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特許7153584傾斜補正システム、部品挿入システム、傾斜補正方法及び部品挿入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】傾斜補正システム、部品挿入システム、傾斜補正方法及び部品挿入方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019029869
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020131386
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】河本 洋
(72)【発明者】
【氏名】河野 恵多
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039184(JP,A)
【文献】特開平04-289087(JP,A)
【文献】特開2015-155126(JP,A)
【文献】特開2014-210311(JP,A)
【文献】特開平06-241925(JP,A)
【文献】特開2011-121169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持し、前記部品の保持によって生じる応力を検出し、同一直線状に配置されていない保持部を少なくとも3つ有する保持部材と、
前記保持部材において前記保持部を駆動して前記部品を保持させる保持部駆動装置と、
前記保持部材の傾斜角を変更する保持部材傾斜装置と、
前記保持部材、前記保持部駆動装置及び前記保持部材傾斜装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記保持部が検出した前記応力を取得し、取得した前記保持部についての鉛直方向における前記応力の偏りと前記部品の大きさ及び形状を少なくとも含んだ仕様の情報に基づいて、前記保持部で保持されている前記部品の傾斜状態を算出し、算出した前記傾斜状態に基づいて、前記保持部材傾斜装置に前記傾斜状態を解消させることを特徴とする傾斜補正システム。
【請求項2】
前記制御装置は、一定時間ごとに、前記応力の取得、前記傾斜状態の算出及び前記傾斜状態の解消を実行することを特徴とする請求項1に記載の傾斜補正システム。
【請求項3】
前記保持部は、前記保持部材において相対的に径方向に移動可能に設けられており、
相対的に径方向の内側に移動することで前記部品の外周部で外側から挟み込むように保持可能であり、
相対的に径方向の外側に移動することで前記部品の内側で内側から保持可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の傾斜補正システム。
【請求項4】
前記保持部は、前記部品に設けられた開口の内側で、前記部品を保持することを特徴とする請求項3に記載の傾斜補正システム。
【請求項5】
前記制御装置は、隣接して設けられた前記保持部が検出した前記応力に基づいて、隣接して設けられた前記保持部の間に保持部が設けられた場合、当該保持部に生じる応力を見積もることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の傾斜補正システム。
【請求項6】
部品をハウジングの被挿入部に挿入する部品挿入システムであって、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の傾斜補正システムと、
前記ハウジングの前記被挿入部を検出する被挿入部検出装置と、
前記保持部材を移動させる保持部材移動装置と、を備え、
前記制御装置は、さらに、
前記被挿入部検出装置及び前記保持部材移動装置を制御し、
前記被挿入部検出装置に前記被挿入部を検出させて、検出した前記被挿入部に基づいて前記保持部に保持させる前記部品を決定し、
前記保持部材移動装置に前記保持部材を移動させて、先に決定した前記部品を前記保持部に保持させ、前記保持部に保持させた前記部品を前記被挿入部まで搬送して前記被挿入部に挿入する、
ことを特徴とする部品挿入システム。
【請求項7】
部品の保持によって保持部材が有し、同一直線状に配置されていない少なくとも3つの保持部に生じる応力を検出して取得する応力取得ステップと、
取得した前記保持部についての鉛直方向における前記応力の各偏りと前記部品の大きさ及び形状を少なくとも含んだ仕様の情報に基づいて、前記保持部で保持されている前記部品の傾斜状態を算出する傾斜算出ステップと、
算出した前記傾斜状態に基づいて、前記保持部材の傾斜角を変更して前記傾斜状態を解消させる傾斜状態解消ステップと、
を有することを特徴とする傾斜補正方法。
【請求項8】
部品をハウジングの被挿入部に挿入する部品挿入方法であって、
前記ハウジングの前記被挿入部を検出する被挿入部検出ステップと、
検出した前記被挿入部に基づいて決定した前記部品を前記保持部で保持する保持ステップと、
請求項7に記載の傾斜補正方法に基づく傾斜補正ステップと、
前記傾斜補正ステップによって傾斜状態を解消した状態で、前記保持部に保持させた前記部品を前記被挿入部まで搬送して前記被挿入部に挿入する挿入ステップと、
