 2015. Characterization of the major bacterial-fungal populationscolonizing dandruff scalps in Shanghai, China, shows microbial disequilibrium.Experimental dermatology, 24(5), pp.398&#8211;400.
【0062】
配列表
<110>YUN NV

<120>DERMATOLOGICAL PREPARATIONS FOR MAINTAINING AND/OR RESTORING HEALTHY SKINMICROBIOTA

<130>YUN-002

<150>BE2016/5454
<151>2016-06-21

<170>BiSSAP 1.3.6

<210> 1
<211>1406
<212>RNA
<213>Lactobacillus pentosus
<223>16S rRNA sequence

<400> 1
cttaggcggctggttcctaa aaggttaccc caccgacttt gggtgttaca aactctcatg 60
gtgtgacgggcggtgtgtac aaggcccggg aacgtattca ccgcggcatg ctgatccgcg 120
attactagcgattccgactt catgtaggcg agttgcagcc tacaatccga actgagaatg 180
gctttaagagattagcttac tctcgcgagt tcgcaactcg ttgtaccatc cattgtagca 240
cgtgtgtagcccaggtcata aggggcatga tgatttgacg tcatccccac cttcctccgg 300
tttgtcaccggcagtctcac cagagtgccc aacttaatgc tggcaactga taataagggt 360
tgcgctcgttgcgggactta acccaacatc tcacgacacg agctgacgac aaccatgcac 420
cacctgtatccatgtccccg aagggaacgt ctaatctctt agatttgcat agtatgtcaa 480
gacctggtaaggttcttcgc gtagcttcga attaaaccac atgctccacc gcttgtgcgg 540
gcccccgtcaattcctttga gtttcagcct tgcggccgta ctccccaggc ggaatgctta 600
atgcgttagctgcagcactg aagggcggaa accctccaac acttagcatt catcgtttac 660
ggtatggactaccagggtat ctaatcctgt ttgctaccca tactttcgag cctcagcgtc 720
agttacagaccagacagccg ccttcgccac tggtgttctt ccatatatct acgcatttca 780
ccgctacacatggagttcca ctgtcctctt ctgcactcaa gtttcccagt ttccgatgca 840
cttcttcggttgagccgaag gctttcacat cagacttaaa aaaccgcctg cgctcgcttt 900
acgcccaataaatccggaca acgcttgcca cctacgtatt accgcggctg ctggcacgta 960
gttagccgtggctttctggt taaataccgt caatacctga acagttactc tcagatatgt 1020
tcttctttaacaacagagtt ttacgagccg aaacccttct tcactcacgc ggcgttgctc 1080
catcagactttcgtccattg tggaagattc cctactgctg cctcccgtag gagtttgggc 1140
cgtgtctcagtcccaatgtg gccgattacc ctctcaggtc ggctacgtat cattgccatg 1200
gtgagccgttaccccaccat ctagctaata cgccgcggga ccatccagaa gtgatagccg 1260
aagccatctt tcaaactcggaccatgcggt ccaagttgtt atgcggtatt agcatctgtt 1320
tccaggtgttatcccccgct tctgggcagg tttcccacgt gttactcacc agttcgccac 1380
tcactcaaatgtaaatcatg atgcaa 1406