を有することを特徴とする部品挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜補正システム、部品挿入システム、傾斜補正方法及び部品挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品をハウジングの被挿入部に挿入する方法として、部品を被挿入部に向けて載置してから、部品の姿勢を変更させるという方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-194499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、部品が傾斜された状態で被挿入部に向けて載置してから、部品の傾斜状態を変更させる場合があるので、部品が正しい姿勢で被挿入部に挿入されなかったり、部品の載置の仕方次第では被挿入部に挿入することが困難な状態に至ったりする可能性が高いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる傾斜補正システム、部品挿入システム、傾斜補正方法及び部品挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、傾斜補正システムは、部品を保持し、前記部品の保持によって生じる応力を検出する保持部を少なくとも3つ有する保持部材と、前記保持部材において前記保持部を駆動して前記部品を保持させる保持部駆動装置と、前記保持部材の傾斜角を変更する保持部材傾斜装置と、前記保持部材、前記保持部駆動装置及び前記保持部材傾斜装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記保持部が検出した前記応力を取得し、取得した前記応力に基づいて、前記保持部で保持されている前記部品の傾斜状態を算出し、算出した前記傾斜状態に基づいて、前記保持部材傾斜装置に前記傾斜状態を解消させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、保持部で保持されている部品の傾斜状態を、部品を保持したまま、解消させることができるので、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる。
【0008】
この構成において、制御装置は、一定時間ごとに、前記応力の取得、前記傾斜状態の算出及び前記傾斜状態の解消を実行することが好ましい。この構成によれば、保持部で保持されている部品が搬送中に再び傾斜状態となった場合でも、再び傾斜状態を解消することができるので、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性をより向上させることができる。
【0009】
これらの構成において、前記保持部は、前記保持部材において相対的に径方向に移動可能に設けられており、相対的に径方向の内側に移動することで前記部品の外周部で外側から挟み込むように保持可能であり、相対的に径方向の外側に移動することで前記部品の内側で内側から保持可能であることが好ましい。この構成によれば、部品の形状等に応じて、適宜保持の仕方を変更することができるので、部品の形状等に依らず、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性をより向上させることができる。さらに、前記保持部は、前記部品に設けられた開口の内側で、前記部品を保持することがより好ましい。この構成によれば、部品の保持によって生じる応力をより正確に検出することができるので、より高い精度で傾斜状態を解消することができ、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性をより向上させることができる。
【0010】
これらの構成において、制御装置は、隣接して設けられた前記保持部が検出した前記応力に基づいて、隣接して設けられた前記保持部の間の状態を見積もることが好ましい。この構成によれば、保持部で保持されている部品の傾斜状態をより高い精度で算出することができるので、より高い精度で傾斜状態を解消することができ、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性をより向上させることができる。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、部品挿入システムは、部品をハウジングの被挿入部に挿入する部品挿入システムであって、上記したいずれかの傾斜補正システムと、前記ハウジングの前記被挿入部を検出する被挿入部検出装置と、前記保持部材を移動させる保持部材移動装置と、を備え、前記制御装置は、さらに、前記被挿入部検出装置及び前記保持部材移動装置を制御し、前記被挿入部検出装置に前記被挿入部を検出させて、検出した前記被挿入部に基づいて前記保持部に保持させる前記部品を決定し、前記保持部材移動装置に前記保持部材を移動させて、先に決定した前記部品を前記保持部に保持させ、前記保持部に保持させた前記部品を前記被挿入部まで搬送して前記被挿入部に挿入する、ことを特徴とする。この構成によれば、本発明に係る傾斜補正システムと同様に、保持部で保持されている部品の傾斜状態を、部品を保持したまま、解消させることができるので、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、傾斜補正方法は、部品の保持によって保持部材が有する保持部に生じる応力を検出して取得する応力取得ステップと、取得した前記応力に基づいて、前記保持部で保持されている前記部品の傾斜状態を算出する傾斜算出ステップと、算出した前記傾斜状態に基づいて、前記保持部材の傾斜角を変更して前記傾斜状態を解消させる傾斜状態解消ステップと、を有することを特徴とする。この構成によれば、本発明に係る傾斜補正システムと同様に、保持部で保持されている部品の傾斜状態を、部品を保持したまま、解消させることができるので、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、部品挿入方法は、部品をハウジングの被挿入部に挿入する部品挿入方法であって、前記ハウジングの前記被挿入部を検出する被挿入部検出ステップと、検出した前記被挿入部に基づいて決定した前記部品を前記保持部で保持する保持ステップと、上記した傾斜補正方法に基づく傾斜補正ステップと、前記傾斜補正ステップによって傾斜状態を解消した状態で、前記保持部に保持させた前記部品を前記被挿入部まで搬送して前記被挿入部に挿入する挿入ステップと、を有することを特徴とする。この構成によれば、本発明に係る傾斜補正システムと同様に、保持部で保持されている部品の傾斜状態を、部品を保持したまま、解消させることができるので、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品を正しい姿勢で被挿入部に挿入される可能性を向上させることができる傾斜補正システム、部品挿入システム、傾斜補正方法及び部品挿入方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る傾斜補正システムを含む部品挿入システムの構成図である。
図2図2は、図1の保持部材の一例を示す概略図である。
図3図3は、図1の保持部が検出した応力の一例を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施形態に係る傾斜補正方法を含む部品挿入方法を示すフローチャートである。
図5図5は、図4の応力取得ステップを説明する説明図である。
図6図6は、図4の傾斜算出ステップを説明する説明図である。
図7図7は、図4の傾斜算出ステップを説明する説明図である。
図8図8は、図4の傾斜状態解消ステップを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100を含む部品挿入システム1000の構成図である。傾斜補正システム100は、図1に示すように、保持部材10と、保持部駆動装置20と、保持部材傾斜装置30と、制御装置60と、を備える。傾斜補正システム100は、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を、部品1を保持したまま、解消させるシステムである。ここで、傾斜状態とは、部品1が、要求された姿勢状態に対して所定の閾値より大きな角度で傾斜している状態であることを言い、傾斜状態を解消するとは、傾斜状態にある部品1が、要求された姿勢状態に補正されることを言う。なお、傾斜状態等に関する具体的な例については、後述する。
【0018】
また、部品挿入システム1000は、図1に示すように、傾斜補正システム100と、保持部材移動装置40と、被挿入部検出装置50と、を備える。部品挿入システム1000は、部品1をハウジング2の被挿入部2aに挿入するシステムである。
【0019】
なお、本実施形態では、ハウジング2を水平方向であるXY平面に沿って、被挿入部2aを鉛直方向上方である+Z方向に向けて載置し、部品1を鉛直方向下方である-Z方向に向けて被挿入部2aに挿入する形態について説明する。これに鑑み、本実施形態では、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の重心軸が鉛直方向であるZ軸方向と一致するまたは所定の閾値以下の角度でしか傾斜していない場合に、部品1が傾斜していない状態であるとし、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の重心軸が鉛直方向に対して所定の閾値より大きな角度で傾斜している場合に、部品1が傾斜している状態である傾斜状態であるとして説明する。また、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の重心軸と鉛直方向とが形成する角度を、部品1の傾斜状態を客観的に表示するパラメータである傾斜角とする。
【0020】
部品1及びハウジング2は、部品1の外側形状がハウジング2に穴状に形成された被挿入部2aの内側形状に嵌め合わせされるという条件を満たせば、どのような大きさ及び形状のものであってもよい。本実施形態では、部品1とハウジング2の被挿入部2aとの嵌め合わせにかかる余裕代が小さければ小さいほど、より顕著に本発明の効果を奏する形態となり、例えば、部品1としてハウジング2の被挿入部2aにインストールされるブッシュが採用されるような形態であることが、より顕著に本発明の効果を奏するという点で好ましい。また、部品1は、開口が設けられていることが好ましく、この場合、開口の内側1aで保持して、搬送及び挿入することが可能となる。
【0021】
図2は、図1の保持部材10の一例を示す概略図である。図2は、図1の保持部材を+Z方向から見た上面図であり、保持部材10の鉛直方向下側に向けて設けられている保持部11の位置を点線で示している。保持部材10は、部品1を保持するための保持部11を円周方向に等間隔に3つ有する。以下において、3つの保持部11を区別する必要がある場合には、それぞれ、保持部11-1、保持部11-2、保持部11-3と称する。
【0022】
保持部材10は、本実施形態では3つの保持部11を有しているが、本発明ではこれに限定されず、保持部材10において同一直線状に配されていない保持部11を少なくとも3つ有していればよく、例えば、4つ以上の保持部11を有していてもよい。また、保持部材10は、3つの保持部11を円周方向に等間隔に有しているが、本発明はこれに限定されない。なお、保持部材10は、複数の保持部11を円周方向に等間隔に有していることが好ましく、この場合、部品1が傾斜していない状態となるように、保持部11でより好適に保持することができるとともに、後述する応力のバランスをより好適に取得することができる。
【0023】
保持部11は、保持部駆動装置20により、保持部材10において相対的に径方向に移動可能に設けられている。保持部11は、部品1の外周部で外側から保持する場合、相対的に径方向の内側に移動して挟み込むように保持する。一方、保持部11は、部品1の開口の内側1aで内側から保持する場合、相対的に径方向の外側に移動して保持する。このように、保持部11は、部品1の形状等に応じて、適宜保持の仕方を変更することができる。なお、保持部11は、本実施形態では、部品1の開口の内側1aで内側から保持する場合として説明する。