<210> 2
<211>20
<212>DNA
<213>Artificial Sequence
<223>Primer 8F

<400> 2
agagtttgatcctggctcag 20

<210> 3
<211>20
<212>DNA
<213>Artificial Sequence
<223>Primer 1525R

<400> 3
aaggaggtgatccagccgca 20

<210> 4
<211>1425
<212>RNA
<213>Lactobacillus plantarum
<223>16S rRNA

<400> 4
ggttcctaaaaggttacccc accgactttg ggtgttacaa actctcatgg tgtgacgggc 60
ggtgtgtacaaggcccggga acgtattcac cgcggcatgc tgatccgcga ttactagcga 120
ttccgacttcatgtaggcga gttgcagcct acaatccgaa ctgagaatgg ctttaagaga 180
ttagcttactctcgcgagtt cgcaactcgt tgtaccatcc attgtagcac gtgtgtagcc 240
caggtcataaggggcatgat gatttgacgt catccccacc ttcctccggt ttgtcaccgg 300
cagtctcaccagagtgccca acttaatgct ggcaactgat aataagggtt gcgctcgttg 360
cgggacttaacccaacatct cacgacacga gctgacgaca accatgcacc acctgtatcc 420
atgtccccgaagggaacgtc taatctctta gatttgcata gtatgtcaag acctggtaag 480
gttcttcgcgtagcttcgaa ttaaaccaca tgctccaccg cttgtgcggg cccccgtcaa 540
ttcctttgagtttcagcctt gcggccgtac tccccaggcg gaatgcttaa tgcgttagct 600
gcagcactgaagggcggaaa ccctccaaca cttagcattc atcgtttacg gtatggacta 660
ccagggtatctaatcctgtt tgctacccat actttcgagc ctcagcgtca gttacagacc 720
agacagccgccttcgccact ggtgttcttc catatatcta cgcatttcac cgctacacat 780
ggagttccactgtcctcttc tgcactcaag tttcccagtt tccgatgcac ttcttcggtt 840
gagccgaaggctttcacatc agacttaaaa aaccgcctgc gctcgcttta cgcccaataa 900
atccggacaacgcttgccac ctacgtatta ccgcggctgc tggcacgtag ttagccgtgg 960
ctttctggttaaataccgtc aatacctgaa cagttactct cagatatgtt cttctttaac 1020
aacagagttttacgagccga aacccttctt cactcacgcg gcgttgctcc atcagacttt 1080
cgtccattgtggaagattcc ctactgctgc ctcccgtagg agtttgggcc gtgtctcagt 1140
cccaatgtggccgattaccc tctcaggtcg gctacgtatc attgccatgg tgagccgtta 1200
ccccaccatctagctaatac gccgcgggac catccaaaag tgatagccga agccatcttt 1260
caagctcggaccatgcggtc caagttgtta tgcggtatta gcatctgttt ccaggtgtta 1320
tcccccgcttctgggcaggt ttcccacgtg ttactcacca gttcgccact cactcaaatg 1380
taaatcatgatgcaagcacc aatcaatacc agagttcgtt cgact 1425

<210> 5
<211>1403
<212>RNA
<213>Lactobacillus rhamnosus
<223>16S rRNA

<400> 5
gtcgacgagttctgattatt gaaaggtgct tgcatcttga tttaattttg aacgagtggc 60
ggacgggtgagtaacacgtg ggtaacctgc ccttaagtgg gggataacat ttggaaacag 120
atgctaataccgcataaatc caagaaccgc atggttcttg gctgaaagat ggcgtaagct 180
atcgcttttggatggacccg cggcgtatta gctagttggt gaggtaacgg ctcaccaagg 240
caatgatacgtagccgaact gagaggttga tcggccacat tgggactgag acacggccca 300
aactcctacgggaggcagca gtagggaatc ttccacaatg gacgcaagtc tgatggagca 360
acgccgcgtgagtgaagaag gctttcgggt cgtaaaactc tgttgttgga gaagaatggt 420
cggcagagtaactgttgtcg gcgtgacggt atccaaccag aaagccacgg ctaactacgt 480
gccagcagccgcggtaatac gtaggtggca agcgttatcc ggatttattg ggcgtaaagc 540
gagcgcaggcggttttttaa gtctgatgtg aaagccctcg gcttaaccga ggaagtgcat 600
cggaaactgggaaacttgag tgcagaagag gacagtggaa ctccatgtgt agcggtgaaa 660
tgcgtagatatatggaagaa caccagtggc gaaggcggct gtctggtctg taactgacgc 720
tgaggctcgaaagcatgggt agcgaacagg attagatacc ctggtagtcc atgccgtaaa 780
cgatgaatgctaggtgttgg agggtttccg cccttcagtg ccgcagctaa cgcattaagc 840
attccgcctggggagtacga ccgcaaggtt gaaactcaaa ggaattgacg ggggcccgca 900
caagcggtggagcatgtggt ttaattcgaa gcaacgcgaa gaaccttacc aggtcttgac 960
atcttttgatcacctgagag atcaggtttc cccttcgggg gcaaaatgac aggtggtgca 1020
tggttgtcgtcagctcgtgt cgtgagatgt tgggttaagt cccgcaacga gcgcaaccct 1080
tatgactagttgccagcatt tagttgggca ctctagtaag actgccggtg acaaaccgga 1140
ggaaggtggggatgacgtca aatcatcatg ccccttatga cctgggctac acacgtgcta 1200
caatggatggtacaacgagt tgcgagaccg cgaggtcaag ctaatctctt aaagccattc 1260
tcagttcggactgtaggctg caactcgcct acacgaagtc ggaatcgcta gtaatcgcgg 1320
atcagcacgccgcggtgaat acgttcccgg gccttgtaca caccgcccgt cacaccatga 1380
gagtttgtaacacccgaagc cgg 1403

<210> 6
<211>19
<212>DNA
<213>Artificial Sequence
<223>Primer Sequence

<400> 6
tccgtaggtgaacctgcgg 19

<210> 7
<211>20
<212>DNA
<213>Artificial Sequence
<223>Primer Sequence

<400> 7
tcctccgcttattgatatgc 20
図1
図2
【配列表】
0007153569000001.app