【0024】
保持部11は、部品1の保持によって保持部11自身に生じる応力を検出する応力センサとしても機能する。保持部材10は、少なくとも同一直線状にない3つの保持部11を有するので、少なくとも同一直線状にない3つの応力センサを有している。このため、保持部材10は、保持部11により、部品1の保持によって生じる応力のXY平面における偏りを検出することができる。
【0025】
保持部材10は、保持部11が部品1の開口の内側1aで内側から保持する場合、具体的には、図2に示すように、保持部11-1が、径方向の外側へ向かって部品1に対して印加している応力P1を検出し、保持部11-2が、径方向の外側へ向かって部品1に対して印加している応力P2を検出し、保持部11-3が、径方向の外側へ向かって部品1に対して印加している応力P3を検出する。
【0026】
図3は、図1の保持部11が検出した応力の一例を示すグラフである。図3の上段のグラフは、保持部11-1による応力P1の検出例であり、図3の中段のグラフは、保持部11-2による応力P2の検出例であり、図3の下段のグラフは、保持部11-3による応力P3の検出例である。図3の上段、中段、下段のいずれのグラフも、横軸は、保持部11の鉛直方向上側の基端部からの距離となっており、縦軸は、保持部11の鉛直方向下側の先端部からの応力の積算量となっている。
【0027】
保持部駆動装置20は、保持部材10と電気的に接続されて保持部材10の付近に設けられており、保持部材10において保持部11を駆動して、保持部11に部品1を保持させる装置である。保持部駆動装置20は、保持部材10において保持部11を相対的に径方向に移動させることで、保持部11が部品1を保持する保持状態と、保持部11が部品1の保持を解消した保持解消状態とを、切り替えることができる。保持部駆動装置20は、また、保持状態下にある場合、部品1の保持によって保持部11自身に生じる応力を保持部11に検出させて、検出した応力の情報を取得することができる。
【0028】
保持部材傾斜装置30は、保持部材10の鉛直方向上側に取り付けられており、保持部材10の傾斜角を変更する装置である。保持部材傾斜装置30は、保持部材10の傾斜角を変更することに伴って、保持部11及び保持部11に保持された部品1の傾斜角を同時に変更することができる。保持部材傾斜装置30は、自動ゴニオステージが好適なものとして例示される。
【0029】
保持部材移動装置40は、保持部材傾斜装置30に取り付けられており、保持部材傾斜装置30とともに保持部材10を、3次元的に移動させる装置である。保持部材移動装置40は、保持部材傾斜装置30によって制御された保持部材10の立体角を維持した状態で、保持部材10を、水平方向であるX軸方向またはY軸方向に沿って移動させたり、鉛直方向であるZ軸方向に沿って移動させたりすることができる。また、保持部材移動装置40は、常に、保持部材10の3次元的な位置の情報を取得することができる。保持部材移動装置40は、ロボットアーム及びクレーンのアーム等が好適なものとして例示される。
【0030】
被挿入部検出装置50は、保持部材10に対して水平方向に隣接した位置に、鉛直方向下方に向けて取り付けられており、ハウジング2の被挿入部2aを検出する装置である。被挿入部検出装置50は、保持部材移動装置40により、保持部材10、保持部駆動装置20及び保持部材傾斜装置30と共に移動する。被挿入部検出装置50は、光学カメラ及びレーザーカメラ等の撮像装置が好適なものとして例示され、このような撮像装置である場合、ハウジング2を鉛直方向上側から撮像し、撮像した画像を解析することで、被挿入部2aの位置、大きさ及び形状等を検出することができる。
【0031】
傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000は、傾斜補正及び部品挿入に関する情報の入力を受け付ける入力装置70をさらに備えていてもよい。また、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000は、傾斜補正及び部品挿入に関する情報を出力する出力装置80をさらに備えていてもよい。
【0032】
入力装置70は、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC(Personal Computer)、携帯情報端末であるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス(Wearable Device)等に例示される情報処理端末である。
【0033】
入力装置70は、制御装置60が実施形態に係る傾斜補正方法及び部品挿入方法に関する各種電算処理を実行する際に必要となる各種情報を入力するための機能、例えば、制御装置60から送信される各種情報の入力を受け付けるための入力画面等を入力装置70の表示部に表示する機能、及び、入力を受け付けた各種情報を制御装置60に送信する機能を有する。入力装置70は、これらの様々な機能を、制御装置60を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、制御装置60を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
【0034】
出力装置80は、受信した情報に基づいて、文字、画像、動画等により表示する。出力装置80は、制御装置60が実行する実施形態に係る傾斜補正方法及び部品挿入方法に関する各種電算処理の結果として得られる出力情報を出力するための機能、例えば、制御装置60から出力された出力情報を受信する機能、及び、出力情報に基づく出力画面等を出力装置80の表示部に表示する機能を有する。出力装置80は、これらの様々な機能を、制御装置60を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、制御装置60を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
【0035】
なお、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000は、本実施形態では、入力装置70と出力装置80とを別々に設けたが、本発明はこれに限定されず、入力装置70と出力装置80とが一体化された形態であってもよい。この場合、例えば、入力装置70の表示部が出力装置80として機能する。
【0036】
制御装置60は、各装置、すなわち、保持部駆動装置20、保持部材傾斜装置30、保持部材移動装置40、被挿入部検出装置50、入力装置70及び出力装置80と電気的に接続されており、これらの各装置の動作を制御する。また、制御装置60は、保持部駆動装置20を介して、保持部材10を制御する。
【0037】
制御装置60は、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000を制御するコンピュータシステムを含む情報処理装置である。制御装置60は、図1に示すように、処理部61と、記憶部62と、情報通信インターフェイス63と、を有する。
【0038】
処理部61は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、制御装置60内部の記憶装置である記憶部62に記憶されている各種プログラム(傾斜補正プログラムまたは部品挿入プログラムの一例に相当)がRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、処理部61は、例えば、コントローラであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。処理部61は、各装置からの情報の入力を受け付けたり、制御装置60と電気的に接続されている出力装置80に傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000に関する各種パラメータ、計測結果、及び算出結果等の情報の出力を行ったりする情報通信インターフェイス63が接続されている。
【0039】
処理部61は、図1に示すように、記憶部62及び情報通信インターフェイス63と、互いに情報通信可能に電気的に接続されており、これらの各構成要素をそれぞれ制御する制御部として機能する。すなわち、処理部61は、記憶部62とともに、制御部として機能して、本発明の実施形態に係る傾斜補正方法を傾斜補正システム100に実行させ、部品挿入方法を部品挿入システム1000に実行させるものである。
【0040】
処理部61は、図1に示すように、保持動作制御部65と、応力取得部66と、傾斜算出部67と、傾斜状態解消部68と、挿入動作制御部69と、を有する。処理部61に含まれる各部、すなわち、保持動作制御部65、応力取得部66、傾斜算出部67、傾斜状態解消部68及び挿入動作制御部69は、いずれも、処理部61が傾斜補正プログラムまたは部品挿入プログラムを実行することにより、実現される機能部である。なお、処理部61に含まれる各部の具体的な機能は、実施形態に係る傾斜補正方法及び部品挿入方法の詳細な説明と併せて、説明する。
【0041】
記憶部62は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部62は、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の各装置を制御するための制御信号の生成処理に必要な各種出力処理情報、及び、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の各装置から得られる受信信号の解析処理に必要な各種入力処理情報を記憶する。また、記憶部62は、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の各装置から得られる受信信号を解析して得られる各種入力情報を、随時記憶する。
【0042】
情報通信インターフェイス63は、処理部61と、制御装置60と電気的に接続されている各装置とを、互いに情報通信可能に接続している。情報通信インターフェイス63は、保持部駆動装置20が取得した、部品1の保持によって保持部11自身に生じる応力の情報を、保持部駆動装置20から受信して処理部61に送信する。また、情報通信インターフェイス63は、保持部材傾斜装置30が取得した保持部材10の傾斜角の情報を保持部材傾斜装置30から受信して処理部61に送信する。また、情報通信インターフェイス63は、保持部材移動装置40が取得した保持部材10の3次元的な位置の情報を保持部材移動装置40から受信して処理部61に送信する。また、情報通信インターフェイス63は、被挿入部検出装置50が取得したハウジング2の被挿入部2aの位置、大きさ及び形状等の情報を被挿入部検出装置50から受信して処理部61に送信する。また、情報通信インターフェイス63は、入力装置70から入力を受け付けた各種情報を入力装置70から受信して処理部61に送信する。
【0043】
情報通信インターフェイス63は、処理部61で生成される各情報、例えば、各装置を制御するための制御信号を処理部61から受信し、それぞれ、各装置に向けて送信する。また、情報通信インターフェイス63は、処理部61で生成される実施形態に係る傾斜補正方法及び部品挿入方法に関する各種電算処理の結果として得られる出力情報を処理部61から受信し、出力装置80に向けて送信する。
【0044】
実施形態に係る傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の作用について以下に説明する。図4は、本発明の実施形態に係る傾斜補正方法を含む部品挿入方法を示すフローチャートである。傾斜補正システム100によって実行される傾斜補正方法と、部品挿入システム1000によって実行される部品挿入方法とについて、傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の制御装置60の処理部61における各部の詳細な機能と併せて、以下に説明する。
【0045】
本発明の実施形態に係る部品挿入方法は、部品1をハウジング2の被挿入部2aに挿入する方法であり、図4に示すように、被挿入部検出ステップS11と、保持ステップS12と、本発明の実施形態に係る傾斜補正方法に基づく傾斜補正ステップS13と、挿入ステップS14と、を有する。
【0046】
被挿入部検出ステップS11は、保持動作制御部65が、ハウジング2の被挿入部2aを検出するステップである。被挿入部検出ステップS11では、具体的には、保持動作制御部65が、被挿入部検出装置50を制御して、被挿入部検出装置50にハウジング2の被挿入部2aを検出させて、部品1を挿入する被挿入部2aの位置、大きさ及び形状等の情報を取得する。
【0047】
保持ステップS12は、保持動作制御部65が、被挿入部検出ステップS11で検出した被挿入部2aに基づいて決定した部品1を保持部11で保持するステップである。保持ステップS12では、具体的には、保持動作制御部65が、被挿入部検出装置50により検出した被挿入部2aの位置、大きさ及び形状等の情報に基づいて、被挿入部2aに嵌め合わせされる部品1の大きさ及び形状等の仕様を決定する。保持ステップS12では、保持動作制御部65が、次に、保持部材移動装置40を制御して、先に決定した大きさ及び形状等の仕様の部品1の供給部へ保持部材10を移動させる。保持ステップS12では、保持動作制御部65が、その次に、保持部駆動装置20を制御して、当該仕様の部品1を保持部11に保持させる。
【0048】
本発明の実施形態に係る傾斜補正方法は、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を、部品1を保持したまま、解消させる方法である。傾斜補正ステップS13は、保持部材10の保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を、部品1を保持したまま、解消させるステップであり、図4に示すように、応力取得ステップS21と、傾斜算出ステップS22と、傾斜有無判定ステップS23と、傾斜状態解消ステップS24と、を有する。
【0049】
応力取得ステップS21は、応力取得部66が、部品1の保持によって保持部材10が有する保持部11に生じる応力を検出して取得するステップである。応力取得ステップS21では、具体的には、応力取得部66が、保持部駆動装置20を制御して、保持部駆動装置20を介して、部品1の保持によって保持部11自身に生じる応力を保持部11に検出させて、検出した応力の情報を取得する。応力取得ステップS21では、例えば、応力取得部66が、図3に示す応力P1,P2,P3のグラフを取得することができる。
【0050】
図5は、図4の応力取得ステップS21を説明する説明図である。図5において、箇所1-1は、保持部11-1によって支持されている部品1における箇所であり、箇所1-2は、保持部11-2によって支持されている部品1における箇所であり、箇所1-3は、保持部11-3によって支持されている部品1における箇所である。図5において、グラフ1p及びグラフ1qは、いずれも、応力P1,P2,P3を合わせて示すことで、応力P1,P2,P3のバランスを示すグラフであり、応力P1の相対的な大きさは、各グラフにおいて原点から箇所1-1に向かう方向の長さで示され、応力P2の相対的な大きさは、各グラフにおいて原点から箇所1-2に向かう方向の長さで示され、応力P3の相対的な大きさは、各グラフにおいて原点から箇所1-3に向かう方向の長さで示されている。
【0051】
図5において実線で示されたグラフ1pは、応力P1,P2,P3が均衡を保持しており、保持部11で保持された部品1が傾斜していない状態であることを示している。一方、図5において破線で示されたグラフ1qは、応力P1,P2,P3が均衡を保持しておらず、保持部11で保持された部品1が傾斜状態であることを示している。より詳細には、グラフ1qは、応力P3が応力P1及び応力P2に比して大きくなっていることを示しており、保持部11で保持された部品1が、箇所1-3が箇所1-1及び箇所1-2に比して鉛直方向上側にずれた傾斜状態であることを示している。
【0052】
応力取得ステップS21では、例えば、応力取得部66が、図3に示す応力P1,P2,P3のグラフに基づいて、図5に示すグラフ1qを取得する。応力取得ステップS21では、具体的には、応力取得部66が、まず、図3に示す応力P1,P2,P3のグラフにおける応力分布が、部品1が傾斜していない状態と比較して、保持部11の鉛直方向上側の基端部側に偏っているか、保持部11の鉛直方向下側の先端部側に偏っているかを判定する。応力取得ステップS21では、本実施形態では、応力取得部66が、図3に示す応力P1及び応力P2のそれぞれのグラフでは、部品1が傾斜していない状態と比較してわずかではあるが保持部11の鉛直方向下側の先端部側に偏っていると判定し、図3に示す応力P3のグラフでは、部品1が傾斜していない状態と比較して有意に保持部11の鉛直方向上側の基端部側に偏っていると判定する。
【0053】
応力取得ステップS21では、応力取得部66が、次に、応力のグラフが保持部11の鉛直方向下側の先端部側に偏っていると判定した場合、部品1が傾斜していない状態と比較して応力が相対的に小さいと認識し、応力のグラフが保持部11の鉛直方向上側の基端部側に偏っていると判定した場合、部品1が傾斜していない状態と比較して応力が相対的に大きいと認識する。応力取得ステップS21では、本実施形態では、応力取得部66が、図3に示す応力P1及び応力P2のそれぞれのグラフに基づいて、部品1が傾斜していない状態と比較して応力P1及び応力P2が相対的にわずかに小さいと認識し、図3に示す応力P3のグラフに基づいて、部品1が傾斜していない状態と比較して応力P3が相対的に有意に大きいと認識する。応力取得ステップS21では、応力取得部66が、これらの図3に示す応力P1,P2,P3のグラフにおける判定結果及び認識結果に基づいて、図5に示すグラフ1qを取得する。
【0054】
また、応力取得ステップS21では、応力取得部66が、隣接して設けられた保持部11が検出した応力に基づいて、隣接して設けられた保持部11の間の状態を見積もることが好ましい。応力取得ステップS21では、具体的には、応力取得部66が、隣接して設けられた保持部11-1及び保持部11-2がそれぞれ検出した応力P1及び応力P2の各グラフに基づいて、保持部11-1と保持部11-2との間に保持部11が設けられていた場合、どの程度の応力が検出されていた可能性があるかを見積もることができる。応力取得ステップS21では、応力取得部66が、本実施形態では、3つの保持部11-1,11-2,11-3に基づいて三角形状の応力のバランスのグラフを取得することについて説明しているが、保持部11間の応力を見積もることで、六角形状の応力のバランスのグラフを取得することもできる。また、応力取得ステップS21で応力取得部66が隣接して設けられた保持部11の間の状態を見積もる場合、追って説明する傾斜算出ステップS22において、傾斜状態をより精度よく算出することを可能にする。
【0055】
傾斜算出ステップS22は、傾斜算出部67が、応力取得ステップS21で応力取得部66が取得した応力P1,P2,P3に基づいて、保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を算出するステップである。
【0056】
図6及び図7は、図4の傾斜算出ステップS22を説明する説明図である。図6は、保持部11で保持されている部品1において+Z軸方向に最も傾斜している部分を含むX´Z平面における断面図である。図7は、図6におけるX´軸方向及びY´軸方向と、図1図2及び図5におけるX軸方向及びY軸方向との相関関係を、+Z方向から見た図である。
【0057】
傾斜算出ステップS22において傾斜算出部67が算出する傾斜状態は、図6に示す傾斜角θと、傾斜している方向を示す図7に示す傾斜方向φと、の2つのパラメータで表現される。傾斜方向φは、図6に示す例では、図7に示すように、保持部11で保持されている部品1において+Z軸方向に最も傾斜している部分を含む断面である図6のX´Z平面の、XZ平面を基準として+Z方向から見て反時計回りに設定された相対角度座標で示される。
【0058】
傾斜算出ステップS22では、傾斜算出部67が、具体的には、応力P3が応力P1及び応力P2に比して相対的に優位に大きいことに基づいて、傾斜方向φが、保持部11-3の方向、すなわち部品1における箇所1-3を指し示す方向、すなわち約330度(-30度)であると算出する。傾斜算出ステップS22では、傾斜算出部67が、また、応力P3と応力P1及び応力P2との差分に基づいて、所定の計算式に応力P1,P2,P3の値を代入することにより、傾斜角θを算出する。
【0059】
傾斜有無判定ステップS23は、傾斜状態解消部68が、傾斜算出ステップS22で傾斜算出部67が算出した傾斜状態に基づいて、保持部11で保持されている部品1が傾斜していない状態に該当するか傾斜状態に該当するかを判定するステップである。傾斜有無判定ステップS23では、具体的には、傾斜状態解消部68が、傾斜算出部67が算出した傾斜角θが予め定めた閾値以下である場合、保持部11で保持されている部品1が傾斜していない状態に該当すると判定して一連の傾斜補正ステップS13を終了させて処理を挿入ステップS14に進める。一方、傾斜有無判定ステップS23では、傾斜状態解消部68が、傾斜算出部67が算出した傾斜角θが予め定めた閾値より大きい場合、保持部11で保持されている部品1が傾斜状態に該当すると判定して、処理を傾斜状態解消ステップS24に進める。
【0060】
傾斜状態解消ステップS24は、傾斜状態解消部68が、傾斜算出ステップS22で傾斜算出部67が算出した傾斜状態に基づいて、保持部材10の傾斜角を変更して、保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を解消させるステップである。
【0061】
図8は、図4の傾斜状態解消ステップS24を説明する説明図である。図8の左側では、傾斜方向φで示されるX´Z平面において、保持部11で保持されている部品1が傾斜角θだけ傾斜している状態を示している。図8の右側では、図8の左側の保持部材10、保持部11及び部品1の全体を、傾斜方向φで示されるX´Z平面において、傾斜角-θだけ傾斜させた状態を示している。
【0062】
傾斜状態解消ステップS24では、具体的には、図8に示すように、傾斜状態解消部68が、保持部材傾斜装置30を制御して、傾斜算出ステップS22で傾斜算出部67が算出した傾斜方向φにおいて、傾斜算出ステップS22で傾斜算出部67が算出した傾斜角θを解消するように、すなわち傾斜角-θだけ、保持部材傾斜装置30に保持部材10の傾斜角を変更させることで、保持部材10及び保持部11は傾斜角-θ及び傾斜方向φの傾斜状態として、部品1の傾斜状態を解消する。
【0063】
なお、実施形態に係る傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000は、本発明の実施形態に係る傾斜補正方法を、一定時間ごとに繰り返し実行することが好ましい。具体的には、実施形態に係る傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000の制御装置60は、一定時間ごとに、応力取得ステップS21での応力の取得、傾斜算出ステップS22での傾斜状態の算出、傾斜有無判定ステップS23での傾斜状態の判定、及び、傾斜状態解消ステップS24での傾斜状態の解消、を繰り返し実行することが好ましい。これにより、実施形態に係る傾斜補正システム100及び部品挿入システム1000は、比較的長い時間をかけて部品1をハウジング2の被挿入部2aに搬送する必要がある場合でも、一定時間ごとに部品1の傾斜状態を検出及び補正することで、保持部11で保持されている部品1を傾斜していない状態にして、正しい姿勢とすることができる。
【0064】
挿入ステップS14は、挿入動作制御部69が、一連の傾斜補正ステップS13によって部品1の傾斜状態を解消した状態で、保持部11に保持させた部品1をハウジング2の被挿入部2aまで搬送して被挿入部2aに挿入するステップである。
【0065】
挿入ステップS14では、具体的には、挿入動作制御部69が、まず、保持部材移動装置40を制御して、傾斜状態を解消した状態で部品1を保持している保持部材10を、ハウジング2の被挿入部2aの鉛直方向上側の位置まで搬送する。挿入ステップS14では、挿入動作制御部69が、次に、保持部材移動装置40を制御して、傾斜状態を解消した状態で部品1を保持している保持部材10を、ハウジング2の被挿入部2aへ鉛直方向下側に向けて接近させることで、傾斜状態を解消した状態で保持している部品1をハウジング2の被挿入部2aへ向けて挿入する。挿入ステップS14では、挿入動作制御部69が、最後に、保持部駆動装置20を制御して、保持部材10に、傾斜状態を解消した状態で保持している部品1の保持状態を解消させることで、部品1が正しい姿勢でハウジング2の被挿入部2aに挿入される。
【0066】
本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、以上のような構成を有するので、保持部11で保持されている部品1の傾斜状態を、部品1を保持したまま、解消させることができるため、部品1を正しい姿勢で被挿入部2aに挿入される可能性を向上させることができる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、制御装置60が、一定時間ごとに、応力の取得、傾斜状態の算出及び傾斜状態の解消を実行する。このため、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、保持部11で保持されている部品1が搬送中に再び傾斜状態となった場合でも、再び傾斜状態を解消することができるので、部品1を正しい姿勢で被挿入部2aに挿入される可能性をより向上させることができる。
【0068】
また、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、保持部11が、保持部材10において相対的に径方向に移動可能に設けられており、相対的に径方向の内側に移動することで部品1の外周部で外側から挟み込むように保持可能であり、相対的に径方向の外側に移動することで部品1の内側1aで内側から保持可能である。このため、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、部品1の形状等に応じて、適宜保持の仕方を変更することができるので、部品1の形状等に依らず、部品1を正しい姿勢で被挿入部2aに挿入される可能性をより向上させることができる。さらに、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、保持部11が、部品1に設けられた開口の内側1aで、部品1を保持する。このため、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、部品1の保持によって生じる応力をより正確に検出することができるので、より高い精度で傾斜状態を解消することができ、部品1を正しい姿勢で被挿入部2aに挿入される可能性をより向上させることができる。
【0069】
また、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、制御装置60が、隣接して設けられた保持部11が検出した応力に基づいて、隣接して設けられた保持部11の間の状態を見積もることが好ましい。この場合、本発明の実施形態に係る傾斜補正システム100、部品挿入システム1000、傾斜補正方法及び部品挿入方法は、保持部11で保持されている部品1の傾斜状態をより高い精度で算出することができるので、より高い精度で傾斜状態を解消することができ、部品1を正しい姿勢で被挿入部2aに挿入される可能性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 部品
1-1,1-2,1-3 箇所
1a 内側
1p,1q グラフ
2 ハウジング
2a 被挿入部
10 保持部材
11,11-1,11-2,11-3 保持部
20 保持部駆動装置
30 保持部材傾斜装置
40 保持部材移動装置
50 被挿入部検出装置
60 制御装置
61 処理部
62 記憶部
63 情報通信インターフェイス
65 保持動作制御部
66 応力取得部
67 傾斜算出部
68 傾斜状態解消部
69 挿入動作制御部
70 入力装置
80 出力装置
100 傾斜補正システム
1000 部品挿入システム
P1,P2,P3 応力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8